JP4315576B2 - 超微粉シリカの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超微粉シリカの製造方法、詳しくは、比表面積が高く、粗大粒子があってもそれが著しく少ない超微粉シリカの安価な量産化プロセスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム・樹脂の補強等のために、微細な超微粉シリカが充填されている。超微粉シリカとしては、例えば、四塩化珪素の火炎熱分解法で得られるシリカ(四塩化珪素法シリカ)、珪酸ソーダを原料とする含水珪酸シリカ(珪酸ソーダ法シリカ)などがある。
【0003】
しかしながら、四塩化珪素法シリカは、原料に高価な四塩化珪素ガスを使用するので高価格であり、また珪酸ソーダ法シリカは比較的安価であるが、純度が95%程度と低く、用途に制約を受ける。また、いずれの方法も量産化プロセスとしては必ずしも十分であるとは言えず、高純度超微粉シリカの安価な量産プロセスの開発が待たれていた。
【0004】
そこで、本発明者らは、シリカ粉末と、シリコン等の還元剤と、水とを含む混合原料を高温還元雰囲気下で熱処理を行い、SiOガスの生成とその急冷酸化を行って高純度超微粉シリカを製造する安価プロセスを提案した(特願平11−044508号)。この先行技術は、高純度かつ安価なシリカ原料を用いることができるので、高純度品の量産プロセスとして相応しいが、還元剤を使用するために、均一な混合操作と高温場を還元雰囲気にしなければならないという高度な技術が必要であった。
【0005】
一方、金属シリコンを粉末状態で供給し、その粉塵爆発を利用した超微粉シリカの製造方法も提案(特許第1568168号公報)されているが、この方法では瞬間的に反応が進行するので、系全体としては均質な反応とはなりにくく、未反応成分が残りやすい、広い粒度分布になりやすい等、品質的に安定した超微粉シリカが得られにくい問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高純度かつ高品質の超微粉シリカをより簡単に量産化することのできる安価プロセスを提供することである。本発明の目的は、金属シリコンの酸化燃焼を、気相成分(SiO含有ガス)を発生させる第1反応と、気相成分を酸化冷却しSiO2 とする第2反応の二段階で進行させるべく、第1反応では金属シリコンの噴射速度を適正化して気相成分の発生を均一かつマイルドに行わせ、第2反応では気相成分を急速に酸化冷却して生成するシリカ(SiO2 )粒子の粒成長を抑制することによって達成することができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、金属シリコン粉末を含む水系スラリーを、その突出速度を少なくとも20m/秒以上にして高温場に噴霧し、高温場を通過した反応物を酸素を含むガスで酸化しながら捕集系に導き、100%相当径が5μm以下の微粉末、又は比表面積が35m2/g以上、100%相当径5μm以下の微粉末をを捕集することを特徴とする超微粉シリカの製造方法である。とくに、高温場が化学炎であり、水系スラリーの金属シリコン粉末濃度が5〜60%であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0009】
本発明で用いられる金属シリコン粉末は、高純度であるほど好ましいが、アルミニウムやシリカ等の不純物が最大で10%程度含まれたものであってもよい。金属シリコン粉末の平均粒子径は、数μm〜100μm程度、特に5〜20μmが好ましく、100μm超であると第1反応が不均一になり易くなり、また数μmよりも著しく細かいと、酸化反応が激しくなり、やはり不均一反応となる。その結果、高純度かつ粒径の揃った超微粉シリカを製造することが困難となる。
【0010】
本発明の最大の特徴は、金属シリコン粉末を水系スラリー状態で高温場に噴霧する際、その噴霧時の突出速度を少なくとも20m/秒以上、好ましくは100〜400m/秒とすると共に、発生した気相成分を酸素を含むガスで酸化、好ましくは強制的に酸素を含むガスで酸化冷却することである。水系スラリーの突出速度が20m/秒未満であると、金属シリコン粉末が局所的に酸化反応を起こす、その反応熱を十分に緩和することができなくなる、噴霧時の液滴径が大きくなって粗大粒子が残りやすくなる、等の不都合が生じ、粒径分布のシャープな超微粉シリカを製造することが困難となる。酸素を含むガスによる強制冷却については後述する。
【0011】
金属シリコン粉末の酸化反応は、▲1▼シリコン粒子の表面が酸化してSiOガスとなりそれが酸化してシリカとなる、▲2▼シリコン粒子表面においてSi蒸気が発生し、その蒸気が酸化してシリカとなる、▲3▼シリコン粒子の固相/液相酸化等が考えらる。これらの反応は、シリコン粒子表面が局所的な高温場におかれる酸化反応であるので、制御することは極めて困難である。しかしながら、本発明のように金属シリコン粉末を水系スラリー状態で噴霧すれば、金属シリコン粒子表面は十分な水分ないしは水蒸気で覆われているので、酸化反応をマイルドに、しかも▲2▼の反応よりも▲1▼の反応を優先させて進行させることが可能となる。その結果、粒径の揃った粒径分布のシャープな超微粉シリカを製造することができる。
【0012】
水系スラリーの突出速度を少なくとも20m/秒以上にする別の理由は、金属シリコン粒子の滞留を抑え、金属シリコン粉末の分散を向上させるためである。すなわち、金属シリコン粒子の突出速度が遅く滞留気味になると、酸化反応による熱エネルギーの拡散が不十分となり、極端な場合、粉塵爆発を起こし、全く反応を制御することができなくなる。また、金属シリコン粒子の分散を向上させることは、均質な酸化反応を促進しつつ、反応熱の分散化に寄与することになるので、▲3▼の反応が完全に抑制され、粒径分布のシャープな超微細シリカが得られることになる。
【0013】
ここで、突出速度とは、スラリーがノズルから噴霧される初期線速度と定義され、二流体ノズルを用いて水系スラリーを噴霧する場合は、ノズル先端部の噴霧ガス速度が突出速度となる。
【0014】
水系スラリーの金属シリコン粉末濃度は、5〜60%、特に10〜50%であることが好ましい。金属シリコン粉末濃度が5%未満では、酸化反応そのものはより均質な方向へ進むが、水の蒸発に要するエネルギーが大きくなってエネルギー効率が悪くなり、経済的に好ましくない。一方、金属シリコン粉末濃度が60%超であると、反応熱の拡散が不十分となって反応制御が困難となる、気相成分濃度が高くなって粒成長が起こりやすくなる、水系スラリー中の金属シリコン粒子の分散不良が起こって粒径制御が困難となる、等の不都合が生じる。
【0015】
水系スラリーを構成する溶媒は水であるが、水の数%程度までをエタノール等のアルコールで置き換えても特に問題はなく、むしろ好ましい場合がある。
【0016】
水系スラリーの調製は、金属シリコン粉末と水を容器に所定量投入し、攪拌機でスラリー化するバッチ式、ラインミキサーで連続的にスラリー化する連続式によって行うことができる。水系スラリーの調製の際、水素ガス発生による爆発の防止対策をしておくことはより好ましいことである。本発明においては、検出器(検出限界1000ppm以下)では水素ガスを検出することができなかった。
【0017】
水系スラリーの噴霧法は、二流体ノズル等のスプレー噴霧器、超音波噴霧器、回転円板噴霧器等を用いて行われるが、本発明においては二流体ノズルが量産性、分散性の点で好ましい。二流体ノズルのノズル構造は、スラリー噴霧によって形成される液滴が微小になり、しかも閉塞しづらいものが好ましく、それには、例えばスラリー噴霧先端開口部の口径を2mm以上とすることが好ましい。
【0018】
水系スラリーの高温場への噴霧量は、高温場における金属シリコン濃度が概ね100g/m3 以下となる量が好ましい。100g/m3 よりも著しく多量になると、噴霧時の突出速度を限定した理由と同様、金属シリコン粉末の酸化反応による局所的な反応熱を十分に緩和することができなくなり、広い粒径分布のシリカ粉末となる。しかしながら、原料シリコン濃度が100g/m3 を超えて噴霧した場合でも、高温場に積極的に空気等の希釈ガスを送給することによってこの問題を解消することができる。
【0019】
ここで、高温場での金属シリコン濃度とは、単位時間あたりの金属シリコン供給量を、高温場に供給した単位時間あたりの温度補正された完全燃焼状態のガス量で除した値である、と定義される。
【0020】
本発明における高温場は、電気加熱方式、又は可燃性ガスのバーナー燃焼方式(化学炎)等によって形成させることができるが、量産性、酸化性雰囲気、エネルギー効率の点で燃焼方式が好ましい。その際の可燃性ガスとしては、水素、LPG、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等が使用され、またその助燃ガスとしては、空気、酸素が使用される。化学炎の大きさ、温度等の調整はバーナーの大きさ、可燃性ガス、助燃ガス流量等によって調整することができる。
【0021】
高温場を形成する炉は、水冷ジャケット方式の金属製炉体でも構わないが、炉内の温度分布が広くなり、反応が不均一になりやすいため、内壁をアルミナ等の耐火物で保温した断熱方式の炉体が好ましい。また、炉体は、横型炉、竪型炉のいずれでもよいが、炉内への粉体付着防止、火炎の安定性等の連続安定操業性の点で竪型炉が好ましい。
【0022】
次に、本発明における第2反応、すなわち高温場を通過した気相成分を、酸素を含むガスで酸化させる、好ましくは酸素を含むガスで強制的に冷却しながら酸化させることについて説明する。
【0023】
高温場を通過した気相成分には、SiOガスが含まれている。第2反応では、その成分を酸素を含むガスで酸化させてシリカを析出させるものである。その酸化方法としては、捕集系はブロワーで吸引されており、炉内は負圧状態になっているので、例えば竪型炉体の炉頂部に一定の開口面積を持つ導入孔を設け、そこから空気を吸引させ、空気を系内に導入することによって行うことができる。その際、析出するシリカの粒成長を阻止し、粒径分布のシャープな超微粉シリカを製造するために、酸素を含むガスを用いて気相成分(SiO含有ガス)を効率良く、強制冷却しながら酸化させることがより好ましい。この操作は、空気等の酸素を含むガスを、上記吸引された空気とは別に積極的に導入することによって行うことができる。たとえば、高温場を通過した炉体位置の炉壁の一部に導入孔を設け、そこから空気等の酸素を含むガスを導入することによって行うことができる。この導入孔の位置と吸引されるガス量によって、平均粒子径、比表面積を調整することができる。酸素を含むガス流量を多くするか、その導入位置を第1反応が完了した直後近傍にするか、又はその両方によって、比表面積を高くすることができる。とくに、燃焼方式による場合は、化学炎を通過したSiO含有ガスは、まだ1600℃程度以上の高温になっているので、火炎の終わりからわずかに離れた部分から酸素を含むガスを供給し、強制冷却させるほど比表面積は高くなる。
【0024】
酸素を含むガスの導入量は、所望する超微粉シリカによって、一概に決定することができないが、概ね、反応を終えた炉内下部の段階で、捕集ガスが1000〜1400℃程度の温度になる量を導入することが望ましい。
【0025】
炉内で生成したシリカ粉末は、燃焼ガス等の排気ガスと共にブロワー等で吸引され、捕集系に送られて捕集される。捕集器としては、パルスエアーを用いた逆洗方式のバグフィルター、電気集塵機等の一般的な捕集器が利用できる。これらの操業条件を調節することによって、所望粒度分布の超微粉シリカを容易に捕集することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0027】
燃焼方式により、超微粉シリカを製造した。用いた燃焼炉は、LPG−酸素混合型バーナー3本が炉頂部に正三角形の位置に設置されたものであり、各々のバーナーの中心部には更に水系スラリー噴射用の二流体ノズルが取り付けられている。そして、二流体ノズルの中心から水系スラリーが、またその周囲から酸素がそれぞれ火炎に噴射される。火炎の形成は、二流体ノズルの外側に設けられたバーナー噴射口の細孔からLPG−酸素の混合ガスが噴射されることによって行われ、LPGと酸素ガス量の制御によって化学炎の長さと温度等が調整される。二流体ノズルとバーナー噴射口の間にはカーテン酸素孔と称する付着防止を目的としたリング状のガス孔があり、そこから酸素ガスが供給されている。また、第2反応を進行させると共に、炉壁への付着防止と粉塵の局所的な滞留を抑制することを目的として、炉頂部には空気導入孔が設けられており、ブロワーの吸引とその導入孔の開閉度を調整して空気導入量が制御される。
【0028】
第1反応工程部(バーナー端面からその下方1500mmまでの距離)の内壁はアルミナ質断熱材で保護され、第2反応工程部(バーナー端面の下方1500mmの位置から3000mm)には、バーナー端面から1600mmの位置(A位置)に4方から酸素を含むガス導入孔が炉体面に対し60度の角度で配設されている。酸素を含むガス(空気)の導入量は、排気系のブロワー吸引と該導入孔のバルブ操作で調整される。同様にバーナー端面から1900mmの位置(B位置)にも酸素を含むガス導入孔が設けられている。生成物は、ブロワーで捕集系に送られ、超微粉シリカはバグフィルターで捕集される。
【0029】
実施例1〜8 比較例1
金属シリコン粉末(平均粒子径10μm、最大粒子径100μm)と純水と種々の割合で配合し、容器にて1時間攪拌混合して、表1に示す金属シリコン粉末濃度の異なる水系スラリーを調製した。
【0030】
実施例1〜4、実施例6〜8においては、水系スラリーを各二流体ノズル(アトマックス社製「型番BNH500S−IS」、水系スラリー噴霧先端開口部の口径4.5mm、噴霧用ガスのノズル先端部径8.8mm、噴霧用ガスのノズル先端部面積約44.9mm2)の中心から、燃焼炉の火炎中に40kg/hの割合で噴射した。噴射には、各々ゲ−ジ圧0.25MPa、ガス量約28Nm3 /hの酸素ガスを使用し、水系スラリー供給にはチューブポンプを用いた。
【0031】
一方、バーナーからは、LPG:7Nm3/hと酸素ガス:21Nm3/hの混合ガスを、カーテン酸素孔から5Nm3 /hの酸素ガスを噴射した。炉頂部空気導入孔からは400Nm3/hの空気を導入すると共に、第2反応工程部の酸素を含むガス導入孔(A位置、B位置)から表1に示す種々の条件で空気を導入した。
【0032】
また、実施例5では酸素ガス量を12Nm3/h、比較例1では酸素ガス量を2Nm3/hとした。比較例1では脈動状態で燃焼していた。
【0033】
比較例2
金属シリコン粉末を水系スラリーで供給する代わりに粉末で供給したこと以外は、実施例1に準じてシリカ粉末を製造した。粉末での供給は、原料ホッパーからテーブルフィーダーにて20kg/hの割合で金属シリコン粉末を輸送した。輸送用キャリアガスとして40Nm3/hの窒素ガスを用い、バーナー中心部の内径21.6mmのフィード管より供給した。
【0034】
得られたシリカ粉末の比表面積と粒径分布(平均粒子径D50、100%相当径D100)の測定結果を表2に示す。比表面積はBET1点法で、粒径分布はコールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(商品名「LS−230」)を用いて測定した。
【0035】
上記実施例と比較例で得られたシリカ粉末は、いずれも完全に酸化した白色球状粉末であり、一部炉体等への付着があったが、90%以上の回収率であった。また、走査型電子顕微鏡による形態観察の結果によれば、主にサブミクロンないしは更に小さい超微粒子から構成された粉末であることが確認された。さらに、X線回折分析による結晶相の同定の結果、非晶質状態であることが確認された。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、比表面積が高く、サブミクロンを主体とする100%相当径が5μm以下で、粗大粒子のない超微粉シリカを容易に製造することができる。
Claims (3)
- 金属シリコン粉末を含む水系スラリーを、その突出速度を少なくとも20m/秒以上にして化学炎の高温場に噴霧し、化学炎の高温場を通過した反応物を酸素を含むガスで酸化しながら捕集系に導き、100%相当径が5μm以下の微粉末を捕集することを特徴とする超微粉シリカの製造方法。
- 比表面積が35m2/g以上、100%相当径5μm以下の微粉末を捕集することを特徴とする請求項1記載の超微粉シリカの製造方法。
- 水系スラリーの金属シリコン粉末濃度が5〜60%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の超微粉シリカの製造方法。
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