JP4314645B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被検体に扇形状X線ビームが照射されるのに伴って多チャンネル型X線検出器から出力されるX線検出データに基づきコンピュータ断層画像(CT画像)を最終的に得るX線CT装置に係り、特にCT画像にアーティファクト(偽像)が出現することを阻止するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、病院等で使われているX線CT装置は、図11に示すように、天板60の上の被検体Mへコリメータで整形された扇形状X線ビーム(適宜「ファンビーム」と略記)FBを照射するX線管61と、チャンネルコリメータにより定まる受持ち分の透過X線をそれぞれ検出する多数個のX線検出素子がファンビームFBの広がりに沿って配列されている多チャンネル型X線検出器62と、X線管61およびX線検出器62を天板60の上の被検体Mを挟んで対向する状態を維持したまま被検体Mの体軸Zまわりを回転させられるようにして装備しているガントリ63を備えている他、X線管61が被検体Mの体軸(紙面に垂直な方向の軸)Zまわりに矢印RA,RBの示す向きに回りながらファンビームFBを照射するのに伴ってX線検出器62から出力されるX線検出データに画像信号処理を施してCT画像用の画像再構成を行う画像再構成部(図示省略)等を備えている。普通、ガントリ63は傾斜させずにファンビームFBを被検体Mの体軸Zに対して直角に照射してX線撮影するが、状況によっては、ガントリ63を傾斜させてファンビームFBを被検体Mの体軸Zに対して斜めに照射してX線撮影することもある。
【0003】
また、図11に示す従来装置の多チャンネル型X線検出器62は、固体素子式の多チャンネル型X線検出器である。すなわち、X線検出器62は、図12に示すように、X線検出素子が固体検出素子64であって、チャンネルコリメータ65が、固体検出素子の表側における各チャンネル境界位置に配設されたX線区切り用プレート65aからなる構成である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のX線CT装置の場合、後に詳述するように、ガントリ63の回転、あるいは傾斜に伴って、X線管61の焦点が変位することに起因して、CT画像に弧状のアーティファクトが出現するという問題がある。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、CT画像へのアーティファクト出現を阻止することのできるX線CT装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、請求項1の発明のX線CT装置は、天板の上の被検体に扇形状X線ビームを照射するX線管と、チャンネルコリメータにより定まる受持ち分の透過X線をそれぞれ検出する多数個のX線検出素子が扇形状X線ビームの広がりに沿って配列されている多チャンネル型X線検出器と、X線管およびX線検出器を天板上の被検体を挟んで対向する状態を維持したまま被検体の体軸まわりを回転させられるようにして装備しているガントリとを備えているとともに、X線管が被検体の体軸まわりを回りながら扇形状X線ビームを照射するのに伴ってX線検出器から出力されるX線検出データに画像信号処理を施してCT画像用の画像再構成を行う画像再構成手段を備えているX線CT装置において、X線管が被検体の体軸まわりを回る時にX線検出器に対するX線管の焦点位置が変化することにより生じるX線検出データの変動量とX線管の回転角度との関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率を予め記憶する回転変動特性記憶手段を備えているとともに、画像再構成手段は、回転変動特性記憶手段に記憶されているX線検出データの変動量とX線管の回転角度として前記比率で実際の各X線検出データを乗算することで、X線管の回転によるX線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データのエラー変動を消去する補正演算を画像信号処理で行うよう構成されている。
【0007】
(削除)
【0008】
さらに、上記課題を達成するために、請求項2の発明のX線CT装置は、天板の上の被検体に扇形状X線ビームを照射するX線管と、チャンネルコリメータにより定まる受持ち分の透過X線をそれぞれ検出する多数個のX線検出素子が扇形状X線ビームの広がりに沿って配列されている多チャンネル型X線検出器と、X線管およびX線検出器を天板上の被検体を挟んで対向する状態を維持したまま被検体の体軸まわりを回転させられるようにして装備しているガントリとを備えているとともに、X線管が被検体の体軸まわりを回りながら扇形状X線ビームを照射するのに伴ってX線検出器から出力されるX線検出データに画像信号処理を施してCT画像用の画像再構成を行う画像再構成手段を備えているX線CT装置において、X線管からの扇形状X線ビームが被検体に対し斜めに照射されるようガントリを傾斜させるガントリ傾斜手段と、X線管の被検体の体軸まわりの回転あるいはガントリの傾斜が行われる時にX線検出器に対するX線管の焦点位置が変化することにより生じるX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度との関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率を予め記憶する回転傾斜変動特性記憶手段を備えているとともに、画像再構成手段は、回転傾斜変動特性記憶手段に記憶されているX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度との関係として前記比率で実際の各X線検出データを乗算することで、X線管の回転およびガントリの傾斜によるX線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データのエラー変動を消去する補正演算を画像信号処理で行うよう構成されている。
【0009】
また、請求項3の発明のX線CT装置は、請求項1または請求項2に記載のX線CT装置において、多チャンネル型X線検出器は、X線検出素子が固体検出素子であって、チャンネルコリメータが、固体検出素子のX線入射側における各チャンネル境界位置に配設されたX線区切り用プレートからなる固体素子式の多チャンネル型X線検出器である。
【0010】
〔作用〕
次に、この発明のX線CT装置によるX線撮影におけるアーティファクト阻止作用について説明する。
請求項1のX線CT装置では、X線撮影の際、X線管が被検体の体軸まわりを回りながら扇形状X線ビームを照射すると同時に、扇形状X線ビームの照射に伴ってX線検出器から出力されるX線検出データを収集する。そして、CT画像用の画像再構成のために、画像再構成手段により収集したX線検出データに施す画像信号処理において、回転変動特性記憶手段に予め記憶させてあるX線検出データの変動量とX線管の回転角度の関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率で、実際の各X線検出データを乗算することで、補正演算を行うことにより、X線管の回転によるX線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する。
【0011】
すなわち、X線管が1回転する間、X線検出器に対するX線管の焦点位置はX線管の回転角度に応じて刻々と変わる。このX線管の焦点位置の変動に従って、各X線検出素子に入射する透過X線量も刻々変化するので、X線検出データの変動として撮影対象部位のX線吸収による真の変動の他に、X線管の回転による焦点位置の変化に起因するエラー変動が加わる。このX線検出データにおけるエラー変動はアーティファクトを引き起こす。これに対し、請求項1のX線CT装置では、予め記憶してあるX線検出データの変動量とX線管の回転角度の関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率で、実際の各X線検出データを乗算することで、補正演算を行うことにより、アーティファクトを引き起こすX線検出データのエラー変動を消去する。
【0012】
(削除)
【0013】
請求項2のX線CT装置も、ガントリ傾斜手段によりガントリを傾斜させて撮影することが出来る。この請求項2のX線CT装置の画像再構成手段は、X線検出データの画像信号処理の際、回転傾斜変動特性記憶手段に予め記憶されているX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度との関係に従って補正演算を行うことにより、X線管の回転およびガントリの傾斜によるX線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する。
すなわち、X線管が1回転する間、X線検出器に対するX線管の焦点位置がX線管の回転角度とガントリの傾斜角度の両方に応じて刻々変化し、X線管の焦点位置は変動する。このX線管の焦点位置の変動に従って、各X線検出素子に入射する透過X線量も変化するので、X線検出データの変動として撮影対象部位のX線吸収による真の変動の他に、X線管の回転による焦点位置の変化に起因するエラー変動が加わる。このエラー変動はアーティファクトを引き起こす。これに対し、請求項2のX線CT装置では、予め記憶してあるX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度の関係として前記比率で実際の各X線検出データを乗算することで、補正演算を行うことによって、アーティファクトを引き起こすX線検出データのエラー変動を消去する。
【0014】
また、請求項3のX線CT装置では、X線検出素子が固体検出素子である固体素子式の多チャンネル型X線検出器が用いられている。固体素子式のX線検出器の場合、固体素子式のX線入射側における各チャンネル境界位置にチャンネルコリメータを構成するX線区切り用プレートが設置されていて、X線区切り用プレートの底に固体検出素子が位置する関係上、X線管の回転やガントリの傾斜によるX線管の焦点位置の変化によってX線入射量の変化が大きく変化して、X線検出データに顕著なエラー変動が生じる。しかし、この顕著なエラー変動も、X線検出データに対する画像信号処理で行われる補正演算でやはり除去される。
【0015】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は実施例に係るX線CT装置の全体構成を示すブロック図、図2は実施例装置の固体素子式の多チャンネル型X線検出器の要部構成を示す模式図、図3は実施例装置のガントリの傾斜状況を示す正面図である。
図1のX線CT装置は、天板1の上の被検体Mにファンビーム(扇形状X線ビーム)FBを照射するX線管2と、図2に示すように、チャンネルコリメータ4により定まる受持ち分の透過X線をそれぞれ検出する多数個のX線検出用の固体検出素子5がファンビームFBの広がりに沿って配列されている固体素子式の多チャンネル型X線検出器3と、X線管2およびX線検出器3を天板1の上の被検体Mを挟んで対向する状態を維持したまま被検体Mの体軸Zまわりを回転させられるようにして装備するガントリ6とを備えている。
【0016】
X線撮影の際、被検体Mを載せたまま天板1が、ガントリ6のトンネル6aに進入したり、あるいはトンネル6aから退出したりする構成となっている。なお、天板1の移動は天板駆動部7のコントロールにより行われる。
また、X線管2とX線検出器3はガントリ6の内側に配置されているとともに、回転リングRGでX線管2とX線検出器3とが結合されていて、撮影系回転駆動部8による回転リングRGの回転に従って、対向配置状態を維持したまま被検体Mの体軸Zまわりを矢印RA,RBの示す向きにX線管2とX線検出器3が回る構成になっている。さらに、X線管2は、回転中、高電圧発生器などを含むX線照射制御部9のコントロールにより、管電圧・管電流等の設定照射条件に従ってファンビームFBを被検体Mに照射する構成にもなっている。
【0017】
一方、被検体Mからの透過X線を検出するX線検出器3では、図2に示すように、固体検出素子5のX線入射側における各チャンネル境界位置に配設されたX線区切り用プレート4aがチャンネルコリメータ4を構成する。これらX線区切り用プレート4aによって不要な散乱X線の入射が阻止される。通常、X線検出器3のチャンネル数は1000前後である。X線検出器3の固体検出素子5は、特定の素子に限られるものではないが、例えば透過X線を光に変換するシンチレータ層とシンチレータ層で変換された光の強度を検出する光検出デバイスとを組み合わせた素子が例示される。
通常、ファンビームFBの広がりに沿って配列されている固体検出素子5が幾つか纏めて形成された基板が必要な数だけ繋ぎ合わされてX線検出器3が構成されている。また、固体検出素子5は必ずしも1列構成に限られず、被検体Mの体軸Zの方向にも固体検出素子が隣接している複数列構成であってもよい。各固体検出素子5によって得られるX線検出データは、データ収集部10によって収集される。
【0018】
また、実施例装置の場合、図3に示すように、通常はガントリ6は傾斜せずに直立しており、被検体Mの体軸Zに対して垂直方向からファンビームFBを照射するのであるが、ガントリ6を撮影中心Ma付近を支点として頭側ないし足側へ倒す向きに傾斜させることにより、被検体Mの体軸Zに対して斜め方向からファンビームFBを照射できるようにも構成されている。ガントリ6を頭側へ倒せばファンビームFBは傾斜角度θa分だけ斜めに照射され、ガントリ6を足側へ倒せばファンビームFBは傾斜角度θb分だけ斜めに照射されることになる。このガントリ6の傾斜はガントリ傾斜駆動部11のコントロールにより行われる。
なお、上記の天板駆動部7や撮影系回転駆動部8、X線照射制御部9およびガントリ傾斜駆動部11によるコントロールは、いずれも、キーボード12やマウス13による入力操作等に伴って撮影制御部14から送出される指令信号に従って行われる。
【0019】
X線撮影の実行中、回転するX線管2からのファンビームFBの照射に伴ってX線検出器3から出力されるX線検出データはデータ収集部10により収集された後、データをディジタル化するAD変換部15へ送られる。AD変換部15の後には、X線検出データを記憶する検出データメモリ16および画像再構成部17とCT画像メモリ18が設けられている。データ収集部10により収集されたX線検出データは、検出データメモリ16に一旦格納されてから、適時に読み出され、画像再構成部17によりX線検出データの画像信号処理が施されてCT画像用の画像再構成が行われる。さらに、キーボード12やマウス13による入力操作等で指定された断面に関するCT画像信号が、CT画像メモリ18に格納されるとともに、表示モニタ19の画面に指定断面のCT画像が映し出されるよう構成されている。
また、表示モニタ19による画像表示に加えて、CT画像信号が、フィルムイメージャー等と呼ばれる画像焼付け記録部(図示省略)によりシートに焼き付けられてX線写真として出力されたり、メモリディスク(図示省略)に格納保存されたりするような構成であってもよい。
【0020】
そして、実施例のX線CT装置は、次の顕著な特徴点を備えている。すなわち、実施例装置は、X線管2の回転あるいはガントリ6の傾斜によってX線検出器3に対するX線管2の焦点位置が変化することにより生じるX線検出データの変動量とX線管2の回転角度θrおよびガントリ6の傾斜角度θa,θbとの関係(回転傾斜変動特性)を予め記憶する補正データテーブル(回転傾斜変動特性記憶手段)20および補正データテーブル20に記憶されている補正データの中からX線検出データの補正演算に必要な補正データを読み出す補正データ読み出し部21を備えているとともに、画像再構成部17が、補正データテーブル20に記憶されている回転傾斜変動特性に従ってX線管2の回転およびガントリ6の傾斜によるX線管2の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する補正演算を画像信号処理で行う構成となっている。以下、この顕著な特徴点について詳述する。
【0021】
X線管2には、図4に示すように、自重による重力Gfが回転の有無にかかわらず常に作用しているとともに、回転時には回転によって生じる遠心力Hfも作用する。これらX線管2に作用する重力Gfおよび遠心力Hfの向きがX線管2の回転角度θrに応じて大きく変化するので、X線管2に作用する全ての力の合成力TfはX線管2の回転角度θrに応じて大きく変化することになる。このように、X線撮影実行中、X線管2の回転角度θrに応じてX線管2に作用する合成力Tfが大きく変化すると、X線検出器3に対するX線管2の焦点位置が相応に変化する。
【0022】
また、ガントリ6を傾斜させた場合、図5に示すように、X線管2に作用する重力Gfの向きが傾斜角度θa,θbに応じて変化する。特にX線管2のターゲットが非常に重いので、ガントリ6の傾斜によりX線管2に作用する重力Gfの向きが変わるだけで、ターゲットとフィラメントの位置関係が変化してX線管2の焦点位置が変わってしまう。勿論、X線管2を回転させた時には、X線管2に加わる重力Gfおよび遠心力Hfの向きがX線管2の回転角度θrに応じて変化する。その結果、ガントリ6を傾斜させてX線撮影を実行する間、回転するX線管2に作用する全ての力の合成力TfはX線管2の回転角度θrおよび傾斜角度θa,θbの両方に応じて大きく変化し、これに伴ってX線管2の回転陽極の支持軸などが変形することに起因して、X線検出器3に対するX線管2の焦点位置もやはり相応に変化する。
【0023】
上記のように、X線検出器3に対するX線管2の焦点位置が変化すると、X線検出データ(の強度)が変わってしまう。すなわち、図6に示すように、ファンビームFBの受持ち分全体が固体検出素子5にちょうど入射するようにX線管2の焦点を位置Naにセットしておいても、X線撮影実行中に焦点が位置Nbへ変化すると、仕切りプレート6aに遮られてファンビームFBの影(図6の中の斜線領域)が出来て、ファンビームFBの一部が固体検出素子5へ届かずに入射できなくなる。この入射できないファンビームFBの一部の分だけX線検出データの強度が下がる。
すなわち、X線管2が1回転する間、回転角度θrの変化に連れてX線検出器3に対するX線管2の焦点位置も時々刻々変化するので、X線検出データの変動として撮影対象部位のX線吸収による真の変動の他に、X線管の焦点位置の変化に起因するエラー変動が加わる。このX線検出データのエラー変動を解消せずに画像再構成を行うと、最終的なCT画像に弧状のアーティファクトが出現する。そのため、補正データテーブル20に記憶されている補正データによってX線検出データのエラー変動を消去する補正演算が必要となる。
【0024】
ただ、各回転中、X線管2の回転角度が同一のX線検出データについては変動率は同じであるから、回転傾斜変動特性は1回転分だけ記憶しておけば事足りる。勿論、傾斜角度θa,θbが異なると回転傾斜変動特性が変わるので、幾つかの傾斜角度θa,θbについて、X線管2の1回転分の(回転角度θr=0°〜360°)の補正データを記憶する。実施例の場合、図7(a)〜(c)に示すように、傾斜角度θa=25°,傾斜角度θa=θb=0°(無傾斜状態),傾斜角度θb=25°の3角度についてX線管2の1回転分の(回転角度θr=0°〜360°)の補正データを補正データテーブル20に予め記憶しておくことになる。
【0025】
図7(a)〜(c)の補正データは、撮影部位が空の状態のX線検出データを各チャンネルごとに得て、1回転分のX線検出データの平均値を各チャンネルごとに出し、各チャンネル毎に平均値に対する各X線検出データの比率αを算出して、これを補正データとして記憶する。X線検出データが平均値と同じであれば、補正データは「α=1」であり、X線検出データが平均値の90%であれば、補正データは「α=0.9」であり、X線検出データが平均値の110%であれば、補正データは「α=1.1」である。
また、図7(a)〜(c)に示す補正データは、関数の形で記憶してもよいが、回転角度θr=0°〜360°のうち例えば36°毎の回転角度についてだけ補正データを飛び越し記憶すれば、記憶容量が少なくて済むので実用的である。また、全チャンネルについて、それぞれ補正データを記憶しないで例えば10チャンネル置きのチャンネルについてだけ補正データを飛び越し記憶すれば、記憶容量が少なくて済むので実用的である。
【0026】
補正テーブル20からの補正データの読み出しは、補正データ読み出し部21によって行われる。ガントリ傾斜駆動部11から画像再構成部17を経由して補正データ読み出し部21へガントリ6の傾斜角度θa,θbを示すデータが送られると、補正データ読み出し部21は、該当傾斜角度の回転角度θr=0°〜360°の補正データを必要チャンネル分づつ読み出して来て、画像再構成部17へ送出する構成となっている。勿論、全チャンネル分の補正データを一度に読み出す構成でもよい。また、実施例装置の場合、傾斜角度θa,θbが0°,25°以外である場合、傾斜角度θa,θbの0°,25°のうち適当な角度の補正データを用いて、補間演算(線型補間や最小二乗法による補間計算)を行って該当傾斜角度の回転角度θr=0°〜360°の補正データを求めた上で画像再構成部17へ送出する構成となっている。
【0027】
さらに、回転角度あるいはチャンネルの補正データを飛び越し記憶をしている場合、最も近い回転角度あるいはチャンネルの補正データを代りに読み出す構成でもよいが、記憶している補正データの中から適当なデータを読みだして来て、補間演算を行って適当な補正データを求めた上で画像再構成部17へ送出する構成の方が的確な補正演算が行えるので好ましい。
【0028】
そして、画像再構成部17では、補正データ読み出し部21から受け取った補正データを用いて補正演算を行う。すなわち、補正データは平均値に対する比率αであるから、各チャンネルで得られた実際の各X線検出データを対応する補正データの比率αで乗算(割り算)すれば、X線管2の回転およびガントリ6の傾斜によるX線管2の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動が消去される。ただ、画像再構成部17における画像信号処理過程では普通、X線検出データについては対数演算処理が行われており、この場合、補正演算は比率αの対数値を減算することになる。
【0029】
このようにして、実施例のX線CT装置では、X線管2の回転とガントリ6の傾斜の両方に起因してX線検出データに含まれるエラー変動が、予め記憶してあるX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度の関係に従って行う補正演算で消去されるので、最終的に得られるCT画像にアーティファクトが出現しない。
【0030】
続いて、上述した構成を有する実施例装置によりX線撮影を実行する際の装置動作を、図面を参照しながら説明する。図8は実施例装置によるX線撮影動作の流れを示すフローチャートである。なお、天板1の上に被検体Mを載せてガントリ6のトンネル6aの撮影位置にセットした後、ガントリ6を傾斜角度θa=25°となるように傾斜させておく。
【0031】
〔ステップS1〕X線撮影がスタートすると、X線管2およびX線検出器3が被検体Mの体軸Zまわりを回転し始める。
【0032】
〔ステップS2〕X線管2およびX線検出器3の回転が安定状態に入れば、X線管2からファンビームFBが被検体Mに照射される同時に、被検体Mからの透過X線がX線検出器3で検出されてX線検出データとして送り出される。
【0033】
〔ステップS3〕X線検出器3から出力されるX線検出データは収集されて検出データメモリ16へ次々に格納される。
【0034】
〔ステップS4〕画像再構成部17からガントリ6の傾斜角度θa=25°の補正データを読みだす指令が補正データ読み出し部21へ送出されると、補正データ読み出し部21は直ちに図7(a)の補正データを読み出し、画像再構成部17へ送出する。
【0035】
〔ステップS5〕画像再構成部17は補正データ読み出し部21から送出された補正データを用いて、X線管2の回転およびガントリ6の傾斜によるX線管2の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去しながら画像信号処理を施して画像再構成を行う。
【0036】
〔ステップS6〕画像再構成に続いて、オペレータにより指定された断面のCT画像信号がCT画像メモリに記憶されるとともに、表示モニタ19の画面に指定断面のCT画像がアーティファクトのない状態で映し出される。
【0037】
〔ステップS7〕必要な断面のCT画像が全て得られればX線撮影は全て終了ということになる。
【0038】
この発明は上記実施の形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)実施例装置では、多チャンネル型X線検出器として固体素子式X線検出器が用いられたが、この発明のX線CT装置は、電離箱式の多チャンネル型X線検出器を用いてもよい。例えば、図9に示す電離箱式の多チャンネル型X線検出器22を用いることができる。X線検出器22は、例えばXeガスを封入した電離箱23における内側のチャンネル境界位置にはチャンネルコリメータ機能と電圧印加電極機能を兼ねた仕切りプレート24が設置され、各仕切りプレート間にX線検出データ取り出し用電極24が設置されている構造である。
【0039】
このX線検出器22でも、図10に示すように、X線管2の焦点位置の変化でファンビームFBが一点鎖線で示す状態から二点鎖線で示す状態に変化するのに従って、仕切りプレート24の近傍にファンビームFBの影(図10の中の単一斜線領域)が出来る。ただ、電離箱式のX線検出器22の場合、入射X線は入口近傍の所(図10の中の格子斜線領域)で殆ど吸収・検出されてしまうので、ファンビームFBの影は薄くて、固体素子式のX線検出器22に比べ、X線検出データのエラー変動は小さい。
【0040】
(2)実施例装置では、X線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度との関係に従って、X線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する補正演算を行う構成であった。
この発明のX線CT装置の場合、ガントリの傾斜角度の変化によるX線検出データのエラー変動が無視できるならば、X線検出データの変動量とX線管の回転角度との関係だけに従って、X線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する補正演算を行う構成でもよい。この場合、補正データメモリには、X線検出データの変動量とX線管の回転角度との関係(回転変動特性)が記憶されることになる。
【0041】
また、この発明のX線CT装置の場合、X線管の回転角度の変化によるX線検出データのエラー変動が無視できるならば、X線検出データの変動量とガントリの傾斜角度との関係だけに従って、X線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する補正演算を行う構成でもよい。この場合、補正データメモリには、X線検出データの変動量とガントリの傾斜角度との関係(傾斜変動特性)が記憶されることになる。
【0042】
【発明の効果】
以上に詳述したように、請求項1の発明のX線CT装置によれば、X線管の回転に起因してX線検出データに含まれるエラー変動が、予め記憶してあるX線検出データの変動量とX線管の回転角度の関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率で、実際の各X線検出データを乗算することによって行われる補正演算により消去されるので、最終的に得られるCT画像にアーティファクトが出現することを防止することができる。
【0043】
(削除)
【0044】
請求項2の発明のX線CT装置によれば、X線管の回転とガントリの傾斜の両方に起因してX線検出データに含まれるエラー変動が、予め記憶してあるX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度の関係として前記比率で実際の各X線検出データを乗算することによって行われる補正演算により消去されるので、最終的に得られるCT画像にアーティファクトが出現することを防止することができる。
【0045】
また、請求項3のX線CT装置の場合、多チャンネル型X線検出器が、固体素子式の多チャンネル型X線検出器であって、X線検出データに顕著なエラー変動が生じるが、この顕著なエラー変動も補正演算で除去されて、最終的に得られるCT画像にアーティファクトは出現しないので、製造適性等に優れる固体素子式のX線検出器を有効に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に係るX線CT装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】 実施例装置の固体素子式の多チャンネル型X線検出器の要部を示す模式図である。
【図3】 実施例装置のガントリの傾斜状況を示す正面図である。
【図4】 実施例装置のX線管が回転する際にX線管に作用する力を示す模式図である。
【図5】 実施例装置のガントリの傾斜時にX線管に作用する力を示す模式図である。
【図6】 実施例装置でのX線管の焦点位置の変化状況を示す模式図である。
【図7】 実施例装置の補正データメモリに記憶されている補正データ例を模擬的に示すグラフである。
【図8】 実施例装置によるX線撮影動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】 電離箱式の多チャンネル型X線検出器の要部構成を示す部分断面図である。
【図10】 電離箱式の多チャンネル型X線検出器のX線検出状況を示す模式図である。
【図11】 従来のX線CT装置の撮影台まわりの構成を示す概略図である。
【図12】 固体素子式の多チャンネル型X線検出器のX線検出状況を示す模式図である。
【符号の説明】
1 …天板
2 …X線管
3 …固体素子式の多チャンネル型X線検出器
4 …チャンネルコリメータ
4a …仕切りプレート
5 …固体検出素子
6 …ガントリ
8 …撮影系回転駆動部
11 …ガントリ傾斜駆動
17 …画像再構成部
20 …補正データメモリ
21 …補正データ読み出し部
22 …電離箱式の多チャンネル型X線検出器
FB …ファンビーム(扇形状X線ビーム)
M …被検体
Z …被検体の体軸
Claims (3)
- 天板の上の被検体に扇形状X線ビームを照射するX線管と、チャンネルコリメータにより定まる受持ち分の透過X線をそれぞれ検出する多数個のX線検出素子が扇形状X線ビームの広がりに沿って配列されている多チャンネル型X線検出器と、X線管およびX線検出器を天板上の被検体を挟んで対向する状態を維持したまま被検体の体軸まわりを回転させられるようにして装備しているガントリとを備えているとともに、X線管が被検体の体軸まわりを回りながら扇形状X線ビームを照射するのに伴ってX線検出器から出力されるX線検出データに画像信号処理を施してCT画像用の画像再構成を行う画像再構成手段を備えているX線CT装置において、X線管が被検体の体軸まわりを回る時にX線検出器に対するX線管の焦点位置が変化することにより生じるX線検出データの変動量とX線管の回転角度との関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率を予め記憶する回転変動特性記憶手段を備えているとともに、画像再構成手段は、回転変動特性記憶手段に記憶されているX線検出データの変動量とX線管の回転角度の関係として前記比率で実際の各X線検出データを乗算することで、X線管の回転によるX線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する補正演算を画像信号処理で行うよう構成されていることを特徴とするX線CT装置。
- 天板の上の被検体に扇形状X線ビームを照射するX線管と、チャンネルコリメータにより定まる受持ち分の透過X線をそれぞれ検出する多数個のX線検出素子が扇形状X線ビームの広がりに沿って配列されている多チャンネル型X線検出器と、X線管およびX線検出器を天板上の被検体を挟んで対向する状態を維持したまま被検体の体軸まわりを回転させられるようにして装備しているガントリとを備えているとともに、X線管が被検体の体軸まわりを回りながら扇形状X線ビームを照射するのに伴ってX線検出器から出力されるX線検出データに画像信号処理を施してCT画像用の画像再構成を行う画像再構成手段を備えているX線CT装置において、X線管からの扇形状X線ビームが被検体に対し斜めに照射されるようガントリを傾斜させるガントリ傾斜手段と、X線管の被検体の体軸まわりの回転あるいはガントリの傾斜が行われる時にX線検出器に対するX線管の焦点位置が変化することにより生じるX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度との関係として1回転分のX線検出データの平均値に対する各X線検出データの比率を予め記憶する回転傾斜変動特性記憶手段を備えているとともに、画像再構成手段は、回転傾斜変動特性記憶手段に記憶されているX線検出データの変動量とX線管の回転角度およびガントリの傾斜角度との関係として前記比率で実際の各X線検出データを乗算することで、X線管の回転およびガントリの傾斜によるX線管の焦点位置の変化に起因するX線検出データの変動を消去する補正演算を画像信号処理で行うよう構成されていることを特徴とするX線CT装置。
- 請求項1または請求項2に記載のX線CT装置において、多チャンネル型X線検出器は、X線検出素子が固体検出素子であって、チャンネルコリメータが、固体検出素子のX線入射側における各チャンネル境界位置に配設されたX線区切り用プレートからなる固体素子式の多チャンネル型X線検出器であるX線CT装置。
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