JP4314795B2 - セラミック電子部品の焼成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック電子部品の焼成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック電子部品の焼成においては、所望の特性を安定して得るために焼成雰囲気の制御を行う必要があり、炉内に雰囲気ガスを供給することが一般に行われる。従来技術としては、特許第3043275号公報に開示される技術がある。これは、複数段の被焼成体が積載された各棚板間に独立したガス供給管から雰囲気ガスを供給するものである。このようにすることで、各段の被焼成体に対し均一かつ満遍なく雰囲気ガスを供給することができるので、被焼成体の品質バラツキが生じにくく、製品収率が向上するという効果を有するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セラミックスの焼成雰囲気の制御においては、新鮮な雰囲気ガスの供給のみが望まれるのではない。焼成時に被焼成体からの揮発によって生成する雰囲気、とくにAg、Bi、Pbなどの雰囲気を保つこと、またはそれらの蒸気圧のバラツキを少なくすることが重要である。
【0004】
上記文献等の従来技術は、被焼成体に新鮮な雰囲気ガスを供給することを目的としているが、被焼成体からの揮発によって生成する雰囲気を保つことは考慮されていない。
【0005】
ところが、被焼成体からの揮発によって生成する雰囲気を保つために、単純に雰囲気ガスの供給流量を小さくした場合、炉内の対流が不十分となり、温度バラツキ、雰囲気バラツキが生じることになる。
【0006】
他方、炉内の温度バラツキを改善するために、単純に雰囲気バスの供給流量を大きくした場合、被焼成体からの揮発によって生成する雰囲気を保つことが困難になる。
【0007】
このように、たがいに相反する関係にある、被焼成体からの揮発によって生成される雰囲気の確保と、被焼成体周囲の温度バラツキの改善の双方を実現することが本発明の課題である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する手段について検討した結果、焼成炉内に間欠的に雰囲気ガスを供給する、あるいは、周期的に雰囲気ガスの供給流量を変化させることが有効であることを明らかにした。
【0009】
すなわち、本発明のセラミック電子部品の製造方法は、焼成時に揮発する成分を含有するセラミック成形体を焼成炉内に設置し、脱バインダーした後、焼成炉内へ雰囲気ガスを供給しながら焼成する工程を備えたセラミック電子部品の焼成方法であって、前記セラミック成形体が、少なくともAgを含有する内部導体層と、Ni、Cu、Zn元素を含有するフェライトを主成分とする未焼成セラミック層とを積層したセラミック成形体であり、前記揮発する成分の少なくとも一種がAgであり、前記焼成する工程において、前記雰囲気ガスがエアーであり、前記エアーからなる雰囲気ガスの供給流量を周期的に変動させることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック電子部品の製造方法は、炉室内の雰囲気ガスの対流による焼成温度バラツキ改善や、焼結に必要な新鮮な雰囲気ガスの供給の目的を果たしつつ、例えばAg、Pb、Bi等の、被焼成体からの揮発により生成する雰囲気を損なわない焼成方法である。
【0014】
すなわち、焼成炉内へ供給する雰囲気ガスの流量を周期的に変化させることにより、全ての被焼成体位置にガスを到達かつ対流させるとともに、被焼成体からの揮発により生成する雰囲気が、フレッシュガスの過剰な流入によって希薄になることを抑制する、という特徴がある。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例はいずれもセラミックにNi−Cu−Znフェライト、内部導体にAgを用いた積層インピーダンス素子である。
(1)実施例1
各素原料を秤量し、それらを湿式混合、乾燥して、トンネル炉で2時間仮焼した。その後、仮焼粉を予備粉砕し、スラリー調整に使用する仮焼原料とした。
【0016】
撹拌槽に、純水、分散剤、および上述の仮焼原料を投入した。所定時間ボールミルで撹拌し、所定の比表面積になるまで粉砕した。粉砕後のスラリーに、バインダー、可塑剤、湿潤剤を投入し、更にボールミルで混合した。混合後、消泡剤を投入し、真空脱泡器でスラリー中の気泡を除去した。
【0017】
得られたスラリーを、ドクターブレード法により、所定のシート厚みになるように成形した。その後、セラミックグリーンシートを所定の寸法にカットし、そのシート上に、Agペーストを用いて所定の形状の内部導体パターンをスクリーン印刷法により形成した。
【0018】
上述の内部導体を印刷したセラミックグリーンシートを、内部導体がビアホールを介してコイル状になるように、所定の順序で積層し、さらに最上層、最下層には内部導体を印刷していないセラミックグリーンシートを積層した。この積層体を熱圧着した。得られた成形体をバッチ式雰囲気焼成炉内に設置し、脱バインダーした後、焼成した。雰囲気ガスはエアーとし、後述の方法で供給した。
【0019】
図1は、本実施例にて用いた焼成炉の模式的横断面図である。焼成炉1の炉室2には台7が据え付けられており、台7の上に複数個のさや6が設置されている。さや6には被焼成体5が設置されている。さや6は内部に雰囲気ガスが流入するように側面の一部が開放されいる。焼成炉1は被焼成体5の近傍に雰囲気ガスを流すためのガス供給管4を有しており、さらにガス流量を周期的に変化させるためのマスフローコントローラー3を有している。8は雰囲気ガスの流れを示している。
【0020】
図3に雰囲気ガスの流量変化のパターンを示す。図3に示すように、毎分炉内容積の40%の流量と毎分炉内容積の5%の流量を周期的に切り替えた。このときの雰囲気ガスの流れのイメージを図2に示す。図2(a)のように、雰囲気ガスの流量が最大のとき(毎分炉内容積の40%のとき)、ガス流速が最小となる被焼成体位置、すなわちガス供給管から最も遠い被焼成体位置9でガス流速が0.01m/秒以上である。一方、図2(b)のように、雰囲気ガスの流量が最小のとき(毎分炉内容積の5%のとき)、ガス流速が最大となる被焼成体位置、すなわちガス供給管から最も近い被焼成体位置10でガス流速が0.05m/秒以下である。なお、被焼成体の近傍でガス流速が3.5m/sを超えると、風圧により被焼成体が動きやすくなり、好ましくない。
【0021】
得られた積層インピーダンス素子の100MHzにおけるインピーダンス、および直流抵抗値RDCを測定した。
【0022】
同一バッチ内で焼成したサンプル(n=30)のインピーダンスバラツキ(CV値)、および直流抵抗値RDCの不良率を比較例とともに表1に示す。ここで、比較例1は雰囲気ガスの供給流量をコンスタントに毎分炉内容積の5%とした場合である。また、比較例2は雰囲気ガスの供給流量をコンスタントに毎分炉内容積の40%としたことにより、ガス供給間から最も遠い被焼成体の近傍においてガスの流速が常に0.05m/秒以上となる場合である。
【0023】
インピーダンスバラツキは実施例1の方が比較例1に比べ小さい。これは、比較例1では炉室内の雰囲気ガスの対流が不十分なため、温度分布が不均一となって被焼成体間で焼結性のバラツキが生じ、これに起因してインピーダンスバラツキが増大したためである。
【0024】
また、直流抵抗RDCの不良率は実施例1の方が比較例2に比べて小さい。これは、比較例2の一部の積層インピーダンス素子において、端面の一部で内部導体のAgの揮発したことにより直流抵抗値が変動したためである。これに対し、実施例1では、Agの揮発が抑制されたことにより、同一バッチ内での直流抵抗値の分布が正常であり、不良が生成しなかった。
【0025】
上述の結果をまとめると以下のようになる。すなわち、焼成の過程で内部導体のAgが揮発し、特性に悪影響を及ぼすことが懸念される。これは雰囲気ガスの供給流量が大きい場合、被焼成体近傍に雰囲気ガスが過剰に流入しAg雰囲気が希薄になるためである。これに対し、雰囲気ガスの供給流量を周期的に変化させた場合、被焼成体近傍のAg雰囲気の希薄化を防ぐことによりAgの揮発を抑制できる。
【0026】
また、雰囲気ガスの供給流量を周期的に変化させれば、間欠的に十分なガス流速が得られるので炉室内の雰囲気ガスが十分に対流し、炉室内の温度のバラツキを低減できる。したがって同一焼成バッチにおける焼結体間の特性バラツキを低減することができる。
(2)実施例2
実施例1と同様の工程にて作製した成形体を図1に示すバッチ式雰囲気焼成炉に設置し、脱バインダーした後、雰囲気ガスをエアーとして焼成を行った。図4に示すように、雰囲気ガスの流量は、毎分炉内容積の40%の流量と供給停止を周期的に切り替えるパターンとした。雰囲気ガスの炉内への供給−停止はソレノイドバルブのON-OFFにより行った。
【0027】
得られた積層インピーダンス素子の100MHzにおけるインピーダンス、および直流抵抗値RDCを測定した。
【0028】
同一バッチで焼成したサンプル(n=30)のインピーダンスバラツキ(CV値)、および直流抵抗値RDCの不良率を表1に示す。実施例1と同様、実施例2もインピーダンスのバラツキは比較例1に比べ小さい。また、直流抵抗値の不良率は比較例2に比べて小さくなっている。
【0029】
以上の結果から、図4の流量変化のパターンにおいても、炉室内の雰囲気ガスが十分に対流することで炉室内の温度のバラツキが低減し、焼結体間の特性バラツキを低減する効果を有することが明らかである。また、被焼成体近傍のAg雰囲気の希薄化を抑えることにより、内部導体のAgの揮発を抑制する効果を有することが明らかである。
(3)実施例3
実施例1と同様の工程にて作製した成形体を図1に示すバッチ式雰囲気焼成炉に設置し、脱バインダーした後、雰囲気ガスをエアーとして焼成を行った。このとき、雰囲気ガスの流量変化のパターンは図5に示すようにした。すなわち、最大流量を毎分炉内容積の40%、最小流量を毎分炉内容積の5%とし、流量が時間とともに徐々に変動するパターンとした。
【0030】
得られた積層インピーダンス素子の100MHzにおけるインピーダンス、および直流抵抗値RDCを測定した。
【0031】
同一バッチで焼成したサンプル(n=30)のインピーダンスバラツキ(CV値)、および直流抵抗値RDCの不良率を表1に示す。実施例1と同様、実施例3もインピーダンスバラツキは比較例1に比べ小さい。また、直流抵抗値の不良率は比較例2に比べて小さくなっている。
【0032】
以上の結果から、図5の流量変化のパターンにおいても、炉室内の雰囲気ガスが十分に対流することで炉室内の温度のバラツキが低減し、焼結体間の特性バラツキを低減する効果を有することが明らかである。また、被焼成体近傍のAg雰囲気の希薄化を抑えることにより、内部導体のAgの揮発を抑制する効果を有することが明らかである。
【0033】
さらに、炉の種類によっては、急激に雰囲気ガスを投入したときオバーシュートが起こり、被焼成体が飛び散ることがあるが、本実施例のように雰囲気ガスの流量を徐々に変化させれば、被焼成体の飛び散りを防止することができる。
【0034】
なお、本発明において雰囲気ガスはエアーに限定されるものではなく、被焼成体の焼成に適した雰囲気、例えばN2、O2、H2、H2Oあるいはこれらのうちの2種以上の混合ガスなど、種々の雰囲気ガスを使用することができる。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
以上述べてきた本発明のセラミック電子部品の焼成方法のように、焼成炉内に間欠的に雰囲気ガスを供給する方法、または周期的に雰囲気ガスの供給流量を変化させる方法によれば、たがいに相反する関係にある、被焼成体からの揮発によって生成される雰囲気の確保と、被焼成体周囲の温度バラツキの改善の双方を実現することが可能となる。これにより、セラミック電子部品の特性バラツキを低減し、良品率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】図1の実施例を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例における雰囲気ガスの流量変化を示す図である。
【図4】本発明の別の実施例における雰囲気ガスの流量変化を示す図である。
【図5】本発明の別の実施例における雰囲気ガスの流量変化を示す図である。
【符号の説明】
1 焼成炉
2 炉室
3 マスフローコントローラー
4 ガス供給管
5 被焼成体
6 さや
7 台
8 ガスの流れ
9 ガス供給管から最も遠い被焼成体位置
10 ガス供給管から最も近い被焼成体位置
Claims (1)
- 焼成時に揮発する成分を含有するセラミック成形体を焼成炉内に設置し、脱バインダーした後、焼成炉内へ雰囲気ガスを供給しながら焼成する工程を備えたセラミック電子部品の焼成方法であって、
前記セラミック成形体が、少なくともAgを含有する内部導体層と、Ni、Cu、Zn元素を含有するフェライトを主成分とする未焼成セラミック層とを積層したセラミック成形体であり、前記揮発する成分の少なくとも一種がAgであり、
前記焼成する工程において、前記雰囲気ガスがエアーであり、前記エアーからなる雰囲気ガスの供給流量を周期的に変動させることを特徴とする、セラミック電子部品の焼成方法。
Priority Applications (1)
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JP2002245914A JP4314795B2 (ja) | 2002-08-26 | 2002-08-26 | セラミック電子部品の焼成方法 |
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