JP6144967B2 - エタノールアミンオキシダーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、モノエタノールアミンを効率良く酸化する作用を有する蛋白質に関し、より詳細には、酸素及び水の存在下でモノエタノールアミンを酸化し、グリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素となす反応を効率良く触媒する蛋白質に関する。
モノエタノールアミン(2−アミノエタノール、エタノールアミンとも言う)の酸化作用を有する蛋白質としては、モノエタノールアミンオキシダーゼ(EC 1.4.3.8)、モノアミンオキシダーゼ(EC 1.4.3.4)、及び一級アミンオキシダーゼ(EC 1.4.3.21)が公知である。この内モノエタノールアミンを酸化する作用が具体的に確認されている蛋白質としては以下の4種の酵素がある。
モノエタノールアミンオキシダーゼとしては、Arthrobacter属由来の酵素(非特許文献1)及びPhormia regina由来の酵素(非特許文献2)の2種が公知である。Arthrobacter属由来のモノエタノールアミンオキシダーゼの比活性は0.0621μmol/min/mgである。Phormia regina由来のモノエタノールアミンオキシダーゼの比活性は0.00026μmol/min/mgである。
一級アミンオキシダーゼの中で、Arthrobacter sp.(FERM P−06240及びBP−0421)由来の一級アミンオキシダーゼがモノエタノールアミンを酸化することが具体的に確認されている(非特許文献3)。該一級アミンオキシダーゼのモノエタノールアミンに対する比活性は9μmol/min/mgであるが、触媒効率(Vmax/Km)は0.6μmol・mg-1・min-1・mM-1である。その他の一級アミンオキシダーゼのモノエタノールアミンに対する作用は具体的に確認されていない。
モノアミンオキシダーゼのモノエタノールアミンに対する作用は具体的に確認されていない。
Narrod S.A.及びJakoby W.B.、J.Biol.Chem.、239巻、2189−2193頁、1964年 Kulkarni A.P.及びHodgson E.、Comp.Biochem.Physiol.、B44巻、407−422頁、1973年 Ota H.ら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、72巻、2732−2738頁、2008年
以上のとおり、モノエタノールアミンの酸化作用が具体的に確認されている従来の酵素は、いずれもモノエタノールアミンを効率良く酸化する作用を有するとは言えない。このような背景のもと、本発明はモノエタノールアミンを効率良く酸化する作用を有する蛋白質を提供することを課題とする。
上記課題を解決する為に本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、酸素及び水の存在下でモノエタノールアミンを効率良く酸化する作用を有する、特定の微生物由来の蛋白質を見出した。そして、該蛋白質の各種理化学的性質を確認し、該蛋白質が一級アミンオキシダーゼであり、その比活性及び触媒効率が、いずれも、モノエタノールアミンの酸化作用が具体的に確認されている従来の酵素よりも高いことを見出した。さらに、該蛋白質の塩基配列及びアミノ酸配列を見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
下記(A)又は(B)の蛋白質:
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、下記式で表される反応を触媒する蛋白質。
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
[2]
下記(a)〜(d)のいずれかの塩基配列を含む遺伝子:
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、下記式で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列:
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
(c)配列番号2に記載の塩基配列;
(d)配列番号2に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であって、下記式で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列。
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
[3]
[2]に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
[4]
[3]に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
[5]
[4]に記載の微生物を培地で培養し、培養物中に[1]に記載の蛋白質を生成蓄積させ、該培養物から該蛋白質を採取することを特徴とする蛋白質の製造方法。
[6]
[1]に記載の蛋白質を用いるモノエタノールアミンの酸化方法。
[7]
[1]に記載の蛋白質を用いてモノエタノールアミンからグリコールアルデヒド、アンモニア、又は過酸化水素を製造する方法。
[8]
[1]に記載の蛋白質を含有するモノエタノールアミン酸化剤。
さらに、本発明は以下に関する。
[9]
下記(1)及び(2):
(1)作用
下記式で表される反応を触媒する:
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22;及び
(2)比活性
pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、10μmol/mg/min以上である;
の理化学的性質を有する蛋白質であって、さらに下記(3)〜(5):
(3)触媒効率(Vmax/Km)
モノエタノールアミンに対して10μmol・mg-1・min-1・mM-1以上である;
(4)金属イオン又はキレート剤の影響
Zn2+(5mM)で作用が阻害される、及び/又は
EDTA(5mM)で作用が実質的に阻害されない;及び
(5)基質特異性
アミルアミン及びヘキシルアミンに対し、チラミンに対するよりも高い活性を有する;
から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する蛋白質。
[10]
(1)〜(3)の理化学的性質を有する蛋白質であって、さらに(4)及び(5)から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する、[9]に記載の蛋白質。
[11]
(1)〜(5)の理化学的性質をいずれも有する、[9]に記載の蛋白質。
[12]
さらに下記(6)〜(11):
(6)等電点
pH5.2〜5.6の範囲である;
(7)至適pH
pH7.2〜7.5の範囲である;
(8)分子量
67〜81kDaの範囲である;
(9)pH安定性
4℃、pH6.5〜9の範囲で3時間保持後、80%以上の残存活性を有する;
(10)熱安定性
200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、37℃、30分間の熱処理後、90%以上の残存活性を有する;及び
(11)至適温度
43〜47℃の範囲である;
から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する[9]〜[11]のいずれかに記載の蛋白質。
[13]
(6)及び(7)の理化学的性質を有する、[12]に記載の蛋白質。
[14]
(6)〜(11)の理化学的性質をいずれも有する、[12]に記載の蛋白質。
[15]
下記(1)及び(2):
(1)作用
下記式で表される反応を触媒する:
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22;及び
(2)比活性
pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、10μmol/mg/min以上である;
の理化学的性質を有する蛋白質であって、配列番号12〜14に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質。
[16]
Syncephalastrum racemosum(NITE P−01594)由来である、[9]〜[15]のいずれかに記載の蛋白質。
[17]
下記(C)〜(E)のいずれかの蛋白質:
(C)配列番号2に記載の塩基配列によりコードされる蛋白質;
(D)配列番号2に記載の塩基配列において、1又は複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列によりコードされる蛋白質であって、下記式で表される反応を触媒する蛋白質:
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
(E)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされる蛋白質であって、下記式で表される反応を触媒する蛋白質。
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
[18]
下記(2)〜(11):
(2)比活性
pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、10μmol/mg/min以上である;
(3)触媒効率(Vmax/Km)
モノエタノールアミンに対して10μmol・mg-1・min-1・mM-1以上である;
(4)金属イオン又はキレート剤の影響
Zn2+(5mM)で作用が阻害される、及び/又は
EDTA(5mM)で作用が実質的に阻害されない;
(5)基質特異性
アミルアミン及びヘキシルアミンに対し、チラミンに対するよりも高い活性を有する;
(6)等電点
pH5.2〜5.6の範囲である;
(7)至適pH
pH7.2〜7.5の範囲である;
(8)分子量
67〜81kDaの範囲である;
(9)pH安定性
4℃、pH6.5〜9の範囲で3時間保持後、80%以上の残存活性を有する;
(10)熱安定性
200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、37℃、30分間の熱処理後、90%以上の残存活性を有する;及び
(11)至適温度
43〜47℃の範囲である;
から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する[17]に記載の蛋白質。
[19]
(a)〜(d)のいずれかの塩基配列からなる、[2]に記載の遺伝子。
[20]
(e)配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、下記式で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
を含む遺伝子。
[21]
(e)の塩基配列からなる、[20]に記載の遺伝子。
[22]
下記(2)〜(11):
(2)比活性
pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、10μmol/mg/min以上である;
(3)触媒効率(Vmax/Km)
モノエタノールアミンに対して10μmol・mg-1・min-1・mM-1以上である;
(4)金属イオン又はキレート剤の影響
Zn2+(5mM)で作用が阻害される、及び/又は
EDTA(5mM)で作用が実質的に阻害されない;
(5)基質特異性
アミルアミン及びヘキシルアミンに対し、チラミンに対するよりも高い活性を有する;
(6)等電点
pH5.2〜5.6の範囲である;
(7)至適pH
pH7.2〜7.5の範囲である;
(8)分子量
67〜81kDaの範囲である;
(9)pH安定性
4℃、pH6.5〜9の範囲で3時間保持後、80%以上の残存活性を有する;
(10)熱安定性
200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、37℃、30分間の熱処理後、90%以上の残存活性を有する;及び
(11)至適温度
43〜47℃の範囲である;
から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する蛋白質をコードする、[19]〜[21]のいずれかに記載の遺伝子。
[23]
[19]〜[22]のいずれかに記載の遺伝子を含む組換えベクター。
[24]
[23]に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
[25]
[1]及び[9]〜[18]のいずれかに記載の蛋白質を生産することを特徴とする微生物。
[26]
Syncephalastrum racemosum(NITE P−01594)である、[25]に記載の微生物。
[27]
下記(1)及び(2):
(1)作用
下記式で表される反応を触媒する:
HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22;及び
(2)比活性
pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、10μmol/mg/min以上である;
の理化学的性質を有する蛋白質の製造方法であって:
[24]〜[26]のいずれかに記載の微生物を培地で培養し、培養物中に上記(1)及び(2)の理化学的性質を有する蛋白質を生成蓄積させ、該培養物から該蛋白質を採取することを特徴とする蛋白質の製造方法。
[28]
[9]〜[18]のいずれかに記載の蛋白質を用いるモノエタノールアミンの酸化方法。
[29]
[9]〜[18]のいずれかに記載の蛋白質を用いてモノエタノールアミンからグリコールアルデヒド、アンモニア、又は過酸化水素を製造する方法。
[30]
[9]〜[18]のいずれかに記載の蛋白質を含有するモノエタノールアミン酸化剤。
[31]
ホスファチジルエタノールアミン(PE)の定量方法であって:
PEを加水分解してホスファチジン酸とモノエタノールアミンを得る工程;
得られモノエタノールアミンから、[1]及び[9]〜[18]のいずれかに記載の蛋白質を用いて過酸化水素を発生させる工程;及び
発生した過酸化水素を定量する工程;
を含む方法。
本発明によれば、モノエタノールアミンを効率良く酸化する作用を有する蛋白質を提供することができる。
実施例1で得られたCell−free extract(黒丸)及び該Cell−free extractを98℃20分間の熱処理したもの(白丸)について、それぞれに含まれる本発明の蛋白質の作用でモノエタノールアミンの酸化により得られる過酸化水素を発色させ、吸光度を測定した結果を示す図である(実施例2)。 本発明の蛋白質のモノエタノールアミン酸化作用に係るHanes−Woolfプロットを示す図である(実施例4)。 SDS−PAGE法により本発明の蛋白質の分子量を測定した結果を示す図である(実施例5)。 本発明の蛋白質の活性に対するpHの影響を示す図である(実施例8)。 本発明の蛋白質の活性のpH安定性を示す図である(実施例9)。 本発明の蛋白質の活性に対する温度の影響を示す図である(実施例10)。 形質転換体EAO/pET−21a(+)を培養して得られた粗蛋白質液のSDS−PAGEの結果を示す図である(実施例15)。
本発明の蛋白質は、下記(1)の理化学的性質を有する蛋白質である。
なお、本発明の蛋白質は銅イオンの存在下に下記(1)〜(11)の理化学的性質を有するものであってもよく、特に2価の銅イオンと錯体を形成して下記(1)〜(11)の理化学的性質を有するものであってもよい。
(1)作用
酸素及び水の存在下でモノエタノールアミンを酸化し、グリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素を得る反応を触媒する。
上記(1)の作用で触媒される反応は〔式1〕で表すこともできる。
HOCH2CH2NH2+O2+H2
→HOCH2CHO+NH3+H22・・・〔式1〕
上記(1)の作用で触媒される反応は、後述の本発明の蛋白質を用いる方法について説明する条件及び後述の実施例を参照して行うことができる。
上記(1)の作用におけるモノエタノールアミンは下記構造式で表される公知のモノエタノールアミンであり、例えば和光純薬工業株式会社製造元コードALR−136Nとして購入することができる。
上記(1)の作用における水は、本発明の蛋白質がモノエタノールアミンに作用する際に必要な量が存在していればよい。モノエタノールアミンは水溶性であり、上記(1)の作用で触媒される反応は通常水中で行われる。
上記(1)の作用における酸素(O2)の量は、モノエタノールアミンの酸化に必要な量が、水に動的平衡状態で溶解していればよく、その濃度は特に限定されないが、酸化するモノエタノールアミンと等モル以上溶解していることが好ましい。酸化するモノエタノールアミンと等モル以下しか水に溶解していない場合は、動的平衡で、及び/又は強制的に溶解させればよく、水中の酸素濃度により酸化するモノエタノールアミンの量を制御することもできる。
グリコールアルデヒド(HOCH2CHO)は公知のグリコールアルデヒドであり、例えばSIGMA−ALDRICH製品番号G6805−5Gとして購入することができる。グリコールアルデヒドは常温常圧下、通常下記式で表されるダイマーとして存在する。
上記(1)の作用におけるアンモニアは公知のアンモニア(NH3)であり、アンモニウム塩を形成する場合もある。
上記(1)の作用における過酸化水素は公知の過酸化水素(H22)である。
本発明の蛋白質は、上記(1)の理化学的性質に加えて、さらに、下記(2)〜(11)から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する蛋白質であり、好ましくは、上記(1)の理化学的性質に加えて、さらに、下記(2)の理化学的性質を有する蛋白質である。
一態様において、本発明の蛋白質は:上記(1)及び下記(2)の理化学的性質を有し、さらに下記(3)〜(5)から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する蛋白質であり;例えば、(1)〜(3)の理化学的性質を有する蛋白質であって、さらに(4)及び(5)から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する蛋白質であり;好ましくは、(1)〜(5)の理化学的性質をいずれも有する蛋白質である。
一態様において、本発明の蛋白質は、上記の蛋白質であって、さらに、下記(6)〜(11)から選択されるいずれか1以上の理化学的性質を有する蛋白質であり;例えば、さらに(6)及び(7)の理化学的性質を有する蛋白質であり;好ましくは、(6)〜(11)の理化学的性質をいずれも有する蛋白質である。
(2)比活性
pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、10μmol/mg/min以上である。
本発明における比活性とは、蛋白質1mgあたりの活性である。蛋白質は、Bradford法、Lowry法、BCA法、紫外吸収法等の定量方法を用いて、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン等の検量線を用いて測定することができる。測定の感度は、試薬の安定性、存在する還元剤、界面活性剤、アミノ基を有する化合物、リン酸等による干渉の程度に応じて差があるので、目的、蛋白質量、用いる蛋白質の溶解液等の条件や状況に応じて適切な定量方法を選択すればよい。また、これらの方法は蛋白質の絶対値ではなく相対値を求める方法であり、測定値は変わり得る。
上記の比活性は、pH7.5及び37℃の条件下において、1分間に酸化されるモノエタノールアミンの量と(μmol/min)、酸化に用いた本発明の蛋白質の量から算出することができる。本発明において、pH7.5及び37℃の条件下において、1分間に1μmolのモノエタノールアミンを酸化する本発明の蛋白質の量を1ユニット(U)と記載する場合があり、具体的には後述する「本発明の蛋白質の活性測定方法」(後述する[測定方法]において、基質としてモノエタノールアミンを用いた方法)を用いて測定することができる。
(3)触媒効率(Vmax/Km)
モノエタノールアミンに対して10μmol・mg-1・min-1・mM-1以上である。
本発明における触媒効率は、本発明の蛋白質のモノエタノールアミンに対する上記〔式1〕の反応の最大反応速度をVmax、ミカエリス定数をKmとして、下記〔式2〕で算出する。
触媒効率 = Vmax/Km・・・〔式2〕
〔式2〕中、Vmax及びKmはミカエリス・メンテンの式によるLineweaver−Burkプロット、ミカエリス・メンテンの式を変形したHanes−Woolfプロット、Eadie−Hofsteeプロット等の線形化手法によって求めればよいが、基質阻害の影響を排除する場合はHanes−Woolfプロットによって求めることが好ましい(蛋白質・酵素の基礎実験法(改訂第2版、堀尾武一、1994年南光堂参照))。
本発明の蛋白質の触媒効率の下限は、1μmol・mg-1・min-1・mM-1以上であればよく、25μmol・mg-1・min-1・mM-1以上であれば好ましく、50μmol・mg・min-1・mM-1以上であればさらに好ましく、75μmol・mg-1・min-1・mM-1以上であれば特に好ましいが、従来公知の一級アミンオキシダーゼよりモノエタノールアミンを効率良く酸化するという観点からは10μmol・mg-1・min-1・mM-1以上が最も好ましい。
(4)金属イオン又はキレート剤の影響
Zn2+(5mM)で作用が阻害される、及び/又は
EDTA(5mM)で作用が実質的に阻害されない。
一態様において、本発明の蛋白質の作用は、例えば下記[測定方法]において、基質としてモノエタノールアミンを用い、反応試薬混合液2を混合した際の反応液中に5mMのZn2+が存在する場合、Zn2+の非存在下と比較して、50%以上阻害され、例えば70%以上阻害され、80%以上、90%以上又は95%以上阻害され得る。
一態様において、本発明の蛋白質の作用は、例えば下記[測定方法]において、基質としてモノエタノールアミンを用い、反応試薬混合液2を混合した際の反応液中に5mMのEDTAが存在する場合、EDTAの非存在下と比較して実質的に阻害されない。本明細書中において、蛋白質の作用が実質的に阻害されないとは、蛋白質の作用が、対象物質の非存在下と比較して20%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは10%以上、阻害されないことを指す。
また、一態様において、本発明の蛋白質は、上記に加え、以下のいずれか1以上の性質を有していてもよい:
Mn2+(5mM)存在下で作用が50%以上阻害される;
Ca2+(5mM)で作用が実質的に阻害されない;及び
Mg2+(5mM)で作用が実質的に阻害されない。
(5)基質特異性
アミルアミン及びヘキシルアミンに対し、チラミンに対するよりも高い活性を有する。
一態様において、本発明の蛋白質は、エタノールアミン以外の基質に対しても上記(1)の作用を有する。基質特異性は例えば以下の相対活性で表されるがこれに限定されない。
例えば、pH7.5及び37℃の条件下における、モノエタノールアミンを酸化する活性を100%とした場合の、本発明の蛋白質の各基質に対する相対活性は、以下のいずれか1以上の範囲である:
<1>チラミンに対して175〜195%;
<2>アグマチンに対して47〜67%;
<3>ヘキシルアミンに対して354〜374%;
<4>アミルアミンに対して366〜386%;
<5>フェニルエチルアミンに対して183〜203%。
上記の相対活性は、本発明の蛋白質がpH7.5及び37℃の条件下において、モノエタノールアミンを酸化する活性(反応速度、U/mL)に対する、チラミン、アグマチン、ヘキシルアミン、アミルアミン、又はフェニルエチルアミンを酸化する活性の比率であり、測定値等は測定の条件や使用機器の精度等によりその値は変化し得る。相対活性の好適な測定方法の一例を下に示した。
[測定方法]
下記〔式3〕に示すように、基質に対する本発明の蛋白質の作用により生成する過酸化水素と、ペルオキシダーゼとを用いて、N,N−ビス(4−スルホブチル)−3−メチルアニリン(TODB)と4−アミノアンチピリン(4AA)の酸化的カップリング反応を行う。これにより生成するキノン色素を比色定量分析することにより、本発明の蛋白質がモノエタノールアミンを酸化する活性を測定する。〔式3〕から明らかなように、本発明の蛋白質の作用で製造される過酸化水素2モルに対して、1モルの、546nmに吸収波長をもつQuinone Dyeが生成する。
具体的には、以下の手法を用いて測定することができる。
石英製の1.0cmキュベットに反応試薬混合液1をとり、37℃で5分間予備加温する。反応試薬混合液1中の本発明の蛋白質溶液は200mM Tris/HCl緩衝液(pH7.5)で適当な濃度に希釈したものである。反応試薬混合液2を混和して、546nmにおける吸光度を10分間測定し、求められた吸光変化をAs/min、本発明の蛋白質溶液の代わりに精製水を用いた盲検をAb/minとして、1分間に1μmolのエタノールアミンを酸化する酵素量を1Uとし、酵素活性(U/mL)を下記〔式4〕により算出する。
酵素活性(U/mL)
={(As/min−Ab/min)/18}×0.32/0.05×希釈倍数・・〔式4〕
[反応試薬混合液1]
200mM Tris/HCl緩衝液 pH7.5 190μL
50U/mL ペルオキシダーゼ 16μL
本発明の蛋白質溶液 50μL
[反応試薬混合液2]
40mM 基質 32μL
0.2% TODB 16μL
0.3% 4AA 16μL
ここで、基質としては、上述のモノエタノールアミンのほか、本発明の蛋白質の基質となるか調べようとする任意の化合物を用いることができ、例えば、チラミン、アグマチン、ヘキシルアミン、アミルアミン、フェニルエチルアミン等の各種アミンを用いることができる。チラミン(和光純薬工業株式会社、品番:207−17461)、アグマチン(SIGMA、品番:05083)、ヘキシルアミン(SIGMA、品番:53130)、アミルアミン(SIGMA、品番:15031ME)、及びフェニルエチルアミン(和光純薬工業株式会社、品番:160−00912)はそれぞれ以下の化学式で表される。なお、本発明の蛋白質の活性は、上記の[測定方法]において基質としてモノエタノールアミンを使用して測定することができる([本発明の蛋白質の活性測定方法])。
(6)等電点
pH5.2〜5.6の範囲である。
本発明における蛋白質の等電点は、例えば等電点カラム、等電点電気泳動法等によって測定することができる。また、蛋白質のアミノ酸配列を元に、酸性・塩基性アミノ酸の数とpKaから計算することもできる。
等電点を等電点カラムによって測定する方法は、例えば、以下のように行うことができる。両性担体(キャリアアンフォライト)とグリセリンを充填したカラムに、密度勾配等電点電気泳動装置により、例えば4℃で一晩通電し、例えば2mL/分程度の速度でカラム内容を溶出して通常0.5mL又は1.0mLずつ分画する。分画後、なるべく即時にpHの測定、蛋白の検出・定量、酵素の場合酵素活性の測定を実施し等電点を決定する。なお、両性担体、通電時間、通電時の温度、分画方法等によって測定値は誤差を含み得る。等電点を等電点電気泳動法にて測定する場合の等電点電気泳動法に用いるpH勾配ゲルの作製には、両性担体をゲルに添加して電場をかけてpH勾配を形成する手法や、様々な等電点の側鎖を持つアクリルアミド誘導体を用いてゲル作製と同時にpH勾配を形成する手法(IPG法)等があり、用いる両性担体、アクリルアミド誘導体、等電点マーカー、通電時間、通電時の温度等に応じて適宜選択することができる。
蛋白質のアミノ酸配列を元に、酸性・塩基性アミノ酸の数とpKaから等電点を計算する場合、計算に用いるアミノ酸のpKaや、蛋白質の構造等を考慮していないので誤差を含み得ることを考慮する。
本発明の蛋白質の等電点は、下限が約pH5.1であり、5.2であれば好ましく、5.3であればさらに好ましいがこれに限定されない。上限は約pH5.7であり、5.6であれば好ましく、5.5であればさらに好ましいがこれに限定されない。
(7)至適pH
pH7.2〜7.5の範囲である。
本発明の蛋白質の至適pHは、例えば、上記[測定方法]により活性を測定して確認することができ、pH7.2〜7.5の範囲である。したがって、本発明の蛋白質を作用させる際のpHの下限はpH5.5であり、pH6であれば好ましく、最大の作用を示すpHと比較して90%以上の作用を示すpH7.2であれば特に好ましい。上限はpH8.5であり、pH8であれば好ましく、最大活性と比較して90%以上の作用を示すpH7.5であれば特に好ましい。
(8)分子量
67〜81kDaの範囲である。
本発明の蛋白質の分子量は、例えばSDS−PAGE法により求めることができる。SDS−PAGE(Poly−Acrylamide Gel Electrophoresis)法による分子量測定とは、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate(SDS))によりSDS−タンパク質複合体を形成させ変性したタンパク質(ポリペプチド)に、アクリルアミドを重合させたゲル中で電圧を付加し、その移動度によってそれぞれのポリペプチドが分離できることを利用する分子量の測定方法である。また、本発明の蛋白質の分子量は、例えばアミノ酸配列から計算することにより求めることもできる。
SDS−PAGE法による分子量測定においては:使用する分子量マーカーの種類や数;ポリアクリルアミドゲルのポリアクリルアミド含有率、ゲルの大きさ、製法等;泳動bufferの種類、pH、濃度;電圧を付加する際の温度、電流、時間等;ポリペプチドの染色方法、脱色方法等;によって測定値が誤差を含み得る。
また本発明の蛋白質の分子量をアミノ酸配列から計算することにより求める際、アミノ酸配列において、作用に影響しない1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加した場合、糖等により翻訳後修飾された場合、及び化学修飾した場合には、分子量変化する場合があり、例えば、N末端にHisタグを付加する場合や翻訳後修飾による糖鎖が付加されている場合には分子量が約1,000以上大きくなることがある。
一態様において、本発明の蛋白質のSDS−PAGE法による分子量は約67〜81kDaの範囲であり、下限は約66kDaであり、67kDaであれば好ましく、68kDaであればさらに好ましい。上限は約82kDaであり、81kDaであれば好ましく、80kDaであればさらに好ましい。
(9)pH安定性
4℃、pH6.5〜9の範囲で3時間保持後、80%以上の残存活性を有する;及び/又は
4℃、pH5.5〜9.5の範囲で3時間保持後、60%以上の残存活性を有する。
本発明の蛋白質のpH安定性は、4℃、特定のpH条件下で3時間保持前後の本発明の蛋白質の活性を、上記の[本発明の蛋白質の活性測定方法]を用いて測定し、保持前の活性と比較した保持後の残存活性を調べることで確認することができる。
一態様において、本発明の蛋白質のpH安定性は、保持後60%以上の残存活性を有し得るpH5.5〜9.5の範囲で表すことができ、好ましくは、保持後80%以上の残存活性を有し得るpH6.5〜9の範囲で表すことができる。
(10)熱安定性
200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、37℃、30分間の熱処理後、90%以上の残存活性を有する;及び/又は
200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、45℃、30分間の熱処理後、40%以上の残存活性を有する。
本発明の蛋白質のpH安定性は、200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、特定の温度下で30分間の熱処理前後の本発明の蛋白質の活性を、上記の[本発明の蛋白質の活性測定方法]を用いて測定し、処理前の活性と比較した処理後の残存活性を調べることで確認することができる。
一態様において、本発明の蛋白質は、200mM Bis−Tris/塩酸緩衝液(pH7.2)中、45℃、30分間の熱処理後、40%以上の残存活性を有し、汎用自動分析機の測定温度が37℃であることから、好ましくは、上記緩衝液中、37℃、30分間の熱処理後、90%以上の残存活性を有する。
(11)至適温度
43〜47℃の範囲である。
本発明の蛋白質の至適温度は、例えば上記[測定方法]により様々な温度下で本発明の蛋白質の活性を測定して確認することができ、特に好ましい至適温度は、最大の活性を示す温度と比較して90%以上の作用を示す温度範囲である。
一態様において、本発明の蛋白質の至適温度の下限は20℃であり、40℃であれば好ましく、より好ましくは43℃である。上限は60℃であり、50℃であれば好ましく、47℃であればさらに好ましい。
一態様において、本発明の蛋白質は、上記(1)及び(2)、好ましくは上記(1)〜(3)の理化学的性質を有する蛋白質であって、配列番号12〜14に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質である。配列番号12及び13に記載のアミノ酸配列は、銅イオンと複合体を形成する一級アミンオキシダーゼに特徴的な、銅のキレートに関与するコンセンサス配列である。配列番号14に記載のアミノ酸配列は、後述の実施例で得られた本発明の蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)を、公知の一級アミンオキシダーゼのアミノ酸配列とアライメントし、本発明の蛋白質に特異的な配列として特定された配列である。
本発明の蛋白質が天然の微生物由来である場合、該微生物は、上記理化学的性質を始め本願明細書に記載されたその他の性質のいずれかを有する蛋白質を生産する微生物であれば特に限定されないが、例えばSyncephalastrum属に属する微生物であり、好ましくは、Syncephalastrum racemosumに属する微生物であり、最も好ましくはSyncephalastrum racemosum(NITE P−01594)である。土壌、湖沼、海、生物の表面や体腔内等から分離した菌株が、Syncephalastrum属に属する微生物であるかどうかは、例えば「Bergey’s Manual 第2版(2001年)」、「微生物の分類・同定実験法―分子遺伝学・分子生物学的手法を中心に(Springer Lab Manual)シュプリンガー・フェアラーク東京、2001年9月」等に記載の方法、市販の同定検査用製品(例えばBIOMERIEUX社)を使用する方法、「株式会社テクノスルガ・ラボ(静岡県静岡市)」等に委託する方法等により確認すればよい。さらにそれらの菌株が、Syncephalastrum racemosumであるかどうかは、「Stackebrandt E.、Ebers J.: Taxonomic parameters revisited: tarnished gold standards, Microbiology today, nov, 152−155頁、2006年」に記載の方法等により判断すればよい。すなわち、DNA−DNAハイブリダイゼーションで70%以上の相同性がある、又は16s rRNAが98.5%以上同一であれば同属同種と判断できる。好ましくはDNA−DNAハイブリダイゼーションで70%以上の相同性があれば同属同種と判断することができる。28S rDNA−D1/D2及び/又はITS−5.8S rDNA塩基配列によりSyncephalastrum racemosumであるかどうかを判断する場合も同様である。
天然の微生物の分離は、当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えば、日本生物工学会編生物工学実験書(2002年改訂版、培風館)に記載の微生物分離方法を参考にして行うことができる。Syncephalastrum属の微生物は、例えば、土壌約1gを10mLの滅菌水に入れ、60℃で約1時間熱処理し、上清を50mg/Lのクロラムフェニコールを含むYpSs培地(Yeast extract 0.4%、Soluble starch 1.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O 05%、Agar 1.5%)に蒔き、24℃で5〜6日培養し、得られたカビのコロニーを上記の方法で同定して得ることができる。
Syncephalastrum racemosumの典型的な培養性状と形態的特徴は以下の通りである。Syncephalastrum racemosumは、PDA、MA、OA及びLcA培地上で生育が速く、1週間培養で約85mm、成熟とともに白色から灰色に着色し、羊毛状のコロニー性状を示す。栄養菌糸は寒天表面上あるいは寒天内に形成され、無色、無隔壁で分岐する形状を示す。胞子嚢胞子嚢柄は栄養菌糸あるいは気中菌糸上に形成され、非分岐又は仮軸状に分岐し、無色〜明褐色、先端部に球形〜亜球形に膨らんだ胞子嚢を形成する。寒天上の栄養菌糸から直生する胞子嚢柄の基部には仮根の形成が認められる。胞子嚢柄と胞子嚢は隔壁で仕切られ、胞子嚢は球形〜亜球形、無色〜明褐色、全面から放射状に円柱形の分節胞子嚢が形成される。成熟した分節胞子嚢では内部に仕切りが入り、5〜10個の分節胞子が連鎖状に並び、分節胞子がバラバラになる。分節胞子は卵形〜球形又は不定形、1細胞、無色〜明褐色、平滑〜わずかに粗面である。
後述の実施例に記載のとおり、本発明の蛋白質を生成することが確認されたSyncephalastrum racemosum(NITE P−01594)の28S rDNA−D1/D2及びITS−5.8S rDNAの塩基配列を、それぞれ配列番号10及び11に示した。
本発明の蛋白質としては、Syncephalastrum racemosum(NITE P−01594)由来の配列番号1のアミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられる。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、上記〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質も挙げられる。
例えば、本発明の蛋白質としては:配列番号1のアミノ酸配列を含み、上記〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質;配列番号1に記載のアミノ酸配列において、上記〔式1〕で表される反応の触媒作用に関与しない一部のアミノ酸を変異させたアミノ酸配列からなる蛋白質;及び配列番号1のアミノ酸配列に各種のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなり、上記〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質が挙げられる。本発明の蛋白質のN末端側及び/又はC末端側にチオレドキシン蛋白質等機能性蛋白質やその他のアミノ酸配列からなる部分を付加する等により融合蛋白質とすることも好ましい。また、該付加する部分により精製や確認等をせしめることのできるタグと呼ばれる部分を融合させてもよく、場合によっては、融合後、そのタグ部分の全部又は一部を削除してよい。例えば、本発明の蛋白質を菌体外やペリプラズムへ輸送する為の約20個のシグナルペプチドや、効率的な精製を行う為の5〜10個のHisを付加してもよく、それらを直列して付加してもよい。それらのアミノ酸配列の間等に数個のプロテアーゼ認識アミノ酸配列を配置して付加してもよい。上述の付加の例と同様に、欠失、又は置換を行うことができ、例えば、配列番号1のアミノ酸配列において、上記〔式1〕で表される反応を触媒する作用とは無関係の、数個のアミノ酸からなるドメインや、複数個のアミノ酸からなるギャップが存在する場合、それらの欠失を組み合わせることもできる。欠失、置換又は付加を適宜組み合わせてもよい。
また、本発明の蛋白質は、配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされる蛋白質であって、〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質であってもよい。ストリンジェントな条件については、下記に詳述する。
上記の蛋白質は、上記(1)の理化学的性質に加えて(2)〜(11)の理化学的性質を有することが好ましい。
本発明はまた:配列番号1のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子;及び配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、上記〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子にも関する。
そのような遺伝子としては、特に限定されないが、例えば:配列番号2に記載の塩基配列を含む遺伝子;及び配列番号2に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、上記〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列が挙げられ、具体的には:配列番号2の塩基配列を大腸菌や放線菌等宿主のコドン使用頻度に合わせて変更した塩基配列を含む遺伝子;及び配列番号1のアミノ酸配列において、上記〔式1〕で表される反応を触媒する作用に関与しない1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子が例示される。好ましい遺伝子としては、上記理化学的性質の(1)〜(11)又は本明細書に記載の理化学的性質の一つ以上を有する蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子が挙げられるが、これに限定されない。
本発明の遺伝子は、また、配列番号2に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、上記〔式1〕で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子であってもよい。
上記のストリンジェントな条件は、通常、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より約5℃〜約30℃、好ましくは約10℃〜約25℃低い温度であって、特異的なハイブリッドが形成される条件であり、例えばJ.Sambrookら,Molecular Cloning,ALaboratory Mannual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている条件が挙げられる。また、例えば、90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件であってもよい。具体的には、例えば、完全ハイブリッドのTm〜(Tm−30)℃、好ましくはTm〜(Tm−20)℃の温度範囲で、かつ1×SSC(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、好ましくは0.1×SSCに相当する塩濃度でハイブリダイズを行う条件が挙げられる。
好ましくは、本発明の遺伝子は、上記のいずれかの塩基配列からなる遺伝子である。
本発明はまた、上記の遺伝子を含む組換えベクターにも関する。遺伝子を組み込むベクターは特に限定されないが、宿主微生物体内で自律的に増殖しうるファージ又はプラスミドのうち遺伝子組換用として構築されたものが適しており、ファージベクターとしては、例えば、大腸菌に属する微生物を宿主とする場合にはλgt・λC、λgt・λB等が使用できる。プラスミドベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、Novagen社のpETベクター、又はpBR322、pBR325、pACYC184、pUC12、pUC13、pUC18、pUC19、pUC118、pIN I、BluescriptKS+等、バチラス・サチリスを宿主とする場合にはpWH1520、pUB110、pKH300PLK等、放線菌を宿主とする場合にはpIJ680、pIJ702等、酵母、特にサッカロマイセス・セレビジアエを宿主とする場合にはYRp7、pYC1、YEp13等が使用できる。本発明の組換えベクターは、安全性が確認されているという観点から、遺伝子組換え生物等の第二種使用等のうち産業上の使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令(平成十六年財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省令第一号)別表第一号の規定に基づき経済産業大臣が定めるGILSP遺伝子組換え微生物の、別表第一に掲げられたベクターに、上記の本発明の遺伝子が挿入された組換えベクターが好ましい。プロモーターは宿主中で発現できるものであれば特に限定されない。本発明の組換えベクターは、例えば本発明の遺伝子及び上記のベクターを用いて、当業者に公知の手法で作成することができる。
本発明はまた、上記の組換えベクターを含む形質転換体にも関する。本発明の形質転換体は、上記組換えベクターで形質転換された形質転換体であれば限定されず、宿主としては、大腸菌、バチラス・サチリス、ストレプトマイセス属やロドコッカス属に属する放線菌、サッカロマイセス・セレビジアエ、ピキア・パストリス、麹カビ等が挙げられる。本発明の形質転換体は、安全性が確認されているという観点から、遺伝子組換え生物等の第二種使用等のうち産業上の使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令(平成十六年財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省令第一号)別表第一号の規定に基づき経済産業大臣が定めるGILSP遺伝子組換え微生物の、別表第一に掲げられた宿主に形質転換したものが好ましい。本発明の形質転換体は、例えば本発明の組換えベクター及び上記の宿主を用いて、当業者に公知の手法で作成することができる。
本発明はまた、本発明の蛋白質を生成する微生物を培地で培養し、培養物中に本発明の蛋白質を生成蓄積させ、該培養物から該蛋白質を採取することを特徴とする、本発明の蛋白質の製造方法にも関する。
微生物の培養工程及び生成蓄積工程における培養条件はその栄養生理的性質を考慮して適宜選択すればよく、通常液体培養で行うが、工業的には深部通気撹拌培養を行うのが有利であり得る。培地の栄養源としては、上記のPDA、MA、OA又はLcA培地等微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。培養温度は本発明の蛋白質が生成される範囲で適宜変更し得るが、天然の微生物の場合、下限が5℃以上、好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上、上限は、好熱性の古細菌やバクテリアの場合の約100℃となるが、通常は55℃以下、好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。特に真菌の場合は、下限が4℃以上、好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、上限が50℃以下、好ましくは42℃以下、更に好ましくは37℃以下である。培養時間は、培養条件によって変動し得るが、本発明の蛋白質の生成が最高量に達する時期を見計らって適当な時期に培養を終了すればよく、通常は下限が17時間以上、好ましくは20時間以上、更に好ましくは24時間以上、上限が80時間以下、好ましくは72時間以下、更に好ましくは48時間以下である。特に真菌の場合は、下限が1日以上、好ましくは2日以上、上限は約10日、好ましくは4日以下、更に好ましくは3日以下である。培地pHは微生物が発育し、本発明の蛋白質を生成する範囲で適宜変更し得るが、下限が好ましくはpH4以上、更に好ましくはpH5以上、上限が好ましくはpH8.5以下、より好ましくはpH7.5以下である。特に真菌の場合は、低いpHが好ましい。
本発明はまた、上記の本発明の形質転換体を培地で培養し、培養物中に本発明の蛋白質を生成蓄積させ、該培養物から該蛋白質を採取することを特徴とする、本発明の蛋白質の製造方法にも関する。
形質転換体の培養工程及び生成蓄積工程における培養条件は、上記微生物の場合と同様であり、形質転換体の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、形質転換体が大腸菌の場合、培養温度は、下限が10℃以上、好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上、上限が45℃以下、好ましくは42℃以下、更に好ましくは37℃以下である。形質転換体が放線菌の場合、下限が4℃以上、好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、上限が50℃以下、好ましくは42℃以下、更に好ましくは37℃以下である。培養時間は、条件によって変動し得るが、本発明の蛋白質の生成が最高量に達する時期を見計らって適当な時期に培養を終了すればよく、形質転換体が大腸菌の場合、通常は下限が10時間以上、好ましくは12時間以上、更に好ましくは17時間以上、上限が60時間以下、好ましくは48時間以下、更に好ましくは30時間以下である。形質転換体が放線菌の場合、通常は下限が17時間以上、好ましくは20時間以上、更に好ましくは24時間以上、上限が80時間以下、好ましくは72時間以下、更に好ましくは48時間以下である。培地pHは、形質転換体が発育し、本発明の蛋白質を生成する範囲で適宜変更し得るが、大腸菌や放線菌の場合、下限が好ましくはpH5.8以上、更に好ましくはpH6.2以上、上限が好ましくはpH8.5以下、更に好ましくはpH7.5以下である。
上記の培養物中に生成蓄積された本発明の蛋白質を採取する方法は特に限定されないが、簡便には殺菌、非殺菌を問わず菌体を含む細胞等のまま本発明の蛋白質を採取してもよい。培養不純物や細胞破砕物等を軽く除き、不純物が残存したまま、本発明の蛋白質を採取することも好ましい。目的や用途等によっては実質的に不純物を包含しない本発明の蛋白質を採取することも好ましい。例えば50%以上、70%以上又は95%以上の純度で本発明の蛋白質を採取することが例示される。純度はSDS−PAGEやHPLC等の公知の方法を用いて確認することができる。
本発明の蛋白質を精製する方法を以下に説明する。が本発明の蛋白質が、菌体内に形成される場合には、培養終了後、得られた培養物から、濾過又は遠心分離等の手段により菌体を採集する。次いで、この菌体を機械的方法又はリゾチーム等の酵素的方法で破壊し、必要に応じてEDTA、及び/又は適当な界面活性剤等を添加して該蛋白質を濃縮し、アセトン、メタノール、エタノール等の有機溶媒による分別沈殿法、硫酸アンモニウム、食塩等による塩析法等を適用して本発明の蛋白質を沈殿させ回収することができる。この沈殿物について、必要に応じて透析、等電点沈殿を行った後、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー等の吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーや疎水的クロマトグラフィーにより処理して、精製された本発明の蛋白質を得ることができる。上記の方法は適宜組み合わせて行うことができる。また、本発明の蛋白質が培養液中に形成される場合には、培養物から濾過又は遠心分離等の手段により菌体を除去して培養液を得て、前記菌体内に形成される場合と同様の処理を行うことにより、精製された本発明の蛋白質を得ることができる。
本発明の蛋白質が上記の理化学的性質(特に(1)の作用)を有するためには、銅イオンの存在が必要な場合があるため、上記の本発明の蛋白質の製造方法における各工程、例えば、培養工程、生成蓄積工程及び採取工程のいずれか1以上において、銅イオンを存在させてもよい。遺伝子組換え微生物で本発明の蛋白質を大量に製造する場合は、本発明の蛋白質の製造方法におけるいずれか1以上の工程において、銅イオンを存在させることが望ましい。また、銅イオンを存在させない方法で本発明の蛋白質を製造した場合は、例えば後述する本発明の蛋白質を含有するモノエタノールアミン酸化剤等の組成物に、銅イオンを含有させてもよい。
一態様において、銅イオンを存在させない条件下で製造した本発明の蛋白質が銅イオンの存在により上記の(1)の理化学的性質を発揮する特徴を利用して、本発明の蛋白質を用いた銅イオンの測定方法や本発明の蛋白質を含む銅イオン測定組成物を提供することもできる。
上記の本発明の蛋白質の製造方法によって得られる蛋白質は、必要に応じて安定化剤として、各種の塩類、糖類、蛋白質、脂質、界面活性剤等を加え、限外濾過濃縮、凍結乾燥等の方法により、液状又は固形とすることができる。凍結乾燥を行う場合、安定化剤としてサッカロース、マンニトール、食塩、アルブミン、硫安等を0.5〜10%程度添加してもよい。
本発明の蛋白質は、従来公知のエタノールアミンオキシダーゼ、モノアミンオキシダーゼ、及び一級アミンオキシダーゼである下記酵素とは上記の理化学的性質及びアミノ酸配列において区別できる。例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列と相同性を有する公知のアミノ酸配列を、NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi))でProtein BLAST検索すると、平成25年5月29日時点で、Rhizopus delemar RA 99−880株由来のhypothetical protein RO3G_05166が最上位で検索できるものの、配列番号1に記載のアミノ酸配列との同一性は56%であり、全く異なることが明らかである。
本発明はまた、本発明の蛋白質を用いるモノエタノールアミンの酸化方法及び本発明の蛋白質を用いてモノエタノールアミンからグリコールアルデヒド、アンモニア、又は過酸化水素を製造する方法にも関し、これらの本発明の蛋白質を用いる方法は、酸素及び水の存在下、モノエタノールアミンをグリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素となす方法であれば好ましい。
本発明の蛋白質を用いる方法は、液相、気相若しくは固相又はこれらの臨界面等で実施すればよく、液相で実施することが好ましい。液相としては、水相、有機溶媒相等が想定され、水相としては、例えば水及び適当な水溶液が例示され、さらにメタノールやエタノール等の適当な有機溶媒これらを含有した水性媒体が例示され。水相には、適当なpH緩衝剤を用いることが好ましい。pH緩衝剤は目的のpHを保つことができ、モノエタノールアミンが酸化できる限り特に限定されないが、グッドの緩衝剤、Tris/HCl緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、酢酸/NaOH緩衝液、クエン酸/NaOH緩衝液等が例示できる。上記の本発明の蛋白質を用いる方法を実施するpHは、モノエタノールアミンが酸化できる限り特に限定されないが、上記理化学的性質の「(9)pH安定性」において言及した範囲が例示され、好ましくは上記理化学的性質のうち「(7)の至適pH」において言及した範囲である。pH緩衝剤の濃度は、目的のpHを保つことができ、酸化反応が進行する限り特に限定されないが、下限として1mM以上、好ましくは5mM以上、更に好ましくは10mM以上が例示され、上限としては500mM以下、好ましくは300mM以下、更に好ましくは200mM以下が例示される。
本発明の蛋白質を用いる方法を実施するその他の好ましい液相としては、例えばゾル・ゲル又は乳濁液を挙げることができる。ゾル・ゲルを得るためには、例えば、寒天等の多糖類を利用することができる。乳濁液を得るためには、例えば、有機溶媒等を利用することもできるし、両親媒性物質を利用してミセルとすることもできる。いずれの場合も、緩衝液を用いる場合には上述と同様に行うことができる。
本発明の蛋白質を用いる方法を実施する温度は、モノエタノールアミンが酸化される温度であれば特に限定されないが、図6を参照して設定することができ、上記理化学的性質の「(11)至適温度」において言及した範囲が好ましい。
本発明の蛋白質を用いる方法において使用する本発明の蛋白質の量及び反応時間等は、モノエタノールアミンが酸化される、及び/又はモノエタノールアミンからグリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素が得られる限り特に限定されず、原料や試料に含まれるモノエタノールアミンの存在量、使用する装置、及び/又は経済的な事情等に応じて望ましい結果が得られるように決定し得る。本発明の蛋白質を用いる方法において使用する本発明の蛋白質の量は、例えば、原料や試料に含まれるモノエタノールアミンの存在量が1mM以下で、その全てを酸化する場合、下限が1mU/ml以上、好ましくは5mU/ml以上、更に好ましくは50mU/ml以上、上限が10U/ml以下、好ましくは3U/ml以下、更に好ましくは1U/ml以下である。同条件下における反応時間は、下限が15秒以上、好ましくは1分以上、更に好ましくは3分以上である。上限は特に設けないが、好ましくは30分以下、更に好ましくは15分以下、特に好ましくは10分以下である。
本発明の蛋白質を用いる方法において製造されたグリコールアルデヒド、アンモニア、又は過酸化水素は、原料や他の製造物等が混在したままであってもよいが、目的や用途等場合によっては実質的に不純物を包含しないようにすることも好ましく、通常は、例えば50%以上、70%以上、95%以上の各種の純度にすることができる。グリコールアルデヒドの精製は、公知の手法で行うことができ、例えば、溶剤等を用いた抽出、シリカゲル、アルミナ、及び/又はセライト等を用いたクロマトグラフィー、及び/又は再結晶等による精製方法が例示できる。
本発明はまた、本発明の蛋白質を含有するモノエタノールアミン酸化剤に関する。本発明の酸化剤は、上記の本発明の蛋白質を用いた方法に用いることができ、組成物やキットとして提供することができる。本発明の酸化剤は、本発明の蛋白質のほか、pH緩衝剤、や試薬等を含んでもよい。本発明の蛋白質の添加量や試薬等の種類は上述の記載を参照することができる。
本発明の酸化剤は、液状物、液状物の凍結物、液状物の凍結乾燥物又は液状物の乾燥物(加熱乾燥及び/又は風乾及び/又は減圧乾燥等による)等として提供することができる。一態様において、液状物、液状物の凍結物又は液状物の凍結乾燥物が好ましく、液状物又は液状物の凍結乾燥物が更に好ましく、液状物が最も好ましい。別の態様として、液状物の凍結物が好ましい場合もある。更に別の態様としては、液状物の凍結乾燥物が好ましい場合もある。
本発明の酸化剤は、一試薬からなる酸化剤としてもよいが、試薬の安定性向上や測定精度向上等を目的とする等の必要に応じて、二試薬以上に分離してもよい。試薬の品質向上等を目的として界面活性剤や防腐剤等を混合してもよい。例えば、POCのキャピラリーへの使用、又は酵素センサーとしての使用の場合、各成分の濃度は通常よりも高いことが好ましく、例えば、固定化したり、紙や膜に染み込ませたり、ゲル・ゾル状組成物としたりして使用することが好ましい。本発明の酸化剤を二試薬以上に分離して提供する場合の例として、例えば試薬の測定精度向上を目的とする場合は、試料中に測定値へ影響を与える干渉物質が存在する場合を想定し、干渉物質の影響回避の為の試薬を第一の試薬とし、本発明の蛋白質等を含む試薬を第二の試薬とする例が挙げられる。
本発明はまた、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の定量方法であって:PEを加水分解してホスファチジン酸とモノエタノールアミンを得る工程;得られたモノエタノールアミンから、本発明の蛋白質を用いて過酸化水素を発生させる工程;及び発生した過酸化水素を定量する工程;を含む方法にも関する。
PEの加水分解は、ホスファチジン酸とモノエタノールアミンを得ることができる方法であれば特に限定されないが、簡便には、加水分解酵素であるホスホリパーゼD又はホスホリパーゼCとフォスファターゼを用いて当業者に公知の手法で行うことができる。得られたモノエタノールアミンから、本発明の蛋白質を用いて過酸化水素を発生させる工程;及び発生した過酸化水素を定量する工程は、上記の[本発明の測定方法]等を参照して行うことができる。
以下、本発明を実施例及び比較例(実施例等)に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例等に限定して解釈されるものではない。尚、本実施例等に使用した技術は、例えば本明細書に記載の先行技術文献、マニアティスらの方法(Maniatis,T.ら、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、1982年及び1989年)、及び市販の各種酵素又はキット類に添付された手順に従って、当業者であれば実施することができるものである。試薬は、特に断らない限り、和光純薬工業株式会社製(特級)のものを使用した。酵素活性(U/mL)は上述した本発明の蛋白質の活性測定方法により測定した。
[実施例1:Syncephalastrum racemosum由来のモノエタノールアミンオキシダーゼ(本発明の蛋白質)の製造]
本実施例では、Syncephalastrum racemosum由来のモノエタノールアミンオキシダーゼ(本発明の蛋白質)の製造方法を示す。なお、蛋白質濃度はBCA法でウシ血清アルブミンを標準蛋白として、Protein Assay Reagent Kit(Thermo SCIENTIFIC、Product # 23225)を用いて測定した。また、活性は、上記[本発明の蛋白質の活性測定方法]の通りに測定した。
Syncephalastrum racemosum(NITE P−01594として独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センターに寄託)を、ポテトデキストロース寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、カタログ番号s213200)へ常法に従い植菌し、24℃で培養した。培地上で菌の生育を確認後、培地から菌を白金耳で切り出し、1.95%ポテトデキストロース培地約40mLが入った三角フラスコに植菌し、25℃、160rpmで48h振とう培養した。
培養後、遠心分離にて集菌した菌体を超音波破砕し、さらに遠心分離して得られた上清をCell−free extractとし、終濃度が1.0Mとなるように飽和硫安溶液を加えた。これを、1.0M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris/HCl緩衝液(pH8)で平衡化したPhenyl−650M(東ソー株式会社)を使用した疎水性相互作用カラムクロマトグラフィーに供し、1.0M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)と20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)を用いた10CV(column volume)のリニアグラジェントにより活性画分を分画した。
活性画分を回収し、脱塩・濃縮後、Tris/HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したHiTrap Q High Performance(GE Healthcare)を使用したカラムクロマトグラフィーに供し、20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)と1.0M NaClを含む20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)を用いた10CVのリニアグラジェントにより活性画分をさらに分画した。なお、この精製段階までで部分的に精製した本発明の蛋白質のうち、中心活性画分ではない画分を実施例9〜11で使用した。
活性画分を回収し、終濃度が1.0Mとなるように飽和硫安溶液を加えて、1.0M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したPhenyl HP(GE Healthcare)を使用したカラムクロマトグラフィーに供し、1.0M硫酸アンモニウムを含む20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)と20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)を用いた10CVのリニアグラジェントにより活性画分を分画した。
本実施例により、Syncephalastrum racemosumを培養し、精製収率約19%で本発明の蛋白質を製造することができた。本実施例による本発明の蛋白質の製造におけるカラムクロマトグラフィーの結果を表1にまとめて示した。
本実施例により得られた、本発明の蛋白質は、pH7.5及び37℃の条件下におけるモノエタノールアミンに対する比活性が、20.5U/mg、すなわち20.5μmol/mg/minであり、10μmol/mg/min以上であることが示された。
[比較例1:他の蛋白質のモノエタノールアミンに対する比活性]
非特許文献1に記載の、Arthrobacter属由来のエタノールアミンオキシダーゼの比活性を計算すると0.0621μmol/min/mgとなる。
非特許文献2に記載の、Phormia regina由来のエタノールアミンオキシダーゼの比活性を計算すると0.00026μmol/min/mgとなる。
非特許文献3に記載の、Arthrobacter sp.(FERM P−06240、BP−0421)由来の一級アミンオキシダーゼの比活性を計算すると9μmol/min/mgとなる。
[実施例2:本発明の蛋白質の作用]
本実施例では本発明の蛋白質の作用を確認した。本発明の蛋白質の活性測定方法は上記の通りであり、本発明の蛋白質の作用で製造される過酸化水素2モルに対して1モルの、546nmに吸収波長をもつQuinone Dyeが生成する。図1は実施例1のCell−free extract(黒丸)と該Cell−free extractを98℃20分間の熱処理したもの(白丸)について、上記の活性測定方法に供し、546nmの吸光変化を測定した結果を示す。図1から明らかなように、546nm吸光が経時的に増加していることから、実施例1のCell−free extractに含まれる本発明の蛋白質の作用により過酸化水素が製造され、その作用は98℃20分間の熱処理で認められなくなることが確認された。
[実施例3:本発明の蛋白質の基質特異性]
表2に、各種基質に対する本発明の蛋白質の作用を、実施例2に記載の手法に準じて測定した結果を示す。結果は、エタノールを基質とした場合の測定値を100として、相対活性で示した。表2から、本発明の蛋白質は、ヘキシルアミン及びアミルアミンに対して高い活性を有することが明らかになった。
[比較例2:Arthrobacter sp.(FERM P−06240、BP−0421)由来の一級アミンオキシダーゼのチラミンに対する活性]
非特許文献3に記載のArthrobacter sp.(FERM P−06240、BP−0421)由来の一級アミンオキシダーゼの、モノエタノールアミンを酸化する活性を100%とした場合のチラミンに対する相対活性は約244%である(非特許文献3、Table3。
[実施例4:本発明の蛋白質の触媒効率]
本実施例では、実施例1で製造した本発明の蛋白質の〔式1〕の反応に係る触媒効率をHanes−Woolfプロットにより求めた。図2に示したHanes−Woolfプロットによる本発明の蛋白質のモノエタノールアミンに対する最大反応速度Vmaxとミカエリス定数Kmは26μmol/min/mgと0.26mMであった。これらの値から〔式2〕により算出した本発明の触媒効率(Vmax/Km)は100μmol・mg-1・min-1・mM-1であり、10μmol・mg-1・min-1・mM-1以上であった。
[比較例3:Arthrobacter sp.(FERM P−06240、BP−0421)由来の一級アミンオキシダーゼの触媒効率]
非特許文献3に記載のArthrobacter sp.(FERM P−06240、BP−0421)由来の一級アミンオキシダーゼのモノエタノールアミンに対する触媒効率(Vmax/Km)は、0.6μmol・mg-1・min-1・mM-1である(非特許文献3、Table3)。
[実施例5:本発明の蛋白質の分子量]
本実施例では、本発明の蛋白質の分子量をSDS−PAGE法と配列番号1のアミノ酸配列から計算することにより求めた。実施例1で製造した本発明の蛋白質のSDS−PAGE分析結果を図3に示した。SDS−PAGEのゲルは12%で、レーン1の分子量マーカーはBio―Rad社のBroad range(カタログナンバー161−0311)である。図3に示したように、SDS−PAGE法により求めた本発明の蛋白質の分子量は約70kDaであった。また、本発明の蛋白質は、下記実施例12に記載のとおり、配列番号1のアミノ酸配列を有する。本発明の蛋白質の分子量を配列番号1のアミノ酸配列から計算すると77143.1である。測定値の誤差等を考慮し、本実施例により、本発明の蛋白質の分子量は67〜81kDaの範囲であると考えられた。
[実施例6:本発明の蛋白質の等電点]
本実施例では、本発明の蛋白質の等電点を配列番号1のアミノ酸配列をもとに、酸性/塩基性アミノ酸の数とpKaから計算した。本発明の蛋白質は配列番号1のアミノ酸配列から明らかなように、Arg、His、Lys、Asp、Cys、Glu、及びTyrの数がそれぞれ33、25、32、45、11、45、及び29であり、それぞれのpKaを12.5、6.0、10.5、3.9、8.3、4.3、及び10.1とすると、本発明の蛋白質の等電点は5.38と計算できる。この計算値は、蛋白質の構造等を考慮していないため、本実施例により、本発明の蛋白質の等電点がpH5.2〜5.6の範囲であると考えられた。
[実施例7:金属イオン又はキレート剤の影響]
本実施例では、実施例1で製造した本発明の蛋白質の作用に対する金属イオン又はキレート剤(金属イオン等)(5mM)の影響を測定した。実施例2の方法を用いて、本発明の蛋白質の作用を、それぞれ5mMのCa2+、Mg2+、EDTA、Mn2+、又はZn2+の存在下或いはそれらの非存在下で測定した。金属イオン等の非存在下における本発明の蛋白質の活性を100とし、各金属イオン等の存在下における活性を相対活性として表4に示した。
表4より、実施例1で得られた本発明の蛋白質の作用は、5mMのCa2+、Mg2+、又はEDTAの存在下では、金属イオン等の非存在下と比較して10%以上阻害されず、本発明の蛋白質の作用はCa2+、Mg2+、又はEDTAで実質的に阻害されないことが示された。一方、5mMのMn2+又はZn2+の存在下では50%以上阻害された。
[実施例8:本発明の蛋白質の至適pH]
本実施例では、実施例1で製造した本発明の蛋白質の至適pHを測定した。緩衝液として、グリシン−NaOH緩衝液(pH9〜10.5)、HEPES/NaOH緩衝液(pH7.5〜9)、Tris/HCl緩衝液(pH7.2〜8.8)、BisTris/HCl緩衝液(pH5.6〜7.2)又はクエン酸/NaOH緩衝液(pH4.1〜5.6)を用いて、実施例2に記載の方法に準じて活性を測定した結果を、図4に示す。活性は、pH7.2における測定値を100とする相対活性で示した。図4から明らかなように、本発明の蛋白質は、pH5.5〜8.5の範囲で活性を有し、特にpH7.2で最大の活性を示した。本実施例により、本発明の蛋白質の至適pHは、90%以上の相対活性を示すpH7.2〜7.5の範囲にあると考えられた。
[実施例9:本発明の蛋白質のpH安定性]
本実施例では、本発明の蛋白質のpH安定性を測定した。実施例1において、HiTrap Qを使用したクロマトグラフィーで得られた、本発明の蛋白質を含む画分(20.5U/mg、548mU/mL)を、実施例8と同様各種pHの50mM緩衝液で5倍希釈し、各緩衝液に置換し、4℃で3時間保持した後、実施例2と同様の手法により残存活性を測定した。結果を図5に示す。図5中、4本の折れ線は、左から:クエン酸/NaOH緩衝液(pH4.0〜5.6);BisTris/HCl緩衝液(pH5.6〜7.0);HEPES/NaOH緩衝液(pH7.0〜8.4)及びグリシン−NaOH緩衝液(pH8.8〜10.5)を示す。図5から明らかなように、本発明の蛋白質は、4℃で3時間保持後、pH6.5〜9の範囲で80%以上の活性を保持し、pH5.5〜9.5の範囲で60%以上の活性を保持した。本実施例により、本発明の蛋白質のpH安定性について、4℃、pH6.5〜9の範囲で3時間保持後、80%以上の残存活性を有することが示された。
[実施例10:本発明の蛋白質の熱安定性]
本実施例では、本発明の蛋白質の熱安定性を測定した。実施例1において、HiTrap Qを使用したクロマトグラフィーで得られた、本発明の蛋白質を含む画分(20.5U/mg、548mU/mL)を、表5に記載の各温度でpH7.2になるよう調製した0.2M Bis−Tris/塩酸緩衝液で5倍希釈し、表5に記載の各温度で30分間熱処理した後、実施例2に記載の手法を用いて残存活性を測定した。各温度について3回の測定を行い、得られた最大の残存活性を表5に示した。
本実施例により、本発明の蛋白質は45℃、30分間の熱処理後、40%以上の残存活性を有し、37℃、30分間の熱処理後、90%以上の残存活性を有することが示された。
[実施例11:本発明の蛋白質の反応至適温度]
本実施例では、本発明の蛋白質の反応至適温度を測定した。実施例1において、HiTrap Qを使用したクロマトグラフィーで得られた、本発明の蛋白質を含む画分(20.5U/mg、548mU/mL)の活性を、測定温度を20〜60℃に変化させ、実施例2に記載の手法に準じて測定した。最大の活性を示した温度である45℃の結果を100とし、各温度における測定値を相対活性として図6に示した。本実施例により、本発明の蛋白質は少なくとも20〜60℃の範囲で作用し、最大の活性を示す45℃と比較して、43〜47℃の範囲で90%以上の活性を示すことが示された。
[実施例12:本発明の蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列及び本発明の蛋白質のアミノ酸配列]
実施例1で用いたSyncephalastrum racemosum(NITE P−01594)のゲノムDNAを、NucleoSpin Plant II(タカラバイオ株式会社、製品コード740770.10)を用いて精製した。精製した該ゲノムDNAをテンプレートにし、配列番号3に記載の塩基配列をセンスプライマー、配列番号4に記載の塩基配列をアンチセンスプライマーとして、KOD FX(東洋紡績株式会社、Code No.KFX−101)を用いてPCRし、PCR産物1を得た。PCR産物1の塩基配列は配列番号5の通りであり、イントロンを含む配列であることが予想された。
実施例1で用いたSyncephalastrum racemosum(NITE P−01594)のトータルRNAを、NucleoSpin RNA Plant(タカラバイオ株式会社、製品コード740949.10)を用いて精製した。精製したトータルRNAのcDNAを、PrimeScript 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社、製品コード6110A)を用いて合成した。該cDNAをテンプレートにし、配列番号6に記載の塩基配列をセンスプライマー、配列番号7に記載の塩基配列をアンチセンスプライマーとして、KOD FXを用いてPCRし、PCR産物2を得た。PCR産物2の塩基配列は配列番号2の通りであり、本発明の蛋白質をコードする遺伝子を得て、さらに配列番号1の本発明の蛋白質のアミノ酸配列を得た。
[実施例13:本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなる遺伝子を含む組換えベクター]
実施例12で得られたPCR産物2をテンプレートにし、配列番号8に記載の塩基配列をセンスプライマー、配列番号9に記載の塩基配列をアンチセンスプライマーとして、KOD FXを用いてPCRし、PCR産物3を得た。得られたPCR産物3をZero Blunt PCR Cloning Kit(Invitrogen、製品番号K2700−20)を用いてpCR−Bluntにクローニングして、本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターEAO/pCR−Bluntを得た。
pET−21a(+)ベクター(Novagen、Cat.No 69740−3)をNdeIとHind IIIで切断して約5.4kbpのDNAを精製した。EAO/pCR−Bluntを制限酵素NdeIとHind IIIで切断し、約2kbpのDNAを精製した。得られたそれぞれの精製DNAを、DNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ株式会社、製品コード6022)でライゲーションして本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターEAO/pET−21a(+)を得た。
[実施例14:本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなる遺伝子を含む組換えベクターを有する形質転換体]
実施例13で得た組換えベクターEAO/pCR−Bluntを、One Shot TOP10 Chemically Competent E.coli(Invitrogen、製品番号C4040−10)に形質転換して本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有する形質転換体EAO/pCR−Blunt/Top10を得た。
実施例13で得た組換えベクターEAO/pET−21a(+)を、One Shot TOP10 Chemically Competent E.coliに形質転換して本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有する形質転換体EAO/pET−21a(+)/Top10を得た。
実施例13で得た組換えベクターEAO/pET−21a(+)を、One Shot BL21(DE3) Chemically Competent E.coli(Invitrogen、製品番号C6000−03)に形質転換して本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有する形質転換体EAO/pET−21a(+)/BL21(DE3)を得た。
[実施例15:本発明の蛋白質をコードする塩基配列からなる遺伝子を含む組換えベクターを有する形質転換体を用いた組換蛋白質発現]
実施例14で得た形質転換体EAO/pET−21a(+)を、50μg/mlのアンピシリンを含む、100mL(500mL三角フラスコ)のOvernight Express Instant TB Medium(メルク、注文番号71757−5)に植菌した。20℃で4日間振とう培養して培養液を遠心分離して集菌し、20mLの10μM硫酸銅を含む20mM Tris/HCl緩衝液(pH8.5)に懸濁し超音波破砕して、遠心分離し、得られた上清を粗蛋白質液とした。粗蛋白質液について、実施例2に記載の手法に準じて測定した、上記〔式1〕で表される反応を触媒する総活性は約100Uであった。
粗蛋白質液のSDS−PAGEを図7に示す。図中矢印が本発明の蛋白質であり、その分子量は、67〜81kDaの範囲であった。
[実施例16:本発明の蛋白質のアミノ酸配列の解析]
実施例12で得られた本発明の蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)の配列解析の結果、銅イオンと複合体を形成する一級アミンオキシダーゼに特徴的な、銅のキレートに関与するコンセンサス配列である、配列番号12及び13の2つのアミノ酸配列が存在することが明らかになった。
また、実施例12で得られた本発明の蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)を、公知の一級アミンオキシダーゼ(Arthrobacter sp.由来(非特許文献3))のアミノ酸配列とアライメントしたところ、本発明の蛋白質に特異的な配列として配列番号14に記載のアミノ酸配列が見出された。
本発明により、モノエタノールアミンを効率良く酸化し、グリコールアルデヒド、アンモニア、及び過酸化水素とする反応を触媒する蛋白質とその製造方法が提供される。本発明の蛋白質はモノエタノールアミンの酸化方法、グリコールアルデヒド、アンモニア、又は過酸化水素の製造方法、及びモノエタノールアミン酸化剤に利用できる。さらに本発明の蛋白質を用いればモノエタノールアミン及びホスファチジルエタノールアミンを測定することもできる。

Claims (8)

  1. 下記(A)又は(B)の蛋白質:
    (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、下記式で表される反応を触媒する蛋白質。
    HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
  2. 下記(a)〜(d)のいずれかの塩基配列を含む遺伝子:
    (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、下記式で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列:
    HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
    (c)配列番号2に記載の塩基配列;
    (d)配列番号2に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であって、下記式で表される反応を触媒する蛋白質をコードする塩基配列。
    HOCH2CH2NH2+O2+H2O→HOCH2CHO+NH3+H22
  3. 請求項2に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  4. 請求項3に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  5. 請求項4に記載の微生物を培地で培養し、培養物中に請求項1に記載の蛋白質を生成蓄積させ、該培養物から該蛋白質を採取することを特徴とする蛋白質の製造方法。
  6. 請求項1に記載の蛋白質を用いるモノエタノールアミンの酸化方法。
  7. 請求項1に記載の蛋白質を用いてモノエタノールアミンからグリコールアルデヒド、アンモニア、又は過酸化水素を製造する方法。
  8. 請求項1に記載の蛋白質を含有するモノエタノールアミン酸化剤。
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