JP4315737B2 - 植物栽培装置及び植物栽培方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、野菜や花卉類のような植物を栽培する植物栽培技術に関し、特に、簡単な設備を使用して少量培土で植物を栽培する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
土壌を使用せず水耕栽培により野菜や花卉類等を栽培する植物栽培方式として、従来より、NFT(Nutrient Film Technique)方式が広く行われている(例えば、非特許文献1参照)。NFT方式は、チャネルと呼ばれる栽培ベッドの上に、養液の浅い流れを作るとともに、チャネル上に培地を付けた植物の苗を置いて栽培する方式である。
【0003】
図15は従来のNFT方式で使用される植物栽培装置の構成を表す模式図である。NFT方式の植物栽培装置100は、表面に緩勾配がつけられた平箱状に形成されたチャネル101を備えている。チャネル101の傾斜上部には、タンク102に貯留された養液が、ポンプ103によって給水管104を通して連続的又は間歇的に少量ずつ供給される。チャネル101に供給された養液は、チャネル101上に浅い流れを作って斜面を流下し、斜面下部から排水される。排水された養液は、タンク102に戻される。
【0004】
チャネル101の上面には、培地107に植えられた植物の苗108が複数個並べられている。そして、培地107には、チャネル上を流下する養液が常時又は間歇的に供給される。植物の苗108の吸収により又は蒸発により養液が減少すると、フロートスイッチ106によりタンク102内の水面の低下が検出される。水面の低下が検出されると、給水装置105により、タンク102内に新たな養液が供給される。
【0005】
このように、NFTでは養液の浅い流れを利用して灌水を行うため、培地107内の上部の植物の根は浸水せず、根に充分な酸素を吸収させることが可能となる。
【0006】
【非特許文献1】
社団法人日本施設園芸協会編,「最新 養液栽培の手引き」,株式会社誠文堂新光社,1996年6月15日,p.84−103
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
植物栽培においては、幼苗期には植物の苗を環境制御された育苗床で栽培した後に、苗がある程度大きな環境変化に対して耐えられる程度まで育成した段階で、各植物株間の間隔を広げるためより栽培面積が大きい本圃に定植するといった方法が広く行われている。従来のNFT方式も同様の方法が採られ、まず、幼苗期にはセルポットなどでセル苗を育苗した後に、培地107にこのセル苗を定植し、この培地107をチャネル101上に運んで所定の間隔で配置する。
【0008】
一方、上記従来のNFT方式においては、通常、培地107としては、ロックウール培地や籾殻燻炭培地等が使用される。これらの培地107を使用する場合、充分な保水性を確保する必要があることから、約10cm角のキューブに成形される。そして、培地107の上面に、ポットで育苗された苗108の根鉢が浅植で入る程度の穴をくりぬき、苗108を、根鉢ごと根を切らないように培地107に植え込む。
【0009】
しかし、このような苗の移植作業は、苗の数が多いとかなりの時間と労力を要する作業となる。また、培地107は、通常は約10cm角のキューブであることから、培地107が大きく重いため、培地を移動させる作業が行いにくい。従って、多数の植物株を栽培する場合において作業性が悪く、さらに改善の余地がある。
【0010】
また、約10cm角のキューブの培地107を配置するためには、チャネル101の幅を、その培地107が載る幅以上の幅に確保する必要がある。従ってチャネル101が大型化する。チャネル101が大型化すると、植物を栽培する為の圃場面積も広く確保する必要があるため、単位面積あたりの植物の生産量もチャネルの大きさによって制限されることとなる。
【0011】
また、チャネル幅が広くなると、チャネル101の斜面上端に均一に灌水を行っても、斜面を流下する間に養液の流れは不均一となりやすい。従って、チャネル101上の場所によって、灌水される養液量が不均一となりやすく、場所により植物の成長が不均一となりやすい。
【0012】
さらに、一般に培地107に使用されるロックウール培地や籾殻燻炭培地は、通常の土壌に比べると保水性は高いものの、約10cm角のキューブであるためキューブ一個あたりの保水容量はあまり大きくない。また、培地内の孔隙が比較的大きいために培地内の水の浸潤速度が大きい。従って、気温が高い場合には、チャネル101上の灌水を停止すると数分程度で乾燥が始まる。従って、従来のNFT方式では、通常、灌水は連続的にポンプを運転させて行われる。そのため、灌水に要する電気代が高くなり、灌水コストがかかるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、セル苗を栽培槽に設置する作業を省力化することができ、栽培槽が軽量で持ちやすく搬送が容易であり、かつ、栽培槽への灌水を比較的長い時間間隔で間歇的に行うことで必要十分な灌水をなすことが可能な植物栽培技術を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る植物栽培装置の第1の構成は、透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、により構成された栽培槽と、前記保水材に水又は養液の灌水を行う灌水装置と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、植物栽培装置により植物を栽培する場合、栽培用袋の苗挿入口にセル苗を挿入する。そして、灌水装置により保水材に水又は養液を供給する。これにより、保水材に水又は養液が保水されるとともに、セル苗の根鉢にも水又は養液が浸潤し、植物のセル苗に灌水がされる。
【0016】
灌水が行われたとき、保水材は水又は養液を多量に吸収し保持する。そして、水又は養液の供給が停止されても、保水材はしばらくは水又は養液を保持する。従って、灌水装置による水又は養液の供給は連続的に行う必要はなく間歇的に行えばよい。
【0017】
植物が成長すると、植物の根は伸長し、保水材の内部に侵入する。保水材の内部に侵入した植物の根は、保水材内に保水された水又は養液を吸収して利用することが可能となる。そのため、植物には安定して養水分が供給されることとなり、植物に加わる水分ストレスが大幅に緩和される。従って、植物の成長が良好となる。また、植物の根は保水材全体に渡って広がる。そのため、植物の1株あたりの根圏容積が大きくなる。従って、植物株全体が吸収する水の総量は常に安定したものとなり、植物の成長は良好となる。よって、品質のよい植物を栽培することが可能となる。
【0018】
また、栽培用袋は縦長袋状であるため、栽培用袋の長手に並べて、複数の苗挿入口を形成することができる。これにより、一つの栽培槽で複数株の植物を栽培することが可能であり、狭い圃場面積で多くの植物株を栽培することが可能である。
【0019】
また、栽培用袋は縦長袋状であり、栽培槽に植えられるセル苗は苗挿入口に固定されるため、植物のセル苗を植えたまま、栽培槽の一端を手でもって搬送することができる。また、栽培槽は、栽培用袋と保水材から構成されたものであり、培土が含まれないため軽量である。そのため、植物を植えた状態で栽培槽を簡単に持ち運ぶことが可能である。
【0020】
「透水性を有する素材」としては、例えば、ワリフ、ミライフ(商標名:新日石プラスト株式会社製)などを使用することができる。特に、「透水性を有する素材」としてワリフを使用した場合、栽培用袋を薄くすることができるとともに、通気性・通水性・透根性を有しつつ軽量で高強度とすることが可能となる。従って、栽培槽の搬送時や植物の収穫時に栽培用袋が裂けるたり折れ曲がって吸着したりすることがなく、農作業の作業性が向上する。尚、「透根性」とは、植物の細根がスムーズに通り抜けることができる性質をいい、細根が通り抜けることのできる細孔が多数形成されていることを意味する。具体的には、一般的に、細根の太さは直径0.5〜1.0mm程度なので、透根性を有するためには、例えば、直径約0.3〜2.0mm程度の穴が多数あいたシート又はネットであれば透根性を有することになる。
【0021】
また、ワリフは透根性を有するため、栽培用袋をワリフで構成すると、植物の根の成長に伴い、植物の根は栽培用袋を貫通する。そして、栽培用袋を貫通した植物の根は、灌水樋と栽培用袋との間に根圏を形成する。栽培用袋と灌水樋との間には、灌水装置により供給された水又は養液が毛管力によって保持されている。従って、植物はこの水又は養液を吸収することができる。植物が灌水樋と栽培用袋との間に形成する根圏が拡大すると、灌水樋と栽培用袋との間に保持される毛管水の量が多くなる。従って、植物の水分吸収はより安定したものとなり、植物の成長が良好となる。
【0022】
「セル苗」とは、セルポットやプラグトレイ等で育苗された苗をいい、少量の培土に苗の根系が形成されて一体となった根鉢を形成した苗をいう。
【0023】
「保水材」としては、保水材の底面から吸水したときに、毛管現象により保水材の上面まで水が吸い上げられる程度に毛管吸引圧の大きい素材が使用される。このような素材としては、例えば、微細ポリエステル繊維を柔軟なシート状にしたポリエステル不織布等を使用することができる。また、「遮根シート」とは、植物の根を通さないシートをいう。
【0024】
本発明に係る植物栽培装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記灌水装置は、水平又は緩傾斜をもたせて設置された、水又は養液を通水する灌水樋と、前記栽培槽を前記灌水樋の内部に脱着自在に固定する固定具と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、灌水樋の一端に、水又は灌水を供給すれば、水又は灌水は灌水樋の内部を伝って流れる。従って、固定具により栽培槽を灌水樋内部に固定することによって、栽培槽に灌水を行うことが可能となる。
【0026】
また、灌水装置の設備構造が簡易であり、低廉なコストで設備導入することができる。従って、小規模経営農家においても、容易に導入することが可能である。
【0027】
ここで、「固定具」としては、栽培槽を灌水樋の上端に挟んで係止することができるものであればよい。例えば、洗濯ばさみやクリップを使用することができる。
【0028】
また、本発明においては、灌水樋に複数の前記栽培槽を並べて固定具より固定することができる。これにより、灌水樋に灌水するだけで、複数の栽培槽に同時に灌水することが可能となる。そのため、多くの栽培槽を使用して植物を栽培する場合においても、1つの灌水設備を使用して灌水を行うことができる。
【0029】
本発明に係る植物栽培装置の第3の構成は、前記第1の構成において、前記灌水装置は、水平又は緩傾斜をもたせて設置された、水又は養液を通水する給水樋と、前記給水樋に平行に配置された灌水樋と、前記栽培槽を前記灌水樋の内部に脱着自在に固定する固定具と、縦長に形成された吸水性の織布又は不織布からなる毛管給水材と、を備えており、前記毛管給水材は、両端が前記給水樋と前記灌水樋との樋内に垂れ下がった状態で、前記給水樋と前記灌水樋との間に掛けられていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、水や養液は給水樋を通して流れ、毛管給水材により、毛管力によって給水樋から灌水樋に供給される。従って、灌水樋の長手方向に、多くの栽培槽を固定して植物の栽培を行う場合でも、それぞれの栽培槽に対して均等に灌水を行うことが可能となる。
【0031】
また、植物の根が成長して灌水樋の底面に根圏を形成することによって、灌水樋の底部に堰ができて、灌水樋の長手方向に水や養液が流れにくくなる場合がある。このような場合でも、各栽培槽に対して均等に水又は養液を供給することが可能である。
【0032】
ここで、毛管給水材としては、毛管力により水を吸い上げる性質を有するものであればよい。例えば、ポリエステル不織布を使用することができる。
【0033】
本発明に係る植物栽培装置の第4の構成は、前記第1の構成において、前記灌水装置は、緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートが敷設されているとともに、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートが敷設された水耕栽培ベッドと、前記水耕栽培ベッドの傾斜上方から前記保水性シートに水又は養液を供給する給液機構と、前記水耕栽培ベッドの傾斜下方から余剰水又は余剰養液を排液する廃液機構と、を備えていることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、給液機構によって、水耕栽培ベッドの傾斜上方から保水シートに水又は養液が供給されると、供給された水又は養液は斜面下方に向かって移動し、保水シート全体に水又は養液が広がる。そして、保水シート全体に水又は養液が保水される。保水シートに保水された水又は養液は、毛管力により、保水シート内の水又は養液は、遮根シートの上面に載置された栽培槽に吸い上げられ、栽培槽に水又は養液が供給される。一方、保水性シートの保水容量を超える余剰水又は余剰養液は、斜面の下方から廃液機構によって廃液される。そのため、水耕栽培ベッド上に過剰な灌水が溢れることが防止される。
【0035】
このように、水耕栽培ベッドは、保水材に水又は養液を保水することが可能であるため、NFTのように、常に連続して水又は養液を供給する必要はなく、間歇的に水又は養液を供給すればよい。従って、灌水管理が容易であり、電気代や水道代等の灌水コストも低廉となる。
【0036】
ここで、「給液機構」としては、点滴灌水管等を使用することができる。
【0037】
本発明に係る植物栽培方法の第1の構成は、透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、により構成された栽培槽の、前記栽培用袋の苗挿入口に、鉢状に培土が充填された栽培槽において栽培された植物のセル苗を挿入し、前記保水材に、水又は養液を供給することによって、前記植物のセル苗に灌水することで植物を栽培することを特徴とする。
【0038】
このように、上記栽培槽を使用して植物のセル苗を栽培することにより、上述のように、植物を安定して成長させ、高品質の植物を生産することが可能となる。
【0039】
また、栽培槽に植物のセル苗を挿入し、保水材に水又は養液を供給することによって、前記植物のセル苗に灌水することで、多量の培土を使用することなく植物の栽培を行うことが可能となる。従って、栽培槽を軽量化できる。また、栽培用袋は縦長袋状であるため、栽培槽の運搬が容易である。
【0040】
また、栽培槽自体が軽量であるため、栽培した植物を、栽培槽ごと根付きもまま市場に出荷することができる。従って、植物の輸送時の鮮度保持が容易となり、高品質の植物を市場に供給することが可能となる。
【0041】
本発明に係る植物栽培方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記保水材に水又は養液を供給する場合において、水平又は緩傾斜をもたせて設置された、水又は養液を通水する灌水樋の内部に、固定具により、前記栽培槽を脱着自在に固定し、前記灌水樋に水又は養液を通水し、前記栽培槽の下部を水又は養液に浸すことによって前記保水材に水又は養液を供給することを特徴とする。
【0042】
本発明に係る植物栽培方法の第3の構成は、前記第1の構成において、前記保水材に水又は養液を供給する場合において、水平又は緩傾斜をもたせて設置された、灌水樋の内部に、固定具により、前記栽培槽を脱着自在に固定し、前記灌水樋と平行に配置された給水樋に水又は養液を通水するとともに、縦長に形成された吸水性の織布又は不織布からなる毛管給水材を両端が前記給水樋と前記灌水樋との樋内に垂れ下がった状態で、前記給水樋と前記灌水樋との間に掛けて、前記毛管給水材の内部を水又は養液を毛管移動させることによって前記給水樋から前記灌水樋に水又は養液を供給し、前記灌水樋に供給された水又は養液を前記保水材に吸収させることによって、前記保水材に水又は養液を供給することを特徴とする。
【0043】
本発明に係る植物栽培方法の第4の構成は、前記第1の構成において、前記保水材に水又は養液を供給する場合において、緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートが敷設されているとともに、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートが敷設された水耕栽培ベッドの表面に、前記栽培槽を載置して、前記水耕栽培ベッドの傾斜上方から前記保水性シートに水又は養液を供給することを特徴とする。
【0044】
本発明に係る栽培植物の輸送方法は、透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、により構成された栽培槽の、前記栽培用袋の苗挿入口に、鉢状に培土が充填された栽培槽において栽培された植物のセル苗を挿入し、前記保水材に、水又は養液を供給することによって、前記植物のセル苗に灌水することで栽培された植物を、前記栽培槽ごと運搬することを特徴とする。
【0045】
これにより、植物の輸送中に保水材を水で湿らせておけば、輸送中に植物の鮮度を保持することができる。従って、栽培した植物を市場に出荷する場合の流通過程における鮮度管理が極めて容易となる。また、根付きのまま市場に出荷できるため、植物の商品価値を上げることができる。
【0046】
本発明に係る栽培植物固定体は、透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、により構成された栽培槽の、前記栽培用袋の苗挿入口に、鉢状に培土が充填された栽培槽において栽培された植物のセル苗を挿入し、前記保水材に、水又は養液を供給することによって、前記植物に灌水することで前記植物を成長させることにより、前記植物の根系が前記保水材の内部に形成されていることを特徴とする。
【0047】
この構成によれば、栽培植物固定体には培土が含まれていないため、栽培槽自体は極めて軽量である。従って、栽培植物固定体の重量の殆どは植物株の重量であり、軽量である。従って、植物を栽培した後に出荷する場合、植物を栽培槽から切り離すことなく、栽培植物固定体ごと輸送することも容易に行うことができる。そして、輸送中には保水材を水で湿らせておけば、植物株を根付きのまま鮮度を保持しながら輸送することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る植物栽培装置の斜視図である。本実施形態の植物栽培装置1は、地面垂直に立てられた複数本の支柱2aの間に、上下に2本の梁2b,2cが渡された架台2を有している。この架台2の上下の梁2b,2cには、それぞれ、フック3により灌水樋4,5が略水平乃至僅かに緩傾斜がつけられた状態で吊り下げられている。
【0049】
上側の灌水樋4の一端4aの底部には、排水口(図示せず)が形成されている。そして、この排水溝に連通して、垂直に排水管6が接続されている。排水管6の下端は、下側の灌水樋5の一端5a側の樋内に開口するように配置されている。灌水樋4,5が緩傾斜をつけて設置されている場合には、上側の灌水樋4は、排水管6が接続されている側が低くなるようにし、下側の灌水樋5は、排水管6が配置されている側が高くなるように設置されている。
【0050】
上側の灌水樋4の他端4b側には、樋内に給水管7が挿入されており、この給水管7を通して、樋4の他端4b側に、灌水ポンプ8により、タンク9内の養液が供給される。一方、下側の灌水樋5の他端5b側には、樋の底部に排水口(図示せず)が形成されている。そして、この排水口に連通して、排水管10が接続されており、灌水樋5内の水又は養液をタンク9に排水する。尚、灌水ポンプ8は、タイマー(図示せず)によって、一定時間ごとに間歇的に運転するように構成されている。
【0051】
各灌水樋4,5に沿って、各樋内の一側面に、複数の栽培槽11が固定具12,12により両端を固定して設置されている。この栽培槽11は縦長袋状であり、複数の植物のセル苗13が植えられている。
【0052】
図2は栽培槽11が設置された灌水樋4,5の断面図、図3は栽培槽11の斜視図である。栽培槽11は、ワリフを用いて縦長袋状に形成された栽培用袋14と、栽培用袋14の内部に入れられたポリエステル不織布により構成された保水材15とを有している。本実施形態では、栽培用袋14のサイズは、縦約60cm×幅約10cm程度に形成されている。また、栽培用袋14には、植物のセル苗13を挿入する苗挿入口14aが、所定の間隔をあけて複数個形成されている。一方、保水材15は、栽培用袋14の全長に渡る長さに形成されている。
【0053】
そして、この苗挿入口14aから、セル苗13の葉茎13bが袋外に出るようにして、セル苗13の根鉢13aが挿入されている。根鉢13aは保水材15に接触している。
【0054】
尚、実際には、灌水樋4,5としては、一般家庭で使用される屋根樋を利用することができる。従って、設備費も非常に低廉であり、小規模農家であっても容易に導入することが可能である。
【0055】
以上のように構成された本実施形態に係る植物栽培装置において、以下その植物栽培方法について説明する。
【0056】
まず、プラグトレイやセルポットなどにより植物の幼苗を育苗しセル苗13を作る。図4はプラグトレイにおいて植物の幼苗を育苗している状態を表す図、図5はセル苗をプラグトレイから取り出した図である。プラグトレイとは、小さい四角錐または円錐状に整形された連結ポットのことである。このプラグトレイのポット内に、ピートモスなどの用土を入れて育苗する。
【0057】
図5から分かるように、セル苗13は、プラグトレイのポット形状に合わせて楔状に形成された根鉢13a、及び植物の葉茎13bとからなる。ここで、「根鉢」とは、植物をプラグトレイからとり出したときに、根と根のまわりについている用土により形成される塊をいう。幼苗が十分に成長すると、ポット内の用土全体に植物の根圏が形成され、植物の根によって用土がしっかりとした塊状となり、崩れにくい根鉢ができる。
【0058】
次に、このセル苗13を、図3に示したように、栽培用袋14の苗挿入口14aに差し込む。尚、苗挿入口14aは、一つの栽培用袋14に対して複数個設けられており、それぞれの苗挿入口14aにセル苗13を一つずつ差し込む。
【0059】
そして、このセル苗13が差し込まれた栽培用袋14を運搬し、図1,図2に示したように、灌水樋4,5に装着する。栽培用袋14の装着は、まず、図2のように、灌水樋4,5の一側壁に栽培用袋14をもたせかけるように置いた後に、栽培用袋14の上部両端を灌水樋4,5の上端に固定具12により固定する。尚、本実施形態においては、固定具12としては、洗濯ばさみを使用している。
【0060】
このように、本実施形態では、栽培槽11は、栽培用袋14にセル苗13を差し込んだのみの構成からなるため、培土量が極めて少量である。また、従来のNFT方式の培地に比べると、容量・重量ともに各段に小さくなり、極めて軽量で持ち運びが容易である。更に、複数のセル苗13が一つの栽培用袋14に連ねて差し込まれていることから、多くの植物の株を運搬するのも効率的である。加えて、栽培用袋14の形状は、縦長袋状であるため、持ち運びやすい形状であり、この栽培用袋14の形状も、栽培槽11の運搬を容易にする要因の一つである。
【0061】
栽培用袋14の装着が終わった後に、灌水ポンプ8により、灌水樋4,5に、タンク9に貯留された水又は養液を循環させる。このとき、灌水ポンプ8は、タイマーにより、一定時間おきに間歇的に運転される。例えば、25分間停止して5分間運転するというように運転する。
【0062】
給水管7から灌水樋4の端4bに給水された水又は養液は、灌水樋4のもう一方の端4aに向かって流れる。水又は養液は、灌水樋4の端4aに到達すると、排水管6を通って、灌水樋5の端5aに流入する。そして、灌水樋5の樋内を端5bまで流れる。灌水樋5の端5bに到達した水又は養液は、排水管10を通ってタンク9内に戻る。このようにして、水又は養液が灌水樋4,5内を循環される。
【0063】
灌水樋4,5を流れる水又は養液は、図2に示したように、栽培用袋14内にある保水材15に吸収され、保水材15内に保水される。保水材15は、ポリエステル不織布により構成されており、保水材15に吸収された水又は養液は、毛管力によって保水材15全体に広がる。また、水又は養液の一部は根鉢13aの内部にも浸潤し、植物の根への灌水が行われる。
【0064】
灌水ポンプ8が停止して、灌水樋4,5の底部に水又は養液の流れがなくなっても、保水材13aは、毛管水として水又は養液を保持する。そのため、灌水ポンプ8の停止後、長時間に渡って根鉢13aには灌水され続ける。従って、灌水ポンプ8は連続的に運転する必要はなく、一定時間おきに間歇的に運転するだけでよい。これにより、灌水ポンプ8の運転に要する電気を節約することができる。
【0065】
植物が生育すると、植物の根系は、根鉢13aから保水材15の内部に広がっていく。そして、植物の根は、保水材15の内部に保水された水又は養液を直接吸収することができるようになる。また、植物の根圏が保水材15の内部に広がることによって、植物1株あたりの根圏容積が拡大する。これにより、植物への水又は養液の供給が安定化する。更に、栽培用袋14は、透根性を有するワリフであるため、植物の根は栽培用袋14を突き抜けて栽培用袋14と灌水樋4,5との間の空間に根系を形成することもできる。このように、植物への水又は養液の供給が安定化することによって、植物にかかる水分ストレスが緩和され、植物の生長は良好となる。
【0066】
また、栽培槽11は、従来のNFT方式で使用されていたキューブ状の培地に比べると幅が狭い。従来のNFT方式で使用されていたキューブ状の培地は、通常10cm角のキューブ状のものが使用されるため、広いチャネル幅を必要とした。その結果、チャネル上を流れる灌水量にムラが生じ、植物の生育にばらつきが出るという問題があった。一方、本実施形態の植物栽培槽11は、長さ約60cm×幅約10cmである。そして、灌水樋4,5には、図2のように立てた状態で設置される。従って、チャネルに相当する灌水樋4,5の幅は数センチ程度あれば十分である。従って、装置の設置に広いスペースを必要としない。そして、灌水樋4,5の幅が狭いことから灌水の流れに不均一性が生じることがないため、各栽培槽11には均一に灌水できる。その結果、各栽培槽11においてムラなく植物を育成させることができる。
【0067】
植物が収穫するのに十分なまで生育した段階で、固定具12を取り外して栽培用槽11を灌水樋4,5から取り外す。これにより、栽培槽11ごと植物を収穫することができる。栽培槽11は、ワリフからなる栽培用袋14とポリエステル不織布である保水材15とからなるものであるため、極めて軽量である。また、植物株は、セル苗13を栽培用袋14に差し込んで生育させたものであるため、栽培用袋14内に残る培土の量は極めて少量である。故に、栽培槽11及び培土の重量は軽量である。従って、運搬が容易であり収穫作業も省力化される。
【0068】
また、植物を市場に出荷する場合には、栽培槽11から植物を切り離してから出荷してもよいが、栽培槽11ごと市場に出荷することもできる。これにより、栽培された植物は根がついたまま運搬されることになる。また、栽培槽11内には保水材15が入っているため、植物の輸送中に保水材15を水で湿らせておけば、輸送中に植物の鮮度を保持することができる。従って、市場に出荷する場合の流通過程における鮮度管理が極めて容易となる。
【0069】
(実施形態2)
図6は本発明の実施形態2に係る植物栽培装置の構成を表すブロック図である。
【0070】
本実施形態に係る植物栽培装置20は、実施形態1で説明した、架台2、灌水樋4,5、排水管6、栽培槽11等で構成される栽培棚を複数個有する構成とされている。図6においては、説明の便宜上、栽培棚の数が6個の場合を図示している。
【0071】
各栽培棚の灌水樋4には、給水管21を通して、灌水ポンプ8によりタンク9に貯留された水又は養液が供給される。給水管21は、灌水ポンプ8の下流側で、栽培棚と同数の支管に分岐している。分岐した各支管には、電磁開閉弁22a〜22fが設けられている。この電磁開閉弁22a〜22fを開閉することにより、水又は養液を各支管に通水させるか否かを切り替えることができる。尚、以下では、説明の便宜上、電磁開閉弁22a〜22fに対応する栽培棚を、栽培棚25a〜25fと呼ぶことにする。
【0072】
また、各栽培棚の灌水樋5の下流側端部(すなわち、排水管6がある端部とは反対の側)には、排水管23が接続されている。この排水管23により、各栽培棚5を流れた水又は養液がタンク9に排水される。灌水ポンプ8及び各電磁開閉弁22の動作は、リレーなどにより構成された制御回路24により制御される。
【0073】
以上のように構成された本実施形態の植物栽培装置について、以下その動作を説明する。
【0074】
まず、制御回路24は、電磁開閉弁22aを開弁するとともに、灌水ポンプ8を起動する。これにより、タンク9内の水又は養液により、栽培棚25aが灌水される。電磁開閉弁22aを開弁してから所定の時間T(例えば、T=5分)が経過した後、制御回路24は、電磁開閉弁22bを開弁するとともに、電磁開閉弁22aを閉止する。これにより、栽培棚25bの灌水が開始されるとともに栽培棚25aへの灌水が停止される。
【0075】
以下同様に、電磁開閉弁22bを開弁してから所定の時間Tが経過した後、制御回路24は、電磁開閉弁22cを開弁するとともに、電磁開閉弁22bを閉止する、というように、順次、電磁開閉弁22b〜22fを所定の時間Tだけ開弁させていく。
【0076】
最後に、電磁開閉弁22fが開弁されてから所定の時間Tが経過した後に、制御回路24は、電磁開閉弁22aを開弁するとともに、電磁開閉弁22fを閉止する。そして、最初の動作に戻る。
【0077】
このように、制御回路24は、ポンプ8を連続運転させたまま、電磁開閉弁22a〜22fの開閉を所定の時間ごとに切り替えていくことにより、1つの小出力の灌水ポンプ8が1つあれば、多数の栽培棚の灌水を行うことが可能となる。従って、多くの植物を栽培する場合でも設備が簡易となりメンテナンスが簡便となるとともに、設備コストが低廉となる。
【0078】
(実施形態3)
図7は本発明の実施形態3に係る植物栽培装置の斜視図、図8は栽培槽及び給水樋が設置された灌水樋の断面図である。
【0079】
図7において、架台2、支柱2a、梁2b,2c、フック3、灌水樋4,5、給水管7、灌水ポンプ8、タンク9、排水管10、栽培槽11、及び固定具12は図1と同様のものである。本実施形態に係る植物栽培槽1’においては、灌水樋4,5に平行に、給水樋31,32が設置されている。そして、給水樋31と灌水樋4との間、及び給水樋32と灌水樋5との間には、シート状の毛管給水材33が掛けられている。
【0080】
また、本実施形態においては、タンク9内の水又は養液を給水するための給水管7の出水口は、給水樋31の一端31bの樋内に開口するように配置されている。また給水樋31の他端31aの底部には、排水管6’が接続されている。この排水管6’の下端は、給水樋32の端部32aの樋内に開口している。また、排水管10は、給水樋32の一端に接続されており、給水樋32を流れた水又は養液をタンク9に排水する。
【0081】
毛管給水材33は、縦長に形成された吸水性の織布又は不織布からなる。そして、毛管給水材33は、その両端が給水樋31,32と灌水樋4,5との樋内に垂れ下がった状態で、給水樋31,32と灌水樋4,5との間に掛けられている。
【0082】
以上のように構成された本実施形態に係る植物栽培装置について、以下その作用を説明する。
まず、灌水ポンプ8は、実施形態1と同様に、一定時間おきに間歇的に作動する。そして、灌水ポンプ8は、タンク9内の水又は養液を給水樋31内に供給する。給水樋31に供給された水又は養液は、給水樋31の端31bから端31aに向かって流れる。端31aに到達した水又は養液は、排水管6’を通って、給水樋32の端32aに供給される。そして、水又は養液は給水樋32の端32aから端32bに向かって流れる。最後に、端32bに到達した水又は養液は、排水管10を通して排水され、タンク9内に戻される。このようにして、タンク9内の水又は養液は、給水樋31,32内を循環する。
【0083】
給水樋31,32内を流れる水又は養液の一部は、毛管給水材33に吸収される。毛管給水材33に吸収された水又は養液は、毛管力により図8の矢印で示した方向に移動する。すなわち、毛管給水材33に沿って、給水樋31,32内から灌水樋4,5内へ水又は養液が移動する。そして、灌水樋4,5内に溜まった水又は養液は、栽培槽11内の保水材5に給水され、植物への灌水が行われる。
【0084】
このように、灌水樋4,5とは別に給水樋31,32を設けたのは、以下のような理由による。仮に、給水樋31,32がない場合、植物が生長すると、植物の根が広がって、ワリフからなる栽培用袋14を貫通して灌水樋4,5の底部に広がることがある。このような場合、灌水樋4,5の幅が狭いと、灌水樋4,5の底部に広がった根が堰となり、水又は養液が灌水樋4,5内を流れにくくなる。灌水樋4,5内に水溜まりのようなものが形成された場合、その水溜まりに浸水した植物の根が根腐れを起こしたり、藻が発生しやすくなったりする。
【0085】
一方、本実施形態に係る植物栽培装置1’では、水又は養液は給水樋31,32を流れるため、成長した植物の根により水又は養液の流れが堰き止められるようなことがない。また、水又は養液は、各毛管給水材33を通して直接各栽培槽11内の植物の近傍に供給されるため、各栽培槽11内の植物へは均等に灌水が行われる。従って、栽培槽11の位置によって植物の成長にムラが生じることがなくなる。
【0086】
(実施形態4)
図9は本発明の実施形態4に係る植物栽培装置の模式図である。
図9において、給水管7、灌水ポンプ8、タンク9、排水管10、栽培槽11、セル苗13、根鉢13a、葉茎13b、栽培用袋14、及び保水材15は、図1、図2と同様のものである。本実施形態に係る植物栽培装置1”は、緩傾斜がつけられた平板状の容器41底面の表面に保水性シート42が敷設されているとともに、この保水性シート42の表面に透水性の遮根シート43が敷設された水耕栽培ベッド40を備えている。
【0087】
本実施形態においては、保水性シート42として、厚さ1〜2cmのポリエステル不織布が使用されている。また、遮根シート43は、栽培される植物の根が通らない程度の網目を有する織布が使用されている。給水管7の出水口は、水耕栽培ベッド40の斜面上部に開口している。これにより、タンク9内の水又は養液は、灌水ポンプ8によって水耕栽培ベッド40の斜面上部に供給される。
【0088】
水耕栽培ベッド40の斜面下部側には、排水口41aが形成されており、この排水溝41aの下部に排水樋44が設けられている。排水樋44には排水管10が接続されている。これにより、水耕栽培ベッド40内を流れ下った水又は養液は、排水口41aを通って排水樋44に流入し、排水管10を通ってタンク9内に戻される。
【0089】
以上のように構成された本実施形態に係る植物栽培装置1”において、以下その作用を説明する。
まず、実施形態1において説明したように、栽培槽11の栽培用袋14に、植物のセル苗13を差し込んで、これを水耕栽培ベッド40の遮根シート43上に並べて載置する。そして、実施形態1と同様に、灌水ポンプを間歇的に動作させ、水耕栽培ベッド40の斜面上端から保水性シート41に水又は養液を供給する。
【0090】
保水性シート41に供給された水又は養液は、保水性シート41全体に浸潤して広がっていく。そして、その一部は、毛管水として保水性シート41内に保水される。また、保水性シート41の保水容量を上回る水又は養液は、斜面下方の排水口41aから排水され、タンク9に戻される。
【0091】
保水性シート41内に保水された水又は養液は、毛管力によって遮根シート43を通して各栽培槽11に供給される。そして、各栽培槽11内の保水材15に保水されると共に、セル苗13に供給され、灌水が行われる。
【0092】
ここで、本実施形態の水耕栽培ベッド40と従来のNFT方式で使用されるチャネルとの差異について説明しておく。従来のNFT方式のチャネルは、保水性シートを介さず、チャネル表面に水や養液の浅い流れを作って、キューブ状の各培地に直接灌水を行う構成をとる。従って、灌水を停止すると、チャネル表面からは速やかに灌水がなくなり、各培地に植えられた植物はその培地内に保水された水又は養液しか利用できなくなる。従って、通常は、従来のNFT方式では、常時チャネル上に灌水を供給し続けるのが一般的である。
【0093】
また、従来のNFT方式では、チャネル上に藻が発生して凹凸ができたり、他の障害物が載った場合、灌水の流れが不均一となり、各培地に均等に灌水が行われない事態が生じる場合がある。その結果、各植物の生育にばらつきが生じやすい。
【0094】
一方、本実施形態に係る水耕栽培ベッド40は、供給された水を、一旦保水性シート42内に保水する。従って、水耕栽培ベッド40への灌水を停止しても、しばらくの間(数十分程度)は、多量の水又は養液が保水性シート42内に保水された状態が維持される。そして、この保水性シート42内に保水された水又は養液が、毛管力によって逐次適量ずつ栽培槽11に供給される。従って、灌水は常時連続して行う必要はなく、間歇的に灌水を行えばよい。また、植物に対して過剰な灌水が行われることがない。更に、植物の根の周辺は、毛管移動による水流は生じるが、大きな水流は生じない。すなわち、植物の根が水で洗われることがない。従って、植物の根圏は極めて安定した環境が保たれることとなり、根圏領域における微生物の活動も活発となる。その結果、植物の生育が活性化され、高品質の植物を栽培することが可能となる。
【0095】
また、保水性シート42の斜面上端に供給された水又は養液は、毛管現象によって保水性シート42全体に浸潤する。そのため、保水性シート42全体に渡って均一な灌水が行われることとなり、各植物には均等に水又は養液が供給される。従って、植物の生長は均一化し、植物の生長にムラが生じることがなくなる。
【0096】
【実施例】
(実施例1)
図10は本発明の実施形態1に係る植物栽培装置をビニルハウス内に設置した例を表す図である。このように、植物栽培装置自体は少ないスペースに設置できるため、ビニルハウス内の空いた狭い場所であっても、設置することが可能である。
【0097】
図11は灌水樋に栽培槽を固定した例を表す図である。栽培槽自体が軽量であり柔軟に変形するため、灌水樋に合わせて載置して、洗濯ばさみのような固定具により、灌水樋の側壁に固定するだけで設置することができる。
【0098】
図12は図10の植物栽培装置において栽培したサラダナを表す図、図13は図10の植物栽培装置において栽培したサンチュを表す図である。
【0099】
図12,図13からわかるように、いずれも市場に出荷できる程度に十分な大きさ、品質の野菜を栽培することが可能であることが実証された。また、図12,13のように固定具をはずして栽培槽を手で摘み上げるだけで野菜を収穫できるため、収穫作業が極めて効率化される。そして、この栽培槽が付いたままで野菜を出荷すれば、流通における野菜の鮮度保持が極めて容易となる。
【0100】
更に、図13から分かるように、一つの栽培槽に複数のサンチュを植えた場合、各サンチュの根圏は保水材全体に広がることが分かる。そのため、各植物株の生育は、極めて安定化する。
【0101】
(実施例2)
図14は本発明の実施形態4に係る植物栽培装置でサラダナを栽培している様子を表す図である。この装置でサラダナの栽培実験を行った結果、市場に出荷できる程度に十分な大きさ、品質のサラダナを栽培することが可能であることが実証された。
【0102】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、縦長透水性の栽培用袋と保水材とからなる栽培槽を使用するので、セル苗を栽培槽に設置する作業を省力化することができ、栽培槽が軽量で持ちやすく搬送が容易であり、かつ、栽培槽への灌水を比較的長い時間間隔で間歇的に行うことで必要十分な灌水をなすことが可能となる。
【0103】
また、本発明に係る栽培植物の輸送方法によれば、栽培した植物を市場に出荷する場合の流通過程における鮮度管理が極めて容易となる。また、根付きのまま市場に出荷できるため、植物の商品価値を上げることができる。
【0104】
更に、本発明に係る栽培植物固定体によれば、輸送中には保水材を水で湿らせておけば、栽培した植物株を根付きのまま鮮度を保持しながら出荷することができる。そして、例えば、栽培農家で野菜や花卉類を栽培した後に、小売店や飲食店に栽培植物固定体を運搬し、小売店や飲食店内で継続して野菜や花卉類を栽培することができる。従って、小売店や飲食店で、その場でとりたての野菜を提供することが可能となる。
【0105】
尚、栽培植物固定体の用途としては、例えば、レストランにおけるバイキング等において、水の入ったトレイ内に十分に洗浄した栽培植物固定体を置き、これをテーブル上に載せて、客が各自で野菜を摘み取ってそのまま食するような利用方法が考えられる。また、スーパー等の生鮮食料品売場に、十分に洗浄した栽培植物固定体を展示し販売する利用方法が考えられる。
【0106】
更に、植物がトルコギキョウ等の花卉類の場合、生花店などにおいて栽培植物固定体を展示し、顧客の注文に応じてその場で摘み取って販売することができる。特に、従来より、花卉類は農家で摘み取った状態で流通され、生花店等の店頭で販売されていたため、鮮度が低下するまでの時間が短く、鮮度保持のため冷暗所に保存する等、管理が難しかった。しかし、本発明によれば、花卉類を容易に根付きもまま搬送することが可能であるため、生花店に花卉類を根付きのまま出荷し、生花店で継続して花卉類の栽培を行うことが可能である。従って、生花店において花卉類の鮮度を長く保持することが可能であり、従来に比べて管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1に係る植物栽培装置の斜視図である。
【図2】 栽培槽が設置された灌水樋の断面図である。
【図3】 栽培槽の斜視図である。
【図4】 プラグトレイにおいて植物の幼苗を育苗している状態を表す図である。
【図5】 セル苗をプラグトレイから取り出した図である。
【図6】 本発明の実施形態2に係る植物栽培装置の構成を表すブロック図である。
【図7】 本発明の実施形態3に係る植物栽培装置の斜視図である。
【図8】 栽培槽及び給水樋が設置された灌水樋の断面図である。
【図9】 本発明の実施形態5に係る植物栽培装置の模式図である。
【図10】 本発明の実施形態1に係る植物栽培装置をビニルハウス内に設置した例を表す図である。
【図11】 灌水樋に栽培槽を固定した例を表す図である。
【図12】 図10の植物栽培装置において栽培したサラダナを表す図である。
【図13】 図10の植物栽培装置において栽培したサンチュを表す図である。
【図14】 本発明の実施形態4に係る植物栽培装置でサラダナを栽培している様子を表す図である。
【図15】 従来のNFT方式で使用される植物栽培装置の構成を表す模式図である。
【符号の説明】
1,1’ 植物栽培装置
2 架台
2a 支柱
2b,2c 梁
3 フック
4,5 灌水樋
6 排水管
7 給水管
8 灌水ポンプ
9 タンク
10 排水管
11 栽培槽
12 固定具
13 セル苗
13a 根鉢
13b 葉茎
14 栽培用袋
14a 苗挿入口
15 保水材
20 植物栽培装置
21 給水管
22a〜22f 電磁開閉弁
23 排水管
24 制御回路
25a〜25f 栽培棚
31,32 給水樋
33 毛管給水材
40 水耕栽培ベッド
41 容器
41a 排水口
42 保水性シート
43 遮根シート
44 排水樋

Claims (10)

  1. 透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、
    及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、
    により構成された栽培槽と、
    前記保水材に水又は養液の灌水を行う灌水装置と、
    を備えていることを特徴とする植物栽培装置。
  2. 前記灌水装置は、
    水平又は緩傾斜をもたせて設置された、水又は養液を通水する灌水樋と、
    前記栽培槽を前記灌水樋の内部に脱着自在に固定する固定具と、
    を備えていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
  3. 前記灌水装置は、
    水平又は緩傾斜をもたせて設置された、水又は養液を通水する給水樋と、
    前記給水樋に平行に配置された灌水樋と、
    前記栽培槽を前記灌水樋の内部に脱着自在に固定する固定具と、
    縦長に形成された吸水性の織布又は不織布からなる毛管給水材と、
    を備えており、
    前記毛管給水材は、両端が前記給水樋と前記灌水樋との樋内に垂れ下がった状態で、前記給水樋と前記灌水樋との間に掛けられていること
    を特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
  4. 前記灌水装置は、
    緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートが敷設されているとともに、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートが敷設された水耕栽培ベッドと、
    前記水耕栽培ベッドの傾斜上方から前記保水性シートに水又は養液を供給する給液機構と、
    前記水耕栽培ベッドの傾斜下方から余剰水又は余剰養液を排液する廃液機構と、
    を備えていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
  5. 透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、
    及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、
    により構成された栽培槽の、前記栽培用袋の苗挿入口に、鉢状に培土が充填された栽培槽において栽培された植物のセル苗を挿入し、
    前記保水材に、水又は養液を供給することによって、前記植物のセル苗に灌水することで植物を栽培すること
    を特徴とする植物栽培方法。
  6. 前記保水材に水又は養液を供給する場合において、
    水平又は緩傾斜をもたせて設置された、水又は養液を通水する灌水樋の内部に、固定具により、前記栽培槽を脱着自在に固定し、
    前記灌水樋に水又は養液を通水し、前記栽培槽の下部を水又は養液に浸すことによって前記保水材に水又は養液を供給すること
    を特徴とする請求項5記載の植物栽培方法。
  7. 前記保水材に水又は養液を供給する場合において、
    水平又は緩傾斜をもたせて設置された、灌水樋の内部に、固定具により、前記栽培槽を脱着自在に固定し、
    前記灌水樋と平行に配置された給水樋に水又は養液を通水するとともに、
    縦長に形成された吸水性の織布又は不織布からなる毛管給水材を両端が前記給水樋と前記灌水樋との樋内に垂れ下がった状態で、前記給水樋と前記灌水樋との間に掛けて、
    前記毛管給水材の内部を水又は養液を毛管移動させることによって前記給水樋から前記灌水樋に水又は養液を供給し、
    前記灌水樋に供給された水又は養液を前記保水材に吸収させることによって、前記保水材に水又は養液を供給すること
    を特徴とする請求項5記載の植物栽培方法。
  8. 前記保水材に水又は養液を供給する場合において、
    緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートが敷設されているとともに、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートが敷設された水耕栽培ベッドの表面に、前記栽培槽を載置して、
    前記水耕栽培ベッドの傾斜上方から前記保水性シートに水又は養液を供給すること
    を特徴とする請求項5記載の植物栽培方法
  9. 透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、により構成された栽培槽の、前記栽培用袋の苗挿入口に、鉢状に培土が充填された栽培槽において栽培された植物のセル苗を挿入し、前記保水材に、水又は養液を供給することによって、前記植物のセル苗に灌水することで栽培された植物を、前記栽培槽ごと運搬すること
    を特徴とする栽培植物の輸送方法。
  10. 透水性を有する素材を用いて縦長袋状に形成され、植物のセル苗を挿入する苗挿入口が形成されている栽培用袋、及び、前記栽培用袋の全長に渡る長さに形成されており、前記栽培用袋の内部に入れられた保水性を有する保水材、により構成された栽培槽の、前記栽培用袋の苗挿入口に、鉢状に培土が充填された栽培槽において栽培された植物のセル苗を挿入し、前記保水材に、水又は養液を供給することによって、前記植物に灌水することで前記植物を成長させることにより、前記植物の根系が前記保水材の内部に形成されていることを特徴とする栽培植物固定体。
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