JP4313473B2 - コンロッド成形用鍛造金型装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大端部と小端部と大小両端部間の棹部とを有するコンロッドを、棹部に相当する軸部と、大端部に相当する軸部一端の大端用塊部と、小端部に相当する軸部他端の小端用塊部とを有するプリフォームを素材として成形する鍛造金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の鍛造金型装置として、下ダイと、下ダイに対し相対的に昇降自在な上ダイと、下ダイに対し固定の中間ダイとを備え、中間ダイにコンロッドの輪郭に合致する形状の成形穴を形成し、上ダイと下ダイとによりプリフォームを成形穴内で鍛圧してコンロッドを成形するようにしたものは知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
プリフォームを成形穴内で鍛圧すると、中間ダイに成形穴を幅方向及び長手方向に拡張しようとする力が作用し、成形穴の周縁のうちコンロッドの大端部の棹部とは反対側の端縁の両側のエッジ部に合致する箇所や、コンロッドの小端部の最大幅員部の両側の周面部に合致する箇所や、コンロッドの小端部の棹部とは反対側の頂点部に合致する箇所に応力が集中して、中間ダイにこれら各箇所を起点にして亀裂が入ることがあり、型寿命を伸ばす上で問題になっている。
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、中間ダイに亀裂が入ることを防止できるようにしたコンロッド成形用鍛造金型装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、大端部と小端部と大小両端部間の棹部とを有するコンロッドを、棹部に相当する軸部と、大端部に相当する軸部一端の大端用塊部と、小端部に相当する軸部他端の小端用塊部とを有するプリフォームを素材として成形する鍛造金型装置であって、下ダイと、下ダイに対し相対的に昇降自在な上ダイと、下ダイに対し固定の中間ダイとを備え、中間ダイにコンロッドの輪郭に合致する形状の成形穴を形成し、上ダイと下ダイとによりプリフォームを成形穴内で鍛圧してコンロッドを成形するものにおいて、中間ダイを、コンロッドの大端部の棹部とは反対側の端縁に合致する成形穴の周縁部分を構成する第1分割ダイと、前記端縁の両側の各エッジ部からコンロッドの小端部の最大幅員部の両側の各周面部までの部分に合致する成形穴の周縁部分を構成する1対の第2分割ダイと、前記最大幅員部の両側の各周面部からコンロッドの小端部の棹部とは反対側の頂点部までの部分に合致する成形穴の周縁部分を構成する1対の第3分割ダイとに分割し、これら分割ダイを分割ダイ同士が相互の割面において圧接するようにリング部材で外周から締付け、かつ、全ての分割ダイを下ダイ上に押え付けるガイドリングを設け、上ダイが下降したときにガイドリングに上ダイが嵌合するようにしている。
【0006】
本発明によれば、中間ダイが、成形穴の周縁のうち成形穴内でのプリフォームの鍛圧に際して作用する拡張力による応力集中を生ずる各箇所、即ち、コンロッドの大端部の端縁の両側のエッジ部に合致する箇所と、コンロッドの小端部の最大幅員部の両側の周面部に合致する箇所と、コンロッドの小端部の頂点部に合致する箇所とにおいて夫々第1分割ダイと第2分割ダイ、第2分割ダイと第3分割ダイ、両側の1対の第3分割ダイに分割されることになり、そのため応力集中による亀裂の発生が防止される。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1(A)は、クランクピンに対する連結部となる大端部Waとピストンピンに対する連結部となる小端部Wbと大小両端部Wa,Wb間の棹部Wcとを有するエンジン用のコンロッドWを示している。このコンロッドWは、図1(B)に示すプリフォームW′を素材とし、図2に示す鍛造金型装置により冷間の閉塞鍛造で成形される。
【0009】
プリフォームW′は、棹部Wcに相当する軸部W′cと、大端部Waに相当する軸部W′cの一端の大端用塊部W′aと、小端部Wbに相当する軸部W′cの他端の小端用塊部W′bとを有しており、これら大端用塊部W′aと小端用塊部W′bと軸部W′cとの体積比は大端部Waと小端部Wbと棹部Wcとの体積比と略同等に設定されている。
【0010】
鍛造金型装置は、可動型たる上ダイ1と、固定型たる下ダイ2と、コンロッドWの輪郭に合致する形状の成形穴3aを形成した中間ダイ3とを備えており、下ダイ2を囲うダイリング4上に設けた上ダイ1用のガイドリング5により中間ダイ3を下ダイ2上に押え付けている。また、上ダイ1と下ダイ2とに、夫々、大端用パンチ61,62と小端用パンチ71,72とを上下動自在に挿設している。
【0011】
コンロッドWの成形に際しては、先ず、図2(A)に示す如く、下ダイ2上にプリフォームW′を中間ダイ3の成形穴3aに収まるようにセットし、次に、図2(B)に示す如く、上ダイ1を下降させて型締めし、プリフォームW′を上下のダイ1,2により成形穴3a内で鍛圧してコンロッド形状に荒成形する第1段階の鍛造を行う。次に、図2(C)に示す如く、上ダイ1側のパンチ61,71を押下げると共に下ダイ2側のパンチ62,72を押上げて、第2段階の鍛造を行う。これによれば、コンロッドWの大端部Waの穴明け部分と小端部Wbの穴明け部分とが鍛圧され、上下のダイ1,2と中間ダイ3とで画定される成形空間に残っている欠肉部に肉が流れて欠肉部が埋められ、上下の各ダイ1,2に合致する側面形状と中間ダイ3に合致する輪郭形状を持つコンロッドWが成形される。次に、上ダイ1側のパンチ61,71の押下げを継続したまま下ダイ2側のパンチ62、72の押上げを解除し、図2(D)に示す如く、大端用のパンチ61,62間と小端用のパンチ71,72間に残された余肉を打ち抜いて、大端部Waと小端部Wbの穴明けを行う。
【0012】
ところで、上記したコンロッドWの成形に際し、中間ダイ3には成形穴3aを長手方向及び幅方向に拡張しようとする力が作用する。そして、中間ダイ3が一体品であると、大端部Waの棹部Wcとは反対側の端縁に合致する成形穴3aの周縁部分と大端部Waの両側の側縁に合致する成形穴3aの周縁部分とに作用する成形穴3aの長手方向と幅方向への拡張力により、大端部Waの端縁の両側のエッジ部に合致する図3に▲1▼で示す成形穴3aの周縁箇所に引張り応力が集中し、また、小端部Wbの棹部Wc寄りの周面部分に合致する成形穴3aの周縁部分に作用する成形穴3aの長手方向内方を向く拡張力の成分と、小端部Wbの先端側の周面部分に合致する成形穴3aの周縁部分に作用する成形穴3aの長手方向外方を向く拡張力の成分とにより、小端部Wbの最大幅員部の両側の周面部に合致する図3に▲2▼で示す成形穴3aの周縁箇所に引張り応力が集中し、更に、小端部Wbの幅方向一側の半部周面に合致する成形穴3aの周縁部分と小端部Wbの幅方向他側の半部周面に合致する成形穴3aの周縁部分とに作用する成形穴3aの幅方向一側方と他側方への拡張力により、小端部Waの棹部Wcとは反対側の頂点部に合致する図3に▲3▼で示す成形穴3aの周縁箇所に引張り応力が集中する。
【0013】
そこで、本実施形態では、中間ダイ3を、大端部Waの端縁に合致する成形穴3aの周縁部分を構成する第1分割ダイ31と、成形穴3aの両側の▲1▼の箇所から▲2▼の箇所までの周縁部分を構成する1対の第2分割ダイ32,32と、成形穴3aの両側の▲2▼の箇所から▲3▼の箇所までの周縁部分を構成する1対の第3分割ダイ33,33との計5個の分割ダイに分割している。これによれば、▲1▼▲2▼▲3▼の各箇所に応力集中を生じなくなり、応力集中で中間ダイ3に亀裂が入ることが防止される。
【0014】
また、第1乃至第3分割ダイ31,32,33の外周面は同一径の円弧状に形成されており、これら分割ダイ31,32,33を円環状のリング部材34に圧入して、分割ダイ同士が相互の割面3b,3c,3dにおいて圧接するようにリング部材34で外周から締付けている。そして、第1分割ダイ31と各第2分割ダイ32との割面3bと、各第2分割ダイ32と各第3分割ダイ33との割面3cを、成形穴3aの幅方向中心の中心面と各割面3b,3cとの成す角度が夫々45°になるように形成し、1対の第3分割ダイ33,33の割面3dを前記中心面に合致するように形成している。これによれば、第1分割ダイ31と第2分割ダイ32、第2分割ダイ32と第3分割ダイ33及び1対の第3分割ダイ33,33がリング部材34による外周からの締付力で各割面3b,3c,3dにおいて相互に強く圧接されるようになる。かくて、割面3b,3c,3dへの肉の差し込みによるバリの発生が防止され、コンロッドWを精度良く成形できるようになる。
【0015】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、中間ダイに応力集中で亀裂が入ることを防止でき、型寿命を延ばして生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)コンロッドの斜視図、(B)プリフォームの斜視図
【図2】 (A)本発明金型装置の一例の鍛造開始前の状態を示す断面図、(B)前記金型装置の第1段階の鍛造完了時点の状態を示す断面図、(C)前記金型装置の第2段階の鍛造完了時点の状態を示す断面図、(D)前記金型装置の鍛造終了時点の状態を示す断面図
【図3】 前記金型装置に設ける中間ダイの平面図
【符号の説明】
W コンロッド Wa 大端部
Wb 小端部 Wc 棹部
W′ プリフォーム W′a 大端用塊部
W′b 小端用塊部 W′c 軸部
1 上ダイ 2 下ダイ
3 中間ダイ 3a 成形穴
3b,3c,3d 割面 31 第1分割ダイ
32 第2分割ダイ 33 第3分割ダイ

Claims (1)

  1. 大端部と小端部と大小両端部間の棹部とを有するコンロッドを、棹部に相当する軸部と、大端部に相当する軸部一端の大端用塊部と、小端部に相当する軸部他端の小端用塊部とを有するプリフォームを素材として成形する鍛造金型装置であって、下ダイと、下ダイに対し相対的に昇降自在な上ダイと、下ダイに対し固定の中間ダイとを備え、中間ダイにコンロッドの輪郭に合致する形状の成形穴を形成し、上ダイと下ダイとによりプリフォームを成形穴内で鍛圧してコンロッドを成形するものにおいて、中間ダイを、コンロッドの大端部の棹部とは反対側の端縁に合致する成形穴の周縁部分を構成する第1分割ダイと、前記端縁の両側の各エッジ部からコンロッドの小端部の最大幅員部の両側の各周面部までの部分に合致する成形穴の周縁部分を構成する1対の第2分割ダイと、前記最大幅員部の両側の各周面部からコンロッドの小端部の棹部とは反対側の頂点部までの部分に合致する成形穴の周縁部分を構成する1対の第3分割ダイとに分割し、これら分割ダイを分割ダイ同士が相互の割面において圧接するようにリング部材で外周から締付け、かつ、全ての分割ダイを下ダイ上に押え付けるとともに上ダイが下降したときに上ダイが嵌合するガイドリングを設けたことを特徴とするコンロッド成形用鍛造金型装置。
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