以下、本発明の実施形態を、建造物に設置するものとして、図面により説明する。
図3は本発明による空気調和機の第1の実施形態での冷凍サイクルを示す構成図であって、1は圧縮機、2は四方弁、3は室外熱交換器、4は絞り装置、5a,5bは室内熱交換器、6は除湿絞り装置、7は室外ファン、8は室内ファン、9は主絞り装置、10は二方弁である
同図において、この実施形態は、圧縮機1と四方弁2と室外熱交換器3と絞り装置4と室内熱交換器とが順に冷媒配管で接続されて冷凍サイクルが形成されており、特に、室内熱交換器は2つの室内熱交換器5a,5bに分割され、それら間に、この実施形態の特徴をなす除湿絞り装置6が設けられている。そして、室外熱交換器3には室外ファン7が設けられ、室内熱交換器5a,5bに共通に、室内ファン8が設けられている。
四方弁2は、冷房・除湿運転時と暖房運転時とで、この冷凍サイクルでの冷媒の流れ方向を切り換えるためのものであり、実線矢印は冷房運転時の冷媒の流れ方向を、破線矢印は暖房運転時の冷媒の流れ方向を、一点鎖線矢印は除湿運転時の冷媒の流れ方向を夫々示している。
また、絞り装置4は、暖房運転時には、室外熱交換器3で外気から効果的に吸熱が行なわれるように、また、冷房運転時には、室内熱交換器5a,5bで室内の空気から効果的に吸熱が行なわれるように、夫々冷媒を減圧する作用をなし、除湿運転時には、かかる減圧作用が生じないようにするものである。このため、絞り装置4は、主絞り装置9と二方弁10とが並列に配列されてなる構成をなしており、暖,冷房運転時には、二方弁10が閉じて冷媒が主絞り装置9を通過するようにし、除湿運転時には、二方弁10が開いて冷媒がこの二方弁10を通過するように制御される。
除湿絞り装置6は、暖,冷房運転時、開状態にあって低圧力損失の冷媒通路となり、冷媒をそのまま通過させるし、また、除湿運転時には、絞り弁として作用する。
そして、この実施形態では、暖房運転時には、室外熱交換器3が室外空気から吸熱を行なう蒸発器となるのに対し、室内熱交換器5a,5bが室内に放熱する凝縮器となり、冷房運転時には、室外熱交換器3が室外に放熱する凝縮器となるのに対し、室内熱交換器5a,5bが室内空気から吸熱する蒸発器となる。
そして、除湿運転時には、室外熱交換器3が、冷房運転と同様、凝縮器となり、除湿絞り装置6が絞り弁としての作用をすることから、上流側の室内熱交換器5aが室内空気に放熱する凝縮器となり、下流側の室内熱交換器5bが室内空気から吸熱する蒸発器となる。ここで、室内熱交換器5bが吸熱することにより、室内空気が冷却されて除湿が行なわれるが、この空気の冷却を補償するように、室内熱交換器5aで放熱が行なわれて室内空気が温められ、この冷却された空気と温められた空気とが混合されて室内に吹き出されることにより、室温を下げることなく除湿が行なわれ、快適な除湿効果が得られるのである。
図1及び図2は図3における除湿絞り装置6の第1の具体例を示す縦断面図であって、11は電磁コイル、12は電磁ガイド、13はプランジャ、14は緩衝材、15は弁棒、16はバネ、17はストッパ、18は弁体、18aは筒状部、19は切込溝、20は弁座、21は弁口、22は開放口、23,24は弁室、25,26は冷媒配管、27はテーパ面、28は冷媒絞り通路である。
同図において、弁体18は2つの弁室23,24が設けられており、除湿運転時には、弁室23が冷媒の高圧側となり、弁室24が冷媒の低圧側となる。そして、弁室23に室内熱交換器5a(図3)からの冷媒配管25が連結され、弁室24に室内熱交換器5b(図3)からの冷媒配管26が連結されている。除湿運転時には、冷媒配管25が冷媒の入口配管となって弁室23が高圧側となり、冷媒配管26が冷媒の出口配管となって弁室24が低圧側となる。この弁室23内には、弁棒15が、図面上、上下方向に移動可能に設けられている。
弁体18には、筒状部18aが一体に設けられ、その内部の、図面上、上部に電磁ガイド12が、同じく下部にストッパ17が夫々設けられ、これら間に弁棒15と一体となったプランジャ13が配置されている。このプランジャ13は筒状をなしており、この筒状部が電磁ガイド12の突出部と筒状部18aとの間に配置されている。電磁ガイド12でのプランジャ13の先端部に対向する部分に緩衝材14が設けられており、電磁ガイド12のこの緩衝材14が設けられた部分がプランジャ13に対する他方のストッパとなっている。また、このプランジャ13は、ストッパ17に固定されたバネ16によって上方、即ち、電磁ガイド12の方向に付勢されている。さらに、筒状部18aの外面側には、電磁コイル11が設けられている。
かかる構成により、電磁コイル11に通電されると、電磁ガイド12とプランジャ13との間に電磁力が発生し、この電磁力とバネ16の付勢力とがバランスした位置に、プランジャ13と弁棒15が上下に移動する。
弁室23,24の境界では、弁室23側に突出した弁座20が形成されており、弁室24は、この弁座20の部分の弁室23との境界を弁口21とし、冷媒配管26との接続部を開放口22としている。
弁棒15の先端部は、弁座20の弁口21の径よりも若干大きい外径を有する筒状をなしており、かつその先端面は、外側に傾斜したテーパ面27をなしている。勿論、この弁棒15の先端部は棒状をなしていてもよいが、その先端縁部に同様のテーパ面27が形成されている。かかるテーパ面27により、弁棒15の最先端の径は弁口21の内径(即ち、弁口21の径)よりも若干小さくなっている。
また、弁座20の弁口21側端部には、その内径側に1つ以上の切込溝19が設けられている。
かかる構成において、電磁コイル11に通電すると、電磁ガイド12とプランジャ13との間に発生する大きな電磁力により、バネ16の付勢力に抗してプランジャ13、従って、弁棒15が押し下げられ、弁棒15の先端が弁座20に接触する。このとき、図示するように、弁棒15の先端部の上記テーパ面27により、この先端部の一部が弁口21に入り込んで、かかるテーパ面27が弁座20の内径角部に押しつけられることになる。
これにより、弁口21が閉鎖され、弁室23,24とが遮断されることになるが、弁座20の設けられている切込溝19と弁棒15の先端部の上記テーパ面27とでわずかな隙間が生じ、これが冷媒絞り通路28として弁室23と弁室24とを連通する。
電磁コイル11への通電を停止すると、上記の電磁力がなくなるため、弁棒15はバネ16の付勢力によって持ち上げられ、図2に示すように、弁棒15が弁座20と離れる。これにより、弁口21が開き、冷媒絞り通路28はなくなって弁室23,24が弁口21によって連通する。
このように、除湿絞り弁の構造をなすこの具体例は、少なくとも弁室24の径D1と出口配管26の径D2が同等以上であれば、弁棒15の全開時では、弁室23から弁室24へ曲がりに伴う圧力降下による損失が生ずるのみであって、低圧力損失の冷媒通路を形成することになり、また、弁棒15の全閉時では、冷媒絞り通路28が形成されて、必要な圧力降下をもたらすことなる。
また、この具体例では、弁棒15の先端部にテーパ面27が形成され、図1に示すように、弁棒15が弁口21を閉鎖するときには、このテーパ面17が弁座20の先端の弁口21側角部に線接触に近い状態となり、この弁棒15の先端部の一部が弁座20の内部に嵌まり込むことになるから、弁棒15の先端部が弁座20によって保持されることになり、この結果、流体力による弁棒15の振動が抑制されて冷媒流動音の発生が低減することになる。
図4は弁座20での切込溝19の配列例を示す平面図であって、図2での矢印X方向からみたものである。但し、19a〜19dは切込溝であって、図1,図2に対応する部分には同一符号をつけている。
図4(a)は、弁座20に設けた切込溝19を2個とし、夫々の切込溝19a,19bを、冷媒配管25(図1)での矢印で示す冷媒の流れ方向に平行で弁座20の中心Pを通る直線Sに関して互いに対称となる位置に設けた場合を示している。
図4(b)は、同じく2個の切込溝19a,19bが上記直線S上の対向する位置に配置した場合を示している。
図4(c)は、弁座20に設けた切込溝19を4個とし、切込溝19a,19bと切込溝19c,19dとを上記直線Sに関して対称な位置に配置する。この場合には、さらに、切込溝19a,19dと切込溝19b,19cとを上記直線Sに直交して弁座20の中心Pを通る直線S’に関して対称な位置に配置したものである。
これら以外にも、1以上の任意の個数の切込溝を設けることができるが、これらを直線Sに関して対称となるように配置する。
なお、冷媒流動音の観点からは、除湿絞り装置の切込溝数は複数とした方がよい。これは、切込溝を複数個とすることにより、冷媒絞り通路も複数個形成されることになり、冷媒流がこれら冷媒絞り通路に分配されて、各冷媒絞り通路から出た冷媒噴流は運動エネルギーが小さくなり、除湿絞り装置から発生する冷媒流動音が低減する。
さらに、冷媒流動音が最も顕著な気液二相流が流入する場合、複数の冷媒絞り通路が形成されているため、冷媒絞り通路に気相(ガス冷媒)と液相(液冷媒)とが同時に流入しても、夫々の冷媒通路が確保されるため、夫々の絞り通過抵抗の違いによる大きな流量変動や圧力変動の発生を低減でき、その結果、特に、間欠的な冷媒流動音を低減することができる。
また、切込溝が複数個あると、弁棒には冷媒流による加振力が均等に加わり、流体力による弁棒の振動を抑制して冷媒流動音を低減できる。
次に、この具体例の暖房運転,冷房運転及び除湿運転時での動作を説明する。 暖,冷房運転時には、電磁コイル11への通電は行なわれず、このため、図2に示すように、弁棒15は持ち上げられた状態にあって、弁室23,24とが広い面積の弁口21で連通する。このとき、上記のように、室外熱交換器3(図3)は蒸発器として動作し、これら室内熱交換器5a,5b(図3)は凝縮器として動作する。暖房運転時には、冷媒が室内熱交換器5bから、矢印とは逆方向に、冷媒配管26,弁室24,弁口21,弁室23を通って冷媒配管25に流れ、室内熱交換器5aに送られる。また、冷房運転時には、冷媒が室内熱交換器5aから、矢印方向に、冷媒配管25,弁室23,弁口21,弁室24を通って冷媒配管26に流れ、室内熱交換器5bに送られる。このとき、上記のように、室外熱交換器3は凝縮器として動作し、これら室内熱交換器5a,5bは蒸発器として動作する。
除湿運転時には、除湿絞り弁内の弁棒15が弁座20に接触して弁口21を閉鎖し、弁座20に設けられた切込溝19と弁棒15のテーパ面27で囲まれた領域が冷媒絞り通路28として形成され、これを介して弁室23,24が連通される。このとき、冷媒は、冷房運転と同様の矢印方向に、冷媒配管25から弁室23,冷媒絞り通路28,弁室24及び冷媒配管26を通して流れ、この冷媒絞り通路28によって適正な圧力まで減圧される。その結果、弁室23が高圧側となり、弁室24が低圧側となる。そして、このときには、上記のように、室外熱交換器3が凝縮器であり、室内熱交換器5aが凝縮器(再熱器)として、また、室内熱交換器5bが蒸発器(冷却器)として動作する。
このようにして、室内熱交換器5bでは、室内空気を冷却しながら除湿を行なうが、室内熱交換器5aで室内空気を加熱することになり、従って、室温の低下を防ぎながら除湿する除湿運転を行なうことが可能となる。
なお、図1,図2に示す除湿絞り装置6が、図5に示すように、重力方向に対して傾いて設置される場合もあり得る。このような場合には、重力方向に対して傾いた除湿絞り装置6の軸線L1に対し、弁棒15の軸線L2が、弁棒15への重力の作用により、若干傾くことになる。即ち、除湿絞り装置6の軸線L1と弁棒15の軸線L2とは一致しない。かかる状態で電磁コイル11に通電し、弁棒15を弁座20の方に押し下げると、弁棒15が弁座20に片寄って接触し始めることになり、弁座20の弁口21の一部に接する状態となる。
しかしながら、弁棒15の先端部に、上記のように、テーパ面27が設けられていることにより、このテーパ面27が弁座20の弁口21に対するガイドとして作用し、弁棒15が電磁力によって押されるとともに、テーパ面27が弁口27に沿って弁座20内に導かれる。この結果、図6に示すように、弁棒15は、その軸線L2が除湿絞り装置6の軸線L1に一致する方向に姿勢が矯正され、これら軸線L1,L2が一致した状態で弁座20に押しつけられることになる。従って、弁棒15のテーパ面27は弁座20の弁口21を正しい状態で塞ぐことになり、弁室23,24は切込溝19による冷媒絞り通路28でのみ連通することになる。このようにして、この具体例は、重力方向に対して傾いて設置されても、正しく弁動作を行なうことになる。
また、図3に示した実施形態では、室外ファン7の回転数を可変とすることにより、室外熱交換器3での凝縮能力を替えることにより、あるいは圧縮機1の回転数を可変とすることにより、圧縮機1の能力を変えることにより、室内熱交換器5aでの凝縮能力、即ち、放熱量を変えて、室内ファン8による吹出し空気の温度を冷房気味から暖房気味までの広い範囲にわたって制御することが可能である。
さらに、室内熱交換器5a、5bは、室内からみて左右に並べるばかりでなく、室内からみて前後に並べ、室内ファン8により、室内空気を室内熱交換器5b側から室内熱交換器5a側に流すようにしてもよく、あるいは、室内からみて上下に並べ、室内ファン8により、室内空気を室内熱交換器5aと室内熱交換器5bとに分けて流すようにしてもよい。
いずれにしても、この実施形態では、室温の低下を防ぎながら除湿する除湿運転の特性と除湿性能は維持しつつ、さらに、除湿絞り装置6で発生する冷媒流動音の低減を図ることができる。
次に、この実施形態において、室温を下げない除湿運転及び必要除湿量の確保と冷媒流動音の低減との両立を可能とする方法について説明する。
除湿性能を向上させるには、除湿運転において、蒸発器として使用する室内熱交換器5b内の冷媒の温度、即ち、蒸発温度を下げる方法がある。また、一般に、蒸発温度を下げる方法として、圧縮機1の回転数を増す方法と除湿絞り装置6の絞り量を大きくする方法、室外ファン7の回転数を増して室外熱交換器3での風量を増やし、室外熱交換器3の放熱量を増す方法がある。
図7は圧縮機1の回転数と室内熱交換器5bでの蒸発温度との関係を示す特性図であって、特性曲線30は除湿絞り装置の除湿絞り量がある値のときの特性を示すものであり、特性曲線32はこの値よりも除湿絞り量が大きいときの特性を示すものである。いずれの場合も、圧縮機の回転数を増加させるとともに、蒸発温度は低下するが、除湿絞り量が大きくなるほど、蒸発温度が低くなる。
図8は圧縮機1の回転数と室内熱交換器5bの除湿量との関係を示す特性図であって、特性曲線35は除湿絞り装置の除湿絞り量がある値のときの特性を示すものであり、特性曲線37はこの値よりも除湿絞り量が大きいときの特性を示すものである。いずれの場合も、圧縮機の回転数を増加させるとともに、除湿量が増加し、除湿絞り量が大きくなるほど、除湿量も大きくなる。
図9は圧縮機1の回転数と冷凍サイクル内で流れる冷媒の単位時間当りの冷媒流量との関係を示す特性図であって、その特性40は、圧縮機の回転数の増加とともに、冷媒流量も増加することを示している。
図10は単位時間当りの冷媒流量とこの冷媒が持つ運動エネルギとの関係を示す特性図であって、この特性43は、冷媒流量が増すとともに、運動エネルギも増加することを示している。
図11は冷媒が持つ運動エネルギと冷媒流動音との関係を示す特性図であって、この特性46は、運動エネルギが増すとともに、冷媒流動音も大きくなることを示している。
以上の図7〜図11から、いま、蒸発温度を下げて除湿性能を高めるために、圧縮機の回転数を増すと、冷媒流量が増加して運動エネルギーが大きくなり、冷媒流動音が大きくなる。
また、蒸発温度を下げて除湿性能を高めるために、室外ファン7の回転数を増加させて室外熱交換器3での風量を増すと、冷媒の温度が下がるため、室内熱交換器5aで室内空気を加熱するための加熱量が減り、室内ファン8によって室内に吹き出される空気温度が下がる傾向があり、除湿運転を行なうと、室温が下がってしまう。
これに対し、この実施形態は、蒸発温度を下げて除湿性能を高めるために、除湿絞り装置6の除湿絞り量を大きくするものであり、以下、その効果を図7〜図12を用いて説明する。
図7において、いま、特性30の状態から除湿絞り装置6の除湿絞り量を大きくして、特性32の状態にしたとすると、同じ圧縮機1の回転数N1に対しては、蒸発温度が特性30上の点31でのB1から特性32の点33でのB2に低下する。また、同じ蒸発温度B1に保持するものとすると、特性30の点31から特性32の点34に移り、圧縮機1の回転数をN1からN2と小さくすることができる。
また、図8において、特性35の状態から除湿絞り装置6の除湿絞り量を大きくして、特性37の状態とすると、圧縮機1の同じ回転数N1に対して、室内熱交換器5bの除湿量が特性35の点36でのH1から特性37の点38でのH2と増加する。また、同じ除湿量H1を保持するものとすると、特性35の点36から特性37の点39に移り、圧縮機1の回転数をN1からN2と小さくすることができる。
一方、室内環境が決まれば、そのときに確保すべき必要除湿量は決まる。従って、図8において、上記のように、そのとき確保すべき除湿量をH1とすると、除湿絞り装置6の除湿絞り量を大きくすることにより、圧縮機1の回転数としては、N1よりも小さいN2とすることができる。
このように、圧縮機回転数を下げると、図9により、冷媒流量を減らすことになり、圧縮機の回転数がN1からN2に減少したことにより、冷媒流量は、特性40上の点41でのG1から点42でのG2に減少する。従って、図10において、運動エネルギーが特性43上で点44のE1からこれよりも小さいE2に減少し、結局、図11において、特性46上、点47から点48に移行して、冷媒流動音のレベルがP1からこれよりも小さいP2になる。
このようにして、除湿絞り装置の除湿絞り量を増加することにより、除湿絞り装置及び室内熱交換器から発生する冷媒流動音を低減することができる。
また、図12は圧縮機1の回転数と空気調和機の消費電力との関係を示す特性図であって、その特性49は、圧縮機1の回転数の増加とともに、消費電力が増加することを示している。
図12に示すように、空気調和機の運転に必要な電力量は、圧縮機の回転数が小さい程少ない。従って、上記のように、除湿絞り装置6の除湿絞り量を増加させることによって圧縮機1の回転数をN1からN2に減じることができることにより、消費電力は、特性49上を点50から点51に移行し、消費電力量はW1からW2まで低減する。
このように、除湿絞り装置6の絞り量を増加することにより、除湿能力を高めるばかりでなく、冷媒流動音と消費電力をも低減することができる。
しかし、除湿絞り装置の絞り量を大きくすることは、冷媒絞り通路の断面積を小さくすることになる。これにより、従来の除湿絞り装置では、次のような問題が生ずる。これを図13を用いて説明する。但し、50a,50bは小穴、51a,51bは浮遊物であり、図1に対応する部分には同一符号をつけている。
図13(a)において、従来の除湿絞り装置の除湿絞り弁では、弁棒52の側壁に小孔50a、50bが設けられ、図示するように、弁棒15が弁座20に当接して弁口21が閉じた状態では、これら小穴50a,50bが弁室23,24を連通する冷媒絞り通路となる。従って、冷媒は、弁室23からこれに小穴50a,50bを通って弁室24に送られるとき、減圧される。
かかる除湿絞り装置を図3における除湿絞り装置6として使用し、図13(a)に示す状態にして除湿運転を行なう場合、上記のように、室内熱交換器5bの蒸発温度を下げて除湿能力を高めるために、小穴50a,50bの径を小さくすると、冷媒に混ざって流れてくる浮遊物51a,51bがこれら小孔50a,50bにひっかかったり、堆積したりして小孔50a,50bを詰まらせてしまう。ここで、浮遊物51a,51bとしては、冷凍サイクル中のゴミやコンタミなどである。このような状態が進んで全ての小穴50a,50bが浮遊物51a,51bで塞がるようになると、除湿運転ができなくなる。
このような状態になって、その後、図13(b)に示すように、弁棒15が持ち上げられて弁口21が全開となっても、小孔50a,50bを詰まらせた浮遊物54a,54bは取り除くことができない。従って、小孔50a,50bが詰まった除湿絞り弁は絞りの役割を果たせず、冷凍サイクルを閉め切ってしまうため、除湿運転ができなくなってしまう。
これに対し、図1,図2に示した本実施形態における除湿絞り装置6では、このような問題も解消することができる。これを図14により説明する。但し、図1,図2に対応する部分には同一符号をつけている。
図14(a)において、除湿運転時では、弁棒15が弁座20に当接して弁口21が閉じて、切欠溝19a,19bによる冷媒絞り通路によって弁室23,24が連通された状態にある。このとき、除湿能率を向上させるためにこれら冷媒絞り通路を狭くすると、上記従来の除湿絞り装置と同様に、これら冷媒絞り通路に浮遊物51a,51bが引っ掛かったり、堆積したりする。
しかしながら、図14(b)に示すように、弁棒15を持ち上げると、これら浮遊物51a,51bは弁座20の上端面に単に乗った状態となり、あるいはまた、切込溝19a,19bに浮遊物51a,51bが入り込んでも、弁棒15が持ち上がった状態では、弁口21で露出した状態にあり、このため、冷媒の流れによって押し流されて除かれる。
このようにして、冷媒絞り通路での浮遊物51a,51bを弁棒15を持ち上げることによって排除することができ、このため、切込み溝19a,19bの深さを浅くして冷媒絞り通路の径を小さくすることができ、除湿能力を高めることができる。
また、図1,図2に示した本実施形態における除湿絞り装置6では、切込み溝19a,19bは弁座20の弁口21側端部に設けられているため、冷媒絞り通路に浮遊物が入り込んでも、弁棒15が弁座20にロックすることもなく、弁棒15を引き上げることができて、浮遊物による冷媒絞り通路の詰まりを容易に除去することができる。
さらに、弁座20に切込溝19を設けたことにより、弁棒15の動きにかかわらず、冷媒の流れに対する切込溝19の位置を固定することができ、これにより、冷媒絞り通路位置を所定の位置に形成することができて、冷媒流動音の発生のバラツキも小さくすることができる。冷媒の流れに対する冷媒絞り通路の位置が異なると、冷媒流動音が大きくなったり、違った音になったりして、除湿絞り装置毎に、従って、空気調和機毎に発生する騒音が異なることになる。図13に示すような弁棒15に小穴50a,50bが設けられた従来の除湿絞り装置では、弁棒15の弁座20への当接状態に応じて、冷媒の流れに対する小穴50a,50bの位置が異なり、従って、発生する冷媒流動音も異なる。これに対し、この実施形態では、冷媒流動音が最小となるような位置に冷媒絞り通路を配置することができ、従って、除湿絞り毎に発生する流動音が異なるというような問題を回避できる。
このように、図1,図2に示す除湿絞り装置を図3における除湿絞り装置6として使用することにより、冷媒絞り通路に浮遊物の詰まりのない信頼性の高い絞り装置を備えることになり、その結果、除湿絞り量の大きい、即ち、絞り径の小さな除湿絞り装置とすることができて、必要除湿量を確保するための圧縮機1の回転数を小さくすることができる。従って、この実施形態では、冷媒流動音も大幅に低減可能とし、さらに、消費電力量も低減可能として、室温の低下を防ぎつつ除湿を行なう除湿運転が可能となる。
なお、この実施形態において、室外温度24℃,室外湿度80%,室内温度24℃,室内湿度60%の条件下で実際に除湿運転をしたところ、除湿絞り装置6の絞り量を従来の3倍にすることができ、その結果、必要除湿量(510ml/h)を確保するための圧縮機1の回転数は半減し、また、消費電力量は従来の550Wから約半分の280Wになった。さらに、冷媒流量が半減することにより、運動エネルギも半減して、冷媒流動音として約4dBの低減となった。勿論、この除湿運転でも、室内への吹出空気の温度が室温よりも低下するのを防ぎつつ除湿が行なわれて、必要除湿量は確保されており、この実施形態の目的とする機能は維持されている。
図15は図3における除湿絞り装置6の第2の具体例の要部を示す縦断面図であって、15aは弁棒15の側面であり、図1,図2に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、弁棒15の先端部には、上記のようなテーパ面27が設けられておらず、先端面が弁棒15の側面15aに対して垂直な平坦面をなしている。弁棒15が電磁コイルの電磁力によって弁座20に押しつけられたときには、この弁棒15の平坦な先端面が弁座20の平坦な上端面に当接し、これによって弁座20の弁口21が閉じる。このとき、弁座20の上端部に形成されている切込溝19は、その弁室23側の端部が一部弁棒15の側面15aよりも外側にはみ出しており、このため、弁棒15が弁座20の弁口21を塞いでも、切込溝19による冷媒絞り通路28が形成されて弁室23,24を連通する。
このようにして、図1,図2に示した具体例に比べて弁棒15の構造を簡単にすることができて、弁動作を行なわせることができる。この具体例においても、弁棒15を持ち上げることにより、切込溝19に詰まった浮遊物を取り除くことができるから、従って、冷媒絞り通路28を細くすることができる。
図16(a)は図3における除湿絞り装置6の第3の具体例の要部を示す縦断面図、同図(b)は同図(a)での弁口21の部分を拡大して示す縦断面図であって、20aは座ぐり部、20bは座ぐり側面であり、図15に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図(a),(b)において、この具体例は、図15に示した第2の具体例に対し、弁座20の上端面に座ぐり部20aを設け、この座ぐり部20aに弁棒15の平坦な先端面が当接するようにしたものである。
このような座ぐり部20aを設けたことにより、弁棒15の大まかな位置決めができ、弁棒15の図面上横方向の位置ずれを少なくすることができる。
ところで、弁棒15が座ぐり部20aに嵌まり込んだとき、この座ぐり部20aの側面20bが弁棒15の先端部の側面15aと平行な場合、弁棒15の先端部の外径と座ぐり部20aの内径とがあまり違わないと、弁棒15の先端部の外周部が切込溝19の大部分に入り込んで冷媒絞り通路28の大部分を塞いでしまい、弁棒15が冷媒絞り通路28の絞りとなってしまうし、また、この座ぐり部20aの側面20bと弁棒15の側面15aとの間にも浮遊物が詰まって弁棒15が弁座20にロックされて抜き出せないようになるおそれもある。これを防止するために、座ぐり部20aの側面20bと弁棒15の側面15aとの間に充分な距離Lがあるように、座ぐり部20aの内径を弁棒15の先端部の直径よりも充分大きくする。勿論、この場合、座ぐり部20aの直径をあまり大きくすると、弁棒15が座ぐり部20a内で一方に大きく片寄る位置ずれをしたとき、この座ぐり部20aの切込溝19が設けられていない部分で大きな隙間が生じて、これにより弁室23,24が連通してしまう。このため、座ぐり部20aの内径も上限がある。
このように、図16で示した具体例は、切込溝19を弁座20の座ぐり部20a内から弁座20の内面に伸延するようにしている。
これに対し、図17に示す除湿絞り装置6の第4の具体例は、座ぐり部20aから弁座20の上端面まで、弁座20の上端面にいくほど座ぐり面が広くなるように、座ぐり部20aの側面20cがテーパ傾斜して、座ぐり部20aが弁座20の上端面側に広がった形状となっている。つまり、弁棒15の先端部の側面15aと座ぐり部20aの側面20cとの間隔が、弁座20の上端面に向かって広がるように形成されている。なお、切込溝19は、弁座20の座ぐり部20a内から弁座20の内面に伸延するようにしている。
このために、この側面20cと弁棒15の側面15aとの間に浮遊物が詰まっても、弁棒15を座ぐり部20a内から持ち上げるときには、弁棒15の上昇とともに浮遊物が取れ易くなる。このため、弁棒15は弁座20にロックされることはない。
図18は図3における除湿絞り装置6の第5の具体例の要部を示す縦断面図であって、60は切込溝であり、図1,図2に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、弁棒15の先端部は、図1に示した第1の具体例と同様、テーパ面が設けられているが、さらに、このテーパ面に1個以上の切込溝60が設けられている。即ち、この具体例では、図1に示した第1の具体例のように弁座20側に切込溝を設ける代わりに、弁棒15側に切込溝60を設けたものであり、図1するように弁棒15が弁座20に当接したときには、弁棒15の先端の一部が弁座20の内径側には入り込むとともに、切込溝60と弁座20とによって弁室23,24を連通する冷媒絞り通路が形成される。
この具体例においても、先の第1の具体例と同様、弁棒15の先端部が弁座20で保持されて、冷媒の流体力による弁棒15の振動が抑圧されて冷媒流動音の発生を低減できるし、除湿絞り装置6が全体として傾いて設置されても、弁棒15は正しい姿勢で弁座20との当接が可能となるし、さらには、図18に示す状態で冷媒絞り通路に浮遊物が詰まっても、弁棒15を持ち上げることにより、これを取り除くことができるから、この冷媒絞り通路を狭くして除湿能力を高めることもできる。
図19は図3における除湿絞り装置6の第6の具体例の要部を示す縦断面図であって、61は切込溝、62は空間であり、図1,図2に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、弁棒15の先端部は、図1で説明したように、筒状をなしており、この筒状部の先端に、外面からこの筒状部内の空間62に達する切欠溝61を1個以上設けている。この空間62は弁室24に開放されている。この切欠溝61はこの筒状部の中心軸に対して直交するように形成されている。これ以外の構成は、図18に示した具体例と同様である。
図示するように、弁棒15が弁座20に当接した状態にあるときには、弁棒15の先端部の空間62が弁室24と一体となり、切込溝61が弁室23と空間62とを連通する冷媒絞り通路28を形成する。
この具体例も、切込溝61を除いて図18に示した具体例と同様の構成をなしているので、図18に示した具体例と同様の効果が得られる。
ところで、この具体例では、先に説明したように、電磁力とバネ16の付勢力とによって弁棒15が上下に移動する構成となっているので、弁棒15は、本来その中心軸を中心とした回転をせずに上下に動くものである。
しかし、いま、図18において、弁棒15に2個の切込溝60が設けられ(夫々を切込溝60a,60bとする)、図18で矢印Y−Y方向から弁棒15をみた図20(a)に示すように、矢印で示す冷媒の流れ方向に対して、これに直交する対称な位置に配置された場合でも、あるいは、弁棒15に3個の切込溝60が設けられ(夫々を切込溝60a,60b,60cとする)、図20(b)に示すように、矢印で示す冷媒の流れ方向に対して、対称な位置に配置された場合でも、冷媒の流体力の作用や電磁力のバランスにより、弁棒15の動きに回転を伴う場合が生じることがある。このような場合には、弁棒15に設けられた切込溝60も弁棒15とともに回転してしまう可能性がある。例えば、図20(a)や図20(b)に示す切込溝60の配置の場合には、切込溝60a,60bや切込溝60a,60b,60cの位置が最大で45゜程回転してしまう可能性がある。このような回転が生ずると、冷媒絞り通路の位置が変化することになり、除湿絞り装置6内での冷媒流動が変わって冷媒流動音にバラツキが生じることになる。
以上のことは、図19に示した具体例についても同様である。
図21はかかる弁棒15の回転を防止できるようにした図3における除湿絞り装置6の第7の具体例を示す縦断面図であって、63はガイド溝、64はガイドであり、図18に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。 同図において、弁棒15にガイド溝63が設けられ、また、弁体18に取り付けたストッパ17にガイド64が設けられ、これらガイド溝63にガイド34が嵌め込まれている。これにより、弁棒15はその中心軸を中心とする回転を行なうことができず、この結果、弁棒15に切込溝60を設けた場合でも、弁棒15が弁座20に当接したときに切込溝60によって形成される冷媒絞り通路は、その位置が常に固定されることになり、発生する冷媒流動音が安定する。
これは、図19に示した具体例に対しても同様である。
なお、以上説明した除湿絞り装置6の具体例では、例えば、図2から明らかなように、冷媒流れの中に弁棒15が配置されるため、冷媒流は弁棒15にぶつかって二手に分かれ、弁口21に設けられている切込溝19から冷媒絞り通路28に流入する。従って、図20(a)において、直線Sに関して対称の位置に切込溝19a,19bを配置することにより、弁棒15に加わる流体力が均等になり、弁棒15の振動を押さえて冷媒流動音を低減することができる。
図18,図19及び図21に示した具体例において、弁棒15に設けられた切込溝60,61の配置は、先の図1,図2で説明した具体例と同様に、流れ込む冷媒の流れ方向に平行な上記直線Sに関して対称となるように配置する。図20(a),(b)はその例を示したものでもある。
また、図19に示した具体例に、さらに、ガイド溝63,ガイド64を設けた図21に示す具体例において、切込溝61の形状としては、図22(a)に示すように、溝幅が一定の断面が正方形状の溝としてもよいし、図22(b)に示すように、溝底になるに従って溝幅が狭くなる断面が台形状の溝としてもよい。この場合には、切込溝61に浮遊物(ゴミやコンタミなど)が付着しても、冷媒の流れによって取り除き易くなる。なお、切込溝の形状としては、上記のもののみに限られるものではなく、V字形状(ノッチ形状),半円筒形状,矩形形状など必要に応じて任意の形状とすることができる。
なお、図15に示した具体例において、図21に示したガイド溝63とガイド64とからなるガイド機構を、弁棒15の外周に2個所以上設けるようにすることにより、弁座20の半径方向に対する弁棒15の位置ずれを低減することができる。
図23は図3に示した実施形態での除湿絞り装置6の制御システムを示す図であって、70はコントローラ、71は圧縮機1の回転数検出制御装置、72は室外熱交換器3の吹出空気温度検出装置、73は室外熱交換器3の吸込空気温度検出装置、74は室外ファン7の回転数検出制御装置、75は室内熱交換器5a,5bの吹出空気温湿度検出装置、76a,76bは夫々室内熱交換器5a,5bの吸込空気温湿度検出装置、77は蒸発温度もしくは除湿絞り装置6の下流側の温度検出装置、78は室内ファン8の回転数検出制御装置であり、図3に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
この制御システムでは、除湿絞り装置6での上記の浮遊物の除去制御も行なうものである。上記の切込溝によって形成される冷媒絞り通路に浮遊物が詰まることは、絞り量が大きくなることと同じであるから、先に図7で説明したように、特性線が下がって蒸発温度の低下をきたすことになる。また、蒸発温度が下がることにより、空気調和機の冷却能力も大きくなり、室内熱交換器からの吹出し空気の温度も下がる。さらに、除湿量も大きくなる。
そこで、図23において、室内熱交換器5bでの蒸発温度または除湿絞り装置6の下流側での冷媒配管の温度(ほぼ冷媒の温度に等しい)や室内熱交換器5a,5bからの吹出空気の温度、室内熱交換器5a,5bの吸込空気の温湿度と吹出空気の温湿度を検出し、その値で持って浮遊物による冷媒絞り通路の目詰まりの有無を判定することができる。
ここで、コントローラ70は、圧縮機1の回転数を検出し、また、コントローラ70からの制御信号によってこの回転数を制御する回転数検出制御装置71と、室外熱交換器3の吹出空気の温度を検出する吹出空気温度検出装置72と、室外熱交換器3の吸込空気の温度を検出する吸込空気温度検出装置73と、室外ファン7の回転数を検出し、また、コントローラ70からの制御信号によってこの回転数を制御する回転数検出制御装置74と、室内熱交換器5a,5bの吹出空気の温度及び湿度を検出する吹出空気温湿度検出装置75と、室内熱交換器5aの吸込空気の温度及び湿度を検出する吸込空気温湿度検出装置76aと、室内熱交換器5bの吸込空気の温度及び湿度を検出する吸込空気温湿度検出装置76bと、室内熱交換器5bでの蒸発温度もしくは除湿絞り装置6の下流側の温度を検出する温度検出装置77と、室内ファン8の回転数を検出し、また、コントローラ70からの制御信号によってこの回転数を制御する回転数検出制御装置78とを備えている。
コントローラ70は、回転数検出制御装置71や回転数検出制御装置74,78が検出した回転数情報、吹出空気温度検出装置72や吸込空気温度検出装置73,温度検出装置77が検出した温度情報、吹出空気温湿度検出装置75や吸込空気温湿度検出装置76a,吸込空気温湿度検出装置76bが検出した温度,湿度情報を夫々取り込んで記憶処理判断し、この処理結果に応じてこれら圧縮機1や室外ファン7,室内ファン8などを制御するが、除湿絞り装置6での電磁コイル11の通電制御も行なう。
なお、圧縮機1の回転数検出制御装置71や室外ファン7の回転数検出制御装置74,室内ファン8の回転数検出制御機器78は、コントローラ70内に組み込まれていてもよい。また、これらの回転数を検出する方法としては、モータの回転数を測定する方法,そのモータの電圧値や電流値を測定する方法など何れの方法を用いてもよい。さらに、これらの回転数を制御する方法としては、モータの電流の周波数や電圧値,電流値を可変させる方法など何れの方法を用いてもよい。さらに、空気温度を検出する方法としては、サーミスタや熱電対などを用いてもよいし、空気湿度を検出する方法としては、湿度センサを用いてもよい。
図24は除湿絞り装置6の冷媒絞り通路に浮遊物が詰まった場合の空気調和機の状態の変化と運転制御とを示すタイミング図である。
ここでは、冷媒絞り通路の詰まりを判断する情報量として室内熱交換器5bでの蒸発温度(これは、図23における温度検出装置77が検出した温度情報で代替することもできる)を用い、空気調和機のサイクル運転制御対象として圧縮機1の運転と除湿絞り装置6での除湿絞り弁の開閉を用いている。
いま、図1及び図2に示す除湿絞り装置6を例にして説明すると、図23及び図24において、冷媒絞り通路28に浮遊物が詰まる前は、蒸発温度はほぼ一定値T0を示している(時刻S〜S1の期間)。冷媒絞り通路28に浮遊物が堆積したりして詰まると、絞り量が大きくなるため、蒸発温度が下がる(時刻S1〜S2の期間ΔS0)。このとき、適正な蒸発温度T0と低下した蒸発温度T1との差ΔT(蒸発温度降下量)、もしくは時刻S1〜S2の期間ΔS0での蒸発温度の時間変化率(=ΔT/ΔS0)を検出することにより、浮遊物の堆積,詰まりを判断することができる。
ここで、時刻S2で冷媒絞り通路が詰まったと判断すると、圧縮機1の運転を停止させる。このとき、除湿絞り装置6の除湿絞り弁の高圧側(例えば、弁室23側)と低圧側(例えば、弁室24側)とでは、冷媒の圧力差が存在しているため、弁棒15を弁座20から離して絞り弁を開けることが難しい。圧力差が大きいほど、弁口21を閉じた弁棒15を持ち上げるためにバネ16のバネ力が大きいことが必要である。
そこで、この実施形態では、除湿絞り弁の前後の差圧をなくしてから弁棒15を開けるようにするために、圧縮機1の運転を止めて(時刻S2)から時間ΔS1後の時刻S3に除湿絞り弁を開ける。除湿絞り弁でのバネ16のバネ力が充分に大きい場合には、この遅れ時間ΔS1を短くてもよいし、また、設けなくともよい。
時刻S3で除湿絞り弁が開いてから時刻S4までの期間ΔS2は、冷凍サイクル全体の圧力バランスをとるための期間であって、四方弁2の切替えなどに要する期間であり、必要に応じて設定すればよい。この期間ΔS2経過後、次の時刻S4〜S5の期間ΔS3の間、除湿絞り弁が開いた状態で圧縮機1を運転開始させ、除湿絞り弁の弁口21に堆積して詰まった浮遊物を流し取り、圧縮機1の吸込み側に設けられているストレーナで捕集する。その後、電磁コイル11に通電して弁棒10を弁座20に当接させ、除湿絞り弁を閉じさせて除湿運転を再開する。
図25は図1に示した第1の実施形態の除湿運転時での図23におけるコントローラの制御動作の一具体例を示すフローチャートである。
この具体例は、蒸発温度の変化を検出して除湿絞り装置6での冷媒絞り通路の詰まりを検出するものであるが、蒸発温度が変化する要因としては、この冷媒絞り通路の目詰まりばかりでなく、ユーザが設定室内温度や室内湿度を変更した場合や室内外の空気温度(空気負荷条件)が急激に変化した場合にも生じる。これは、設定温湿度や空気負荷条件に応じて圧縮機1の回転数や室内外ファン8,7の回転数が変更する場合があるからである。
そこで、この具体例では、図25において、蒸発温度の変化を検出したとき、まず、圧縮機1の回転数が変更されたかどうか(ステップ80)、室外ファン7の回転数が変更されたかどうか(ステップ81)、室内ファン8の回転数が変更されたかどうか(ステップ82)を夫々判定し、それらのいずれかが変化したときには、蒸発温度の変化がそれによって生じたものとする。なお、一般に、除湿運転時の条件下では、室内外の空気負荷条件が急激に変化することは少ないので、必要に応じてこれらの情報は検出すればよい。
これら回転数のいずれも変更されずに蒸発温度が変化し、かつ検出している蒸発温度が急激に低下したときには、この蒸発温度の降下量を検出して予め設定されている規定量α以上かどうか判断し(ステップ83)、この規定値α以上であれば、除湿絞り装置6がゴミ詰まりしているものと考えられるので、図24で説明した動作を行なう。
即ち、まず、圧縮機1を停止させる(ステップ84)。それ以外は継続して除湿運転する。このとき、蒸発温度の降下量を用いるのは、蒸発温度は空気負荷条件やユーザの設定空気温湿度などの組み合わせに応じた空気調和機の運転で生じるため、蒸発温度の絶対値を用いて閾値とすることが困難なためである。圧縮機1が稼働中で冷媒が流れていると、除湿絞り装置6においては、流体力によって弁棒15が弁座20に押しつけられているため、弁棒15を開くには、大きな力を要する。従って、圧縮機1が止まってから除湿絞り弁前後の圧力差が小さく期間ΔS1の経過を待って、弁棒15を持ち上げ、除湿絞り弁を開ける(ステップ85)。続いて、冷凍サイクル内の圧力バランスが取れた期間ΔS2後、再度圧縮機1を稼働させて(ステップ86)冷凍サイクル内で冷媒を循環させ、除湿絞り弁の弁棒15及び弁口21の切込溝19に付着しているゴミを流す。このゴミは冷凍サイクル内を流れ、圧縮機1の入口に設けられているストレーナ内のメッシュで捕獲される。充分に冷媒を循環させた期間ΔS3後、除湿絞り弁で弁棒15を弁座20に当接させて弁口21を閉め(ステップ87)、除湿運転を再開する。
図26は図1に示した第1の実施形態の除湿運転時での図23におけるコントローラ70の制御動作の他の具体例を示すフローチャートである。
この具体例は、除湿絞り装置6での浮遊物による詰まりの判定のために、蒸発温度の降下量の代わりに、蒸発温度の勾配、即ち、蒸発温度の時間変化率を用いたものである。図26において、この判定がステップ88で行なわれるものであり、それ以外の制御処理は図25と同様である。
このステップ88では、検出している蒸発温度が急激に下がり、その時間変化率を検出して予め設定されている規定量βと比較し、この時間変化率が規定値β以上であるとき、除湿絞り装置6が目詰まりしたと判断し、ステップ84以下の制御動作に進む。
図27は図3に示した第1の実施形態の除湿運転時での図23におけるコントローラ70の制御動作のさらに他の具体例を示すフローチャートである。
この具体例は、除湿絞り装置6での浮遊物による詰まりの判定のために、蒸発温度の降下量の代わりに、室内熱交換器の吹出空気温度の降下量を用いるものである。図27において、この判定がステップ90で行なわれるものであり、それ以外の制御処理は図25と同様である。
但し、この場合、室内熱交換器の吸込空気の温度を検出し、これが変化せずにほぼ一定に維持されているときに(ステップ89)、検出している室内熱交換器の吹出空気の温度が急激に下がり、その検出した降下量が予め設定されている規定量γ以上のとき(ステップ90)、除湿絞り装置6がゴミ詰まりしたと判定してステップ84以下の制御処理に進む。
図28は図3に示した第1の実施形態の除湿運転時での図23におけるコントローラ70の制御動作のさらに他の具体例を示すフローチャートである。
この具体例は、除湿絞り装置6での浮遊物による詰まりの判定のために、室内熱交換器の吹出空気の温度の降下量の代わりに、室内熱交換器の吹出空気の温度の勾配、即ち、室内吹出空気温度の時間変化率を用いた場合である。図28において、この判定がステップ91で行なわれるものであり、それ以外の制御処理は図27と同様である。
この場合も、室内熱交換器の吸込空気の温度を検出し、それがほぼ一定で、変化していないとき(ステップ89)、検出している室内熱交換器の吹出空気の温度が急激に下がり、その時間変化率が予め設定されている規定量δ以上であれば(ステップ91)、除湿絞り装置6がゴミ詰まりしていると判定し、ステップ84からの制御動作に進む。
なお、コンタミのように、時間的に徐々に堆積される浮遊物に関しては、降下量と時間変化率の両方を組み合わせるとよい。
また、これら蒸発温度や室内熱交換器の吹出空気の温度の他に、室内熱交換器の吸込空気や吹出空気の温度と湿度を検出し、除湿量の上昇量または勾配(時間変化率)を用いても、同様な制御が可能である。
図29は本発明による空気調和機の第2の実施形態の冷凍サイクルを示す構成図であって、100は膨張弁であり、図3に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
この第2の実施形態は、図29に示すように、図3に示した第1の実施形態と同様の構成の冷凍サイクルを有するものであるが、図3での冷房,暖房運転時用の絞り装置4の代わりに、図1,図2,図18,図19,図21で示した除湿絞り装置6と同様の構成の絞り弁を備えた膨張弁100として用いたものである。 この膨張弁100としては、冷,暖房運転時では、絞り作用を有し、除湿運転時では、ほとんど圧力損失がないようにするものであり、上記の除湿絞り弁を備えることにより、図3に示した絞り装置4よりも構成が簡略化されて部品点数を少なくすることができ、しかも、冷凍サイクルの機能としては図3に示したものと同等である。
図30は本発明による空気調和機の第3の実施形態での冷凍サイクルを示す構成図であって、5は室内熱交換器、101は膨張弁であり、図3に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
この実施形態は、図30に示すように、圧縮機1と暖房運転と冷房運転とで冷媒の流れ方向を切り替える四方弁2と室外熱交換器3と室内熱交換器5とが冷媒配管で接続され、室外熱交換器3に室外ファン7が、室内熱交換器5に室内ファン8が夫々設けられて、従来の冷凍サイクルと同様の構成をなしているが、室外熱交換器3と室内熱交換器5との間に設けられる減圧器として、複数段に冷媒の絞り量を切り替えることができる膨張弁101が用いられる。
図31及び図32は図30における膨張弁101の一具体例を示す縦断面図であって、24’は弁室であり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
図31は膨張弁101が閉じた状態を示すものである。同図において、図1に示した除湿絞り装置6と同様に、弁棒15の先端部にテーパ面が形成され、また、弁座20に切込溝19が設けられており、弁棒15が弁座20に当接することにより、弁室23,24’間が遮断され、切込溝19と弁棒15の先端のテーパ面とで形成される冷媒絞り通路28を介してこれら弁室23,24’が連通する。したがって、この場合の冷媒絞り量は、冷媒絞り通路28によって決まる。
ここで、除湿絞り装置6の先に示した具体例では、例えば、図1,図2で示すように、除湿運転時に低圧側となる弁室24の径D1とこれに接続される冷媒配管26との径D2とを等しくしたが、この具体例では、図31に示すように、弁室24’の径D3を冷媒配管26の径D2よりも小さくしている。従って、この弁棒15は、先の除湿絞り装置6での弁棒15に比べ、そのテーパ面が径D3の弁室24’に一部は入り込むことができるように、先細となっている。
そこで、電磁コイル11に通電を解除して弁棒15を上昇させ、図32に示すように、弁室23,24’が直接連通するが、このとき、弁室24’の径D3が冷媒配管26の径D2よりも小さいために、この弁室24’で冷媒が絞られることになる。
このように、この膨張弁101では、弁が閉じても、また、開いても、冷媒は絞られることになる。しかし、弁室24’の径D3と図31の状態で形成される冷媒絞り通路28の径(この場合、複数の冷媒絞り通路28が形成されるときには、それらの断面積の合計に対する径)とは異なるから、弁が開いたときと閉じたときとで冷媒の絞り量が異なることになる。従って、膨張弁101は冷媒絞り量を2段に切り替えることができる。
そこで、かかる機能を持つ膨張弁101を用いる図30に示す実施形態では、従来のキャピラリーチューブのような1つの固定絞りを有する空気調和機よりも運転範囲が拡大できる。しかも、膨張弁101は、図31,図32に示したように、基本構成としては、先の除湿絞り装置6と同様の構成をなしているから、ゴミ詰まりなどもなくて信頼性も高いし、また、部品点数も少なくてすむことになる。
なお、膨張弁101においても、図31に示す状態では、冷媒絞り通路28に浮遊物が詰まる場合もあり得るが、先の除湿絞り装置6での制御と同様にして、この浮遊物を取り除くことができることは明らかである。
また、膨張弁101での切込溝を弁棒に設けるか、弁座に設けるかや、その形状,配置については、先の除湿絞り装置6の場合と同様である。
図33は本発明による空気調和機の第4の実施形態の冷凍サイクルを示す構成図であって、図30に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
この実施形態は、図33に示すように、四方弁を除いて冷媒の流れを1方向のみとし、冷房または暖房運転のいずれか一方ができるようにしたものであり、この場合においても、図31,図32で説明した膨張弁101を用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態にのみ限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、除湿絞り装置6や膨張弁101での弁棒15の駆動手段として、電磁コイル11や電磁ガイド12,バネ16などで構成されたものとしたが、モータを使用したり、機械的に駆動されるものを用いたりしてもよいし、感温筒を用いた圧力制御に適用してよく、駆動手段については、種々の構成のものを適用してもよく、同様な効果が得られる。
また、これまでは、冷房,暖房,除湿の3つの運転状態ができる冷凍サイクルについて説明したが、これに限るものではなく、他の冷凍サイクルについても適用することができる。例えば、図3や図29に示す冷凍サイクルにおいて、四方弁2を設けない冷房運転と冷房サイクルでの除湿運転が可能な冷凍サイクル、即ち、室内熱交換器5b,圧縮機1及び室外熱交換器3が直列になるように接続した場合でも、本発明を適用することにより、除湿運転において、室温を下げずにかつ必要除湿量を確保しつつ、さらに冷媒流動音の小さい空気調和機を構成することができる。
さらに、図3及び図29に示す冷凍サイクルにおいて、四方弁2を設けない暖房運転と暖房サイクルでの除湿運転が可能な冷凍サイクル、即ち、室外熱交換器3,圧縮機1及び室内熱交換器5bが直列になるように接続した場合でも、本発明を適用することにより、除湿運転において、同様に、室温を下げずにかつ必要除湿量を確保しつつ、さらに冷媒流動音の小さい空気調和機を構成することができる。
なお、図3及び図29に示す冷凍サイクルにおいて、アキュムレータを圧縮機1の吸入側(室内熱交換器5bと圧縮機1との間)に設けてもよく、使用する圧縮機1の種類あるいは主絞り装置の種類や制御方法によっては、アキュムレータ付きの冷凍サイクルの構成とすることができる。
さらにまた、冷凍サイクル内を流れる冷媒の種類としては、空気調和機で一般的に使用されているHCFC22などの単一冷媒,オゾン層破壊や地球温暖化の点からHCFC22に代わる代替冷媒の1つである混合冷媒を使用することができる。
例えば、代替冷媒の1つであるHFC系冷媒を使用する場合、これが塩素原子を有しないため、極性を強く持っている。従って、使用される冷凍機油も、HFC系冷媒と溶解する極性をもつ冷凍機油が使用される。しかし、空気調和機の製造工程や現地での設置において、冷凍サイクル内にコンタミなどの不純物が残留する。コンタミの多くは非極性物質である。また、圧縮機内部の高温部などで反応性の高い不純物や冷凍機油に含まれている添加物が反応し、非極性物質であるスラッジを形成する。これらの非極性物質が液冷媒中に析出し、冷凍サイクル内で堆積する。これは、特に、絞りなどの狭い冷媒絞り通路で堆積しやすい。また、一部の混合冷媒のように、従来使用されている冷媒の圧力よりも使用圧力が大きいものもある。このとき、圧力変動も大きくなるので、冷媒流動音の発生レベルも大きくなることが考えられる。
これらの何れの場合においても、本発明を適用することにより、冷媒絞り通路の詰まりも解決でき、その結果、必要冷媒流量を少なくできるため、冷媒流動音も低減された除湿運転や冷暖房運転が可能となる。
さらにまた、上記実施形態では、建屋の空気調和機を想定して説明したが、これに限らず、除湿運転が必要な他の用途の装置にも適用可能である。このような場合には、一般に、熱交換器が室内あるいは室外で用いられるとは限られず、この場合には、図3などにおける室内熱交換器5,5a,5bが利用側熱交換器となり、室外熱交換器3が熱源側熱交換器となり、室内ファン8が利用側ファン,室外ファン7が熱源側ファンとなる。
さらにまた、圧縮機1の種類も、一定速回転機のものであってもよいし、また、インバータによる回転数可変機であってもよく、いずれの場合も、上記と同様の効果が得られる。
以上のように、室内熱交換器(利用側熱交換器)を二分割してその間に除湿運転時に使用する除湿絞り装置を設け、除湿運転時、利用側熱交換器の一方を蒸発器、他方を凝縮器として冷凍サイクルにより空気の冷却・除湿及び加熱を行なう冷凍サイクルにおいて、除湿絞り装置に対して、弁棒と弁座とが接触したときのみ、弁棒もしくは弁座に設けられた切込溝と弁棒もしくは弁座に囲まれた領域が冷媒絞り通路となる構造とすることにより、冷媒絞り量を大きくするために絞り径を小さくしても、冷媒絞り通路の詰まりなどの発生を防ぐことができ、その結果、冷媒絞り量を大きくできて、室温が下がるのを防ぎつつ必要除湿量を確保するために必要な冷媒流量を低減でき、従って、冷媒流動音も低減され、さらに、圧縮機の回転数が小さくて済むため、除湿運転に必要な消費電力量も低減できる。
さらに、ヒートポンプ空気調和機や冷房専用空気調和機として、2段階の絞りの膨張弁を有するため、キャピラリーチューブのような1つの固定絞りの絞り装置を有する空気調和機よりも運転範囲が拡大でき、さらに、絞り弁にゴミ詰まりなどもなく信頼性も高く、しかも、部品点数が少ないため、低価格な空気調和機を提供することが出来る。
以上説明したように、室内熱交換器(利用側熱交換器)を二分割してその間に除湿運転時に使用する除湿絞り装置を設け、除湿運転時に利用側熱交換器の一方を蒸発器、他方を凝縮器として冷凍サイクルにより空気の冷却・除湿及び加熱を行なう冷凍サイクルにおいて、除湿絞り装置に対して、弁口と開放口とを結ぶ冷媒通路に切込溝を設けることにより、弁全開時には、圧力損失の冷媒通路として、また、弁全閉時には、切込溝が弁棒によって仕切られて、各々独立した冷媒絞り通路として形成される構造の除湿絞り弁としたため、除湿性能向上のために、冷媒絞り量を大きくした場合においても、即ち、絞り径を小さくした場合においても、弁を全開にすることで絞りの形成を解除でき、冷媒絞り通路の詰まりを防ぐことが可能となる。
また、冷媒絞り量を大きくして蒸発温度を下げられることにより、必要除湿量を確保するのに必要な冷媒循環量を少なくすることができ、従って、冷媒流の運動エネルギを低減できて、冷媒流動音の低減が可能である。
さらに、冷媒循環量が少なくてすむため、圧縮機の回転数を低減することができ、従って、空気調和機を稼働させるに必要な消費電力量をも低減できる。
以上のことからして、冷房・暖房性能を低下させることもなく、かつ冷媒流動音も小さくして、さらに、消費電力量も少ない運転で、室温を下げずに湿度を下げることができる空気調和機を提供できて、快適な除湿運転を行なうことができる。