ところが、炭素繊維布の表面の凹凸形状模様を印刷した合成樹脂シートでは、凹凸形状模様を平面上に印刷しただけのものにすぎないため、凹凸形状模様に深みがなく、実際の炭素繊維布の表面が有する意匠を再現することはできなかった。
また、特許文献1に記載された化粧シートは、平面状シートの状態においては凹凸形状の反転形状が形成されていない片面から見ると、透明なシートを透過して炭素繊維布の表面の凹凸形状が視認され、実際の炭素繊維布の風合い及び質感に近い意匠を呈する。この化粧シートを用いて三次元形状が付与されて成形品となる。この化粧シートを用いた成形の際には真空成形型による真空成形が行われる。真空成形型には化粧シートに所定の三次元形状を付与するための外面形成面を有するキャビティが形成されている。そして、この真空成形では、加熱して軟化された化粧シートは、その凹凸形状の反転形状が形成されていない片面が真空成形型側となるように固定される。この状態で、真空成形型内が真空引きされると、化粧シートは延びてキャビティの外面形成面に沿って所定の三次元形状が賦形される。このとき、化粧シートは凹凸形状が形成されていない片面がキャビティの外面形成面に合致するように延び、その延びた部分の厚さも薄くなる。このように化粧シートが面方向に延びるとともに、厚さも薄くなるために、凹凸形状の長さ、すなわち炭素繊維布の織目が伸びるとともに、凹凸形状の深さも部分的に浅くなる。そのため、成形品から視認される炭素繊維布の意匠は実際の炭素繊維布の表面が持つ意匠とは違和感があり、製品の品質が低下するおそれがある。
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであって、実際のウェブ状物により近い立体感及び質感がある品質の高い樹脂成形品を製造することができる成形型の製造方法及び樹脂成形品の製造方法を提供することを課題としている。
本発明にかかる成形型の製造方法は、互いに型合わせした状態で使用される第1型及び第2型を備え、透明な合成樹脂材料よりなり、外面に所要の三次元形状が付与され、内面にウェブ状物の凹凸形状を反転させた反転形状が付与された樹脂成形品を製造するための成形型の製造方法であって、前記樹脂成型品の所要の三次元形状に基づいて前記樹脂成形品の外面に該三次元形状を付与するための外面形成面を備えた第1型を製作する第1型製作工程と、片面に平滑面を有し、他の片面に前記ウェブ状物の凹凸形状を反転させた反転形状をなす反転面を有する可撓性の型面形成用シートを準備するシート準備工程と、前記型面形成用シートを、その平滑面が前記第1型側となるようにして該第1型の外面形成面に沿うように貼付することにより転写型を製作する転写工程と、前記転写型を転写することにより、前記ウェブ状物の凹凸形状を有し前記樹脂成形品の内面に前記反転形状を付与するための内面形成面を備えた第2型を製作する第2型製作工程とを備えることを特徴とするものである。
ここで、ウェブ状物とは、繊維集合体又は線状体からなる平膜状又は網状の構造体であり、例えば、炭素繊維布、ガラス繊維布、アラミド繊維布や炭素繊維及びアラミド繊維によって織られたアラミド炭素布等を含む織布や上記各素材からなる不織布等の布や、金属線材よりなる網状体等を挙げることができる。
なお、第1型製作工程において、樹脂成形品のモデルの外形の三次元形状を転写することにより樹脂成形品の外面に三次元形状を付与するための外面形成面を備えた第1型を製作することができる。また、第1型製作工程において、樹脂成形品の三次元形状データに基づいて数値制御(NC)研削等を行うことによって樹脂成形品の外面に三次元形状を付与するための外面形成面を備えた第1型を製作することもできる。
本発明によれば、第1型製作工程において、樹脂成形品の三次元形状に基づいて外面形成面を備えた第1型が直接的に製作されるため、第1型の精度は高いものとなる。転写工程において、片面に平滑面を有し、他の片面にウェブ状物の凹凸形状を反転させた反転形状をなす反転面を有する型面形成用シートが、その平滑面を第1型側となるようにして該第1型の外面形成面に沿うように貼付されることにより転写型が製作される。第2型製作工程において、転写型を転写することにより、ウェブ状物の凹凸形状を有し樹脂成形品の内面に反転形状を付与するための内面形成面を備えた第2型が製作される。転写型に貼付された型面形成用シートが成形すべき樹脂成形品に相当し、その反転面が樹脂成形品の内面に形成されるウェブ状物の凹凸形状を反転させた反転形状に相当する。第2型は、転写型の型面形成用シートを転写することによって製作されるため、第2型の内面形成面の転写精度の低下は最小限に抑制される。
このように製造された成形型を使用して樹脂成形品が製造されると、樹脂成形品の外面には第1型の外面形成面によって所要の三次元形状が付与され、樹脂成形品の内面には第2型の内面形成面によってウェブ状物の凹凸形状を反転させた反転形状が均一かつ良好に付与される。そのため、樹脂成形品の外面から見ると、透明な樹脂成形品の内部にウェブ状物の表面の凹凸形状が視認され、樹脂成形品の品質が向上する。
また、本発明によれば、第2型を製作するためにのみ製作される型は1つもなく、第2型の製作後に不要となるものは転写型の製作時に貼付される型面形成用シートのみとなるので、転写型の製作に要する材料コストを低減することができるとともに、転写型の製作に要する時間が短縮化され、成形型の製造コストが低減される。
本発明の成形型の製造方法において、「前記転写工程において、前記型面形成用シートは厚さ調整シートを介して前記第1型の外面形成面に貼付され、該厚さ調整シートの厚さ及び型面形成用シートの厚さの合計は前記樹脂成形品の製品厚さと等しい値に設定されている」構成とすることもできる。
この構成によれば、第1型の外面形成面に厚さ調整シートを介して型面形成用シートが貼付されて転写型が製作されることとなる。転写型に貼付された厚さ調整シートの厚さ及び型面形成用シートの厚さの合計が成形すべき樹脂成形品の製品厚さに相当するため、厚さ調整シートの厚さを任意に変更することにより、所望の製品厚さを有する樹脂成形品を成形可能な成形型を製造することができるようになる。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の製造方法によって製造された成形型を使用し、第1型及び第2型を型合わせした状態で、透明な合成樹脂材料よりなり、外面に所要の三次元形状が付与され、内面にウェブ状物の表面の凹凸形状を反転させた反転形状が付与された樹脂成形品を製造するようにしたことを特徴とする。
なお、樹脂成形品は透明な熱可塑性樹脂シートを上記成形型を使用した加熱プレス成形により形成されてもよいし、型合わせした成形型への透明な合成樹脂材料の注型によって形成されてもよい。上記の熱可塑性樹脂シートとしては、ポリエステル樹脂シート、アクリル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリプロピレン樹脂シート、ポリ塩化ビニル樹脂シート等を挙げることができる。また、樹脂成形品を注型によって形成する場合には、合成樹脂材料としては上記と同様の透明な熱可塑性樹脂だけでなく、透明な熱硬化性樹脂を採用することができる。
また、樹脂成形品を構成する合成樹脂材料は無色又は着色のいずれであってもよく、外面から内面を明瞭に視認することができるものであればよい。
本発明によれば、樹脂成形品の外面には第1型の外面形成面によって所要の三次元形状が付与され、樹脂成形品の内面には第2型の内面形成面によってウェブ状物の凹凸形状を反転させた反転形状が均一かつ良好に付与される。そのため、樹脂成形品の外面から見ると、透明な樹脂成形品の内部にウェブ状物の表面の凹凸形状が視認される。
また、本発明の樹脂成形品の製造方法において、「前記成形型を使用した樹脂成形品の成形の後工程として、前記成形された樹脂成形品の内面に密着するように前記樹脂成形品を透過した光を反射する有色の反射膜層を形成する反射膜層形成工程を備える」構成とすることもできる。
ここで、この反射膜層としては、パール顔料やアルミニウム金属粉の光輝材を含む塗料を塗装する方法により形成したり、その他、金属蒸着法、スパッタリング法等により金属色の反射膜層を形成したりすることができる。
これによれば、樹脂成形品本体の内面にウェブ状物の表面の凹凸形状の反転形状が均一に形成され、その反転形状の表面に密着するように有色の反射膜層が形成されている。そのため、樹脂成形品本体の外面から見ると、透明な成形品本体を透過した光は反射膜層によって反射され、樹脂成形品内にウェブ状物の表面の凹凸形状が明瞭に視認され、実際のウェブ状物の立体感及び質感に近い意匠を呈することとなる。
さらに、本発明の樹脂成形品の製造方法において、「前記反射膜層形成工程の後工程として、前記反射膜層の表面に密着するように合成樹脂材料よりなる補強体層を形成する補強体形成工程をさらに備える」構成とすることもできる。
ここで、補強体層としては反射膜層によって樹脂成形品の外面から遮蔽されて視認できないため、色彩は関係なく、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の各種の合成樹脂材料によって形成することができる。また、この補強体層には樹脂成形品を被取付部に取り付けるためのボス等の取付部を一体に形成するようにしてもよい。
これによれば、補強体層によって樹脂成形品本体が補強され、樹脂成形品の強度が確保されるようになる。また、補強体層によって樹脂成形品の強度が確保されることから、樹脂成形品本体を薄肉状に形成することができるようにもなる。
本発明の成形型の製造方法及び樹脂成形品の製造方法によれば、実際のウェブ状物により近い立体感及び質感があり、実際のウェブ状物によって三次元形状が形作られている外観を呈する品質の高い樹脂成形品を製造することができる。
以下、本発明の成形型の製造方法及び樹脂成形品の製造方法を具体化した実施の形態を図1乃至図6に基づいて説明する。図1は本実施形態の成形型を使用して製造された樹脂成形品の構造を示す断面図であり、図2はウェブ状物としての炭素繊維布を示す一部拡大平面図であり、図3は樹脂成形品の部分拡大断面図である。図4(a)〜(d)は成形型の製造工程を示す説明図であり、図5(a)〜(f)は成形型の製造に使用する型面形成用シートの製造工程を示す説明図であり、図6(a)〜(d)は成形型を使用した樹脂成形品の製造工程を示す示す説明図である。
図1に示されるように、本実施形態において製造される樹脂成形品10は所定の三次元形状をなし、その三次元形状が実際のウェブ状物によって形成された外観を呈するように形成されたものである。なお、ウェブ状物とは、繊維集合体又は線状体からなる平膜状又は網状の構造体であり、例えば、炭素繊維布、ガラス繊維布、アラミド繊維布や炭素繊維及びアラミド繊維によって織られたアラミド炭素布等を含む織布や上記各素材からなる不織布等の布や、金属線膜よりなる網状体等を挙げることができる。
この樹脂成形品10は、所要の三次元形状が付与された成形品本体11と、その成形品本体11の立ち上がり基部周辺に形成された取付フランジ12とを備えている。成形品本体11は透明な合成樹脂膜料により形成されるとともに、その外面には所要の三次元形状をなす意匠面13が形成されている。
成形品本体11の内面は前記意匠面13の三次元形状に沿うように付形されるとともに、図3に併せ示すように、成形品本体11の内面にはウェブ状物の表面の凹凸形状を反転させた反転形状が均一に付与された可飾面14が形成されている。成形品本体11の厚さ、すなわち成形品本体11の意匠面13から可飾面14までの深さは略均一に形成されている。
本実施形態では、成形品本体11の内面に形成された可飾面14を構成するウェブ状物として図2に示される炭素繊維布20が採用されている。図2に示す炭素繊維布20は、平織りされた布であり、所定本数の炭素繊維束を経糸21及び緯糸22として千鳥状に織られている。炭素繊維布20の表面の凹凸形状は互いに隣り合った経糸21及び緯糸22の境界部分が最も凹となっており、正方形状の各経糸21及び各緯糸22の中央部分が最も凸となっている。従って、可飾面14の反転形状は、炭素繊維布20の経糸21及び緯糸22の境界部分が最も凸となり、各経糸21及び各緯糸22の中央部分が最も凹となっている。このように形成された成形品本体11を意匠面13側から見ると、可飾面14の反転形状が反転された状態、すなわち炭素繊維布20の表面の凹凸形状となる。
成形品本体11の内面には、前記可飾面14の表面に密着するように塗装された有色塗料よりなる反射膜層15が形成されている。この反射膜層15によって意匠面13から成形品本体11を透過した光の一部、すなわち反射膜層15の色彩と同色の光線が反射され、炭素繊維布20の表面の凹凸形状の意匠を識別させることを可能にする。なお、反射膜層15として使用する塗料にはパール顔料やアルミニウム金属粉の光輝材を含むものを用いてもよい。また、反射膜層15は塗装以外に、電気めっき法、PVD(物理蒸着)法、化学蒸着(CVD)法等や溶射法によって形成される金属膜としてもよい。上記のPVD法としては公知の真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等があり、CVD法としては公知の熱CVD、プラズマCVD、光CVD、レーザCVD等がある。
成形品本体11の内面には前記反射膜層15の外表面に密着するように、さらに合成樹脂材料よりなる補強体層16が形成されている。この補強体層16によって、成形品本体11が補強され、樹脂成形品10の強度を確保することができるようになる。なお、この補強体層16は樹脂成形品10の外面からは反射膜層15によって遮蔽されて視認できないため、色彩の有無に関係なく、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の各種の合成樹脂材料によって形成されている。
また、この補強体層16には樹脂成形品10を車両等の被取付部に取り付けるためのボス等の取付部17が一体に形成されている。さらに、この補強体層16の内面には補強用のリブを形成してもよい。
次に、上記のように構成された樹脂成形品10の製造方法について図4〜図6を参照して説明する。
上記樹脂成形品10における成形品本体11は、例えば、図6(a)に示されるように互いに型合わせした状態で使用される第1型31及び第2型33を備えた成形型30を使用し、透明な合成樹脂材料として熱可塑性樹脂シート25を加熱プレス成形することにより形成することができる。この熱可塑性樹脂シート25としては、ポリエステル樹脂シート、アクリル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリプロピレン樹脂シート、ポリ塩化ビニル樹脂シート等を挙げることができる。また、透明な熱可塑性樹脂シート25は無色又は着色されていてもよく、片面から他の片面を透過して明瞭に視認できるものであればよい。
成形型30の第1型31の内側には前記成形品本体11の意匠面13の三次元形状を付与するための外面形成面32が形成されている。第2型33は前記意匠面13の三次元形状に相似する三次元形状を有するコア34を備えるとともに、コア34の表面には前記炭素繊維布20の表面の凹凸形状を有する内面形成面35が形成されている。第1型31及び第2型33を型締めした状態で、第2型33のコア34の表面は、第1型31の外面形成面32との間にほぼ均一な隙間を形成するような三次元形状に形成されている。
次に、本実施形態における成形型30の製造方法について図4及び図5に基づいて説明する。本実施形態の成形型30の製造方法では、第2型33を製作するために、炭素繊維布20の凹凸形状を反転させた反転形状をなす反転面を有する可撓性の型面形成用シート49が準備され、この型面形成用シート49を第1型31の外面形成面32に剥離可能に貼付することにより転写型を製作し、この転写型を転写することにより第2型33を製作するようにしている。
まず、型面形成用シートの製造方法について図5を参照して説明する。
図5(a)に示されるように、平板状の基台40上に炭素繊維布20が貼付され、シート用マスタ型41が製作される。
次に、図5(b)に示されるように、シート用マスタ型41を炭素繊維布20側から転写することにより、炭素繊維布20の表面の凹凸形状を反転させた反転形状をなす反転面43を有する電気鋳造用のマンドレル型42が製作される。このマンドレル型42の反転面43に電極処理が施される。
この後、図5(c)に示されるように、このマンドレル型42を使用して反転面43側に、例えば、ニッケルNiによる電気鋳造が行われて、電鋳型44が形成される。なお、この電鋳型44には真空引きを行うことができるように上下に貫通する複数の通気透孔が形成される。
図5(d)に示されるように、マンドレル型42から電鋳型44を離型すると、電鋳型44には前記反転面43を反転させた形状付与面45が形成される。電鋳型44は金属をイオンレベルで析出させたものであるため、形状付与面45はマンドレル型42の反転面43を精密に転写したもの、すなわち、炭素繊維布20の凹凸形状を精密に複写したものとなる。
図5(e)に示されるように、電鋳型44を真空引きすることができるように、電鋳型44には形状付与面45とは反対側の面においてバッキング部46が形成されて付形型47が形成される。なお、バッキング部46には電鋳型44の吸気用透孔に連通する複数の吸気通路46aが形成される。図示しない加熱装置によって加熱されて軟化した熱可塑性樹脂シート48を付形型47上に配置して吸気通路46aを介して真空引きすることにより、図5(f)に示されるように、片面に平滑面49aを有し、他の片面に炭素繊維布20の凹凸形状を反転させた反転形状をなす反転面49bを有する型成形用シート49が製造される。電鋳型44の形状付与面45は炭素繊維布20の表面の凹凸形状を精密に複写したものであるため、型成形用シート49の反転面49bは炭素繊維布20の凹凸形状を精密に反転させた転写精度の高いものとなる。
そして、上記のように製造された型成形用シート49を用いて本実施形態の成形型30が製造される。
まず、図4(a)に示されるように、製造すべき所要の樹脂成形品10の成形品本体11の三次元形状51及び寸法を備えたモデル50を用意する。このモデル50は前記成形品本体11の設計データに基づいて製作されたものであってもよいし、又は設計データに基づかないで創造されたものであってもよい。
そして、このモデル50の三次元形状51を転写することにより、例えば耐熱性及び耐圧性を有する合成樹脂材料により第1型31が製作される。この第1型31を構成する合成樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂にフィラーを添加したものを用いることができる。このとき、第1型31にはモデル50の三次元形状51によって前記成形品本体11の外面に三次元形状を付与するための外面形成面32が形成される(第1型製作工程)。
なお、この第1型製作工程において、モデル50を用いてその三次元形状51を転写する代わりに、製造すべき樹脂成形品10の三次元形状データに基づいて数値制御(NC)研削等を行うことにより外面形成面32を備えた第1型31を製作するようにしてもよい。
図4(b)に示されるように、第1型31の外面形成面32に、厚さ調整シートとしてのシートワックス52を第1型31の外面形成面32に沿うように貼付するとともに、シートワックス52上に型成形用シート49を、その平滑面49aが第1型31側となるようにして外面形成面32に沿うように貼付することにより転写型53が製作される。なお、シートワックス52の厚さ及び型成形用シート49の厚さの合計は成形品本体11の製品厚さと等しい値に設定されている。
図4(c)に示されるように、型成形用シート49が貼付された転写型53を型成形用シート49側から転写することにより、例えば耐熱性及び耐圧性を有する合成樹脂材料により、図4(d)に示されるように内面形成面35を備えた第2型33が製作される(第2型製作工程)。この第2型33を構成する合成樹脂材料としては、前記第1型31と同様に例えばエポキシ樹脂にフィラーを添加したものを用いることができる。
このように、本実施形態では第1型製作工程にて製作された第1型31(図4(a)参照)と、第2型製作工程にて製作された内面形成面35を有する第2型33(図4(d)参照)とによって成形型30が構成されることとなる。このとき、第1型31と第2型33とを型合わせした状態では第1型31の外面形成面32と第2型33の内面形成面35との間には成形品本体11の製品厚さに相当するクリアランスが形成されることとなる。
次に、上記のように製作された成形型を用いた樹脂成形品の製造方法を図6に基づいて説明する。
成形品本体11を成形するには、まず、図6(a)に示されるように、透明な熱可塑性樹脂シート25を図示しない加熱装置にて加熱して軟化させる。この加熱軟化した熱可塑性樹脂シート25を、型開きされた第1型31及び第2型33間に配置して固定する。そして、第1型31と第2型33とを型締めして熱可塑性樹脂シート25を加圧プレスすると、図6(b)に示される成形品本体11が得られる。この加圧プレス成形時において、熱可塑性樹脂シート25は第1型31の外面形成面32に沿って延び、熱可塑性樹脂シート25の第1型31側の面には三次元形状の意匠面13が付与される。熱可塑性樹脂シート25の第2型33側の面には内面形成面35によって前記反転形状を有する可飾面14が付与される。なお、第1型31及び第2型33の型締めを解除して両型を開くと、成形品本体11は第2型33側に密着して第2型33とともに移動する。成形品本体11を第2型33から離型させるときには、未だ成形品本体11は柔軟性を備えるとともに薄いシートよりなるため、成形品本体11の内面に形成された可飾面14の凹凸形状を損なうことなく、成形品本体11を第2型33から容易に剥離することができる。
次に、図6(b)に示されるように、離型された成形品本体11の内面の可飾面14に密着するように、例えば有色塗料による塗装を施して反射膜層15が形成される。
この後、図6(c)に示されるように、第1型62及び第2型64よりなる成形型61を使用して成形品本体11の可飾面14に密着する補強体層16を備えた樹脂成形品10を形成することができる。成形型61の第1型62には前記成形された成形品本体11の意匠面13の三次元形状に対応するキャビティ63が形成されている。第2型64には前記成形品本体11内面の各部位から所定距離離間するような三次元形状を有するコア65が形成されている。
上記樹脂成形品10を形成するには、第1型62のキャビティ63内に前記成形品本体11を密着させた状態にセットした後、第1型62及び第2型64を型締めした状態で、第2型64に形成された注入通路66を介して流動状態の合成樹脂材料を注入して前記成形品本体11の内面及びコア65間に充填する。この注入した合成樹脂材料が固化した後、成形型61を型開きして離型すると成形品本体11の可飾面14に密着する補強体層16を有する樹脂成形品10が得られる。なお、補強体層16の形成には反応射出成形(RIM)法を採用することができる。なお、RIM法には、例えば、ポリウレタンRIMを用いることができ、その他にナイロン、ポリウレア、ジシクロペンタジエンなどによるRIMを用いることができる。
上記のように構成された樹脂成形品10は、例えば、自動車の内装品又は外装品として形成することができるとともに、種々の物品として形成することができる。
以上詳述したように、上記のように製造された成形型30を使用して成形された樹脂成形品10では、成形品本体11の外面に三次元形状をなす意匠面13が形成され、成形品本体11の内面全体には炭素繊維布20の凹凸形状の反転形状を有する可飾面14が均一に形成されたものとなり、可飾面14に密着するように反射膜層15が形成されている。そのため、樹脂成形品10の外面から見ると、透明な成形品本体11を透過した光は可飾面14の反射膜層15によって反射され、樹脂成形品10内に炭素繊維布20の凹凸形状が視認され、実際の炭素繊維布20の立体感及び質感を備え、樹脂成形品10は実際の炭素繊維布20によって三次元形状が形作られている外観を呈する品質の高いものとなる。
また、本実施形態の樹脂成形品10は成形品本体11内面の反射膜層15に密着するように形成された補強体層16によって成形品本体11が補強され、樹脂成形品10の強度を向上させることができる。また、補強体層16によって樹脂成形品10の強度を向上させることができることから、成形品本体11を薄肉状に形成することができるようにもなる。
また、本実施形態の成形型30の製造方法によれば、第1型製作工程において、樹脂成形品10、すなわち成形品本体11の三次元形状に基づいて外面形成面32を備えた第1型31が直接的に製作されるため、第1型31の製作精度は高いものとなる。転写工程において、炭素繊維布20の凹凸形状を反転させた反転形状をなす反転面49aを有する可撓性の型面形成用シート49が第1型31の外面形成面32に沿うように貼付されることにより転写型53が製作される。そして、第2型製作工程において、この転写型53を転写することにより、炭素繊維布20の凹凸形状を有し成形品本体11の内面に反転形状を付与するための内面形成面35を備えた第2型33が製作される。このように第2型33は、転写型53に貼付した型面形成用シート49の反転面49bを転写することによって製作されるため、第2型33の内面形成面35の転写精度の低下は最小限に抑制される。このように製造された成形型30を使用して樹脂成形品10、すなわち成形品本体11が成形されると、成形品本体11の外面には所要の三次元形状をなす意匠面13が付与され、成形品本体11の内面全体には炭素繊維布20の凹凸形状の反転形状を有する可飾面14が均一かつ良好に付与される。そのため、樹脂成形品10の外面から見ると、内部に炭素繊維布20の凹凸形状が視認され、樹脂成形品10の品質を向上させることができる。
また、本実施形態の成形型の製造方法によれば、第2型33を製作するためにのみ製作される型は1つもなく、第2型33の製作後に不要となるものは転写型53の製作時に貼付される型面形成用シート49のみとなるので、転写型53の製作に要する材料コストを低減することができるとともに、転写型53の製作に要する時間が短縮化され、成形型30の製造コストを低減することができ、ひいては樹脂成形品10の製造コストを低減することができるようになる。
さらに、本実施形態の成形型の製造方法では、第1型31の外面形成面32に厚さ調整シートとしてのシートワックス52を介して型面形成用シート49が貼付されて転写型53が製作されることとなる。転写型53に貼付されたシートワックス52の厚さ及び型面形成用シート49の厚さの合計が成形すべき樹脂成形品10の製品厚さに相当するため、シートワックス52の厚さを任意に変更することにより、所望の製品厚さを有する樹脂成形品10を成形可能な成形型を製造することができるようになる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
・上記実施形態では熱可塑性樹脂シート25を加熱プレス成形する成形型30に具体化したが、成形型30を構成する第1型31及び第2型33のいずれか一方、例えば第2型33に注入通路を形成し、この注入通路を介した樹脂注入によって樹脂成形品を成形する成形型としてもよい。
・上記実施形態では、シートワックス52の厚さ及び型面形成用シート49の厚さの合計を成形すべき樹脂成形品10の製品厚さと等しい値となるようにしたが、シートワックス52を省略し、型面形成用シート49の厚さを樹脂成形品10の製品厚さと等しい値に設定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、成形品本体11の可飾面14に形成する反転形状を採用するウェブ状物を炭素繊維布20としたが、これ以外に、ガラス繊維布や、アラミド繊維布や炭素繊維及びアラミド繊維によって織られたアラミド炭素布等のいずれか1つとしてもよい。
・上記実施形態の樹脂成形品10では、成形品本体11の可飾面14に密着する反射膜層15を形成し反射膜層15に密着するように補強体層16を形成するようにしたが、この反射膜層15を省略し、補強体層16を反射膜層を兼用するように有色の合成樹脂材料により形成するようにしてもよい。この有色の補強体層16によって意匠面13から成形品本体11を透過した光の一部、すなわち補強体層16の色彩と同色の光線が反射され、前記炭素繊維布20の表面の凹凸形状の意匠を識別させることを可能にする。この有色の補強体層16は有色の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の有色の各種合成樹脂材料によって形成することができる。なお、この補強体層16には、パール顔料やアルミニウム金属粉の光輝材を混入するようにしてもよい。