JP4306987B2 - 表面硬質の固形物からの有効成分の抽出法および該有効成分を含有する食用組成物 - Google Patents

表面硬質の固形物からの有効成分の抽出法および該有効成分を含有する食用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面硬質の固形物から有効成分を抽出する方法に関し、より詳細には、サポニン類、ミネラル、ビタミン類、デンシチンなどを高濃度で含有する田七人参エキスの製造方法、この方法によって得られる田七人参エキスおよびその利用に関する。
【0002】
【従来技術】
田七人参は、三七人参とも呼ばれるウコギ科人参属の多年生草本である。その塊根は乾燥して生薬(以下、田七人参という)として用いられる。田七人参は、中国では明時代の薬用植物書「本草綱目」に登場するくらい古くから知られた漢方生薬で、現在でも高血圧、慢性肝炎、動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病やガンに効き目があるといわれている。 田七人参の薬効成分は、サポニン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、各種アミノ酸、ビタミン類、デンシチンなどであり、とりわけサポニンは、田七人参の乾燥重量あたり7〜12%含まれ、この値は、高価な朝鮮人参のサポニン含量0.3〜3%より高く、田七人参の薬効の高さが伺え、「超高貴薬」の異名がある所以である。なお、本明細書で用いる「%」は特に指定がなければ重量%を意味する。
【0003】
しかし、田七人参と称されるものの外部組織は非常に硬く、その内容成分を有効に抽出することは非常に困難なため、その製品は田七人参を単に破砕・粉砕しただけの微粒子または微粉末の形態のものがほとんどである。しかしこの微粉末などを使うことによる製剤化、例えば、打錠化は容易でなく、破損、ひび割れ、表面荒れなどによる製品欠陥率が高くなる傾向にある。
【0004】
その一方、希エタノールによる田七人参の抽出エキスは吸湿性が高く、そして有効成分の抽出率が悪く、元来田七人参に含まれている有効成分の種類、特に無機成分を効率的に抽出する方法は採用されていない。これは、一般に、無機成分を効率的に抽出しようとすれば、有効有機成分の抽出率が低下するためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような背景から、本発明は、表面が硬い乾燥品である田七人参などから無機および有機の有効成分の各々を高濃度で含有し、水に可溶性であり、そして安全性の点で懸念のない田七人参エキスおよびその製造方法を提供し、さらには健康増進や疾病予防に有効利用されうる食用組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明の方法は、大豆、高麗人参および乾姜などの表面が硬質の固形物素材から有用成分を効率的に抽出するため、およびそれらの抽出エキスを提供するために適用可能である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
田七人参は、有機化合物および無機化合物の有効成分を含んでいる。本明細書で用いる用語、田七人参の「有機化合物の有効成分」または「有機有効成分」とは、サポニン類、デンシチン、アミノ酸類、γ−アミノ酸、ビタミン類などをいい、そして本明細書で用いる用語、田七人参の「無機化合物の有効成分」または「無機有効成分」とは、栄養学的に有用な微量元素であるカリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ゲルマニウムなどのミネラルなどをいう。
【0007】
この内、田七人参の有機有効成分を抽出するためには、一般に、水あるいはエタノールを溶媒として用いる加熱処理法が採られている。例えば、表面の非常に硬い田七人参に対して、水溶液中で1夜放置後、次いで50重量%エタノール溶液で5時間、さらに、70重量%エタノール溶液で5時間加熱処理を行った後、全ての抽出液を合併し、それを濃縮およびフリーズドライをして田七人参エキスが得られる。しかし、この方法で得られる抽出エキス粉末の量は、出発材料の田七人参重量に対し約18%に過ぎないことがわかった。そして、田七人参の乾燥原形(以下、姿という)の表皮は僅かに軟化している程度で、常圧下での加熱では硬い表皮を十分に破壊することは出来ないことが明らかとなった。
【0008】
加熱強度を増すことは熱分解や酸化分解などで有機有効成分に化学変化を与えてしまう。それに対して、加圧処理すると分解や合成などの変化は起きにくい。従って、本発明者らは、浸透力のある溶液中で加圧処理を施すことにより、表面構成膜の細胞破壊を起こして、物質輸送を容易にすることにより、田七人参の内容成分の抽出を行うことを考えた。従って、本発明は、田七人参を有機酸溶液中で加圧処理し、表皮部分の細胞破壊を行うことによって、まず、ミネラル類を抽出し、次いで、希釈エタノール溶液で有機有効成分を抽出する二段階抽出法によって、無機および有機の両有効成分を高濃度含有し、しかも水溶性である田七人参抽出エキス末を製造する方法、得られた田七人参エキス、およびこの田七人参エキスを含む食用組成物を提供する。
【0009】
本発明は、田七人参エキスに関し、この田七人参エキスは、田七人参を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程、熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程、および上記抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程を包含する方法によって製造され、水溶性であって、ミネラル、デンシチン、サポニン、ビタミン、アミノ酸およびγ−アミノ酸からなる群から選択される有機有効成分を高濃度で含有する。
【0010】
好ましくは、上記方法は、田七人参を細粒化または粉末化する工程をさらに包含する。
【0011】
好ましくは、上記酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程は有機酸の存在下で行なわれる。
【0012】
好ましくは、上記有機酸は、クエン酸および酢酸からなる群から選択される。
【0013】
好ましくは、上記ミネラルは、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄およびゲルマニウムからなる群から選択される。
【0014】
本発明はまた、田七人参エキスの製造方法に関し、この方法は、田七人参を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程、熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程、およびこの抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程を包含する。
【0015】
本発明の方法は、田七人参を細粒化または粉末化する工程をさらに包含し得る。
【0016】
好ましくは、上記酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程はpH6以下で行なわれ、上記有機溶媒で抽出する工程は40〜50%エタノール水溶液を用いて加温下で行なわれる。
【0017】
本発明はまた、上記の田七人参エキスを含む食用組成物に関する。
【0018】
本発明はまた、表面硬質の固形物から有効成分を抽出する方法に関し、この方法は、表面硬質の固形分を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程、熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程、およびこの抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程を包含する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下詳述する。
【0020】
代表的には、本発明の抽出エキスの原料となる素材は田七人参である。田七人参は、ジンセノシド、ミネラルおよびビタミンを高い濃度で含むものが好適に用いられ、その産地、収穫時期にかかわらず、姿、またはそれを破砕・粉砕した細粒子、微粒子および微粉末のいずれの形態をも本発明の抽出エキスの原料として用い得る。
【0021】
本発明の田七人参エキスの製造方法は、田七人参を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程、熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程、および該抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程を包含する。
【0022】
上記酸性条件は、リン酸、塩酸などの無機酸を添加することにより達成され得る。好ましくは、上記酸性条件は、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、グルクロン酸、これら有機酸のナトリウムやカリウム塩、およびこれらの混合物を用いて達成され得る。上記酢酸は、食用酢(合成酢、リンゴ酢、果実酢、昆布酢、ワインビネガーなどの醸造酢、およびこれらを任意の割合で混合した混合物を含む)として添加され得る。より好ましくは、上記酸性条件は、クエン酸、酢酸を用いて達成され得る。最も好ましくは、上記酸性条件は、クエン酸を用いて達成され得る。
【0023】
上記無機酸または有機酸は、素材、代表的には、田七人参を含む水溶液がpH6以下、好ましくはpH5〜1の範囲になるに十分な量、通常0.1〜20重量%の範囲、より好ましくは1〜15重量%の範囲、最も好ましくは5〜9重量%の範囲で添加される。通常、田七人参に添加される有機酸は、通常、田七人参に対して2〜15倍容量、好ましくは、田七人参に対して8〜10倍容量の水に溶解したのちに田七人参に添加される。
【0024】
上記田七人参を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程は、代表的には、この田七人参を含む有機酸含有溶液を、1〜1.3kgf/cm2の加圧下で加熱することによって行なわれる。好ましくは、この田七人参を含む有機酸含有溶液は、加圧下で加熱する前に、大気圧下、約100℃の温度で、通常10分〜数時間の間、好ましくは30分〜2時間の間予備加熱され、それによって有効成分の抽出効率を向上し得る。
【0025】
上記熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程は、濾過、遠心分離など当該分野で公知の方法によって実施される。上記抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程は、水で希釈された有機溶剤を用いて行なわれる。このような有機溶媒として、アセトン、メタノール、エタノールなどを用い得る。好ましくは、エタノール、およびアセトンが用いられ、より好ましくはエタノールが用いられる。通常、有機溶剤濃度は20重量%〜80重量%の範囲の水溶液として用いられ、好ましくは40重量%〜50重量%の範囲の水溶液として用いられる。この有機溶媒水溶液を田七人参に対して、通常、2〜10倍容量の範囲、好ましくは、5〜8倍容量の範囲で添加して抽出残渣から有効成分を抽出する。
【0026】
上記熱水抽出液と上記有機溶媒抽出液とは組み合わされて、フリーズドライ、スプレードライなど当該分野で公知の方法によって濃縮および乾燥し、田七人参エキス粉末を得る。
【0027】
本発明の有機および無機有効成分を高い濃度で含有する田七人参エキス粉末の効率的製造法の代表例を以下に示す。
【0028】
適宜に細粒化した田七人参を10重量%クエン酸水溶液とともに90〜100℃において、必要に応じて攪拌しながら1時間加熱する。ついで1.1〜1.3kgf/cm2に保ちながら、昇圧を開始してから2時間にわたって加圧・加熱した後、濾過などの常法に従って抽出液と固形分抽出残渣とに分ける。続いて固形物の抽出残渣は、40重量%〜50重量%のエタノール溶液とともに60〜75℃に保ちながら1時間加熱する。エタノール含有抽出液は濾過等の常法に従って抽出液と固形分残渣とに分ける。このエタノール抽出液を、上記クエン酸抽出液とを合わせて混合してフリーズドライやスプレードライなどの乾燥処理によって、本発明の有機および無機有効成分を高濃度で含有する田七人参エキス粉末を得る。なお、このとき用いる田七人参は、姿、細粒、または粉末のいずれでもよい。
【0029】
また、上記の例では、表面硬質の素材として田七人参を用いた例を記載したが、表面硬質の素材としては、田七人参に限られず、大豆、高麗人参、乾姜およびウコンなどを田七人参にかえて実施してもよく、これら素材に含有されている有効成分を損なうことなく、有機および無機有効成分を網羅的に抽出してそれぞれのエキスを得ることができる。なお、本発明で用いられる表面硬質の固形物はこれらの例に限定されないことはいうまでもない。
【0030】
本発明の有機および無機有効成分を高濃度で含有する田七人参エキス粉末は、他社市販の粉末品と同程度またはそれ以上の粗サポニンやミネラルを含むことを特徴とする。すなわち、市販粉末品と同製品の本発明による抽出エキス末の粗サポニン、カルシウム、マグネシウム含有量を比較すると、前者においては順に7.48%、819ppm、610ppmであり、後者については順に10.22%、574ppm、627ppmであった。また、本発明の田七人参エキス粉末は、ジンセノシドRb1,ジンセノシドRg1、デンシチン、アルギニンおよびカリウムなどの有機有効成分もまた市販の粉末品と同程度またはそれ以上含み得る。
【0031】
本発明の有機および無機有効成分を高濃度で含有する田七人参エキス粉末は、水に対して非常によく溶けることが大きな特徴である。そのため、液状、ゲル状あるいは固形状の食品組成物として種類を限定せずに利用できる。例えば、清涼飲料水、ジュース、茶、ゼリー、プリン、パン、クッキー、キャラメル、おかきなどに添加したり、必要に応じて、でんぷん、デキストリン、乳糖などの賦型剤、その他の食用組成物のエキス剤、色素、香料などとともに粉末、顆粒、錠剤に加工したり、ゼラチンなどの被覆剤を用いてカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品などとして利用できる。なお、本発明の食用組成物はこれらの例に限定されないことはいうまでもない。
【0032】
また、有機および無機有効成分を高い濃度で含有する田七人参エキス粉末の食用組成物に対する使用量は、当該食用組成物の種類や状態などに依存して、ほぼ0.1〜100重量%の範囲で添加され得る。
【0033】
本発明の意義の1つは、 田七人参中の有効成分が水溶性の性状を持って抽出されるため、他の物質との配合調整が容易となり、機能性因子としての効果を高め得ることである。例えば、本田七人参エキス粉末が、ホスファチジルセリン、EPA,核酸成分などと配合されることにより、それぞれの持つ生理機能が発揮されるとともに、補足強化さらには相乗効果によって広範囲の症状に対応できるようになる。
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0035】
(実施例1〜4)
4つの三角フラスコの各々に、水175mL、田七人参姿30〜35gを添加し、そして田七人参姿の10、12.5、15および22重量%のクエン酸をそれぞれ加えた(実施例1〜4)。各々の三角フラスコの口を食品包装用ラップフィルムで蓋をするように覆って、オートクレーブ中で1.1〜1.2kgf/cm2の加圧下で約2時間煮沸した。放冷後、溶液部分を遠心分離(3,000rpm、5分)して田七人参の熱水抽出液を得た。沈殿残渣は元の田七人参姿が残っている三角フラスコに戻し、残存する田七人参姿とともに、50%エタノール溶液200mLを用い、三角フラスコに還流冷却器をつけて85℃、1〜1.5時間加温することによりさらに抽出した。この加熱溶液を放冷後、遠心分離(5,000rpm、10分)してエタノール抽出液を分取し、先に分取した抽出液と併せて減圧下で濃縮し、フリーズドライ処理を行って粉末にした。これらの粉末についての粉末量の収率、ミネラル類および粗サポニンの含有量の測定結果を表1にまとめて示す。なお、ミネラル類は原子吸光法、そして粗サポニンは重量法により測定した。
【0036】
【表1】
Figure 0004306987
表1より種々の濃度のクエン酸水溶液と50%エタノール溶液を用いて、田七人参姿から、直接ミネラルおよび粗サポニンの無機および有機の有効成分を含む抽出エキスが得られることが明らかになった。これは田七人参姿という極めて硬い固形物素材も、クエン酸存在下で加圧・加熱することにより、表面組織が軟弱になり、組織内部から含有成分が溶出されることを示している。そしてエキス粉末収量が少ないときはミネラル類および粗サポニン量が多く(実施例2)、エキス粉末収量が多い時はミネラル類および粗サポニン量が少ない(実施例3)とい傾向が認められたが、田七人参姿に対して添加されるクエン酸の濃度が10重量%〜22重量%の範囲では、抽出される有効成分に大差はないと判断された。
【0037】
なお、田七人参姿9.8gを水100mLに時々超音波を5分間かけながら11日間浸漬した後、エタノール50mLを加えて75℃、7時間加熱還流した。この抽出液を分取した後、残存固形分を70%エタノール溶液100mLとともに80℃、5時間加熱還流して固液分離を行って抽出液を集め、先の抽出液と合せて濃縮乾固して得られた乾燥品の収率は18%にすぎなかった。この結果と表1の結果を比較すると、本発明のクエン酸溶液による加圧抽出と希釈エタノール溶液による加熱抽出を組み合わせた方法は、抽出に要する所要時間、エキスの収率においてその有効性が明らかである。
【0038】
(実施例5)
田七人参姿に対するクエン酸濃度10重量%におけるミネラル類と粗サポニンの抽出率の程度を把握するため、田七人参の粉末形態を使用して検討した。田七人参粉末そのものと、田七人参粉末を実施例1と同様の抽出方法行って得た抽出エキス粉末(実施例5)の成分測定を行い、田七人参粉末自体の測定値と比較検討した結果を表2に示した。この結果からカルシウムを除いて、マグネシウム等のミネラル類と粗サポニンは96〜111%の収率を得て、本発明の有効性が明らかとなった。
【0039】
【表2】
Figure 0004306987
(実施例6〜9)
次に、表面が非常に硬い田七人参姿から成分抽出に有効な酸類と、生成されたエキス末の酸味度を弱める目的で、クエン酸(実施例3)、リンゴ酸(実施例6)、黒酢(実施例7)、グルコン酸(実施例8)、グルクロン酸(実施例9)による検討を実施例3の条件に従って検討した。その結果を表3に示す。このうち、リンゴ酸とグルコン酸は田七人参姿からの抽出エキスがフリーズドライ法によっては粉末化できるが、スプレードライ法では粉末化できないという製剤生産上での大きな欠点が認められた。また、グルクロン酸は非常に高価であるためコストの面で不適切である。クエン酸と黒酢との比較では抽出末収量が前者の方が高いことから、田七人参の抽出エキスを得るためには、クエン酸が最適であることがわかった。
【0040】
【表3】
Figure 0004306987
(実施例10〜13)
次いで、抽出エキス粉末量を増加する方法を検討した。熱水抽出操作終了後の田七人参姿を裁断してみると、中心部に白色部分が残っていることがわかったので、抽出操作を次のように改めた。すなわち、田七人参を姿(実施例10)の形態から、大粒子(約10〜約15mmφ:実施例11)、中粒子(約5〜約7mmφ:実施例12)および小粒子(約2〜約3mmφ:実施例13)に破砕し、粒子状形態に変えて同様に処理して粉末エキスの抽出率を比較した。
【0041】
4つの三角フラスコの各々に、田七人参姿、大粒子、中粒子、および小粒子15〜20gと、その1/10重量のクエン酸と水130mlとを入れて、沸騰水中で1時間加熱処理した後に、食品包装用ラップフィルムで各三角フラスコの口を蓋をするように覆って、オートクレーブ中で1.1〜1.2kgf/cm2の加圧下で約2時間煮沸した。放冷後、それぞれの試料について、溶液部分を遠心分離(3,000rpm、5分)して熱水抽出液を得た。沈殿残渣は元の田七人参姿が残っている三角フラスコに戻し、残存する田七人参姿とともに50%エタノール溶液200mLを用い、各三角フラスコに還流冷却器をつけて85℃、1〜1.5時間加温することによりさらに抽出した。この加熱溶液を放冷後、それぞれ遠心分離(5,000rpm、10分)してエタノール抽出溶液を分取し、それぞれ先に分取した抽出液と併せて減圧下で濃縮し、フリーズドライ処理を行って粉末化した。他の形態のものも田七人参姿と同様の操作を行った。
【0042】
実施例10〜13の結果を表4に示した。表4の結果から明らかなように、姿から細粒化することにより各有効成分の含有量を保持したままで、エキス粉末量、つまり抽出率を、約2倍に増加させることができた。また、理由は不明だが粒状を小さくした方が粗サポニン含有量が低下する傾向が認められた。
【0043】
なお、表4には示していないが、本発明の素材として田七人参の粉末形態(80メッシュを通過)を用いたときの抽出エキス末の収率は、75.3%であり、その粗サポニン含有率は9.7%であった。
【0044】
【表4】
Figure 0004306987
なお、高麗人参と大豆のそれぞれの乾燥原形(姿)各20gを実施例10と同様に処理して得た、それぞれのエキス粉末収率は、30%および27.5%であり、本発明の方法が、表面硬度が高い固形物素材に広く適用できることが示された。
【0045】
(実施例14)
小粒子状の田七人参(実施例13と同一品)91kgとクエン酸9kgおよび水550lを加圧装置付きタンクに入れた。90〜96℃で1時間加熱を続けた後、加圧状態にして1.1kgf/cm2に保ち2時間抽出した。得られた加熱抽出液を、NA500濾紙を装着した加圧濾過装置で濾過して分取した。続いてタンク内の抽出残渣に45重量%エタノール溶液700lを加え、65℃、2時間加熱還流を行った後、得られたエタノール抽出液を、NA500濾紙を装着した加圧濾過装置で濾過して分取した。クエン酸抽出液とエタノール抽出液の濾液を合併して濃縮した後、スプレードライ法によってエキス粉末を65.76kgを得た。本実施例のエキス粉末中の成分分析の結果を表5に示す。スケールアップによってエキス抽出率は若干低下する傾向が認められたが、エキス中の有効成分含有量は実験室レベルと同等であった。ミネラル成分のうち有機態のものは、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、および亜鉛において、それぞれ10.7%、47.3%、37.4%、86.5%および89.6%であった。
【0046】
なお、有機態亜鉛と無機態亜鉛の測定は以下のようにして行った。
【0047】
エキス粉末の0.5gを栓付試験管に取り、水を加えて完全に溶解して一定容積にする。同容のエタノールを徐々に加えて良く振り混ぜると沈殿が生じるので、そのまま、冷凍庫内に3時間静置する。この試験管を取り出し遠心分離(3,000rpm、10分)によって固液分離を行う。上清は濃縮してエタノールを留去した後、蒸留水に溶かして元の一定容積にして無機態亜鉛の測定溶液とする。一方の固体は2N-塩酸溶液に溶かして元の一定容積に合わせて、有機態亜鉛の測定溶液とする。それぞれの測定溶液につい亜鉛含量を湿式分解後原子吸光法により測定した。
【0048】
また、ジンセノシドRg1の定量結果は2.5g/100gであった(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による)。デンシチンおよび遊離γ−アミノ酪酸の定量結果はそれぞれ931.1ppmおよび1460ppmであった。また、ゲルマニウム含量は35ppbであった。その他の微量成分として、100g当たりの含量を示すと、ビタミン類ではサイアミン塩酸塩0.18mg、リボフラビン0.35mgであり(いずれもHPLC法による)、遊離アミノ酸類ではアミノ酸自動分析法によって、アルギニン(740mg)、アスパラギン酸(136mg)、アラニン(29mg)、プロリン(23mg)、ロイシン、リジン、セリン、スレオニン、バリン、フェニルアラニン、チロジン、イソロイシン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸が13〜5mg定量された。
【0049】
【表5】
Figure 0004306987
さらに、本発明による抽出エキス粉末中には、グリコーゲンが37.45%含有されていることが明らかになった。この値は、田七人参当たりに換算すると25.25%となり、そしてそれ故、元の田七人参当たりのグリコーゲン含有率4.42%に対し、上記の処理によって、5.7倍のグリコーゲンが生成されたことを示している。
【0050】
(実施例15)
フォスファチジルセリン(PS40)6.0重量%、マルトース6.6重量%、リン酸カルシウム1.6重量%相当量を混合機によって、予備配合末を作成し、これと本発明の田七人参エキス末20.9重量%、でんぷん10重量%および乳糖ー粉末セルロース45重量%とをよく混合して篩過する。これを混合機に投入し、さらにショ糖脂肪酸エステル5重量%、リン酸カルシウム0.9重量%および乳糖ー粉末セルロース5重量%をいれて混合する。この粉末を打錠機で打錠後シェラックコーティングしてポリシングを行って、錠剤型の食用組成物を試作した。
【0051】
(実施例16)
本発明の田七人参エキス末1kgに、2重量%核酸酵母エキスおよび0.5重量%デキストリンを混合し、15重量%還元麦芽糖水溶液を噴霧し、噴霧造粒機に供して、造粒化した後、乾燥、篩過して顆粒状の食用組成物を試作した。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、表面が非常に硬質である田七人参姿を、有機酸の存在下で加圧するという簡便な操作に続き、希釈エタノール溶液で再抽出することにより、サポニン類、デンシチン、アミノ酸、γ−アミノ酸、ビタミン類などの有機成分、およびカリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などのミネラル成分をも含有する田七人参エキスを製造できる。そして、抽出原料の形態としては、姿、細粒、粉末のいずれでも良く、その上、体内で吸収性の良い水溶性のエキス粉末を製造できることを特徴とする。また、田七人参中の有効成分が水溶性の性状を持って抽出できているため、他の物質との配合調整が容易となり、機能性因子としての効果を高めた健康食品や栄養補助食品をはじめ各種飲食物を製造することができる。

Claims (9)

  1. 田七人参エキスであって、
    田七人参を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程、
    熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程、および
    該抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程を包含する方法によって製造され、
    水溶性であって、ミネラル、デンシチン、サポニン、ビタミン、アミノ酸およびγ−アミノ酸からなる群から選択される有機有効成分を高濃度で含有する、田七人参エキス。
  2. 前記方法が、田七人参を細粒化または粉末化する工程をさらに包含する、請求項1に記載の田七人参エキス。
  3. 前記酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程が有機酸の存在下で行なわれる、請求項1に記載の田七人参エキス。
  4. 前記有機酸が、クエン酸および酢酸からなる群から選択される、請求項3に記載の田七人参エキス。
  5. 前記ミネラルが、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄およびゲルマニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の田七人参エキス。
  6. 水溶性であって、ミネラル、デンシチン、サポニン、ビタミン、アミノ酸およびγ−アミノ酸からなる群から選択される有機有効成分を高濃度で含有する田七人参エキスの製造方法であって、
    田七人参を酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程、
    熱水抽出液を抽出残渣から分離する工程、および
    該抽出残渣を有機溶媒で抽出する工程、を包含する方法。
  7. 田七人参を細粒化または粉末化する工程をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記酸性条件および加圧条件下で熱水抽出する工程がpH6以下で行なわれ、前記有機溶媒で抽出する工程が40〜50%エタノール水溶液を用いて加温下で行なわれる、請求項6に記載の方法。
  9. 請求項1に記載の田七人参エキスを含む、食用組成物。
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