JP4306145B2 - ロータンク排水弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、便器の洗浄水タンクに備えられ小洗浄及び大洗浄に切り換えて使用できるロータンク排水弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から便器の洗浄水タンクにデュアル・フラッシュバルブ方式のロータンク排水弁が使用されている。このデュアル・フラッシュバルブ方式のロータンク排水弁は、洗浄水タンクの内部に組み込まれ小洗浄及び大洗浄のそれぞれの操作ボタンを洗浄水タンクの表面に配置したものである。
【0003】
このようなデュアル・フラッシュバルブ方式のロータンク排水弁の例として、たとえば米国特許明細書第5,657,494号や豪州特許明細書第692009号に記載されたものがある。これらの明細書に記載のロータンク排水弁は、フロートとウェイターとを備え、これらのフロート及びウェイターが水位を検知することで閉弁を制御可能としたものである。すなわち、大洗浄時ではフロートの位置まで水位が下がるとフロートによる浮力が減少して閉弁し、小洗浄時はウェイターと連結されているアウタースリーブがウェイター下方に位置するカム駆動でフロート上に乗り上げウェイターの位置までタンク内の水位が下がるとウェイターの重みが浮力に打ち勝って閉弁する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成では、カムによる駆動は小洗浄時に行われる。ところが、小洗浄は大洗浄に比べて使用頻度が高く、カムの動作は頻繁に行われる。このため、カムの消耗度が大きくなり、部材のがたつき等を発生して確実な動作が行えなくなる。すなわち、使用頻度が高い小洗浄の度毎にカムが動作するので、カムの周面の磨耗等が速く進行してしまい安定動作が維持できなくなる。
【0005】
そこで、本発明はカムの動きを使用頻度が低い大洗浄のときに実行することによりカムの動作を安定させることができるロータンク排水弁を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上端に大洗浄用および小洗浄用の操作部をそれぞれ設けるとともに下端を排水筒に連通させたケーシングと、大洗浄用の操作部によって前記ケーシング内に上下方向に回動自在に配置された一方の駆動リンクと、当該駆動リンクに連接され下端に前記排水筒への流路に備えた弁座に着座する弁体とこの弁体の上方にフロートとを備えたインナースリーブと、小洗浄用の操作部によって前記ケーシング内に上下方向に回動自在に配置された他方の駆動リンクと、当該駆動リンクに連接されるとともに前記インナースリーブに外挿され且つウェイターを設けたアウタースリーブとを備え、前記アウタースリーブとインナースリーブとの間に当該アウタースリーブとインナースリーブを係合するためのカムを設け、前記カムは前記インナースリーブのみが昇降する大洗浄操作のとき前記アウタースリーブとインナースリーブとの係合を解除すべく構成したことを特徴とする。
【0007】
このような構成において、前記アウタースリーブに、前記インナースリーブに設けた係合突起に係合する前記カムを上下方向に回動可能に設けた構成とすることができる。
【0008】
また、前記各駆動リンクはそれぞれ操作アームを介してインナースリーブとアウタースリーブに連接されており、前記カムはその上端側にリンクロッドを一体に形成するとともにこのリンクロッドの基端に設けた枢軸によってアウタースリーブに連接されており、かつ、前記リンクロッドの先端がインナースリーブに連接された操作アームに当接されて、操作アームの上昇によって前記カムが枢軸周りに回動し前記インナースリーブに設けた係合突起への係合を解除するように構成してもよい。。
【0009】
更に、前記係合突起は、下端側がテーパ形状となっている構成とすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では、インナースリーブを上昇させることによって弁体を弁座から離して開弁することができ、インナースリーブだけを大洗浄用の操作部によって上昇させた後には開弁によってタンク内の水位が下がり、この水位がフロートの位置よりも下がるとインナースリーブの自重と排水力がフロートの浮力に打ち勝ってインナースリーブは下降して弁体を弁座に着座させて閉弁することができる。この場合、タンク内の貯溜水がフロートの近傍位置まで排水されるので、大洗浄の操作となる。一方、小洗浄用の操作部によって、アウタースリーブを上昇させるとインナースリーブも同時に上昇する構成とすることによって弁体を弁座から離して開弁することができる。このような操作においては、アウタースリーブに設けたカムをインナースリーブの係合突起に係合させることにより、アウタースリーブの重量とウェイター内の水の重量をインナースリーブに設けたフロートの浮力に負荷することによって水位がウェイターの近傍位置にきたときに閉弁することができ、小洗浄が可能となる。
【0011】
このように、このロータンク排水弁においては、カムはインナースリーブのみが昇降する大洗浄操作のときにアウタースリーブとインナースリーブとの係合を解除すべく回動し、小洗浄の際にはカムは係合して停止したままでインナースリーブを圧下する構成とすることができる。このため、使用頻度が高い小洗浄の場合にはカムを動作させず、使用頻度が低い大洗浄の場合のみカムが回動動作する。したがって、カムの動作回数を減らすことができ、カムの耐久性を向上させることができる。
【0012】
【実施例】
図1は本発明のデュアル・フラッシュバルブ方式のロータンク排水弁を洗浄水タンクに備えた例を示す要部の縦断面図である。
【0013】
図において、洗浄水タンクの上端壁101(別体のタンク蓋でもよい)と下端壁102との間にロータンク排水弁1が組み込まれている。このロータンク排水弁1は上端壁101に組み込んだ操作部2とケーシング3とから構成されたものである。
【0014】
操作部2はハウジング2aの内部に隔壁2bを挟んで配置した大洗浄用ボタン2cと小洗浄用ボタン2dとを備えたもので、大洗浄用ボタン2c及び小洗浄用ボタン2dのそれぞれにロッド2e,2fを連結している。なお、大洗浄用ボタン2cと小洗浄用ボタン2dとの間には隔壁2bが位置し、この隔壁2bによってこれらのボタン2c,2dとの間が遮断される。したがって、大洗浄用ボタン2cと小洗浄用ボタン2dを同時押しすることがなくなる。
【0015】
ケーシング3はその下端側に隔壁3aを形成するとともに下端に排水筒4を備えたもので、この排水筒4を洗浄水タンクの下端壁102に開けた開口102aに差し込んでいる。排水筒4からの洗浄水は便器本体(図示せず)に供給される。なお、図11の外観図に示すように、ケーシング3の周壁には洗浄水タンク内に連通する開口3bを開けておき、この開口3bからケーシング3内に水が流入する構成とする。
【0016】
ケーシング3の上端にはロッド2e,2fに対向する位置に中間スイッチ5a,5bを備える。これらの中間スイッチ5a,5bは圧縮のスプリング5c,5dによってロッド2e,2f側に付勢されたものである。
【0017】
ケーシング3の内部には支軸6が固定され、この支軸6周りに一対の駆動リンク7,8が回転自在に保持されている。そして、駆動リンク7,8にはそれぞれ操作アーム9,10が連接されている。
【0018】
操作アーム9の下端にはインナースリーブ11を連接するとともに、操作アーム10の下端にはアウタースリーブ12を連接する。インナースリーブ11は上端側に突起11aと係合突起11bを形成するとともに下端に弁体としてのパッキン11cを備え更にこのパッキン11cの上方にフロート11dを形成したものである。アウタースリーブ12は水を溜めておくことができる桶状のウェイター12aを高さ位置調整可能に備えるとともに、上端側にカム13を上下方向に回動自在に備えている。
【0019】
カム13はその上端側にリンクロッド13aを一体に形成するとともにこのリンクロッド13aの基端に設けた枢軸13bによってアウタースリーブ12に連接されたものである。そして、リンクロッド13aの先端部分はピン13cを介して操作アーム9に当接されている。そして、操作アーム9の上昇によってピン13cが操作アーム9に沿って当接して移動するときカム13は枢軸13b周りに時計方向に回動可能としている。そして、静止位置にあるときには、アウタースリーブ12の下端が隔壁3aに着座するとともに、操作アーム9がインナースリーブ11を外挿している部分の上端と突起11aの間に隙間ができるような部材の位置関係としている。
【0020】
以上の構成において、大洗浄するときには大洗浄用ボタン2cを押す。これにより図2に示すように中間スイッチ5aが押し下られ、駆動リンク7を支軸6周りに時計方向に回動させる。この駆動リンク7の回動によって操作アーム9が上に持ち上げられ、操作アーム9がインナースリーブ11を外挿している部分の上端が突起11aに接触し、インナースリーブ11を上に引き上げる。そして、このインナースリーブ11の上昇により、パッキン11cが排水筒4の上端の弁座4aから離れてから開弁する。このとき、カム13は操作アーム9の上昇によって時計方向に回動させられ、インナースリーブ11の係合突起11bと干渉しない姿勢となる。
【0021】
更に、大洗浄用ボタン2cを押し下げると、図3に示すように係合突起11bがカム13部分を抜ける部分までインナースリーブ11は上昇して上限位置まで達する。このとき、パッキン11cは排水筒4の弁座4aから大きく離れて開弁状態に維持される。この開弁によってタンク内に最高水位まで貯留されていた水が排水筒4から便器側へ排水され、便器洗浄が行われる。パッキン11cの上昇による開弁の後には、タンク内の水位が次第に下がっていき、大洗浄に必要な洗浄水が排水筒4から排水されて、フロート11dの位置よりも水位が下がるとインナースリーブ11の自重と排水力がフロート11dの浮力に打ち勝って、図4に示すようにインナースリーブ11が降下して図5に示す状態を経て図1に示すようにパッキン11cを弁座4aに着座させて閉弁する。このインナースリーブ11の下降においては、係合突起11bの下端側がテーパ状となっているので、カム13が突起11bに接触した後に、図5に示すようにこの突起11bのテーパ面に倣ってカム13が時計方向に回動してインスリーブ11の下降を許す。このインナースリーブ11の下降により図1の静止状態に復帰する。
【0022】
以上の行程により大洗浄が行われ、洗浄に必要な流量の洗浄水が便器側に供給される。そして、カム13は操作アーム9の上昇と下降によって枢軸13b周りに回動駆動されて動作し、インナースリーブ11の昇降動作を可能とすることができる。
【0023】
次いで、小洗浄するときには図1の静止状態において小洗浄用ボタン2dを押す。これにより、図6に示すように駆動リンク8が支軸6周りに反時計方向に回動して操作アーム10を上昇させる。これによりアウタースリーブ12が上昇して、このアウタースリーブ12の上端がインナースリーブ11を外挿している操作アーム9の下端部分に接触する。
【0024】
小洗浄用ボタン2dを図7に示すようにフルストロークまで押し下げていくと、操作アーム10の上昇に伴ってアウタースリーブ12とインナースリーブ11が同時に上昇する。このインナースリーブ11の上昇によりパッキン11cが弁座4aから離れて開弁し、タンク内の水が排水筒4から便器側に供給される。洗浄水の排水の期間ではフロート11dによる浮力によってインナースリーブ11とアウタースリーブ12は図7の位置に保持され、タンク内の水位の降下により、図8に示すようにアウタースリーブ12はその自重とウェイター12a内の水の重さによって下降を始める。そして、この下降により、同図8に示すようにカム13がインナースリーブ11の突起11bに係合する。
【0025】
カム13と係合突起11bの係合によって、アウタースリーブ12の自重とウェイター12aの中の水の重さがインナースリーブ11に伝達され、図9に示すようにアウタースリーブ12と一体となってインナースリーブ11が下降する。そして、アウタースリーブ12の下端がケーシング3に設けた隔壁3aに着座してアウタースリーブ12の下降が停止する。
【0026】
次いで、図10に示すようにインナースリーブ11はその自重と排水力によって下降する。なお、係合突起11bとカム13は係合している状態を維持する。そして、同図10に示すように更にインナースリーブ11が下降するとパッキン11cが弁座4aに着座して排水が停止する。
【0027】
以上のように小洗浄のときには、カム13は図1の姿勢のままに保持され、回動動作しない。したがって、使用頻度が多い小洗浄の際にはカム13は何らの動作もせず、アウタースリーブ12が下降するときにインナースリーブ11の係合突起11bに係合してインナースリーブ11を押し下げるだけである。このため、カム13は大洗浄のときの回動動作を繰り返すだけで、小洗浄の際に動作しないので、カム13の耐久性を向上させることができる。
【0028】
なお、上述したインナースリーブ11は、上下端部が開口された筒形状となっており、タンク内の貯水の水位がこのインナースリーブ11よりも高くなるとこのインナースリーブ11を介して、便器内に排水するオーバーフロー機構を備えた構造となっている。
【0029】
また、支軸6は水路を形成しており、大洗浄や小洗浄時の便器への排水後、便器のトラップに水を溜めて封水するために、この支軸6の水路からインナースリーブ11を介して水を流すようにする。このような構成にすることで、従来のようにインナースリーブ11に直接封水用の給水管を繋げる必要がなくなり、大洗浄や小洗浄時のインナースリーブの上下可動をスムーズに行なうことができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明ではアウタースリーブとインナースリーブとを連動させて下降させるカムを、使用頻度が低い大洗浄のときのみ回動動作させるようにしているので、カムの耐久性を向上させることができるとともに大洗浄及び小洗浄の両方で確実な動作ができるようになる。
【0031】
また、大洗浄用の操作アームの上昇によってカムの係合を解除するとともに、インナースリーブに設けた係合突起の下端側に設けたテーパ形状によってカムを誘導して元の係合状態に戻す構成としているため、別部材を設けたり複雑な機構とせずに済み、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のデュアル・フラッシュバルブ方式のロータンク排水弁を洗浄水タンクに備えた例を示す要部の縦断面図。
【図2】 大洗浄のときのインナースリーブ引き上げ開始時期の動作を示す要部の縦断面図。
【図3】 大洗浄のときのインナースリーブが上限位置まで到達したときの要部の縦断面図。
【図4】 大洗浄のときのインナースリーブ下降開始時期を示す要部の縦断面図。
【図5】 大洗浄のときのインナースリーブの下降後期を示す要部の縦断面図。
【図6】 小洗浄のときのアウタースリーブの引き上げ開始の時期を示す要部の縦断面図。
【図7】 アウタースリーブとインナースリーブが共に上限まで持ち上がった状態を示す要部の縦断面図。
【図8】 アウタースリーブが自重とウェイター内の水の重さによって下降しカムが係合突起に接触した状態を示す要部の縦断面図。
【図9】 カムと突起との係合によってアウタースリーブとインナースリーブが共に下降しアウタースリーブがケーシングの隔壁に着座した状態を示す要部の縦断面図。
【図10】 インナースリーブが自重と排水力とによって下降して排水筒を閉弁したときの要部の縦断面図。
【図11】 ケーシングの外観斜視図。
【符号の説明】
1 ロータンク排水弁
2 操作部
2a ハウジング
2b 隔壁
2c 大洗浄用ボタン
2d 小洗浄用ボタン
2e,2f ロッド
3 ケーシング
3a 隔壁
3b 開口
4 排水筒
4a 弁座
5a,5b 中間スイッチ
5c,5d スプリング
6 支軸
7 駆動リンク
9 操作アーム
9a 下端
10 操作アーム
11 インナースリーブ
11a 突起
11b 係合突起
11c パッキン
11d フロート
12 アウタースリーブ
12a ウェイター
13 カム
13a リンクロッド
13b 枢軸
13c ピン
Claims (4)
- 上端に大洗浄用および小洗浄用の操作部をそれぞれ設けるとともに下端を排水筒に連通させたケーシングと、
大洗浄用の操作部によって前記ケーシング内に上下方向に回動自在に配置された一方の駆動リンクと、
当該駆動リンクに連接され下端に前記排水筒への流路に備えた弁座に着座する弁体とこの弁体の上方にフロートとを備えたインナースリーブと、
小洗浄用の操作部によって前記ケーシング内に上下方向に回動自在に配置された他方の駆動リンクと、
当該駆動リンクに連接されるとともに前記インナースリーブに外挿され且つウェイターを設けたアウタースリーブとを備え、
前記アウタースリーブとインナースリーブとの間に当該アウタースリーブとインナースリーブを係合するためのカムを設け、前記カムは前記インナースリーブのみが昇降する大洗浄操作のとき前記アウタースリーブとインナースリーブとの係合を解除すべく構成したことを特徴とするロータンク排水弁。 - 前記アウタースリーブに、前記インナースリーブに設けた係合突起に係合する前記カムを上下方向に回動可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のロータンク排水弁。
- 前記各駆動リンクはそれぞれ操作アームを介してインナースリーブとアウタースリーブに連接されており、
前記カムはその上端側にリンクロッドを一体に形成するとともにこのリンクロッドの基端に設けた枢軸によってアウタースリーブに連接されており、
かつ、前記リンクロッドの先端がインナースリーブに連接された操作アームに当接されて、操作アームの上昇によって前記カムが枢軸周りに回動し前記インナースリーブに設けた係合突起への係合を解除することを特徴とする請求項2記載のロータンク排水弁。 - 前記係合突起は、下端側がテーパ形状となっていることを特徴とする請求項3に記載のロータンク排水弁。
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