JP4311788B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、騒音性能を向上しうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
一般にタイヤのトレッド面に形成されるトレッドパターンは、その模様構成単位であるピッチをタイヤ周方向に連続してくり返すことにより形成している。前記ピッチには、通常、溝が含まれる。従って、タイヤ転動の際、このピッチ中に溝内の空気の圧縮、開放及び路面とのインパクト音が前記ピッチ毎もしくはその複数次毎に周期的に生じ、そのパルス的振動によってパターンノイズを発生することが知られている。
【0003】
このパターンノイズを軽減するため、従来、ピッチに、その周方向の長さを違えた複数種類のものを用い、かつこれらをランダムに並べてパターンノイズ自体を広い周波数帯域に分散させホワイトノイズ化するピッチバリエーション法等が広く採用されているが、未だ十分な効果を奏していないのが実状である。
【0004】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出なされたもので、ピッチバリエーション法を基本としつつも、さらにそのノイズ分散効果を高め不快なタイヤノイズを低減しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【0005】
前記目的を達成するために本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド面に模様構成単位をなすN個のピッチをタイヤ周方向に配列したトレッドパターンを有する空気入りタイヤであって、タイヤ周方向に配列された前記ピッチの列を、各ピッチを単位パルスとしかつ1つのピッチを起点として前記配列の順にしかも各ピッチの周方向の長さであるピッチ長さを隔てたパルス列に置換するとともに、このパルス列を下記式(1)〜(3)でフーリエ変換して得られる1〜K次(K=1〜2Nまでの自然数)の振幅P(K)のうち、1〜N次の各振幅P(S)が式(4)を充足し、かつ前記1〜K次の振幅P(K)は、下記式(5)を充足することを特徴としている。
【数4】

【数5】

ここで、
Nはピッチの総数
X(j)はパルス列におけるi番目の単位パルスの位置
Lは、タイヤ周長変数
Kは1〜2Nまでの自然数
Sは1〜Nまでの自然数
【0006】
また、前記1〜K次の振幅P(K)は、下記式(6)を充足することが望ましい
【0007】
【数6】
【0008】
なお本明細書において、「ピッチ」とは、トレッド部のパターンにおいて前記の通り模様構成単位を形成するものであるが、例えばブロックパターンであれば1つのブロックとこのブロックのタイヤ周方向の一方で隣り合う1つの横溝とから構成され、またリブパターンであればタイヤ周方向に延びるジグザグ溝の谷−谷間又は山−山間の領域として構成され、さらにラグパターンであれば1つのラグ溝とこのラグ溝のタイヤ周方向の一方で隣り合う1つの陸部とでそれぞれ1つのピッチを構成する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤのトレッドパターンの展開図を示しており、図において、トレッド面2には、タイヤ周方向にのびる縦溝3と、この縦溝3と交わる向きにのびる横溝4とにより区分される複数のブロック5が形成されたものを例示している。そして、本例ではトレッドパターンの模様構成単位として、前記1つのブロック5と、このブロックのタイヤ周方向の一方の側に隣り合う1つの横溝4とが1つのピッチ7を構成しているものを例示している。
【0010】
またこのようなピッチ7は、その周方向の長さであるピッチ長さCLの異なる複数種類、例えば5種類で構成されるとともに、トレッド面2にこれらのピッチを後述する要件を充足するように並べたピッチ列9を少なくとも1列、本例では5列有している。なお、本例ではタイヤ軸方向に隣り合う各ピッチ7は、いずれも同じものが採用されている。
【0011】
前記ピッチ7の種類数は3〜10、好ましくは生産性を考慮して3〜8程度、さらに好ましくは3〜5とするのが望ましい。またタイヤ1周でのピッチ7の総数Nは、少なすぎるとピッチバリエーション法による効果が相対的に低下し、逆に多すぎると偏摩耗を招きやすくなるため、例えば45以上、好ましくは50〜70程度とするのが望ましい。
【0012】
なお前記複数種類のピッチ7をそのピッチ長さの順に並べたとき、隣り合うピッチ間のピッチ長さの増加比が大きすぎると、剛性差が大となるため、偏摩耗をもたらす傾向があり、小さすぎると特定周波数に騒音が集中しかねない。かかる観点より前記隣接ピッチ間のピッチの長さの増加比は、1.05〜1.40、より好ましくは1.10〜1.30の範囲とするのが好ましい。
【0013】
さらに前記のように、本発明のタイヤにおいては、タイヤ周方向に配列された前記ピッチ7の列を、図2に示すように、各ピッチ7を大きさが等しい単位パルスUとしかつ1つのピッチ7を起点として前記ピッチ配列の順にしかも各ピッチ7の周方向の長さであるピッチ長さCLに相当する間隔を隔てたパルス列に置換している。また、このようなパルス列は、タイヤ1周に亘り作成される。
【0014】
図2において縦軸はパルスの大きさを、また横軸は単位パルスUの発生する間隔を夫々示している。ここで、単位パルスUの発生間隔は、等間隔ではなく各ピッチ長さCLに応じたものとなり、本例ではこれをピッチ比PLで代用する。「ピッチ比」とは、複数種類のピッチの中で基準となる一つの基準ピッチを定めかつこの基準ピッチの長さに対する各ピッチの長さの比で表される。前記基準ピッチは、好ましくは全種類のピッチを長さの順に並べたときの中間もしくはそれに近いピッチとするのが好ましい。
【0015】
そして、本発明では、このパルス列を次の式(1)、(2)および(3)で定義されるフーリエ変換で得られる1〜K次(K=1〜2Nまでの自然数)の振幅P(K)のうち、1〜N次の振幅P(S)(Sは1〜Nまでの自然数)が下記式(4)を充足することを特徴の一つとしている。
【0016】
【数7】
【0017】
このようなトレッドパターンのピッチ配列から求めたパルス列をフーリエ変換して得られる振幅は、タイヤの騒音を周波数分析したときのノイズエネルギーに、また次数はその周波数と相関があるため、これらの前記振幅P(S)を所定の値以下とすることにより、周波数分散化をより促進でき、不快なノイズエネルギーを効果的に低減して騒音性能を向上するものである。なお、K次を超える振幅値については、タイヤのノイズ特性を論じる際には殆ど影響を及ぼさないため、本実施形態では1〜K次の振幅を対象としている。
【0018】
ここで、前記式(1)、(2)の「L」はタイヤ周長変数として定義され、タイヤ1周に亘り全てのピッチ7のピッチ比を総和したもので表される。また式(1)、(2の「X(j)」とは、起点からj番目のピッチまでのパルス位置を示し、以下の如く起点からj番目までのピッチ比の和をもって表される。
X(1)=PL(1)
X(2)=PL(1)+PL(2) …
X(j)=PL(1)+PL(2)+ … +PL(j)
なおPL(i)(iは、1〜Nまでの自然数)は、起点からi番目に配列されているピッチのピッチ比の値を示すものとする。
【0019】
また、一般にタイヤノイズの主要な音源となる一次成分は、フーリエ変換したときにピッチ数に相当する次数、すなわちN次の次数付近に発生することが多い。従って、フーリエ変換にて得られる振幅において、少なくともこのN次の振幅を小さくすることがホワイトノイズ化のために必要であるが、N次の近傍の次数に一次成分が現れることもあるため、少なくとも1〜N次までの各振幅P(S)を所定値以下に限定することにより、タイヤノイズの分散化を図り、騒音性能を向上しうる。
【0020】
さらに、本実施形態では、前記パルス列を上記(1)〜(3)式でフーリエ変換して得られる1〜N次までの振幅P(S)を、「750×N-1.1」の値以下に限定している。これは発明者らの種々の実験結果から得られたものである。すなわち、ピッチ数などを違えた多数のタイヤを試作し、これらの1〜N次の振幅値を計算するとともに、実車に装着してフィーリングノイズテストを行ったところ、1〜N次の各振幅値P(S)は、750×N-1.1の値以下のものが良好なノイズ特性を示すことが分かった。
【0021】
また下記式(5)に示すように、前記パルス列からフーリエ変換により算出される1〜K次(Kは1〜2Nまでの自然数)までの広い範囲に亘る前記振幅P(K)を、この「750×N-1.1」の値以下とすることにより、周波数の分散効果を高め、より一層不快なノイズエネルギーを効果的に低減する。
【0022】
【数8】
【0023】
また、従来のピッチバリエーション法では、一般的に周波数の分散の散らばり方に主な規則性がないため、周波数を分散したときでも例えばテレビ、ラジオのノイズのように生理的に不快な合成音が形成されてしまうことがある。
【0024】
一般に、人間の「聴覚特性」は、20Hz〜20kHzまでが一般的な可聴範囲とされているが、この範囲の音であるからといって必ずしも均一な感度で聴取されるわけではない。特に500Hz〜5kHz、とりわけ3kHz〜4kHz付近が人間に敏感に聴取される周波数帯とされており、それよりも高周波数側や低周波数側の音に対しては鈍感な聴覚特性を示すことが分かっている。従って、ピッチバリエーション法により周波数が分散されているとは言え、上述の敏感な周波数帯域の音のエネルギーが高いと、乗員に生理的な不快感を与える虞がある。
【0025】
発明者らの実験の結果、このような不快感を減じるためには、敏感な周波数帯域のノイズエネルギーを低減してやればよく、そのためにはタイヤノイズの周波数分散の散らばり方に、振幅が段階的に減少する規則性を与えることが好ましいこと等を知見した。
【0026】
本実施形態では、このようにタイヤノイズの周波数分布の散らばり方において、振幅の段階的な減少変化という規則性を与えるために、前記パルス列をフーリエ変換して得られる1〜K次(Kは1〜2Nまでの自然数)までの振幅P(K)を、下記式(6)に示す如く、(750×N-0.1)/Kの値以下としている。図3〜7などに、P=(750×N-0.1)/Kの曲線を鎖線にて示している。
【0027】
【数9】
【0028】
このように、1〜K次の振幅P(K)が式(6)をも充足することにより、周波数の分散が段階的に減少する規則性を有するため、人間の聴覚特性から見て生理的に不快なノイズエネルギーを効果的に低減しうる点で特に望ましいものとなる。
【0029】
このようなピッチ配列は、例えば任意のピッチ配列順序を設定して、この配列からパルス列を求めてフーリエ変換し、前記の式(4)〜(6)を充足するか否かを確かめても良いし、例えば前記式(6)を満たす振幅波形を離散値化した配列を求めてこれを逆フーリエ変換して配列順序を決定することもできる。
【0030】
また以上の実施形態では、ブロックパターンをなすトレッドパターンを例示したが、これ以外にもリブパターン、ラグパターン、およびこれらの2以上を組み合わせた複合パターンなど種々のトレッドパターンに適用しうる。
【0031】
【実施例】
タイヤサイズが195/55R15であり、かつ図1に示すブロックパターンを基調として表1の仕様に基づきピッチ配列した供試タイヤを試作するとともに、該タイヤの騒音性能を実車走行テストにより比較した。
【0032】
ピッチは以下に示すA〜Eの5種類とし、ピッチの総数Nは58とした。
A ピッチ長さ:24.4mm、ピッチ比:0.750
B ピッチ長さ:28.4mm、ピッチ比:0.875
C ピッチ長さ:32.5mm、ピッチ比:1.00(基準)
D ピッチ長さ:36.6mm、ピッチ比:1.125
E ピッチ長さ:40.6mm、ピッチ比:1.25
なお「ピッチ比」は、各ピッチのピッチ長さを、ピッチCのピッチ長さを1とした比率で示したものである。
【0033】
又前記騒音性能は、タイヤ内圧(226kPa)、リム(15×6JJ)、走行路面(アスファルト)、走行車両(乗用車:1600cc:FF、車重1.3トン)、速度60km/Hの条件下で走行した時の車内騒音をドライバーによるフィーリングによって5点評価したものであって、点数が大なほど優れている。なおテスト結果とピッチ配列順序を表1に示す。さらに、各供試タイヤのトレッドパターンから前記フーリエ変換により求めた次数Kと振幅Pとの関係を示すグラフを図3〜7に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
従来例1、従来例2では、いずれも振幅P(S)、すなわち、1〜58(N)次までに、750×N-1.1を超える振幅が存在しているため、ノイズフィーリングの大幅な向上は見られない。実施例1〜3では、いずれも1〜58(N)次までに、750×N-1.1を超える振幅が存在していないため、良好な周波数分散、特に58次数付近の周波数分散化によりノイズフィーリングが向上していることが確認できる。特に実施例3では、1〜116(K)次までの振幅P(K)が、前記式(6)をも充足しているため、一定の規則性を有して分散化されているため、非常に優れたノイズフィーリングテスト結果が得られていることが確認できた。
【0036】
【発明の効果】
請求項1又は2記載の発明では、タイヤノイズの一次成分において周波数の分散化が向上し騒音特性を大幅に向上しうる。また請求項3記載の発明では、タイヤノイズの周波数分布が、段階的に変化するという規則性を持った散らばりとなるため、人間の聴覚特性に適したホワイトノイズ化が図られ、騒音の不快感をより一層低減しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を説明するトレッドパターンの展開図である。
【図2】パルス列を例示する線図である。
【図3】実施例1のフーリエ変換により得られた次数と次数との関係を示すグラフである。
【図4】実施例2のフーリエ変換により得られた次数と次数との関係を示すグラフである。
【図5】実施例3のフーリエ変換により得られた次数と次数との関係を示すグラフである。
【図6】従来例1のフーリエ変換により得られた次数と次数との関係を示すグラフである。
【図7】従来例2のフーリエ変換により得られた次数と次数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 トレッド面
3 縦溝
4 横溝
5 ブロック
B ブロック
7 ピッチ
CL ピッチ長さ

Claims (2)

  1. トレッド面に模様構成単位をなすN個のピッチをタイヤ周方向に配列したトレッドパターンを有する空気入りタイヤであって、
    タイヤ周方向に配列された前記ピッチの列を、各ピッチを単位パルスとしかつ1つのピッチを起点として前記配列の順にしかも各ピッチの周方向の長さであるピッチ長さを隔てたパルス列に置換するとともに、
    このパルス列を下記式(1)〜(3)でフーリエ変換して得られる1〜K次(K=1〜2Nまでの自然数)の振幅P(K)のうち、
    1〜N次の各振幅P(S)が式(4)を充足し、
    かつ、前記1〜K次の振幅P(K)は、下記式(5)を充足することを特徴とする空気入りタイヤ。

    ここで、
    Nはピッチの総数
    X(j)はパルス列におけるi番目の単位パルスの位置
    Lは、タイヤ周長変数
    Kは1〜2Nまでの自然数
    Sは1〜Nまでの自然数
  2. 前記1〜K次の振幅P(K)は、下記式(6)を充足することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
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