JP3927266B2 - 目標物を撮像する際に使用する方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁放射線の助けにより目標物を撮像するための方法に関し、この方法においては、目標物から反射される又は該目標物を通って伝達される放射線が、上記目標物から得た像情報を搬送する電気的な出力信号を発生することのできる撮像センサシステムによって検知され、上記センサシステムは、行及び列として短いピクセルとして配列された複数の写真撮像要素から構成される固体撮像センサを備えている。
【0002】
また、本発明は、目標物を撮像する際に使用される装置に関し、この装置は、撮像すべき目標物を電磁放射線で照射することのできるユニットを備えており、本装置は更に、行及び列として配列された短いピクセルの複数の写真撮像要素から成る固体撮像センサを含むセンサシステムを備えており、本装置は更に、上記センサシステムから得た電気的な出力信号を調整及び/又は記憶するための手段も備えている。
【0003】
従って、本発明は、電磁放射線による撮像に広く関係する。本発明は、特に、CCDセンサシステムを用いるデジタル撮像に関係する。
【0004】
本発明の方法及び装置は、特に、歯科用パノラマ式放射線撮影装置、乳房X線撮影装置、あるいは、一般的な蛍光透視撮影装置における医療用放射線撮影装置に特に効果的に応用される。
【0005】
【従来の技術】
従来は、デジタル撮像は、医療用の放射線撮影装置にも使用されており、そのような装置においては、デジタル撮像は、放射線感受性の現像可能なフィルムに基づく記録に比較して、否定できない利点をもたらす。そのような利点は、デジタル式に記録され且つ保存される像の観察、処理、保存、及び、持ち運びに関する利点であり、従って、そのような利点は、将来、健康管理としてより一層強調されることになろう。また、病院の施設は、一般的に、また、特に、放射線撮影された像及び同様な情報の処理において、デジタル技術を益々採用するであろう。デジタル撮像の別の利点は、再露光の必要性が極めて少なく、また、患者が受ける放射線量が低減するということを含み、その理由は、デジタル撮像に使用される固体撮像センサは、段階的な密度を有するフィルムよりも感度が高いからである。従って、本発明の広い目的は、進行中の開発に大きく貢献することである。
【0006】
デジタル撮像を行うように設計された固体撮像センサは、その基本的な構造によって、大きな放射線応答性の領域として配列されるか、あるいは、1つの列の直線的なセンサから成る最も簡単な形態で配列された、ピクセルと呼ばれる小さな撮像要素から構成された平坦なデバイスである。光線、赤外線、又は、X線の如き、撮像要素の活動領域で吸収される電磁放射線が、上述の要素に電荷を発生させ、そのような電荷の大きさは、当該要素に吸収される放射線の強度(すなわち、衝突する放射線の吸収された量子の電磁束密度及びエネルギ)に依存する。ここにおいて、電荷の大きさは、時間の関数として増大し、これは、露光時間の間に、撮像要素が、撮像要素の領域に当たる放射線によって誘起された電荷を積算することを意味し、従って、基本的には、積分時間を変えることにより、撮像要素の出力信号の大きさを制御する可能性がある。しかしながら、センサの基本的な感度は、積分時間を変えても変化しないことに注意する必要がある。
【0007】
デジタル撮像の技術において最も一般的なセンサのタイプは、フォトダイオードマトリックスのセンサ、及び、CCDセンサである。本発明は、通常のダイオードマトリックスのセンサと組み合わせて使用するように効果的に応用することができないので、CCDセンサの構造を以下に詳細に説明する。
【0008】
通常のCCDセンサにおいては、電荷は、電界による積分の間に、撮像要素の領域で一定に維持される。電荷は、撮像要素の中央に位置して電子のポテンシャルウエルを形成するに適したポテンシャルに維持される導電体の助けにより、あるいは、最近の技術によれば、撮像要素の周囲をドープすることにより形成される静電場によって形成され、これにより、上記電界は、隣接するピクセルの間のポテンシャル壁を上昇させる。ドーピングによって形成された電荷場を用いると、短いウエルのキャパシティにおける電荷処理能力が減少し、これは、上記ピクセルが、実際のポテンシャルウエルのような大きな電荷を保持することができず、そのようなピクセルは、その電荷を迅速に隣接するピクセルに「オーバーフロー」させることを意味する。しかしながら、そのような電荷場は、ある種の利点を有している。その理由は、ポテンシャルウエルを形成するために必要な電圧は、暗電流成分を発生し、これにより、実際に衝突する像形成放射線によって発生したものではない電荷が、ピクセルウエルの中に漏洩するからである。実際的な大きさの程度として、市販のセンサデバイスの「通常」のピクセルウエルの全ウエルキャパシティは、約700,000電子すなわちエレクトロンであり、一方、「ドープ」されたピクセルウエルは、約400,000電子のキャパシティしか有していない。これに関連して、「通常」のピクセルウエルに入る暗電流成分は、約30,000電子/秒であり、一方、「ドープ」されたピクセルウエルに入る暗電流成分は、約100電子/秒である。ピクセルウエルのドーピング技術が開発される前は、暗電流成分の減少は、センサを約−40°Cまで冷却することにより行われ、そのような処理は、煩雑で且つ経費がかかり、更に、冷凍及び他の問題を生ずる可能性がある。
【0009】
通常のCCDセンサにおいては、像の読出しは、電荷を伝達することによる積分時間の最後に起こり、そのような像の読出しは、クロック信号の制御の下でピクセルウエルから、センサの光面の撮像ピクセルの領域に集積され、これにより、ピクセルが直ちに次の像コマを表す電荷の蓄積を開始するようにする。TDI(時間遅れと積分)として知られている従来技術において、伝達された電化は隣接するピクセルに残される。FT(コマ伝達:Frame Transfer)法として知られる別の従来技術の方法においては、電荷は、実際の信号を読出すために、放射線マスクされたピクセルの記憶領域に伝達される。CCDセンサによって記録された像情報の読出しの間に、TDIモードのセンサの像領域、又は、FTモードのセンサのマスクされた領域の最外方のピクセル列の電荷が、最初に、マスクされたシリアルシフトレジスタに伝達される。上記シリアルシフトレジスタは、センサの幅方向の記憶ウエルの列を備えており、そのような記憶ウエルの中では、各々のピクセル行の最外方のウエルから伝達された電荷が、互いに分離された状態で保持され、そこから、上述の電荷は、一連のクロック信号によってその制御の下で、一時に1つづつ、センサの出力ウェルに伝達される。上記出力ウェルは、常に最初に空にされ、その後その中に、単一のピクセルの電荷が伝達される。その電荷の大きさは、当該センサのピクセル電荷によって搬送される像要素の情報を表す電圧信号として、センサの出力ラインに現れる。CCDセンサを実際に形成する際には、上記出力信号の電圧レベルは、−3μV/エレクトロン程度であり、これは、500,000個のエレクトロンの電荷が、−1.5Vのセンサ出力電圧を与えることを意味する。
【0010】
通常は、TDI撮像技術を用いて、移動する目標物の撮像を実行し、最大の感度が、CCDセンサによって得ることができる。像からの運動散乱を除去するために、写真撮影技術で周知のような十分に短い露光時間を用いる代わりに、TDI撮像方法は、撮像されている目標物がセンサを通過することを許容し、同時に、センサの光面に形成された電荷モードの像が、目標物の運動と同期して伝達される。これは、電荷モードの像が、目標物を追跡しようとすることを意味する。従って、撮像要素に形成された目標物の像情報は、長時間にわたって蓄積され、これは、センサの感度が、容易に数倍増大されることを意味する。例えば、目標物の運動方向において100ピクセルの長さを有するセンサを用いる通常の撮像装置において、最大の分解能で目標物を撮像するためには、露光時間は、センサ光面の目標物の像が1つのピクセルの幅を超えて動かないように、十分に短くする必要がある。これとは対照的に、通常のTDI撮像方法においては、センサ光面の目標物の像は、上記光面の全幅にわたって追従し、これは、代表的なケースにおいては、100ピクセルの全長にわたって像情報の蓄積を許容し、これにより、センサの出力信号も、その時間の間の目標物の速度が一定であれば、100倍になる。従って、TDIモードの撮像技術を使用するための1つの基本的な必須条件は、正に、目標物の瞬間的な速度が既知であって、目標物を上手く追従することが可能なことである。
【0011】
従来技術においては、CCD像センサ及びその制御電子要素は、その用途及び特定の使用に関して、常に別個に設計され最適化されていた。従って、そのような通常の像センサシステムは、いかに類似していても、別の用途には向かなかった。新しいタイプのCCDセンサの開発は、極めて経費がかかり且つ時間がかかる。一般的に、新しいタイプのCCDセンサの開発には、少なくとも1年あるいはそれ以上の時間を要し、また、少なくとも100万USドルの研究開発の予算が必要である。これに応じて、そのような新しいCCDセンサ用の制御電子要素の開発は、ほぼ同じ時間を要し、そのようなシステムの研究開発の費用は、約250,000USドルにもなる。そのような事実を考えると、新しいタイプのCCDセンサの開発は、商業的な用途であり、開発コストの回収がある合理的な時間内である可能性があるので、少量のCCDセンサを使用する用途は、合理的なコストを投資する制約の範囲内では、実際的に履行不可能である。一方、合理的に大量の用途に関して、新しいCCDセンサが引き続き開発されているが、そのような計画においてさえ、CCDセンサに特有のコストの割合は、通常の技術を用いた場合には、かなり高くなる。
【0012】
通常の技術が、撮像すべき各々の目標物に関して個々に最適化されたCCDセンサ及びその制御電子要素の変更を許容しないので、入手可能な機器及びそのCCDセンサの技術的制約の範囲内で、撮像構造を実施するのが一般的であった。通常の撮像装置においては、CCDセンサ及びその制御電子要素は、最大分解能又は感度に関して最適化するか、あるいは、分解能と感度との間の妥協をおこなて、ほぼ満足すべき結果を得ている。しかしながら、各々の撮像すべき目標物に関して最適なCCDセンサの分解能及び感度の調節は、ケースバイケースで十分な撮像分解能を確保すると同時に、患者が受ける放射線量を極力少なくしなければならない医療用の放射線撮影装置においては、極めて重要なことである。
【0013】
ピクセルを結合又は「ビンニング」することにより、CCDセンサの撮像分解能を変更することは、当業界では周知であるが、そのような手法は、各々の用途に関して単に一定のビンニング(結合)比で利用されているだけであって、撮像分解能及び感度を個々の目標物に関して最適の設定を行うように、CCDセンサのピクセルを自由に設計可能なビンニング比は、当業界では応用されていない。
【0014】
通常は、撮像方法は、例えば、マトリックスの隣接する記憶場所(メモリ位置)の内容を加算することにより、センサからのデータをコンピュータのメモリの中でデジタルフォーマットで処理し、これにより、最終的な結果は基本的に、上述の「ビンニング」の結果と等価である。
【0015】
当該技術においては、歯科用パノラマ式放射線撮影装置を頭蓋骨を撮像するための頭部撮影装置と組み合わせることも認識されており、そのような複合装置のデジタル的な実施例が、例えば、ヨーロッパ特許出願No.0634671A1に開示されている。
【0016】
本発明に関する当該技術の現状に関しては、以下の代表的な特許及び特許出願の文献を参照されたい。すなわち、米国特許第5,426,685号、米国特許第5,289,520号、米国特許第4,188,537号、米国特許第5,365,562号、及び、米国特許5,216,250号である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、撮像技術、特に、CCDセンサ及びデジタル撮像が応用されている医療用の放射線撮影技術を改善して、上述の問題を実質的に解決すると共にその欠点を解消することである。
【0018】
本発明の特定の目的は、CCDセンサに基づく撮像技術を改善し、これにより、従来技術よりも広いダイナミックレンジを有するCCDセンサを提供することである。この目的は、像の分解能をCCDセンサの感度の増大と引き替えにすることが有利であるような用途において、重要である。そのような用途は、患者に対するX線の照射量を減少させることが極めて望ましく、また同時に、露光時間を短くして、患者の動きによる生ずる可能性のある像ぼけを減少させることが望ましい、医療用の放射線撮影技術において特に見い出される。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上述の目的及び後に説明する目的を達成するために、本発明の第1の方法は基本的に、次の特徴を有している。すなわち、上記撮像センサシステムは、該センサシステムに使用されるセンサの放射線応答性の撮像要素を、センサマトリックスの行及び/又は列に沿って結合すなわち「ビンニング」して、複数の撮像要素のクラスタにすることに基づく、制御スキームによって構成され、上記クラスタの個々の撮像要素から得られる像情報を表す電荷が、電荷の形態で直接結合すなわち加算され、そのように形成された電気信号が、更に処理を受け、上記撮像要素の上記ビンニングすなわち加算作業が、各々の露光の個々のニーズに従ってケースバイケースで外部制御の下で実行され、これにより、上記センサの分解能と感度との間の相対的な最適化が行われる。
【0020】
本発明の第2の方法は基本的に、次の特徴を有している。すなわち、この方法は、TDIモードの撮像技術に応用され、これにより、撮像すべき目標物と上記撮像センサとが、相対的に相互に運動するようになされており、CCDセンサ要素上に撮像されるべき上記目標物から形成される電荷モードの像が、上記相対的な運動と同じ速度で伝達され、上記目標物から集めた像情報が、上記センサの感度を増大させると同時に、長い時間にわたって蓄積され、上記センサの物理的なピクセルサイズは、センサから要求される最大分解能を達成するに必要なピクセルサイズよりも小さくなるように選択され、撮像すべき上記目標物と上記撮像センサとの間の相対的な運動によって生ずる像ぼけが、上記CCDセンサのピクセルの物理的なサイズに相当する同期されたステップで上記ピクセルの電荷を移動させることにより減少され、これにより、撮像すべき上記目標物と上記CCDセンサとの間の相対的な運動の追跡が、極めて高い精度で行われる。
【0021】
本発明の上記第2の方法は、独立して適用することができるが、本明細書の主発明である本発明の上記第1の方法と組み合わせて適用するのが最も効果的である。
【0022】
更に、本発明の第1の装置は基本的に、以下の特徴を有している。すなわち、この装置は、撮像センサシステムのためのコンフィグレーションシステムを備えており、該コンフィグレーションシステムは、上記撮像センサシステムに使用される上記センサの放射線応答性の撮像要素を、センサマトリックスの行及び/又は列に沿って、「ビンニング(結合)」すなわち加算して複数の撮像要素から成るクラスタにすることを許容し、上記センサシステムは、上記クラスタの個々の撮像要素から得られる像情報を表す電荷が、電荷の形態で直接ビンニングすることができるように、接続され且つ制御される。
【0023】
本発明の第2の装置は基本的に、以下の特徴を有している。すなわち、この装置は、制御装置を有するCCD撮像センサシステムと、撮像すべき目標物と上記センサシステムとの間の相対的な相互運動を与えることのできる装置とを備えており、上記制御装置は、上記撮像すべき目標物から形成された電荷モードの像を、上記相対的な運動と同じ速度で、上記CCDセンサ要素に伝達するようになされており、上記センサの物理的なピクセルサイズは、センサが必要とする最大分解能を達成するに必要なピクセルサイズよりも小さくなるように選択され、上記撮像すべき目標物と上記撮像センサとの間の上記相対的な運動によって生ずる像ぼけが、上記ピクセルの電荷を、上記CCDセンサのピクセルの物理的なサイズに相当する同期されたステップで移動させることにより、減少され、これにより、上記撮像すべき目標物と上記CCDセンサとの間の上記相対的な運動の追跡が、極めて高い精度で行われる。
【0024】
本発明の上記第1の方法及び装置は、独立して適用することができるが、相乗効果を発揮する組み合わせとして、本発明の第1の方法及び装置と組み合わせて応用するのが最も好ましい。
【0025】
本発明の第1の方法及び装置を応用する場合には、CCDセンサのピクセルの電荷は、これら電荷がセンサの出力信号に変換され、増幅され、デジタルの形態に変換される前に、センサ装置の中で電荷の形態で積算される。従って、本発明は、通常の実施形態における欠点である、像情報からのノイズ及び他のエラーすなわち誤差の集積を排除するという利点を提供する。
【0026】
本発明の第1の方法及び装置は、CCDセンサ及びその制御電子要素を容易に構成することを可能とし、これにより、センサシステムの性質を、所定範囲内でプログラム制御の下で自由に変更することができ、従って、各用途に関して最適なシステム構成を得ることができるので、互いに大きく異なる多数の用途に、同じCCDセンサのタイプ及び制御電子要素を用いことができる。従って、機器を製造するために購入した、選択したタイプのCCDセンサの品質を向上させることができ、各用途毎の研究開発費をより適正なレベルまで低下させることができる。ユーザの観点から見ると、単一のCCDセンサ及びその制御電子要素が、複数の目的のために単一の設備に使用することができ、また、その異なる作動モードが、多数の異なるCCDセンサを使用する必要性を排除するので、ある設備の全調達コストは、通常の技術を用いて構成される機器を購入する場合に比較して、十分に低下させることができる。
【0027】
センサのコストの低減に加えて、本発明は、感度/分解能の制御により、撮像分解能の制御に加えて、患者が受ける放射線量を制御するできるという、従来技術では達成できなかった大きな利益を提供する。
【0028】
本発明の第1の方法及び装置の好ましい実施例においては、ピクセルを結合すなわち「加算(ビンニング)」して、水平方向及び垂直方向の大きなクラスタにすることができる。説明を明瞭にするために、本明細書においては、上の記載及び下の記載において、センサ要素のマトリックスの軸線を、水平方向及び垂直方向とするが、そのような方向は、従来技術において通常行われる地球の重力場の方向に関係づけて理解してはならず、水平方向は、光面のセンサ要素の列に沿う電荷の伝達方向を意味し、また、垂直方向は、光面のセンサ要素の行の方向、すなわち、上記水平方向に対して直交する方向を意味する。従って、線形のセンサにおける垂直方向は、例えば、センサの長さに沿う長手方向を意味する。水平方向における電荷のビンニング(結合又は加算あるいは積算)は、シリアルシフトレジスタの電荷がセンサから読み取られる前に、複数の撮像要素の列の電荷が、上記シリアルシフトレジスタに伝達されるように、行われる。ここにおいて、複数の撮像要素の列の電荷は、同じ「カップ」の中に溜められる、すなわち、単一のウエルの中に積算される。センサの垂直方向においては、電荷の「ビンニング」すなわち加算作業は、最初に出力ウェルをクリアし、次に、センサの出力電圧の感知が行われる前に、シリアルシフトレジスタの複数の電荷ウエルの内容を出力ウェルの中に伝達すなわち搬送することにより、実行される。
【0029】
本発明は、広いダイナミックレンジを必要とするCCDセンサに基づく撮像用途に使用することができ、撮像分解能とより高い感度との交換、あるいはその反対の交換を行うことができる。そのような用途の最も代表的なものは、患者の動きにより生ずる像ぼけを極力少なくし、同時に、患者に与えられる放射線量を極めて低いレベルに維持するために、露光時間を極力短くする必要がある、放射線撮影装置である。放射線撮影における分解能の要求は、撮像する目標物によって大きく変化し、より高い分解能を得るためには、放射線量を増大させるのが、従来技術では一般的である。実際に、本発明を実施すると、CCDセンサシステムの自由にプログラム可能なコンフィグレーションにより、その構造を実質的に変更することなく、放射線撮影の種々の部分の大部分をカバーすることができる。本発明の特に効果的な用途は、拡大露光モード及び接触露光モードを含む乳房X線撮影装置の分野、並びに、歯科用パノラマ式放射線撮影装置/頭部撮影装置の複合装置の分野である。本発明の適用範囲は、種々の部門のレベル及び胸部蛍光透視撮影装置まで拡張することができる。
【0030】
本発明の第1の方法及び装置においては、CCDセンサの制御電子要素は、露光を行っている間の適宜な瞬間に、垂直方向及び水平方向におけるセンサピクセルの「ビンニング」比を決定することのできる入力信号の下で機能するように、構成されるが、最も効果的なのは、常に露光の開始時である。
【0031】
本発明は、歯科用パノラマ式放射線撮影装置/頭部撮影装置の複合機器に効果的に応用され、これにより、撮像分解能をユーザが選択可能とし、従って、全体的な観察は、低い分解能及び低い放射線量による露光で行い、一方、必要に応じて、重要な領域すなわち部位は、より高い分解能で露光することができる。頭部撮影装置においては、2lp/mmの分解能で完全に十分であり、本発明のユーザが選択可能な分解能により、そのような露光は、同じ分解能においてパノラマ式放射線撮影装置が必要とする放射線量の15%まで低下させることができる。実際に、頭部撮影装置における焦点距離は、歯科用パノラマ式放射線撮影装置で使用される焦点距離の3倍以上(すなわち、1,700mm対480mm)であり、これにより、距離の二乗に従って減衰した後に、センサに入射する放射線強度は、歯科用パノラマ式放射線撮影装置のセンサが受ける放射線強度の僅かに約8%である。従って、歯科用パノラマ式放射線撮影装置に使用されるような同じセンサ分解能を有する頭部撮影装置は、殆ど不可能であり、その理由は、露光時間は、数十秒まで延長されると予測され、その間に、放射線撮影を受けている患者は、完全に静止した状態を維持しなければならないからである。実際にパノラマ露光は、約20mm/秒の速度で走査するTDIを使用して行われる。歯科用パノラマ式放射線撮影装置で使用されるのと同じセンサ分解能及び露光パラメータを用いて、頭蓋骨の240mmのパノラマ像を形成するためには、同じ掃引速度において、12秒×12.5=150秒、すなわち、2.5分の時間がかかることになる。
【0032】
本発明の好ましい実施例によれば、乳房X線撮影装置における「拡大」放射線写真は、通常の乳房X線撮影装置よりも小さいピクセルサイズを用いて、接触露光として作成される。次に、本明細書の後の説明から分かるように、センサの一定のピクセルサイズを用いる通常の拡大露光に比較して、大幅に改善された分解能が得られる。更に、本発明のこの実施例は、1つの焦点サイズだけを有する簡単で且つ廉価なX線源で実施される。別の利点は、露光時間が短く、患者の動きによる像ぼけの可能性が低く、更に、患者が受ける放射線量が少ないことである。より小さいピクセルサイズ及び接触露光を用いて、本発明の上記実施例において、「拡大」放射線撮影を行うと、必要に応じて、像領域全体にわたって、「拡大」露光を行うこともできる。これとは対照的に、目標物をX線管に接近させる通常の技術においては、例えば、2倍の倍率は、記録媒体上の像を非常に大きくし、その領域の4分の1しか記録することができない。本発明の上述の結果及び利点を以下により詳細に説明する。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の幾つかの代表的な実施例を図解的に示す図面を参照して、本発明を以下に詳細に検討するが、図面の細部が本発明を限定するものと理解してはならない。
【0034】
図1を参照すると、TDIモードのCCDセンサシステムが、基本的な要素、並びに、制御電子要素の機能と共に、図解的に示されている。このセンサシステムにおいては、制御電子要素ブロック17は、一般的には2乃至4の数のIOxクロック信号によって、CCDセンサの撮像要素マトリックス10に接続されており、また、これも一般的には2乃至4の数のROxクロック信号によって、シリアルシフトレジスタ12に接続されている。制御電子要素ブロック17は、CCDセンサの出力ウェル13を放電させるための制御信号ORを与える。出力ウェル13の電荷は、出力増幅器14によって、センサの出力電圧信号に変換され、次に、ピクセル電荷ゼロオフセットレベル補正ステージ15に送られる。この補正ステージは、後に詳細に説明するように、制御電子要素ブロック17からの制御信号CDSのタイミングの下で、撮像要素マトリックス10の各々のピクセルに関して別個に、ゼロ基準レベルを設定する。ゼロオフセット補正を行った後に、上記信号は、アナログ/デジタルコンバータ16に送られ、このアナログ/デジタルコンバータは、制御電子要素ブロック17からの制御信号SHのタイミングの下で、アナログのイメージ情報をデジタルフォーマットに変換する。このデジタルデータは、制御電子要素ブロック17からの制御信号LDのタイミングの下で、別の記憶及び処理プロセスへ送られる。
【0035】
図2を参照すると、本発明のFTモードのCCDセンサシステムが、基本要素及びその制御電子要素の機能と共に図解的に示されている。このセンサシステムは、図1に示すTDIモードセンサシステムと等価であるが、AOxクロック信号によって制御電子要素ブロック17が接続されている撮像要素マトリックス10とシリアルシフトレジスタ12との間が、上記撮像要素マトリックスと同じ寸法を有する記憶要素マトリックス11になっていて、これにより、制御電子要素ブロック17が、IOxクロック信号によって、上記記憶要素マトリックスに接続されている点が異なっている。
【0036】
後に説明するセンサシステムの機能は、基本的には、TDIモードセンサに関するものであり、FTモードセンサの機能は、基本的には、撮像要素マトリックス10を補足する記憶要素マトリックス11からシリアルシフトレジスタ12への電荷の伝達が、制御電子要素ブロック17からのAOx及びIOxクロック信号のタイミングの下で、撮像要素マトリックス10から記憶マトリックス11への電荷の伝達よりも常に先行する点においてだけ、TDIモードセンサとは異なる。従って、FTモードセンサの撮像要素マトリックス全体は、一般的なTDIモードセンサの場合のように列毎に読出すのではなく、全コマの読出しとして積分時間の最後に生ずる。
【0037】
通常のCCDセンサ及びその制御装置の基本を以下に説明するが、本発明の新規な機能的及び構造的な性質は、ピクセルのビンニング(binning)に関して後に説明する。
【0038】
図1又は図2のCCDセンサによって撮像される露光を開始する時には、センサマトリックス10;10,11の要素に蓄積されている可能性のある最初の電荷を除去し、そのピクセルウエルをクリアしなければならない。これは、制御電子要素ブロック17からのスタート信号STARTのタイミングの下で実行され、これにより、撮像要素マトリックス10;11の電荷は、IOxクロック信号の助けにより、1つの行からシリアルシフトレジスタ12の中に一時に伝達される。次に、そのようにシリアルシフトレジスタ12の中に転送された電荷は、更に、IOxクロック信号の制御の下で、一時に一つ出力ウェル13に転送され、該出力ウェルは、電荷が転送される前に必ず、OR信号を与えることによってクリアされる。このクリア工程は、センサウエルが一回のクリア工程の間に完全にクリアされないという疑いがある場合には、ピクセルウエルの中に蓄積された電荷の大きさに応じて、数回繰り返すことができる。露光を開始する瞬間は、イメージ情報を表す電荷が、クリアされたセンサマトリックスのピクセルウエルの中に蓄積され始める時、すなわち、センサの光面に入る放射線がそのピクセルウエルに電荷を誘起し始める時である。制御電子要素ブロック17によってカウントされる積分時間が経過した時に、あるいは、外部同期信号SYNCが与えられた時に、撮像要素マトリックス10;11の1つの行の電荷がシリアルシフトレジスタ12へ転送され、そこから更に、上述のように、出力ウェル13に転送される。この時点において、上述の工程すなわちステップとは異なり、各々のピクセルウエル13の電荷が感知され、これにより、制御電子要素ブロック17によって供給されるCDS信号の制御の下で、最初に、各々のピクセルの電荷のゼロオフセットレベルが補正され、その後、アナログ出力信号が、SH信号の制御の下で、コンバータ16によってデジタルフォーマットに変換され、その出力信号は、各々の変換の後に、LD信号の制御の下で、更に記憶される。
【0039】
図3を参照すると、CCDセンサの代表的な出力信号が示されている。出力ウェル13が、OR信号の助けを受けてクリアされると、大きなパルスOR0が、センサ出力に現れ、その後、センサ出力は、Z0の時点で、空の出力ウェルを表すあるレベルに落ち着く。このピクセル/比電荷ゼロオフセットレベルは、例えば、図4に示す回路を用いて、CDS信号の助けを受けて、各々のウエルに関して別個に感知される。ここにおいて、CDS信号は、時間Z0の直前に、スイッチ15kを閉成し、これにより、キャパシタ15cの出力端がアースされ、センサの出力増幅器14の出力に存在する単一のベースレベルが、キャパシタ15cに充電される。時間Z0において、スイッチ15kが開成し、この時点においてはセンサの出力ウェル13に転送されているピクセルの電荷が、信号レベルとして用いることができ、該信号レベルは、時間S0において、SH信号の制御の下で感知される。時間Z0及びZ1におけるゼロオフセットレベルの変動にも拘わらず、図4に示す回路は常に、時間S0−Z0、S1−Z1等における出力信号レベルの差、すなわち、補正されたセンサの出力信号を感知する。上記回路の上述の機能は、システムのそのような部分に関して通常の技術であり、補正二回抽出法として知られている。
【0040】
撮像要素マトリックス10;10,11のピクセルを、本発明に従って、水平方向において結合する時には、その最も簡単なアプローチすなわち手法は、シリアルシフトレジスタ12からの電荷転送の読出しが開始される前に、1又はそれ以上の行によって、撮像要素マトリックス10;10、11の行の電荷をシリアルシフトレジスタ12に転送することである。次に、複数の行の電荷を蓄積し、これにより、シリアルシフトレジスタ12の各々のウエルの中に総計された多くのピクセルからの全電荷量を表す。CCDセンサの内部転送効率は、一般的に、99.9999%程度であるので、そのような電荷の加算作業は、単一エレクトロン精度で行うことができ、そのような加算作業は、ピクセル/比電荷ゼロオフセットレベルの補正、増幅器ステージのノイズレベル、及び、他の可能性のある誤差のファクタを考慮すると、CCDセンサの外部での加算では不可能である。
【0041】
本発明の制御電子要素ブロック17には、入力ラインHBxが設けられており、この入力ラインを動的制御することによって、上記制御電子要素ブロックは、センサからの電荷伝達の読出しが開始される前に、そのような信号によって決定される行電荷の数をシリアルシフトレジスタ12に伝達することができる。本発明の特徴は、本発明の制御電子要素ブロック17が、入力信号HBxによって動的に決定される(すなわち、プログラムされたセンサの構造(コンフィグレーション)が要求する)撮像要素の行からの電荷伝達を実行することができることである。
【0042】
撮像要素マトリックス10;11のピクセル電荷は、本発明に従って極めて簡単に垂直方向において蓄積され、これにより、シリアルシフトレジスタ12の電荷は、センサの出力信号の感知が開始される前に、マトリックス10;11の2以上のピクセル電荷によって、クリアされた出力ウェル13に伝達される。次に、複数のピクセルの電荷が蓄積(加算)され、出力ウェル13に加算された多くのピクセルを含む撮像副区域に蓄積された電荷量を表す。この場合にも、CCDセンサの内部伝達効率は、99.9999%程度であるので、そのような電荷の加算作業は、殆ど単一エレクトロン精度で実行することができ、そのような加算作業は、ピクセル/比電荷ゼロオフセットレベルの補正、増幅器ステージのノイズレベル、及び、他の可能性のある誤差ファクタを考慮すると、CCDセンサの外部の加算作業では不可能である。
【0043】
図5を参照すると、本発明のCCDセンサシステムの出力信号及び制御信号の例が、ピクセル電荷の垂直方向の蓄積として示されている。出力ウェル13のクリアパルスOR0の次に、出力信号のピクセル電荷ゼロオフセットレベルが、時間Z0で与えられるCDS信号の助けにより感知される。その後、時間Sn−2、Sn−1及びSnにおけるピクセル電荷が出力ウェル13の中で加算され、その後、イメージセンサの出力信号が、SH信号の助けにより感知され、出力ウェル13は、次の出力感知作業のためにクリアされる。
【0044】
本発明の制御電子要素ブロック17には、入力ラインVBxが設けられており、この入力ラインを動的に制御することにより、電子要素ブロックは、出力信号の感知が開始される前に、プログラムされたセンサのコンフィグレーションによって決定されるピクセル電荷の数を出力ウェル13に伝達することができる。本発明の特徴は、使用する制御電子要素ブロック17が、読み取られるいずれかのシリアルシフトレジスタの電荷伝達サイクルの開始時に、個々のシリアルシフトレジスタの電荷伝達、並びに、VBx信号によって動的に決定され(従って、プログラムされたセンサのコンフィグレーションの要求に応じる)「蓄積」されるべきピクセルの数のその出力信号の感知を実行することである。シリアルシフトレジスタの長さが、「蓄積」されるべきピクセルの数で整数として割りきれない場合には、制御電子要素ブロック17は、割り算の余りに等しい空のピクセル電荷の数を出力信号の最後のサンプルに加えるべき命令を出し、これにより、列の同期が損なわれないようにする。
【0045】
本発明を実行すると、自由にプログラム可能な制御装置によって、CCDセンサのピクセル電荷を自由に蓄積し、プログラムされたセンサのコンフィグレーションの要求に応じて、水平方向及び垂直方向において別個の所望のクラスタにすることができる。十分に小さなピクセルサイズを有するセンサが、CCDセンサに対して選択され、また、制御/感知電子要素が、最短必要時間におけるフル分解能を必要とする場合に処理するように構成された場合には、単一の同じセンサが、所望のセンサのコンフィグレーションによってプログラムされる明らかに複数のピクセルサイズとして、最小ピクセルサイズの分解能及びより粗い分解能を用いて、総ての異なるアプリケーションを実行することができる。
【0046】
下の表は、30μm×30μmのピクセルサイズを有するCCDセンサを備えた放射線撮影装置の基本的な撮像特性の幾つかの実際例を示している。この表においては、略号Binは、センサの「蓄積」比を指しており、Pix effは、「蓄積」された方形のピクセルの寸法(μm)を指しており、lp/mmは、撮像分解能(線対/mm)を指している。
【0047】
【表1】
【0048】
上の表から明らかなように、単一の且つ同一のCCDセンサシステム、及び、その制御装置ブロック17は、少なくとも3つのタイプの撮像システムを実行するために効果的に使用することができる。本発明を乳房X線撮影装置に応用することにより、撮像センサの本発明のプログラム可能なコンフィグレーションは、別個の機械的な拡大補助装置を必要とすることなく、通常の及び拡大された放射線写真を露光することができ、これにより、放射線撮影装置の製造コストが実質的に低下し、そのような装置の使用が容易になる。
【0049】
本明細書の導入部において説明したTDIモードの撮像技術を本発明と組み合わせて用いる時には、撮像すべき目標物は、制御電子要素ブロック17によって実時間的に知られ且つ図1のSYNC信号で表される速度で、撮像CCDセンサを通って移動し、そのような目標物の移動方向は、上記センサのシリアルシフトレジスタ12に入る電荷の伝達方向Aと同じである。次に、撮像要素マトリックス10の電荷が、移動する目標物からセンサの光面上に形成された像の運動速度に実質的に同期された速度で伝達される時には、移動する目標物の鮮明な像を記録することができる。
【0050】
ここにおいて、ピクセルウエルの活動領域の間のドープされた壁の如き、ある物理的な制約によって、センサのピクセル電荷は、一時に1つのピクセル間距離だけしか、すなわち、単一のピクセル間距離又はその倍数だけしか、伝達することができないことに注意する必要がある。センサ領域の1つのピクセル壁から隣接するピクセル壁への電荷の伝達は、次の伝達サイクルが開始される前に、シリアルシフトレジスタに一時的に蓄積されているピクセル電荷の組をセンサマトリックスから移動させて、信号を変換し該信号を記憶することを可能にするために、センサの光面上の目標物の像の速度よりも実質的に大きな物理的な速度で実行しなければならない。しかしながら、撮像されている目標物は、一般的に、一定の速度で移動するので、センサの電荷の段階的な伝達とは対照的に、上記2つの運動速度の間の非同期が、上記運動方向において、像ぼけを生じ、最悪の場合には、運動方向におけるピクセル間距離の半分の値を生ずることになる。図7には、センサの積分時間tIが示されており、その積分時間の後に、同期信号SYNCの制御を受けるピクセル電荷が、IOxクロック信号によって調時されてセンサの1つの行に伝達され、次に、シリアルシフトレジスタ12が、ROxクロック信号の助けを受けて、時間R0において読み取られる。
【0051】
図6に示すケースにおいては、目標物は、センサに対して相対的に一定の速度で移動し、このセンサは、5つのピクセルの上に「蓄積」されている。図6のグラフA1−A6に示すように、センサの電荷は、完全に「蓄積」されたピクセルクラスタの長さの上に常にある別個のステップに一時に伝達され、一方、グラフB1−B6においては、電荷伝達は、単一の物理的ピクセル長を有するステップで生ずる。図6のグラフから、ビンニングスキームAに従って撮像されている目標物は、センサ18の5重に「蓄積」されたピクセルp1の上に存在すると共に、隣接するピクセルp2の上まで伸長しており、一方、ビンニングスキームBによる撮像は、センサ18’の単一蓄積型のピクセルp1の上でだけ生じており、これにより、運動方向の像ぼけが防止される。
【0052】
センサの物理的ピクセルサイズが必要とされる最大分解能よりも小さい、本発明の第2の基本的な方法及び装置に基づく実施例においては、上述の運動方向の像ぼけは、本発明の第2の方法及び装置に基づく実施例によって減少させることができ、これにより、本発明の第1の方法及び装置を用いた場合には、ピクセルの電荷は、「蓄積」型のピクセルクラスタの長さに伝達されるのではなく、センサの物理的ピクセルの長さに伝達される。次に、目標物の運動の追跡は、最大精度で生ずる。150μmの撮像分解能に関してプログラムされた例えば30μmのピクセルサイズを有するセンサ18’を用いた場合には、上記ビンニングスキームは、上述のように垂直方向において実行され、水平方向のビンニングは、別に実行される。ここにおいて、撮像要素マトリックス10;11のピクセルの電荷は、HBx入力信号によって決定される数によって一時にシリアルシフトレジスタ12に伝達され、その次に、シリアルシフトレジスタ12の読み取りが行われるのではなく、撮像要素マトリックス10;11の電荷は、入力信号HBxによって決定される行の数がそこに伝達されるまで、常に一時に1行だけ、シリアルシフトレジスタ12に伝達され、その後にだけ、シリアルシフトレジスタからの電荷の読み取りが通常の態様で実行される。この作動モードは、制御電子要素ブロック17のBM入力信号によって選択することができる。
【0053】
上述の例においては、運動方向の像ぼけは、通常のビンニングにおいては150μmであるのに対して、僅かに30μmであり、これにより、像ぼけが大幅に改善される。本発明の自由なビンニングスキーム、並びに、上述の実施例における用途によって要求される最大分解能よりも高い分解能を有するセンサを用いることによって、他の手段によっては得られない精度でTDIモードの撮像を実行することができる。実際のテストでは、上記アプローチは、撮像品質を十分に改善することが判明している。
【0054】
本発明の上述の総ての実施例において、電荷は、蓄積すべき総ての行がレジスタに加算される間に、シリアルシフトレジスタ12に蓄積され、それから、シリアルシフトレジスタ12の読み取りを開始することができる。不運にして、そのような構造は、暗電流成分を生ずる。その理由は、シリアルシフトレジスタ12に蓄積された電荷は、撮像要素に関して可能なようなポテンシャル壁によって互いに分離することができず、シリアルシフトレジスタ12のセルに蓄積された電荷は、クロック信号ラインの1つを保持することによって、一定に維持しなければならず、これにより、そのようなクロックラインの下で必要とされるポテンシャルウエルを形成するからである。
【0055】
ポテンシャル壁によるピクセル隔離の概念の前に、CCDセンサの撮像要素マトリックスの電荷は、上述の技術を用いて一定に維持されており、同時に、別の方法が、冷却に頼ることなく暗電流成分を最大にするために開発されている。そのような通常の技術の1つは、「ディザリング」と呼ばれており、この「ディザリング」においては、撮像要素のポテンシャルウエルが、単一のクロック信号ラインの下で一定に形成されるのではなく、上記ウエルは、撮像要素の個々のクロック信号ラインの下で、交互に連続的に移動するが、上記ウエルは、撮像要素の範囲内に適正に維持される。この技術は、暗電流成分は、クロック信号ラインが上昇した直後に成長し始めるのではなく、短い時間の後に成長し始める。隣接するクロック信号ラインが上昇し、その前に作動していたラインが低下すると、暗電流成分は、クロック信号の変更が十分に速い速度で実行され、十分な回復時間が各々のクロック信号ラインに割り当てられる限り、十分なレベルに達しない。
【0056】
クロック信号ラインが上昇すると、電子の熱運動によって、そのポテンシャルが、暗電流と呼ばれる漏洩電流(すなわち、ピクセルに入る放射線に含まれない信号成分)をピクセルウエルに発生させる。暗電流成分は、センサの温度に大きく依存するので、センサを冷却することにより、小さくすることができる。クロック信号ラインの極性が反転した場合、すなわち、センサの基板に関して負になった場合には、上述の暗電流成分の形成が阻止される。実際に、この技術は今日、上述のようにドープすることにより、また、総てのクロック信号ラインを負にすることにより、センサボディに形成された静電場の助けを受けて、ピクセルの電荷を一定に維持することにより、応用されている。しかしながら、シリアルシフトレジスタ12はそのような機能を備えていないので、その電荷は、クロック信号ラインを上昇させることにより形成されるポテンシャルウエルの助けを受けて一定に維持しなければならず、不運にして、暗電流成分を形成することになる。この欠点は、本発明の好ましい実施例に採用される「ディザリング」スキームによって軽減することができる。
【0057】
クロック信号ラインが負になると、暗電流成分の成長が即座に停止する。その理由は、ポテンシャル場がそれと反対に作用し、これにより、暗電流成分に対して逆バイアスされたある種のダイオードが、ピクセルウエルのインターフェースに形成されるからである。クロック信号ラインのポテンシャルが再度負になると、例えば、負になってから数ミリ秒の後に、暗電流は直ちにその定常状態レベルに達するのではなく、上記ウエルの固有の電荷キャリアの数に逆比例する時定数を有する時間の関数として、低いレベルから指数関数的に成長する。「ディザリング」された刻時の概念は、クロック信号ラインを維持することに基づいている。そのクロック信号ラインの下でポテンシャルウエルが形成される必要はない。また、クロック信号ラインは、その下で暗電流成分が形成されるのを阻止するに十分なだけ負であり、図8に示すように、正に維持すべきピクセルのクロック信号ラインから1つのクロック信号ラインを交互に選択する。比較的短い期間にわたって、一時に1つのクロック信号ラインだけが、上述の時定数に関して高くなるので、暗電流の形成が十分に低減される。実際には、CCDセンサの上述の時定数は、センサの温度に強く依存し、一般的には、40°Cにおいて約10秒、20°Cにおいて15ミリ秒、そして、80°Cにおいて180マイクロ秒である。各々のクロック信号ラインを図8に示すように、10マイクロ秒よりも高く同時に維持することにより、暗電流成分は、室温において1,000分の1以下まで減少させることができる。
【0058】
撮像要素マトリックスにおいては、通常の「ディザリング」された刻時スキームを、上述の態様で作動するシリアルシフトレジスタ12を有する本発明の好ましい実施例に適用することができる。ここにおいて、暗電流成分は、実際的に完全に除去することができる。従って、本発明の好ましい実施例によれば、図7の時間R0において、シリアルレジスタ12が、刻時スキームの適正な時点において読まれるか、あるいは、その後の積分期間の間の別の時間にわたって、上記レジスタは、「ディザリング」を受ける。図8には、「ディザリング」時間の間の三相刻時されるシリアルレジスタ12に関するクロック信号の例が示されており、その調時期間は、一般的に、暗電流成分の形成を阻止するように短く設定される。
【0059】
ここにおける問題は、この自己調時型の「ディザリング」スキームは、どのような手段によっても、制御電子要素ブロック17の作動に関してランダムに生ずる撮像要素マトリックスの電荷伝達インターバルに同期させることができず、電荷の伝達効率を最大化するために、シリアルシフトレジスタ12の伝達クロック信号は、撮像要素マトリックス10、又は、記憶マトリックス11の電荷がそれぞれ、シリアルシフトレジスタ12に伝達されている時には常に、ある状態に維持されなければならないことである。この問題は、撮像要素マトリックス10又は記憶マトリックス11の電荷がそれぞれシリアルシフトレジスタ12へ移動し始める間に、シリアルシフトレジスタ12のクロック信号を制御した状態でそれぞれの正しい状態にすることにより、解消することができる。図7から分かるように、SYNC信号が高くなると、撮像要素マトリックスのIOxクロック信号は、電荷伝達を実行するに必要なシーケンスを通り、その間に、シリアルシフトレジスタ12のクロック信号は、上記電荷がシリアルシフトレジスタ12に伝達される前に、それぞれの正しい状態に置かれなければならず、そのようなステップは、実際には、シーケンスの段階V14でのみ生ずる。図9には、十分に短い時間の間に何等かの状態から電荷伝達シーケンスに入る三相刻時型のセンサに関して代表的な「ディザリング」クロック信号の制御が示されている。電荷伝達状態においては、シリアルのクロック信号ライン1、2は、その周囲に形成されたポテンシャルウエルを最大ポテンシャルを維持するために高く保持され、これと同時に、クロック信号ライン3は、ゼロポテンシャルに維持されて、異なる行の電荷が互いに相互作用するのを防止している。
【0060】
本発明と共に効果的に応用される「ディザリング」された刻時方法に関しては、以下の刊行物を参照されたい。
Burt D.J.,GECの“DEVELOPMENT OF X−RAYCCDs”(Marconi Limited,Hirst Research Center,and EEV Ltd,Chelmsford)−1992年11月10−12日にオランダのNoordwiikのESA/ESTECで開催された、“Proceedings of an ESA Symposium on Photon Detectors for Space Instrumentation(1992年12月のESA SPー356)”。Burke B.and Gajar S.A.の“Dynamic suppression of interface state dark current in buried channel CCDs”−(IEEE Trans.Electron Devices,Vol.ED38−2,1991)。
【0061】
図10を参照すると、基本的には歯科用放射線撮影用のパノラマ式X線装置が示されており、この装置は、水平なサポートアーム21を担持する垂直な柱を備えており、この柱は、モータ25によって垂直方向に運動可能であると共に、モータ24によって回転可能である。上記水平なサポートアームは、その一端部にX線発生装置を担持しており、これにより、該X線発生装置によって発射された狭いX線ビーム26が、一方の側において患者の組織を通過し、反対側において、センサヘッド23に入射する。このセンサヘッドは、本発明のCCDセンサシステムを備えており、このCCDセンサシステムは、プログラム制御の下である範囲内で自由に設計することができる。
【0062】
図11を参照すると、本発明の応用例として作用するに適した乳房X線撮影装置が示されており、この装置は、ベース30に取り付けている。ベース30には、垂直柱の固定部分32が取り付けられており、この垂直柱部分は、リフトモータ31を収容しており、このリフトモータによって、垂直柱の可動部分38を、上記固定部分の中で入れ子式に、上昇又は下降することができる。垂直柱の部分は、C型アーム44を水平軸線H−Hの周囲で回転させるためのモータ33を収容している。C型アーム44の一端部は、X線源42を支持しており、一方、上記アームの他端部は、棚状の下方の胸部サポート36を担持している。モータ34によって作動される上方の圧縮サポート43の助けにより、放射線撮影される胸部Mが棚状の下方の胸部サポート36に押し付けられる。胸部の露光(照射)の間に、X線管39によって放出される狭いX線ビーム41が、一次ブラインドを通過する。この一次ブラインドは、モータ40によって、水平方向に運動可能になされている。上記X線ビーム41は、次に、放射線撮影されている胸部Mを通過し、最終的には、センサヘッド45に入射する。該センサヘッド45は、モータ35によって、上記一次ブラインドと共に同時に運動するようになされている。上記センサヘッドは、プログラム制御の下である範囲内で自由に設計することのできる上述の如き本発明のCCDセンサシステムを備えている。
【0063】
図12を参照すると、胸部蛍光透視撮影装置が示されており、この装置においては、X線源74が狭いX線ビーム73を発射し、該X線ビームは、患者Pの胸部を通過して、センサ72に当たる。露光の間に、X線源74及びセンサ72は、モータ70によって、垂直方向に移動する。センサ72は、プログラム制御の下で所定範囲内で自由に設計することのできる上述のタイプの本発明のCCDセンサシステムである。
【0064】
上に例示した総ての装置は、スリットブラインド式の露光装置を用いて作動するが、本発明の用途をそのような構成に限定して理解してはならない。例えば、図11に示す装置は、胸部M全体を一度に観察するという通常のX線透視法の原理を用いて作動することができ、これにより、本発明のCCDセンサは、上記下方の胸部サポートの寸法に等しい寸法を有するか、あるいは、プログラム制御の下で所定範囲内で自由に設計可能である本発明の上述のタイプの大面積マトリックスCCDセンサシステムと少なくとも同じとすることができる。
【0065】
図13には、本発明の撮像装置の第1の実施例による制御装置80が示されており、ユーザは、制御パネル81のキーパッドを介して、所望の撮像構造(撮像コンフィグレーション)に必要とされる露光パラメータを上記制御装置に入力する。ユーザが入力するそのようなパラメータ、並びに、パラメータメモリ82に記憶された予め選択されたデータに基づき、制御装置80は、信号VBx、HBx及びBMによって、最も適正なセンサシステムの設定値を制御電子要素ブロック17(図1及び図2)に送信する。露光の間に、制御装置80は、START及びSYNC信号によって、センサシステムの作動をアプリケーションプラットフォームの他の機能に同期させる。その複数のアクチュエータ(図13)は、概略的に示されるモータ83、84であり、これらモータは、例えば、パノラマ式放射線撮影装置の上記C型アーム回転モータ(図10のモータ24)、あるいは、乳房X線撮影装置の一次ブラインド及び撮像センサの作動モータ(図11のモータ35及び40)とすることができる。
【0066】
図14には、パノラマ式放射線撮影装置/頭部撮影装置の複合型の装置が示されており、複合型装置は、図10に示す構造と同様な構造を有しているが、水平アーム27が取り付けられており、この水平アームは、その一端部に、頭部撮影を行うためのスリット撮像カメラ28を担持しており、この撮像カメラには、プログラム制御の下で所定範囲内で自由に設計可能な本発明の上述のタイプのCCDセンサシステムが取り付けている点が異なっている。
【0067】
乳房X線撮影装置の露光は、通常は、図15A及び図15Bに示す構造を用いて行われる。図15Aには、いわゆる接触露光が示されており、この接触露光においては、放射線撮影すべき胸部Mが、撮像媒体100に対して実質的に平坦に押圧され、その胸部の目標物Cが、X線ビームの助けにより、ある倍率で撮像媒体100上に撮像される。上記倍率の値は、図15A及び図15Bの記号を用いて、下式から計算することができる。
【数1】
実際には、押圧された胸部Mの厚みは、45mmであり、これにより、図15Aの接触露光の幾何学的配置が、胸部のほぼ中間点で撮像すべき目標物Cの倍率よりも若干大きい倍率を与える。撮像媒体100からX線源の焦点Fまでの距離SIDが65cmに設定された撮像の幾何学的配置においては、1.036の倍率が得られる。
【0068】
より厳密に観察するために、乳房X線撮影は、いわゆる拡大露光を用いて実行され、この拡大露光においては、目標物の細部がより大きく詳細に観察することができる。その露光の幾何学的配置が、図15Bに示されている。この場合には、撮像すべき胸部Mは、撮像媒体100に押圧されているのではなく、上記撮像媒体の上方にある拡大サポート101に押圧されている。ここで、上の例に従って、距離OIDmを32.5cmに設定すると、2.0の倍率が得られ、これにより、撮像媒体100上の目標物Cの像の寸法は、上述の例で得られる寸法の2倍である。
【0069】
しかしながら、図15Bに示す幾何学的配置も欠点を有している。目標物Mが、X線管の焦点Fに接近すると、目標物に与えられる放射線量は、距離の二乗に比例し、これにより、図示のケースにおける放射線量は、4倍の値まで増大する。また、X線管の焦点Fの有限サイズが、撮像精度に悪い影響を与え始める。この撮像プロセスは、変調伝達関数(MTF)の助けにより、下式から方形の焦点スポットに関して上記関数を計算することにより、評価することができる。
【数2】
【数3】
【0070】
ファクタMは、倍率であり、Fは、X線管の焦点スポットのサイズである。このサイズは、乳房X線撮影装置においては、一般的に、接触露光では0.3mmであり、また、拡大露光では0.1mmである。
【0071】
図16には、種々の露光構造に関して、焦点スポットの有限サイズに対するMTFの曲線がプロットされている。0.3mmの焦点サイズを有する接触露光に関する撮像分解能が、グラフC31として示されており、同じ焦点サイズを用いた場合の倍率2を有する拡大露光がグラフC32として示されている。図16から、拡大露光の分解能は、約6lp/mmで低下していることが分かり、この値は、どのような条件においても、十分なものとは考えられない。そのような欠点のために、通常は、より小さい0.1mmの焦点サイズを拡大露光において使用する。この焦点サイズ及び倍率の値2に関して、拡大露光の分解能が、図16のグラフC12に示されており、このグラフから、グラフC32に比較して分解能がかなり増大していることは明らかである。しかしながら、図16から分かるように、拡大分解能は、0.3mmの焦点を有する接触露光の分解能を表すグラフC31の分解能よりも劣っており、実際に、拡大露光の有用性は、撮像構造の最も弱い要素に関係し、そのような要素は、フィルム/強化スクリーンの複合体であり、そのMTFが、図17のグラフFSに示されている。ここにおいて、その倍率は、フィルム/強化スクリーンの複合体の分解能を大きく改善し、これにより、X線管の焦点からの距離が長いことにより生ずる不鮮明さにも拘わらず、拡大露光における最終的な分解能は、接触露光に比較して高い値に留まっている。
【0072】
図17には、種々の撮像媒体の変調伝達関数がプロットされている。デジタルCCDイメージセンサの分解能が、30μmのピクセルサイズに関して、グラフD30に示されており、また、60μmのピクセルサイズに関して、グラフD60に示されている。グラフFSは、最近のフィルム/強化スクリーンの複合体の分解能を示している。デジタル撮像センサのMTFは、下式から計算される。
【数4】
上式において、pは、ピクセルサイズ(μm)である。図17が、デジタル撮像センサの優れた分解能を示すことは否定できない程度に明らかである。
【0073】
撮像装置全体の全体的な分解能は、そのサブシステムの変調伝達関数の積を用いて得ることができ、これにより、現在のケースにおいては、焦点スポットの変調伝達関数と撮像手段の伝達関数との積が用いられる。
【数5】
【0074】
図18には、下の表に示す露光値に関して上述の式から計算した変調伝達関数が示されており、また、比較のために、フィルムの分解能も示してある。
【0075】
【表2】
【0076】
図18から、自由に設計可能なピクセルサイズを有し、より小さいピクセルサイズを用いて接触露光として「拡大」露光を行う、本発明のセンサを用いると、通常の一定のピクセルサイズを用いる通常の拡大露光において可能な分解能よりもかなり高い分解能を得ることができることは、直ちに明らかである。グラフD30cとD60mとの間の唯一の違いは、接触露光に使用される0.3mmの焦点を表す変調伝達関数と拡大露光に使用される0.1mmの焦点との間の差によって生じるが、その理由は、センサの変調伝達関数は両方のケースにおいて同じであるからである。ここにおいて、30μmのピクセルサイズを有する接触露光における撮像分解能は、2の対物倍率を有する拡大露光における60μmのピクセルに等しいことに注意する必要がある。
【0077】
本発明のセンサの可変分解能方法によって可能となり、一定のピクセルサイズに基づく通常の拡大露光法に比較して撮像分解能が改善される利益に加えて、単一の焦点サイズの簡単で廉価なX線源だけを用いることができる。
【0078】
ここにおいて、X線管の陽極板上の0.1mmの焦点スポットの物理的面積は、0.3mmの焦点スポットよりもかなり小さく、従って、より大きな0.3mmの焦点スポットに許容されるパワーレベルの僅か20%を負荷させることができることを理解する必要がある。従って、より小さい焦点は、必然的に、同等の目標物の撮像における露光時間の約5倍程度の長い露光時間を必要とし、露光の間に患者が動いた場合には、像の中に運動ぼけを生ずる可能性が高い。
【0079】
30μmのピクセルの面積は、60μmのピクセルの面積の僅か4分の1であるので、基本的には、30μmのピクセルは、上記大きなピクセルと同じレベルのセンサ出力信号を得るためには、4倍の放射線量を撮像センサに与える必要があり、そのような放射線量は、通常の撮像方法を用いる拡大露光で必要とされる放射線量と全く同じである。しかしながら、本発明の方法によれば、目標物を通過してその中で減衰する放射線は、通常の拡大露光における状態に比較して、撮像手段に衝突する前に、空気中の非常に短い距離の外には移動する必要がなく、そのような空気中におけるX線の減衰は、大きくないので、これにより、実際には、通常の撮像方法に比較して、少ない放射線量が必要とされることになる。
【0080】
本発明の乳房X線撮影の用途における別の利益は、より小さいピクセルサイズで「拡大」露光を行い、また、接触露光を用いることにより、像面積全体にわたる「拡大」露光を必要に応じて行うことができることである。これにより、目標物がX線管に接近してされる場合の従来技術の欠点が排除され、例えば、2倍の倍率が、撮像媒体上の像を極めて大きくするので、その4分の1だけを記録することができる。
【0081】
上述の代表的な好ましい実施例に限定されることなく、本発明の細部は、請求の範囲に記載の本発明の範囲内で、変形及び変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TDIモードの撮像を行うようになされた制御電子要素を備える本発明のCCDセンサシステムの概略的なブロック図である。
【図2】FTモードの撮像を行うようになされた制御電子要素を備える本発明のCCDセンサシステムの図1のブロック図と等価の概略的なブロック図である。
【図3】本発明のCCDセンサシステムの代表的な出力信号のタイミング信号図である。
【図4】CCDセンサの出力信号におけるピクセル−比電荷ゼロオフセットのレベルを感知するための構造の回路図である。
【図5】CCDセンサシステムの出力信号におけるピクセル電荷の垂直方向の総和のタイミング信号図である。
【図6】TDIモードの撮像においてフル分解能で運動追跡を行うようになされた本発明の好ましい実施例のシーケンス図である。
【図7】図6に示すTDIモードの撮像シーケンスのタイミング信号図である。
【図8】暗電流成分を除去するためにシリアルシフトレジスタの内容の「ディザリング(dithering)」を用いる、本発明の好ましい実施例のタイミング信号図である。
【図9】三相クロック型のセンサを電荷転送状態にするための代表的な「ディザリング」クロック信号のタイミング信号図である。
【図10】歯科用のパノラマ式放射線検査装置に適用された本発明の実施例の軸方向の概略図である。
【図11】乳房X線撮影装置に適用された本発明の実施例の軸方向の概略図である。
【図12】胸部蛍光透視検査装置に適用された本発明の実施例の軸方向の概略図である。
【図13】本発明のセンサシステム用の制御装置のレベルの概略を示す基本的なブロック図である。
【図14】頭部撮影モードの露光を行うためのセファロスタットを備える歯科用パノラマ式放射線検査装置に適用された本発明の実施例の軸方向の概略図である。
【図15】図15Aは、直接放射線写真を形成する乳房X線撮影を示す幾何学的な図であり、図15Bは、拡大放射線写真を形成する乳房X線撮影を示す、図15Aと等価の幾何学的な図である。
【図16】乳房X線撮影の種々の用途に使用されるフォーカスサイズの種々の別個の値に関する変調伝達関数(MTF)のプロットである。
【図17】種々のタイプの撮像手段によって得ることのできる分解能を示す、図16と同様な変調伝達関数のプロットである。
【図18】種々の用途における撮像装置全体の全体的な分解能を示す、図16及び図17と同様な変調伝達関数のプロットである。
【符号の説明】
10,19 撮像要素マトリックス
12 シリアルシフトレジスタ
13 出力ウェル
17 制御電子要素ブロック
80 制御装置
81 制御パネル
82 パラメータメモリ
O,P,M 目標物
Claims (29)
- 電磁放射線の助けにより目標物を撮像するための方法であって、
目標物(O;P;M)から反射される及び/又は該目標物を通って伝達される電磁放射線が撮像センサシステムによって検知され、該撮像センサシステムは、該目標物(O;P;M)から得た像情報を搬送する電気的な出力信号を発生することができ、該撮像センサシステムは、行列として配列された複数の写真撮像要素すなわちピクセルから構成される固体撮像センサを備えており、該電磁放射線が撮影すべき目標物を走査するときに該目標物と該固体撮像センサとの間に相対運動が生じる場合に、前記方法は、TDIモードの撮像技術を用いて、該固体撮像センサ上に撮像される該目標物から形成される像情報を、複数の積分期間の間に該相対運動と同じ速度で該ピクセルの行に沿って繰り返し転送する方法であって、
所望の分解能を達成するために必要なピクセルの物理的サイズよりも小さいピクセルの物理的サイズを使用して、該固体撮像センサの該ピクセルの該物理的サイズに対応する同期ステップでピクセルの像情報を転送し、それによって、該撮像される目標物と該固体撮像センサとの間の相対運動の追跡を該使用しているピクセルのサイズに対応するステップで行い、転送段階でこの方法で得られたこれらのピクセルの該像情報に該ピクセルの順次のビンニングすなわち結合を行うことを特徴とする撮像方法。 - 該固体撮像センサから該像情報を読み出す前に該ピクセルが少なくとも該ピクセルの行に沿う方向に蓄積されることを特徴とする請求項1に記載の撮像方法。
- 該像情報は、転送されて電荷の形で蓄積されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像方法。
- 該電磁放射線は、X線であり、該目標物(O;P;M)を通過した該X線は、所定範囲内でプログラム制御可能な該撮像センサシステムによって検知されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像方法。
- 該撮像センサシステムから得た該出力信号は、通常のディスプレイ手段によって視覚化するのに適するように、及び/又は、通常の記憶手段にデジタル形式で記憶するのに適するように変換されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像方法。
- 該固体撮像センサの該撮像要素すなわちピクセルは、ビンニングすなわち結合されて該行列の行及び/又は列に沿うより大きなクラスタにされ、該ピクセルの行に沿う方向における該ビンニングは、該撮像センサシステムのシリアルシフトレジスタ(12)に転送されて加算されたピクセルの像情報を該撮像センサシステムから読み出す前に、複数の行の該撮像要素の該ピクセルの該像情報を該シリアルシフトレジスタ(12)に転送することにより行われ、それによって、該複数の行の該撮像要素が加算される、そして、該固体撮像センサの垂直方向における加算は、最初に、該撮像センサシステムの出力ウェル(13)をクリアし、次に、該撮像センサシステムからの該出力信号を検知する前に該シリアルシフトレジスタ(12)の複数の該像情報の内容を該出力ウェル(13)に転送することにより行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像方法。
- 該固体撮像センサはCCDセンサであり、該像情報は電荷の形態であることを特徴とする請求項6に記載の撮像方法。
- 該垂直方向における該電荷のビンニングは、該出力ウェル(13)の電荷ゼロオフセットレベルを該出力信号から感知することにより行い、該出力ウェル(13)は、適宜な時間(Z0)において与えられる信号(CDS)の助けによりクリアパルス(OR)を与えることにより事前にクリアされており、その後、所定時間において電荷を該出力ウェル(13)に加算し、これにより、これらの工程の後に信号(SH)の制御の下で該撮像センサシステムからの該出力信号を検知し、該出力ウェル(13)は、次の出力検知動作のためにクリアされることを特徴とする請求項7に記載の撮像方法。
- 該撮像センサシステムに設けられた制御電子要素ブロック(17)は、入力信号(VBx)によって制御され、該制御電子要素ブロック(17)の制御の下で、該入力信号(VBx)によって決定されるピクセル数の電荷を該出力ウェル(13)に転送し、その後、該出力信号を検知することを特徴とする請求項7又は8に記載の撮像方法。
- 該シリアルシフトレジスタ(12)の長さが、ビンニングすべきピクセルの数で整数として割りきれない場合には、該制御電子要素ブロック(17)は、該割り算の余りに等しい数の空のピクセルの電荷を該出力信号の最後のサンプルに加算すべき命令を出し、これにより、行の同期化が失われないようにすることを特徴とする請求項9に記載の撮像方法。
- 該走査方向における該ピクセルの該電荷の該ビンニングは、入力信号(HBx)によって決定される行の数が該シリアルシフトレジスタ(12)に転送されるまで、該撮像要素の該行列(10)の電荷を、常に一時に1行ずつ、該シリアルシフトレジスタ(12)に転送することにより行われ、その後にだけ、該シリアルシフトレジスタ(12)からの電荷の読み出しが通常の態様で行われることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の撮像方法。
- 前記方法は、該ピクセルの行に沿う方向における該ピクセルの電荷の該ビンニングは、入力信号(HBx)によって決定される行の数が該シリアルシフトレジスタ(12)に転送されるまで、該撮像要素の該行列(10)の電荷を、常に一時に1行ずつ、該シリアルシフトレジスタ(12)に転送することにより行われ、その後にだけ、該シリアルシフトレジスタ(12)からの電荷の読み出しが通常の態様で行われる作動モードを含むことを特徴とする請求項9又は10のいずれかに記載の撮像方法。
- 前記作動モードは、該撮像センサシステムの該制御電子要素ブロック(17)の入力信号(BM)によって選択可能であることを特徴とする請求項12に記載の撮像方法。
- 該シリアルシフトレジスタ(12)を適宜の時点で読み取り、他の時点の間に、ディザリングを該シリアルシフトレジスタ(12)のクロック信号に適用することを特徴とする請求項7乃至13のいずれかに記載の撮像方法。
- 該シリアルシフトレジスタ(12)の該クロック信号は、該撮像要素の該行列(10;19)の電荷が該シリアルシフトレジスタ(12)へ移動し始める期間に制御されて正しい状態に補正され、該撮像要素の該行列のクロック信号(IOx)は、電荷の転送を行うために必要なシーケンスを行い、その間、該シリアルシフトレジスタ(12)の該クロック信号は、該電荷が該シリアルシフトレジスタ(12)に転送される前に、正しい状態に補正されることを特徴とする請求項14に記載の撮像方法。
- 該CCDセンサのピクセルサイズは、20〜50μm×20〜50μm、最も好ましくは、約30μm×30μm程度になるように寸法決めされ、該ピクセルのクラスタへのビンニング及び該CCDセンサは、プログラム制御可能に構成されており、これにより、乳房X線撮影装置においては、ビンニングされた該クラスタのサイズは、1×1ピクセルから2×2ピクセルであり、拡大乳房X線撮影は、ビンニングを行うことなく最大可能な分解能を用いて実行され、通常の接触乳房X線撮影は、ビンニングされた2×2ピクセルのサイズのクラスタを用いて実行されることを特徴とする請求項7乃至15のいずれかに記載の撮像方法。
- 該CCDセンサのピクセルサイズは、20〜50μm×20〜50μm、最も好ましくは、約30μm×30μm程度になるように寸法決めされ、該ピクセルのクラスタへのビンニング及び該CCDセンサは、プログラム制御可能に構成されており、これにより、歯科用のパノラマ式放射線撮影装置において、該ピクセルのビンニングは、3×3ピクセル乃至6×6ピクセルのサイズのクラスタの範囲内で選択されるようになされており、該歯科用のパノラマ式放射線撮影装置と組み合わせて設けられた頭部撮影装置においては、該CCDセンサの該ピクセルのビンニングは、6×6ピクセル乃至8×8ピクセルのサイズのクラスタの範囲内で選択可能になされていることを特徴とする請求項7乃至15のいずれかに記載の撮像方法。
- 制御装置(80)を使用して、使用者は、所望する撮像設定に必要な露光パラメータを入力することができ、該パラメータは、制御信号(VBx、HBx、BM)を介して、該撮像センサシステムの該制御電子要素ブロック(17)に対する最も適正な撮像センサの設定値を決定し、露光の間に、該制御装置(80)は、制御信号(START、SYNC)の助けにより、該撮像センサシステムの作動を放射線撮影装置の他の機能に同期させることを特徴とする請求項9乃至17のいずれかに記載の撮像方法。
- 該制御装置(80)は、該制御装置に関連して設けられたパラメータメモリ(82)に記憶されている使用者が入力した該パラメータに基づいて、作動されることを特徴とする請求項18に記載の撮像方法。
- 目標物を撮像するための撮像装置であって、
撮像すべき目標物に電磁放射線を照射するための手段と、
撮像センサシステムと、
前記撮像センサシステムは、行列として配列された複数の写真撮像要素すなわちピクセルから構成される固体撮像センサを備えており、
前記撮像センサシステムの出力信号を表示及び/又は記憶するための手段と、
前記撮像センサシステムの制御装置(80)と、
撮像すべき該目標物と前記撮像センサシステムとの間に相対運動を生じさせる手段とを備えており、
該相対運動は、撮像すべき該目標物への該電磁放射線のビームの走査移動を生じさせる撮像装置において、
前記ピクセルは、所望の分解能を達成するために必要なピクセルの物理的サイズよりも小さい物理的サイズを有しており、
前記制御装置(80)は、TDIモードの撮像技術を用いて、前記固体撮像センサ上に撮像される該目標物から形成される像情報を、複数の積分期間の間に該相対運動と同じ速度で、前記固体撮像センサの前記ピクセルの物理的サイズに対応する同期ステップで、繰り返し転送し、それによって、撮像すべき該目標物と前記固体撮像センサとの間の相対運動の追跡を該使用している前記ピクセルの物理的サイズに対応するステップで行うように構成されており、且つ、前記制御装置(80)は、転送により得られたこれらのピクセルの該像情報に該ピクセルの順次のビンニングすなわち結合を行うように構成されていることを特徴とする撮像装置。 - 前記制御装置(80)は、前記固体撮像センサから該像情報を読み出す前に該ピクセルを少なくとも該ピクセルの行に沿う方向に結合すなわちビンニングする制御をするための手段を備えていることを特徴とする請求項20に記載の撮像装置。
- 前記撮像センサシステムは、該ピクセルの像情報を電荷の形で検出し、転送し、ビンニングするように構成されていることを特徴とする請求項20又は21に記載の撮像装置。
- 前記制御装置(80)は、制御パネル(81)に接続されており、使用者は、前記制御パネル(81)を介して、所望の撮像設定に関して前記撮像センサシステムを設定するために必要な露光パラメータを入力することができることを特徴とする請求項20乃至22のいずれかに記載の撮像装置。
- 前記制御装置(80)は、パラメータメモリ(82)を備えており、これにより、前記パラメータメモリに記憶された予め選択されたデータ、並びに、前記制御パネル(81)を介して入力された該パラメータに基づいて、前記撮像装置の制御電子要素ブロック(17)は、制御信号(VBx,HBx,BM)によって制御され、前記制御装置(80)から、前記撮像センサシステムの作動を行わせるための同期化信号(START,SYNC)を得ることができることを特徴とする請求項23に記載の撮像装置。
- 前記電磁放射線を発射するための手段は、X線源であることを特徴とする請求項20乃至24のいずれかに記載の撮像装置。
- 前記撮像装置は、前記X線源を備える乳房X線撮影装置(図11)、歯科用パノラマ式放射線撮影装置(図10)、歯科用パノラマ式放射線撮影装置/頭部撮影装置の複合装置(図14)、あるいは、胸部蛍光透視撮影装置(図12)に適用され、これにより、通常のフィルム/カセット記録媒体が、前記撮像センサシステムによって置き換えられることを特徴とする請求項25に記載の撮像装置。
- 前記固体撮像センサはCCDセンサであり、該ピクセルの像情報は電荷であることを特徴とする請求項20乃至26のいずれかに記載の撮像装置。
- 前記CCDセンサの前記撮像要素すなわちピクセルは、ビンニングすなわち結合されて前記行列の行及び/又は列に沿うより大きなクラスタにされるように配置されており、該行に沿う方向における該ビンニングは、前記撮像センサシステムのシリアルシフトレジスタ(12)に転送されて加算された電荷を該撮像センサシステムから読み出す前に、複数の行の該撮像要素の電荷を該シリアルシフトレジスタ(12)に転送することにより行われ、それによって、該複数の行の該撮像要素の該電荷が加算される、そして、垂直方向すなわち該CCDセンサの該列に沿う方向における該電荷の加算は、最初に、該撮像センサシステムの出力ウェル(13)をクリアし、次に、該撮像センサシステムからの該出力信号を検知する前に該シリアルシフトレジスタ(12)の複数の電荷の内容を該出力ウェル(13)に転送することにより行なわれるように構成されていることを特徴とする請求項27に記載の撮像装置。
- 該行に沿う方向における該ピクセルの該電荷の該ビンニングは、入力信号(HBx)によって決定される行の数が該シリアルシフトレジスタ(12)に転送されるまで、該撮像要素の該行列(10)の電荷を、常に一時に1列ずつ、該シリアルシフトレジスタ(12)に転送することにより行われ、該シリアルシフトレジスタ(12)からの電荷の読み出しは、その後にだけ通常の態様で行われるように構成されていることを特徴とする請求項28に記載の撮像装置。
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