JP3982557B2 - 空気調和機 - Google Patents

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Description

本発明は、空気調和機に関する。
特開平10−185343号公報(特許文献1)に、インジェクションを行う冷凍サイクルにおいて、気液分離器内の圧力である中間圧力を何らかにより測定し目標圧力にこの測定された圧力がなるように、気液分離器の配管前後に設けられた膨張弁のうち下流側にある膨張弁の開度を制御するようにしている。また、インジェクション回路を流れる中間ガス冷媒の最大流量に対応する中間圧力又は中間温度になるように、主冷媒回路の下流側膨張弁を制御する例が見られる。さらに、中間圧力を算出するために、気液分離器の出口温度を検出し、これと圧縮機の回転数によりて中間圧力を算出することが記載されている。
特開平10−185343号公報
上記従来技術では、下流側膨張弁の制御を行うために、気液分離器に温度センサなどを設ける必要がある。中間圧力を気液分離器温度によって制御する場合、気液分離器温度を正確に検出できれば、下流側膨張弁を適正に制御できるが、気液分離器の出口温度の変化量に対して中間圧力の変化量は相当大きいので、温度センサの絶対値に対する精度及び分解能が制御量にきいてきてしまう。気液分離器温度が1℃と異なると性能が数パーセント変わってしまい、このため、高い精度の高価な温度センサが必要である。実際にはこのように高い精度で気液分離器温度を検出することは困難なので、下流側膨張弁を適正に制御できないという問題点があった。
本発明の目的は、下流側膨張弁を適正に制御することにより、インジェクションによる性能向上の効果を最大限に発揮させることにある。
本発明の他の目的は、液インジェクションが起こりやすい条件ではインジェクションを止めることにより、液インジェクションが生じることによる性能低下を防止することにある。
記の目的は、
圧縮機と、室外熱交換器と、開度の調節が可能な第1の絞り装置と、気液分離器と、開度の調節が可能な第2の絞り装置と、室内熱交換器とを順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記気液分離器より前記圧縮機に冷媒を供給するインジェクション配管を備えた空気調和機において、
圧縮機回転数を検出する手段と、室内吸込み空気温度を検出する手段と、外気温度を検出する手段と、検出された圧縮機回転数と室内温度と外気温度に応じて前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞り装置の絞り量を制御する手段とを備え、
冷房運転時、同じ圧縮機回転数、同じ外気温度のときは、室内温度が高いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開き、同じ圧縮機回転数、同じ室内温度のときは、外気温度が低いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開く制御を行い、
暖房運転時、同じ圧縮機回転数、同じ外気温度のときは、室内温度が低いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開き、同じ圧縮機回転数、同じ室内温度のときは、外気温度が高いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開く制御を行うことにより達成される。
また上記目的は、圧縮機と、室外熱交換器と、開度の調節が可能な第1の絞り装置と、気液分離器と、開度の調節が可能な第2の絞り装置と、室内熱交換器とを順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記気液分離器より前記圧縮機に冷媒を供給するインジェクション配管を備えた空気調和機において、圧縮機回転数を検出する手段と、圧縮機吐出冷媒温度を検出する手段と、圧縮機吸入冷媒温度を検出する手段と、外気温度を検出する手段とを備え、圧縮機吐出冷媒温度が圧縮機回転数と外気温度の両方または圧縮機回転数のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上低く、圧縮機吸入冷媒温度が圧縮機回転数と外気温度の両方又は圧縮機回転数のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上高い場合に、前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを所定量開く制御を行うことにより達成される。
また上記目的は、圧縮機と、室外熱交換器と、開度の調節が可能な第1の絞り装置と、気液分離器と、開度の調節が可能な第2の絞り装置と、室内熱交換器とを順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記気液分離器より前記圧縮機に冷媒を供給するインジェクション配管を備えた空気調和機において、圧縮機回転数を検出する手段と、圧縮機吐出冷媒温度を検出する手段と、圧縮機吸入冷媒温度を検出する手段と、室外熱交換器温度を検出する手段とを備え、圧縮機吐出冷媒温度が圧縮機回転数と外気温度の両方又は圧縮機回転数のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上低く、圧縮機吸入冷媒温度が室外熱交換器温度と圧縮機回転数の両方又は室外熱交換器温度のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上高い場合に、前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを所定量開く制御を行うことにより達成される。
また上記目的は、圧縮機吐出冷媒温度の替わりに圧縮機頭部のチャンバ表面温度を検出するものであることにより達成される。
また上記目的は、圧縮機吸入冷媒温度の替わりに圧縮機吸入部に設けたアキュムレータの表面温度を検出することにより達成される。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、ガスインジェクションによる性能向上の効果を最大限に発揮させることができる。また本発明によれば、外気温度や圧縮機回転数の条件によっては二方弁を閉じてインジェクションを止めることにより、液インジェクションが生じることによる性能低下を防止することができる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態により説明する。本発明の一実施形態(第1の実施形態)の空気調和機の構成を図1に示す。
圧縮機1,四方弁2,室外熱交換器3,電動膨張弁等の絞り量が変更可能な第1の絞り装置4,気液分離器5,電動膨張弁等の絞り量が変更可能な第2の絞り装置6,室内熱交換器7は、冷媒配管により順次接続されて主冷凍サイクルを構成する。冷房運転時においては、四方弁2を図1の実線のように切り換え、図1の実線の矢印方向に冷媒が流れて冷房サイクルを構成する。冷房運転時、圧縮機で圧縮された冷媒は、室外熱交換器3において凝縮して空気に放熱し、次に第1の電動膨張弁4で減圧されて凝縮圧力と蒸発圧力の中間圧力となり、気液分離器5においてガス冷媒と液冷媒とに分離される。液冷媒は、第2の電動膨張弁6で更に減圧されて、室内熱交換器7において空気から吸熱して圧縮機1に戻る。一方、気液分離器で分離されたガス冷媒は、インジェクション配管8を通って、圧縮機1に注入される。インジェクション配管8には二方弁9を設け、必要に応じて二方弁9を閉じることにより、インジェクションを停止することができる。
暖房運転時は、四方弁2を図1の破線のように切り換え、破線の矢印方向に冷媒が流れる。暖房運転時は、圧縮機で圧縮された冷媒は、室内熱交換器7において凝縮して空気に放熱し、次に第2の電動膨張弁6で減圧されて凝縮圧力と蒸発圧力の中間圧力となり、気液分離器5においてガス冷媒と液冷媒に分離される。液冷媒は、第1の電動膨張弁4で更に減圧されて、室外熱交換器3で蒸発して空気から吸熱して圧縮機1に戻る。一方、気液分離器で分離されたガス冷媒は、インジェクション配管8を通って圧縮機に注入される。
圧縮機のチャンバには、圧縮機チャンバ表面温度センサ10を設け、圧縮機頭部のチャンバ温度を検出する。なお、圧縮機チャンバ温度センサの替わりに、冷媒吐出配管に圧縮機吐出冷媒配管温度センサを設けてもよい。以下の説明では、圧縮機吐出冷媒配管温度又は圧縮機頭部チャンバ表面温度のことを圧縮機吐出冷媒温度と呼ぶ。圧縮機の冷媒吸入配管には圧縮機吸入冷媒配管温度センサ11を設け、吸入冷媒温度を検出する。圧縮機吸入配管にセンサを設ける替わりに、圧縮機吸入部に設けられる液溜め(アキュムレータ)等にセンサを取り付けてもよい。室外機には外気温度センサ12及び室外熱交換器センサ
13を設け、外気温度及び室外熱交換器温度を検出する。
圧縮機1,第1の電動膨張弁4,第2の電動膨張弁6などの制御や、センサからの信号の取り込みは、制御装置14によって行われる。制御装置14はマイクロコンピュータ
15とその周辺機器から構成される。圧縮機1は、制御装置14とインバータ回路16によって回転数を制御される。圧縮機の回転数はセンシングされて、マイクロコンピュータ15に取り込まれる。圧縮機回転数のセンシングは、モータへの出力電流をフィードバックするなどの方法により行う。圧縮機に回転数センサを取り付けてもよい。
次に、インジェクションサイクルの動作とサイクル効率向上について、図2により説明する。図2に示したモリエル線図は、横軸にエンタルピー、縦軸に圧力を取って冷凍サイクルの特性を表している。破線が従来サイクル、実線がガスインジェクションサイクルを表す。従来サイクルでは、A点からD′点まで圧縮機で冷媒が圧縮され、D′点からE点において凝縮器において冷媒は凝縮して外気に放熱する。E点からH′点では、膨張弁によって冷媒は膨張し、H′点からA点では蒸発器において冷媒が蒸発し、室内の空気の熱を吸熱する。インジェクションサイクルにおいては、圧縮機でまずA点からB点において冷媒が圧縮され、ここで気液分離器において分離されたガス冷媒が注入されてC点に至り、更に圧縮機においてC点からD点まで圧縮される。D点からE点において冷媒は凝縮器で凝縮し、E点からF点においては、第1の電動膨張弁で冷媒は膨張し、蒸発圧力と凝縮圧力の中間圧力のF点で気液分離器において冷媒はガスと液に分離される。ガスはF点からC点で圧縮機に注入され、液はG点からH点まで第2の電動膨張弁で減圧され、H点からA点において蒸発器で蒸発する。冷房運転の場合、従来サイクルの蒸発能力即ち冷房能力はA点とH′点のエンタルピーの差で表され、インジェクションサイクルの蒸発能力はA点とH点のエンタルピーの差で表される。H点のエンタルピーはH′点のエンタルピーよりも小さいので、インジェクションサイクルにおいては冷房能力が増加する。暖房運転の場合、従来サイクルのときの凝縮器の冷媒流量をG、ガスインジェクションサイクルにおいてインジェクションされる冷媒流量をG1とすると、インジェクションサイクルで凝縮器を流れる冷媒流量はG+G1となり、凝縮器出入口のエンタルピー差と冷媒流量の積である暖房能力が増加する。
次に、本実施の形態における冷凍サイクル制御の動作について図3のフローチャートにより説明する。以下の説明では、2個の電動膨張弁をそれぞれ上流側膨張弁、下流側膨張弁と呼ぶことにする。2個の電動膨張弁のうち、冷房運転時は図1における第1の電動膨張弁4が上流側膨張弁、第2の電動膨張弁6が下流側膨張弁となり、暖房運転時は電動膨張弁6が上流側膨張弁、電動膨張弁4が下流側膨張弁となる。また、膨張弁開度の数値については、数値が大きいほど膨張弁が開く方向と定義する。
図3は冷房の場合のフローを示しているが、暖房の場合も基本的には同様である。暖房と冷房で計算式が異なる場合については、それぞれについて本文中で説明する。
図3のステップ101において、変数の初期化等の初期化処理を行い、ステップ102において、初期運転タイマをスタートする。初期運転は図1の二方弁9を閉じてガスインジェクションを行わずに所定時間運転するもので、このタイマはその時間を与える。ステップ103では、上流側及び下流側膨張弁開度の初期値を設定する。下流側膨張弁は通常全開にするが、圧縮機回転数に応じた開度に設定してもよい。次のステップ104で、サンプリングタイムを与えるタイマをスタートする。このタイマは、圧縮機吐出冷媒温度等のセンシングや2個の膨張弁制御を行う間隔(サンプリングタイム)を与えるものである。ステップ105では、圧縮機吐出冷媒温度Td、圧縮機吸込み冷媒温度Ts、外気温度To、室外熱交換器温度Teo、圧縮機回転数Nを読み込む。ステップ106においては、上流側膨張弁の開度変更量を算出する。上流側膨張弁は、圧縮機吐出冷媒温度とその変化量に応じて制御される。次にステップ107において、初期運転時間が経過したかどうかを判定し、初期運転時間に達していない場合には、ステップ108で二方弁は閉じたままとし、ステップ109において、下流側膨張弁は全開に保たれる。初期運転時間経過後は、ステップ110で、圧縮機回転数と外気温度によって、ガスインジェクションを行うかどうかの判定を行う。冷房運転では、圧縮機回転数が所定値以下又は外気温度が所定値以下の場合、即ち、以下の式(1),(2)のいずれかが成立した場合には、ガスインジェクションを行わない。
N≦Nc0 (1)
To≦Toc0 (2)
ここで、Nは圧縮機回転数、Toは外気温度、Nc0,Toc0は定数である。すなわち、圧縮機回転数が低い場合は低能力運転であると判断し、外気温が低い場合は室内温度もそう高くなく能力が低い運転であると看做す。
暖房運転では、圧縮機回転数が所定値以下又は外気温度が所定値以上の場合、即ち、式(3),(4)のいずれかが成立した場合には、ガスインジェクションを行わない。
N≦Nh0 (3)
To≧Toh0 (4)
ここで、Nh0,Toh0は定数である。冷房同様、圧縮機回転数が低い場合は低能力運転であると判断し、外気温が高い場合は室内温度もそう低くなく能力が低い運転であると看做す。
これらの条件でガスインジェクションを行わないのは、このような条件では蒸発圧力が高いため、ガスインジェクションしてもインジェクション量が極めて少なく効果があまりない上に、液インジェクションになりやすく、逆に性能が低下する恐れがあるからである。
ガスインジェクションを行わない場合、ステップ108で二方弁を閉じ、ステップ109で、下流側膨張弁を全開にする。下流弁を絞った状態から全開にするときには、一回で全開にせずに、徐々に全開まで開くようにしてもよい。また、下流側膨張弁を徐々に開いて全開になった時点で二方弁を閉じるようにしてもよい。下流側膨張弁を徐々に開くことにより、圧縮機吐出冷媒温度或いは圧縮機吸入スーパヒートの急激な低下を避けることができる。
ステップ110で、式(1),(2)又は式(3),(4)の条件が成立しない場合には、ステップ111で二方弁を開いてガスインジェクションを行う。既に二方弁が開いている場合は、そのまま開いた状態を保持する。
次にステップ112では、圧縮機吐出冷媒温度Tdの目標値Tdsを式(5)により算出する。
Tds=a1・N+b1・To+c1 (5)
ここで、Nは圧縮機回転数(センシングした値)、Toは外気温度、a1,b1,c1は定数である。
次のステップ113では圧縮機吸入温度Tsの基準値Tssを式(6)により計算する。
Tss=a2・N+b2・To+c2 (6)
ここで、a2,b2,c2は定数である。
圧縮機吸い込み温度の基準値Tssについては、暖房の場合は室外熱交換器に霜が着く場合も考慮して、室外熱交換器温度Teoを用いた式(7)によって求めてもよい。
Tss=a2・N+b2・Teo+c2 (7)
次のステップ114では、インジェクションされる冷媒に液が混合しているかどうかの判定を行う。判定は、式(8)と式(9)が同時に満たされたときに液インジェクションが起こっていると判定される。
Td≦Tds−α (8)
Ts≧Tss+β (9)
ここで、Tdsはステップ112で算出された圧縮機吐出冷媒温度の目標値、Tssはステップ113で算出された圧縮機吸入冷媒温度の基準値、α,βは定数である。このような条件によって液インジェクションの判定が可能な理由は、液インジェクションが生じると液によって圧縮室内冷媒が冷却されて圧縮機吐出冷媒温度が低下するとともに、気液分離器に冷媒が溜まることによってサイクルの冷媒が不足ぎみになり、圧縮機吸入冷媒温度が上昇するからである。
ステップ114において条件が成立したならば、液インジェクションが起こっていると見なし、ステップ115において式(10)に示すように下流側膨張弁開度の補正値
SP(n)に所定量dP2aを加える。
SP(n)=SP(n−1)+dP2a (10)
dP2aの値は正(膨張弁が開く方向の値)とする。ここで、nはサンプリング番号である。下流弁を開くことによって気液分離器内の冷媒圧力が低下するので、液インジェクションを終息させることができる。SP(n−1)は開度補正値の前回値であり、ここでこの値が0であったときに液インジェクションが判定されたことを想定して説明する。液インジェクションであると判定されると、今回の補正量をdp2aとする。次回まだ液インジェクションが継続していると判断されると、補正量は2dp2aとなり、液インジェクションが収まるまで繰り返される。すなわち、補正量の積分制御となる。なお、下流弁を開く替わりに二方弁を閉じることによってインジェクションを止めてしまう方法もある。
次のステップ116では、下流側膨張弁開度の基準値P2sを式(11)により算出する。
P2s=a3・N+b3・To+c3+SP(n) (11)
ここで、Nは圧縮機回転数、Toは外気温度、SP(n)は下流側膨張弁開度の補正量、a3,b3,c3は定数である。冷房運転では、a3は正、b3は負であり、暖房運転ではa3は正、b3も正である。従って、冷房運転では外気温度が高いほど下流側膨張弁を絞り、暖房運転では外気温度が高いほど下流側膨張弁を開く制御が行われる。
その理由を説明する。圧縮機回転数に比例して開度調整を行う理由は、回転数が高いと冷媒循環量が増え気液分離器内の液冷媒が増加し液インジェクションとなる可能性が高いので、下流側膨張弁を開いて液インジェクションとなることを防止するためである。
外気温に応じて下流側膨張弁の開度を調節する理由は、冷房時において、室外熱交換器は凝縮器として作用しており、外気温が急激に上昇したとすると、凝縮器の温度が上昇して凝縮量が減少した分ガス冷媒の割合が増加する。このため、凝縮器の圧力が増大する。凝縮器の圧力増大はサイクル全体の圧力増大となる。この時、圧縮機内の中間圧力も増大するので、気液分離器内の中間圧を大きくしなければガスインジェクションの量が少なくなりCOP低下につながるので、下流側膨張弁を絞って適正にガスインジェクションを行わせるためである。一方、暖房時は、室外機は蒸発器として機能する。外気温が高くなると、蒸発器温度も高くなり蒸発量が増える。このため、蒸発器内の圧力が大きくなり、圧縮機の吸込圧力が大きくなる。吸込圧力が増大するということは、圧縮機に吸込まれるガス冷媒の密度が増すことであるので、圧縮機によって圧縮される冷媒の量が増えたこととなり、結果として冷媒循環量が多くなることを意味する。この時気液分離器内の圧力上昇分は、圧縮機のインジェクションポートの圧力上昇分よりも大きいため、気液分離器内の液量が増加して液戻りになってしまう可能性がある。このため、下流側の膨張弁を開いて、液戻りを防止するのである。
次のステップ117では、下流側膨張弁の一回に絞る絞り量を所定値dP2max以下に制限するために、前回のサンプリングタイムにおける下流側膨張弁開度P2(n−1)とステップ116で算出された下流側膨張弁開度P2sとの差を求め、それがdP2max以下ならば、ステップ118において、下流側膨張弁開度P2(n)をP2sに設定する。そうでないときには、ステップ119において下流側膨張弁開度P2(n)は前回の開度からdP2maxを減じた値とする。一回に絞る絞り量を制限している理由は、急激に下流側膨張弁を絞ると中間圧力が上昇して液インジェクションが起こり易くなるのと、圧縮機吐出温度が急激に上昇して制御の安定性が損なわれるためである。
次のステップ120では、下流側膨張弁開度の変更量を求め、ステップ121において膨張弁コイルにパルスを出力して上流側及び下流側膨張弁を動作させる。ステップ122においてサンプリングタイムをカウントし、サンプリングタイムに達したならば、ステップ104に戻って以下の一連の動作を繰り返す。
本実施形態によれば、下流側膨張弁開度を圧縮機回転数と外気温度に応じて制御することにより中間圧力を適正に保つことができるので、ガスインジェクションによる性能向上が大きい。また、圧縮機吐出冷媒温度と圧縮機吸入冷媒温度によって液インジェクションを判定して下流側膨張弁開度を調整しているので、液インジェクションによる性能低下が防止できる。また、本実施形態によれば、圧縮機回転数や外気温度に応じて、二方弁を閉じてインジェクションを止める制御を行っているので、液インジェクションによる性能低下が起こりにくい。
本発明の他の実施形態(第2の実施形態)の空気調和機の構成を図4に示す。本実施形態における冷凍サイクル構成は、第1の実施形態と同様であるが、室内機に室内吸込み空気温度センサと室内熱交換器センサを設けている。本実施形態における冷凍サイクル制御の動作について図5のフローチャートにより説明する。制御動作の基本的な流れは、第1の実施形態と同様なので、本実施形態に関する説明は、第1の実施形態と異なる部分のみについて行うことにする。
ステップ205では、圧縮機吐出冷媒温度Td,圧縮機吸入冷媒温度Ts,外気温度
To,室外熱交換器温度Teoの他に、室内吸込み空気温度Ti及び室内熱交換器温度
Teiを読み込む。室内吸込み空気温度と室内熱交換器温度については、直接室外機の制御装置に取り込めない場合には、室内機に設けた制御装置に取り込んで室外機の制御装置にデータを送るようにしてもよい。
ステップ210のガスインジェクションを行うかどうかの判定において、冷房運転では式(12)から(14)のいずれかが成立した場合には、ガスインジェクションを行わない。
N≦Nc0 (12)
To≦Toc0 (13)
Ti≧Tic0 (14)
ここで、Nは圧縮機回転数、Toは外気温度、Tiは室内吸込み空気温度、Nc0,
Toc0,Tic0は定数である。更に室内吸込み空気湿度センサを設け、室内吸込み空気湿度が所定値以上の場合にも二方弁を閉じるようにしてもよい。
暖房運転では、式(15)から(17)のいずれかが成立した場合には、ガスインジェクションを行わない。
N≦Nh0 (15)
To≧Toh0 (16)
Ti≦Tih0 (17)
ここで、Nh0,Toh0,Tih0は定数である。
ステップ213において、冷房運転の場合は、圧縮機吸入冷媒温度Tsの基準値Tssを式(18)により計算する。
Tss=a2・N+b2・Tei+c2 (18)
ここで、a2,b2,c2は定数である。本実施形態では、圧縮機吸入冷媒温度の基準値の算出に、室内熱交換器の温度を用いている。暖房運転の場合については、第1の実施形態と同様に、前述の式(6)又は式(7)により圧縮機吸入温度基準値を求める。
ステップ216において、下流側膨張弁開度基準値は式(19)により求める。
P2s=a3・N+b3・To+c3・Ti+d3+SP(n) (19)
ここでは、室内吸込み空気温度も下流側膨張弁開度の算出に用いている。
本実施形態によれば、下流側膨張弁開度を圧縮機回転数と外気温度の他に、室内吸込み空気温度にも応じて制御することにより中間圧力をより適正に保つことができるので、ガスインジェクションによる性能向上の効果が最大限に引き出される。また、本実施形態によれば、圧縮機回転数や外気温度の他に室内吸込み空気温度によっても二方弁を閉じてインジェクションを止める制御を行っているので、液インジェクションによる性能低下が起こりにくくなっている。
本発明の一実施形態における空気調和機の構成。 ガスインジェクションサイクルの動作を示すモリエル線図。 膨張弁制御のフローチャート。 本発明の第2の実施形態の空気調和機の構成。 本発明の第2の実施形態の空気調和機の膨張弁制御のフローチャート。
符号の説明
1…圧縮機、2…四方弁、3…室外熱交換器、4…第1の絞り装置、5…気液分離器、6…第2の絞り装置、7…室内熱交換器、8…インジェクション配管、10…圧縮機チャンバ表面温度センサ、11…圧縮機吸入冷媒配管温度センサ、12…外気温度センサ、
14…制御装置。

Claims (5)

  1. 圧縮機と、室外熱交換器と、開度の調節が可能な第1の絞り装置と、気液分離器と、開度の調節が可能な第2の絞り装置と、室内熱交換器とを順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記気液分離器より前記圧縮機に冷媒を供給するインジェクション配管を備えた空気調和機において、
    圧縮機回転数を検出する手段と、室内吸込み空気温度を検出する手段と、外気温度を検出する手段と、検出された圧縮機回転数と室内温度と外気温度に応じて前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞り装置の絞り量を制御する手段とを備え、
    冷房運転時、同じ圧縮機回転数、同じ外気温度のときは、室内温度が高いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開き、同じ圧縮機回転数、同じ室内温度のときは、外気温度が低いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開く制御を行い、
    暖房運転時、同じ圧縮機回転数、同じ外気温度のときは、室内温度が低いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開き、同じ圧縮機回転数、同じ室内温度のときは、外気温度が高いほど前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを開く制御を行う空気調和装置。
  2. 圧縮機と、室外熱交換器と、開度の調節が可能な第1の絞り装置と、気液分離器と、開度の調節が可能な第2の絞り装置と、室内熱交換器とを順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記気液分離器より前記圧縮機に冷媒を供給するインジェクション配管を備えた空気調和機において、圧縮機回転数を検出する手段と、圧縮機吐出冷媒温度を検出する手段と、圧縮機吸入冷媒温度を検出する手段と、外気温度を検出する手段とを備え、圧縮機吐出冷媒温度が圧縮機回転数と外気温度の両方または圧縮機回転数のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上低く、圧縮機吸入冷媒温度が圧縮機回転数と外気温度の両方又は圧縮機回転数のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上高い場合に、前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを所定量開く制御を行う空気調和装置。
  3. 圧縮機と、室外熱交換器と、開度の調節が可能な第1の絞り装置と、気液分離器と、開度の調節が可能な第2の絞り装置と、室内熱交換器とを順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記気液分離器より前記圧縮機に冷媒を供給するインジェクション配管を備えた空気調和機において、圧縮機回転数を検出する手段と、圧縮機吐出冷媒温度を検出する手段と、圧縮機吸入冷媒温度を検出する手段と、室外熱交換器温度を検出する手段とを備え、圧縮機吐出冷媒温度が圧縮機回転数と外気温度の両方又は圧縮機回転数のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上低く、圧縮機吸入冷媒温度が室外熱交換器温度と圧縮機回転数の両方又は室外熱交換器温度のみに応じて定められた所定値よりも所定量以上高い場合に、前記2つの絞り装置のうちの下流側の絞りを所定量開く制御を行う空気調和装置。
  4. 請求項2又は請求項3において、
    圧縮機吐出冷媒温度の替わりに圧縮機頭部のチャンバ表面温度を検出するものである空気調和機。
  5. 請求項2又は請求項3において、
    圧縮機吸入冷媒温度の替わりに圧縮機吸入部に設けたアキュムレータの表面温度を検出するものである空気調和機。
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