JP4309681B2 - シイタケラッカーゼの調製法とフェノール性環境汚染物質の分解法 - Google Patents
シイタケラッカーゼの調製法とフェノール性環境汚染物質の分解法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シイタケの生産するラッカーゼおよびその製造方法に関し、その目的はフェノール性環境汚染物質のラッカーゼによる分解方法の提供にある。
【0002】
【従来の技術】
ラッカーゼは、漆から初めて単離された酵素であり、各種の微生物・菌類に含まれることが知られている。ラッカーゼとは、ヒドロキノン、ポリフェノール、p-フェニレンジアミン、アスコルビン酸、シアニン色素等のフェノール性物質を酸化する酵素であり、漆塗料の原料に不可欠な酵素として古くから利用されている重要な酵素の一つである。また、菌類、特に木材腐朽菌のラッカーゼは、リグニン分解において重要な役割を果たす酵素として製紙工業においても利用されている。ここで、フェノール性物質とは、フェノール基を含む化合物を包含し、自然環境を汚染するフェノール性物質、フェノール性色素を含む。また、最近では、木材腐朽菌のリグニン分解酵素系が環境汚染物質の分解に有効であり、その中でラッカーゼが重要な役割を果たしていることが示唆されている(Field, J. A., et. al., Trends Biotechnol., Vol. 11, 44-49, 1993)。したがって、ラッカーゼは応用範囲が広く、今後各種産業に有効に利用される重要な酵素のひとつであるといえる。
【0003】
現在、フェノール性汚染物質は農薬合成反応、塗料・繊維の染色色素の合成、および家庭廃棄物の焼却などによって生成され、大気、土壌、河川などに幅広く存在している。これらは化学的に安定であり、人体に対する影響も強く、社会的に大きな問題となっている。
【0004】
従来から、木材腐朽菌が生産するリグニン分解酵素系を用いた色素やダイオキシンなどのフェノール性汚染物質を生化学的に分解する研究がなされている。これらの方法は菌を培養する際に培地中に色素やダイオキシンなどのフェノール性汚染物質を入れる方法(Krcmar, P. et al. Folia Microbiol., Vol 43, 79-84, 1998: Halden, R. et al., Appl. Environ. Microbiol., Vol 65, 2246-2249, 1999: Takada, S. et al., Appl. Environ. Microbiol., Vol 62, 4323-4328, 1996: Gold, M. H. et al., Methods in Enzymology, Vol 161, 74-78, 1988: Novotny, C. et al., J. Biotechnol., Vol 89, 113-122, 2001)、あるいは培養液とフェノール性汚染物質とを反応させる方法(Pasti, et al., Can. J. Microbiol., Vol 37, 902-907, 1991)であり、単一の酵素反応系を用いた例は少ない。これらの方法では、菌の培養およびフェノール性汚染物質の分解にかなりの時間を要する。また、培養基も大きなものが必要とされる。さらに、調整が困難な微細な培養条件の変化等によって、フェノール性汚染物質の分解および/または脱色の効率に変化が生じ、再現性の高い反応を実施することが困難である。また、培養物には、多岐に渡る物質(ラッカーゼ活性を直接的および/または間接的に阻害する物質も含む)が含まれており、ラッカーゼ活性が最適に発揮され得ない状態にあると考えられ、酵素の単位ユニット当たりの反応効率は低いことがある。
【0005】
高度に精製されたラッカーゼを用いてフェノール性汚染物質を分解したという例もある。例えば、トラメテス・ヴィローサ 由来のラッカーゼは単独でビスフェノールAを分解する(Fukuda et al., Biochem. Biophys. Acta., Vol 284, 704-706, 2001))。また、コリオルス・ヴェルシカラー由来のラッカーゼはペンタクロロフェノールを分解したと報告されている(Ullah, M. A. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., Vol 53, 230-234, 2000))。このように、ラッカーゼは単独でもフェノール性汚染物質の分解に用いられることが可能とされており、当該分野への利用に期待が持たれる。しかしながら、これらの菌体のラッカーゼの生産効率は必ずしも高くはなく、ラッカーゼを大量生産し得る大規模な培養も行われていなかった。また、従来のラッカーゼの生産および/または使用における人体または環境等に対する安全性は考慮されていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−065282号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シイタケラッカーゼの生産法、精製法を提供し、精製したラッカーゼによる色素またはフェノール性環境汚染物質の脱色および/または分解法を提供することを目的とする。また、同時に酵素の大量生産を行い、シイタケラッカーゼを工業的レベルで大量に生産する方法をも提供する。上述のように、培養液を用いる方法の問題点を解決するために、精製した酵素を用いる方法が有望視されていたが、生産効率の高い菌体の大規模培養によるラッカーゼの生産の開発は十分ではなかった。
【0008】
精製酵素を用いる方法は、短時間で反応を実施できる、単位酵素当たりの反応効率がよいという利点だけではなく、一度に大量の酵素標品を得てそれを長期間保存することが可能であることから、反応の度に培養を行う必要がなく、均一な反応条件を設定しやすく、極めて高い再現性を有する反応効率が得られるという利点もある。さらに、精製酵素を、当業者に公知の支持体または担体に結合させた「固定化酵素」の形態で反応に用いることができ、反応にかかる労力およびコストを低減させることができる。
【0009】
さらに、我が国の食用キノコの中で最も多く栽培されている食用担子菌の一つであり、人体および環境への安全性も高いと考えられるシイタケのラッカーゼ(以下「シイタケラッカーゼ」という)を単離してフェノール性汚染物質の分解に用いることが、我が国において有用であると考えた。現在そのような方法の報告例はない。シイタケラッカーゼは、食用に栽培されたシイタケの培地中にも分泌されているため、産業廃棄物となる廃培地から大量に単離することも可能であり、コストおよび環境保全の点からも、有利である。さらに日本では、シイタケは安価かつ簡便に培養する手法および装置が広く普及しており、ラッカーゼを取得するために新たな培養装置および手法を獲得する必要がないことも、シイタケラッカーゼの利用性の開発が期待される一因となっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述のような問題点を解決すべく、ラッカーゼ生産効率が高く、人体への安全性の保障された生物体からラッカーゼを得るべく検討を行った。本発明者らは、シイタケ(Lentinula edodes)が培養物中に大量のラッカーゼを分泌することを発見し、さらにシイタケがラッカーゼを製造する条件を鋭意研究し、それを用いた環境汚染物質の分解を検討した結果、本発明に係わるラッカーゼが有用であることを確信し、この発明の完成に到達した。
【0011】
本明細書における「シイタケラッカーゼ」とは、シイタケに由来する、ラッカーゼ活性を有するタンパク質を指し、シイタケにより天然に生産されるもの、および遺伝子工学的技法を用いて形質転換体により産生された該タンパク質およびその活性を保持する変異型タンパク質をも包含する。
【0012】
本発明者らは、既知情報を基にしてシイタケからラッカーゼ遺伝子をクローニングすることにより、これまでにラッカーゼ1、ラッカーゼ2、ラッカーゼ2'及びラッカーゼ3の4種類のシイタケラッカーゼcDNA(配列番号1、3、5および7)を得た。これら4種のシイタケラッカーゼについてノーザン分析発現解析および競合的RT-PCRを行ったところ、これら4種のラッカーゼはその発現部位および発現時期が相違しており、このことから、それぞれが異なるものであり、シイタケ菌体内でそれぞれに異なる機能を有しているものと推測される。これら4種のシイタケラッカーゼについて現在得られている知見について、下記にまとめる。
【0013】
【表1】
【0014】
このうちラッカーゼ1は、
(1) メディエーターの非存在下ではチロシンおよびドーパは基質とせず;
(2)至適 pH は 4.0 付近であり;
(3)pH 6.0で 30 分間処理した場合において、50℃までの熱に安定であり;
(4)ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムにより活性が阻害され;
(5)銅および約 24%の糖鎖を含有し、分子量は約72 kDa であり;
(6)ラッカーゼとしての触媒作用には酸素を必要とする;
という性質を有していることが、本発明において明らかになった。
【0015】
さらに、ラッカーゼ2は、
(1)メディエーターの非存在下ではチロシンを基質とせず;
(2)至適 pH は 3.0 付近であり;
(3)pH 6.0 で 30 分間処理した場合において、50℃までの熱に安定であり;
(4)ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムにより活性が阻害され;
(5)銅および約8.6%の糖鎖を含有し、分子量は 58 kDa であり;
(6)ラッカーゼとしての触媒作用には酸素を必要とする;
という性質を有していることが、本発明において明らかとなった。
【0016】
これら4種の推定アミノ酸配列を配列番号2、4、6および8に示す。これらの中には、翻訳後修飾を受け、N末端側の1以上のアミノ酸残基が切断され糖鎖付加を受け得るものもある。本発明に用いるシイタケラッカーゼは、ラッカーゼ活性を有するものであればいずれの形態のものでもよく、また、精製ステップおよびその後の利用における便宜を図るために、遺伝子工学的手法により、任意の標識化を施してもよく、また他のタンパク質との融合タンパク質としてもよい。
【0017】
すなわち、本発明は、以下の態様:
[1] シイタケ(Lentinula edodes)由来のラッカーゼであって、以下の性質:
(1)メディエーターの非存在下ではチロシンおよびドーパは基質とせず;
(2)至適 pH は 4.0 付近であり;
(3)pH 6.0で 30 分間処理した場合において、50℃までの熱に安定であり;
(4)ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムにより活性が阻害され;
(5)銅および約 24%の糖鎖を含有し、分子量は約72 kDa であり;
(6)ラッカーゼとしての触媒作用には酸素を必要とする;
を有するラッカーゼ;
[2] さらに、(7)アミノ末端に Ala Ile Gly Pro Val Thr Asp Leu His Ile Val Asn (配列番号9)で表されるアミノ酸配列を有している上記1記載のラッカーゼ;
[3] 以下の(a)または(b)のシイタケラッカーゼタンパク質;
(a) 配列番号2に表されるアミノ酸配列の19位〜518位のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b) 配列番号2に表されるアミノ酸配列の19位〜518位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質;
[4] シイタケ(Lentinula edodes)由来のラッカーゼであって、以下の性質:
(1)メディエーターの非存在下ではチロシンを基質とせず;
(2)至適 pH は 3.0 付近であり;
(3)pH 6.0 で 30 分間処理した場合において、50℃までの熱に安定であり;
(4)ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムにより活性が阻害され;
(5)銅および約8.6%の糖鎖を含有し、分子量は58 kDaであり;
(6)ラッカーゼの触媒作用には酸素を必要とする;
を有するラッカーゼ;
[5] 以下の(a)または(b)のシイタケラッカーゼタンパク質;
(a)配列番号4に表されるアミノ酸配列に含まれる配列を有するタンパク質;
(b)配列番号4に表されるアミノ酸配列に含まれる配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質;
[6] 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド;
(a) 配列番号2に表されるアミノ酸配列の19位〜518位のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b) 配列番号2に表されるアミノ酸配列の19位〜518位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質;
[7] 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド;
(a)配列番号4に表されるアミノ酸配列に含まれる配列を有するタンパク質;
(b)配列番号4に表されるアミノ酸配列に含まれる配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質;
[8] 上記6または7に記載のヌクレオチドを含む組換えベクター;
[9] 上記8に記載の組換えベクターを宿主細胞に形質転換して得られる形質転換体;
[10] 宿主細胞が真菌類である、上記9記載の形質転換体;
[11] 宿主細胞が麹菌である、上記10記載の形質転換体;
[12] 上記1〜5のいずれかに記載のタンパク質を含む、フェノール性物質分解剤;
[13] フェノール性物質がチロシンとドーパを除いたものである、上記12記載のフェノール性物質分解剤;
[14] 上記1〜5のいずれかに記載のタンパク質を含む、シイタケ培養物;
[15] シイタケを培養し、該培養物から上記1〜5のいずれかに記載のシイタケラッカーゼを部分的または完全に精製することを含む、シイタケラッカーゼの調製方法;
[16] シイタケの子実体または菌糸を破砕することをさらに含む、上記15記載のシイタケラッカーゼの調製方法;
[17] 上記9記載の形質転換体を培養し、該培養物から上記1〜5のいずれかに記載のシイタケラッカーゼを部分的または完全に精製することを含む、シイタケラッカーゼの調製方法;
[18] シイタケの子実体または菌糸を破砕することをさらに含む、上記17記載のシイタケラッカーゼの調製方法;
[19] 上記1〜5のいずれかに記載のシイタケラッカーゼを用いてフェノール性物質を分解する方法;
[20] 上記14記載のシイタケ培養物を用いてフェノール性物質を分解する方法;
[21] シイタケラッカーゼ1、2、2’および3からなる群から選択される1種以上のシイタケラッカーゼを含む、フェノール性物質分解剤;
[22] シイタケラッカーゼ1、2、2’および3からなる群から選択される1種以上のシイタケラッカーゼを含む、シイタケ培養物;
[23] シイタケを培養し、該培養物からシイタケラッカーゼ1、2、2’および3からなる群から選択される1種以上のシイタケラッカーゼを部分的または完全に精製することを含む、シイタケラッカーゼの調製方法;
[24] シイタケの子実体または菌糸を破砕することをさらに含む、上記23記載のシイタケラッカーゼの調製方法;
[25] シイタケラッカーゼ1、2、2’および3からなる群から選択される1種以上のシイタケラッカーゼを用いてフェノール性環境汚染物質を分解する方法;
[26] メディエーターを用いないことを特徴とする、上記19、20、または25のいずれかに記載のフェノール性物質を分解する方法;
[27] フェノール性物質が、アゾ色素、ジアゾ色素、アントラキノン色素およびトリフェニルメット色素、ダイオキシン、PCB、ビスフェノールAおよびベンゾ[a]ピレンからなる群から選択される上記24記載のフェノール性物質を分解する方法;
[28] フェノール性物質がレマゾールブリリアントブルーRである、上記26記載のフェノール性物質を分解する方法;
[29] メディエーターを添加することをさらに含む、上記19、20、または25のいずれかに記載のフェノール性物質を分解する方法;
[30] フェノール性物質がポリメリック色素である、上記9記載の方法;を提供する。
【0018】
本発明の上記の態様においては、シイタケラッカーゼ遺伝子を導入した発現ベクターを構築し、該遺伝子を麹菌(Aspergillus oryzae)により発現させることによるラッカーゼの大量生産方法も包含される。
【0019】
本発明のラッカーゼタンパク質を用い、反応液中にメディエーターの添加を必要としないことを特徴とするフェノール性物質の分解に係る手法も上記[26]により提供される。すなわち、フェノール性物質を含むフェノール性汚染物質含有物にラッカーゼを直接作用させることにより酸化反応を起こし、該含有物中のフェノール性物質を分解するという手法である。
【0020】
フェノール性物質には、従来の方法ではその分解にメディエーターの添加を要する難分解性のもの(例えば、レマゾールブリリアントブルーR、ポリメリック色素など)があることが判っている。
【0021】
本明細書における「メディエーター」とは、ラッカーゼの触媒反応を促進する性質を有する水溶性低分子物質であり、ラッカーゼと併用することにより、ラッカーゼ単独では分解されないフェノール性物質を分解可能にする。該メディエーターは、電子移動性および適度な酸化還元ポテンシャルを有し、かつラッカーゼの基質となり得るという性質を有していることが望ましい。具体的な例としては、2,2'-アジノ-ビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-硫酸)2アンモニウム塩(以下、ABTS)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、HOBT)、ヴァイオルリック酸(以下、VA)、ヴェラトリルアルコールを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0022】
本発明の精製シイタケラッカーゼを用いると、従来の培養液そのものを用いた場合にはメディエーターの添加を要する難分解性のフェノール性物質の1つであるレマゾールブリリアントブルーR色素をメディエーターを用いることなく、分解および/または脱色することができる。レマゾールブリリアントブルーRを、メディエーターを用いることなく脱色および/または分解する方法は現在のところ知られていない。
【0023】
本発明の態様において、上述の本発明に係るメディエーターを用いない方法では分解および/または脱色が困難な物質を対象とする場合には、反応液中にメディエーターをさらに添加することにより、フェノール性汚染物質を分解および/または脱色することもできる。
【0024】
なお、本発明の方法に用いるフェノール性汚染物質含有物はある程度の水分を含んでさえいれば、溶液、固体等の形状は問わない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1. シイタケによるラッカーゼの生産
シイタケラッカーゼは、下記の培養方法により生産が可能である。
【0026】
シイタケ子実体の一部を切り出し、菌糸が増殖する条件で培養をし、さらに増殖した菌糸を培養することにより、シイタケラッカーゼを生産させることができる。シイタケラッカーゼを生産させる培養条件は下記のものが例示できる。
この培養形態は液体培養、固体培養のいずれであってもよい。
【0027】
培地の栄養源としては、微生物の培養に通常用いられているものが広く使用することができる。シイタケ菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類を含有し、ラッカーゼの生産を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを使用してもよい。
【0028】
炭素源としては、シイタケ菌が同化可能な炭素源であれば良く、例えばグルコース、マルトース、スクロース、デンプンなどが使用できる。
【0029】
窒素源は、シイタケ菌が利用可能な窒素源であれば良く、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムの無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。
【0030】
無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムを必要に応じて培地に添加するとよい。ただし、本発明のラッカーゼは分子内に銅を含有することから、培地中には銅塩を含むことが必須である。
【0031】
また、2,5-キシリジン、リグニン、ヴェラトリルアルコール等のラッカーゼ遺伝子発現誘導剤として報告されている物質を培地に添加する場合もある。
【0032】
培養温度は、菌が発育し、ラッカーゼを生産する範囲内で適宜変更可能であるが、好ましくは23〜27℃程度である。
【0033】
液体培養における条件としては、前培養として静置培養または振盪培養を行うことが望ましい。前培養を行った後、培養内容物を三角フラスコに無菌的に移し、培養液中にラッカーゼが生産され十分量のラッカーゼが蓄積されるまでの期間に渡って振盪培養および/または静置培養を行う。
【0034】
本発明に係るラッカーゼのうち、ラッカーゼ1は主として菌体外に分泌されるので、このようにして得られた培養物から濾過などにより菌体あるいは沈殿物を除去することで得られる液体を、本発明のラッカーゼ溶液として用いることができる。菌体外に分泌されないラッカーゼの場合は、適切な条件下で菌体を破砕し、懸濁液または溶液の形で、ラッカーゼ溶液が得られることは当業者には容易に理解できる。
【0035】
本発明に係るラッカーゼのうち、シイタケラッカーゼ2は、下記の方法により取得が可能である。
【0036】
シイタケの子実体を採取後、ある程度(例えば、50〜100%、より好ましくは60〜80%)の湿度、温度のもとで保存することで、子実体内にラッカーゼ2を生産させることができる。シイタケラッカーゼ2を生産させる条件は下記の条件が例示できる。
【0037】
シイタケ子実体を採取し、飽和塩化アンモニウム水を静置したデシケーター内で25℃に温度を保ち、3〜5日間程度静置する。静置後のシイタケ子実体を緩衝液中で破砕することによりラッカーゼ2活性を多く含む、ラッカーゼ2溶液を得ることができる。菌褶部を破砕する際に用いる緩衝液は、酵素の活性を著しく低下させない条件であれば、様々な緩衝液を用いることができる。例えば、1〜100mM、より好ましくは10mMのリン酸緩衝液が好ましい。
【0038】
2. ラッカーゼの精製方法
上記1により得られたラッカーゼ溶液(以下、粗酵素液)を用いて、ラッカーゼの精製を行うことができる。
【0039】
本明細書中における「培養物から部分的または完全に精製された」とは、シイタケまたは宿主細胞の培養物から菌体を除去した状態を含み、以下に示すような精製過程におけるあらゆる段階にある状態をいう。したがって、上記1で得られたラッカーゼ溶液も、培養物から部分的または完全に精製されたものに包含される。
【0040】
粗酵素液にラッカーゼが沈殿しない範囲の量の硫酸アンモニウムを低温で撹拌しながら加え、低温で一晩静置することにより塩析を行う。生じた沈殿を遠心分離、濾過などにより除くことでシイタケラッカーゼを含む上清画分を得ることができる。
【0041】
これを、汎用の種々のクロマトグラフィーを単独でまたは組合わせて用いることにより、さらに精製することができる。
【0042】
例えばラッカーゼ1または2の場合では、疎水クロマトグラフィーにより分画することでラッカーゼ画分を得ることができる。例えば、ラッカーゼ1の場合、硫酸アンモニウムを 0.4 飽和になるように加えた 0.01Mのリン酸緩衝液で平衡化した疎水クロマトグラフィー担体に上記の上清画分を添加し、吸着したタンパク質は硫酸アンモニウムをより低濃度で含むリン酸緩衝液で溶出することができる。ラッカーゼ2の場合、上記ラッカーゼ2溶液を、硫酸アンモニウムを 0.3 飽和になるように加えた 0.01Mのリン酸緩衝液で平衡化した疎水クロマトグラフィー担体に上記の上清画分を添加し、吸着したタンパク質は硫酸アンモニウムをより低濃度で含むリン酸緩衝液で溶出することができる。ここで疎水クロマトグラフィー担体とは、疎水性のリガンドを親水性の樹脂に導入した担体、例えばブチル基、フェニル基、オリゴエチレングリコール基を樹脂に結合させたものを言う。また、クロマトグラフィーはカラムに担体を充填したものを用いる方法とバッチによる方法のいずれでも可能であるが、カラムに担体を充填したものを用いる方が好ましい。
【0043】
得られたラッカーゼ画分を半透膜にて透析するなどして、脱塩操作を行い、陰イオン交換クロマトグラフィーに供することでラッカーゼ画分を得ることができる。
【0044】
ラッカーゼ1の場合は、例えば、中性付近の 0.01Mのリン酸緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィー担体に上記で得られた透析物を添加し、吸着したタンパク質を塩化ナトリウムなどの陰イオン交換体を含むリン酸緩衝液で溶出することができる。
【0045】
ラッカーゼ2の場合は、例えば、弱酸性の0.02Mの酢酸ナトリウム緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーに上記で得られた透析物を添加し、吸着したタンパク質を塩化ナトリウムなどの陽イオン交換体を含む酢酸ナトリウム緩衝液で溶出することができる。
【0046】
ここで、陰イオン交換クロマトグラフィーとは、正の荷電基を担持し、陰イオンを捕捉し得る樹脂、例えばアミノエチル(Aminoethyl)基、ジエチルアミノエチル(Diethylaminoetyl)基、クアターナリーアミノエチル(Quaternary aminoethyl)基を担体に結合させた樹脂を用いたクロマトグラフィーを指し、イオン強度が様々なものを用いることができる。陽イオン交換クロマトグラフィーとは、負の荷電基を担持し、陽イオンを補足しうる樹脂、例えばカルボキシメチル基、リン酸基、硫酸プロピル基を担体に結合させた樹脂を用いたクロマトグラフィーを指し、イオン強度が様々なものを用いることができる。また、カラムに担体を充填したものを用いる方法とバッチによる方法のいずれでも可能であるが、カラムに担体を充填させたものを用いる方が好ましい。
【0047】
以上のようにして得られたラッカーゼ画分からゲル濾過担体等によるクロマトグラフィー技法などにより、ラッカーゼをさらに精製することができる。
【0048】
このような操作は当技術分野において通常行われるものであり、当業者であれば適切に行うことができる。
【0049】
精製が不十分な場合は、より吸着の強い陰イオン交換樹脂(例えば、ラッカーゼ1の場合)または陽イオン交換樹脂(例えば、ラッカーゼ2の場合)を用いるか、または対象とするシイタケラッカーゼに対する抗体を利用したアフィニティークロマトグラフィーを用いるなど、各クロマトグラフィーを適宜組み合わせて用いることにより、ラッカーゼをさらに精製することができる。
【0050】
以上のようにして、得られたタンパク質が本発明のタンパク質であることの確認は、一般的な酵素化学反応、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動等の電気泳動法、抗原抗体反応による免疫学的方法などにより行うことができる。
【0051】
なお、上記方法にて、シイタケの栽培において廃物として得られる廃培地からシイタケラッカーゼを抽出精製することもでき、この場合シイタケを培養することなく大量にシイタケラッカーゼを得ることができ、資源の有効利用も可能となる。
【0052】
得られたシイタケラッカーゼのアミノ酸配列は公知の方法で決定することができる。配列番号2、4、6および8にシイタケラッカーゼのアミノ酸配列を示す。配列番号2、4、6および8は、それぞれシイタケラッカーゼ1、2、2’および3のアミノ酸配列を示す。配列番号2、4、6または8に表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質も本発明のシイタケラッカーゼとして用いることができる。配列番号1に示すシイタケラッカーゼのアミノ酸配列の第1位から18位は、細胞外への分泌時にシグナルペプチドとして切断され、従って、本発明のシイタケラッカーゼ1には、シグナルペプチドを含む配列番号1のアミノ酸配列の第1位〜第518位のアミノ酸配列を有するタンパク質も、配列番号1のアミノ酸配列第19位〜第518位のアミノ酸配列を有するタンパク質も含まれる。
【0053】
ここで、「1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加」とは、限定はされないが、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜数個、最も好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されていることをいう。該配列番号2、4、6または8に表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、それぞれ配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列と、BLAST等を用いて計算したときに(例えば、BLASTのデフォルトすなわち初期条件のパラメーターを用いた場合)、少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%、98%若しくは99%以上の相同性を有しているものが挙げられる。このような配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は、それぞれ配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。
【0054】
ここで、シイタケラッカーゼ活性とは、フェノール性汚染物質を含むフェノール性物質を分解する活性をいい、フェノール性物質とはフェノール基を含む化合物をいい、フェノール性環境汚染物質とは自然環境を汚染するフェノール性物質を指し、フェノール性色素も包含する。さらに、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン)およびベンゾ[a]ピレン(6,7-ベンゾピレン)もまた、フェノール性環境汚染物質に含まれる。従って、本明細書において、フェノール性物質の分解とは、フェノール性汚染物質すなわちフェノール性環境汚染物質の分解およびフェノール性色素の脱色を含む。
【0055】
シイタケラッカーゼ活性は、活性を測定しようとするサンプルと、例えば、メチルレッド、ナフトールジアゾ化合物等のフェノール性色素化合物とを30℃、pH4の条件で反応させ、脱色の程度を吸光度の変化でみることにより測定することができる。
【0056】
シイタケラッカーゼを含むフェノール性物質分解剤も本発明の範囲に含まれるが、該フェノール性物質分解剤は有効成分としてシイタケラッカーゼを含んでいる。フェノール性物質分解剤中のシイタケラッカーゼは、シイタケラッカーゼ1、2、2’および3のいずれでもよく、これらの2種以上を含んでいてもよい。また、シイタケ培養物から部分的に精製されたものも完全に精製されたものもフェノール性物質分解剤として用い得る。さらに、該フェノール性物質分解剤は、メディエーター、緩衝液、酵素安定剤等を含んでいてもよい。さらに、シイタケラッカーゼを固定化酵素として含む担体も本発明のシイタケラッカーゼを含むフェノール性物質分解剤に含まれる。
【0057】
3. シイタケのラッカーゼ遺伝子を導入した発現ベクターを構築し、同遺伝子を宿主細胞により発現させる方法
シイタケラッカーゼ遺伝子は、公知の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、Sambrookら編集によるMolecular Cloning, A laboratory manual, 2001, Eds., Sambrook, J. & Russell, DW. Cold Spring Harbor Laboratory Pressの記載に従って行うことができる。例えば、シイタケの適当な組織からmRNAを抽出し、適当な宿主を用いてcDNAライブラリーを作製し、ラッカーゼ活性即ちフェノール性物質を酸化する活性を指標にスクリーニングすることにより得られる。また、決定されたアミノ酸配列から得られるDNA配列から適当なプローブを設計・合成し、シイタケラッカーゼ遺伝子をクローニングにより得ることもできる。さらに、前記DNA配列から適当なプライマーを設計し、PCR等の遺伝子増幅法によりシイタケラッカーゼ遺伝子を増幅させて得ることもできる。さらに、上記シイタケラッカーゼのアミノ酸配列から得られたDNA配列に従って、化学合成しても得ることができる。このようにして得られたシイタケラッカーゼ遺伝子の塩基配列を、配列番号1、3、5および7に示す。配列番号1、3、5および7はそれぞれシイタケラッカーゼ遺伝子1、2、2’および3の遺伝子配列を示す。配列番号1、3、5または7の塩基配列を含むヌクレオチドと相補的な配列からなるヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質をコードするヌクレオチドも本発明のシイタケラッカーゼ遺伝子に含まれる。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が、10mM〜300mM、好ましくは42〜55℃、より好ましくは42℃での条件をいう。このような条件は、ECLTM direct nucleic acid labeling and detection system (Amersham Pharmacia製)を用いて、添付されている説明書の記載に従うことにより達成することができる。さらに、配列番号1、3、5または7の塩基配列を含むヌクレオチドにおいて1若しくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質をコードするものも含む。ここで、欠失、置換若しくは付加される塩基の数は特に制限されないが、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜数個、最も好ましくは1〜3個である。このようなヌクレオチドの塩基配列としては、配列番号1、3、5または7で表される塩基配列との相同性が、BLAST等を用いて計算したときに(例えば、BLASTのデフォルトすなわち初期条件のパラメーターを用いた場合)、70%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上若しくは99%以上のものである。
【0058】
このようなヌクレオチドは、配列番号1、3、5または7の塩基配列を有するヌクレオチドと実質的に同一である。
【0059】
本発明における発現ベクターは、ラッカーゼ活性を有するシイタケ由来タンパク質をコードする遺伝子を発現させ得るプロモーターの下流に該遺伝子(即ち、ラッカーゼ遺伝子)を連結させた構造を含み、この発現ベクターは適当なベクターに上記遺伝子を連結(挿入)することにより作製することができる。麹菌、大腸菌の選択マーカーとラッカーゼ遺伝子を発現させるプロモーターの下流にラッカーゼ遺伝子を連結させた構造を含むものが好ましい。本明細書中、選択マーカーとは大腸菌においては薬剤(例えばアンピシリン、カナマイシン)に対する耐性試験、麹菌においては薬剤(例えばピリチアミン)に対する耐性試験、栄養要求性(例えばアルギニン要求性、メチオニン要求性、ロイシン要求性)試験、炭素源、窒素源資化性(例えばアセトアミド硝酸塩資化性)試験により形質転換体の選択を可能とするタンパク質をコードするDNAを指す。
【0060】
また、本発明におけるラッカーゼ遺伝子は、その機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーターおよび本発明のDNAの他、ターミネーター、リボソーム結合配列を組み込んでもよい。このような操作は当技術分野において通常行われるものであり、当業者であれば適切に行うことができる。
【0061】
使用するプロモーターは、あらゆる公知のプロモーターから宿主細胞に応じて選択することができる。例えば、宿主細胞が麹菌である場合、麹菌中で発現できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、GlaA プロモーター(Hata et al. Curr. Genet., Vol 22, 85-91, 1992)、AmyB プロモーター(Tuchiya et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., Vol 46, 1849-1853, 1992)、No. 8 プロモーター(Ozeki et al. Biosci. Biotech. Biochem., Vol 60, 383-389, 1996)が挙げられる。
【0062】
本発明の実施形態において、発現ベクターは、例えば以下の(1)または(2)の DNA形態を含むことができる。
【0063】
【0064】
上記発現ベクターを、当業者に公知の方法によって、宿主である麹菌細胞に導入することによって形質転換体を得ることができる。この行程を効率的に実施するためには、上述した発現ベクターを環状または直鎖状にて公知の遺伝子導入法、例えばエレクトロポレーション法やパーティクルガンを使用する方法、細胞を細胞壁溶解酵素で処理してプロトプラストとした後にベクターと接触させる方法などが挙げられる。
【0065】
このような操作は当技術分野において通常行われるものであり、当業者であれば適切に行うことができる。
【0066】
本発明のシイタケラッカーゼ遺伝子で形質転換して、組換えシイタケラッカーゼを産生させる宿主としては、外来のタンパク質をコードする遺伝子を組込んで該遺伝子を発現することができるものならば何でも用いることができる。例えば、麹菌(Aspergillus oryzae)等のアスペルギラス属、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母が挙げられ、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはSF21等の昆虫細胞が挙げられる。これらの宿主の形質転換に用いるベクターは各宿主に適したプラスミドDNAやファージDNAを適宜選択すればよい。プラスミド DNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119, pUC18, pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルスまたはRNAウイルス、pCI-neo、pcDNA3、pZeoSV等の動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0067】
本発明のラッカーゼ活性を有するタンパク質は、前述の方法(シイタケ培養物から得る方法)以外に、このようにして作製した形質転換体を培養し、その培養物から採取することができる。
【0068】
この他、シイタケを宿主細胞とし、シイタケにラッカーゼを過剰発現させることにより、ラッカーゼを大量に取得することもできる。これに有効なシイタケの形質転換法は、Sato, T.ら、Biosci. Biotech. Biochem., 62, 2346-2350 (1998)、佐藤ら、特願平9-331611に開示されており、これに有効な発現ベクターとしては、pLG(Hirano, T. et al., Mol. Gen. Genet.. 263, 1047-1052 (2000)、平野ら、特願平10-247470)、pLT(佐藤ら、特願平11-342347)、pLU(佐藤ら、特願2000-164679)、及び pChG(佐藤ら、特願2000-147858)がすでに開発されている。
【0069】
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法によって行われる。あらゆる種類の宿主細胞について、様々な培養法が公知となっており、当業者であれば容易に適切な方法を選択することができる。
【0070】
例えば宿主細胞が麹菌である場合には、麹菌を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、麹菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを使用してもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンの炭水化物、酢酸、プロピオン酸の有機酸、メタノール、エタノール、プロパノールのアルコール類などが用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムの無機酸、若しくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムが用いられる。形質転換体の培養は、通常、振とう培養又は通気撹拌培養などの好気的条件下、約30℃で48〜120時間行う。プロモーターとして誘導性プロモーターを有する発現ベクターで形質転換した場合は、必要に応じてインデューサーを培地に加えるのがよい。例えば、Amy B プロモーターを使用した場合には炭素源としてマルトースあるいはイソマルトースを用いるのがよい。
【0071】
培養後、本発明の組換えタンパク質を培養物から採取する。該タンパク質が菌体外または、細胞外に生産される場合は、培養液をそのまま使用して、または遠心分離により菌体を除去した後に、該酵素を採取することができる。該タンパク質が細胞内にある場合は、様々な公知の方法によって細胞を破砕し、細胞懸濁液を得た後に該酵素を採取するとよい。該酵素の採取は、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を、単独で又は適宜組み合わせて用いることにより行うことができる。
【0072】
以上のようにして得られたタンパク質が本発明のラッカーゼ活性を有するタンパク質であることの確認は、一般的な酵素化学反応、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動の電気泳動法、抗原抗体反応の免疫学的方法などにより行うことができる。
【0073】
4. シイタケのラッカーゼによるフェノール性環境汚染物質の分解
本発明によりフェノール性環境汚染物質を効率よく分解および/または脱色することができる。ここでフェノール性環境汚染物質とは、アゾ系色素、ジアゾ系色素、アントラキノン系色素、ポリマー色素の色素化合物やダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類を含み、広く一般のフェノール性化合物を指す。また、本発明で対象とするフェノール性環境汚染物質は、上記の例に限定されるものではない。本発明は、従来の方法ではメディエーターを必要とする難分解性のフェノール性環境汚染物質(例えば、レマゾールブリリアントブルーRなど)でも、メディエーターを必要とすることなく分解できることを特徴とする。また、ラッカーゼ1では、メディエーターの非存在下では基質とならないチロシンおよびドーパも、メディエーターを反応系に加えることにより基質となり得ると考えられる。
【0074】
本発明に用いるラッカーゼは、上記2で得られる精製酵素に限られず、シイタケ培養物または上記形質転換体培養物から部分的または完全に精製された酵素であってよい。即ち、上記1もしくは3で得られる培養液、または部分的に精製した酵素など本発明のラッカーゼを含む溶液であればよい。また、本発明のフェノール性環境汚染物質を分解する反応に用いるラッカーゼの形態は、水溶液中に存在するものでもよく、ラッカーゼ活性を維持していれば、任意の支持体/担体に結合した、一般に「固定化酵素」と呼ばれる形態であってもよい。固定化酵素を調製する様々な方法は、公知であり、当業者には容易に適切な方法で調製できる。固定化酵素の形態で用いる利点(例えば、同一の酵素を何度でも再利用できるなど)も、当業者であれば十分理解し得る。
【0075】
本発明のシイタケラッカーゼによるフェノール性環境汚染物質の分解は、フェノール性環境汚染物質を含む土壌、水等を採取してそれにシイタケラッカーゼを添加することにより行ってもよいし、フェノール性環境汚染物質を含む土壌、水にその場でシイタケラッカーゼを添加することにより行ってもよい。また、本発明のシイタケラッカーゼをフェノール性の色素化合物で染色された物の脱色、例えば繊維の脱色、に特化して用いることもできる。フェノール性環境汚染物質の分解に用いるシイタケラッカーゼの量は、分解しようとする対象物の種類、量により適宜決めることができる。例えば、対象が液体であって含まれるフェノール性物質が約0.02%の場合、該液体100μl当たりシイタケラッカーゼを0.1U以上添加すればよい。対象物が土壌等であり、液体ではない場合も、含まれるフェノール性物質の種類、量や対象物の水分含量等によりシイタケラッカーゼの添加量、シイタケラッカーゼ溶液の添加容量、添加濃度等を適宜決めることができる。また、シイタケラッカーゼの至適条件に基づいて、反応時のpHや温度条件を決めることができる。例えば、NaOH、HCl等の酸、塩基または緩衝液を用いてpHを調整することができる。
【0076】
5. シイタケラッカーゼによるメディエーターを用いたフェノール性環境汚染物質の分解
上記の方法では分解が困難である物質の場合は、メディエーターを反応系に加える事でさらに効率よく分解することができる。メディエーターとしては前述のものを用いることができる。
【0077】
反応系中に適切な濃度のメディエーターを添加すること以外は、上記の方法と同様に実施するとよい。添加するメディエーターの適切な濃度は、公知技術により当業者であれば容易に選択できる。
【0078】
【実施例】
以下、例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの例により限定されるものではない。
【0079】
[実施例1] シイタケによるラッカーゼの生産
下記第2表の組成の液体培地をオートクレーブに入れ、120℃20分間加熱滅菌した後、シイタケをコルクボーラー(φ1cm)で5個打ち抜き、100mlの液体培地を含む200ml容の三角フラスコに入れ、25℃で14日間振盪培養後、500mlの液体培地を含む 2l容の三角フラスコに菌糸を移した。これをさらに16日間振盪培養した。
振盪培養は120rpmで行った。
【0080】
【表2】
【0081】
培養終了後、濾過して得た培養濾液には本発明であるシイタケラッカーゼが含まれている。
【0082】
[実施例2] シイタケにより生産されたシイタケラッカーゼ1の精製
実施例1で得られたシイタケの培養濾液約1.2lに0.4飽和になるように硫酸アンモニウムを低温で撹拌しながら加え、一晩低温で静置した。これを遠心分離し、ラッカーゼを含む上清画分を得た。
【0083】
次に、0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に 0.4 飽和になるように硫酸アンモニウムを加えた緩衝液で平衡化した TOYOPEARL-Butyl 650Mカラム(東ソー製)に上記の上清画分を通す。
【0084】
カラムを平衡化に用いた緩衝液で洗った後、同緩衝液に 0.4 飽和から 0 飽和の硫酸アンモニウムの直線濃度勾配をかけた溶出により酵素を溶出させ、当該酵素を含む活性画分を得た。
【0085】
得られた活性画分を0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて半透膜にて透析し、透析内液を得た。
同じ緩衝液で平衡化したTOYOPEARL-DEAE 650Mカラム(東ソー製)に上記の透析内液を通した。
【0086】
カラムを平衡化に用いた緩衝液で洗った後、同緩衝液に塩化ナトリウム濃度を0Mから0.5Mへの濃度勾配をかけた溶出により酵素を溶出させ、当該酵素を含む活性画分を得た。
【0087】
次にこの活性画分を限外濾過を用いて濃縮し、Superose12カラム(ファルマシア製)を用いてゲル濾過を行った。
得られた活性画分を0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて半透膜にて透析し、透析内液を得た。
同じ緩衝液で平衡化したMono Qカラム(ファルマシア製)に上記の透析内液を通した。
【0088】
カラムを平衡化に用いた緩衝液で洗った後、同緩衝液に塩化ナトリウム濃度を0Mから0.5Mへの濃度勾配をかけた溶出により酵素を溶出させ、当該酵素を含む活性画分を得た。
【0089】
得られた活性画分に0.4飽和になるように硫酸アンモニウムを低温で撹拌しながら加え、これを0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に 0.4 飽和になるように硫酸アンモニウムを加えた緩衝液で平衡化したPhenyl Superoseカラム(ファルマシア製)に通した。
【0090】
カラムを平衡化に用いた緩衝液で洗った後、同緩衝液に0.4飽和から0飽和の硫酸アンモニウムの直線濃度勾配をかけた溶出により酵素を溶出させ、当該酵素を含む活性画分を得た。
【0091】
得られた活性画分を限外濾過を用いて濃縮し、Superdex200(ファルマシア製)を用いてゲル濾過を行うことにより、シイタケラッカーゼを精製した。
【0092】
以上の工程により得られたラッカーゼ画分について以下の測定を行った。
(a) ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)は Laemmli(Laemmli,U.K., Nature, Vol.227, 680-685,1970)の方法に従って行った。アクリルアミドの濃度は10%とし、泳動は15mA にて行った。
【0093】
また、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Native-PAGE)はDavis(Davis,G., Mod. Hosp., Vol 107, 12, 1966)の方法に従って行った。アクリルアミドの濃度は5〜20%の濃度勾配ゲルとし、泳動は15mAにて行った。
【0094】
タンパク質はクーマシーブリリアントブルーR250溶液によって染色した。Native-PAGE後の活性染色は1mM ABTSを含むpH4.0のマキルベイン緩衝液中に泳動後のゲルを浸し、ABTSの酸化による緑色のバンドとして検出した。
【0095】
(b) 活性の測定
活性の測定は、1mM ABTSを含むpH4.0のマキルベイン緩衝液を反応液として用いて比色法で行った。
【0096】
まず、反応液を30℃ に10分間保ち、温度平衡にした後、酵素液を加え、反応を開始させた。反応の液量は100μlとした。
基質(ABTS)の酸化に伴う420nmの吸光度の増加を測定し、ABTS のモル吸光度係数を36000/M/cmとして、酸化されたABTSの量を算出した。
1分間に1μmolのABTSを酸化する酵素量を求め、これを1単位(ユニット(U))とした。
【0097】
(c)タンパク質の定量
タンパク質の定量はBCAプロテインアッセイキット(PIERCE製)を用いて行った。標準タンパク質として牛胎児血清アルブミンを用いた。
この酵素の精製の概要を下記第3表に記載した。
【0098】
【表3】
【0099】
精製酵素は、Native-PAGE、SDS-PAGEの両電気泳動で1本のタンパク質バンドとして移動した。また、Native-PAGEにおいて得られたタンパク質バンドは活性染色とクーマシーブリリアントブルーによるタンパク質染色で得られるバンドと位置が一致した。
従って、この精製酵素は電気泳動的に単一であると考えられる。
【0100】
以上の工程により得られた精製酵素(シイタケラッカーゼ1)の性質について以下記述する。
【0101】
(1)基質特異性
精製酵素の酸化力を下記第4表に示す基質間で比較した。すなわち、基質濃度を変化させ、1 分当たりに酸化された基質の量を比色法で定量し、Lineweaver-Burk法により基質親和性と反応速度を算出した。各基質で測定した吸光度とモル吸光度係数は表中に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
本酵素は、上記方法ではフェノールオキシダーゼの基質であるチロシン、ドーパに対して活性を示さなかった。
【0104】
(2)至適pH
ガラス電極 pH メーターを用いて常法により測定した。本酵素の活性は pH 4.0 付近で極大となり、至適 pH は 4.0 付近であることが判明した。
【0105】
(3)熱安定性
精製酵素と50μg/mlの牛胎児血清アルブミンを含むマキルベイン緩衝液(pH6.0)を湯浴中に20℃から80℃まで10℃毎に30分間保持した後、氷冷して酵素の残存活性を測定した。
精製酵素は40℃まででは活性の低下は見られず、50℃で約20%、60℃では約90%の活性の低下が見られた。
この結果より、本酵素は50℃までは安定であると結論付けた。
【0106】
(4)キレート試薬・金属イオンの影響
酵素反応液中に 1 mM のジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムを加えることで、本酵素の活性はほぼ100%阻害された。
酵素反応液中に1mMの塩化スズを加えることで、本酵素の活性はほぼ100%阻害された。
【0107】
(5)分子量
本酵素の分子量を SDS-PAGE を用いた常法により測定した。分子量の標準として、バイオラッド社製の分子量標準タンパク質(Precision standard protein) を用いた。本酵素の分子量は72.2kDaと算出された。
【0108】
また、本酵素標品にエンドグリコシダーゼ-H(ロッシュ社製)により糖鎖の除去を行った。すなわち、10 μl の 0.01 M のリン酸ナトリウム緩衝 (pH6.0)中で本酵素5μg とエンドグリコシダーゼ-H 0.5μlを 37℃ で一晩反応させ、SDS-PAGEに供し、常法に従い分子量を測定した。
糖鎖除去後の本酵素の分子量は約55kDaと算出された。
【0109】
(6)等電点
アンホライン-PAG PLATEを用いて電気泳動法により等電点を測定した。
本酵素の等電点はpH3.0〜3.5付近であった。
【0110】
(7)吸収スペクトル
本酵素の210 nmから700nmまでの吸収スペクトルを測定したところ、タンパク質一般に見られる280nm付近の他に610nm付近に吸収極大が認められた。
610nm付近の吸収極大はType Iの銅由来の吸収であると考えられる。
【0111】
(8)N末端アミノ酸配列
本酵素のN 末端アミノ酸配列を解析したところ、Ala Ile Gly Pro Val Thr Asp Leu His Ile Val Asn(配列番号9)のアミノ酸配列が確認された。これは、配列番号1に示すアミノ酸配列の19位〜30位までのアミノ酸配列と一致する。したがって、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の1位〜18位までのアミノ酸残基が翻訳後修飾により切断されて成熟型タンパク質となったものであると推定できる。
【0112】
[実施例3] 麹菌によるシイタケラッカーゼの生産
シイタケラッカーゼの配列番号1のアミノ酸配列をコードするcDNAをAmyB プロモーターとターミネーターの間に挿入し、図1に示す発現ベクターを構築した。AmyBプロモーターの下流に挿入することで、酵素遺伝子の発現はマルトースにより誘導される。
【0113】
この発現ベクターを制限酵素Eco O65Iを用いて線状化し、常法に従い麹菌(アスペルギルス・オリゼ)に導入した。
すなわち、第5表の組成の液体培地(pH 5.5)をオートクレーブに入れ、120℃ 15分間加熱滅菌した後、1×108個の麹菌胞子を、100mlの液体培地を含む500ml容の坂口フラスコに入れ、30℃で20時間振盪培養した。
【0114】
【表5】
【0115】
滅菌したガラスフィルターにて菌糸を集め、Lysing enzyme L 1412(シグマ社製)と0.8Mの塩化ナトリウムを含む0.01Mのリン酸緩衝液中に菌糸を懸濁し、麹菌細胞をプロトプラスト化した。
【0116】
得られたプロトプラストを0.8Mの塩化ナトリウム溶液で無菌的に洗浄し、プロトプラスト数を2.5×108/mlになるように0.8Mの塩化ナトリウムと0.01Mの塩化カルシウムを含む 0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した。
【0117】
さらに40%のポリエチレングリコールを含む0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を全量の0.25倍量加えたものをプロトプラスト溶液とした。
このプロトプラスト溶液0.2mlに線状化した発現ベクターを20μg加え、氷中で30分間静置した。
【0118】
静置後、40%のポリエチレングリコールを含む0.05mMの0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を1ml加え、室温で15分間静置した後、8.5 mlの0.8Mの塩化ナトリウムと0.01Mの塩化カルシウムを含む0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を加えた。
【0119】
同じ溶液でプロトプラストを無菌的に洗浄した後、適当な濃度になるようにプロトプラストを寒天0.75%の最小寒天培地(チャペックドックス培地)に0.8Mの塩化ナトリウムと0.1μg/ml のピリチアミンを含む培地に懸濁し、最小寒天培地(チャペックドックス培地)に0.8Mの塩化ナトリウムと0.1μg/mlのピリチアミンを含む培地上に重層した。
【0120】
上記で得られた寒天培地を30℃で数日間培養することにより、生育した形質転換体を選択した。
得られた形質転換体を同じ培地で選択する作業を繰り返し、形質転換体を純化した。
【0121】
下記第6表の組成の液体培地(pH5.5)をオートクレーブに入れ、120℃で15分間加熱滅菌した後、100mlの液体培地を含む500 ml容の坂口フラスコに1×108個の形質転換体胞子を入れ、30℃で5日間振盪培養した。
振盪培養は120rpmで行った。
【0122】
【表6】
【0123】
培養終了後、濾過して得た培養濾液には本発明のシイタケラッカーゼが含まれている。
精製を必要とする場合は、上記培養濾液より、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー等を用いてラッカーゼを精製することが可能である。
【0124】
[実施例4] シイタケによるラッカーゼ2の生産
シイタケ子実体を飽和塩化アンモニウム溶液を静置したデシケーター内で25℃に温度を保ち、3〜5日間程度静置した。静置後のシイタケ子実体からメスを用いて菌褶部を回収し、これを液体窒素を用いて凍結させた。凍結させた菌褶部40 gを100 mlの0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液中に懸濁し、ワーリングブレンダーを用いて破砕した。このようにして得られた粗抽出液から、遠心分離、濾過により得られた粗酵素液には本発明であるシイタケラッカーゼ2が含まれている。
【0125】
[実施例5] シイタケにより生産されたシイタケラッカーゼ2の精製
上記実施例で得られた粗酵素液約100mlに0.3飽和になるように硫酸アンモニウムを低温で撹拌しながら加え、一晩低温で静置した。これを遠心分離して、ラッカーゼを含む上清画分を得た。
【0126】
次に、0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に0.3飽和になるように硫酸アンモニウムを加えた緩衝液で平衡化したTOYOPEARL-Butyl 650Mカラム(東ソー(東京、日本)製)に上記の上清画分を通した。
【0127】
カラムを平衡化に用いた緩衝液で洗った後、同緩衝液に0.3飽和から0飽和の硫酸アンモニウムの直線濃度勾配をかけて溶出することにより酵素タンパク質を溶出させ、当該酵素を含む活性画分を得た。
【0128】
得られた活性画分を0.02Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を用いて半透膜にて透析し、透析内液を回収した。
同じ緩衝液で平衡化したTOYOPEARL-CM 650Mカラム(東ソー製)に上記の透析内液を通した。
カラムを平衡化に用いた緩衝液タンパク質を溶出させ、当該酵素を含む活性画分を得た。
【0129】
次にこの活性画分を限外濾過を用いて濃縮し、Superdex 75(ファルマシア製)を用いてゲル濾過を行った。
得られた活性画分に0.2飽和になるように硫酸アンモニウムを低温で撹拌しながら加え、0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に0.2飽和になるように硫酸アンモニウムを加えた緩衝液で平衡化したPhenyl-Superoseカラム(ファルマシア製)に通した。
【0130】
カラムを平衡化に用いた緩衝液で洗った後、同緩衝液に0.2飽和から0飽和の硫酸アンモニウムの直線濃度勾配をかけた溶出により酵素を溶出させることにより、シイタケラッカーゼ2を精製した。
この酵素の精製の概要を下記第7表に記載した。
【0131】
【表7】
【0132】
精製酵素は、Native-PAGE、SDS-PAGEの両電気泳動で一本のタンパク質バンドとして移動した。また、Native-PAGEにおいて得られたタンパク質バンドは活性染色とクーマシーブリリアントブルーによるタンパク質染色で得られるバンドと位置が一致した。
従って、この精製酵素は電気泳動的に単一であると考えられる。
【0133】
以上の工程により得られた精製酵素(シイタケラッカーゼ2)の性質について以下記述する。
【0134】
(1)基質特異性
精製酵素の酸化力を下記第8表に示す基質間で比較した。すなわち、基質濃度を変化させ、1分間当たりに酸化された基質の量を比色法で定量し、Lineweaver-Burk法により基質親和性と反応速度を算出した。各期質で測定した吸光度とモル吸光度係数は表中に示す。
【0135】
【表8】
【0136】
本酵素は上記方法ではフェノールオキシダーゼの基質であるチロシンに対して活性を示さなかった。
【0137】
(2)至適pH
ガラス電極pHメーターを用いて常法により測定した。本酵素の活性はpH3.0付近で極大となり、至適pHは3.0付近であることが判明した。
【0138】
(3)熱安定性
精製酵素と50μg/mlの牛胎児血清アルブミンを含むマキルベイン緩衝液(pH6.0)を湯浴中に20℃から80℃まで10℃毎に30分間保持した後、氷冷して酵素の残存活性を測定した。
精製酵素は50℃までは活性の低下は見られず、60℃で約35%、70℃では約95%の活性の低下が見られた。
この結果より、本酵素は50℃まで安定であると結論付けた。
【0139】
(4)キレート試薬・金属イオンの影響
酵素反応液中に 1 mM ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムを加えることで、本酵素の活性は約95%阻害された。
酵素反応液中に 1 mM 塩化水銀を加えることで、本酵素の活性は約30%阻害された。
【0140】
(5)分子量
本酵素の分子量を SDS-PAGE を用いた常法により測定した。分子量の標準として、バイオラッド社製の分子量標準タンパク質(Precision standard protein)を用いた。本酵素の分子量は 58.0 kDa と算出された。
【0141】
また、本酵素標品にエンドグリコシダーゼ-H(ロッシュ社製)を反応させることにより糖鎖の除去を行った。すなわち、10μl の0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中で本酵素5μgとエンドグリコシダーゼ-H 0.5μl を37℃で一晩反応させ、SDS-PAGEに供し、常法に従い分子量を測定した。
糖鎖除去後の本酵素の分子量は約53 kDaと算出された。
【0142】
(6)等電点
アンホライン-PAG PLATE を用いて電気泳動法により等電点を測定した。
本酵素の等電点はpH 6.9と算出された。
【0143】
(7)吸収スペクトル
本酵素の210nmから700 nmまでの吸収スペクトルを測定したところ、タンパク質一般に見られる280nm付近の他に610nm付近に極大吸収が認められた。
610nm付近の吸収極大はType I の銅由来の吸収であると考えられる。
【0144】
(8)ウェスタンブロッティング
配列番号4に示されるアミノ酸配列より抗原エピトープ部位を推定し、NVQQGKRYRFRMISIACDA(配列番号4に示すアミノ酸配列の224〜242位の配列)、TGGLNSGILRYQGAPDADP(配列番号4に示すアミノ酸配列の308〜326位の配列)、RSADNTTYNYKNPVRRD(配列番号4に示すアミノ酸配列の444〜460位の配列)のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、これに対するウサギポリクローナルペプチド抗体を常法により作製した。この抗ペプチド抗体を用いて、常法に従いウェスタンブロッティングを行った。
本酵素はペプチド抗体に対して陽性反応を示した。
【0145】
この結果より、本酵素には先述の合成ペプチドと同一の配列が含まれており、配列番号4が示すアミノ酸配列を有していることが明らかとなった。
【0146】
[実施例6] シイタケラッカーゼによる色素化合物の脱色
第9表に示す色素化合物を0.02%になるようにマキルベイン緩衝液(pH4.0)に溶解した色素溶液100μlにラッカーゼ(本実施例においては、ラッカーゼ1を用いた)を0.5U加え、30℃で酵素反応を行った。90分間反応後の吸光度をそれぞれ測定し、下記第9表に反応前後の吸光度を示した。吸光度は1cmセルを用いた場合に換算した。
【0147】
なお、ここでラッカーゼは実施例で得られた粗酵素液、精製酵素、または麹菌により生産される組換え酵素のいずれであってもよい。
【0148】
本発明のラッカーゼはアゾ色素、ジアゾ色素、アントラキノン色素、またはトリフェニルメット色素の酸化的脱色反応を触媒した。
図2に、0,0.1,0.25,0.5 Uのラッカーゼを用いた色素の脱色の経時的変化を示す。色素化合物の脱色は酵素量に比例していることがわかる。
【0149】
【表9】
【0150】
なお、ラッカーゼ2を用いて同様の実験を行った場合も、結果はラッカーゼ1と同様の傾向を示した。
【0151】
[実施例7] メディエーターを用いたシイタケラッカーゼによる色素化合物の脱色
実施例6の方法では脱色が困難な色素について、ポリメリック色素R-478(Poly R-478,シグマ社製)を0.02%になるようにマキルベイン緩衝液(pH4.0)に溶解した色素溶液100μlにラッカーゼ(本実施例においては、ラッカーゼ1を用いた)を0.5U加え、30℃で酵素反応を行った。また、メディエーターとして VA を反応液中に0, 0.5, 1, 2, 5 mMとなるように加えた。
【0152】
なお、ここでラッカーゼは実施例で得られた粗酵素液、精製酵素、または麹菌により生産される組換え酵素のいずれであってもよい。
本基質の脱色は常法に従い、513nmと362nmの吸光度を測定し、吸光度の比を算出した。
吸光度は1cmセルを用いた場合に換算した。
【0153】
図3に脱色の経時的変化を示す。メディエーターを用いることにより、脱色が困難なポリメリック色素R-478の脱色が促進されていることがわかる。
なお、ラッカーゼ2を用いて同様の実験を行った場合も、結果はラッカーゼ1と同様の傾向を示した。
【0154】
[実施例8] シイタケラッカーゼによるPCBの分解
PCB混合物(カナダ Wellington Laboratories 社製カネクロール300,400,500,600の等量混合物)をアセトニトリルに転溶し、平均モル濃度を600 μMに調整した。この混合液とラッカーゼ1(1 U/ml)をマキルベイン緩衝液(pH 4.0)中で30℃、48時間、1,000 rpm で振盪反応させた。また、反応液中にはメディエーターとして VA を0,1,2,5 mM となるように加えた。下記第10表に反応液の組成を示す。反応液は 1.2 ml になるように調整した。
【0155】
なお、ここでラッカーゼは、実施例で得られた粗酵素液、精製酵素、または麹菌により生産される組換え酵素組換え酵素のいずれであってもよい(本実施例においては、ラッカーゼ1を用いた)。
【0156】
本発明のPCB量は常法に従い、ヘキサンによる抽出を行った後、ガククロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)によって反応液中のPCB量を測定した。GC/MSの条件は定法に従った。
【0157】
【表10】
【0158】
本発明のラッカーゼは、用いた PCB 混合物に含まれる PCB のうち、3塩化物以上のものを全て減少させた(図4)。総量での計算結果を下記第11表に示す。メディエーターを用いることにより、PCBの分解が促進されていることがわかる。
【0159】
【表11】
【0160】
【発明の効果】
以上の記載により、本発明は、食用担子菌であり、安全性も高いと考えられるシイタケ由来のラッカーゼを用いたフェノール性環境汚染物質の分解方法において極めて有用であることが判るであろう。本発明のシイタケラッカーゼはメディエーターの非存在下で種々のフェノール性環境汚染物質の分解を触媒するため、環境中のフェノール性汚染物質を容易に分解することが可能となる。上記実施例に示すように、従来の方法ではメディエーターの添加を必要としていた難分解性フェノール性汚染物質であるレマゾールブリリアントブルーRが、本発明の方法によりメディエーターを添加すること無く脱色および/または分解されることは、非常に有利である。また、PCBなどの分解および/または脱色が困難な物質の場合は、反応系にメディエーターを加えることで反応を促進することが可能である。本発明で得られたシイタケラッカーゼの生産法によれば、麹菌に組換え酵素を生産させることで、安価かつ大量にシイタケラッカーゼが安定して得られ、そのフェノール性汚染物質の分解における、触媒能、再現性、簡便性などにおいて有利であることから、広く利用されることが期待される。
【0161】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】シイタケラッカーゼを麹菌で発現させるための発現ベクターの模式図である。
【図2】 4種類の色素のラッカーゼによる脱色を経時的に示した図である。(A)はメチルレッド、(B)はナフトールブルーブラック、(C)はレマゾールブリリアントブルーR、(D)はブロモフェノールブルーの脱色の様子を示す。図中、白い四角(□)は対照として用いた酵素を含まない場合、黒い三角(▲)は反応液中に0.1 Uのシイタケラッカーゼを加えた場合、黒い四角(■)は反応液中に 0.25 U のシイタケラッカーゼを加えた場合、黒い円(●)は反応液中に0.5 Uのシイタケラッカーゼを加えた場合の反応液の吸光度を示している。
【図3】ポリメリック色素R-478を0.02%含むマキルベイン緩衝液のシイタケラッカーゼによる脱色を経時的に示した図である。メディエーターにはVAを種々の濃度で用いた。白い円(○)は対照として用いたVAを含まない場合、黒い円(●)は反応液中に0.5mMのVAを加えた場合、白い三角(△)は反応液中に1mMのVAを加えた場合、黒い三角(▲)は反応液中に2mMのVAを加えた場合、白い四角(□)は反応液中に5mMのVAを加えた場合の反応液の513nmと362nmにおけえる吸光度の比を示している。
【図4】図4は、PCB 混合物を 100 μM含むマキルベイン緩衝液のシイタケラッカーゼによる分解を塩素数毎に示した図である。メディエーターにはVAを種々の濃度で用いた。縦軸にはコントロールと比較した増減を%で示している。
Claims (2)
- 以下の[1]〜[5]から選択される少なくとも1つのシイタケラッカーゼ又は該シイタケラッカーゼを含むシイタケ培養物を用いて、メディエーターの非存在下で、アゾ色素、ジアゾ色素、アントラキノン色素およびトリフェニルメット色素からなる群から選択される少なくとも1つであるフェノール性環境汚染物質を分解する方法:
[1] 以下の性質:
(1)メディエーターの非存在下ではチロシンおよびドーパは基質とせず;
(2)至適pHは4.0付近であり;
(3)pH 6.0で30分間処理した場合において、50℃までの熱に安定であり;
(4)ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムにより活性が阻害され;
(5)銅および約24%の糖鎖を含有し、分子量は約72kDaであり;
(6)ラッカーゼとしての触媒作用には酸素を必要とする;
を有するシイタケ(Lentinula edodes)由来のラッカーゼ;
[2] さらに、(7)アミノ末端に Ala Ile Gly Pro Val Thr Asp Leu His Ile Val Asn(配列番号9)で表されるアミノ酸配列を有している[1]のラッカーゼ;
[3] 以下の(a)または(b)のシイタケラッカーゼタンパク質:
(a)配列番号2に表されるアミノ酸配列の19位〜518位のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2に表されるアミノ酸配列の19位〜518位のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質;
[4] 以下の性質:
(1)メディエーターの非存在下ではチロシンを基質とせず;
(2)至適pHは3.0付近であり;
(3)pH6.0で30分間処理した場合において、50℃までの熱に安定であり;
(4)ジチオスレイトール、L-システイン、アジ化ナトリウムにより活性が阻害され;
(5)銅および約8.6%の糖鎖を含有し、分子量は58kDaであり;
(6)ラッカーゼとしての触媒作用には酸素を必要とする;
を有するシイタケ由来のラッカーゼ;
[5] 以下の(a)または(b)のシイタケラッカーゼタンパク質:
(a)配列番号4に表されるアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b)配列番号4に表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつシイタケラッカーゼ活性を有するタンパク質。 - 前記フェノール性環境汚染物質が、メチルレッド、ナフトールブルーブラック、レマゾールブリリアントブルーR、及びブロモフェノールブルーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
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