JP4311316B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンを搭載した車両に用いて好適な、内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
従来より、ディーゼルエンジン(以下、エンジンともいう)の排気通路に酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)とディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)とを排気上流側からこの順に介装して、排気中のパティキュレート(排気微粒子,PM:Particulate Matter)を除去する排気浄化装置が知られている。
このうち、DPFはPMを捕集するものであるが、時間の経過とともにDPF内に堆積するPMは増加してDPFが目詰まりして通気性が損なわれてしまうおそれがある。このような事態を回避すべく、DPFによって捕集されたPMを燃焼させることで、定期的にあるいは必要に応じて除去することでDPFの再生を図る手法が存在する。
このDPFの再生の手法を簡単に説明すると、DPFの上流側にDOCを配し、このDOCによってディーゼルエンジンの排気中に比較的多量に含まれるNO(一酸化窒素)を酸化することで酸化剤としての機能の高いNO2(二酸化窒素)に転換し、このNO2により、DPFに捕集されたPMを燃焼させることで、排気温度が比較的低い場合であっても、DPFを連続的に再生(いわゆる、連続再生)できるようになっている。
しかしながら、排気温度が十分に上昇しないような場合、(例えば、エンジン負荷が低くまたエンジン回転数が低いような場合)には、連続再生を行なうことができず、DPFには次第にPMが堆積していくこととなるため、強制再生という手法が用いられる。
この強制再生の手法はいくつか存在するが、その一例を挙げると、エンジンの膨張行程あるいは排気行程で燃料を噴射する、いわゆるポスト燃料噴射を実行する手法がある。これにより、エンジンで燃焼されなかった燃料(つまり、未燃燃料)を多く含んだ排気をDOCに供給することで、DOCにおいて未燃燃料を酸化(つまり、燃焼)させることができる。そして、このDOCにおいて昇温された排気がDOCの下流に配設されたDPFに流れ込むことでDPFの温度を上昇させDPFに堆積したPMを強制的に燃焼させるのである。
このように、通常、DPFはPMを燃焼させる(即ち、再生処理を行なう)ことを前提として設計されているので、ある程度の熱には耐えることができる。しかし、DPFに堆積しているPMの量が急激に燃焼するような事態が発生してしまうと、PMの燃焼によって過大な熱が発生し、DPFが溶損してしまうおそれがある。
このような事態を避けるための技術の一例として、以下の特許文献1の技術が挙げられる。この特許文献1には、DPFを通過した排気の温度を計測する温度センサによって触媒床温度を推定し、この推定された触媒床温度が所定の警戒温度を超えた時には、燃料噴射装置による燃料添加を停止する旨が開示されている。
特開2003−155913号公報
しかしながら、この特許文献1の技術によれば、DPFが実際に所定の警戒温度を超えた後に燃料噴射装置を制御するようになっているため、いわゆる制御遅れを避けることはできず、DPFを確実に保護することは困難である。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、排気フィルタの過昇温による溶損や破損を回避しながら、排気フィルタの再生処理を実行することができる、内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の排気浄化装置(請求項1)は、内燃機関の排気通路に設けられて排気中のパティキュレートを捕集する排気フィルタと、該排気フィルタの上流に位置して該排気通路に設けられた酸化触媒とを有し、該排気フィルタの強制再生時に該酸化触媒の上流側に燃料を添加して燃料を酸化反応させ該排気フィルタの温度を上昇させる内燃機関の排気浄化装置において、該強制再生時における燃料の添加量を該内燃機関の運転状態に応じて設定する燃料添加量設定手段と、該燃料添加量設定手段により設定された添加量の燃料が添加された場合の該排気フィルタの温度を推定するフィルタ温度推定手段と、該フィルタ温度推定手段によって推定された該フィルタ推定温度が予め設定された該排気フィルタの温度を上昇させるときの目標温度履歴をたどるように該燃料添加量を逐次補正する補正手段とをそなえることを特徴としている。
また、請求項2記載の本発明の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1記載の内容において、該温度推定手段は、該排気フィルタによって捕集されたパティキュレートが酸化することで発生する熱量を推定する発熱量推定手段と、該排気の該排気フィルタへ熱伝達による熱輸送量を推定する熱輸送量推定手段とを有し、該発熱量推定手段は、該排気の温度から、該パティキュレートと排気中の酸素の反応速度定数を求め、該反応速度定数と該排気の酸素濃度と該排気フィルタの該パティキュレート捕集量とから該パティキュレートの燃焼量を算出し、該パティキュレートの燃焼量から該パティキュレートが酸化することで発生する熱量を推定し、該熱輸送量推定手段は、該排気のプラントル数および該排気のレイノルズ数を算出し、該レイノルズ数とプラントル数からヌッセルト数を算出し、該ヌッセルト数と該排気の熱伝導率との積を該排気フィルタの直径で除算することで得られる該排気と該排気フィルタとの間の熱伝達率に基づいて該熱輸送量を推定することを特徴としている。
本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、内燃機関の運転状態に応じて設定された添加量の燃料が添加された場合の排気フィルタの温度を推定し、推定された排気フィルタの温度が予め設定された該排気フィルタの温度を上昇させるときの目標温度履歴をたどるように燃料添加量を逐次補正することで、制御遅れを生じることなく、排気フィルタの過昇温に起因する溶損や破損を回避しながら、排気フィルタの再生処理を実行することができる。(請求項1)
また、排気フィルタによって捕集されたパティキュレートが酸化することで生じる熱量と、排気と排気フィルタとの間で生じる熱輸送量とを考慮して排気フィルタの温度を推定するので、推定精度を高めることができる。(請求項2)
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置について説明すると、図1はその全体構成を示す模式的なブロック図、図2はその作用を示す模式的なフローチャート、図3(A)はDPFの推定温度を示す模式的なグラフ、図3(B)は燃料添加量を示す模式的なグラフである。なお、以後、「上流,下流」という記載は、排気の流れに基づくものである。
図1に示すように、ディーゼルエンジン(内燃機関)10の吸気系(図示略)には吸気量を測定するエアフローセンサ(図示略)および吸気量を可変的に制限する吸気絞り(図示略)がそなえられるとともに、エンジン10の排気系11には、上流側から、酸化触媒(以下、DOC)12,排気フィルタ(以下、DPF)13となるようにDOC12とDPF13とがそれぞれ配設されている。
このうち、DOC12は、触媒担持層としてアルミナAl23をハニカム状の基材にコーティングし、この触媒担持層に白金Pt又はパラジウムPd等を担持させたものである。なお、アルミナAl23のコーティングは、排気ガスとの接触面積が多くなるように表面を粗くするためのものである。
そして、このDOC12へ、NOを主成分とした排気が流れ込むと、DOCでは、以下の式(1)のような反応が主に促進されるようになっている。
2NO+O2 →2NO2 ・・・(1)
NO2はNOに比べて酸化剤としての機能が高く、低い活性化エネルギでPMを酸化させることができる。このため、DOC12により排気中のNOをNO2 へと酸化させ、このNO2により、DOC12の下流に配設されたDPF13に捕集されたPMを酸化(燃焼)させるようになっているのである。
また、DPF13は、セラミック製ハニカム型フィルタであり、DPF13内に流入した排気に含まれるPMが捕集できるようになっている。
そして、DOC12によって上述の反応式(1)の反応が促進され、NO2を比較的多く含んだ排気がDPF13に流れ込むと、DPF13では以下の式(2)で示す酸化反応が促進されるようになっている。
2NO2 +2C→N2 +2CO2 ・・・(2)
つまり、DPF13に堆積したPMをNO2により酸化(燃焼)させることにより、PMをCO2 にしてDPF13から除去するとともに排気ガス中のNOX(NO2 )をN2に分解して、PM及びNOX量を低減するとともに、過剰量のPMがDPF13に堆積することによって、DPF13がPMを捕集できなくなることを防ぐことができるようになっている。
また、これらのDOC12とDPF13との間にはDOC12を通過し且つDPF13に流入する前の排気温度を測定する第1温度センサ14が設けられ、また、DPF13の下流にはDPF13を通過した後の排気温度を測定する第2温度センサ15が設けられている。そして、これらの第1温度センサ14および第2温度センサ15による測定結果はそれぞれECU16(後述する)に伝達されるようになっている。
また、DPF13の上流と下流との間には差圧センサ23が介装され、DPF13の上流側および下流側における排気圧の差を測定できるようになっている。なお、差圧センサ23による測定結果はECU16へ伝達されるようになっている。
また、このディーゼルエンジン10には、図示しないEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置が設けられ、排気ポート(図示略)から排出された排気の一部(いわゆるEGRガス)を吸気ポート(図示略)へ導入できるようになっている。なお、このEGRガスの量は後述するECU16によって制御されるようになっている。
また、エンジン10には、このエンジン10を電子的に制御する電子制御ユニット(ECU)16がそなえられており、このECU16には、いずれも図示しない入出力ユニット、中央演算処理ユニット(CPU)、プログラムなどを記憶するメモリなどがそなえられている。そして、このECU16には、プログラムとして、排気制御部(燃料添加量設定手段)17,DPF温度推定部(フィルタ温度推定手段)18,補正部(補正手段)19が主にそなえられている。
このうち、排気制御部17は、DPF13を強制再生する場合に、膨張行程あるいは排気行程での燃料噴射(いわゆるポスト噴射)を実行するのに先立って酸素濃度に応じた燃料噴射量を予め設定し、その後、設定した量の燃料を噴射するようにインジェクタを制御することができるようになっている。なお、この場合のポスト噴射の燃料噴射量は、エンジン10の主燃焼後の排気の酸素濃度に応じて(即ち、エンジン10の運転状態に応じて)設定されるようになっている。
また、この排気制御部17は、DPF13の強制再生実行時のEGR装置によるEGRガスの量および吸気絞りに変化する吸気量を設定し、設定したEGRガス量および吸気量となるようにEGR装置および吸気絞りを制御することもできるようになっている。
これらにより、DOC12に供給される排気に含まれる酸素濃度を濃くしたり薄くしたりすることができるようになっている。
また、DPF温度推定部18は、DPF13を実際に強制再生するのに先立ってDPF13の温度を推定するものであって、より具体的には、排気制御部17によって設定された量の燃料をインジェクタが噴射したと仮定した際のDPF13の温度(即ち、DPF推定温度TDPF(t))を求めるものである。
また、このDPF温度推定部18は、発熱量推定部(発熱量推定手段)20と熱輸送量推定部(熱輸送量推定手段)21とを有している。
このうち、発熱量推定部20は、以下の式(3)〜(6)を用いて、DPF13によって捕集されたPMが燃焼することで発生する熱量(発熱量Qb)を推定するものである。
Figure 0004311316
この式(3)はアレニウスの反応速度則として知られている計算式であって、このうち、fは頻度因子、Eは活性化エネルギ、Rは一般ガス定数(8.314)、TはDPF13の任意の点における排気温度、そして、kは反応速度定数である。また、指数nは、経験定数であり−2〜+2の範囲で適宜選択される数値である。
また、排気温度Tは、第1温度センサ14と第2温度センサ15との間の任意の点における排気の温度であって、より具体的には、第1温度センサ14によって測定されたDPF13の上流端近傍の排気温度と第2温度センサ15によって測定されたDPF13の下流近傍の排気温度との間における排気温度は直線的に変化するとみなすことでDPF13内の排気温度の分布を求めることにより得られる値である。なお、DPF13内で最も排気温度が高温となるのはDPF13の下流端近傍であるので、本実施形態においては、DPF13の下流端近傍における排気の温度を上式(3)の排気温度Tに代入するようになっている。
また、PM(実質的には炭素C)が燃焼する場合の反応は、以下の(4)式で表すことができる。
C+O2→CO2+qc ・・・(4)
なお、この(4)式中、qcは炭素の低発熱量(32.76)である。
また、PMの燃焼量、即ち、PMが燃焼したことによる単位時間当たりのCO2発生量は以下の(5)式で表すことができる。
Figure 0004311316
この式(5)中、[CO2]はCO2モル濃度、[C]はCモル濃度、[O2]はO2モル濃度、Δ[C]は消費炭素量、そして、kは式(3)で求められた反応速度定数である。
このうち、[C]は、差圧センサ23によって測定されたDPF13の上流と下流との間での差圧を図示しない堆積PMマップに適用することによって得られるようになっている。また、[O2]は、DPF13の強制再生に先立ち排気制御部17によって設定された燃料噴射量,EGRガスに含まれる未燃燃料量および空気量と、エンジン10の吸気系に備えられた図示しないエアフローセンサによって測定された吸入空気量とに基づいて得られるようになっている。なお、排気系11にリニアA/Fセンサ(LAFS)を設けて直接的に測定するようにしてもよい。
そして、以下の式(6)により、DPF13に堆積したPMが燃焼することで発生する熱量(発熱量)Qbを得ることができるようになっている。
Figure 0004311316
ここで、Δ[C]は式(5)で得られたPMの燃焼量であり、Mcは、炭素の分子量であり、また、qcは式(4)においても用いられた炭素の低発熱量(=32.76)である。
他方、熱輸送量推定部21は、以下の式(7)〜(9)によって排気とDPF13との間で交換される熱量Qcを推定するものである。
Figure 0004311316
Figure 0004311316
Figure 0004311316
これらの式のうち、Nuはヌッセルト数、Reはレイノルズ数、Prはプラントル数、αは排気とDPF13との間の熱伝達率、λはDPF13内の熱伝導率、dはDPFの代表長さ、Aは伝熱面積、TDPF(t-Δt)は前回推定されたDPF13の温度、TGASは排気温度、Δtは推定時間(時間の刻み幅)である。
また、λはDPFの材質によって決まる物性値、DPF13の代表長さdはDPF13の直径、AはDPF13の表面積、TDPF(t-Δt)は冷態始動時では大気温度、温態始動時は始動後十分に時間が経過した時の排気温度であって、2回目以降の計算時では後述する式(10)によって前回得られたDPF温度、排気温度TGASは第1温度センサ14および第2温度センサ15に基づいて得られたDPF13内の排気温度分布によって推定されたDPF13の任意点における排気温度、Δtは推定時間であり、前回Qcを求めてから今回Qcを求めるまでの間の時間であって制御周期として扱ってもよい。
そして、DPF温度推定部18は、発熱量推定部20によって得られた発熱量Qb、熱輸送量推定部21によって得られた排気とDPF13との間での交換熱量Qcに基づいた以下の式(10)により、DPF13の温度を推定するようになっている。
Figure 0004311316
ここで、Qbは上記の式(6)によって得られた熱量発熱量、Qcは上記の式(9)によって得られた熱輸送量、CDPFはDPF13の比熱、ρDPFはDPFの密度、TDPF(t-Δt)はこの式(10)によって前回得られたDPF13の推定温度である。なお、CDPFおよびρDPFはDPF13の材質によって決まる物性値である。
そして、補正部19は、DPF温度推定部18が上式(10)を用いて推定したDPF13の推定温度TDPF(t)が、予め定められた目標温度履歴を外れるような場合には、逐次、ポスト噴射における燃料噴射量を補正し、例えば、推定温度TDPF(t)がt2の時点において規定温度(所定値)T1を超える場合には、逐次、排気制御部17による排気への燃料添加量、即ち、ポスト噴射実行時に噴射される燃料目標量を減じるように補正するものである。なお、この目標温度履歴は、ECU16内の図示しないメモリ内に予め記憶されている温度カーブであり、実験で得られたものであって、強制再生を実行した場合にDPF13が過昇温することなく適切に堆積したPMを燃焼させることができる理想的な温度を時系列にプロットしたものである。
本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図2に示すように、差圧センサ23によってDPF13の上流および下流との間の排気差圧が測定され(ステップS11)、この排気差圧をECU16に内蔵された堆積PMマップ(図示略)に適用することによって、DPF13に堆積しているPM量を求める(ステップS12)。
また、DPF13の強制再生に先立ち排気制御部17によって設定された燃料噴射量、EGRガスに含まれる未燃燃料量および空気量および吸入空気量に基づいて、発熱量推定部20が、排気に含まれるO2量を算出する(ステップS13〜S18)。なお、このO2量はO2センサやLAFSなどによって直接的に測定するようにしてもよい。
そして、発熱量推定部20が、ステップS12において得られたDPF13に堆積中のPM量と、ステップS18において得られた排気中のO2量とに基づいて(より具体的には、上述の式(3)〜(6)を用いて)、DPF13に堆積したPMが燃焼することによって発生する発熱量Qbを算出する(ステップS23)。
また、図2中、ステップS13〜S17,S19〜S21で示すように、DPF13の強制再生に先立ち排気制御部17によって設定された燃料噴射量、EGRガスに含まれる未燃燃料量および空気量および吸入空気量と、第1温度センサ14によって測定されたDPF13の上流側における排気温度と、第2温度センサ15によって測定されたDPF13の下流側における排気温度とに基づき、排気の流速を得る。なお、ここで得られた排気流速に基づき上記の式(7)におけるレイノルズ数Reが求められる。
また、第1温度センサ14によって測定されたDPF13の上流側における排気温度と、第2温度センサ15によって測定されたDPF13の下流側における排気温度とに基づき、DPF13の内部における排気温度の分布を得る(ステップS19,S20,S22)。
そして、ステップS21によって得られた排気の流速と、ステップS22によって得られたDPF13の内部における排気温度の分布に基づいて得られた任意の点における排気温度とから、熱輸送量推定部21が、排気とDPF13との間で交換される熱輸送量Qcを算出する(ステップS24)。
その後、DPF温度推定部18は、ステップS23で得られた発熱量Qbと熱輸送量Qcとに基づいてDPF13の温度を推定する(ステップS25)。
ここで推定されたDPF13の推定温度(フィルタ推定温度)が、警戒温度(所定値)を超える場合には、補正部19が、排気制御部17によって設定された強制再生を実行する際のポスト噴射における燃料噴射量(ポスト噴射量)を補正する。
ここで、この補正部19によるポスト噴射量の補正について、図3を用いて説明すると、図3(B)において時点t1で示すように、排気制御部17により噴射量A1の燃料がポスト噴射されて強制再生が開始されると、図3(A)に示すようにDPF13の推定温度TDPF(t)は徐々に上昇していく。
その後、このDPF13の推定温度TDPF(t)がt2で示す時点における規定温度(所定値)T1を超えると、補正部19は、排気濃度をA1からA2に減じる補正を行なう(図3(B)中時点t2参照)。
これにより、DPF13の推定温度TDPF(t)の上昇は止まり、目標温度履歴をたどることになりDPF13の許容温度T2に達することなく強制再生を行なうためのポスト噴射量を、実際のDPF13の過昇温に先立って得ることができる。
このように、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置によれば、DPF13の温度を予め推定し、推定されたDPF13の温度が目標温度履歴をたどるようにポスト噴射量を逐次補正することで、DPF13の過昇温に起因する溶損や破損を回避しながら、DPF13の再生処理を実行することができる。
また、DPF13によって捕集されたPMが酸化することで生じる熱量Qbと、排気とDPF13との間で生じる熱輸送量Qcとを考慮してDPF13の温度を推定するので、推定精度を高めることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態においては、DPF13の下流に配設された第2温度センサ15により計測された排気温度に基づいてDPF13の下流端部近傍の温度を推定する場合を例にとって説明したが、このような例に限られない。例えば、第1温度センサ14により計測された排気温度に基づいてDPF13の上流端部近傍の温度を推定した後、このDPF13の上流端部近傍の熱がDPF13内を徐々に伝達していくものとして温度を推定し、最終的にDPF13の下流端近傍の温度を推定するようにしてもよい。
また、DPF13の上流端および下流端近傍のDPF温度を推定するとともに、得られた上流端近傍のDPF温度とDPF下流端近傍の温度との間の温度差を直線近似で表すことによって、DPF13中の任意の場所における温度を推定するようにしてもよい。
また、このDPF13の推定温度TDPF(t)がt2で示す時点における規定温度T1を超えると、補正部19が、ポスト噴射量をA1からA2に減じる補正を行なう場合を図3(A)および(B)を用いて説明したが、例えば、DPF13の推定温度TDPF(t)がt2で示す時点における規定温度T1を下回った場合には、補正部19が、ポスト噴射量を増大し、推定温度TDPF(t)が目標温度履歴に一致するように補正することで、適切に強制再生が実行されることはいうまでもない。
本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の全体構成を示す模式的なブロック図である。 本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の作用を示す模式的なフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の作用を示す模式的なタイムチャートである。
符号の説明
10 ディーゼルエンジン(内燃機関)
11 排気系(排気通路)
12 DOC(酸化触媒)
13 DPF(排気フィルタ)
14 第1温度センサ
15 第2温度センサ
16 ECU
17 排気制御部(燃料添加量設定手段)
18 DPF温度推定部(フィルタ温度推定手段)
19 補正部(補正手段)
20 発熱量推定部(発熱量推定手段)
21 熱輸送量推定部(熱輸送量推定手段)
23 差圧センサ

Claims (2)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられて排気中のパティキュレートを捕集する排気フィルタと、該排気フィルタの上流に位置して該排気通路に設けられた酸化触媒とを有し、該排気フィルタの強制再生時に該酸化触媒の上流側に燃料を添加して燃料を酸化反応させ該排気フィルタの温度を上昇させる内燃機関の排気浄化装置において、
    該強制再生時における燃料の添加量を該内燃機関の運転状態に応じて設定する燃料添加量設定手段と、
    該燃料添加量設定手段により設定された添加量の燃料が添加された場合の該排気フィルタの温度を推定するフィルタ温度推定手段と、該フィルタ温度推定手段によって推定された該フィルタ推定温度が予め設定された該排気フィルタの温度を上昇させるときの目標温度履歴をたどるように該燃料添加量を逐次補正する補正手段とをそなえる
    ことを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
  2. 該温度推定手段は、該排気フィルタによって捕集されたパティキュレートが酸化することで発生する熱量を推定する発熱量推定手段と、
    該排気の該排気フィルタへ熱伝達による熱輸送量を推定する熱輸送量推定手段とを有し、
    該発熱量推定手段は、
    該排気の温度から、該パティキュレートと排気中の酸素の反応速度定数を求め、該反応速度定数と該排気の酸素濃度と該排気フィルタの該パティキュレート捕集量とから該パティキュレートの燃焼量を算出し、該パティキュレートの燃焼量から該パティキュレートが酸化することで発生する熱量を推定し、
    該熱輸送量推定手段は、
    該排気のプラントル数および該排気のレイノルズ数を算出し、該レイノルズ数と該プラントル数からヌッセルト数を算出し、該ヌッセルト数と該排気の熱伝導率との積を該排気フィルタの直径で除算することで得られる該排気と該排気フィルタとの間の熱伝達率に基づいて該熱輸送量を推定する
    ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
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