JP4305682B2 - 拡散装置とこれを用いた半導体結晶への不純物拡散法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は拡散装置に関し、とくに化合物半導体結晶ウエーハに不純物を拡散によって導入するための拡散装置と、これを用いて化合物半導体結晶ウエーハに不純物を拡散する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体に不純物元素を拡散する技術は半導体素子やICの製造プロセスには重要な技術で現在も盛んに利用されている。この中でAsやP等の蒸気圧の高い元素を含む化合物半導体結晶は、高温での熱処理における分解圧が高く、不純物拡散を行う高温では構成元素が表面から蒸発し、化学量論的組成からずれやすい問題がある。このため化合物半導体の拡散工程では分解しやすい元素の圧力を加えながら不純物拡散が行われている。これは一般にアンプル拡散法といわれ、図7に示すような従来技術で使われている拡散用石英アンプル101の構成例は石英管の中に被拡散試料102と拡散源(以下、拡散不純物元素や化合物および分解を抑える元素を含む化合物および混合物の総称)103を入れ、これを真空にしたまま石英アンプル101に封止して熱処理によって不純物を拡散するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアンプル拡散法およびこれに用いる装置の欠点および課題は以下の通りである。石英アンプル101は使い捨てであり、大面積や多数枚の試料処理には特にコスト高になる。石英アンプルの封止とここから試料を取り出すための切断には専用装置と工数が必要でコスト高である。石英アンプルの長さが短いと拡散源と試料の温度プロファイルを最適化することが難しく、長い石英アンプルはコスト高になる。また、この工程は自動化、省力化が出来にくい。
【0004】
本発明は半導体結晶ウエーハ(試料)に不純物を拡散する工程において省力化して再現性よく拡散できる装置を提供することを目的にしている。本発明が解決しようとする課題は、(1)半導体結晶ウエーハと拡散源を拡散装置に配置するだけで拡散できる構成にする、(2)半導体結晶ウエーハと不純物拡散源の温度を任意に制御できるようにして最適な拡散ができる構成にする、(3)半導体結晶ウエーハを急速に加熱および冷却ができる構成にする、(4)装置を小型化し、生産性の高い構成にする、ことである。本発明では特に高温で構成元素が蒸発しやすい化合物半導体結晶ウエーハ(ヘテロ接合半導体エピタキシャル結晶ウエーハを含めた総称とする)を拡散したり熱処理するために最適な装置を提供することを目的にしている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来技術の課題を解決するための手段を以下に記す。本発明の基本とする拡散装置の主要構成部を図1に示す。本発明の拡散装置は半導体結晶ウエーハと拡散源とを試料拡散部の所定の位置に配置し、これ全体を石英製の蓋で覆う構造で拡散(熱処理)することを基本としている。上記の石英製蓋は、基準面を有する部材(以下本願では単に「基準面」と呼ぶ)に載置され、基準面との接触部は全面にわたって線接触である構造と、この接触部を外部から加圧することによって拡散時の内部圧力を外部に漏らさない気密封止に近い構成にすることを特徴としている。また、上記の石英製蓋の構成は1重に限らず2重以上の構成により十分な気密性をもつ構造にすることが特徴である。本装置構成では半導体結晶ウエーハと拡散源とを試料拡散部に装着し石英製蓋でこれらを覆い試料拡散部を構成しこれで拡散の準備が完了する。この一連の作業工程が従来より大幅に省力化される。また、この工程の自動化も可能である。さらに拡散工程で加熱と冷却が急速に行えるよう加熱部は試料拡散部から可動できる構成であることも本発明の特徴である。本装置では半導体結晶ウエーハと拡散源を十分に離して配置できるので加熱部の温度プロファイルの最適化が容易に行えることも本発明の特徴である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1〜6により説明する。
【0007】
実施例1
本発明による一実施例を図1と図2により詳細に説明する。図1は本発明の基本とする拡散装置11の構成、図2は本発明の基本とする試料拡散部20の構成である。拡散装置11は主に試料拡散部10、石英製内箱2、石英製外箱1、および加熱部3から構成されている。石英製外箱1はシール9によって気密封止されており、窒素やアルゴンの不活性ガスが入口6と出口7を通って供給されている。また、ガス出口側にはガスのトラップ8を設置し漏洩した揮発性元素をここで捕獲する。この系にはガスの置換を短時間で行えるように真空排気装置が付加されている。拡散の条件(温度プロファイル、急速加熱および冷却など)の最適化と試料の出し入れを容易に行うことを目的に試料拡散部10と加熱部3の位置関係は可動機構4によって変化する。これは加熱部3を固定し試料拡散部10を可動させてもよい。図2により試料拡散部20を詳細に説明すると、被拡散試料である化合物半導体ウエーハ22が石英製試料ホルダ24にセットされ、この下部には拡散容器25に拡散源23が計量されてセットされる。化合物半導体ウエーハ22の保持には石英板などの治具を使用して石英製試料ホルダ24にセットしてもよい。上記試料と拡散源を覆うように試料拡散部20の石英製基準面26に石英製蓋21をかぶせて、これに必要な加重27を加える。加重27は石英製蓋21の自重で兼ねてもよい。この作業は窒素などの不活性雰囲気の中で行われ、ロボットにより作業の自動化も可能である。石英製蓋21の先端を楔形にして装置基準面26との接触部29は全面にわたって線接触であることが特徴である。この構成による拡散時における揮発性元素の蒸発量は上記の対策のない開管法と比べて1桁以下に抑えられることがわかりこの構成で安定した拡散が行えることを確認した。一回の拡散中、拡散源の組成変動が無視できるほど小さく、また、石英アンプル法の拡散と比較して結晶表面の外観形状は遜色がないことを確認した。また拡散条件を最適化した効果により表面の不純物濃度が高く、急峻な濃度勾配を持つ拡散特性が得られることがわかった。本発明の装置構成によって得られた特徴は(1)試料拡散部のセッテングが従来の石英アンプル法と比べて格段に容易になり工数にして約1/20に省力化され、コスト低減に寄与できる、(2)拡散源のすぐ近くで温度計測ができるので拡散の精度が向上する、(3)拡散源とウエーハの位置を十分に離せられるので最適な温度プロファイルで拡散ができる、(4)加熱部を試料拡散部から可動できるので急速な熱処理ができこれによって素子特性が向上する、(5)揮発性有害元素を含むガスを安全に処理する構成になっている、などである。
【0008】
本発明の実施例では試料拡散部の石英製蓋を重力で加圧する縦型構成を示したが、これを約90度回転した横型構成であってもよく、また、石英製基準面と石英製蓋21は材料が石英に限定されるものでなく耐熱性のよいアルミナ、SiCなどであってもよい。本拡散装置は半導体装置の製造工程における不純物拡散に適用した例を述べたが試料を高温で熱処理する工程にも広く適用できることを付言する。
【0009】
実施例2
本発明による他の実施例を図3で詳細に説明する。拡散装置の構成は実施例1で述べた内容と同一であるが、図2の試料拡散部20の構成が異なる。被拡散試料である化合物半導体ウエーハ32が石英製試料ホルダ34にセットされ、この下部には拡散容器35に拡散源33が計量されてセットされる。上記試料と拡散源を覆うように試料拡散部30の石英製基準面36に石英製蓋31−1をかぶせて、必要な加重37−1を加える。さらにこの全体を覆うように石英製蓋31−2をかぶせて、必要な加重37−2を加える。加重37は石英製蓋31の自重で兼ねられる場合には省略できる。石英製蓋31−1、31−2の基準面36とのそれぞれの接触部39−1、39−2は線接触に近い形状であることが本発明の一つの特徴である。本実施例では2重の石英製蓋によって拡散源を封止しているので1重よりも内部の気密性が高まり蒸発をより少なく抑制する効果が高まる。このため石英製蓋の構成は2重以上でさらに気密性が高まり蓋の数は規定されるものではない。
【0013】
実施例3
本発明による実施例を図4で詳細に説明する。これは本発明における試料拡散部の石英製蓋と基準面との接触部の実施例である。石英製蓋71と基準面76との接触部79は気密性の高い接合となるよう基準面76が鏡面仕上げされている。また、石英製蓋71の接触部79はより線接触にするためこの先端を楔型形状に加工されている。楔型形状の先端部は内壁側や外壁側にあってもよい。この構造は石英製蓋71の直径に比べて接触部79の面積が極端に小さいので線接触による気密性が十分に保たれる。
【0014】
実施例4
本発明による実施例を図5で詳細に説明する。これは本発明における試料拡散部の石英製蓋と基準面との接触部の実施例である。石英製蓋81と基準面86との接触部89は気密性の高い接合となるよう基準面86が鏡面仕上げされている。また、石英製蓋81先端の接触部89の断面形状は半円形(曲形)に加工されている。これは石英製蓋81の直径に比べて接触部89の面積が小さいので線接触による気密性が十分に保たれる構造である。
【0015】
実施例5
本発明による実施例を図6で詳細に説明する。これは本発明における試料拡散部の石英製蓋と基準面との接触部の実施例である。石英製蓋91と基準面96との接触部99は気密性の高い接合となるよう石英製蓋91の底面が鏡面仕上げされている。また、基準面96の先端は突起97を形成し、これが接触部99と線接触になる。基準面96の先端の突起形状は楔型や半円形(曲形)などに加工される。これは石英製蓋91の直径に比べて接触部99の面積が極端に小さいので線接触による気密性が十分に保たれる構造である。
【0016】
実施例6
本発明による拡散装置によりInP系エピタキシャル結晶表面からP型不純物元素のZnを拡散する実施例を説明する。これは半導体レーザの製造工程で使われる技術である。実施例2の図3を参照して、拡散源にはInPとZnまたはInPとZn3P2(リン化亜鉛)の化合物を計量して用いる。装置の内部に窒素を流し不活性雰囲気の中で試料と拡散源を試料拡散部の所定の位置にセットしこれに石英製蓋と加重の2重構造を用いて試料拡散部の組み立て作業が完了する。続いて実施例1の図1を参照して、石英製内箱をセットし石英製外箱をシールすることによってこれ全体を気密封止し、約10 l/minの窒素ガスを流す。加熱部は可動機構で最上部に置き、あらかじめ温度を250℃に上げておく。拡散は加熱部を試料拡散部の所定の位置に可動して、急速に熱処理して行われる。拡散の温度プロファイルはあらかじめ拡散源を250℃に保った後、拡散源を470℃、試料を520℃で20分保ち、のち急冷する手順である。この拡散条件によってInPの拡散深さは約2.5μmでInP系エピタキシャル結晶内部の不純物プロファイルには変化がなく、表面濃度:約1E20cm-3の急峻な濃度勾配の拡散層が安定にえられた。
【0017】
GaAs系エピタキシャル結晶表面へのZn拡散層の形成法も同様で、拡散源としてGaAs、AsおよびZn等が用いられ、拡散が行われる。3元以上の混晶半導体に関しても揮発性元素とZnを含む拡散源から上記の方法によって拡散がおこなわれる。
【0018】
【発明の効果】
(1)本拡散装置では石英製蓋で試料や拡散源を覆い拡散するので拡散の準備工程を著しく省力化し低コスト化ができる効果がある。
(2)本拡散装置では石英製蓋や拡散治具が繰り返し使えるので低いランニングコストで拡散できる効果がある。
(3)本拡散装置では試料と拡散源を十分離して配置することができるので最適の拡散条件の設定により従来より高性能な拡散層を形成できる効果がある。
(4)本拡散装置では自動化できる構成なので生産能力の向上と低コスト化に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本とする実施例1の拡散装置の主要構成図。
【図2】本発明の実施例1の試料拡散部の側断面図。
【図3】本発明の実施例2の試料拡散部の側断面図。
【図4】本発明の実施例3の試料拡散部の石英製蓋と基準面との接触部の一部の側断面図。
【図5】本発明の実施例4の試料拡散部の石英製蓋と基準面との接触部の一部の側断面図。
【図6】本発明の実施例5の試料拡散部の石英製蓋と基準面との接触部の一部の側断面図。
【図7】 従来の拡散法による石英アンプル製試料拡散部の側断面図。
【符号の説明】
1・・・・・石英製外箱
2・・・・・石英製内箱
3・・・・・加熱部
4・・・・・可動機構
5・・・・・熱電対
6・・・・・不活性ガス入口
7・・・・・不活性ガス出口
8・・・・・ガスのトラップ
9・・・・・シール
10、20、30・・・・・試料拡散部
11・・・・・拡散装置
21、31−1、31−2、71、81、91・・・・・石英製蓋
22、32・・・・・半導体結晶ウエーハ
23、33、103・・・・・拡散源
24、34、104・・・・・石英製試料ホルダ
26、36、76、86、96・・・・・石英製基準面
27、37−1、37−2・・・・・加重
29、39−1、39−2、79、89、99・・・・・線接触部
97・・・・・突起
101・・・・・拡散用石英アンプル
102・・・・・被拡散試料
Claims (4)
- 基準面を有する部材(以下、単に「基準面」と呼ぶ)の上に、被拡散試料と拡散源とを覆うように一個以上の蓋を載置して封止をしたのち拡散を行う試料拡散部において、
上記の蓋および基準面とが線接触で接触していることを特徴とする拡散装置。 - 上記の蓋および基準面とが線接触で接触している部分の形状は、楔形若しくは曲形、又はこれらの複合であることを特徴とする請求項1に記載の拡散装置。
- 上記の蓋が、石英ガラス、アルミナ、SiCのいずれか一つまたはこれらの複合材料から構成されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の拡散装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の拡散装置を用いて試料を熱処理する工程において、該試料を試料拡散部の所定の位置に配置する工程と、これに蓋をかぶせる工程と、蓋の外部に加熱した熱源を配置する工程と、所定の温度シーケンスで試料を熱処理する工程と、上記熱源を蓋から分離する工程とを含んだことを特徴とする試料の熱処理方法。
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JPH11150075A JPH11150075A (ja) | 1999-06-02 |
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- 1997-11-14 JP JP35194897A patent/JP4305682B2/ja not_active Expired - Lifetime
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