JP4305964B2 - アルカリ二次電池用電極基体およびその基体を用いた電池 - Google Patents

アルカリ二次電池用電極基体およびその基体を用いた電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池などのアルカリ二次電池に用いる電極基体およびその基体を用いたアルカリ二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種機器の電源としてアルカリ二次電池が使用されている。アルカリ二次電池は、高信頼性が期待でき、小型軽量化も可能なことから、小型電池にあっては各種携帯用機器に、大型電池にあっては産業用に広く使われるようになった。
【0003】
アルカリ二次電池において、正極として使用されているのは殆どの場合ニッケル極である。このニッケル極の製法がいわゆるポケット式から焼結式に代わって、電池の特性が向上し、更に密閉化が可能であることからその用途も広がった。さらに、高容量化のために、発泡ポリウレタンや不織布の表面にニッケルめっきした後ポリウレタンや不織布を除去して得られるいわゆる発泡式ニッケル極が広く使われるようになった。
【0004】
ところで、電極は、多孔質基体に活物質を充填してなるものであるが、この多孔質基体として発泡式ニッケル基体よりもさらに低価格の基体として、パンチングメタル、エキスパンドメタル(複数の穴や切れ線を設けた金属板または金属箔を一軸方向に引張ることにより、該穴や切れ線の形状が一軸方向に拡大し複数の貫通孔を形成したもの)のような2次元構造の導電性単多孔体を用いたニッケル極が試みられている。
【0005】
また、特開昭52−118532号公報に示されるように、複数の貫通孔を形成した金属板を断面形状として波状に加工し、基体とする試みがなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属板を波状に加工してなる基体は、ある程度の価格の低下は可能となるものの、活物質を充填して電極とすると、活物質の保持性(活物質が電極基体から脱落しにくい性質)が悪く、そのため活物質の利用率が上がらず、このような電極を用いた電池は寿命が基体に発泡式金属を用いたものに比べてむしろ短くなり、電池の寿命を考慮した電池の価格は必ずしも安価にはならなかった。
本発明は、上記課題を解決するために、比較的安価で活物質の保持性に選れ、従って、電池の性能、特にサイクル特性を長期に渡って安定にする電極基体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明の電極基体は、厚み方向の断面形状が波形に加工され、多数の貫通孔を有する金属板と、該波形の山と谷の間の面に多数の貫通孔を有する金属板と、該金属板の少なくとも片面に貼付けられた金属繊維層とからなり、該金属繊維の一部が前記貫通孔の内部に存在していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の電極基体の代表的形状の断面図を図1に示す。図において、1は多数の貫通孔を形成し波状に加工した金属板であり、2は金属繊維である。本発明の電極基体は、かかる断面構造になっているから、充填された活物質は金属繊維によって脱離されなくなり、保持性が著しく向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
金属板に多数の貫通孔を設ける方法としては、通常、パンチングメタルやエキスパンドメタルに用いられている方法、つまりプレス機械による打ち抜き加工や複数の平行スリット加工後延伸して多孔を形成したいわゆるエキスパンドメタルとする方法の他、突起の付いたローラによる孔開け加工、エッチングによる加工などを採ることができるが、生産性の面で特にパンチングメタルやエキスパンドメタルに用いられている方法が好ましい。
【0010】
本発明において多数の貫通孔を設けた金属板として、上記のように加工されたパンチングメタルやエキスパンドメタルを用いることが出来るが、とくにエキスパンドメタルを適用すると、エキスパンドメタルの骨格が金属板の方向に対して一定の傾きを有しているから、骨格表面にある活物質は、包み込まれることになり、その結果、活物質の保持性は更によくなる。
【0011】
本発明における金属板としては、金属箔に相当するような厚みである10〜200ミクロンが好適である。厚みが10ミクロン以上になるとより高効率の放電特性が得られるようになり、200ミクロン以下であると波状加工が容易にになるからである。
【0012】
金属繊維は、径5〜700ミクロン、長さ0.01〜100mmのものが好適に使用される。この範囲の大きさであれば金属板への付着が容易であり、活物質の保持性に優れているからである。
【0013】
波状金属板への金属繊維の付着は、例えば、無電解ニッケルめっきした後、これを焼結して行う。
【0014】
金属板および金属繊維の材料は、同一の材料であってもよく、異なる材料であっても良い。例えば、ニッケル、コバルト等の金属を用いることができ、特に鉄を用いる場合はニッケルめっきを施すことが必要である。鉄はアルカリ電解液と接触すると不導体被膜が形成されるため、それを電極基体とすると電池の内部抵抗が高くなるからである。したがって、ニッケルめっきを施した鉄を用いることが高価なニッケルの使用料を減らすことができるので、特に推奨される。
【0015】
ニッケルめっきを施す工程の順序としては、波状上加工された金属板に金属繊維を付着させた後に、金属板と金属繊維を同時にニッケル電気めっきを施してもよく、または、金属板と金属繊維をそれぞれ別個にニッケルめっきを施し、ニッケルめっきを施された両者を付着させても良い。
【0016】
なお、金属繊維は、電極基体からの活物質の脱落を防止する役目をするとともに、活物質同志、または電極基体と活物質との距離が大きい場合にこれらの間に介在することによって導通を向上させる役目も併せ持つから、表面をニッケルめっきに限らず、少なくともその表面は導電性を有するものであり、より好ましくは電極基体および活物質との接触抵抗の小さい金属表面、例えば、コバルト表面とする。
【0017】
金属板と金属繊維の材料が異なる例として、金属板にはニッケルめっきを施した鉄を使用し、一方、金属繊維にはニッケルめっきを施した炭素繊維を用いることができる。なお、本発明においては、金属繊維とは、その構成材料全てが金属でなくても、少なくとも繊維の表面が金属であるものも包含する。すなわち、金属繊維は、その基材となる繊維が、炭素繊維の他、ボロン繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)などの有機繊維であり、その表面にニッケルめっき等の金属めっきを施したものも使用できる。繊維基材を、金属以外の材料を用いると、電極の軽量化を図ることができる。
【0018】
電極基体の表面には、さらにコバルト層を設けることが望ましい。そうすることにより、活物質と電極基体との電気的な接触がよくなり、活物質の利用率が一層上昇するからである。従って、複数の貫通孔を有する金属板は、例えば、鉄板表面にコバルト層を直接設けても良いし、ニッケル被覆層を介してコバルト層を設けても良い。
【0019】
金属板に加工を施した波状は、平板に比べて波形の特に谷の部分に活物質を多量に保持することができ、しかも脱落を少なくすることができる。従って、その波形は特に限定されないが、例えば、正弦波、矩形波或いはジグザグ状でもよい。特に波形の隣接する山頂間の距離がこれらの山により囲まれた谷の底部の幅より小さい場合は、谷の部分に充填された活物質の脱落がさらに少なくなる。
【0020】
波状は周期性があっても無くても良いが、周期性がある場合は、一周期が1.0〜10mm程度が好適である。周期が10mmを超えると、波の振幅が電極の厚みの制限(例えば、1mm以下)からして、平板に近似してくるため波状としての効果が小さくなり、保持量が低下し脱落も比較的多くなるため保持性が低下する。また、周期が1mm未満であると、波の振幅が例えば正弦波の場合で加工性の点から1mm以下になり、活物質の保持量が低下するからである。
しかしながら、波状の一周期は上記の範囲に限定されるものでない。本発明の他の構成、すなわち、金属板に付着された金属繊維によって、活物資の保持量を確保したり脱落を防止することが可能だからである。
【0021】
本発明において活物質とは、電池反応に直接関与し、その化学変化により電気エネルギーを化学エネルギーへと可逆的に変換可能な物質を示し、例えば、Ni(OH)2(水酸化ニッケル)等が用いられる。
【0022】
次に、本発明の基板から電極を作成する工程を説明する。
波状に加工された多数の貫通孔を有する金属板に、金属繊維を例えば、ニッケルめっきした後、焼結する方法で付着した後、その表面に活物質をポリビニルアルコール水溶液を加えてペースト状にしたものを、へらにてなぞって充填する。高密度化のためにローラプレスを更に行う場合は、波状の尾根線方向に沿って行うのが、変形が小さく、生産性の点で好ましい。活物質を含むペーストを充填した後、水分を乾燥除去して、ポリビニルアルコールをバインダーとして活物質粉末を結着させて、電極とする。
【0023】
電極を作成する他の方法は、上記と同様の活物質を含むペーストに金属繊維を混合して、それを波状に加工された上記金属板に充填しても良い。この場合は、金属繊維の方向がペースト充填のためのへらのなぞる方向に多く揃うことから、特に導電性付与に方向性を持たせたい場合(例えば、渦巻型の電極を用いた円筒型電池の場合)に有効である。
【0024】
本発明の電極基体からなる上記の電極を用いてアルカリ二次電池を作製する方法を説明する。
円筒型電池を作製する場合は、集電端子を設けた電極と対極とを隔膜を挟んで巻回し、それを円筒型の電池ケースに収納した後、アルカリ電解液を注入し、密閉して円筒型アルカリ二次電池とする。本発明の電極基体を用いて電極とした場合には、電極基体を隔膜とともに巻回する際に電極基体の波形の尾根線方向が巻回方向であることが好ましい。なぜならば、活物質が脱落しにくくなるからである。
【0025】
また、本発明の電極基体からなる電極は、活物質に例えば水酸化ニッケルを用いて正極として使用することができる。また、活物質に水素吸蔵合金を用いて負極として使用することができる。
【0026】
【実施例】
(実施例1) 50ミクロン厚の銅箔を送りピッチ0.2mm、貫通孔ピッチ(縦方向)0.8mm、貫通孔ピッチ(横方向)1.4mmにて重量250g/m2である、図2に示す形状のエキスパンドメタルを得た。これを断面の波形を図1に示すような厚み1.5mm、半周期(A)を1.5mmの正弦波になるように、ローラ加工機を用いて加工した。さらに径50ミクロン、長さ1mmの鉄繊維を磁石で付着させた後、ニッケルめっきを施し、次いで焼結して、20g/m2付着させた。次いで、ニッケル電気めっきを付着量50g/ m2の条件で施して本発明のアルカリ二次電池用電極基体を得た。
【0027】
(実施例2) 50ミクロン厚のニッケル箔を半径1mmの円形の貫通孔が2.7mm間隔で打ち抜いたパンチングメタルを用い、これを断面がピッチ2mmの折り曲げ角度90度のジグザグ状に加工した。さらにニッケルめっきを施した径50ミクロン、長さ1mmの鉄繊維を磁石で付着して、焼結して付着させて本発明の電極基体を得た。
【0028】
(実施例3) 実施例1により得られた電極基体に更にコバルト電気めっきを施し、本発明の電極基体を得た。
【0029】
(実施例4) 30ミクロン厚のニッケル箔を半径0.7mmの針を周囲に設けた径50mmのローラを回転しながら押し当てて、半径0.7mmの円形貫通孔を縦および横方向とも2.0mmで設け、このニッケル箔を半周期2mm、振幅1.5mmの波形に加工した。ついで、径30ミクロン、長さ5mmの炭素繊維10重量部に対してポリフッ化ビニリデンを1重量部の割合で混合して、炭素繊維をポリフッ化ビニリデンを結着剤として付着させて本発明の電極基体を得た。
【0030】
(比較例) 鉄繊維を付着させない以外は、実施例1において使用した鉄箔を用い、同様の波形に加工した後、ニッケルめっきを施して電極基体とした。
【0031】
(電極の製造) 実施例1〜4および比較例の電極基体に、市販の球状水酸化ニッケル粉末75重量部、コバルト粉末3重量部、酸化コバルト粉末4重量部の混合物に2重量%のポリビニルアルコール水溶液を加えてペーストとし、へらにて加圧充填し、表面を平滑化する。次いで、120℃1時間乾燥して、厚さ0.70mmに調整して、電極とした。
【0032】
(円筒型電池の作製) 上記のようにして作製された電極を長さ180mm、幅33mmに、波形の尾根線が長手方向になるように裁断し、リード版をスポット溶接により取付けて集電端子とした。活物質の量から計算により、公称(計算)容量は2.Ahである。対極として水素吸蔵合金LaNi6の1種であるMmNi3.7Mn0.4Al0.3Co0.6を用いた。これを発泡ニッケル(空隙率:98%)に充填し、厚さ0.5mm、幅33mm、長さ220mmに裁断し、リード板をスポット溶接して集電端子を取付けた。
【0033】
また、濃硫酸により親水処理したポリプロピレン不織布を隔膜(セパレータ)として、上記電極と負極となる対極との間に把持し、正極となる上記電極が内側になるように巻回し、ニッケルめっき鉄製のサブC型電池ケースに収納し、アルカリ電解液を注入後密閉して円筒型ニッケル水素電池を作製した。なお、使用したアルカリ電解液は、比重1.26の苛性カリ水溶液に30g/Lの水酸化リチウムを溶解したものである。同一の電極基体からなる電極を用いた電池を各5個作製した。
【0034】
(電池の放電容量試験A) これらの電池について、化成終了後の各電池を5時間率(0.2C)で容量の120%定電流充電し、放電電流10時間率(0.1C)で終止電圧0.9Vまでの条件で放電容量を調査した。
【0035】
(電池の放電容量試験B) 次に、各電池を5時間率で容量の120%定電流充填し、放電電流5Cで終止電圧0.9Vまでの条件で放電容量を調査した。
【0036】
(サイクル評価試験) また、2時間率で容量120%定電流充電し、放電電流0.2C終止電圧0.9Vまでの条件で放電容量を調べる試験を繰り返すサイクル評価試験を行った。
【0037】
以上の試験結果を表1に示す
【0038】
【表1】
Figure 0004305964
【0039】
なお、上記実施例では負極に水素吸蔵合金を用いたが、水素吸蔵合金電極に代わりカドミウム極を用いた電池についても同様の試験を行ったが、同様の効果を示した。その他、負極として鉄極や亜鉛極等を用いた電池も同様の効果が得られる。上記実施例で得られた電極基体を用いた電池と比較例で得られた電極基体を用いた電池を解体し、電極基体からの活物質の脱落の状況を調べた結果、実施例の電極基体を用いた電池は、活物質の脱落は殆ど認められなかったが、比較例の電極基体を用いた電池は、活物質が少量ではあるが電池ケースの底に存在することが認められた。
【0040】
【発明の効果】
上記試験結果から明らかなように、本発明の電極基体を用いたアルカリ二次電池は、高い放電容量を示すとともに、放電容量のサイクル評価試験では放電容量の低下が少なく、ハイレート放電特性に優れ、サイクル特性に優れている。これは、本発明の電極基体は活物質の保持性に優れている、すなわち、保持量が比較的多く、サイクル充放電による活物質の脱落が非常に少ないことにを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電極基体の断面図である。
【図2】本発明の電極基体に使用される多数の貫通孔を有する金属板の一例であるエキスパンドメタルの平面図である。
【符号の説明】
1 波形加工された金属板
2 金属繊維
3 貫通孔
4 骨格

Claims (7)

  1. 厚み方向の断面形状が波形に加工され、該波形の山と谷の間の面に多数の貫通孔を有する金属板と、該金属板の少なくとも片面に貼付けられた金属繊維層とからなり、該金属繊維の一部が前記貫通孔の内部に存在していることを特徴とするアルカリ二次電池用電極基体。
  2. 前記波形が10mm以下の周期をもつことを特徴とする請求項1記載のアルカリ二次電池用電極基体。
  3. 前記金属繊維の長さが0.01mm以上、10mm以下で、かつ径が5μm以上、700μm以下あることを特徴とする請求項1または2に記載のアルカリ二次電池用電極基体
  4. 前記金属板はニッケル被覆した鉄板であり、金属繊維はその表面がニッケル被覆されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のアルカリ二次電池用電極基体。
  5. 前記金属板の表面にコバルト層が設けられ、金属繊維の表面にコバルト層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアルカリ二次電池用電極基体。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電極基体に活物質を充填してなる電極を用いたことを特徴とするアルカリ二次電池。
  7. 電極基体を構成する厚み断面波形の金属板が、波形の尾根線方向が巻回方向になるように隔膜とともに巻回されてなる請求項6記載のアルカリ二次電池。
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