JP4298896B2 - 動力出力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力出力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動力出力装置としては、電動機に三相交流を印加するインバータ回路の正極母線と負極母線とに接続されたコンデンサとインバータ回路の正極母線または負極母線と電動機の中性点とに接続された直流電源とを備えるものが提案されている(例えば、特開平10−337047号公報や特開平11−178114号公報など)。この装置では、電動機の各相のコイルとインバータの各相のスイッチング素子とからなる回路を直流電源の電圧を昇圧してコンデンサに電荷を蓄える昇圧チョッパ回路とみなすと共にこの蓄電されたコンデンサを直流電源とみなして電動機を駆動する。電動機の駆動制御とコンデンサへの蓄電制御は、電動機に三相交流を印加する際になされるインバータ回路のスイッチング素子のスイッチング動作によって同時に行なっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした動力装置では、昇圧されて蓄電されたコンデンサを直流電源とみなして電動機を駆動するから、実際に用いる直流電源は電動機を駆動するのに必要な電圧より低いものでよいが、コンデンサには高耐圧が要求される。高耐圧のコンデンサは、大型化すると共に高コスト化し、延いては装置の大型化や高コスト化を招いてしまう。
【0004】
本発明の動力出力装置は、装置の小型化や低コスト化を図ることを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置は、装置の耐久性や安定性を向上させることを目的の一つとする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の動力出力装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の動力出力装置は、
動力の出力が可能な動力出力装置であって、
多相交流により回転駆動する電動機と、
複数のスイッチング素子のスイッチング操作により直流電力を多相交流電力に変換して前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
該インバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と前記電動機の中性点とに接続された直流電源としての電力供給手段と、
前記インバータ回路の正極母線および負極母線のうちの前記電力供給手段が接続されなかった他方の母線と前記電動機の中性点とに接続された充放電可能な蓄電手段と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の動力出力装置では、直流電源としての電力供給手段はインバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と電動機の中性点とに接続されており、充放電可能な蓄電手段はインバータ回路の正極母線および負極母線のうちの電力供給手段が接続されなかった他方の母線と電動機の中性点とに接続されているから、電力供給手段と蓄電手段はインバータ回路の正極母線と負極母線とを直列に接続していることになり、電力供給手段と蓄電手段とを一体の直流電源とみなして電動機を駆動することができる。電動機の各相のコイルとインバータ回路の各相のスイッチング素子とからなる回路はスイッチング素子のスイッチング操作により電力供給手段の電力を用いて蓄電手段を充電可能であり、そのスイッチング操作を電動機の駆動の際のスイッチング操作と同期することにより蓄電手段の充電と電動機の駆動とを同時に行なうことができる。しかも、蓄電手段の耐圧は、電動機の駆動に必要な電圧から電力供給手段の電圧を減じた値となるから、インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続されたコンデンサの耐圧より低いものにすることができる。この結果、蓄電手段の小型化や低コスト化、即ち装置の小型化や低コスト化を図ることができると共に蓄電手段の低耐圧化に伴って耐久性や安定化の向上を図ることができる。
【0008】
こうした本発明の動力出力装置において、前記電動機を駆動制御すると共に前記蓄電手段の蓄電状態を制御する駆動蓄電制御手段を備えるものとすることもできる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記駆動蓄電制御手段は、前記電動機に印加する前記多相交流を調整すると共に前記蓄電手段の充放電を調整するよう前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段であるものとしたり、前記電動機から目標動力の出力が可能な多相交流が該電動機に印加されると共に前記蓄電手段の端子間電圧が目標電圧となるよう前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段であるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の動力出力装置において、前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された充放電可能な第2の蓄電手段を備えるものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明の動力出力装置において、前記電動機は動力の入力により発電可能な発電電動機であり、前記電力供給手段は充放電可能な手段であり、前記電動機を発電機として駆動すると共に該電動機により発電された電力を前記電力供給手段に充電するよう前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する充電制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、必要に応じて動力の出力と動力による発電とを行なうことができるから、エネルギの利用効率の高い装置とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の動力出力装置20は、図示するように、三相交流により回転駆動するモータ22と、直流電力を三相交流電力に変換してモータ22に供給可能なインバータ回路24と、インバータ回路24の負極母線28とモータ22の中性点とに接続された直流電源30と、インバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とに接続されたコンデンサ32と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット40とを備える。
【0012】
モータ22は、例えば外表面に永久磁石が貼り付けられたロータと三相コイルが巻回されたステータとから構成される発電可能な同期発電電動機として構成されている。モータ22の回転軸は実施例の動力出力装置20の出力軸となっており、この回転軸から動力が出力される。なお、実施例のモータ22は発電電動機として構成されているから、モータ22の回転軸に動力を入力すれば、モータ22により発電できるようになっている。
【0013】
インバータ回路24は、6個のトランジスタT1〜T6と6個のダイオードD1〜D6とにより構成されている。6個のトランジスタT1〜T6は、それぞれ正極母線26と負極母線28とに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置され、その接続点にモータ22の三相コイル(uvw)の各々が接続されている。したがって、正極母線26と負極母線28とに電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT1〜T6のオン時間の割合を制御すれば、モータ22の三相コイルにより回転磁界を形成し、モータ22を回転駆動することができる。
【0014】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM44と、一時的にデータを記憶するRAM46と、入出力ポート(図示せず)とを備える。この電子制御ユニット40には、モータ22の三相コイルのuvwの各相に取り付けられた電流センサ52〜56からの各相の電流やモータ22の中性点に取り付けられた電流センサ58からの中性点電流,モータ22の回転軸に取り付けられた回転角センサ60からのモータ22の回転子の回転角,コンデンサ32に取り付けられた電圧センサ62からのコンデンサ32の端子間電圧Vc,モータ22の動作に関する指令値などが入力ポートを介して入力されている。ここで、電流センサ52〜58のうちのいずれか一つは省略可能であり、いずれか一つを異常検出専用のセンサとして用いるものとしてもよい。また、電子制御ユニット40からは、インバータ回路24のトランジスタT1〜T6のスイッチング制御を行なうための制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0015】
図2は、モータ22の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。いま、トランジスタT2をオンとした状態を考えると、この状態では、図中破線矢印で示す短絡回路が形成され、モータ22の三相コイルのu相はリアクトルとして機能する。この状態からトランジスタT2をオフすると、リアクトルとして機能している三相コイルのu相に蓄えられたエネルギは、図中実線矢印で示す充電回路によりコンデンサ32に蓄えられる。したがって、この回路は、直流電源30のエネルギをコンデンサ32に蓄えるチョッパ回路とみなすことができる。モータ22の三相コイルのvw相も、u相と同様にチョッパ回路とみなすことができるから、トランジスタT2,T4,T6をオンオフすることによりコンデンサ32を充電することができる。
【0016】
こうした充電によりコンデンサ32の端子間には電位差が生じるが、その電位差はコンデンサ32に蓄えられる電荷の量、即ちリアクトルに流す電流を調節することにより制御することができる。したがって、コンデンサ32の端子間電圧Vcを直流電源30の供給電圧Vbと同一にすることもできる。このように、コンデンサ32の端子間電圧Vcを直流電源30の供給電圧Vbと同一にすれば、図1に示す動力出力装置20では、正極母線26と負極母線28に直流電源30とコンデンサ32とからなる直流電源30の供給電圧Vbの2倍の電圧の直流電源が接続された状態となり、トランジスタT1〜T6のスイッチング制御によりモータ22を駆動することができる。
【0017】
ここで、モータ22の三相コイルにはインバータ回路24を構成するトランジスタT1〜T6のスイッチング制御により擬似的な三相交流を供給すればよいから、その三相交流に直流成分を加えることもできる。即ち擬似的な三相交流の電位をプラス側またはマイナス側にオフセットするのである。このように直流成分を加えた三相交流をモータ22に供給すると、交流成分でモータ22は回転駆動し、直流成分で図2を用いて説明したようにコンデンサ32を充電することができる。即ち、モータ22を駆動すると同時にコンデンサ32を充電することができるのである。このとき、直流成分の大きさを調節することによりコンデンサ32の端子間電圧Vcを制御することができる。
【0018】
次に、こうして構成された実施例の動力出力装置20の動作について説明する。図3は、実施例の動力出力装置20の電子制御ユニット40によりインバータ回路24へ出力される制御信号を演算する際の演算ブロックを例示する説明図である。図示するように、演算ブロックは、入力されるモータ動作指令値に基づいてモータ22の相電流指令値を設定するモータ相電流指令値設定部M1と、電流センサ52〜56からのモータ22の各相電流や電流センサ58からの中性点電流とモータ相電流指令値とに基づいてモータ22の動作用の相電位指令値(交流成分の相電位指令値)を演算するモータ動作用相電位指令値演算部M2と、回転角センサ60からの回転角に基づいて得られるモータ22の回転子の回転数とモータ相電流指令値とに基づいてインバータ回路24の正極母線26と負極母線28との間の電圧指令値としてのインバータ入力電圧指令値を演算するインバータ入力電圧指令値演算部M3と、電圧センサ62からのコンデンサ32の端子間電圧Vcとインバータ入力電圧指令値とに基づいてインバータ入力電圧調節用の相電位指令値(直流成分の相電位指令値)を設定するインバータ入力電圧調整用相電位指令値演算部M4と、交流成分としてのモータ動作用相電位指令値と直流成分としてのインバータ入力電圧調整用相電位指令値とを加算する相電位指令値加算部M5と、交流成分と直流成分とが加算された相電位指令値をPWM信号に変換するインバータPWM信号変換部M6とから構成されている。こうした演算ブロックにより、コンデンサ32の端子間電圧Vcの制御とモータ22の駆動制御が同時に行なわれる。
【0019】
以上説明した実施例の動力出力装置20によれば、インバータ回路24のトランジスタT1〜T6をスイッチング制御することにより、コンデンサ32の端子間電圧Vcを制御すると共にモータ22を駆動制御することができる。しかも、インバータ回路24の正極母線26と負極母線28とを直流電源30とコンデンサ32とにより直列に接続するから、直流電源30の供給電圧Vbはモータ22の駆動に必要な電圧より低くすることができる。
【0020】
また、実施例の動力出力装置20によれば、インバータ回路24の正極母線26と負極母線28とに接続されたコンデンサを備える従来例の動力出力装置に比して次のような効果を奏する。まず、実施例の動力出力装置20では、インバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とにコンデンサ32を接続するから、従来例の動力出力装置に比してコンデンサ32の耐圧を小さくすることができる。また、実施例の動力出力装置20では、従来例の動力出力装置に必要なシステム起動時のコンデンサの初期充電を不要とする効果がある。従来例の動力出力装置では、システムの非使用時には安全上の理由などから直流電源をシステムから完全に切り離す場合が多い。このように直流電源をシステムから切り離している状態からシステムを起動するには、直流電源の接続時に直流電源と並列に接続されたコンデンサの大電流による初期充電を防止するために、制限抵抗を用いてコンデンサの初期充電を行なう第1ステップと、直流電源をシステムに接続する第2ステップとを用いて行なう必要がある。このため、従来例の動力出力装置は、制限抵抗とリレーとを必要とする。実施例の動力出力装置20では、直流電源30とコンデンサ32とが直列に接続されているから、従来例の動力出力装置のようにコンデンサ32の大電流による初期充電は生じない。したがって、実施例の動力出力装置20では、従来例の動力出力装置が必要とする制限抵抗やリレーを備える必要がない。これらの結果、実施例の動力出力装置20は、従来例の動力出力装置に比して、装置の小型化や低コスト化,耐久性,安定性,システムの起動性などを向上させることができる。
【0021】
実施例の動力出力装置20では、インバータ回路24の負極母線28とモータ22の中性点とに直流電源30を接続すると共にインバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とにコンデンサ32を接続したが、図4に例示する変形例の動力出力装置20Bに示すように、インバータ回路24の正極母線26とモータ22の中性点とに直流電源30Bを接続すると共にインバータ回路24の負極母線28とモータ22の中性点とにコンデンサ32Bを接続するものとしてもよい。この変形例の動力出力装置20BでもトランジスタT1〜T6のスイッチング制御により、コンデンサ32Bの端子間電圧Vcを制御すると共にモータ22を駆動制御することができる。
【0022】
また、実施例の動力出力装置20や変形例の動力出力装置20Bでは、インバータ回路24の正極母線26と負極母線28を直流電源30,30Bとコンデンサ32,32Bとにより直列に接続したが、図5の変形例の動力出力装置20Cに示すように、正極母線26と負極母線28とを接続するコンデンサ64を設けるものとしてもよい。こうすれば、トランジスタT1〜T6へのサージ吸収を迅速に行なうことができる。なお、このコンデンサ64をトランジスタT1〜T6のサージ吸収用とすれば、その容量は非常に小さなものでよいが、コンデンサ32,32Bと同様にエネルギを蓄えるものとすれば、その容量は大きくなる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である動力出力装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 モータ22の三相コイルの漏れインダクタンスに着目した実施例の動力出力装置20の回路図である。
【図3】 実施例の動力出力装置20の電子制御ユニット40によりインバータ回路24へ出力される制御信号を演算する際の演算ブロックを例示する説明図である。
【図4】 変形例の動力出力装置20Bの構成の概略を示す構成図である。
【図5】 変形例の動力出力装置20Cの構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
20,20B,20C 動力出力装置、22 モータ、24 インバータ回路、26 正極母線、28 負極母線、30 直流電源、32 コンデンサ、40電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、52〜58電流センサ、60 回転角センサ、62 電圧センサ、T1〜T6 トランジスタ、D1〜D6 ダイオード。
Claims (4)
- 動力の出力が可能な動力出力装置であって、
多相交流により回転駆動する電動機と、
複数のスイッチング素子のスイッチング操作により直流電力を多相交流電力に変換して前記電動機に供給可能なインバータ回路と、
該インバータ回路の正極母線および負極母線のうちのいずれか一方の母線と前記電動機の中性点とに接続された直流電源としての電力供給手段と、
前記インバータ回路の正極母線および負極母線のうちの前記電力供給手段が接続されなかった他方の母線と前記電動機の中性点とに接続された充放電可能な蓄電手段と、
前記電動機に印加する前記多相交流を調整すると共に前記多相交流に直流成分を加えることで前記蓄電手段の充放電を調整するよう前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する駆動蓄電制御手段と、
を備える動力出力装置。 - 前記駆動蓄電制御手段は、前記電動機から目標動力の出力が可能な多相交流が該電動機に印加されると共に前記蓄電手段の端子間電圧が目標電圧となるよう前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する手段である請求項1に記載の動力出力装置。
- 前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された充放電可能な第2の蓄電手段を備える請求項1または2に記載の動力出力装置。
- 請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置であって、
前記電動機は、動力の入力により発電可能な発電電動機であり、
前記電力供給手段は、充放電可能な手段であり、
前記電動機を発電機として駆動すると共に該電動機により発電された電力を前記電力供給手段に充電するよう前記インバータ回路の前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御する充電制御手段を備える
動力出力装置。
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