本発明は、機械式のシャッタの制御と撮像素子の制御とを最適に関連付けることにより、スルー表示画機能を利用できると共に、高品質の画像撮影が可能で、更にレリーズタイムラグも短縮できるカメラを実現する。
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係るカメラにおける電気回路のブロック構成図である。この実施例1のカメラは、所謂一眼レフレックス方式のデジタルカメラである。
即ち、本実施例1のカメラ1は、撮影光学系11と、撮像素子(撮像手段)12と、シャッタ幕(シャッタ手段)13と、可動ミラー14と、サブミラー15と、AD変換部16(図1ではAD部16と記す)と、画像信号処理部17と、表示制御部18と、電子モニタ(LCD)19と、演算制御回路(露出制御手段、モード切換手段)20と、操作スイッチ21と、記録媒体部22と、測光光学系23と、ボディ内測光センサ24と、調光部25と、ストロボ部26、ストロボ制御部27と、ファインダ光学系(スクリーン28、ペンタゴナルダハプリズム(以下ペンタプリズムと称する)29、接眼レンズ30等で構成される)と、ファインダ内測光センサ31と、測光部32と、フィールドレンズ33と、光路屈曲鏡34と、再結像レンズ35と、センサアレイ36と、レンズ駆動部37とから構成されている。
撮影光学系11は、複数のレンズ(撮影レンズ)から構成されており、被写体110からの光束を入射させる。また、この撮影光学系11の近傍には絞り機構11aが配されていて、演算制御回路20の制御に従って撮影光学系11を介して入射する光の光量を調節する。
撮像素子12は、撮影光学系11を介して入射した被写体の像などの光を受光して電気信号に変換する機能を有する。ここで、この撮像素子12は、高画素であり、かつ、各画素の面積も大型のものが適用されているものとする。また、本カメラ1は、一眼レフカメラであり、所謂電子シャッタ機能を有していないので、本カメラ1には、撮像素子12の受光面側の近傍に、シャッタ幕13が配設されている。即ち、撮像素子12は、当該シャッタ幕13が開状態となっている期間のみ撮影光学系11からの光束を受光し得るように構成されている。
このシャッタ幕13と撮影光学系11の間には、可動ミラー14が配置されている。この可動ミラー14は、シャッタ幕13と撮影光学系11との間の空間において、撮影光学系11の撮影光路から退避する位置(以下、退避位置と称する)と撮影光路上に配置される位置(以下、通常位置と称する)との間で回動自在に構成されている。ここで、当該可動ミラー14が通常位置に配置されたときには、図1に示すように撮影光学系11の光軸に対して角度略45度だけ傾いた状態で固定される。この状態において、可動ミラー14の反射面は、ファインダ光学系の側を向くように設定されている。
また、可動ミラー14の一部の領域、例えば略中央部近傍の領域は、撮影光学系11からの光束の一部を透過させ得るように半透過鏡によって構成されている。そして、この半透過鏡で構成される領域に対向する部位には、サブミラー15が配設されている。即ち、サブミラー15は、可動ミラー14の背面側、即ち撮像素子12に対向する側の面に対して、その一端部が所定方向に回動自在となるように軸支されており、これにより、サブミラー15の反射面は、可動ミラー14の半透過鏡の領域に対向するよう配置される。即ち、サブミラー15は、可動ミラー14が通常位置に配置されたときに、可動ミラー14に対して図1に示すような所定の角度をなすように配置されている。また、サブミラー15は、可動ミラー14が退避位置に配置されたときには、可動ミラー14に対して略平行となる所定の位置に配置される。これにより、可動ミラー14が退避位置に移動すると同時にサブミラー15も撮影光学系11の光路上から退避する。
シャッタ幕13は、図2に示すように、先幕(第1のシャッタ)13a及び後幕(第2のシャッタ)13bの二つの幕部材によって構成されている。通常状態においては先幕13aが撮像素子12の受光面の前面に配置され、当該撮像素子12の受光面は遮蔽された状態にある。
スルー画表示機能の利用時や露出時においては、可動ミラー14及びサブミラー15(これらを合わせてクイックリターンミラーと呼ぶ。なお、ここでは、単にミラーと称する)を図3に示すような所定の位置に退避移動させる。そして、この状態で図2に示すように先幕13aを矢印Y1方向に移動させる。続いて所定の時間を置いてから後幕13bをY2方向(Y1と同じ方向である)に移動させる。このとき、先幕13aと後幕13bとの間には所定の隙間が生じることになる。この隙間寸法を調節する、即ち先幕13a及び後幕13bの動き出す時間を調節することにより撮像素子12への露出時間(即ちシャッタ速度)を調節することができる。
このようにミラーを撮影光学系11の撮影光路から退避させ、シャッタ幕13を開放すると、撮影光学系11を介して入射した被写体110からの光束が撮像素子12に結像する。撮像素子12は、撮影光学系11を介して入射する被写体像を電気信号に変換する。即ち、撮像素子12は、入射した被写体像について光電変換処理等を行って画像信号を生成してAD変換部16に出力する。AD変換部16は、撮像素子12により生成され出力されるアナログ信号による画像信号を所定の形式のデジタル画像信号に変換して画像信号処理部17に出力する。
画像信号処理部17は、AD変換部16によって変換したデジタル画像信号に対して所定の画像処理、例えば当該画像データによって表されるべき画像の、色調補正、階調補正、γ(ガンマ)補正といった調整等の処理を行う。
このような調整を行った後、画像信号処理部17はこのデジタル画像信号を表示制御部18に出力する。表示制御部18は、画像信号処理部17から入力されてきたデジタル画像信号に基づいて例えば、液晶モニタ等から構成される電子モニタ(以下、LCDと称する)19に画像表示を行う。このLCD19は、図3に示すように回動可能に構成してもよい。
ここで、このスルー画表示は、撮影者によって露出開始指示がなされるまで行われるものである。即ち、撮影者によって露出開始の指示がなされるまで、撮像素子12による画像信号の取得及び表示制御部18による表示制御が繰り返し行われる。これにより、LCD19上には、撮像素子12で取得した動画像がリアルタイムに表示されることになる。このようにしてリアルタイムに表示を行うことにより、撮影者はファインダを覗かなくとも被写体の状態を確認することが可能である。
このような一連のスルー画表示の制御は、演算制御回路20によって行われる。この演算制御回路20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のワンチップマイクロコントローラ等によって構成されている。そして、演算制御回路20は、カメラ1の操作者によって操作される図示しない操作部材に連動して切り換えられる操作スイッチ21からの信号入力に基づいて、各種の制御処理を実行する。この操作スイッチ21には、例えば、カメラ外部に設けられた図示しないレリーズボタンの操作に連動してON/OFFするレリーズスイッチやカメラのファインダモードを光学ファインダモードと電子ファインダモードとの間で切り換えるためのモード切換スイッチ等が含まれる。また、演算制御回路20は、後に述べる合焦(AF)処理における演算処理やレンズ駆動部37の駆動制御、露出制御時において画像データを記録媒体部22に記録させる際の記録制御等も行う。
露出制御時において、画像信号処理部17は、記録媒体部22に記録するのに適する形式で圧縮を行って画像データを生成する。記録媒体部22は、画像データを所定の形態で記録する各種の媒体等及びその駆動部等からなり、演算制御回路20に制御されて画像信号処理部17によって生成された画像データを記録する。
また、シャッタ幕13の先幕13aの表面には、この先幕13aの表面で反射する光束が標準反射率となるように所定のパターンが形成されている。即ち、シャッタ幕13が閉じている場合には、先幕13aの表面で反射された光束が、測光光学系23を介してボディ内測光センサ24で受光される。ボディ内測光センサ24は、この入射された光束を電気信号に変換して調光部25に出力する。
ここで、ボディ内測光センサ24は、図4に示すように、その受光面全域を三つに分割した形態の三つの測光領域24a、24b、及び24cを有して構成されている。例えば、図5に示すような構図枠(撮影画面121)を設定し、プリ発光方式の調光制御を用いて撮影を行う場合においては、図4に示すボディ内測光センサ24の測光領域24cのみを用いて測光を行う。これは、例えば、図5に例示する構図のように太陽等の高輝度被写体が撮影画面121内に含まれているときに、その高輝度被写体を含めて測光を行うと測光値に誤差が生じてしまうのを避けるための措置である。
調光部25は、ボディ内測光センサ24から出力された電気信号に基づいて、被写体110からの入射光量の測定及びストロボ部26の調光制御を行う。露出時においては、この調光部で算出されたストロボ発光量に従って、演算制御回路20は、ストロボ制御部27を制御してストロボ部26を発光させる。
ここで、従来の一般的なカメラにおけるTTL調光方式の調光制御では、例えば露出動作中にフイルム表面からの反射光束を受光するようにしているものもある。しかし、撮像素子12の表面は、一般的に光の反射に正反射成分が多くなるので、本実施例1のカメラ1においては、入射した光束を標準反射率で拡散反射させる先幕13aの表面からの反射光束により測光を行う。
ここで、スルー画表示を利用している際には、先幕13aが開いているので、先幕13aの表面から反射された光束から測光を行うことが困難である。
また、ミラーが通常位置にある場合、撮影光学系11を介して入射した光束の光路は、ミラーによってファインダ光学系の側に折り曲げられ、撮影光学系11を介して入射した光束がファインダ光学系に入射するようになっている。
このファインダ光学系においては、まず、スクリーン28に入射した光束が光学像として結像され、また、ペンタプリズム29に導かれる。ペンタプリズム29では、スクリーン28を透過した像が接眼レンズ30方向(即ち、カメラ1の後方)に導かれると同時に、像の左右が反転される。そして、接眼レンズ30では入射してきた像が拡大される。これにより、撮影者111は、カメラ外部に構成された図示しないファインダ窓を介して被写体の状態を観察することができる。
このようにファインダ光学系を構成することにより、撮影光学系11を介して入射した光を電気信号に変換せずに、被写体の状態を確認することができる。
また、ペンタプリズム29の近傍には、ファインダ内測光センサ31が設けられている。このファインダ内測光センサ31は、ペンタプリズム29に入射した光束の一部を受光して所定の電気信号を測光部32に出力する。測光部32は、ファインダ内測光センサ31から入力された電気信号に基づいて測光動作を行い、被写体の明るさを検出する。この測光部32の検出結果に基づいて、露出制御時に演算制御回路20は、シャッタ幕13やストロボ制御部27、及び絞り機構11a等を制御する。
ここで、ファインダ内測光センサ31は、図6に示すように撮影画面内の所定の受光領域において測光動作を行い得るように形成されている。即ち、ファインダ内測光センサ31は、略中央部近傍の所定の領域を測光する受光部31aと、略周縁部近傍の所定の領域を測光する受光部31bとからなり、例えば逆光状態の検出も可能に構成されている。
これら光学式のファインダ及びファインダ内測光センサは、ミラーが撮影光学系11の撮影光路から退避している間は、光が入射してくることがないので、利用することができない。
更に、ミラーが通常位置にあるときには、撮影光学系11を透過した入射光束の一部は、可動ミラー14の半透過鏡領域を透過した後、サブミラー15によって反射される。この反射された光束は、フィールドレンズ33を透過し、更に光路屈曲鏡34によってその光路が所定の方向へと折り曲げられた後、再結像レンズ35を透過する。そして、センサアレイ36の受光面上には、一対の被写体像が結像する。センサアレイ36は、受光した被写体像を電気信号に変換して演算制御回路20に出力する。これを受けて演算制御回路20は、所定のAF処理を行う。
ここで、このAF処理は、一般的に適用されているTTL位相差検出方式でよい。このTTL位相差検出方式について簡単に説明する。この方式において、演算制御回路20は、レンズ駆動部37を制御して撮影光学系11をレンズ光軸方向に移動させながら、センサアレイ36の出力を監視し、そして、センサアレイ36から出力される一対の被写体像が所定の位置関係になったときに合焦状態であると判定して、その時点で撮影光学系11の駆動を停止させる。
このようなAF処理も、ミラーが撮影光学系11の撮影光路から退避している間は行うことができない。
ここで、一眼レフレックスカメラでは、一般にストロボ発光制御が困難であり、閃光発光はシャッタ幕13が全開のときにしか使用できない。このため、高速シャッタ時でも、比較的長時間にわたって同じ明るさでストロボ部26を発光させる(ここではこのような発光をフラット発光と称する)制御を行う必要がある。しかし、このようなフラット発光を用いたストロボ制御では、あまり遠距離まで光を照射することができない。
また、一眼レフレックスカメラは、魚眼レンズのようなものを含む広角から望遠までの様々な画角を有するレンズに加え、マクロ機能に対応したマクロレンズなどの種々のレンズを選択して用いることができる。次に、このような種々のレンズのうち、マクロレンズを用いた場合のストロボ発光量の制御を適用した場合について説明する。
図3に示すように、主要被写体110として、例えば昆虫などをマクロで撮影する際には、ファインダ光学系を介して被写体110を確認して撮影を行うモード(以下、このようなファインダモードを光学ファインダモードと称する)よりも、スルー画表示機能を用いてLCD19に撮像素子12で取得した画像をリアルタイムに表示させ、LCD19上に表示された画像により被写体110を確認して撮影を行うモード(以下、このようなファインダモードを電子ファインダモードと称する)のほうが、様々なアングルからの撮影が可能であり、また、ファインダを覗き込みながら撮影を行う必要もないので撮影の自由度も高い。
ここで、電子ファインダモードにおいて、LCD19に画像をリアルタイムで表示させる際には、図3に示すようにクイックリターンミラー(可動ミラー14及びサブミラー15)を撮影光学系11の光路上から退避させ、シャッタ幕13を開いておく必要がある。このようなマクロ撮影時の制御を図7のフローチャートを参照して説明する。
即ち、図示しないマクロモードボタンが撮影者によって操作されると、演算制御回路20は、それを判定して図3に示すようにミラーを撮影光学系11の光路上から退避させ(ステップS1)、続いてシャッタ幕13を開く(ステップS2)。その後、演算制御回路20は、LCD19上にスルー画表示を行う。即ち、演算制御回路20は、撮像素子12に撮像動作を開始させると同時に、演算制御回路20は、画像信号処理部17に撮像素子12から画像信号の読み出しを開始させ、画像信号処理部17で処理された画像を、LCD19上に表示させる(ステップS3)。
次に演算制御回路20は、レリーズスイッチがONされたか否かを判定することにより、露出開始の指示がなされたか否かを判定し(ステップS4)、露出開始の指示がなされたと判定するまで、スルー画表示を続ける。一方、ステップS4の判定において、露出開始の指示がなされたと判定した場合に、演算制御回路20は、露出制御を開始する。
ここで、マクロ撮影により撮影した写真には、図8(a)のように主要被写体と共に背景も正しく撮影されていることが重要なものと、図8(b)のように主要被写体のみがクローズアップされていればよく、背景はそれほど重要でないものとがある。本実施例1では、背景が正しく撮影されることが重要な場合には、その背景の明るさを基準にして露出制御を行う。
即ち、露出制御開始後、まず、演算制御回路20は、ストロボ部26を微小光量でプリ発光させて、主要被写体110にストロボ光を照射する(ステップS5)。そして、このときにストロボ光照射によって被写体から反射された反射信号光が検出できない領域を背景の領域と判別する(ステップS6)。
次に、演算制御回路20は、ステップS6で判別した背景の領域において彩度の判定を行う。即ち、この領域における撮像素子12の出力から彩度を求める(ステップS7)。次に、演算制御回路20は、求めた彩度が所定の彩度よりも高いか否かを判定する(ステップS8)。このステップS8の判定において、所定の彩度よりも判別した背景の彩度が高いと判定した場合に、演算制御回路20は、この領域の背景が露出に重要な背景であると判別する。そして、この背景の明るさを基準にして露出時間を決定する(ステップS9)。一方、ステップS8の判定において、所定の彩度よりも判別した背景の彩度が低いと判定した場合には、レリーズスイッチのONから手ブレが起こるまでの時間(手ブレ秒時)に基づいて露出時間を決定する(ステップS10)。
このようにして露出時間を決定した後、演算制御回路20は、この露出時間からストロボ部26を本発光させる時間(ストロボ発光時間)を算出する(ステップS11)。その後、演算制御回路20は、ストロボ部26を発光させて露出を開始する(ステップS12)。そして、上記ステップS9又はステップ10において決定した露出時間が経過した後、演算制御回路20は、シャッタ幕13を閉じて露出を終了させる(ステップS13)。その後、演算制御回路20は、スルー画表示を終了させた後、撮影結果をLCD19上に表示させると共に(ステップS14)、撮影結果を記録媒体部22に記録させて(ステップS15)、このフローチャートの制御を終了する。
なお、高速シャッタ時では、シャッタ幕13が開の状態から閉の状態になるまでの時間も露出結果に影響してしまうので、絞り機構11aを絞ることによって露出時間を長くするようにし、シャッタ幕13が閉じるまでの時間を無視できるようにしてもよい。
このように、状況に応じて光学式のファインダと電子式のファインダ表示とを切り換えて利用できるようにすれば、非常に機動性の高い撮影を行うことが可能な一眼レフカメラとなる。
ここで、一眼レフカメラにおいては、ストロボ部26を制御することにより正しく露出制御を行うことができる場合と、ストロボ部26の制御だけでは正しく露出制御を行うことができない場合とがある。このように、ストロボ部26の制御だけでは正しく露出制御を行うことができない場合には、シャッタ幕13を制御することにより露出制御を行う。
また、撮像素子についてはCMOS型のものやCCD型のもの等、種々のものが提案されている。一般に高画質(高画素)の撮像素子は、各画素に蓄積された電荷の読み出しに非常に長い時間がかかるので、露出時の信号の読み出し中に撮像素子に光が入射してしまうと露出にむらが生じてしまうことがある。このような撮像素子を用いて露出を行う場合には、機械式のシャッタにより撮像素子を遮光する。
ここで、本発明の実施例1では、撮像素子の信号の読み出し時間と露出時間とを考慮して、機械式シャッタの制御手法を切り換え、スルー画表示を可能としながらも即写性に優れたカメラを提供する。
図9は、撮像素子から信号を読み出す際のタイミングチャートである。即ち、露出が行われる前に、各画素に蓄積された信号がリセットされ、その後、露出(各画素における光電変換信号の蓄積)が所定の露出時間tE1だけ行われる。この後、各画素から信号の読み出しが行われる。この読み出しは、画素毎に順次行われる。
ここで、信号の読み出しが行われている期間ΔtR中に撮像素子12の各画素に光が入射してしまうと、その期間中も信号の蓄積が継続されてしまう。このため、信号の読み出しが最初に終了する画素(図9の「1」のタイミングで信号読み出しが終了する画素、以下画素1とする)では、露出時間tE1分の信号が出力されるが、信号の読み出しが画素1よりも後に行われる画素では、読み出しの終了が遅くなった分だけ出力される信号の量が増加してしまう。これは、その画素における露出時間が実質上長くなってしまったことに相当する。即ち、信号の読み出しが最後に行われる画素nでは、露出時間が、露出時間tE1に信号の読み出し時間ΔtRを加えたtEnになる。この露出時間tEnは、撮像素子12の画素数が増加すると長くなり、減少すると短くなる。
信号の読み出し期間中において、撮像素子12に光が入射するのを防止するためには、シャッタを用いて撮像素子を遮光する必要がある。
また、図10(a)は、本カメラの種々の制御における信号読み出しに使用される画素について説明するための概念図である。即ち、画像の撮影時には、図10(a)に示す全画素を使用する。この場合には、メガピクセル単位での高分解能の撮影が可能である。次に、スルー画表示(なお、このとき得られた画像から露出決定用の測光や輝度分布判定を行っても良い)は、構図を確認するため等に用いられるだけなので、それほど高い解像度を必要としない。このため、スルー画表示時には、図10(a)の斜線部で示す画素12aのみを用いる。更に、センサアレイ36を用いずにAF処理を行う場合(例えばミラーを退避させた状態でAF処理を行う場合等)には、撮影光学系11をその光軸方向に移動させつつ撮像素子12で取得した被写体の画像信号から被写体のコントラストを検出し、このコントラストが最も高くなる撮影光学系11の位置を合焦位置と判定する、所謂山登り方式のAFを用いる。このような山登り方式のAF時では、画面中央部、即ち図10(a)の符号12b付近の画素のみを用いる。
このような種々の制御における信号の読み出し期間ΔtRの一例を図10(b)に示す。即ち、撮影時、スルー画表示時、及び山登りAF時では、それぞれ使用する画素数が大きく異なるので、それに応じて読み出し期間も大きく異なることが分かる。また、撮影時では、使用する画素数が多いので信号の読み出し期間が他の制御に比べて長く、高速シャッタが困難である。例えば、tE1が100msecであるとすると、最後の画素nの露出量は最初の画素1の倍以上の露出量になってしまう。
そこで、多くの一眼レフカメラでは、図2に示すような先幕13aと後幕13bとで構成される機械式シャッタを用いて露出制御を行う。
このようなシャッタを用いた露出制御としては、まず、図11(a)のような第2のシャッタ制御モードによる露出制御が考えられる。これは、図11(a)に示すように、走行スピードが等しい2つの幕の隙間を利用した露出を行う。このとき、各露出エリアでは、信号の読み出し時間ΔtRに依存せずに、一定の時間tE1だけ露出が行われる。勿論、後幕13bを閉じて、撮像素子12全体が遮光されてからΔtRの時間をかけて信号の読み出しを行ってもよい。
しかし、正確なtE1の制御を行うには、まず、先幕13aによって撮像素子12を遮光しておく必要がある。即ち、この場合には、スルー画表示機能を利用することができない。
また、図11(b)のような第1のシャッタ制御モードによる露出制御も考えられる。これは、図11(b)に示すように、先幕13aを用いて撮像素子12を遮光する代わりに撮像素子12に蓄積された信号をリセットしてから露出を開始させ、露出終了時のみ後幕13bを用いて撮像素子12を遮光するものである。この場合には、後幕13bの走行スピードによって露出時間Δtsの分だけ露出のむらが生じるが、露出時間tE1が充分長い場合には、このΔtSによる露出のむらを誤差の範囲に収めることができる。更に、このような制御ならば、常時先幕13aを閉じて撮像素子12を遮光しておく必要がないので、スルー画表示機能を利用することも可能である。
ここで、露出時に生じた露出のむらは、電気的な処理を施すことで補正することができる場合がある。例えば、撮像素子12から出力される画像信号が、図12(a)のように明るさの幅がほぼ均一の画像信号の場合には、Δtsの誤差分だけ各画素の出力信号を増幅することで露出のむらを補正することができる。また、図12(a)のように均一でなくとも図12(b)のように明るさの幅が小さい画像信号であれば、露出量が少ない(暗い)部分の信号を増幅することで補正できる。
しかし、図12(c)のように明るさの幅が大きな画像信号の場合には、信号を増幅してしまうと、図12(d)のようになってしまう。即ち、増幅の結果、露出がアンダーな部分はS/N比が劣化してノイズが目立つようになり、露出がオーバーな部分は飽和してしまう。
本実施例1は、以上説明したことを考慮して、後幕走行による露出の誤差が大きいほど露出時間を長く設定する。また、露出のむらによる影響が無視できる場合、又は電気的な補正により露出のむらの影響を無くすことができる場合には、図11(b)に示す後幕13bのみを用いた第1のシャッタ制御で露出制御を行う。一方、露出のむらによる影響が無視できず、電気的な補正により露出のむらの影響を無くすことができない場合には、図11(a)に示す先幕13a及び後幕13bの2つの幕を用いた第2のシャッタ制御モードで露出制御を行う。
図13及び図14は、シャッタ幕13の制御時における状態変化を示す図である。ここで、図13(a)〜(d)はファインダ光学系を利用して被写体を観察可能なモードにおけるシャッタ幕13の状態を示し、図14(a)〜(c)は電子モニタを利用して被写体を観察可能なモードにおけるシャッタ幕13の状態を示す。
図13(a)の状態では、ファインダ光学系を介して接眼レンズ30から被写体の状態を観察することができる。撮影者が接眼レンズ30を覗きつつ撮影構図を決定し、図示しないレリーズボタンを操作すると、演算制御回路20は、図13(b)に示すようにクイックリターンミラー(可動ミラー14及びサブミラー15)を撮影光学系11の撮影光路上から退避させると共に先幕13aを開いて、露出を開始させる。これにより、撮像素子12に光が入射する。露出終了後は、図13(c)に示すように後幕13bを閉じて撮像素子12を遮光する。このときに、撮像素子12から信号の読み出しを行う。この信号の読み出しは図9のタイミングチャートで説明したとおりである。最後に、図13(d)に示すように先幕13a、後幕13b、及びクイックリターンミラーを元の位置に戻す。
また、LCD19上にスルー画像表示を行う場合には、図14(a)に示すように、ミラーを退避させると共に先幕13aを開いて、撮像素子12に像を導き、その結果をLCD19上に表示させる。この状態から露出を行う際には、所定の露出時間経過後に後幕13bを閉じて図13(c)の状態にする。この露出時には、絞り機構11aを絞って閃光ストロボのみで露出を行うようにしてもよい。
ここで、画像信号における明るさの幅が大きく、このような露出制御が行えない場合には、図14(b)や図14(c)に示すように、一旦先幕13a及び後幕13bを元の位置に戻した後、図13(b)〜(d)を参照して説明した露出制御を行えばよい。このような露出制御によれば、図11(a)で説明したような露出のむらがない正確な露出制御を行うことが可能であるが、開いた状態の先幕13aを一旦閉じる必要があるので、レリーズタイムラグが長くなってしまうという副作用もある。
そこで、本実施例1では、これらの露出制御を適切に切り換えて使用する。このような制御の例を図15及び図16のフローチャートに示す。
まず、演算制御回路20は、撮影者による操作によりスルー画像表示を実行するか否かを判定する(ステップS21)。この判定の結果に応じてステップS22以後の光学ファインダモード又はステップS36以後の電子ファインダモードに移行する。
まず、光学ファインダモードについて説明する。この光学ファインダモードは、ステップS21の判定において、スルー画表示を実行しないと判定された場合に移行するモードである。このモードにおいて、演算制御回路20は、まず、シャッタ幕13及びミラーを初期状態にする(ステップS22)。ここで、初期状態とは、図14(a)に示すようなクイックリターンミラーが通常位置にあり、シャッタ幕13が閉じている状態である。この状態では、ファインダ光学系を介して被写体を観察することが可能である。次に、演算制御回路20は、撮像素子12に蓄積された信号電荷をリセットする(ステップS23)。
次に、演算制御回路20は、レリーズスイッチがONされたか否かを判定する(ステップS24)、この判定において、レリーズスイッチがONされていないと判定した場合には、ステップS21に戻る。一方、ステップS24の判定において、レリーズスイッチがONされたと判定した場合に、演算制御回路20は、ファインダ光学系近傍に設けられたファインダ内測光センサ31を用いて測光を行う(ステップS25)と共にセンサアレイ36を用いて位相差検出方式のAFを行う(ステップS26)。
ステップS25及びS26で露出量や合焦位置などが決定された後、演算制御回路20は、ミラーを撮影光学系11の撮影光路から退避させる(ステップS27)。次に演算制御回路20は、ステップS26の測光結果から、ストロボ部26を発光させて露出を行う必要があるか否かを判定する(ステップS28)。この判定の結果、ストロボ部26を発光させる必要があると判定した場合に、演算制御回路20は、ストロボ部26を微小光量でプリ発光させ、このプリ発光の結果、被写体110から反射された信号光をボディ内測光センサ24によって検出し、この検出した信号光に基づいてストロボ部26の本発光時の発光光量を決定する(ステップS29)。
次に、演算制御回路20は、第2のシャッタ制御モードで以後の露出制御を行う。このために、まず先幕13aを開いて露出を開始させる(ステップS30)。その後、演算制御回路20は、所定の露出時間tE1が経過したか否かを判定することにより、露出を終了させるか否かを判定する(ステップS31)。この判定の結果、まだ露出を終了させないと判定した場合に、演算制御回路20は、ステップS28でストロボ部26を発光させると判定されていたか否かを判定する(ステップS32)。この判定において、ストロボ部26を発光させると判定されていた場合には、ストロボ部26を発光させた後(ステップS33)、ステップS31に戻る。一方、このステップS32の判定において、ストロボ部26を発光させないと判定されていた場合もステップS31に戻る。
また、ステップS31の判定において、露出を終了させると判定した場合に、演算制御回路20は、後幕13bを閉じて(ステップS34)、撮像素子12を遮光する。このときに撮像素子12から信号の読み出しを行う(ステップS35)。次に、演算制御回路20は、ミラーを通常位置に戻して(ステップS36)、このフローチャートの制御を終了する。
次に、電子ファインダモードについて説明する。この電子ファインダモードは、ステップS21の判定において、スルー画表示を実行すると判定された場合に移行するモードである。このモードにおいて、演算制御回路20は、まず、ファインダ内測光センサ31を用いた測光(ステップS37)及び位相差検出方式のAFを行って(ステップS38)、スルー画表示時における露出量や撮影光学系11の合焦位置を決定する。そして、演算制御回路20は、ミラーを退避させると共に(ステップS39)、先幕13aを開いて(ステップS40)、LCD19にスルー画像表示を行う(ステップS41)。
続いて演算制御回路20は、スルー画像表示用に撮像素子12で取得された画像信号を用いて測光(ステップS42)及び山登りAF(ステップS43)を行う。図10(a)を参照して説明したように、これら測光及び山登りAFでは、撮像素子の全ての画素から出力される画像信号を用いる必要はなく、画素12aや画素12bから出力される画像信号を用いる。このように電子ファインダモードにおいて、光学ファインダモードと異なる測光及びAFを行うのは、電子ファインダモードにおいては、クイックリターンミラーが撮影光学系11の撮影光路上から退避しているためである。
次に、演算制御回路20は、図示しないレリーズスイッチがONされたか否かを判定する(ステップS44)。この判定において、レリーズスイッチがONされていないと判定した場合に、演算制御回路20は、スルー画表示を継続させるか否かを判定する(ステップS45)。このステップS45の判定において、スルー画表示を継続させると判定した場合には、ステップS41に戻る。これにより、LCD19にはスルー画表示が継続されるので、撮影者はこのLCD19に表示された画像を見ながら構図を決定することが可能である。
一方、ステップS45の判定において、スルー画表示を継続させないと判定した場合に、演算制御回路20は、スルー画表示を終了させた後(ステップS46)、このフローチャートの制御を終了する。
また、ステップS44の判定において、レリーズスイッチがONされたと判定した場合に、演算制御回路20は、閃光のストロボ発光のみで露出を決定することが可能であるか否かを判定する(ステップS47)。
このステップS47の判定において、閃光のストロボ発光のみで露出を決定できると判定した場合には、第1のシャッタ制御モードで露出制御を行う。この場合に演算制御回路20は、まず、露出時間tEを長めに設定して(ステップS48)、後幕走行による露出のむらの影響を無視できるようにする。次にストロボ部26の発光量を最大光量に設定する(ステップS49)。そして、演算制御回路20は、ステップS38で行った位相差AFで求めた被写体までの距離(被写体距離)のデータ等から絞り機構11aの絞り値を決定する(ステップS50)。
その後、演算制御回路20は、撮像素子12に蓄積された信号電荷をリセットして露出を開始させる(ステップS51)。次に、ストロボ部26を閃光発光させる(ステップS52)。次に、演算制御回路20は、ステップS13で設定した露出時間tEが経過したか否かを判定し(ステップS53)、露出時間tEが経過するまで待機する。一方、ステップS51の判定において、露出時間tEが経過したと判定した場合に、演算制御回路20は、後幕13bを閉じて露出を終了させ(ステップS54)、このフローチャートの制御を終了する。
このように、閃光のストロボ発光のみで露出を決定することができる場合には、被写体の露出は閃光のストロボ発光のみで制御し、また、後幕走行による露出のむらが露出の結果に影響しないように露出時間を長めに設定している。これにより、先幕を閉じることなく露出制御が可能であり、即写性を高めることが可能である。
また、ステップS47において、閃光のストロボ発光のみで露出を決定できないと判定した場合に、演算制御回路20は、ステップS41の測光結果等から露出時間tEを決定する(ステップS55)。次に、演算制御回路20は、ステップS53で決定した露出時間tEが長秒時であるか否か判定する(ステップS56)。この判定において、露出時間tEが長秒時であると判定した場合に、演算制御回路20は、撮像素子12で検出した画像信号における明るさの幅が所定量よりも小さいか否かを判定する(ステップS57)。
このステップS57の判定において、画像信号における明るさの幅が小さいと判定した場合には、電気的な処理によって画像信号を補正することで露出のむらの影響を無くすことができる。この場合には、第1のシャッタ制御モードで露出制御を行う。この場合に、演算制御回路20は、撮像素子12に蓄積された信号電荷をリセットして露出を開始させる(ステップS58)。その後、露出時間tEが経過したか否かを判定し(ステップS59)、露出時間tEが経過するまで待機する。一方、ステップS59の判定において、露出時間tEが経過したと判定した場合、演算制御回路20は、後幕13bを閉じて露出を終了させ(ステップS60)、更に露出のむらを電気的な増幅処理によって補正した後(ステップS61)、このフローチャートの制御を終了する。
ここで、ステップS61の補正においては、画素毎に後幕13bの走行スピードによる露出時間Δtsが異なる場合が考えられる。この場合、露出量を露出時間tE1に合わせるには、それぞれの画素におけるΔtsに応じて、それぞれの画素の出力信号をtE1/(tE1+Δts)倍すればよい。
この場合も、先幕を閉じることなく露出制御が可能であり、即写性を高めることが可能である。
また、ステップS56の判定において、露出時間tEが長秒時でないと判定した場合又はステップS57の判定において、明るさの幅が所定量よりも大きいと判定した場合には、第2のシャッタ制御モードで露出制御を行う。この場合に、演算制御回路20は、先幕13aを閉じた後(ステップS62)、撮像素子12に蓄積された信号電荷をリセットする(ステップS63)。この後、演算制御回路20は、ストロボ部26を発光させる必要があるか否かを判定し(ステップS64)、必要であればストロボ部26を発光させる(ステップS65)。なお、ここでのストロボ発光は、均一の光量のストロボ発光を露出終了まで行うフラット発光とする。続いて、演算制御回路20は、先幕13aを開いて露出を開始させる(ステップS66)。
その後、演算制御回路20は、露出時間tEが経過したか否かを判定し(ステップS67)、露出時間tEが経過するまで待機する。一方、ステップS67の判定において、露出時間tEが経過したと判定した場合、演算制御回路20は、後幕13bを閉じて露出を終了させると共に(ステップS68)、ストロボ部26の発光を終了させて(ステップS69)、このフローチャートの制御を終了する。
なお、このフローチャートでは、図示を省略しているが、露出終了後には、読み出された画像信号に対して所定の画像処理を施した後、記録媒体部22に記録させる制御が行われることは言うまでもない。
以上説明したように、本実施例1では、機械式のシャッタを用いながらもスルー画表示機能を利用可能な一眼レフカメラを提供することができる。これにより、様々なアングルでの撮影を楽しむことができる。
以上実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
更に、上記した実施例には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施例に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
11…撮影光学系、12…撮像素子、13…シャッタ幕、13a…先幕、13b…後幕、14…可動ミラー、15…サブミラー、18…表示制御部、19…電子モニタ(LCD)、20…演算制御回路、26…ストロボ部、27…ストロボ制御部、29…ペンタプリズム、30…接眼レンズ