JP5800457B2 - 高酸化還元電位型ラッカーゼの生産方法 - Google Patents
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Description
[ラッカーゼ活性算出式]:
U/ml= 吸光度(OD420nm)×1000(μmol/ml) ×0.2(ml) ×1000(U/ml)
36000(M-1cm-1)×10(min) ×反応酵素液量(μl)
図に示した結果から、最も高いラッカーゼ生産量を示し、タンパク質分泌量、単位タンパク質当たりのラッカーゼ比活性も高い結果を示した。ITS領域の配列より本株をPolyporellus brumalis (オツネンタケモドキ)と同定した。寄託センターより入手したオツネンタケモドキ株では、野生株ほどの高いラッカーゼ生産が見られなかった。
オツネンタケモドキIBRC05015は1.5%寒天を含む0.25×MYPG培地で9cmシャーレを用いて1週間25℃で培養し、液体培養用の種菌とした。シャーレ一枚分の表面菌糸を掻きとり、0.5×MYPG液体培地に接種した。液体培養は、25℃で振とう培養で、24日間培養を行い、培養ろ液からラッカーゼを精製した。培養ろ液に80%飽和の硫酸アンモニウムを加えてタンパク質を塩析し、沈殿を10mMリン酸バッファー(pH7.0) に溶解した。得られたタンパク質溶液に30%飽和の硫酸アンモニウムを加え、上清を疎水クロマトグラフィー用のタンパク質サンプルとし、HiLoad Phenylカラム(GE healthcare)に供した。
以下精製ラッカーゼ(PbLac1)を用いて諸性質の解析を行った。
1) 酵素の活性に及ぼすpHと温度の影響
緩衝液はKCl-HCl buffer(pH1.0)、Glycine-HCl buffer(pH2.0〜3.0)、McIlvaine buffer(pH4.0〜6.0)、Tris-HCl buffer(pH7.0〜9.0)、CAPS buffer (pH10.0、CAPS; DOJINDO) を使用した。基質はABTSを用い、至適pHと至適温度の測定時間は10分間とした。
結果、pbLac1の至適pHはABTSを基質とした場合pH4.0であり至適温度は40℃であった。
実験に用いた緩衝液は5 1)に示した。本実験では終濃度50μg/mlの牛胎児血清アルブミンを加えた緩衝液を使用し、基質はABTSを用いた。pH安定性試験は各pHにて30℃、12時間インキュベートを行なった。温度安定性試験ではpH 6.0で各温度での加温を行い、30分後に残存活性を測定した。
結果、pH3.0-6.0の範囲で40%以上のラッカーゼ活性を保持し安定であった。さらにpH6.0 のMcIlvaine緩衝液中では30分の加温処理で60℃まで安定であった。
これまでラッカーゼの阻害剤として報告のある金属キレーター剤を中心に(EDTA、p-Cumaric acid 、Kojic acid、Tropolon、L-Cysteine、 NaN3、DTT)阻害剤の影響について検討を行なった。反応条件はMcIlvaine buffer (pH4.0)で、ABTSを基質として用い、30℃で10分間反応を行なった。阻害剤無添加時の活性に対する阻害剤添加時のラッカーゼ活性の相対値(%)を算出した。
結果、1mMのL-Cysteine、NaN3、DTTによってpbLac1の活性はほぼ完全に阻害された。また、金属イオンのキレーターであるEDTAは10mMでラッカーゼ活性を50%阻害し、p-cumaric acid、Kojic acidはどちらも1mMで約70%ラッカーゼ活性を阻害した。
金属イオン(Ca2+、Cd2+、Co2+、Cu2+、K+、Mg2+、Mn2+、Na2+、Sn2+、Zn2+)無添加時の活性に対する金属イオン添加時のラッカーゼ活性の相対値(%)を算出した。反応条件は阻害剤実験と同様の条件で行なった。
結果、10mMのCu2+を添加した時に1.38倍の活性上昇が見られた。しかし、その他の金属イオンに関しては10mMの各金属イオンを添加すると70%程度に活性が低下し、Cd2+1mMで活性が48.8%まで低下した。一番顕著に阻害が見られたのは1mMのSn2+を添加した時で、ラッカーゼ活性が4.6%にまで低下した。
本酵素の基質特異性を比較するために表1(Table.1)に示したフェノール化合物を基質としてMcIlvaine緩衝液中で10分間反応させ、反応後の吸光度を測定し、1分間当たりに酸化される基質量を算出し、Lineweaver-Burk plot (Lineweaver and Burk 1934)を作成した。各基質で測定した吸光度の波長とモル吸光度係数(ε)を、表1 に示した。
オツネンタケモドキよりRNAを精製し、オツネンタケモドキラッカーゼのcDNA,ゲノムDNAの配列を以下の手順により決定した。
得られたタンパク質のN-末端のアミノ酸配列をもとにプライマー(LccO-3;ATHWSNTGYGAYCCNAA, LccO-4L;SNTGYGAYCCNAAYCA) を設計し、3’RACEを行った。RACE用のRNAは酵素精製用に培養した菌糸より抽出し、抽出はMasterPureTM Yeast RNA抽出キット(EPICENTRERBiotechnologies社、USA) を用いて行った。また、3' RACE用のテンプレートcDNAは、SMART RACEキット(BD Biosciences)を用いて行った。また、得られた配列をもとに5’RACE を行った5’RACE用のcDNAはGeneRACERキット(Invitrogen) を用いて合成した。cDNAの合成は各キットのマニュアルに従った。また、PCRの条件は98℃ for 30sec,55℃ for 30sec,and 72℃ for 3min,(30cycles)で行った。
LccO-375U-RACE CGCGCTCCCGTCCAACTCGTCCATC for RACE-PCR
LccO-243U-RACE GGCGTTCAACTTCAATGGCTCAGAC for RACE-PCR
LccO-149L-RACE AGGTCAGTCTCCACAAGCAGGTTCG for RACE-PCR
LccO-264L-RACE GGAGGCGCCGTTGATGAAAAAGTCT for RACE-PCR
得られた配列は非特許文献3に記載のあるオツネンタケモドキのラッカーゼと同一のものであった(配列番号1)。
[方法]
菌糸は種菌プレートから成長点の約5mm内側を内径10mmのコルクボーラーでくり抜き、これを7個ずつ0.5×MYPG培地 (0.5% Malt extract、0.2% Yeast extract、0.2% pepton、1% Glucose) 50ml (容量200ml用の三角フラスコ) に植菌した。誘導剤はTable.4に示した濃度で植菌時に液体培地へ添加し、25℃で4週間振とう培養を行い、7日毎にラッカーゼ活性の測定を行った。菌糸は種菌プレートから成長点の約5mm内側を内径10mmのコルクボーラーでくり抜き、これを5個ずつ0.5×MYPG培地 (0.5% Malt extract、0.2% Yeast extract、0.2% pepton、1% Glucose) 50ml (容量200ml用の三角フラスコ) に入れた。
ラッカーゼの誘導剤として表2に示す誘導剤を用いて比較を行った。そのうち最もラッカーゼの誘導能が高かったのは0.25mMのCu2+を培地へ添加した条件下で、28日目でラッカーゼ活性が34.64U/mlに達した。この値はCu2+無添加時の最大値の21倍に相当し、試したInducerの中では最も誘導率が高かった。また、Cu2+を含む金属イオン添加時には乾燥菌糸体重量が増加する傾向が見られた。
オツネンタケモドキIBRC05015株はCu2+添加でラッカーゼ活性の上昇が見られたことから、基準購入株とラッカーゼ活性誘導の比較を行った。
[方法]
植菌方法及び、培養法、活性測定法は誘導剤の検討と同様の条件で行った。Cu2+誘導は植菌時に0.5mMのCuSO4を添加した。
オツネンタケモドキIBRC05015株は基準購入株P. brumalis (MAFF420194)と比較してもCu2+に対する応答性が高く、培養11日目以降常時高いラッカーゼ活性を示すことが分かった。またP. arcularis (MAFF 460202)、P. badius (MAFF 420217)、P. coccineus (MAFF 420150) も同様にCu2+に対するラッカーゼ活性の上昇が見られたが、オツネンタケモドキには及ばなかった。また、T. versicolor (MAFF 420155)と比較してもオツネンタケモドキIBRC05015株のラッカーゼ誘導率は高かった(図3)。
[方法]
菌糸は種菌プレートから成長点の約5mm内側を内径10mmのコルクボーラーでくり抜き、これを5個ずつ0.5×MYPG培地 (0.5% Malt extract、0.2% Yeast extract、0.2% pepton、1% Glucose) 50ml (容量200ml用の三角フラスコ) に入れた。CuSO4は植菌時に終濃度0、0.0005、0.005、0.05、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5、5.0mMの濃度で0.5×MYPG液体培地中へ添加し、7日毎にラッカーゼ活性測定を行った。
Cu2+によってラッカーゼ活性が上昇することから、最適Cu2+添加濃度について検討を行った。0、0.005、0.05、0.50、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5、5.0mMのCu2+を植菌時に添加し、ラッカーゼ活性を測定した。
Cu2+添加時にLac活性の急激な上昇が見られるが、Cu2+添加により誘導される蛋白質の有無を調べた。Cu2+添加時のオツネンタケモドキ培養ろ液を電気泳動し、CBB染色及びラッカーゼ活性染色を行った (図5)。
粗酵素液に、等量のサンプルバッファー (トリスSDSβMERサンプル処理液; 第一化学薬品) を添加し、5分間ボイルした。これを泳動ゲル [パジェルNPU-10L; ATTO (株)]にアプライし、1×Tris-Glycine-SDS Buffer (BioRad社) を用いて定電流20mAで泳動を行った。CBB染色は常法に従い、Commassie Brilliant Blue R250 (CBB) (PAGE Blue83;第一化学) で行った。
Cu2+添加時にラッカーゼ活性を示す、70kDa付近の誘導バンドが存在することが明らかとなった。本バンドは全分泌蛋白質に占める割合が高く、Cu2+添加時には特異的に誘導されるラッカーゼであることが考えられた。そこで、本蛋白質の精製を試み、最終的に単一バンドになるまで精製を行った。精製されたラッカーゼはCu非添加時のラッカーゼと比較すると若干分子量が大きかったが、N末端配列を決定したところ、PbLac1(Rye et al. 2008) と完全に一致することが分かり、Cu2+添加によって誘導されているラッカーゼはPbLac1であることが明らかとなった(図5)。
[方法]
Cu2+添加時にpblac1が誘導されている可能性が示唆されたため、リアルタイムPCRを用いてCu2+添加によるpblac1遺伝子のmRNA量の変化を調べた(図7)。Cu2+は植菌時に添加した。Cu2+添加から4日目〜35日目にかけて顕著なラッカーゼ活性上昇が見られたため(図6A)、その時期の菌糸を回収し、リアルタイムPCRを行った(図6B)。
ラッカーゼの酸化能力の指標の一つである酸化還元電位を以下の方法で測定した。
PbLac1の酸化還元電位測定にはサイクリックボルタモグラム法と無隔膜バルグ全電解法を用いた。ボルタモグラム法での測定で、大まかな電位の概算を行い、無隔膜バルグ法でより正確な電位の数値を計算した。サイクリックボルタモグラム法で最もクリアな結果が出たのはパージを行ったアルゴン飽和条件で、以前からの報告(Kamitaka et al. 2007)にあるように、Multicopper oxidaseのDETタイプの生物電気的反応を示し、触媒波はtype1Cu部位のE0辺りから上昇してきた。
製紙工程でのリグニン処理、洗剤における染料の転写の阻止、繊維の脱色、フェノール樹脂の製造及び廃水処理など、また、燃料電池用の電極素材への適用など、種々の工業利用にきわめて有用である。
Claims (2)
- オツネンタケモドキIBRC05015株(寄託番号 NITE P-822)から高酸化還元電位型ラッカーゼを分泌生産する方法であって、銅添加培地を使用することを特徴とする、大量かつ高純度の高酸化還元電位型ラッカーゼを分泌生産する方法。
- オツネンタケモドキが野生株に由来するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
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