JP4302205B2 - 感染症治療薬 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明はピリドンカルボン酸誘導体、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)薬に関するものである。また、上記抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せたヘリコバクター・ピロリ感染症治療薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日までの研究により、慢性胃炎や消化性潰瘍において、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori )菌が高率に検出され、これらの胃腸障害がヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することにより治癒する現象や本菌を除菌することにより消化性潰瘍の再発率が著しく低下する現象が多数報告されている。また、この菌による感染が胃癌についても関係があると考えられてきている(キャンサー リサーチ,58,2067−2069(1998))。現在、ヘリコバクター・ピロリ菌に対して、クエン酸ビスマスのようなビスマス化合物、メトロニダゾールのようなニトロイミダゾール化合物、テトラサイクリン、アモキシリン、クラリスロマイシンのような抗生物質が有効であることが報告され、これらの化合物、あるいはこれらの化合物とプロトンポンプ阻害薬の併用による治療が試みられている。一方、従来のピリドンカルボン酸誘導体はヘリコバクター・ピロリ菌に対して抗菌活性が低く(日本臨床51巻12号185-190 ページ)、ヘリコバクター・ピロリ菌に由来すると考えられる疾病の治療に用いられていなかった。また最近、クラリスロマイシンやメトロニダゾール耐性のヘリコバクター・ピロリ菌が出現してきていることが報告されている(総合臨床46巻10号2525-2528 ページ)。現在治療に用いられているこれらの化合物は、本願発明に係るピリドンカルボン酸誘導体とは化学構造を異にしている。また、ヘリコバクター・ピロリに対して優れた抗菌活性を示すピリドンカルボン酸誘導体は知られていなかった。さらに、これらのピリドンカルボン酸誘導体とプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール等)を併用することにより、ヘリコバクター・ピロリ菌に対してより高い抗菌活性を示すことは全く知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況において、ヘリコバクター・ピロリ菌に対して、優れた抗菌活性を有する抗菌剤が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる事情に鑑み、本願発明者らは上記要件を満たす優れた化合物を提供すべく鋭意研究した。その結果、従来のピリドンカルボン酸誘導体に比べヘリコバクター・ピロリ菌に対して優れた活性を示すピリドンカルボン酸誘導体を見いだし本発明を完成した。また、これらピリドンカルボン酸誘導体とプロトンポンプ阻害薬の併用がヘリコバクター・ピロリ菌に対する抗菌活性において相乗効果を示し、より高い抗菌活性を現すことを見いだし、さらに該併用がヘリコバクター・ピロリ感染症治療薬として有用なことを見いだし本発明を完成した。
すなわち本発明は下記の式(I)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関するものである。また、これら化合物とプロトンポンプ阻害薬とを組合せたヘリコバクター・ピロリ感染症治療薬に関する。
【0005】
すなわち、本発明は下記の式(I)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0006】
【化14】
(式中、R1 は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2 は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R3 は、
【0007】
【化15】
を表わし、
R4 は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2 −CH(CH3 )−で表される構造となってもよい。)
【0008】
また、下記の式(II)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0009】
【化16】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1 が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2 が水素原子、R4 が塩素原子である式(II)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
あるいは、R1がシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(II)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(III)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0010】
【化17】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がフッ素原子である式(III)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
あるいは、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(III)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメチル基である式(III)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。また、下記の式(IV)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0011】
【化18】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
そして、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がフッ素原子である式(IV)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。さらに、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメチル基である式(IV)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
あるいは、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(IV)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。また、R1とR4が一体化して−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となり、R2が水素原子である式(IV)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、R1とR4が一体化して−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となり、R2がアミノ基である式(IV)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(V)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0012】
【化19】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
あるいは、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がフッ素原子である式(V)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。さらに、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(V)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメチル基である式(V)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(VI)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0013】
【化20】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
あるいは、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(VI)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。さらに、R1がシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(VI)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(VII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0014】
【化21】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(VII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。あるいは、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメトキシル基である式(VII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(VIII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0015】
【化22】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(VIII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(IX)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0016】
【化23】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1とR4が一体化して−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となり、R2が水素原子である式(IX)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
あるいは、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメトキシル基である式(IX)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(IX)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメチル基である式(IX)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(X)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0017】
【化24】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
あるいは、R1とR4が一体化して−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造、R2が水素原子である式(X)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
さらに、R1とR4が一体化して−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となり、R2がアミノ基である式(X)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメトキシル基である式(X)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である式(X)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
また、下記の式(XI)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0018】
【化25】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2がアミノ基、R4がメチル基である(XI)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、下記の式(XII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0019】
【化26】
(式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基を表わし、
R2は、水素原子またはアミノ基を表わし、
R4は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わすか、あるいは上記のR1と一体化して、−O−CH2−CH(CH3)−で表される構造となってもよい。)
さらに、R1がシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメトキシル基である式(XII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
そして、R1が(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピル基、R2が水素原子、R4がメトキシル基である式(XII)で表わされる化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬に関する。
【0020】
あるいは、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有するヘリコバクター・ピロリ感染症治療または予防薬に関する。
また、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する胃炎治療または予防薬に関する。
さらに、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する消化性潰瘍治療または予防薬に関する。
そして、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する胃癌治療または予防薬に関する。
【0021】
あるいは、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を用いるヘリコバクター・ピロリ感染症の治療または予防方法に関する。
また、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を用いる胃炎の治療または予防方法に関する。
さらに、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を用いる消化性潰瘍の治療または予防方法に関する。
そして、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を用いる胃癌の治療または予防方法に関する。
【0022】
あるいは、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せたヘリコバクター・ピロリ感染症治療または予防薬に関する。
また、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せた胃炎治療または予防薬に関する。
さらに、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せた消化性潰瘍治療または予防薬に関する。
そして、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せた胃癌治療または予防薬に関する。
【0023】
あるいは、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを用いるヘリコバクター・ピロリ感染症の治療または予防方法に関する。
また、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを用いる胃炎の治療または予防方法に関する。
さらに、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せた消化性潰瘍の治療または予防方法に関する。
そして、上記の化合物、その塩、またはこれらの水和物を有効成分として含有する抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬とを組合せた胃癌の治療または予防方法に関する。
【0024】
また、プロトンポンプ阻害薬がオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、レミノプラゾール、サビプラゾールまたはパントプラゾールである上記治療または予防薬に関する。
そして、プロトンポンプ阻害薬がパントプラゾールである上記治療または予防薬に関する。
【0025】
あるいは、プロトンポンプ阻害薬がオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、レミノプラゾール、サビプラゾールまたはパントプラゾールである上記の治療または予防方法に関する。
そして、プロトンポンプ阻害薬がパントプラゾールである上記の治療または予防方法に関する。
【0026】
【発明の実施の態様】
本願明細書中で用いる「ヘリコバクター・ピロリ感染症」とは、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染により引き起こされる、胃炎、消化性潰瘍、あるいは胃癌を意味する。
本願発明の式(I)で表わされる化合物の置換基について述べる。
置換基R1 は、置換基を有していてもよい炭素数3から6の環状アルキル基である。
環状アルキル基としてはシクロプロピル基が特に好ましく、この環状アルキル基の置換基としてはハロゲン原子がよく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が特に好ましい。
置換基R1 としては置換基を有していてもよい環状アルキル基が好ましい。これらのうちでもシクロプロピル基または2−ハロゲノシクロプロピル基が好ましい。
置換基R1 として好ましいものとして挙げたハロゲノシクロプロピル基について詳しく述べる。
置換するハロゲン原子としてはフッ素原子および塩素原子を挙げることができるが、特にフッ素原子が好ましい。
この部分での立体的な環境は、シクロプロパン環に関し、ハロゲン原子とピリドンカルボン酸部分が、シス配置であるのが特に好ましい。さらには、(1R,2S)−2−ハロゲノシクロプロピル基が最も好ましい。
このR1 のシス−2−ハロゲノシクロプロピル部分だけでいわゆる対掌体関係の異性体が存在するが、これらのいずれにも強い抗菌活性と高い安全性が認められた。
置換基R4 は、ハロゲン原子、炭素数1から6のアルキル基または炭素数1から6のアルコキシル基を表わす。
アルキル基としては炭素数1から6の直鎖状、または分枝状のものでよいが、好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基およびイソプロピル基である。
アルコキシル基としては、炭素数1から6のものでよいが、好ましくはメトキシル基である。
置換基R4としては、フッ素原子、塩素原子、メチル基およびメトキシル基が好ましい。
あるいは置換基R4 は上記のR1 と一体化して−O−CH2 −CH(CH3 )−で表される構造となり、全体として下記構造となったものも好ましい例として挙げることができる。
【0027】
【化27】
さらには、上記構造式中、3位のメチル基がS配置であるものが好ましい。
【0028】
本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬の有効成分である化合物がジアステレオマーの存在する構造である場合、ヒトに投与する際は単一のジアステレオマーからなるものを投与することが好ましい。この、『単一のジアステレオマーからなる』の『単一』とは、他のジアステレオマーを全く含有しない場合だけでなく、化学的に純粋程度の場合を含むと解される。つまり、物理定数や、生理活性に対して影響がない程度であれば他のジアステレオマーが含まれてもよいと解釈されるのである。
また『立体化学的に単一な』とは、化合物等において不斉炭素原子が含まれるために、異性体関係となる複数種が存在する場合にそれらのうちの1種のみにて構成されたものであることを意味する。この場合においてもこの『単一』に関しては上記と同様に考える。
本発明のピリドンカルボン酸誘導体は遊離体のままでもよいが、酸付加塩としてあるいはカルボキシル基の塩としてもよい。酸付加塩とする場合の例としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩類、あるいは酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩等の有機酸塩類を挙げることができる。
またカルボキシル基の塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またトリエチルアミン塩や N−メチルグルカミン塩、トリス−(ヒドロキシルメチル)アミノメタン塩等で無機塩類、有機塩類の何れでもよい。
またこれらのピリドンカルボン酸誘導体の遊離体や酸付加塩、カルボキシル基の塩は水和物として存在することもある。
一方、カルボン酸部分がエステルであるピリドンカルボン酸誘導体は合成中間体やプロドラッグとして有用である。例えば、アルキルエステル類、ベンジルエステル類、アルコキシアルキルエステル類、フェニルアルキルエステル類およびフェニルエステル類は合成中間体として有用である。
また、プロドラッグとして用いられるエステルとしては、生体内で容易に切断されてカルボン酸の遊離体を生成するようなエステルであり、例えば、アセトキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルエステル、コリンエステル、ジメチルアミノエチルエステル、5−インダニルエステルおよびフタリジニルエステル、5−アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イルメチルエステルそして3−アセトキシ−2−オキソブチルエステル等のオキソアルキルエステルを挙げることができる。
【0029】
式(I)で表される本発明の化合物は種々の方法により製造されるが、その好ましい一例を挙げれば、例えば、式(XIII)
【0030】
【化28】
[式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、置換もしくは無置換のフェニルスルホニル基または炭素数が1から3の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基等の脱離基としての機能する置換基を表わし、
Yは水素原子であるか、または式(XIV)
【0031】
【化29】
−B(Y1 )Y2 (XIV)
(式中Y1 およびY2 はフッ素原子あるいは炭素数2から4のアルキルカルボニルオキシ基を表わす。)
で表わされるホウ素含有置換基であり、
R1 、R2 およびR4 は式(I)において定義したものと同じである。]
で表わされる化合物を、
【0032】
【化30】
[式中R5 は水素原子、またはアミノ基の保護基を表わす。]
【0033】
で表わされる化合物あるいはその付加塩と反応させることによって製造することができる。
上記の化合物は、環状の窒素原子が保護基によって保護されている以下の化合物を脱保護することにより得ることができる。
【0034】
【化31】
[式中Qはアミノ基の保護基を表わし、R5 は、水素原子、またはアミノ基を表わす。]
【0035】
反応は溶媒を使用して、または溶媒を使用せず行うことができる。反応に使用する溶媒は、反応条件下で不活性であればよく、例えばジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、エタノール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、水、3−メトキシブタノール、またはこれらの混合物を挙げることができる。
反応は無機塩基または有機塩基のような酸受容体、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩または炭酸水素塩、あるいはトリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基性化合物の存在下で行うのが好ましい。
反応温度は、通常、室温ないし200℃の温度範囲で実施でき、好ましくは25から150℃の範囲である。反応時間は30分から48時間の範囲でよく、通常は30分から2時間程度で完結する。
アミノ基の保護基としては、この分野で通常使用されている保護基であればよく、例えば、第三級ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基類、ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラニトロベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基類、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、ベンゾイル基等のアシル基類、第三級ブチル基、ベンジル基、パラニトロベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基類、またはアラルキル基類、メトキシメチル基、第三級ブトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基等のエーテル類、トリメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、第三級ブチルジメチルシリル基、トリベンジルシリル基、第三級ブチルジフェニルシリル基等のシリル基類を挙げることができる。
【0036】
Yが式(XIV)の構造の場合、化合物(XIII)に対し化合物(イ−1)、(ロ−1)、(ハ−1)、(ニ−1)、(ホ−1)、(ヘ)、(ト−1)、(チ−1)、(リ−1)、(ヌ−1)、または(ル−1)を反応させた後、酸性または塩基性条件下で処理することにより相当するカルボン酸に変換することができる。
また、脱保護が必要な場合は保護基に対応した適当な条件で保護基を除去して式(I)で示される目的化合物を得ることができる。
化合物のうち(イ−1)、(イ−2)、(ロ−1)、(ロ−2)、(ハ−1)、(ハ−2)、(ニ−1)、(ニ−2)、(ホ−1)、(ホ−2)、(ヘ)、(ヘ−2)、(ト−1)、(ト−2)、(チ−1)および(チ−2)は、公知であるか、公知の方法に準じて容易に製造できる(例えば、特開平2−231475号公報、特開平8−277284号公報、特開平9−67368号公報、wo97/19072号公報、wo97/40037号公報、wo98/02431号公報、wo98/13370号公報、wo98/18783号公報)。
化合物(リ−1)、(リ−2)、(ヌ−1)、(ヌ−2)、(ル−1)および(ル−2)は種々の方法により製造されるが、その一例として参考例に示す方法で合成されるが、これに限定されるものではない。
単一の異性体からなる式(I)の化合物の合成に好ましい単一の異性体からなるシス−2−フルオロシクロプロピルアミンは、例えば、特開平2−231475号記載の方法で合成できる。この様にして得られた光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミン誘導体を原料とする、単一の異性体からなる式(I)の化合物の合成は、例えば、特開平2−231475号記載の方法によって実施することができる。
本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬はヘリコバクター・ピロリ菌に対して、優れた活性を示し、ヘリコバクター・ピロリ感染症治療薬として有用である。
本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬を使用する場合、投与量は成人一日当たり50mgから1g、好ましくは100mgから300mgの範囲である。
この一日量を一日1回、あるいは2から4回に分けて投与する。また一日量は必要によっては上記の量を超えてもよい。
本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬は、投与法に応じ適当な製剤を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。製剤の剤型としては例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤や、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性ないし水性の懸濁液等を経口用製剤として例示できる。
注射剤としては、製剤中に安定剤、防腐剤、溶解補助剤を使用することもあり、これらの補助剤を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としても良い。また一投与量を容器に収納しても良く、また多投与量を同一の容器に収納しても良い。
固形製剤としては、本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬とともに製剤学上許容されている添加物を含んでよく、例えば、充填剤類や増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類、潤滑剤類等を必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。液体製剤としては、溶液、懸濁液、乳液剤等を挙げることができるが添加剤として懸濁化剤、乳化剤等を含むこともある。
【0037】
本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬は、単独で使用してもよいが、プロトンポンプ阻害薬と組合せることにより、ヘリコバクター・ピロリに対する抗菌効果を増強させることができる。
ここで「組合せ」といった場合、プロトンポンプ阻害薬を本願発明の抗ヘリコバクター・ピロリ薬と別の製剤として製造した後、組合せて使用する場合、また抗ヘリコバクター・ピロリ薬とプロトンポンプ阻害薬を組合せて一製剤(例えば、特表平9−511767号公報参照)として製造する場合のどちらも意味するものとする。プロトンポンプ阻害薬としては、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、レミノプラゾール、サビプラゾール、パントプラゾール等を挙げることができる。プロトンポンプ阻害薬の使用量は一日当たり0.1から200mg、好ましくは10から100mg、特に好ましくは40から80mgの範囲である。
【0038】
【実施例】
[参考例リ−1]
エチル 3−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)プロピオラ−ト
【0039】
【化32】
窒素雰囲気下、クロロメチルトリメチルホスホニウム クロリド(5.156g,14.85mmol)を無水テトラヒドロフラン(30ml)に縣濁し、内温を−55℃に冷却後、n−ブチルリチウムの1.68M、n−ヘキサン溶液(8.87ml,14.90mmol)を5分間で滴下した。反応縣濁液を氷冷下にて30分、室温にて3時間撹拌した後、内温を−55℃に冷却した。この反応懸濁液に1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロパンカルバルデアルデヒド(2.498g,13.50mmol)を無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液を10分間で滴下後、−50℃で1時間、次いで氷冷下にて30分間撹拌した。反応縣濁液を−78℃に冷却し、1.68M、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(17.68ml,29.70mmol)を10分間で滴下後、−78℃で20分間撹拌した。この反応懸濁液にエチル クロロホルマート(1.61ml,16.88mmol)を滴下後、反応縣濁液を−78℃で1.5時間、氷冷下にて1時間撹拌した。氷冷下、反応縣濁液に飽和食塩水(30ml)を加え、有機層を分取後、水層をジエチルエ−テル(30ml×2)で抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、濾液を減圧濃縮し、残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ−に付し、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1を用いた溶出部から2.178g(63.9%)の標記の化合物を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:5.04(brs,1H),4.27(q,J=7.16Hz,2H),1.44(s,9H),1.28(t,J=7.16Hz,3H),1.15(m,2H),1.06(m,2H).
【0040】
[参考例リ−2]
エチル 1−ベンジル−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)−3−ピロリン−3−カルボキシラ−ト
【0041】
【化33】
N−ベンジル−N−(n−ブトキシメチル)トリメチルシリルメチルアミン(2.006g,7.176mmol)、およびエチル 3−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)プロピオラ−ト(1.136g,4.485mmol)を乾燥したジクロロメタン(9ml)に溶解し、室温で撹拌下、1.0Mトリフルオロ酢酸のジクロロメタン溶液(0.72ml,0.72mmol)を加え、反応液を3時間撹拌した。反応液に飽和重曹水(20ml)を加え、ジクロロメタン(20ml×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。濾過後、濾液を減圧濃縮し、残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ−に付し、クロロホルムを用いた溶出部から1.449g(83.6%)の標記の化合物を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.40−7.11(m,5H),5.17(brs,1H),4.12(q,J=6.83Hz,2H),3.85(m,2H),3.72(m,2H),3.67(s,2H),1.44(s,9H),1.24(t,J=6.83Hz,3H),1.14(m,2H),1.01(m,2H).
【0042】
[参考例リ−3]
エチル シス−1−ベンジル−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)ピロリジン−3−カルボキシラ−ト
【0043】
【化34】
窒素気流下、ビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)ロジウム(I)パ−クロラ−ト(54.5mg,0.14mmol)、および1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(67.4mg,0.17mmol)を乾燥、脱気したメタノ−ル(25ml)に溶解し、室温で10分間撹拌した。この触媒溶液にエチル 1−ベンジル−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)−3−ピロリン−3−カルボキシラ−ト(1.090g,2.820mmol)を乾燥、脱気したメタノ−ル(15ml)に溶解した溶液を加え、この反応液を水素雰囲気下(1kg/cm2)、室温にて2.5時間撹拌した。反応液に活性炭(1g)を加え、室温にて30分間後、セライトを通じて濾過(メタノ−ル洗浄)し、濾液を減圧濃縮後、残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ−に付し、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1を用いた溶出部から1.071g(97.8%)の標記の化合物を無色結晶として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.40−7.19(m,5H),5.07(brs,1H),4.13(q,J=7.33Hz,2H),3.63(s,2H),2.87(m,1H),2.67(m,1H),2.54(m,1H),2.35(m,1H),2.15(m,1H),1.79(m,1H),1.46(s,9H),1.23(t,J=7.33Hz,3H),0.85(m,2H),0.69(m,2H).
【0044】
[参考例リ−4]
シス−1−ベンジル−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)−3−ヒドロキシメチルピロリジン
【0045】
【化35】
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(195.6mg,5.153mmol)を無水テトラヒドロフラン(40ml)に懸濁し、−15℃にて撹拌下、エチル シス−1−ベンジル−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)ピロリジン−3−カルボキシラ−ト(1.001g,2.577mmol)を無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液を15分間で滴下した。反応懸濁液を氷冷下にて3.5時間撹拌後、冷却水(5ml)を徐々に加え、更に室温にて15分間撹拌した。反応懸濁液をセライトを通じて濾過(ジエチルエ−テル洗浄)し、濾液を減圧濃縮、乾燥して、833.9mg(93.4%)の標記の化合物を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.39−7.00(m,5H),5.10(brs,1H),3.69(m,2H),3.58(s,2H),2.99(m,1H),2.61(m,1H),2.51(m,1H),2.27(m,1H),2.00(m,1H),1.94(brs,1H),1.74(m,1H),1.42(s,9H),0.90(m,1H),0.74−0.61(m,3H).
【0046】
[参考例リ−5]
シス−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)−3−ヒドロキシメチルピロリジン
【0047】
【化36】
シス−1−ベンジル−4−(1−第三級ブトキシカルボニルアミノシクロプロピル)−3−ヒドロキシメチルピロリジン(820.1mg,2.376mmol)をメタノ−ル(50ml)に溶解し、5%パラジウム炭素触媒(水分;55.6%,750mg)を加えた後、水素加圧下(4.5kg/cm2)一昼夜撹拌した。触媒をセライト濾過(メタノ−ル洗浄)により除去後、濾液を減圧濃縮して578.8mg(91.0%)の標記の化合物を白色アモルファスとして得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:5.05(brs,1H),3.72(m,2H),3.15(m,2H),2.82(m,2H),2.29(m,1H),1.94(br,2H),1.76(m,1H),1.42(s,9H),0.92(m,2H),0.82(m,1H),0.61(m,1H).
【0048】
[参考例ヌ−1]
1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−3−イソアミルオキシカルボニルシクロブタン
【0049】
【化37】
1―ベンジルオキシ―3―イソアミルオキシカルボニルシクロブタン―3―カルボン酸 46.70g(145.8mmmol)を第3級ブタノール750mlに溶解し、氷冷攪拌下、ジフェニルリン酸アジド34.55ml(160.3mmol)、次いでトリエチルアミン44.70ml(320.7mmol)を加えた。同温で10分攪拌後氷浴を外し、室温下で2時間攪拌した。8時間加熱還流した後、溶媒を減圧下留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、表記化合物45.28g(79.4%)を得た。
【0050】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
0.91(3H,d,J=6.8Hz),0.92(3H,d,J=6.8Hz),1.43(9H,s),1.48−1.57(2H,m),1.63−1.71(1H,m),2.23−2.38(1H,m),2.39−2.52(1H,m),2.55−2.69(1H,m),2.82−2.93(1H,m),4.09−4.28(3H,m),4.44(2H,s),4.92(0.5H,brs),5.12(0.5H,brs),7.28−7.36(5H,m).
【0051】
[参考例ヌ−2]
1−ベンジルオキシ−3−(第 3 級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−カルボン酸
【0052】
【化38】
1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−3−イソアミルオキシカルボニルシクロブタン45.28g(115.7mmol)をメタノール300mlに溶解し、氷冷攪拌下、1規定水酸化ナトリウム127ml(127.2mmol)を10分かけて滴下した。10分攪拌後、氷浴を外し、室温下で5時間攪拌した。水200mlを加え、減圧下メタノールを留去した。残さにエーテルを加え分液後、水層をジエチルエーテルで抽出し、エーテル層を水で抽出した。水層を合わせ、氷冷攪拌下10%クエン酸で酸性にし、酢酸エチルを加え分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、水層を更に酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後濾過し、減圧下溶媒を留去して表記化合物37.24g(定量的)を得た。本化合物は、精製することなく次の反応に用いた。
【0053】
[参考例ヌ−3]
エチル 3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−3−オキソプロピオネート
【0054】
【化39】
1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−カルボン酸37.24g(115.7mmol)をテトラヒドロフラン300mlに溶解し、氷冷攪拌下、N,N―カルボニルジイミダゾール20.63g(127.2mmol)を加えた。10分攪拌後、氷浴を外し、室温下で3時間攪拌した。反応液に氷冷攪拌下、マグネシウムエチルマロネート36.45g(127.2mmol)のテトラヒドロフラン200ml溶液を滴下した。1時間攪拌後に氷浴を外し、室温下で10時間攪拌した。氷冷攪拌下、反応液に10%クエン酸水溶液を加え、次いで酢酸エチルを加えて分液し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。更に有機層を飽和食塩水で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出した後に、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、表記化合物38.84g(85.8%)を得た。
【0055】
[参考例ヌ−4]
エチル 3−[1−ベンジルオキシ−3−(第 3 級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−3−ヒドロキシプロピオネート
【0056】
【化40】
エチル 3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−3−オキソプロピオネート38.84g(99.22mmol)をメタノール300mlに溶解し、氷冷攪拌下、テトラヒドロホウ酸ナトリウム1.617g(42.75mmol)を5回に分けて加えた。同温度で10分攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を徐々に加えた。減圧下メタノールを留去し、残さに酢酸エチルを加え分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、表記化合物35.61g(91.2%)を得た。
【0057】
[参考例ヌ−5]
エチル (E)−3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]アクリレート
【0058】
【化41】
エチル 3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3 級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−3−ヒドロキシプロピオネート35.61g(90.50mmol)をジクロロメタン200mlに溶解し、氷冷攪拌下、メタンスルホニルクロリド9.050ml(116.9mmol)、次いでトリエチルアミン37.24ml(267.2mmol)を加えた。2時間攪拌後、ジアザビシクロウンデセン30.60ml(204.6mmol)を加えた。1時間攪拌後に氷浴を外し、室温下で2時間攪拌した。氷冷攪拌下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、酢酸エチルを加えて分液した。有機層を10%クエン酸水溶液で洗浄後、飽和食塩水で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その後濾過し減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、表記化合物31.07g(91.4%)を得た。
【0059】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.25−1.30(3H,m),1.42(4.5H,s),1.43(4.5H,s)2.22−2.35(2H,m),2.57−2.72(2H,m),4.01−4.05(0.5H,m),4.07−4.27(m,2.5H),4.48(2H,s),4.81(0.5H,s),4.94(0.5H,brs),5.79(0.5H,d,J=15.5Hz),5.86(0.5H,d,J=15.5Hz),6.98(0.5H,d,J=15.5Hz),7.02(0.5H,d,J=15.5Hz),7.27−7.36(5H,m).
【0060】
[参考例ヌ−6]
エチル 3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−4−ニトロブタノエート
【0061】
【化42】
エチル (E)−3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]アクリレート31.07g(82.75mmol)をニトロメタン300mlに溶解し、氷冷攪拌下、ジアザビシクロウンデセン13.37ml(82.75mmol)を滴下した。10分攪拌後に氷浴を外し、室温下で1時間攪拌した。氷冷攪拌下、反応液に10%クエン酸水溶液を徐々に加え酸性にした後、酢酸エチルを加え分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下溶媒を留去し、表記化合物35.12g(97.2mmol)を得た。本化合物は、精製することなく次の反応に用いた。
【0062】
[参考例ヌ−7]
4−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン
【0063】
【化43】
エチル 3−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−4−ニトロブタノエート35.12g(80.46mmol)をエタノール700mlに溶解し、ラネーニッケル50mlを窒素雰囲気下加えた。水素に置換した後、50℃で5時間攪拌した。反応液を氷冷した後、セライト濾過し、溶媒を減圧下留去した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、表記化合物20.53g(70.8%)を得た。
【0064】
[参考例ヌ−8]
1−ベンジル−4−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン
【0065】
【化44】
4−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン20.53g(56.96mmol)をジメチルホルムアミド200ml、テトラヒドロフラン60mlの混合溶液に溶解し、氷冷攪拌下、60%水素化ナトリウム2.51g(62.7mmol)を徐々に加えた。10分攪拌後に氷浴を外し、室温下で1時間攪拌した。氷冷攪拌下、塩化ベンジル7.21ml(62.7mmol)を滴下し1時間攪拌後、室温下にて12時間攪拌した。氷冷攪拌下、反応液に水を加え、次いで酢酸エチルを加えて分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、1:1のジアステレオマー混合物である表記化合物18.00g(70.1%)を得た。得られた表記化合物を更にシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ジアステレオマーの関係にある異性体A、および異性体Bを分離し、異性体Bを用いて以下の反応を実施した。
【0066】
異性体A
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.41(9H,s),1.93−2.04(2H,m),2.30−2.52(4H,m),2.92−3.08(1H,m),3.10−3.18(1H,m),3.18−3.27(1H,m),4.10−4.08(1H,m),4.34(1H,d,J=14.6Hz),4.36(2H,s),4.52(1H,d,J=14.6Hz),4.63(1H,s),7.21−7.36(10H,m).
【0067】
異性体B
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.40(9H,s),2.10−2.17(1H,m),2.21−2.37(2H,m),2.41−2.54(3H,m),2.70−2.80(1H,m),3.08−3.20(1H,m),3.20−3.28(1H,m),3.74−3.83(1H,m),4.33(1H,d,J=14.6Hz),4.37(2H,s),4.52(1H,d,J=14.6Hz),4.78(1H,s),7.21−7.35(10H,m).
【0068】
[参考例ヌ−9]
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1−ヒドロキシシクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン(異性体B)
【0069】
【化45】
1−ベンジル−4−[1−ベンジルオキシ−3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)シクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン(異性体B)4.86g(10.8mmol)をエタノール140mlに溶解し、水酸化パラジウム−炭素触媒1gを加え、水素圧3気圧にて光照射下、接触還元を1時間行った。触媒を濾去後、溶媒を留去し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、表記化合物4.01g(定量的)を得た。更に本成績体のピロリジン4 の不斉炭素に由来するエナンチオマーである異性体B1、および異性体B2の光学分割を下記条件下のHPLCにより実施した。
【0070】
HPLC条件
カラム:DAICEL CHIRALPACK AD 20x250mm
移動層:ヘキサン:エタノール=1:1
流量:15ml/min
温度:室温
検出:UV(254nm)
【0071】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.42(9H,s),2.23−2.42(3H,m),4.45−4.68(4H,m),3.03−3.06(1H,m),3.23−3.33(1H,m),3.97−4.07(1H,m),4.38(1H,d,J=14.7Hz),4.49(1H,d,J=14.7Hz),4.72(1H,s,),7.21−7.36(5H,m).
【0072】
[参考例ヌ−10]
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1−フルオロシクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン(異性体B1)
【0073】
【化46】
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1−ヒドロキシシクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン(異性体B1)1.79g(4.96mmol)をトルエン50ml、ジクロロメタン20mlの混合溶媒に溶解し、氷冷攪拌下、ジエチルアミノ硫黄トリフロリド1.31ml(9.92mmol)を加え、室温にて12時間攪拌した。氷冷攪拌下、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくり加え塩基性とした後、クロロホルムを加え分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。水層をクロロホルムで再度抽出し、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、表記化合物541mg(30.0%)を得た。
【0074】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.41(9H,m),2.12−2.24(2H,m),2.30−2.37(1H,m),2.48−2.72(3H,m),2.93−3.05(1H,m),3.16−3.18(1H,m),3.25−3.33(1H,m),4.34(1H,d,J=14.7Hz),4.53(1H,d,J=14.7Hz),4.73(1H,s),5.04−5.11(0.5H,m),5.18−5.25(0.5H,m),7.22−7.36(5H,m).
【0075】
[参考例ヌ−11]
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1―フルオロシクロブタン−3−イル]−2−ピロリジンチオン(異性体B1)
【0076】
【化47】
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1−フルオロシクロブタン−3−イル]−2−ピロリドン(異性体B1)517mg(1.43mmol)をトルエン20mlに溶解し、ローソン試薬635mg(1.57mmol)を加え、50℃で3時間攪拌した。減圧下溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、表記化合物485mg(89.5%)を得た。
【0077】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.41(9H,s),2.04−2.22(2H,m),2.44−2.60(1H,m),2.60−2.73(1H,m),2.80−3.07(2H,m),3.13−3.20(1H,m),3.56−3.63(2H,m),4.59(1H,s),4.76(1H,d,J=14.2Hz),5.02−5.11(0.5H,m),5.11−5.23(1.5H,m),7.27−7.38(5H,m).
【0078】
[参考例ヌ−12]
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1−フルオロシクロブタン−3−イル]ピロリジン(異性体B1)
【0079】
【化48】
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ−1―フルオロ)シクロブタン−3−イル]−2−ピロリジンチオン(異性体B1)485mg(1.28mmol)をエタノール20mlに溶解し、窒素雰囲気下、氷冷攪拌しながらラネーニッケル2.0mlを加えた。同温で10分攪拌後に氷浴を外し、室温下で2時間攪拌した。反応液をセライト濾過し、減圧下溶媒を溜去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、表記化合物310mg(69.5%)を得た。
【0080】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.49(9H,s),1.57−1.70(2H,m),1.94−2.28(6H,m),2.58−2.63(1H,m),2.70−2.82(1H,m),2.93−3.21(3H,m),3.59(2H,s),5.19−5.22(0.5H,m),5.32−5.41(0.5H,m),7.25−7.33(5H,m).
【0081】
[参考例ヌ−13]
4−[3−(第 3 級ブトキシカルボニルアミノ)−1−フルオロシクロブタン−3−イル]ピロリジン(異性体B1)
【0082】
【化49】
1−ベンジル−4−[3−(第3級ブトキシカルボニルアミノ)−1−フルオロシクロブタン−3−イル]ピロリジン(異性体B1)310mg(0.89mmol)をエタノール20mlに溶解し,10%パラジウム−炭素触媒を310mgを加えた。4気圧の水素雰囲気下、光を照射しながら2時間攪拌した。触媒を濾去後、減圧下溶媒溜去して表記化合物233mg(定量的)を得た。本成績体は、精製することなく次の反応に用いた。
【0083】
[参考例ル−1]
4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン
【0084】
【化50】
A法:
4−(S)−ヒドロキシメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン(2.00g,9.12mmol)の塩化メチレン(50ml)溶液に−78℃にてジエチルアミノ硫黄トリフロリド(1.90ml,14.38mmol)を加えた後、ゆっくり昇温しながら室温で一晩攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後した。溶媒を留去して得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、3%メタノール−クロロホルムの溶出部より標記の化合物1.11g(55%)を淡黄色油状物として得た。
B法:
4−(S)−ヒドロキシメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン(5.00g,22.80mmol)の塩化メチレン(100ml)溶液にトリエチルアミン(6.36ml,45.63mmol)を加え、氷冷下、塩化メタンスルホニル(2.65ml,34.24mmol)を滴下し、同温で30分間攪拌した。反応液を10%クエン酸水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残留物をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、1Nテトラ−n−ブチルアンモニウムフロリド−テトラヒドロフラン溶液(114ml)を加え、1.5時間加熱還流した。反応溶液に10%クエン酸水溶液を加え、テトラヒドロフランを留去後、クロロホルム(200ml×3)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残留物を溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=3:1の溶出部より標記の化合物を定量的に淡黄色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.52(3H,d,J=7.33Hz),2.24−2.29(1H,m),2.52−2.63(2H,m),3.10(1H,t,J=9.76Hz),3.20(1H,dd,J=5.37,9.76Hz),4.26−4.47(2H,m),5.50(1H,q,J=7.32Hz),7.26−7.36(5H,m).
【0085】
[参考例ル−2]
4−(S)−フルオロメチル−3−(R)−ヒドロキシ−N−[1−(R)−フ ェニルエチル]−2−ピロリドン
【0086】
【化51】
窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン(1.65ml,11.75mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に−78℃にて1.66Nn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(7.08ml)を滴下し、0℃にて5分間攪拌した。−78℃に冷却後、この溶液を4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン(2.00g,9.04mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に、窒素雰囲気下、−78℃にて滴下した。同温で15分間攪拌した後、減圧して脱気後、容器内を酸素ガスで置換して酸素雰囲気下として、同温で30分間攪拌した。反応終了後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、テトラヒドロフランを留去後、酢酸エチル(150ml×3)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、3%メタノール−クロロホルムの溶出部より標記の化合物1.57g(73%)を白色結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.52(3H,d,J=7.32Hz),2.31−2.48(1H,m),3.05−3.10(1H,m),3.16−3.21(1H,m),4.29(1H,d,J=9.37Hz),4.53−4.67(2H,m),5.48(1H,q,J=7.33Hz),7.26−7.37(5H,m).
【0087】
[参考例ル−3]
3−(S)−アジド−4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン
【0088】
【化52】
4−(S)−フルオロメチル−3−(R)−ヒドロキシ−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン(2.61g,11.00mmol)の塩化メチレン(40ml)溶液にトリエチルアミン(3.07ml,22.02mmol)を加え、−10℃にて塩化メタンスルホニル(1.28ml,16.54mmol)を滴下し、同温で30分間攪拌した。反応液を10%クエン酸水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残留物をN,N−ジメチルホルムアミド(80ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(2.86g,44.00mmol)を加え、100℃にて1晩攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチル(200ml×3)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=1:3の溶出部より標記の化合物1.81g(63%)を淡黄色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.56(3H,d,J=7.32Hz),2.67−2.75(1H,m),3.02(1H,dd,J=7.32,10.25Hz),3.23(1H,dd,J=4.39,10.25Hz),4.27(1H,d,J=8.30Hz),4.38(1H,ddd,J=7.81,9.28,46.39Hz),4.59(1H,ddd,J=5.86,9.28,46.37Hz),5.48(1H,q,J=7.32Hz),7.26−7.37(5H,m).
【0089】
[参考例ル−4]
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン
【0090】
【化53】
3−(S)−アジド−4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン(1.81g,6.90mmol)のエタノール(100ml)溶液に二炭酸ジ第三級ブチル(3.01g,13.79mmol)と10%パラジウム炭素触媒(1.80g)を加え、室温で一晩、接触水素添加を行った。触媒をろ去後、ろ液の溶媒を留去し、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付した。酢酸エチル:ヘキサン=1:2の溶出部より標記の化合物1.68g(72%)を白色結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.45(9H,s),1.53(3H,d,J=7.32Hz),2.85−2.93(1H,m),3.06(1H,dd,J=6.25,10.74Hz),3.31(1H,d,J=9.26Hz),4.32−4.53(3H,m),5.08(1H,brs),5.49(1H,q,J=6.83Hz),7.26−7.36(5H,m).
【0091】
[参考例ル−5]
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン
【0092】
【化54】
氷冷下、3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]−2−ピロリドン(1.68g,4.99mmol)のテトラヒドロフラン(60ml)溶液にボラン−テトラヒドロフラン錯体の1molテトラヒドロフラン溶液(19.98ml)を滴下後、室温で一晩攪拌した。溶媒を留去して残留物にエタノール−水(4:1)の混合溶媒(40ml)を加え、トリエチルアミン(8ml)存在下、2時間加熱還流した。放冷後、溶媒を留去した。残留物にクロロホルムを加えて飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル:ヘキサン=1:3の溶出部より標記の化合物1.54g(96%)を白色結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.35(3H,d,J=6.84Hz),1.43(9H,s),2.38−2.78(5H,m),3.24(1H,q,J=6.34Hz),4.37−4.57(3H,m),4.84(1H,d,J=8.30Hz),7.25−7.35(5H,m).
【0093】
[参考例ル−6]
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−フルオロメチルピロリジン
【0094】
【化55】
3−(S)−第三級ブトキシカルボニルアミノ−4−(S)−フルオロメチル−N−[1−(R)−フェニルエチル]ピロリジン(484mg,1.50mmol)のエタノール(50ml)溶液に10%パラジウム炭素触媒(500mg)を加え、50℃で一晩、接触水素添加を行った。触媒をろ去後、ろ液の溶媒を留去し、粗製の標記の化合物を定量的に得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.44(9H,s),1.69(1H,brs),2.45−2.53(1H,m),2.66(1H,dd,J=5.37,10.74Hz),2.90−2.95(1H,m),3.18(2H,dd,J=7.81,10.74Hz),4.18−4.27(1H,m),4.44−4.53(1H,m),4.56−4.65(1H,m).
【0095】
試験例1
ヘリコバクター・ピロリに対する抗菌活性(MIC:μg/ml)
【0096】
【表1】
【0097】
ピリドンカルボン酸誘導体1((−)−7−[7(S)−アミノ−5−アザスピロ(2,4)ヘプタン−5−イル]−8−クロロ−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−シス−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノロン−3−カルボン酸)を0.1規定の水酸化ナトリウムに溶解し、比較化合物としてクラリスロマイシンをメタノールに溶解し、パントプラゾールはメタノールに溶解後、0.1N塩酸処理を1時間実施したものを検体とした。表1に示すヘリコバクター・ピロリの臨床分離株を、9%馬血液加Brain Heart Infusion(BHI)寒天培地(メルク社製)に塗布し、微好気条件で37゜C、5日間培養した。生育したコロニーをかきとりBHI液体培地(メルク社製)に約108/mlになるよう調製し、これを接種菌液とした。その接種菌液10μlをイノキュレイター(サクマ製作所株式会社製)を用いて薬剤含有および非含有の9%BHI寒天培地に接種し、微好気条件下、37℃で5日培養後、発育の有無を判定しMICを測定した。
【0098】
【0099】
【表2】
【0100】
試験例2
ピリドンカルボン酸誘導体とプロトンポンプ阻害薬の併用効果
試験例1の測定結果を基に併用効果をチェッカーボード法(Eliopoulos,G.M.,and R.C.Moelleling, 1991,Antimicrobial Combinations, p432-492.In V.Lorian(ed) Antibiotics in laboratory medicine. 3rd ed, The Williams and Wilkins Co.,)により測定し、FIC indexが0.5以下を相乗効果ありと判定した。
【0101】
【表3】
Claims (6)
- (−)−7−[7(S)−アミノ−5−アザスピロ(2,4)ヘプタン−5−イル]−8−クロロ−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−シス−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノロン−3−カルボン酸、その塩、またはこれらの水和物とプロトンポンプ阻害薬とを組合わせたヘリコバクター・ピロリ感染症治療または予防薬。
- (−)−7−[7(S)−アミノ−5−アザスピロ(2,4)ヘプタン−5−イル]−8−クロロ−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−シス−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノロン−3−カルボン酸、その塩、またはこれらの水和物とプロトンポンプ阻害薬とを組合わせた胃炎治療または予防薬。
- (−)−7−[7(S)−アミノ−5−アザスピロ(2,4)ヘプタン−5−イル]−8−クロロ−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−シス−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノロン−3−カルボン酸、その塩、またはこれらの水和物とプロトンポンプ阻害薬とを組合わせた消化性潰瘍治療または予防薬。
- (−)−7−[7(S)−アミノ−5−アザスピロ(2,4)ヘプタン−5−イル]−8−クロロ−6−フルオロ−1−[(1R,2S)−シス−2−フルオロ−1−シクロプロピル]−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノロン−3−カルボン酸、その塩、またはこれらの水和物とプロトンポンプ阻害薬とを組合わせた胃癌治療または予防薬。
- プロトンポンプ阻害薬が、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、レミノプラゾール、サビプラゾールまたはパントプラゾールである請求項1から4のいずれか一項記載の治療または予防薬。
- プロトンポンプ阻害薬が、パントプラゾールである請求項1から4のいずれか一項記載の治療または予防薬。
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