JP6954557B2 - 糖質等が除去されたウコン抽出物の製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、近年、健康志向の高まりとともに、ウコンは、健康食品の原料として注目されている。
しかし、この方法では、ウコンに含まれる精油成分が熱安定性を有するために200〜300℃程度の高温で処理しなければならず、且つ、発酵には48時間以上を必要とするものの、ウコンに含まれる糖質の低減率は30%程度にとどまる。
そのため、ウコンに含まれる有用な成分を必要量摂取できる健康食品の原料としてウコンを利用するためには、ウコンに含まれる糖質や鉄分を除去することが重要になる。
ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、
有機酸、好ましくはクエン酸や酒石酸条件下で加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、
クルクミンの流出を防ぎながら糖質が除去されたウコン抽出物を製造する
ことを特徴とする。
または、100〜121℃未満では30分以上、121〜132℃では30分以下で加熱して、
固液分離して沈殿物を得ることで、
クルクミンの流出を防ぎながら糖質が除去されたウコン抽出物を製造することができる
ことを特徴とする。
ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、
有機酸、好ましくはクエン酸や酒石酸条件下で加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、
鉄分が除去されたウコン抽出物を製造する
ことを特徴とする。
固液分離して沈殿物を得ることで、
鉄分が除去されたウコン抽出物を製造することができる
ことを特徴とする。
ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、
クエン酸条件下で80〜100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、
クルクミンの流出を防ぎながら糖質及び鉄分が除去されたウコン抽出物を製造する
ことを特徴とする。
また、同様に、粉末化したショウガ科クルクマ属植物の根茎から、鉄分が除去されたウコン抽出物を製造することができる。
これらのウコン抽出物を健康食品の原料として用いることで、継続的に摂取しても、肥満や肝機能障害のリスクを抑え、ウコンに含まれる有用な成分だけを必要量摂取できる健康食品を提供できる。
イオン交換水とクエン酸を使った試料を、次の方法で、オートクレーブにて高温高圧下におき、ウコンの澱粉を加水分解させたうえ、遠心分離にて液体の除去を行うことで糖質を除去できるかを確認し、さらに、イオン交換水とクエン酸を使った試料の対比により、酸による加水分解の有効性を確認した。
(1)原料
春ウコンの根茎を乾燥させたのち粉砕した、未糖化の春ウコン粉末を使用した。
(2)試料
春ウコン粉末に、イオン交換水またはクエン酸水溶液を均一に混合して、これを試料とした。
(3)オートクレーブによる加圧加熱(加水分解)
オートクレーブにより加圧加熱を行った。
(4)遠心分離
加圧加熱後の各試料を、遠心分離機(3000rpm、15min)にて分離させ、沈殿物のみを得た。
(5)試料の乾燥
沈殿物を、低温乾燥器(50℃、24hour)にて乾燥させた。
(6)秤量
乾燥後の各試料を秤量し、加圧加熱前の重量と比較して、次の式から重量減少率を算出した。
((処理前重量−乾燥後重量)÷処理前重量)×100 [%]
(1)イオン交換水
オートクレーブの加圧加熱による澱粉の加水分解反応が、水分量、処理時間によって重量減少率にどのような影響を与えるかを調べるため、イオン交換水の重量比20、10、5、2.5[wt%]、処理温度132[℃]、処理時間30、60、90[min]の条件で実験を行った。
処理前と処理後の各試料における重量減少率の結果は図1のとおりである。
水分割合が多い(重量比の数値が高い)ほど、また処理時間が長いほど、乾燥後の試料の重量が減少する結果になった。
処理後の各試料の重量に差が出たのは、オートクレーブによる加圧加熱で、試料中の澱粉に加水分解反応が起こり、水に難溶性の澱粉が可溶化の糖まで低分子化されたことで、可溶化した糖を遠心分離によって除去できたと考える。
水分量が多い試料ほど重量減少率が高いのは、反応できる水分量が多く、試料中の原料の分散性も高まり、さらに澱粉中の加水分解物が溶出した量も多くなったからだと考える。
澱粉に加水分解反応が起こるときは、まず糊化(α化)が進み、澱粉粒中の分子間結合が切断され、膨潤、澱粉分子の溶解、粘土の上昇が起こり、分解が進む。
α化には、澱粉の30%以上の水分量が必要とされているが、さらに効率よくα化、加水分解を進めるには、水分量を多くし、処理時間を長くすることでこれを実現できる。
水のみによる加圧加熱によっても、澱粉の加水分解反応が起こり、熱水に可溶化した糖を遠心分離することで、糖質を除去できることが分かったが、より効率的な条件を探すため、有機酸の一種であり、人体内に入っても無害であるクエン酸を用い、酸による加水分解で糖質を除去できるか実験を行った。
実験は、クエン酸水溶液0.1[mol/L]、重量比20、10、5、2.5[wt%]、処理温度132[℃]、処理時間60[min]の条件で行った。
処理前と処理後の各試料における重量減少率の結果は図2のとおりである。
どの重量比の試料でも、クエン酸水溶液を用いた方が、イオン交換水に比べて、乾燥後の各試料の重量が減少することが分かったが、特に、2.5[wt%]では約8%、5および10[wt%]では約11%、20[wt]%では約20%も重量が減少した。
酸が触媒として働くことでα化が進み、澱粉内のアミロースおよびアミロペクチンのグリコシド結合に作用し、加水分解反応を促進させ、より可溶性の糖分への糖化が進んだからだと考える。
重量比20[wt%]のイオン交換水とクエン酸とで20%もの重量減少率の差がみられた理由は、反応する水分量が少なく、さらに溶出できる糖類の量が限られたことが影響したのではないかと考える。
また、イオン交換水のみの重量比2.5[wt%]、処理時間90[min]の条件で加圧加熱した場合は約66%の重量減少率だったが、クエン酸を重量比5[wt%]、処理時間60[min]の条件で加圧加熱した場合は約69%の重量減少率であった。
このことから、クエン酸を触媒として用いれば、加水分解時の水分量、処理時間を短縮することができることが明らかになった。
クエン酸を用いることで、より澱粉の可溶化が進み、糖質を除去できることが分かったが、澱粉の加水分解に処理温度、処理時間がどう影響するのかを確認するため、クエン酸水溶液0.1[mol/L]、重量比5[wt%]、処理温度100、110、121、132[℃]、処理時間30、60、90[min]の条件で実験を行った。
処理前と処理後の各試料における重量減少率の結果は図3のとおりである。
110、121、132[℃]の処理温度別に比較すると、処理時間の違いによる重量減少率の差はほとんど見られなかったが、同じ処理時間で比較すると、処理温度が上がるにつれて差がでており、例えば、100[℃]と110[℃]の各処理温度を比較すると、60[min]の場合は約9%、30[min]の場合は約17%もの差がでた。
クエン酸を用いた場合の処理温度や処理時間によって、重量減少率に大きく差が生じることが分かったが、特に、処理温度が低い100[℃]では、処理時間による差が大きかった。
クエン酸のモル濃度を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5[mol/L]としたクエン酸水溶液570[g]、重量比5[wt%]、処理温度132[℃]、処理時間60[min]、洗浄の条件で実験を行った。
遠心分離を行った後に残留クエン酸を除去するため、沈殿物に500[ml]の熱水を注ぎ込み、5[min]の撹拌を行い、再度遠心分離して上澄みを除去するという洗浄処理を作業として加え、その後に沈殿物を得て、これを乾燥させた。
表1は、クエン酸の各モル濃度におけるpH値を示す。
洗浄処理を行わなかった場合は、クエン酸の濃度が高くなるにつれて、重量減少率が減少している。
これは、遠心分離後の沈殿物にクエン酸が残留していたことで乾燥後の試料の重量が重くなり、重量減少率に影響したと考える。
洗浄処理を行った試料は、どの濃度でも重量減少率が約80%であり、濃度の違いによる顕著な差は見られなかった。
このことから、オートクレーブ(処理温度132[℃]、処理時間60[min])による加圧加熱処理で、澱粉の酸加水分解を行う場合は、0.1[mol/L]のクエン酸濃度でも十分であると考えられる。
クエン酸モル濃度0.1、0.2、0.3、0.4、0.5[mol/L]、重量比5[wt%]、処理温度132、121、110、100[℃]、処理時間60[min]、洗浄の条件で酸加水分解を行った。
重量減少率の結果を図5に示す。
最も重量減少率が高くなっているのは、132[℃]で加圧加熱した場合で、重量減少率は約80%となっている。
次いで、121[℃]は約75%、110[℃]は約70%であった。
濃度によって多少の差はあるが、0.1〜0.5[mol/L]においては、ほとんど同等の重量減少率になった。
しかし、100[℃]の場合は0.3〜0.5[mol/L]で約68%であったが、0.2、0.1[mol/L]の順で重量減少率が減少し、0.1[mol/L]では約58%であった。
110[℃]以上では圧力による作用が重量変化に寄与するが、100[℃]では圧力による影響が低いためにクエン酸の濃度による[H+]濃度が澱粉の酸加水分解に影響して重量減少率に反映されたのではないかと考える。
このことから、110[℃]以上の高温高圧で澱粉の加水分解を行う場合は、クエン酸濃度は0.1[mol/L]程度でもよいが、100[℃]またはそれ以下の温度で処理する場合は、加水分解の効率がクエン酸濃度に影響されるため、0.1[mol/L]以上の濃度が必要であることが分かった。
オートクレーブによる加圧加熱によって、ウコンの澱粉由来の糖質が除去され、さらにクエン酸を用いることでより糖質を除去できることが明らかになった。
そこで、さらなる酸加水分解の好条件を探るため、クエン酸以外の有機酸を用い、100[℃]以下の温度による加水分解の有効性を調べた。
また、実験後の各試料について、ウコンの有効成分として知られているクルクミンのほか、鉄分の含有量について分析した。
(1)原料
春ウコンの根茎を乾燥させたのち粉砕した、未糖化の春ウコン粉末を使用した。
(2)有機酸
クエン酸(Citric Acid)、酢酸(Acetic Acid)、DL-乳酸(DL-Lactic Acid)、DL-リンゴ酸(DL-Malic Acid) 、DL-酒石酸(DL-Tartaric Acid)を使用した。
(3)試料
春ウコン粉末に、各有機酸水溶液を均一に混合して、これを試料とした。
(4)オイルバスによる加熱加水分解
オイルバスを用いて回転子による撹拌を行いながら、各試料の加熱処理を処理温度別に行った。
(5)遠心分離
加熱後の各試料を遠心分離機(3000rpm、15min)にて分離させ、沈殿物のみを得た。
(6)試料の乾燥
沈殿物を、低温乾燥器(50℃、24hour)にて乾燥させた。
(7)秤量
乾燥後の各試料を秤量し、加圧加熱前の重量と比較し、次の式で重量減少率を算出した。
(処理前重量−乾燥後重量)/処理前重量×100 [%]
(1)有機酸別
各有機酸を濃度別(0.1、0.3、0.5[mol/L])に、5[wt%]の割合で原料(春ウコン粉末)に混合してこれを試料とし、処理温度100[℃]、処理時間60[min]、洗浄有の条件で加熱加水分解を行った。
それぞれの水溶液のpH値を表2に示す。
いずれの有機酸水溶液を用いた場合でも、モル濃度が高まるにつれ、重量減少率が増加する結果となった。
しかし、有機酸ごとに重量減少率が異なり、最も重量減少率が低かったのは酢酸水溶液を用いた場合であり、0.1[mol/L]では、クエン酸や酒石酸、リンゴ酸水溶液と比べて約28%であり、0.5[mol/l]では、クエン酸や酒石酸水溶液と比べて約35%であった。
酢酸水溶液は、他の水溶液よりもpHが高いため、[H+]濃度が低く、加水分解があまり促進されなかったと考えるが、それゆえに澱粉の加水分解に効果的ではないと考える。
また、乳酸も、高い効果は見られず、こちらも効果的ではないことが分かった。
それに対し、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸は、高い重量減少率を示しており、特にクエン酸と酒石酸は、0.5[mol/L]の場合、重量減少率は約70%であった。
クエン酸のより最適な条件を探るため、クエン酸濃度(0.1、0.3、0.5[mol/L])、5[wt%]の割合で混合し、処理温度(50、60、70、80、90、100[℃])、処理時間60[min]、洗浄有の条件で加熱加水分解を行った。
重量減少率の結果を図7に示す。
50〜70[℃]の温度域では、さほど重量減少率が変化していないが、80[℃]からクエン酸濃度が0.3および0.5[mol/L]と高くなるにつれ、重量減少率も高くなっている。
さらに80[℃]以上では、クエン酸濃度の高まりと比例して加水分解が進み、重量減少率が高くなっている。
90[℃]、100[℃]の加熱処理では、共に0.1[mol/L]と0.3[mol/L]との差が大きく、90[℃]では約16%、100[℃]では約13%となっている。
このことから、100[℃]以下の加水分解によって糖質を除去する場合は、最低でも80[℃]の温度が必要であるが、80[℃]の場合は60[min]程度ではクエン酸濃度に関わらず、ほとんど澱粉は除去できておらず、90[℃]および100[℃]ではクエン酸濃度によって加水分解反応がより進み、糖質の除去に影響することが分かった。
(1)HPLC
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、次の条件でクルクミン含有量を分析した。
カラム:ジーエルサイエンス、Inertsil ODS4 ポンプ流量:0.4ml/min
(1.5×150mm、3μL) カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水/ギ酸 注入量:3μL
=50/50/0.1(v/v)
また、試料からクルクミンを抽出するためメタノールを使用した。
乾燥後の粉砕した試料0.5gを100mlビーカーに精秤し、メタノールを20ml加えた後、超音波洗浄機にて10分間抽出した。
次に、遠心分離機(KUBOTA、KN-70、2000rpm、55G、5min)にて上澄みの液体分と沈殿物を分離した。
その後、0.45μmのメンブランフィルター付きのブフナー漏斗でアスピレーターを介して上澄みを減圧濾過し、ろ液を200mlメスフラスコに移した。
その後、試料残渣に20mlのメタノールを加え、同様の抽出作業を合計4回繰り返した後、メンブランフィルターおよびブフナー漏斗をメタノールで洗浄した。
その洗液を先の200mlメスフラスコに合わせ、さらにメタノールを加え125mlまでメスアップした後、HPLC試料とした。
HPLC試料をマイクロシリンジに約1mlとり、0.45μmのシリンジフィルターに通し、試料中の不純物を除去した。
これにより得た試料をHPLC分析に供試した。
澱粉の加水分解によって、乾燥後の春ウコン試料の重量が減少するが、その過程でクルクミン流出が全く無かったと仮定した重量補正クルクミン含有量と分析値とを比較することで、次の式によりクルクミン減少率を求めた。
(処理前重量[g]/乾燥後重量[g])×原料クルクミン量[mg/100mg]=重量補正クルクミン量[mg/100mg]
((a−b)÷b)×100=クルクミン減少率[%]
a:クルクミン量(分析値)[mg/100mg]
b:重量補正後クルクミン量[mg/100mg]
(1)イオン交換水
イオン交換水20、10、5、2.5[wt%]、処理温度132[℃]、処理時間60[min]の条件で加圧加熱処理を行った。
その後、乾燥試料をHPLCで分析した。
分析の結果を、クルクミン含有量として図8に、クルクミン減少率として図9に示す。
イオン交換水のみの加圧加熱による加水分解を行った場合は、クルクミン含有量が最も多い20[wt%]では、約12[mg/100g]であり(図8)、クルクミン減少率は約93.5%(図9)、クルクミン含有量が最も少ない2.5[wt%]では、約7[mg/100mg]であり(図8)、クルクミン減少率は約98%(図9)であった。
クルクミンは、水に対して難溶性であるはずが、ほとんど流出していた結果になった。
クエン酸の濃度別(0.1〜0.5[mol/L])、オートクレーブ(132[℃]、60[min])、洗浄有りの条件で加圧加熱した試料のクルクミン含有量を分析した。
結果は、図10、図11に示す。
図10から、クエン酸濃度が高くなるにつれ、クルクミン含有量が減少していることが分かった。
最もクルクミン含有量が少ない0.5[mol/L]の試料は、クエン酸を含まない原料のみの試料と比較すると約2倍の250[mg/100g]を含有しているが、重量減少を考慮すると、本来は約800[mg/100g]含有していなければならないため、クルクミン減少率は約68%であり(図11)、クルクミンが遠心分離時の液体分に多量に流出していることが分かる。
しかし、イオン交換水のみの重量比5[wt%]の試料のクルクミン減少率(約96%)と比較すると、 クエン酸濃度0.1[mol/L]の試料のクルクミン減少率は約37%であるから、約60%もクルクミンが残留していた。
この結果から、澱粉の糖質を除去するためには、クエン酸を用いた方が良いが、132[℃]の加熱条件では、クエン酸濃度が高くなるにつれてクルクミンの流出割合が高くなってしまうため、実験に用いた試料の中では0.1[mol/L]のクエン酸濃度が、多くのクルクミンを残留させる結果になった。
各有機酸を濃度別(0.1、0.3、0.5[mol/L])、重量比5[wt%]、処理温度100[℃]、処理時間60[min]、洗浄有の条件で加熱加水分解を行った。
その後、乾燥させた試料をHPLCで分析した。
その結果を図12、13に示す。
重量減少率が高い順にクルクミン含有量が多くなっており(図12)、酒石酸0.5[mol/L]は、各有機酸の中でもクルクミン含有量が最も多く、原料の約3倍の370[mg/100g]が含まれていたが、最もクルクミン含有量が少ない酢酸0.1[mol/L]は、原料のみの試料のクルクミン含有量を下回る98[mg/100g]であった(図13)。
澱粉の加水分解により、糖質が除去された分、クルクミンが濃縮され、このような結果になったと推察するが、図13の結果から、酢酸、乳酸、リンゴ酸では濃度が低いほどクルクミンが流出していることが分かった。
クルクミンは酢酸に可溶である性質をもつことから、酢酸の場合、特に多くクルクミンが減少したと考える。
これに対し、クエン酸は15%以下、酒石酸は20%以下のクルクミン減少率であった。
濃度が高まるにつれて減少率が低下する傾向にあることから、酸濃度と澱粉の加水分解とは関係があり、低分子化された澱粉に近い糖質がクルクミンと反応することで、クルクミンを流出させているのではないかと推察する。
クエン酸濃度(0.1、0.3、0.5[mol/L])、重量比5[wt%]、処理温度(50〜100[℃])、処理時間60[min]、洗浄有りの条件で酸加水分解を行った。
その後、乾燥させた試料をHPLCで分析した。
その結果は、図14に示す。
70[℃]以下では、重量補正後のクルクミン量と処理後の試料に含まれるクルクミン量は、ほぼ同等の値となった。
しかし、80[℃]以上では、重量補正後のクルクミン量と分析値とに差があり、クルクミン量が減少していることが分かった。
その理由として、澱粉の加水分解反応が起こるまではクルクミンは流出しないが、加水分解が起こると同時に、澱粉に近い低分子化された糖とクルクミンが反応して、クルクミンが溶液中に溶出することが推察される。
しかし、90[℃]および100[℃]の試料は、原料のみの試料に比べてクルクミン含有量は多く、クルクミン減少率は約10〜30%となっており、濃縮される分、クルクミン含有量が高い値を示した。
100[℃]の0.3、0.5[mol/L]の各試料は、クルクミン含有量は約340[mg/100mg]であり、原料のみの試料に比べて約2.7倍のクルクミン含有量であった。
このことから、クエン酸の加水分解によって糖質を除去しつつ、クルクミンの流出を全て阻止することは困難であるが、100[℃]以下の温度で、糖質を除去しつつ、クルクミン含有量を高める(クルクミンの流出を防ぐ)ことは可能であることが分かった。
(1)ICP発光分析
加熱処理後の試料に含まれるFeイオンの量を定量分析するためにICP発光分析装置(ICP-AES)を用いた。
(2)ICP-AES試料作製(試薬)
試料中の鉄分含有量の定量のための試料の溶解および標準試料作製のため、硝酸(精密分析用、濃度60〜62%)を使用した。
(3)鉄分標準液
ICP-AESの検量線法によって、試料中の鉄分含有量を分析するための標準液として鉄標準液1000ppmを使用した。
(4)ICP-AES試料作製(手順)
ミルサーで粉砕した試料(春ウコン粉末)を反応容器に0.2g秤量し、マイクロピペットにより精密分析用硝酸を4mlを加える。
その後、反応容器をヒートブロック装置に移して、105℃で5時間、試料の溶解を行った。
溶解後の試料を100mlメスフラスコに移し、超純水にて100mlまで希釈し、希釈溶液とした。
希釈後の試料をプラスチックシリンジにて約10mlとり、0.45μmのメンブランフィルターに通し、試料中の不純物の除去を行った。
ICP-AESを用いて検量線法による鉄分の含有量を分析するために、標準試料を作製した。
標準試料濃度は0、0.1、0.5、1、5、10[ppm]の6種類とした。
20mlメスフラスコに鉄1000ppm標準溶液、精密分析用硝酸を濃度ごとにマイクロピペットにて量りとり、20mlまで超純水にてメスアップを行った。
その後、45μmのメンブランフィルターに通し、溶液中の不純物の除去を行い各濃度の標準試料を作製した。
(5)分析値と重量補正後の比較による減少率の算出式
HPLCによるクルクミン量分析時と同様に、次の式によって鉄分減少率を算出した。
(処理前重量[g]÷乾燥後重量[g])×原料中鉄分量[μg/g]=重量補正鉄分量 ([μg)/g]
((a−b)/b)×100=クルクミン減少率[%]
a:鉄分量[μg/g]
b:重量補正後鉄分量([μg)/g]
(1)クエン酸(濃度別)
クエン酸濃度別(0.1〜0.5[mol/L])に、オートクレーブ(132[℃]、60min、洗浄有り)による加圧加熱処理によって試料中の鉄分含有量の分析を行った。
その結果を図17に示す。
図17のとおり、クエン酸濃度が高くなるにつれて、試料中の鉄分含有量が減少した。
例えば、クエン酸濃度が0.1[mol/L]の場合、鉄分含有量は約262[μg/g]であり、原料のみの試料が約174[μg/g]であったのと比較すると、約1.5倍多い。
これは加水分解により糖質が除去された分、鉄分量が濃縮されたためだと考える。
しかし、重量補正後の鉄分含有値は約867[μg/g]であり、鉄分量は約70%減少したことになる。
また、クエン酸濃度が0.5[mol/L]の場合、鉄分含有量は約110[μg/g]であり、重量補正後の鉄分含有値から比較すると約90%減少したことになる。
これはクエン酸と春ウコン中の鉄分が化合してクエン酸第一鉄になり、溶液中に溶け出したためと推察される。
このことから、酸加水分解にクエン酸を用いることで、糖質の除去と同時に鉄分の除去が可能であり、クエン酸濃度の違いにより、鉄分はより多く除去できることが分かった。
各有機酸を濃度別(0.1、0.3、0.5[mol/L])に、5[wt%]の割合で混合し、処理温度100[℃]、処理時間60[min]、洗浄有の条件で加熱加水分解を行い、試料中の鉄分含有量の分析を行った。
その結果を、図18に示す。
図18から、鉄分量が最も多かったのは酢酸0.1[mol/L]で約165[μg/g]であった。
鉄分量が最も少なかったのは酒石酸0.5[mol/L]で約93[μg/g]であり、原料よりも約30%少なかった。
また、重量減少率が高い有機酸および濃度の方が鉄分の減少率も高い傾向にあることが分かった。
鉄分減少率は、酢酸0.1[mol/L]が約6.3%で最少であり、酒石酸0.5[mol/L]が約79%で最大であった。
クエン酸は0.5[mol/L]が約124[μg/g]であり、原料の132[μg/g]を下回り、鉄分減少率も約70%であった。
しかし、乳酸は濃度が高くなるにつれて重量が減少するが、鉄分量は増加した。
そのため、濃度が高まるにつれて重量が減少する分、濃縮されて鉄分量が多くなったのではないかと推察する。
このことから、各有機酸を濃度別に酸加水分解を行った実験では、クエン酸以外でも、それぞれ濃度が高いほど鉄分量が減少することが明らかになった。
クエン酸濃度(0.1、0.3、0.5[mol/L])、重量比5[wt%]、処理温度(50〜100[℃])、処理時間60[min]洗浄有りの条件で酸加水分解を行い、試料中の鉄分含有量の分析を行った。
その結果を図19に示す。
加水分解が始まると思われる50〜70[℃]の温度域の鉄分量は130〜140[μg/g]であり、原料中の鉄分量が約132[μg/g]であることからすると、ほとんど減少していない。
加水分解が始まり、乾燥後の重量が減少する80[℃]の温度では、0.1[mol/L]で約153[μg/g]、0.3[mol/L]で約162[μg/g]、0.5[mol/L]で約172[μg/g]と、原料の鉄分量の約132[μg/g]を上回った。
これは加水分解によって糖質が除去されるものの、80[℃]の温度では鉄分はクエン酸と反応しにくいため、重量が減少した分、濃縮されることで鉄分量が増加したと推測される。
90[℃]の温度では、0.1[mol/L]は約164 [μg/g]、0.3[mol/L]は約213[μg/g]と、いずれも原料の鉄分量を上回った。
しかし、0.5[mol/L]は約153[μg/g]であり、重量補正後の鉄分含有量と比較した鉄分減少率は約43%であった。
50〜80[℃]以下の温度域では、0.5[mol/L]の濃度でも鉄分はほとんど減少しなかったが、90[℃]の0.5[mol/L]の条件では、重量補正後の鉄分含有量と比較すると顕著に減少した。
100[℃]の温度では、0.1、0.3、0.5[mol/L]の濃度順に約155, 158, 128[μg/g]の鉄分量であった。
クエン酸濃度が0.1[mol/L]でも鉄分減少率は約45%であり、90[℃]、0.5[mol/L]の条件と同等の鉄分減少率であった。
本明細書中の実験では遠心分離によって固液分離をしているが、固液分離は、液体分とそれ以外(沈殿物)とに分離できればよい。
そこで、例えば、静置やポリエステル等の化繊の布による濾過等を行ったが、これらの方法でも同様の効果が得られた。
Claims (11)
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、リンゴ酸を0.1〜0.5mol/Lで100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、クエン酸を0.1〜0.5mol/Lで90〜100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、酒石酸を0.1〜0.5mol/Lで100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、リンゴ酸を0.1〜0.5mol/Lで100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、クルクミンの流出を防ぎながら糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、クエン酸を0.1〜0.5mol/Lで90〜100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、クルクミンの流出を防ぎながら糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、酒石酸を0.1〜0.5mol/Lで100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、クルクミンの流出を防ぎながら糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、クエン酸を0.1mol/Lで、100〜121℃未満では30分以上、121〜132℃では30分以下で加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、クルクミンの流出を防ぎながら糖質が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、乳酸またはリンゴ酸を0.1mol/L以上で100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、鉄分が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、クエン酸を0.1mol/L以上で80〜100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、鉄分が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、酒石酸を0.1mol/L以上で100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、鉄分が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
- ショウガ科クルクマ属植物の根茎を、クエン酸を0.1〜0.5mol/Lで90〜100℃に加熱し、固液分離して沈殿物を得ることで、クルクミンの流出を防ぎながら糖質及び鉄分が除去されたウコン抽出物を製造することを特徴とするウコン抽出物製造方法。
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