JP4299789B2 - トマト香気増強方法 - Google Patents

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Description

本発明はトマトの酵素処理による香味の増強方法または香味の増強されたトマト酵素処理物の製造方法に関する。
トマト果実は破砕し、搾汁、濃縮等の処理を行いトマト粉砕物、トマトピューレ、トマト濃縮果汁等の製造が行なわれる。このようなトマト処理物は多くの食品に使用されるが、トマトはもともと香りがあまり強くないうえ、さらに濃縮等の工程で香気成分が損失してしまい、風味が弱くなってしまう。そのため、たとえば、セイボリー系フレーバーに使用するには、添加量を多くしなければならなかった。
一方、トマトには香気前駆体として多くの配糖体が含まれており、それらの、存在や化学構造について既に多くの研究がなされている。たとえばトマトの水抽出物から配糖体画分を分取し、アーモンド由来のβ−グルコシダーゼを作用させた後に香気分析を行い、多く(50種類以上)の香気化合物のβ−グルコサイドが存在することを予想する報告(非特許文献1)、生のトマトより炭素数13のノルイソプレノイド(イオノン関連化合物)のβ−グリコサイドの単離に関する報告(非特許文献2)、生のトマトからのフラネーオールのβ−グリコサイド単離に関する報告(非特許文献3)、凍結濃縮トマト果汁からの2−フェニルエタノール、ベンジルアルコール等のβ−グリコサイド単離に関する報告(非特許文献4および5)、トマト原料にプロテアーゼおよびセルラーゼを作用させ、香気成分が増加することを確認した報告(非特許文献6)等がある。
また、植物全般の香気前駆体としての配糖体の利用に関して、植物の香気配糖体をグリコシダーゼまたはオリゴグルコシダーゼによる加水分解により香気化合物の製造方法(特許文献1)が提案されている。
一方、トマトの香気前駆体利用に関しては、普段あまり利用されないトマトの種子を粉砕し、リポキシゲナーゼやアルコール分解酵素を作用させ、トマトフレーバーを得る方法(特許文献2)が提案されている。
特開平9−28389 特開平9−163955 J.Agric.Food.Chem.vol.40, p249−252(1992) J.Essential Oil Research,vol.3(1), p27−31(1991) J.Agric.Food.Chem.vol.42, p1595−1597(1994) ACS Symp. Ser.,596,Fruit Flavors,p164−181(1995) 果汁協会報,(484),p29−37(1998) 第48回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会講演要旨集、p207−209(2004)
しかしながら、前記配糖体に関する研究は、トマト中の香気配糖体の存在の確認に主眼が置かれていた。また、植物の香気前駆体である配糖体全般の分解に関する提案は、実質上係わる酵素はβ−グルコシダーゼであり、トマト中に存在する全ての配糖体を有効に利用するという観点からは不十分なものであった。また、プロテアーゼおよびセルラーゼによる処理は主として味の増強を目的としたものである。また、トマト種子の酵素分解に関する提案は通常は廃棄される種子の利用に関するものであり、トマト果実中の未利用の香気前駆体全てを有効に利用しようという提案とは異なるものである。
本発明の目的は、トマトの風味前駆体を効率よく分解することにより、風味前駆体を有効に利用し、香気が増強されたトマト酵素処理物(トマトピューレ、トマト粉砕物、トマトジュースまたはトマト濃縮物)を提供することである。
トマト搾汁液に配糖体分解酵素を作用させると、配糖体が分解し、新たな香気の生成が見られることは前述の通りである。ところが、今回驚くべきことに、トマトにエステラーゼを作用させることにより、香気物質が格段に増加すること、そしてさらに、前記酵素に加えてプロテアーゼ、配糖体分解酵素およびセルラーゼから選ばれる1種又は2種以上を同時に作用させると、さらに一層香味が増加することを見いだし、本発明を完成するに至った。
かくして本発明は、トマトをエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)で処理することを特徴とするトマト香の増強方法である。
本発明は、また、前記エステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)処理に加え、更にプロテアーゼ、配糖体分解酵素およびセルラーゼから選ばれる1種または2種以上で処理することを特徴とするトマト香の増強方法である。
本発明は、また、トマトをエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)処理することを特徴とする香の増強されたトマト酵素処理物の製造方法である。
本発明は、また、前記エステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)処理に加え、更にプロテアーゼ、配糖体分解酵素およびセルラーゼから選ばれる1種または2種以上で処理することを特徴とする香の増強されたトマト酵素処理物の製造方法である。
本発明は、また、配糖体分解酵素がβ−グルコシダーゼ、β−キシロシダーゼおよびβ−プリメベロシダーゼから選ばれる1種または2種類以上である前記方法である。
本発明は、また、エステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)、プロテアーゼおよびセルラーゼのいずれかが動物、植物(トマトを除く)または微生物由来である前記方法である。
本発明は、また、トマトが加熱殺菌したトマトである前記いずれかの方法である。
本発明は、また、前記いずれかの方法により得られる香の増強されたトマト酵素処理物である。
本発明によれば、従来のトマト加工品、もしくはトマトに配糖体分解酵素のみを作用させた場合、または、トマトにプロテアーゼおよびセルラーゼを作用させた場合等に比較し、はるかに香の増強されたトマト処理物を提供することができる
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の方法において原料で使用しうるトマトは、トマト(Lycopersicon esculentum)の果実であれば、特に品種は問わず、いかなる品種でも使用することができる。また、トマトの使用形態は特に限定されず、トマトを生あるいは加熱殺菌後、粉砕物、搾汁物、抽出物、濃縮物(トマトペースト、トマトピューレ)、またはその希釈物(液)としたものいずれでも使用することができる。このうち、加熱殺菌したトマトを使用することが、その後の安定性の向上のため好ましい。
本発明は前記の通り、これらのトマトをエステラーゼで処理し香味を増強させることを特徴とするものである。また、エステラーゼで処理する際、さらにプロテアーゼ、配糖体分解酵素またはセルラーゼから選ばれる1種または2種以上で処理することにより、香味をより効果的に増強させることができる。
トマトをエステラーゼで処理することによる香味増強の原理は明らかではないが、トマトには従来から研究されている香気物質と糖がβ−グリコシド結合した化合物の他に、有機酸と糖が結合した配糖体が多く含まれている。この様な構造の配糖体はβ−グルコシダーゼなどの配糖体分解酵素では分解されず、エステラーゼ処理によってのみ分解し、香気物質である有機酸を遊離することが考えられる。また、エステラーゼに加えてプロテアーゼ、配糖体分解酵素またはセルラーゼを併用することにより、さらに香味が強まる現象はそれぞれの酵素作用の他に、エステラーゼとこれらの酵素が何らかの相互作用を行うことが予想されるが、その機構は明らかではない。
かかる酵素処理に使用するエステラーゼとしては、エステルを分解する活性を有するものであれば特に制限はなく任意のものを使用することができる。具体的には、ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)、ラビット膵臓エステラーゼ(シグマ社製)、仔ウシ舌下部由来リパーゼ、仔ヒツジ舌下部由来リパーゼ、仔ヤギ舌下部由来リパーゼ、酵母由来リパーゼ、カビ由来リパーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、フィターゼ、ホスホリラーゼ、ホスホリパーゼなどが例示できる。これらのエステラーゼの使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、通常、トマト原料の重量を基準として0.01〜100U/gの範囲内を例示することができる。
またプロテアーゼとしては、特に制限はなく動植物由来または微生物由来のプロテアーゼを1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができ、例えば、プロテアーゼA、プロテアーゼM、プロテアーゼP、ウマミザイム、ペプチダーゼR、ニューラーゼA、ニューラーゼF(以上、天野エンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ);スミチームAP、スミチームLP、スミチームMP、スミチームFP、スミチームLPL(以上、新日本化学工業社製の麹菌由来プロテアーゼ);プロチンFN(大和化成社製の麹菌由来プロテアーゼ);デナプシン2P、デナチームAP、XP−415(以上、ナガセケムテックス社製麹菌由来プロテアーゼ);オリエンターゼ20A、オリエンターゼONS、テトラーゼS(以上、阪急バイオインダストリー社製の麹菌由来プロテアーゼ);モルシンF、PD酵素、IP酵素、AO−プロテアーゼ(以上、キッコーマン社製の麹菌由来プロテアーゼ);サカナーゼ(科研製薬社製の麹菌由来プロテアーゼ);パンチダーゼYP−SS、パンチダーゼNP−2、パンチダーゼP(以上、ヤクルト本社製の麹菌由来プロテアーゼ);フレーバザイム(ノボノルディスクバイオインダストリー社製の麹菌由来プロテアーゼ);コクラーゼSS、コクラーゼP(以上、三共社製の麹菌由来プロテアーゼ);VERON PS、COROLASE PN−L(以上、レーム・エンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ);プロテアーゼN、プロテアーゼNL、プロテアーゼS、プロレザーFG−F(以上、天野エンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ);プロチンP、デスキン、デピレイス、プロチンA、サモアーゼ(以上、大和化成社製の細菌由来プロテアーゼ);ビオプラーゼXL−416F、ビオプラーゼSP−4FG、ビオプラーゼSP−15FG(以上、ナガセケムテックス社製細菌由来プロテアーゼ);オリエンターゼ90N、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ22BF(以上、阪急バイオインダストリー社製の細菌由来プロテアーゼ);アロアーゼAP−10(ヤクルト本社製の細菌由来プロテアーゼ);プロタメックス、ニュートラーゼ、アルカラーゼ(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製の細菌由来プロテアーゼ);COROLASE N、COROLASE 7089、VERON W、VERON P(以上、レーム・エンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ);エンチロンNBS(洛東化成工業社製細菌由来プロテアーゼ);アルカリプロテアーゼGL440、ピュラフェクト4000L、プロテアーゼ899、プロテックス6L(以上、協和エンザイム社製細菌由来プロテアーゼ);アクチナーゼAS、アクチナーゼAF(以上、科研製薬社製の放線菌由来プロテアーゼ);タシナーゼ(協和エンザイム社製の放線菌由来プロテアーゼ);パパインW−40(天野エンザイム社製植物由来プロテアーゼ);食品用精製パパイン(ナガセケムテックス社製植物由来プロテアーゼ);その他動物由来のペプシン、トリプシンなどを挙げることができる。これらの中でば微生物由来のプロテアーゼが特に好ましい。プロテアーゼの使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、通常、トマト原料の重量を基準として0.01〜10U/gの範囲内を例示することができる。
また、配糖体分解酵素としては、例えばβ−グルコシダーゼ、β−キシロシダーゼ、β−プリメベロシダーゼなどを挙げることができる。
配糖体酵素処理に使用するβ−グルコシダーゼとしては、具体的には、例えばアスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、シュードモナス属、ピキア属などに属するβ−グルコシダーゼ生産菌を、小麦ふすま、米ぬかなどの固体栄養培地または液体栄養培地で常法に従って固体培養又は液体培養し、得られる培養物またはその処理物を常法により精製処理したものを挙げることができる。また、バニラ豆、生茶葉などの植物より精製処理し得られるものも使用することができ、さらに、シグマアルドリッチ社から市販されているアーモンド由来のエムルシン、またはβ−グルコシダーゼを含む酵素製剤セルラーゼA(天野エンザイム社製)、セルラーゼT(天野エンザイム社製)などから分離したものも使用することができる。β−キシロシダーゼとしては、例えば、ペニシリウム属、アスペルギルス属、リゾプス属、ムコール属などに属するβーキシロシダーゼ生産菌を小麦ふすま、米ぬかなどの固体栄養培地または液体栄養培地で常法に従って固体培養または液体培養し、得られる培養物またはその処理物を常法により精製処理したものを挙げることができる。また、シグマアルドリッチ社から市販されている黒麹菌(Aspergillus niger)由来のものまたはそれを含む酵素製剤スミチームACH(新日本科学工業社製)などから分離したものも使用することができる。β−プリメベロシダーゼとしては、例えば、セルロモナス属、ペニシリウム属、アスペルギルス属などに属するβープリメベロシダーゼ生産菌を小麦ふすま、米ぬかなどの固体培地または液体培地で常法に従って固体培養もしくは液体培養し、得られる培養物またはその処理物を常法により精製処理したものを挙げることができ、また、生茶葉などの植物中より分離精製したものも使用することができる。これらの配糖体分解酵素の使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、通常、トマト原料の重量を基準として0.01〜10U/gの範囲内を例示することができる。
また、セルラーゼとしては、セルロースを分解する活性を有するものであれば特に制限はなく任意のものを使用することができ、例えば、セルラーゼT「アマノ」、セルラーゼA「アマノ」(以上天野エンザイム社製セルラーゼ)、ドリセラーゼKSM、マルチフェクトA40、セルラーゼGC220(以上ジェネンコア協和社製のセルラーゼ)、セルラーゼGODO−TCL、セルラーゼGODO TCD−H、ベッセレックス、セルラーゼGODO−ACD(以上合同酒精社製のセルラーゼ)、Cellulase(東洋紡績社製のセルラーゼ)、セルライザー、 セルラーゼXL−522(以上ナガセケムテックス社製のセルラーゼ)、セルソフト、デニマックス(以上ノボザイムズ社製のセルラーゼ)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンT2(以上エイチビィアイ社製のセルラーゼ)、セルラーゼ”オノズカ”3S、セルラーゼY−NC(以上ヤクルト薬品工業社製のセルラーゼ)、スミチームAC、スミチームC(以上新日本化学工業社製のセルラーゼ)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット(洛東化成工業社製のセルラーゼ)などが挙げられる。かかるセルラーゼの使用量は、酵素の力価によっても異なるが、例えば、トマトの重量を基準として約1〜約1000U/gの範囲内とすることができる。
以上述べた酵素によるトマトの処理は、それ自体既知の方法、例えば特許庁公報周知・慣用技術集(香料)第II部 食品香料(2000.1.14発行)微生物・酵素フレーバー(P46〜P57)等の刊行物に記載の方法に準じて行うことができる。本発明の一実施態様を例示すれば次の通りである:トマト原料1重量部を粉砕し、そのまま、あるいは水1〜10重量部を添加して、約60〜約121℃で約2秒〜約20分間殺菌した後冷却し、上記のエステラーゼと場合によりさらにプロテアーゼ、配糖体分解酵素およびセルラーゼから選ばれる1種又は2種以上を添加して、約30〜約50℃で約0.5分〜約24時間酵素処理を行う。酵素処理後、約60〜約121℃で約2秒〜約20分間加熱することにより酵素失活した後冷却し、遠心分離、濾紙濾過等の適宜な分離手段によって残渣を分離することにより清澄なトマトエキスとすることもできる。得られたトマトエキスは、所望により、適宜な濃縮手段、例えば減圧濃縮、逆浸透膜濃縮、凍結濃縮により濃縮液の形態とすることもできる。さらに、得られたトマトエキスは、その後、所望により、ペースト状、粉末状などの任意の形態にすることもできる。
かくして得られるトマト酵素処理物は、例えば、ケチャップ、ソース類、シーズニング類等の調味料等、ジュース、野菜飲料、アルコール飲料等のドリンク類、パン等の主食、キャンディー、クラッカー、ケーキ、クッキー、ゼリー等の菓子類などに食品で通常用いられる任意成分と共に配合することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
実施例1
市販の生のトマト(桃太郎 T−93 新潟産 11個)1222gを水洗浄した後、40分間蒸煮した後、40℃まで冷却、ミキサーにて粉砕し、加熱トマトホモジネート1195gを得た。得られたホモジネートはpH4.39、屈折糖度(Bx)7.96°であった。このホモジネートを90℃達温殺菌後、40℃まで冷却し、ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)0.01gを加え、40℃で16時間静置して反応させ、90℃達温殺菌後、35℃まで冷却し、40メッシュ金網にて固形物を除き、酵素処理トマト分離液(発明品1)1002gを得た。発明品1のpHは4.37、屈折糖度(Bx)8.21°であった。
実施例2
酵素としてブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)0.01gおよびプロテアーゼM(天野エンザイム社製)1.22gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品2)1073gを得た。発明品2のpHは4.37、屈折糖度(Bx)8.41°であった。
実施例3
酵素としてブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)0.01gおよびエムルシン(シグマ社製)55ユニットを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品3)1074gを得た。発明品3のpHは4.39、屈折糖度(Bx)8.47°であった。
実施例4
酵素としてブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)0.01gおよびセルラーゼT1.22gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品4)1154gを得た。発明品4のpHは4.39、屈折糖度(Bx)8.98°であった。
比較例1
酵素を全く使用しない以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素未処理トマト分離液(比較品1)992gを得た。比較品1のpHは4.41、屈折糖度(Bx)8.10°であった。
比較例2
酵素としてセルラーゼT(天野エンザイム社製)1.22gおよびエムルシン(シグマ社製)55ユニットを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(比較品2)1124gを得た。比較品2のpHは4.40、屈折糖度(Bx)8.25°であった。
比較例3
酵素としてプロテアーゼM(天野エンザイム社製)1.22gおよびセルラーゼT(天野エンザイム社製)1.22gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(比較品3)1131gを得た。比較品3のpHは4.35、屈折糖度(Bx)8.52°であった。
実施例5
(官能評価)
実施例1〜4および比較例1〜3のトマト分離液について、良く訓練された10名のパネラー(男子5名、女子5名)にて官能評価を行った。香りの評価項目として「甘さ」、「酸っぱさ」、「フルティーさ」、「フレッシュさ」の4項目、味の評価項目として「旨味」、「酸味」、「甘味」の3項目を設定し、それぞれの項目について評価し採点した。採点基準は酵素未処理液(比較例1)を香り、味の各項目とも全て5点とし、最も官能的に好ましいものを10点として、10名の採点を平均した。さらに香り(4項目)の平均点および味(3項目)の平均点をそれぞれ算出し、得られた香りと味の平均点を平均し総合評価とした。結果を表1に示す。
Figure 0004299789
表1に示すとおり、エステラーゼを作用させた本発明品1は酵素を全く使用しない比較品1と比べ、官能的に高い評価を得、香り、味ともに良好であったが特に香りの面で優れていた。また、エステラーゼとプロテアーゼを作用させた本発明品2、エステラーゼとプロテアーゼを作用させた本発明品3およびエステラーゼとセルラーゼを作用させた本発明品4はいずれも本発明品1よりもさらに官能的に高い評価であった。
一方、セルラーゼとエムルシンを作用させた比較品2およびプロテアーゼとセルラーゼを作用させた比較品3は比較品1と比べた場合やや香味良好であったが、本発明品1よりは劣っていた。
実施例6
(香気分析)
官能評価を裏付けるため、実施例1〜4および比較例1〜3のトマト分離液について、減圧蒸留法により得られた香気濃縮物の香気分析を行い、香気の差について比較した。分析方法を以下に示す。
(香気分析方法)
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた各々のトマト分離液400gを減圧蒸留し、留出液320gを得た。得られた各々の留出液に食塩48gを溶解し、ジメチルエーテルにて3回抽出した(64ml+32ml+32ml)。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、常法にて溶剤を留去して香気濃縮物を得た。
得られた香気濃縮物は下記の条件でガスクロマトグラフィー分析を行なった。
ガスクロマトグラフィー分析条件
機種:ヒューレットパッカード HP−6890
カラム:Fused Silica Capillary
OV101 60m×0.25mm
カラム温度:70〜220℃(3℃/min)
Injection温度:250℃
Detector温度:250℃
キャリアガス:N2 1.8Kg/cm2
香気成分のうち、主な香気成分と酵素処理により特に大きく変化していた成分について、化合物名とその濃度を表2に示す。
Figure 0004299789
表2よりエステラーゼを作用させた本発明品1は酵素処理を行わない比較品1と比べ香気が1.56倍に増加しており、特に、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸、カプロン酸、安息香酸、パルミチン酸、リノール酸等の酸類が大幅に増加していた。また、エステラーゼとプロテアーゼを作用させた本発明品2、エステラーゼとエムルシンを作用させた本発明品3およびエステラーゼとセルラーゼを作用させた本発明品4はいずれも本発明品1の1.36倍〜1.44倍とさらに香気量が増加していた。特にエステラーゼの作用により増加する上記酸成分に加え、ゲラニオール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、フラネオール、オイゲノール、4−ビニルグアイアコール、4−ビニルフェノール、アセトバニロン、p−ヒドロキシベンズアルデヒド等のトマトのフルーティーさや甘さにかかわると思われる香気成分が大きく増加していた。
一方、セルラーゼとエムルシンを作用させた比較品2は酵素を作用させない比較品1と比べ酸成分の量はほとんど増加せず、差が見られなかった。また、ゲラニオール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、フラネオール、オイゲノール、4−ビニルグアイアコール、4−ビニルフェノール、アセトバニロン、p−ヒドロキシベンズアルデヒドはある程度の増加が見られたが、エステラーゼと他の酵素(プロテアーゼ、エムルシン、またはセルラーゼ)を組み合わせた実施例2〜4と比べるといずれも少ない生成量であった。
また、プロテアーゼとセルラーゼを作用させた比較品3は酵素を作用させない比較品1と比べ前記酸成分、ゲラニオール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、フラネオール、オイゲノール、4−ビニルグアイアコール、4−ビニルフェノール、アセトバニロンおよびp−ヒドロキシベンズアルデヒドのいずれも増加していたが発明品1と比べるといずれも少ない生成量であった。
上記のとおり、トマトにエステラーゼを作用させることにより、香気物質である有機酸を効率よく遊離することができた。また、エステラーゼに加えてプロテアーゼ、エムルシンまたはセルラーゼを作用させることによりさらに他の香気成分も大幅に増加した。
また、図1に比較例1および実施例3より得られたトマト分離液の香気分析したガスクロマトグラムを示す。
実施例7
(アミノ酸分析)
また、実施例1〜4および比較例1〜3により得られたトマト分離液について、アミノ酸分析を行い、アミノ酸の差について比較した。結果を表3に示す。なお、アミノ酸分析は日立高速アミノ酸分析計 L−8800Aによって行った。
Figure 0004299789
表3より、酵素未処理トマト分離液(比較品1)に多いアミノ酸としてはグルタミン酸、グルタミン、GABA、アスパラギン酸等であることが示される。また、プロテアーゼを作用させた本発明品2および比較品3のアミノ酸総量は比較品1、2および本発明品1、3、4と比べて約1.15倍多くなっており、特にグリシン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、アルギニン等が大きく増加していた。一方酸性アミノ酸にはあまり変化はなかった。
実施例8
ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ)の替わりにリパーゼAY(天野エンザイム社製カビ由来リパーゼの商品名)0.12gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品5)1068gを得た。発明品5のpHは4.38、屈折糖度(Bx)8.39°であった。
実施例9
ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)の替わりにタリパーゼ(田辺製薬株式会社製カビ由来リパーゼの商品名)1.22gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品6)1075gを得た。発明品6のpHは4.36、屈折糖度(Bx)8.41°であった。
実施例10
ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)の替わりにクロロゲン酸エステラーゼ(キッコーマン社製のクロロゲン酸エステラーゼの商品名)1.22gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品7)1089gを得た。発明品7のpHは4.33、屈折糖度(Bx)8.43°であっった。
実施例11
ブタ膵臓由来エステラーゼ(シグマ社製)の替わりにレシターゼ10L(ノボザイムズ社製のホスホリパーゼ)1.22gを添加する以外は実施例1と全く同様に処理し、酵素処理トマト分離液(発明品8)1087gを得た。発明品8のpHは4.31、屈折糖度(Bx)8.36°であった。
実施例12
(官能評価)
実施例1、8〜11および比較例1のトマト分離液について、良く訓練された10名のパネラー(男子5名、女子5名)にて官能評価を行った。香りの評価項目として「甘さ」、「酸っぱさ」、「フルティーさ」、「フレッシュさ」の4項目、味の評価項目として「旨味」、「酸味」、「甘味」の3項目を設定し、それぞれの項目について評価し採点した。採点基準は酵素未処理液(比較例1)を香り、味の各項目とも全て5点とし、最も官能的に好ましいものを10点として、10名の採点を平均した。さらに香り(4項目)の平均点および味(3項目)の平均点をそれぞれ算出し、得られた香りと味の平均点を平均し総合評価とした。結果を表4に示す。
Figure 0004299789
表4に示すとおり、いずれのエステラーゼを使用した場合においても酵素を全く使用しない比較品1と比べ、香味的に良好であり、特に香りの面で優れているという評価であった。
実施例として本発明品3および比較品1から減圧蒸留法により得られた香気濃縮物のガスクロマトグラムを示す図である。

Claims (8)

  1. トマトをエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)で処理することを特徴とするトマト香の増強方法。
  2. 更にプロテアーゼ、配糖体分解酵素およびセルラーゼから選ばれる1種または2種以上で処理することを特徴とする請求項1に記載のトマト香の増強方法。
  3. トマトをエステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)で処理することを特徴とする香の増強されたトマト酵素処理物の製造方法。
  4. 更にプロテアーゼ、配糖体分解酵素およびセルラーゼから選ばれる1種または2種以上で処理することを特徴とする請求項3に記載の香の増強されたトマト酵素処理物の製造方法。
  5. 配糖体分解酵素がβ−グルコシダーゼ、β−キシロシダーゼおよびβ−プリメベロシダーゼから選ばれる1種または2種類以上である請求項2または4のいずれかに記載の方法。
  6. エステラーゼ(ペクチンメチルエステラーゼを除く)、プロテアーゼおよびセルラーゼのいずれかが動物、植物(トマトを除く)または微生物由来である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. トマトが加熱殺菌したトマトである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかの方法により得られる香の増強されたトマト酵素処理物。
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