JP4303030B2 - 光吸収色素およびこれを用いた光吸収材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光吸収色素およびこれを用いた光吸収材に関する。さらに詳しくは、置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体を含む光吸収色素、および置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体とジイモニウム塩系色素とを含む光吸収色素、およびこれらを用いた光吸収材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光を吸収する成分を含む光吸収材が、例えば、プラズマディスプレイパネル用可視光線カットフィルム、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルター、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体等として広く用いられている。
【0003】
上記した光吸収材においては、シアニン系色素やジイモニウム塩系色素等の光吸収色素が用いられている。しかしながら、シアニン系色素は経時的に徐々に光吸収能が低下するといった問題がある。一方、ジイモニウム塩系色素は、他の色素と混合すると経時的に徐々に吸収能が低下するといった問題がある。従って、例えば、ジイモニウム塩系色素をシアニン系色素と併用する場合、シアニン系色素とジイモニウム塩系色素をそれぞれ別の光吸収溶液として支持体上に塗布する必要がある(特許文献1、2、3および4)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−156521号公報
【特許文献2】
特開2002−187229号公報
【特許文献3】
特開2002−200711号公報
【特許文献4】
特開2002−264278号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情の下で考えられたものであって、本発明の課題は、シアニン系色素を用いた光吸収能の経時的低下が抑制された光吸収色素、およびシアニン系色素とジイモニウム塩系色素を混合してもジイモニウム塩系色素の近赤外線吸収能の経時的低下が抑制された光吸収色素を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記に示すとおりの光吸収色素およびこれを用いた光吸収材を提供するものである。
項1.下記一般式(1);
【0007】
【化8】
【0008】
(式中、R1およびR2は、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有してもよいモルホリノ基、置換基を有してもよいピペリジノ基、置換基を有してもよいピロリジノ基、置換基を有してもよいチオモルホリノ基、置換基を有してもよいピペラジノ基または置換基を有してもよいフェニル基を示す。Mは、遷移金属原子を示す。)
で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと、下記一般式(2);
【0009】
【化9】
【0010】
(式中、Q1およびQ2は、独立して、縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環を形成するための原子群を示す。R3およびR4は、独立して、炭素数1〜8のアルキル基を、R5は、CR6、CH=CR6−CH、CH=CH−CR6=CH−CH、CH=CH−CH=CR6−CH=CH−CH、CH=CH−CH=CH−CR6=CH−CH=CH−CH、
【0011】
【化10】
【0012】
(CH=CH)nCHで表される基を示す。R6はハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を示す。Q3は置換基を有してもよい炭素数2または3のアルキレン基を示し、それが結合する2つの炭素原子および該2つの炭素原子間の1つの炭素原子と一緒になって5員または6員の環状構造を形成する。nは、3または4の整数を示す。)
で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体を含む光吸収色素。
項2.下記一般式(1);
【0013】
【化11】
【0014】
(式中、R1およびR2は、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有してもよいモルホリノ基、置換基を有してもよいピペリジノ基、置換基を有してもよいピロリジノ基、置換基を有してもよいチオモルホリノ基、置換基を有してもよいピペラジノ基または置換基を有してもよいフェニル基を示す。Mは、遷移金属原子を示す。)
で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと、下記一般式(2);
【0015】
【化12】
【0016】
(式中、Q1、Q2は、縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環を形成するための原子群を示す。R3、R4は、独立して、炭素数1〜8のアルキル基を、R5は、CR6、CH=CR6−CH、CH=CH−CR6=CH−CH、CH=CH−CH=CR6−CH=CH−CH、CH=CH−CH=CH−CR6=CH−CH=CH−CH、
【0017】
【化13】
【0018】
(CH=CH)nCHで表される基を示す。R6はハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を示す。Q3は置換基を有してもよい炭素数2または3のアルキレン基を示し、それが結合する2つの炭素原子および該2つの炭素原子間の1つの炭素原子と一緒になって5員または6員の環状構造を形成する。nは、3または4の整数を示す。)
で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体と、
下記一般式(3);
【0019】
【化14】
【0020】
(式中、R7〜R10は、独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基またはアリール基を示す。X−は、ハロゲンイオン、無機酸イオンまたは有機酸イオンを示す。)
で表されるジイモニウム塩系色素とを含む光吸収色素。
項3.項1または2に記載の光吸収色素を基板上に層状に塗布形成して得られる光吸収材。
【0021】
項4.項1または2に記載の光吸収色素とモノマーとを含む組成物を、該モノマーの重合により硬化して得られる光吸収材。
項5.項1または2に記載の光吸収色素と樹脂とを混練して得られる樹脂組成物を所定形状に成形して得られる光吸収材。
【0022】
上記一般式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと、上記一般式(2)で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体を含む本発明の光吸収色素は、シアニン系色素の光吸収能の経時的低下を抑制することができる。また、上記一般式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと、上記一般式(2)で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体と上記一般式(3)で表されるジイモニウム塩系色素とを含む本発明の光吸収色素は、シアニン系色素とジイモニウム塩系色素を混合してもジイモニウム塩系色素の近赤外線吸収能の経時的低下を抑制することができる。従って、これまでのように複数の光吸収色素層を構成し、各光吸収色素層にそれぞれシアニン系色素とジイモニウム塩系色素とを添加する必要がなく、単一の光吸収層にシアニン系色素とジイモニウム塩系色素とを添加できるため、光吸収能に優れた光吸収色素を提供することができる。また、本発明の光吸収色素は、溶媒、モノマー等への溶解度が高く、樹脂との相溶性も良好である。従って、さまざまな光を遮断するのに十分な量を、溶媒やモノマー等に溶解させたり、均一に樹脂と混練することができるため、この光吸収色素を含む光吸収材は、十分な光吸収能を発揮することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態にかかる光吸収色素は、置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体を含むものである。
【0024】
本発明において、光吸収色素を構成する、上記一般式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンは、置換ベンゼンジチオール金属錯体から誘導される。上記置換ベンゼンジチオール金属錯体は、例えば、特開平9−309886号公報や特開平10−45767号公報に開示されているのと同様の方法で合成することができる。すなわち、まず置換ハロゲノベンゼンと水硫化ナトリウム等の水硫化物とを硫黄および鉄粉の存在下、極性有機溶媒中で反応させ、置換ベンゼンジチオールの鉄錯体を形成させる。得られた置換ベンゼンジチオールの鉄錯体と遷移金属のハロゲン化物とを反応させ、次いでアンモニウム塩またはホスホニウム塩と反応させることにより置換ベンゼンジチオール金属錯体を得ることができる。
【0025】
上記一般式(1)において、R1およびR2で表される置換基は、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有してもよいモルホリノ基、置換基を有してもよいピペリジノ基、置換基を有してもよいピロリジノ基、置換基を有してもよいチオモルホリノ基、置換基を有してもよいピペラジノ基または置換基を有してもよいフェニル基である。
【0026】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0027】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−n−プロピルアミノ基、N−n−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−エチルイソプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジ−n−プロピルアミノ基、N,N−ジ−n−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0028】
置換基を有してもよいモルホリノ基としては、例えば、モルホリノ基、2−メチルモルホリノ基、3−メチルモルホリノ基、4−メチルモルホリノ基、2−エチルモルホリノ基、4−n−プロピルモルホリノ基、3−n−ブチルモルホリノ基、2,4−ジメチルモルホリノ基、2,6−ジメチルモルホリノ基、4−フェニルモルホリノ基等が挙げられる。
【0029】
置換基を有してもよいピペリジノ基としては、例えば、ピペリジノ基、2−メチルピペリジノ基、3−メチルピペリジノ基、4−メチルピペリジノ基、2−エチルピペリジノ基、4−n−プロピルピペリジノ基、3−n−ブチルピペリジノ基、2,4−ジメチルピペリジノ基、2,6−ジメチルピペリジノ基、4−フェニルピペリジノ基等が挙げられる。
【0030】
置換基を有してもよいピロリジノ基としては、例えば、ピロリジノ基、2−メチルピロリジノ基、3−メチルピロリジノ基、4−メチルピロリジノ基、2−エチルピロリジノ基、4−n−プロピルピロリジノ基、3−n−ブチルピロリジノ基、2,4−ジメチルピロリジノ基、2,5−ジメチルピロリジノ基、4−フェニルピロリジノ基等が挙げられる。
【0031】
置換基を有してもよいチオモルホリノ基としては、例えば、チオモルホルノ基、2−メチルチオモルホリノ基、3−メチルチオモルホリノ基、4−メチルチオモルホリノ基、2−エチルチオモルホリノ基、4−n−プロピルチオモルホリノ基、3−n−ブチルチオモルホリノ基、2,4−ジメチルチオモルホリノ基、2,6−ジメチルチオモルホリノ基、4−フェニルチオモルホリノ基等が挙げられる。
【0032】
置換基を有してもよいピペラジノ基としては、例えば、ピペラジノ基、2−メチルピペラジノ基、3−メチルピペラジノ基、4−メチルピペラジノ基、2−エチルピペラジノ基、4−n−プロピルピペラジノ基、3−n−ブチルピペラジノ基、2,4−ジメチルピペラジノ基、2,6−ジメチルピペラジノ基、4−フェニルピペラジノ基、2−ピリミジルピペラジノ基等が挙げられる。
【0033】
置換基を有してもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−クロロ−4−ブロモフェニル基、4−アミノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基、2−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メチルチオフェニル基、4−メチルチオフェニル基等が挙げられる。
【0034】
上記した各種の置換基の中、R1またはR2として、N,N−ジエチルアミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、フェニル基を用いると特に好ましい結果が得られる。
【0035】
また、Mは、遷移金属原子を示す。Mで表される遷移金属原子の具体例としては、ニッケル原子、銅原子、コバルト原子等が挙げられる。
一方、本発明の光吸収色素を構成するシアニン系色素カチオンは、上記一般式(2)で表される化合物である。
【0036】
上記一般式(2)において、式中、Q1およびQ2は、独立して、縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環を形成するための原子群を示す。すなわち、Q1およびQ2は、これらに隣接する炭素原子に結合する窒素原子と共に互いに結合して5員または6員の含窒素ヘテロ環を形成し、この含窒素ヘテロ環は、縮合環を有していてもよい。この縮合環としては、縮合ベンゼン環、縮合ナフタレン環等が挙げられる。
【0037】
縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環としては、インドレニン環、4,5−ベンゾインドレニン環、5,6−ベンゾインドレニン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジン環、キノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリミジン環等が挙げられる。
【0038】
これらの環には、ハロゲン原子、アリール基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルアミノスルファミド基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基等が置換していてもよい。
【0039】
ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アリール基としては、単環であっても縮合環を有するものであってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらは、さらに置換基を有していてもよい。
【0040】
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0041】
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、テトラフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルキルアミノスルファミド基としては、例えば、メチルアミノスルファミド基、エチルアミノスルファミド基、プロピルアミノスルファミド基、ブチルアミノスルファミド基等が挙げられる。
【0042】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基等が挙げられる。
【0043】
また、R3およびR4は、独立して、炭素数1〜8のアルキル基を表す。これらにはヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)等が置換していてもよい。
【0044】
R5は、CR6、CH=CR6−CH、CH=CH−CR6=CH−CH、CH=CH−CH=CR6−CH=CH−CH、CH=CH−CH=CH−CR6=CH−CH=CH−CH、
【0045】
【化15】
【0046】
(CH=CH)nCHで示される基を表す。
R6は、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、またはアリール基(例えば、フェニル基、メチルフェニル基、クロロフェニル基等)を表す。
【0047】
Q3は置換基を有してもよい炭素数2または3のアルキレン基を表し、それが結合する2つの炭素原子および該2つの炭素原子間の1つの炭素原子と一緒になって5員または6員の環状構造を形成する。置換基を有してもよい炭素数2または3のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基等が挙げられる。
【0048】
さらに、nは、3または4の整数を表す。
上述したシアニン系色素カチオンは、シアニン系色素から誘導される。より好ましいシアニン系色素としては、下記式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)または(10)で表されるものである。これらシアニン系色素は、例えば、下記一般式(4)で表される色素は、林原生物化学研究所の商品名NK−1056、下記一般式(5)で表される色素は、林原生物化学研究所の商品名NK−2610、下記一般式(6)で表される色素は、林原生物化学研究所の商品名NK−6、下記一般式(7)で表される色素は、林原生物化学研究所の商品名NK−2014、下記一般式(8)で表される色素は、林原生物化学研究所の商品名NK−427、下記一般式(9)で表される色素は、林原生物化学研究所の商品名NK−123、下記一般式(10)で表される色素は、アメリカンダイソース社の商品名ADS830AT等の市販されているものを用いることができる。
【0049】
【化16】
【0050】
【化17】
【0051】
【化18】
【0052】
【化19】
【0053】
【化20】
【0054】
【化21】
【0055】
【化22】
【0056】
本発明の光吸収色素を構成する上記一般式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと上記一般式(2)で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体は、例えば、下記に示す方法で製造することができる。
まず、置換ベンゼンジチオール金属錯体とシアニン系色素とを有機溶媒に溶解する。
【0057】
シアニン系色素の使用量は、置換ベンゼンジチオール金属錯体に対して、0.8〜1.2倍モル、好ましくは0.9〜1.1倍モルであることが望ましい。シアニン系色素の使用量が0.8倍モル未満の場合、収率が低下するおそれがある。また、シアニン系色素の使用量が1.2倍モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0058】
有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが好適に用いられる。
【0059】
有機溶媒の使用量は、置換ベンゼンジチオール金属錯体に対して、10〜1000倍重量、好ましくは40〜200倍重量であることが望ましい。有機溶媒の使用量が10倍重量未満の場合、均一に混合できなくなるおそれがある。また、有機溶媒の使用量が1000倍重量を超える場合、容積効率が悪化し、経済的でない。
【0060】
溶解温度は、シアニン系色素の分解を抑制する観点から、60℃以下、好ましくは10〜50℃であることが望ましい。
上記反応においては、置換ベンゼンジチオール金属錯体とシアニン系色素とは、有機溶媒に溶解するが、目的物である対イオン結合体は、反応の進行と共に一部析出し、反応液はスラリー状となる。
【0061】
次いで、得られた反応液から原料の置換ベンゼンジチオール金属錯体に由来するカチオンおよびシアニン系色素に由来するアニオン等の不要なイオンを除去した後、得られた結晶を乾燥させることにより、対イオン結合体を製造することができる。
【0062】
不要なイオンを除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、反応液に、置換ベンゼンジチオール金属錯体に由来するカチオンおよびシアニン系色素に由来するアニオン等のイオンは溶解するが目的物である対イオン結合体は溶解しない溶媒を添加して、冷却し、対イオン結合体を析出させて濾過することによりイオンを除去することができる。また、イオンを十分に除去する観点から、得られた対イオン結合体を再度溶解して同様にイオンを除去することが好ましい。
【0063】
上記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。これらの中でも、不要なイオンを効率的に除去することができる観点から、水、メタノールが好適に用いられる。
【0064】
上記溶媒の使用量は、置換ベンゼンジチオール金属錯体に対して、10〜1000倍重量であることが好ましく、50〜200倍重量であることがより好ましい。溶媒の使用量が10倍重量未満の場合、不要なイオンを十分に除去できないおそれがある。また、溶媒の使用量が1000倍重量を超える場合、使用量に見合う効果がなく、経済的でない。
【0065】
本発明の第2の実施形態にかかる光吸収色素は、置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体とジイモニウム塩系色素とを含むものである。置換ベンゼンチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カオチンとの対イオン結合体は本発明の第1の実施形態にかかる光吸収色素について述べたのと同様であるので説明を省略する。
【0066】
本発明の光吸収色素を構成するジイモニウム塩系色素は、上記一般式(3)で表される化合物である。
上記一般式(3)において、R7〜R10は、独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基またはアリール基を示す。X−は、ハロゲンイオン、無機酸イオンまたは有機酸イオンを示す。
【0067】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0068】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−n−プロピルアミノ基、N−n−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−エチルイソプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジ−n−プロピルアミノ基、N,N−ジ−n−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0069】
アリール基としては、単環であっても縮合環を有するものであってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらは、さらに置換基を有していてもよい。
【0070】
ハロゲンイオンとしては、例えば、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン等が挙げられる。
無機酸イオンとしては、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
【0071】
有機酸イオンとしては、例えば、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0072】
ジイモニウム塩系色素の含有量は、置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体100重量部に対して5〜2000重量部、好ましくは10〜1000重量部であることが望ましい。ジイモニウム塩系色素の使用量が5重量部未満の場合、ジイモニウム塩系色素の持つ吸収波長域での吸収が不十分となる。また、ジイモニウム塩系色素の使用量が2000重量部を超える場合、対イオン結合体の持つ吸収波長域での吸収が不十分となる。
【0073】
これらのジイモニウム塩系色素は、例えば、日本カーリット株式会社の商品名CIR−1080(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウムの過塩素酸塩)、CIR−1081(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩)として一般に市販されているものを用いることができる。
【0074】
本発明において、上記一般式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと上記一般式(2)で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体を含む光吸収色素、あるいは上記一般式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと上記一般式(2)で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体と上記一般式(3)で表されるジイモニウム塩系色素を含む光吸収色素を使用するに際しては、該光吸収色素を溶媒やモノマーに溶解したり、あるいは樹脂と混練する。その後、用途、目的等に応じて種々の形態とされ、光吸収材として用いられる。以下に、その実施の態様を説明する。
【0075】
(1)第1の態様(基板への色素溶液の塗布)
光吸収色素を溶媒に溶解して得られた溶液を、ガラスまたは樹脂の基板上に塗布し、乾燥させて溶媒を除去する。溶媒を除去した後、基板上には、光吸収色素を含む層が残る。
【0076】
上記溶媒としては、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が例示される。これらの溶媒は単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】
上記基板としては、ガラス、樹脂等の透明部材が用いられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂等の透明性の高い樹脂が好ましい。上記基板は、フレキシブルなものであっても、ハードなものであってもよく、板状、シート状またはフィルム状とすることができる。
【0078】
上記光吸収色素溶液の上記基板への塗布方法としてはバーコート法、スピンコート法等が挙げられる。この場合、上記溶液にバインダーを添加してもよい。バインダーとしては、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
光吸収色素の使用量は、溶媒100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部より少ないと光吸収能が十分ではなく、また10重量部を超えて用いても不溶部分が残り、不透明な部分が光吸収剤に形成されるおそれがあるため上記範囲が好ましい。
【0080】
(2)第2の態様(色素とモノマーとを含む組成物の硬化)
光吸収色素、モノマーおよび重合開始剤を含む硬化性組成物を、モールドに注入し重合硬化させるか、あるいはガラス板上にキャストして重合硬化させて光吸収材を得る。この光吸収材は、例えば、シート状や板状の構造を採ることができる。
【0081】
上記モノマーとしては、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、芳香族および脂肪族ビニル類、グリシジルエーテル類、ビニルスルフイド類、ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0082】
上記メタクリル酸エステル類としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、エチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビス(2−メタクリロイルチオエチル)スルフィド等が挙げられる。
【0083】
上記アクリル酸エステル類としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、エチレングリコールジアクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。
【0084】
芳香族および脂肪族ビニル類としては、例えば、スチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルシクロへキセン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。
【0085】
グリシジルエーテル類としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0086】
ビニルスルフィド類としては、例えば、プロピルビニルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド等が挙げられる。
ビニルエーテル類としては、例えば、プロピルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビス(4−ビニルオキシフェニル)スルフィド等が挙げられる。
【0087】
これらのモノマーは単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
硬化方法としては、特に限定されず、熱硬化法、紫外線や電子線等を用いる光硬化法等から用途等により適宜選択すればよい。
【0088】
上記光吸収色素の使用量は、モノマー100重量部に対して0.005〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部である。0.005重量部未満だと光吸収能が十分ではなく、また20重量部を超えて用いても不溶部分が残り、不透明な部分が光吸収材に形成されるおそれがあるため上記範囲が好ましい。
【0089】
熱硬化反応において用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物等が挙げられる。
【0090】
光硬化反応において用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0091】
重合開始剤の使用量は、モノマー100重量部に対して0.005〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1重量部である。硬化温度、硬化時間は、本発明の光吸収材の用途、形状、使用する重合開始剤の種類により異なるが、硬化温度は20〜200℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃である。硬化時間は0.5分〜50時間が好ましく、より好ましくは1分〜20時間である。
【0092】
(3)第3の態様(色素を含有する樹脂組成物を成形)
光吸収色素と樹脂(例えば、樹脂粉体や樹脂ペレット)とを含む樹脂組成物を溶融押出機にて混練・押出し、シート、フィルム、その他の形状に成形する。さらに、成形したシート(原反)を、周知の延伸方法により1軸ないしは2軸に延伸してフィルムとしてもよい。
【0093】
上記光吸収色素と混練される樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂等の透明性の高い樹脂が好ましい。また、樹脂組成物中には上記以外に紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、分散剤等を含有させてもよい。
【0094】
光吸収色素の使用量は、樹脂100重量部に対して0.005〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部である。0.005重量部未満だと光吸収能が十分ではなく、また20重量部を超えて用いても得られる光吸収剤の強度が低下するおそれがあるため上記範囲が好ましい。
【0095】
溶融温度としては100〜300℃が好ましく、より好ましくは150〜250℃である。
【0096】
【実施例】
以下、実施例により本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
合成例1
4−(モルホリノスルホニル)−1,2−ジクロロベンゼン59.2g(0.2モル)に、N,N−ジメチルホルムアミド183gおよび70重量%水硫化ナトリウム水溶液33.6g(0.42モル)を加え、65℃で3時間反応させた。この溶液に、鉄粉5.9g(0.11モル)および硫黄末6.7g(0.21モル)を添加し、90〜95℃で6時間反応させた。
【0098】
得られた反応液に室温でメタノール1080gを加えた後、28重量%ナトリウムメチラート溶液77.2g(ナトリウムメチラートとして0.21モル)を添加して1時間攪拌し、塩化銅(II)2水和物17.0g(0.1モル)を添加して、さらに室温で3時間反応させた。次いで、この反応液にテトラブチルアンモニウムブロマイド32.2g(0.1モル)を添加し、室温で空気を吹き込みながら2時間反応させた。
【0099】
かくして得られた反応液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、目的とする緑色の置換ベンゼンジチオール金属錯体D1(下記の表1を参照)36.6gを得た。
【0100】
合成例2〜4
さらに、合成例1と同様にして各種の置換ベンゼンジチオール金属錯体D2〜D4を合成した。各置換ベンゼンジチオール金属錯体の構造式を、上記置換ベンゼンジチオール金属錯体D1と併せて表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
参考例1
金属錯体(D1)8.8g(0.01モル)とシアニン系色素(林原生物化学研究所の商品名;NK−1056)6.4g(0.01モル)とを、N,N−ジメチルホルムアミド400gに溶解した。得られた溶液を50℃に保温し、メタノール600g、続いて蒸留水900gを加えて、冷却、濾過した。この操作を2回行った後、メタノール洗浄、乾燥し、対イオン結合体10.9gを得た。得られた対イオン結合体中のテトラブチルアンモニウムイオンおよびヨウ素イオンは、イオンクロマトグラフィーで測定した結果、検出されなかった。
【0103】
クロロホルム100gに、ポリカーボネート樹脂10g、上記で得られた対イオン結合体0.1gを溶解した。得られた光吸収色素の溶液をポリエステルフィルム上にメイヤーバーで塗布し、常温で乾燥し、膜厚10μmの光吸収材を得た。
【0104】
参考例2〜28
さらに、参考例1と同様にして各種の対イオン結合体を合成した。さらに参考例1と同様にして光吸収材を得た。参考例を表2に示す。なお、シアニン系色素の番号は、前記一般式(4)〜(10)の化合物を示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
参考例29
ジビニルベンゼン1000gに、参考例1で得られた対イオン結合体0.1gおよび重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを溶解した。得られた光吸収色素の溶液をガラス製のモールドに注入し、35℃で3時間加熱した後、5時間かけて80℃まで昇温し、最後に100℃で2時間加熱し硬化させた。冷却後、ガラス板を剥離させて厚さ1mmの光吸収材を得た。
【0108】
参考例30〜31
参考例29において、参考例1で得られた対イオン結合体に代えて、参考例5および9で得られた対イオン結合体をそれぞれ用いた以外は参考例29と同様にして光吸収材を得た。
【0109】
参考例32
エチレングリコールジメタクリレート1000gに、参考例13で得られた対イオン結合体3.0gおよび重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを溶解した。得られた光吸収色素の溶液をガラス製のモールドに注入し、35℃で3時間加熱した後、5時間かけて80℃まで昇温し、最後に100℃で2時間加熱し硬化させた。冷却後、ガラス板を剥離させて厚さ1mmの光吸収材を得た。
【0110】
参考例33
参考例32において、参考例17で得られた対イオン結合体を用いた以外は、参考例32と同様にして光吸収材を得た。
【0111】
参考例34
ポリメチルメタクリレートのペレット1000g、参考例21で得られた対イオン結合体0.1gとを、ニーダーで250℃に加熱、溶融混合した後、押出機で暑さ1mmの光吸収材のシートを得た。
【0112】
参考例35
参考例34において、参考例25で得られた対イオン結合体を用いた以外は、参考例34と同様にして光吸収材を得た。
【0113】
比較例1
クロロホルム100gに、ポリカーボネート樹脂10g、シアニン系色素(アメリカンダイソース社の商品名;ADS830AT)0.05gを溶解した。得られた溶液をポリエステルフィルム上にメイヤーバーで塗布し、常温で乾燥し、膜厚10μmの光吸収材を得た。
【0114】
評価
吸収能の経時的変化を調べるために、以下のモデル試験を行った。
参考例1〜35および比較例1で得られた光吸収材について、シアニン系色素として一般式(4)〜(6)の化合物を用いた光吸収材は600nm、シアニン系色素として一般式(7)〜(10)の化合物を用いた光吸収材は800nmでの透過率(%)を分光光度計で測定した(試験前透過率)。ついで、小型環境試験器(ESPEC社製、SU−240)中に、得られた光吸収材を置き、80℃で、500時間静置した後の透過率を上記方法と同様に測定した(試験後透過率80℃)。また、光安定性試験装置(ナガノ科学機械製作所社製、LT−120)中に、得られた光吸収材を置き、5000lxで、500時間静置した後の透過率を上記方法と同様に測定した(試験後透過率5000lx)。結果を表3および表4に示した。
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
表3および表4から、参考例1〜35で得られた光吸収材は、試験前透過率と試験後透過率の差が小さく、光吸収能の経時的低下が抑制されていることが分かる。
【0118】
実施例1
クロロホルム100gに、ポリカーボネート樹脂10g、参考例1で得られた対イオン結合体0.1gおよびジイモニウム塩系色素(日本カーリット株式会社の商品名;CIR−1081)0.3gを溶解した。得られた光吸収色素の溶液をポリエステルフィルム上にメイヤーバーで塗布し、常温で乾燥し、膜厚10μmの光吸収材を得た。
【0119】
実施例2〜28
実施例1において、参考例1で得られた対イオン結合体に代えて、参考例2〜28で得られた対イオン結合体をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして光吸収材を得た。
【0120】
実施例29
ジビニルベンゼン1000gに、参考例1で得られた対イオン結合体0.1g、ジイモニウム塩系色素(日本カーリット株式会社の商品名;CIR−1081)0.3gおよび重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを溶解した。得られた光吸収色素の溶液をガラス製のモールドに注入し、35℃で3時間加熱した後、5時間かけて80℃まで昇温し、最後に100℃で2時間加熱し硬化させた。冷却後、ガラス板を剥離させて厚さ1mmの光吸収材を得た。
【0121】
実施例30〜31
実施例29において、参考例1で得られた対イオン結合体に代えて、参考例5および9で得られた対イオン結合体をそれぞれ用いた以外は実施例29と同様にして光吸収材を得た。
【0122】
実施例32
エチレングリコールジメタクリレート1000gに、参考例13で得られた対イオン結合体3.0g、ジイモニウム塩系色素(日本カーリット株式会社の商品名;CIR−1081)1.0gおよび重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを溶解した。得られた光吸収色素の溶液をガラス製のモールドに注入し、35℃で3時間加熱した後、5時間かけて80℃まで昇温し、最後に100℃で2時間加熱し硬化させた。冷却後、ガラス板を剥離させて厚さ1mmの光吸収材を得た。
【0123】
実施例33
実施例32において、参考例13で得られた対イオン結合体に代えて、参考例17で得られた対イオン結合体を用いた以外は実施例32と同様にして光吸収材を得た。
【0124】
実施例34
ポリメチルメタクリレートのペレット1000g、参考例21で得られた対イオン結合体0.1g、ジイモニウム塩系色素(日本カーリット株式会社の商品名;CIR−1081)0.3gとを、ニーダーで250℃に加熱、溶融混合した後、押出機で厚さ1mmの光吸収材のシートを得た。
【0125】
実施例35
実施例34において、参考例21で得られた対イオン結合体に代えて、参考例25で得られた対イオン結合体を用いた以外は実施例34と同様にして光吸収材を得た。
【0126】
比較例2
クロロホルム100gに、ポリカーボネート樹脂10g、シアニン系色素(林原生物化学研究所の商品名;NK−1056)0.05gおよびジイモニウム塩系色素(日本カーリット株式会社の商品名;CIR−1081)0.3gを溶解した。得られた溶液をポリエステルフィルム上にメイヤーバーで塗布し、常温で乾燥し、膜厚10μmの光吸収材を得た。
【0127】
評価
吸収能の経時的変化を調べるために、以下のモデル試験を行った。
実施例1〜35および比較例2で得られた光吸収材について、シアニン系色素として一般式(4)〜(6)の化合物を用いた光吸収材は600nm(波長A)および1100nm(波長C)、シアニン系色素として一般式(7)〜(10)の化合物を用いた光吸収材は800nm(波長B)および1100nm(波長C)での透過率(%)を分光光度計で測定した(試験前透過率)。次いで、小型環境試験器(ESPEC社製、SU−240)中に、得られた光吸収材を置き、80℃で、500時間静置した後の透過率を上記方法と同様に測定した(試験後透過率80℃)。また、光安定性試験装置(ナガノ科学機械製作所社製、LT−120)中に、得られた光吸収材を置き、5000lxで、500時間静置した後の透過率を上記方法と同様に測定した(試験後透過率5000lx)。結果を表5および6に示した。
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
表5および6から、実施例1〜35で得られた光吸収材は、試験前透過率と試験後透過率の差が小さく、置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体をジイモニウム塩系色素とを混合しても光吸収能の経時的低下が抑制されていることが分かる。
【0131】
【発明の効果】
本発明の光吸収色素は、置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体を含むため、シアニン系色素の光吸収能の経時的低下が抑制される。また、本発明の光吸収色素は、シアニン系色素とジイモニウム塩系色素を混合してもジイモニウム塩系色素の光吸収能の経時的低下が抑制される。従って、本発明の光吸収色素を用いた光吸収材は、プラズマディスプレイパネル用可視光線カットフィルム、近赤外線を吸収・カットする機能を有する半導体受光素子用の光学フィルター、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体等に好適に用いられる。
Claims (4)
- 下記一般式(1);
で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体アニオンと、下記一般式(2);
で表されるシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体と、
下記一般式(3);
で表されるジイモニウム塩系色素とを含む、近赤外線吸収能の経時的低下が抑制された光吸収色素。 - 請求項1記載の光吸収色素を基板上に層状に塗布形成して得られる光吸収材。
- 請求項1記載の光吸収色素とモノマーとを含む組成物を、該モノマーの重合により硬化して得られる光吸収材。
- 請求項1記載の光吸収色素と樹脂とを混練して得られる樹脂組成物を所定形状に成形して得られる光吸収材。
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