JP4308019B2 - ゴム製品修正用セメント及びその製造方法 - Google Patents

ゴム製品修正用セメント及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム製品修正用セメント及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、タイヤのバランス修正用セメント及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ゴム製品の修正用セメントとしては、有機溶剤にゴム組成物を攪拌溶解したゴムセメントが用いられており、例えばタイヤ内面に塗布して、クラックの補修やタイヤバランスの修正に適用されている。従来、この種のセメント用ゴム組成物としては、例えば特開昭56−079134号公報に記載されているように、ゴムに高比重の充填材を配合し、硫黄又は過酸化物で架橋する常温硬化型のセメント用ゴム組成物が適用されてきた。
【0003】
しかし、特にタイヤのバランス修正用セメントにおいては、セメント固形分を高比重とするため、粉末状の高比重充填材などを多量配合する必要がある。このため、ゴム混練り工程における配合剤の分散は困難となり、また、分散性や生産性を考慮すると、実用上配合できる量には限界があった。
【0004】
一方、セメントの固形分の比重が小さいとバランスを修正するために塗布、乾燥を何度もする必要があり、タイヤ修正に手間と時間を要した。また、有機溶剤の使用量も多くなるため作業環境が悪化する懸念もあった。さらに、常温硬化型のセメントでは、加硫系の選択が適切でない場合にはタイヤ走行時の熱劣化によりタイヤ内部にクラックが発生するなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下、本発明の目的は、高比重充填材の多量配合により固形分の比重が大きいセメントを、効率的に製造することができ、しかもセメント塗膜の熱劣化が改良され得るゴム製品修正用セメント及びその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討の結果、特に無機充填材の混練り工程を工夫することが有効なことを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ゴム成分100重量部と無機充填材100〜500重量部とを含有するゴム製品修正用セメントの製造方法において、第1の混練り工程では、ゴム成分100重量部に対して該無機充填材0〜20重量部の条件下で、ゴム成分とカーボンブラック、オイル類、粘着付与剤、ステアリン酸及び老化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の配合剤との混練りをした後、第2の混練り工程で、密閉式混練機を用いて残余の無機充填材の混練りを行ない、得られたゴム組成物を有機溶剤に溶解することを特徴とするゴム製品修正用セメントの製造方法を提供するものである。
【0007】
また本発明は、ゴム成分100重量部と無機充填材100〜500重量部とを含有するゴム製品修正用セメントの製造方法において、(1)ゴム成分100重量部に対して該無機充填材0〜20重量部の条件下で、ゴム成分とカーボンブラック、オイル類、粘着付与剤、ステアリン酸及び老化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の配合剤との混練りをして得られたゴム組成物と、(2)該無機充填材とゴム成分とからなるマスターバッチとを、有機溶剤中で混合することを特徴とするゴム製品修正用セメントの製造方法を提供するものである。
【0008】
さらに、本発明は、上記の方法により得られたゴム製品、特にタイヤ修正用セメント、及びこれを適用したタイヤをも提供するものである。
【0009】
【実施の形態】
本発明のゴム製品修正用セメントは、ゴム成分100重量部と無機充填材100〜500重量部とを含有するゴム組成物を有機溶剤に溶解して製造されるが、まず第1の工程においては、ゴム成分100重量部に対して該無機充填材0〜20重量部の配合条件下で、ゴムとその他の配合剤との混練りすることが必要とされる。そして、後述する第2の工程で、残余の無機充填材が混合される。
まず、上記第1の工程において、無機充填材は配合しないか、或いは配合する場合にもゴム成分100重量部当たり20重量部以下である。この量を越える場合には、後の無機充填材は配合において分散が困難なことがある。
また、第1の工程では、このような条件下で、ゴムと他の配合剤とが混練りされる。前記無機充填材以外の他の配合剤としては特に限定されるものでなく、通常ゴム工業において用いるカーボンブラック,オイル類,粘着付与剤,ステアリン酸,老化防止剤などを適宜配合することができる。
【0010】
本発明のセメントにおいては、カーボンブラックをゴム成分100重量部当たり1〜90重量部含有することが好ましい。カーボンブラックとしては特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が用いられる。
【0011】
また、セメント塗布部におけるゴム製品との接着性向上の点から、粘着付与剤をゴム成分100重量部当たり1.0〜40重量部含有することが好ましい。粘着付与剤としては、例えばロジン系樹脂,テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂,フェノール系樹脂,石炭系樹脂,キシレン系樹脂などの合成樹脂が使用できる。
【0012】
前記ゴム成分としては、天然ゴム及び各種ジエン系合成ゴムを適用することができる。ジエン系合成ゴムとしては、ブタジエン系重合体,イソプレン系重合体,ブタジエン−芳香族ビニル化合物共重合体,イソプレン−芳香族ビニル化合物共重合体などのジエン系重合体またはジエン系共重合体が好ましい。具体的にはスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),イソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの混合物等が挙げられる。
上記第1工程におけるゴムと無機充填剤とその他の配合剤との混練りは、ロール,密閉式混練機のいずれも用いることができる。
【0013】
本発明のセメントにおいては、硫黄や過酸化物などの架橋剤は用いなくても実用上支障の内程度の十分な強度が得られる。また、架橋剤を用いた場合には、耐熱老化性に悪影響を与えることがある。したがって、本発明におけるセメントは架橋によらない非架橋型であることが好ましい。
次に、上記により得られたゴム組成物は、さらに第2の工程において、(1)前記無機充填材を所定量加えて混練りする方法、又は(2)別途調製した無機充填材マスターバッチと溶液混合する方法により、多量の無機充填材を効率的にゴム中に分散させることができる。
【0014】
すなわち、上記(1)方法においては、第1の混練りに続き、第2の混練り段階で、残余の無機充填材を全ゴム成分100重量部中に100〜500重量部になるように配合分散させる。この場合、ニーダーやバンバリーミキサーなどの密閉式混練機を用いて混練りすることが必要である。なお、第2の工程でロール練りする場合には、高充填配合の分散に長時間を要するばかりでなく、無機充填材の配合量を十分に高くすることが困難しなる。
【0015】
一方、上記(2)方法においては、第1の工程で得られた無機充填材0〜20重量部を含むゴム組成物は、別途調製された無機充填材含有のマスターバッチと共に、全体として、無機充填材がゴム成分100重量部中に100〜500重量部の範囲になるような割合で有機溶剤に溶解し分散させる。
【0016】
ここで、マスターバッチの製造法は特に制限されるものではなく、例えば天然ゴムラテックス又は合成ゴム製造時のゴム溶液に所望の無機充填材の所定量を混合攪拌した後、脱水又は脱溶剤することにより、或いはミキサーでの混練りなどにより製造することができる。また、マスターバッチ中のポリマー成分としては、これらゴム成分以外に例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などを混合したものでもよい。
【0017】
このようなマスターバッチは市販品として入手することができ、例えば、EPDM/EVAと亜鉛華とからなる、ラインケミー社製の亜鉛華マスターバッチ(商標「レノグランZnO−80」)がある。
【0018】
本発明で用いられる上記無機充填材としては、例えば亜鉛華,酸化鉛,クレー,炭酸カルシウム,酸化鉄,炭酸マグネシウム及びタルクなどが好ましく挙げられる。これらの無機充填材の粒子径は、1.0μm以下の細かい粉末が好ましく使用される。
【0019】
本発明における、特に自動車タイヤのバランス修正用セメトにおいては、セメントの固形分(ゴム組成物)の比重が小さいと、タイヤ内面に塗布した場合かなりの厚さになるので好ましくない。このため、セメントの固形分の比重は、1.4以上のものが好ましい。
【0020】
上記セメントに用いられる溶剤としては、通常、ゴム製品の糊引き作業に用いられているゴム揮或いは工業ガソリン主体の溶剤などが用いられる。
【0021】
本発明におけるセメントを、例えば乗用車タイヤの内面に塗布する場合、固形分(ゴム組成物)をタイヤ内面に刷毛などで塗布するが、この場合あらかじめタイヤ内面に塗布されている離型剤は除去しておくことが望ましい。
また、本発明のセメントは、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤ、防振ゴム,防舷材,ベルト,ホースその他の工業品等の補修又は修正用セメントとしての用途に用いることができるが、特にタイヤ修正用セメントとして好ましく適用することができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
なお、各比較例及び実施例において製造したタイヤ修正用セメントの塗布効果は下記により評価した。
すなわち、セメントを、タイヤサイズ205/60R16のタイヤ内面に塗布し、その際、動バランスを表裏トータルで20g低減するために要した塗布回数を求めた。
【0023】
比較例1
第1表に示す配合内容に従いバンバリーミキサーを用いて、第1工程におけるゴム組成物を調製した。このようにして得られたゴム組成物をゴム揮に溶解攪拌してセメント(固形分濃度20重量%)を製造した。得られたセメントを用いて上記の方法により、動バランスを20g低減するために要した塗布回数を求めた。結果を第1表に示す。
【0024】
比較例2
比較例1の第1工程と同様にして得られたゴム組成物に、さらに第2工程で、ロールを用いて亜鉛華100重量部を配合混練りした。このようにして得られたゴム組成物をゴム揮に溶解攪拌してセメントを製造した。得られたセメントを比較例1と同様にして塗布し、塗布回数を求めた。結果を第1表に示す。
【0025】
実施例1
比較例2において、第2工程の混練りを、バンバリーミキサーを用いて亜鉛華200重量部を配合して行ったこと以外は、比較例2と同様にして、セメントを製造した。得られたセメントを比較例1と同様にして塗布し、動バランスを20g低減するために要した塗布回数を求めた。結果を第1表に示す。
【0026】
実施例2
比較例2において、第2工程の混練りを、ニーダーを用いて亜鉛華300重量部を配合して行ったこと以外は、比較例2と同様にして、セメントを製造した。得られたセメントを比較例1と同様にして塗布し、塗布回数を求めた。結果を第1表に示す。
【0027】
実施例3、4
第1表の実施例3又は4に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、第1工程におけるゴム組成物を調製した。このようにして得られたゴム組成物と、EPDM/EVAと亜鉛華からなるマスターバッチ(各組成比は第1表に示す。)とをゴム揮に溶解攪拌してセメント(固形分濃度20重量%)を製造した。得られたセメントを用いて上記の方法により、動バランスを20g低減するために要した塗布回数を求めた。結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0004308019
(注)
*1 粘着付与剤(日立化成工業(株)製)
*2 マスターバッチ中のポリマー(EPDM/EVA)の重量部
*3 マスターバッチ中の亜鉛華の重量部
上記の結果より、本発明における実施例1〜4は、比較例1に対して、セメント塗布回数は大きく減っており、修正を完了するまでの工数と時間を大幅に減少させることができることが分かる。なお、比較例2では、第2工程において、無機充填剤の100重量部をロール配合したが、作業上この配合量がほぼ限界であった。
【0029】
本発明によれば、高比重の無機充填材を多量配合したゴム製品修正用セメントを効率よく製造することができる。このため、特にタイヤのバランス修正用セメントに適用した場合には、セメント塗布回数を大幅に減らすことができるので、作業環境の改善と共に作業工数の削減ができる。また、非架橋型セメントとして、セメント塗膜の耐熱老化性を改良することもできる。

Claims (8)

  1. ゴム成分100重量部と無機充填材100〜500重量部とを含有するゴム製品修正用セメントの製造方法において、第1の混練り工程では、天然ゴム、ジエン系重合体またはジエン系共重合体であるゴム成分100重量部に対して、亜鉛華,酸化鉛,酸化鉄,クレー,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム及びタルクの群から選ばれた少なくとも一種の化合物である該無機充填材0〜20重量部の条件下で、ゴム成分とカーボンブラック、オイル類、粘着付与剤、ステアリン酸及び老化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の配合剤との混練りをした後、第2の混練り工程で、密閉式混練機を用いて残余の無機充填材の混練りを行ない、得られたゴム組成物を有機溶剤に溶解することを特徴とするゴム製品修正用セメントの製造方法。
  2. ゴム成分100重量部と無機充填材100〜500重量部とを含有するゴム製品修正用セメントの製造方法において、(1)天然ゴム、ジエン系重合体またはジエン系共重合体であるゴム成分100重量部に対して、亜鉛華,酸化鉛,酸化鉄,クレー,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム及びタルクの群から選ばれた少なくとも一種の化合物である該無機充填材0〜20重量部の条件下で、ゴム成分とカーボンブラック、オイル類、粘着付与剤、ステアリン酸及び老化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の配合剤との混練りをして得られたゴム組成物と、(2)該無機充填材とゴム成分とからなるマスターバッチとを、有機溶剤中で混合することを特徴とするゴム製品修正用セメントの製造方法。
  3. 前記配合剤がカーボンブラックを含み、かつその配合量が、ゴム成分100重量部当たり1〜90重量部である請求項1又は2に記載のゴム製品修正用セメントの製造方法。
  4. 前記セメントは、架橋剤を含まない非架橋性セメントである請求項1又は2に記載のゴム製品修正用セメントの製造方法。
  5. セメント固形分の比重が1.4以上である請求項1〜のいずれかに記載のゴム製品修正用セメントの製造方法。
  6. ゴム製品がタイヤである請求項1〜のいずれかに記載のゴム製品修正用セメントの製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかの方法により製造されたタイヤ修正用セメント。
  8. 請求項記載の修正用セメントをタイヤ内面に塗布してなるタイヤのバランスが修正されたタイヤ。
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