JP4309699B2 - サーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱素子の発する熱を利用して記録するサーマルヘッド、並びにそれを用いたサーマルプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファクシミリやビデオプリンタ等の記録デバイスとしてサーマルヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来のサーマルヘッドは、直線状に配列された複数の発熱素子を上面に有するヘッド基板を、アルミニウム等の金属から成る放熱板上に接着材としての放熱性樹脂や両面テープを介して載置させた構造をしている。このようなサーマルヘッドは、例えば記録媒体として感熱紙を用いる場合、サーマルヘッド上に配設されるプラテンローラを用いて感熱紙を副走査方向(発熱素子の配列方向と直交する方向)に搬送し、感熱紙をサーマルヘッドに対して摺接させながら、該発熱素子を外部からの印画信号に基づいて個々に選択的に発熱させるとともに、該発熱した熱を発熱素子上の感熱紙に伝導させ、該伝導させた熱によって感熱紙を発色させて感熱紙に所定の印画を形成する。
【0004】
また記録媒体としてインクリボン及び記録紙を用いる場合、インクリボンと記録紙を重ね合わせた状態で両者を発熱素子上に搬送しながら、発熱素子の発する熱によってインクリボンのインクを溶融させ、該溶融したインクを記録紙に転写させることによって記録紙に所定の印画を形成する。
【0005】
尚、前記放熱板の上面には、図4に示す如く、発熱素子の配列方向と略平行な一対の溝17aが形成されており、かかる一対の溝17aの内部で放熱性樹脂の余剰分を収容している。
【0006】
ところで、記録媒体をサーマルヘッドに対して摺接させた際、両者間に生じる摩擦力はサーマルヘッドの温度が高くなると大きくなる傾向にあることから(特許文献1)、記録媒体が副走査方向に対して斜め方向に搬送されたり、紙詰まりが発生することがある。この場合、ヘッド基板には副走査方向のみならず、主走査方向(発熱素子の配列と平行な方向)や斜め方向など、様々な方向に大きな力が印加される。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−99427号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−267805号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のサーマルヘッドにおいては、図4に示すように主走査方向に沿った一対の溝のみ形成されているか、あるいは、特許文献2に示されているように主走査方向及び副走査方向にそれぞれ一対の溝が形成されているに過ぎなかったため、ヘッド基板に印加される斜めの方向等の種々の外力に対して大きなブレーキとなり得るものが存在せず、それ故、上記印加外力が特に大きい場合、ヘッド基板が放熱板に対して大きくずれてしまい、良好な印画を形成することが困難である問題点を有していた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み案出されたものであり、その目的は、ヘッド基板を放熱板上に強固に被着させておくことが可能な高性能のサーマルヘッド、並びにサーマルプリンタを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のサーマルヘッドは、複数の発熱素子を有するヘッド基板を接着材を介して放熱板の上面上に載置させてなり、前記複数の発熱素子上に記録媒体を搬送しながら印画を形成するサーマルヘッドにおいて、前記放熱板は、前記接着材の一部を収容し、かつ平面視したときに円状、楕円状、円弧状、または渦巻状をなす溝を前記上面に備えているとともに、記放熱板の上面を1cm×1cmの区画区分した際に当該cm×1cmの区画に存在する溝の平均数、または前記1cm×1cmの区画より細かな区画に区分した際に、当該細かな区画に存在する溝の平均個数から1cm あたりに存在する前記溝の平均個数に換算した個数が1個以上であることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明のサーマルヘッドにおいて、前記溝は、深さが0.1μm〜0.4μmの範囲であり、かつ幅が13μm〜20μmの範囲であることが好ましい
【0013】
更に本発明のサーマルヘッドにおいて、前記溝は、前記放熱板の上面の少なくとも前記複数の発熱素子の直下領域に設けられていることが好ましい
【0014】
また更に本発明のサーマルヘッドにおいて、前記溝は、前記放熱板の上面における前記複数の発熱素子の直下領域よりも当該直下領域多く設けられていることが好ましい
【0015】
更にまた、本発明のサーマルヘッドにおいて、記放熱板の上面を1cm×1cmの区画区分した際に当該1cm×1cmの区画に存在する溝の平均個数、または前記1cm×1cmの区画より細かな区画に区分した際に、当該細かな区画に存在する溝の平均個数から1cm あたりに存在する前記溝の平均個数に換算した個数が83〜827個であることが好ましい。
【0016】
また更に本発明のサーマルヘッドは、前記複数の発熱素子の配列方向に沿って設けられている、前記溝と異なる一対の溝を前記上面に備えており、前記一対の溝は、前記溝に比べて前記放熱板の厚み方向における深さが深いことを特徴とするものである。
【0017】
そして本発明のサーマルプリンタは、上述のサーマルヘッドと、該サーマルヘッドを押圧しつつ発熱素子上に記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、ヘッド基板が載置される放熱板の上面上に、ヘッド基板−放熱板間に介在する接着材の一部を内部に収容する溝を1個/cmの密度で設けるとともに、該溝を平面視したときに円状、楕円状、円弧状、または渦巻状になしたことから、ヘッド基板に対して印加される種々の方向にかかる外力に対して溝がブレーキになる。従って、サーマルヘッドやサーマルプリンタの使用中にヘッド基板が放熱板に対して大きくずれるといった不具合を有効に防止することができる。
【0019】
特に溝を平面視状態で円状もしくは蔓巻状に成した場合、放熱板の上面に対して略平行なあらゆる方向の力に対して溝がブレーキとなるため、特に好ましい。
【0020】
また本発明によれば、前記溝を少なくとも発熱素子の直下領域に形成することにより、プラテンローラ等の搬送手段からの外力の影響を受け易い発熱素子の直下領域で溝によるブレーキの効果を高めることができ、ヘッド基板を放熱板に対してより強固に固定することができる。かかる効果は前記溝を発熱素子の直下領域外よりも直下領域で多く形成することにより、更に高められる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の一形態に係るサーマルヘッドの断面図、図2は図1のサーマルヘッドを構成する放熱板の上面図であり、図1に示すサーマルヘッドは、大略、ヘッド基板1を接着材としての放熱性樹脂8や両面テープ9を介して放熱板7上に載置させた構造を有している。
【0023】
前記ヘッド基板1は、アルミナセラミックスや単結晶シリコン、Fe−Ni合金等の種々の材料により長方形状を成すように形成されたベースプレート2の上面に、部分グレーズ層3や発熱素子4a、回路配線5等を被着させた構成となっている。
【0024】
かかるベースプレート2は、アルミナセラミックスから成る場合、例えばアルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤・溶媒を添加・混合して泥漿状になすとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを得、しかる後、このセラミックグリーンシートを四角形状に打ち抜いた上、高温で焼成することによって製作される。
【0025】
また前記ベースプレート2の上面には、ガラス製の部分グレーズ層3がベースプレート2の長辺に沿って帯状に被着され、その頂部付近には複数の発熱素子4aを配列させて成る発熱素子列4が設けられる。
【0026】
前記部分グレーズ層3は、例えば曲率半径1mm〜4mmの断面円弧状を成すように形成されており、その頂部の厚みは20μm〜80μmに設定される。
【0027】
この部分グレーズ層3は、例えば、熱伝導率が0.7W/m・K〜1.0W/m・Kのガラスにより形成されているため、その内部で発熱素子4aの熱の一部を蓄積してサーマルヘッドの熱応答性を良好に維持する作用、具体的には、発熱素子4aの温度を短時間で印画に必要な所定の温度まで上昇させる蓄熱層としての作用を為す。
【0028】
尚、前記部分グレーズ層3は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を添加・混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によってベースプレート2の上面に帯状に印刷・塗布し、これを高温で焼き付けることによって形成される。
【0029】
更に、前記部分グレーズ層3の頂部付近に設けられる発熱素子列4は、複数の発熱素子4aを例えば600dpi(dot per inch)の密度で主走査方向に直線状に配列させて成り、各々の発熱素子列4がTaSiO系、TiSiO系、TiCSiO系等の電気抵抗材料から成っている。
【0030】
前記複数の発熱素子4aは、その両端に接続される回路配線5を介して外部からの電力が供給されるとジュール発熱を起こし、感熱紙に印画を形成するのに必要な温度、例えば150℃〜400℃の温度に発熱する。
【0031】
また、前記各発熱素子4aの両端に接続される回路配線5は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属材料により所定パターンに形成されており、発熱素子4aに所定の電力を供給する給電配線として機能する。
【0032】
尚、前記発熱素子4a及び回路配線5は、従来周知の薄膜形成技術、具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィー技術、エッチング技術等を採用することにより所定パターンを成すようにベースプレート2の上面に被着・形成される。
【0033】
一方、前記発熱素子4a及び回路配線5の上面には保護膜6が被着されており、該保護膜6によって発熱素子4aや回路配線5が共通に被覆されている。
【0034】
前記保護膜6は、窒化珪素(Si)や酸化珪素(SiO)、サイアロン(Si-Al-O-N)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱素子4aや回路配線5等を記録媒体の摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0035】
尚、上述した保護膜6は、従来周知の薄膜形成技術、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング等を採用し、窒化珪素(Si)や酸化珪素(SiO)、サイアロン(Si-Al-O-N)等の無機質材料を発熱素子4aや回路配線5等の上面に5μm〜10μmの厚みに被着させることにより形成される。
【0036】
一方、前記ヘッド基板1はアルミニウムやSUS等の良熱伝導性の金属から成る放熱板7上に載置されている。
【0037】
前記放熱板7は、その上面には互いに所定の間隔を空けて略平行に配される一対の溝7aが主走査方向に沿って設けられている。また放熱板7−ヘッド基板1間の領域のうち、一対の溝7a間には発熱素子4aの直下に配される帯状の放熱性樹脂8が、一対の溝7aよりも外側の領域(放熱性脂8の短手方向両側)には両面テープ9がそれぞれ介在ている。
【0038】
このような放熱板7は、その上面でヘッド基板1を支持するとともに、ヘッド基板1の熱の一部を放熱性樹脂8を介して吸収し、これを外部に放出することによってヘッド基板1中の温度が過度に高温となるのを有効に防止する作用を為す。
【0039】
そして前記放熱板7の上面には、平面視状態で曲線状(本実施形態においては円状)を成す溝7bが複数(1個/cm以上の形成密度)形成されている。
【0040】
前記曲線状の溝7bは、幅が13μm〜20μm、深さが0.1μm〜0.4μmにそれぞれ形成されており、その内部には放熱性樹脂8や両面テープ9の一部が収容されている。
【0041】
かかる溝7bは上述したように平面視で円状を成しているため、ヘッド基板1に対して主走査方向に印加される外力に対して溝7bがブレーキになる。従って、サーマルヘッドやサーマルプリンタの使用中にヘッド基板1が放熱板7に対して主走査方向に大きくずれるといった不具合を有効に防止することができる。
【0042】
しかもこの場合、溝7bを円状に成しておけば、放熱板上面に平行なあらゆる方向の外力に対して溝7bがブレーキとなるため極めて有効である。
【0043】
前記円状の溝7bの形成領域は、ヘッド基板1の直下領域に位置する放熱板7の上面であればいかなる領域でも良いが、溝7bを少なくとも発熱素子4aの直下領域に形成することが好ましく、この場合、記録媒体のスティッキングや紙詰まりによって主走査方向の力が印加されやすいヘッド基板1の発熱素子4aの直下領域で溝7bによるブレーキの効果を高めることができ、ヘッド基板1を放熱板7に対してより強固に固定することができる。溝7bを発熱素子4aの直下領域外よりも直下領域で多くなるように放熱板7の上面全域に形成すれば、更にヘッド基板1を放熱板7に対して強固に固定できる。
【0044】
また溝7bの形成密度は、上限値を827個/cm以下に設定することが好ましく、一方、下限値を83個/cm以上に設定することが好ましい。
【0045】
ここで、溝7bの形成密度の上限値を827個/cm以下にするのは、上限値が827個/cmよりも大きいと、ヘッド基板1から放熱板7への熱伝達が低下する傾向にある。一方、溝7bの形成密度の下限値を83個/cm以上にするのは、かかる数値範囲でヘッド基板1と放熱板7との密着力が特に大きくなるからである。
【0046】
溝7bの密度は、放熱板7の上面を1cm×1cmの区画に区分した際に、各区画内に存在する溝7bの個数をカウントし、各区画内に存在する溝7bの平均個数によって定義される。1個の溝7bが複数の区画に跨って存在している場合は、各区画で前記溝7bを別個にカウントする。また1個の溝より複数個の溝に枝分かれしている場合は、枝分かれした各溝についてカウントする。放熱板7の面積の都合上、1cm×1cmの区画を確保できないときは、より細かな区画に区分した状態で各区画内に存在する平均の溝7bの個数をカウントし、しかる後、カウントした溝7bの個数を1cmあたりの個数に換算することによって溝7bの密度を算出する。
【0047】
尚、放熱板7は、アルミニウムから成る場合、例えばアルミニウムのインゴット(塊)を従来周知の金属加工法等によって所定形状に成形することによって一対の溝7aと一体的に製作される。また円状の溝7bは、例えば、中心を起点として放射状に伸びる炭素鋼製の切削刃を有する円盤状の板体を放熱板上に配置させるとともに、前記板体と放熱板との間に油性の切削油を供給しながら前記板体を回転させ、放熱板7の表面を切削することによって製作される。
【0048】
一方、前記ヘッド基板1−放熱板7間に介在される放熱性樹脂8は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の比較的熱伝導率が高い熱硬化性樹脂から成り、発熱素子4aの熱をヘッド基板1より放熱板7に対して良好に伝導させるとともに、両面テープ9と共にヘッド基板1と放熱板7とを強固に固定する作用を為す。
【0049】
また前記放熱性樹脂8の両側に配される両面テープ9は、例えばアクリル樹脂等、比較的変形しにくい材料から成り、ヘッド基板1と放熱板7とを略平行に配置すべく帯状の樹脂材の両側に設けられており、その厚みは(25μm〜200μm)に設定されている。
【0050】
尚、ヘッド基板1と放熱板7との固定は放熱板7の上面の所定領域に放熱性樹脂8の前駆体を塗布するとともに、両面テープ9を貼着し、しかる後、ヘッド基板1を放熱板7上に載置した上、放熱性樹脂8の前駆体を熱硬化させることによって完了する。
【0051】
そして、上述のようなサーマルヘッドが組み込まれるサーマルプリンタには、図3に示す如く、記録媒体をサーマルヘッドTの発熱素子4a上に搬送する搬送手段として、プラテンローラ10や搬送ローラ11a,11b,11c,11d等が配設される。
【0052】
前記プラテンローラ10は、SUS等の金属から成る軸芯の外周にブタジエンゴム等を3mm〜15mm程度の厚みに巻きつけた円柱状の部材であり、サーマルヘッドTの発熱素子4a上に回転可能に支持され、記録媒体を発熱素子4aに対して押圧しつつ記録媒体を発熱素子4aの配列と直交する方向(図中の矢印方向)に搬送する。
【0053】
また前記搬送ローラ11a,11b,11c,11dは、その外周部が金属やゴム等によって形成されており、サーマルヘッドTに対し記録媒体の搬送方向上流側と下流側に分かれて配設され、これらの搬送ローラ11a,11b,11c,11dと前述のプラテンローラ10とで記録媒体の走行を支持している。
【0054】
そして、これと同時に複数の発熱素子4aを図示しないドライバーICの駆動に伴い選択的にジュール発熱させ、これらの熱を記録媒体に伝導させることによって所定の印画が形成される。
【0055】
尚、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更・改良が可能である。
【0056】
例えば、上述の実施形態においては、放熱板7上に溝7bを円状になすようにしたが、楕円状、円弧状、渦巻状、波状、または蔓巻状をしていればあらゆる形状を含むことは勿論である。
【0057】
また上述の実施形態においては、放熱板7上に一対の溝7aを形成する場合について説明したが、かかる溝7aが存在しない場合にも本発明は適用可能である。
【0058】
【実験例】
次に本発明の作用効果を実験例に基づき説明する。
【0059】
第1実験は、SUS製の放熱板上に1インチ×1インチのヘッド基板を両面テープを介して載置させるとともに、放熱板上に種々の溝を形成したサーマルヘッドA〜Dを作成し、これらサーマルヘッドA〜Dのヘッド基板に、主走査方向に対して45°傾斜した方向の外力を徐々に印加していき、ヘッド基板が放熱板より剥がれた荷重を測定することで放熱板とヘッド基板との密着強度を調べるというものである。サーマルヘッドAでは円状の溝を、サーマルヘッドBでは副走査方向に平行な溝を、サーマルヘッドCでは主走査方向に平行な溝をそれぞれ設けた。一方、サーマルヘッドDでは溝を設けなかった。尚、両面テープとしては厚み約50μmのアクリル樹脂製のものを使用した。またサーマルヘッドA〜Cにおいては溝の形成密度を約600個/cm、溝の平均幅を15μm、溝の平均深さを0.2μmとした。以上の実験結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0004309699
【0061】
この表1によれば、曲線状の溝が存在しないサーマルヘッドDや主走査方向に平行な溝が形成されたサーマルヘッドC、副走査方向に対して平行な溝を有するサーマルヘッドBでは小さな外力でヘッド基板が剥がれている。一方、円状の溝を有するサーマルヘッドAでは約8kgf以上の大きな外力まで耐えることができ、サーマルヘッドB,C,Dに比べて格段に優れた接着力を有していることがわかった。
【0062】
(第2実験)
第2実験は、円状の溝の形成密度を少しずつ異ならせて第1実験と同様の実験を行った。尚、その他の条件は第1実験と同様である。以上の実験結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
Figure 0004309699
【0064】
この表2によれば、溝の形成密度が1個/cm未満であるサンプルにおいては、小さな外力によってヘッド基板が剥がれてしまった。一方、形成密度が1個/cm以上のサンプルにおいてはヘッド基板が剥がれる外力が比較的大きくなり、特に83個/cm以上の形成密度に設定したサンプルでヘッド基板と放熱板との密着力が特に優れた結果が得られている。
【0065】
従って、上述した第1実験及び第2実験の結果によれば、放熱板上に曲線状の溝を1個/cm以上の形成密度で設けておけば、主走査方向に対して斜めの方向からヘッド基板に外力が印加されても、ヘッド基板の位置ずれが発生するのを良好に抑制できることが判り、特に溝を83個/cm以上形成すれば、かかる効果がより顕著になることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘッド基板が載置される放熱板上に、ヘッド基板−放熱板間に介在される接着材の一部を内部に収容する溝を1個/cmの密度で形成するとともに、該溝を平面的に曲線状に成したことから、ヘッド基板に対して印加される種々の方向にかかる外力に対して溝がブレーキになる。従って、サーマルヘッドやサーマルプリンタの使用中にヘッド基板が放熱板に対して大きくずれるといった不具合を有効に防止することができる。
【0067】
特に溝を平面視状態で円状もしくは蔓巻状に成した場合、放熱板の上面に対して略平行なあらゆる方向の力に対して溝がブレーキとなるため、特に好ましい。
【0068】
また本発明によれば、前記溝を少なくとも発熱素子の直下領域に形成することにより、プラテンローラ等の搬送手段からの外力の影響を受け易い発熱素子の直下領域で溝によるブレーキの効果を高めることができ、ヘッド基板を放熱板に対してより強固に固定することができる。かかる効果は前記溝を発熱素子の直下領域外よりも直下領域で多く形成することにより、更に高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるサーマルヘッドの断面図である。
【図2】図1のサーマルヘッドを構成する放熱板の上面図である。
【図3】図1のサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタの概略側面図である。
【図4】従来のサーマルヘッドを構成する放熱板の上面図である。
【符号の説明】
1・・・ヘッド基板
2・・・ベースプレート
3・・・部分グレーズ層
4・・・発熱素子列
4a・・・発熱素子
5・・・回路配線
6・・・保護膜
7・・・放熱板
7a・・・溝
7b・・・溝
8・・・放熱性樹脂(接着材)
9・・・両面テープ(接着材)
10・・・プラテンローラ(搬送手段)
11a,11b,11c,11d・・・搬送ローラ(搬送手段)

Claims (7)

  1. 複数の発熱素子を有するヘッド基板を接着材を介して放熱板の上面上に載置させてなり、前記複数の発熱素子上に記録媒体を搬送しながら印画を形成するサーマルヘッドにおいて、
    前記放熱板は、前記接着材の一部を収容し、かつ平面視したときに円状、楕円状、円弧状、または渦巻状をなす溝を前記上面に備えているとともに、
    記放熱板の上面を1cm×1cmの区画区分した際に当該cm×1cmの区画に存在する溝の平均数、または前記1cm×1cmの区画より細かな区画に区分した際に、当該細かな区画に存在する溝の平均個数から1cm あたりに存在する前記溝の平均個数に換算した個数が1個以上であることを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 前記溝は、深さが0.1μm〜0.4μmの範囲であり、かつ幅が13μm〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 前記溝は、前記放熱板の上面の少なくとも前記複数の発熱素子の直下領域に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルヘッド。
  4. 前記溝は、前記放熱板の上面における前記複数の発熱素子の直下領域外よりも当該直下領域に多く設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のサーマルヘッド。
  5. 記放熱板の上面を1cm×1cmの区画区分した際に当該1cm×1cmの区画に存在する溝の平均個数、または前記1cm×1cmの区画より細かな区画に区分した際に、当該細かな区画に存在する溝の平均個数から1cm あたりに存在する前記溝の平均個数に換算した個数が83〜827個であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のサーマルヘッド。
  6. 前記放熱板は、前記複数の発熱素子の配列方向に沿って設けられている、前記溝と異なる一対の溝を前記上面に備えており、
    前記一対の溝は、前記溝に比べて前記放熱板の厚み方向における深さが深いことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のサーマルヘッド。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のサーマルヘッドと、該サーマルヘッドを押圧しつつ前記発熱素子上に記録媒体を搬送する搬送手段とを備えていることを特徴とするサーマルプリンタ。
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