JP4298839B2 - ジェット推進艇の排気構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気ガスを水中に排気するジェット推進艇の排気構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来のジェット推進艇の平面図である。
ジェット推進艇100は、自動二輪車の感覚で運転することができる小型水上艇であって、シート101を跨いでステアリングハンドル102を両手で握り、ステアリングハンドル102の右端部103のアクセルレバー105を操作してエンジン106の回転数を調整し、エンジン106でジェット推進機107を駆動し、ジェット推進機107で艇底から水を吸引して後方へ噴射することにより前進し、ステアリングハンドル102の左端部104の操作レバー108を操作して後進又は減速するものである。
このジェット推進艇100はエンジン106の排気ガスを水中に排気する排気構造110を備えており、ジェット推進艇の排気構造110を以下に説明する。
【0003】
図7は従来のジェット推進艇の排気構造の平面図である。
ジェット推進艇の排気構造110は、エンジン108のエキゾーストマニホールドに繋いだエキゾーストパイプ111を後方にジェット推進機107の左側まで延ばし、エキゾーストパイプ111の排気出口に繋いだマフラー112をジェット推進機107の左側に配置し、マフラー112の排気出口に繋いだ凸部が上位となるように配置した曲り管状の連結管113をジェット推進機107の上を通してジェット推進機107の右側まで延ばし、連結管113に繋いだテールパイプ115をジェット推進機107に繋いだものである。
【0004】
連結管113を凸部が上位となるように配置した曲り管状に形成することにより、テールパイプ115から水が侵入しても、連結管113でエンジン108側に水が侵入することを阻止することができる。一般にこの連結管113をウォータロックパイプという。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、連結管113はジェット推進機107を跨ぐように、左側から右側まで外周壁107aに沿って略U字形に延ばしたものなので比較的長くなる。このため、連結管113で排気騒音が共鳴して排気騒音が高くなる虞がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、排気騒音を十分に下げることができる技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1は、艇底から吸引した水を後方へ噴射するジェット推進機と、艇体略中央に取り付けられ前記ジェット推進機を駆動するエンジンと、前記エンジンから延びる排気管に接続され、前記ジェット推進機の一方に配置されるマフラーと、前記マフラーの排気出口から前記ジェット推進機の上を通りジェット推進機の他方まで延びて凸部が上位となるように配置した曲り管状の連結管と、エンジン上方に配置されるシートと、前記シートの左右で艇体前後方向に延びる下側凹状のデッキと、を備えるジェット推進艇において、前記連結管の両端に、夫々レゾネータを艇体の前又は後へ延ばした状態に取り付け、前記レゾネータのうち少なくとも一方のレゾネータを前記デッキと艇底との間に配置し、前記シートの左右の前記デッキのうち、一方のデッキと前記艇底との間に前記マフラーが配置され、前記シートの左右の前記デッキのうち、他方のデッキと前記艇底との間に前記一方のレゾネータが配置されたことを特徴とする。
連結管の両端に夫々レゾネータを取り付けたので、2本のレゾネータの長さを異ならせることで、少なくとも2種類の周波数の排気騒音を下げることができる。
さらに、レゾネータをデッキと艇底との間に配置することで、デッキと艇底との間のデッドスペースにレゾネータを配置することができる。
【0008】
請求項2において、前記レゾネータは、連結管に取り付け上向きに傾斜し艇体幅方向外側に張り出す張出部と、前記張出部から上向きに傾斜し艇体前方に向けて延びる延出部と、を備え、前記張出部及び前記延出部で略L形パイプに形成されたことを特徴とする。
レゾネータを張出部及び延長部で略L形に形成することで、レゾネータをデッドスペースに好適に配置させて、レゾネータをより簡単に取り付けることができる。
さらに、張出部を上向きに傾斜させ、張出部から延出部を上向きに傾斜させることで、レゾネータに水が侵入しても、侵入した水は基端側から排出することができるので、レゾネータ内に水が溜まって容積が小さくなることはない。従って、レゾネータの消音効果が低下することはない。
請求項3は、前記レゾネータは前記連結管の両端に一体的に形成された接続パイプに接続されることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る排気構造を備えたジェット推進艇の側面図である。
ジェット推進艇10は、艇体11の略中央に取り付けたエンジン15と、エンジン15で駆動することにより艇底12の開口13から吸引した水を艇体11の後方へ噴射させるジェット推進機20と、艇体11の旋回方向を制御するステアリングハンドル25と、エンジン15の排気ガスを排気する排気構造30とからなる。17は燃料タンク、18はシートである。
【0010】
ジェット推進機20は、艇底12の開口13から後方へ延びたハウジング21と、ハウジング21内に回転自在に取り付け、エンジン15の駆動軸16に連結したインペラ22,22と、ハウジング21の後端に艇体11の旋回方向にスイング可能に取り付けたノズル23とからなり、インペラ22,22を回転することで艇底12の開口13から水を吸引し、吸引した水をノズル23から艇体11の後方へ噴射して推進力を発生させるものである。
【0011】
図2は本発明に係るジェット推進艇の排気構造の斜視図である。
ジェット推進艇の排気構造30は、エンジン15の排気マニホールド31に排気管32を繋ぎ、排気管32の途中にマフラー36及び凸部40aが上位となるように配置した曲り管状の連結管40を順に繋ぎ、連結管40の左右端41,42に夫々左右のレゾネータ45,50を艇体11(図1に示す)の前後方向に延ばすように取り付けたものである。
連結管40の左右端41,42に夫々左右のレゾネータ45,50を取り付けたので、左右のレゾネータ45,50の長さを異ならせることで、少なくとも2種類の周波数の排気騒音を下げることができる。この結果、連結管40の排気騒音を十分に下げることができる。
【0012】
排気管32は、排気マニホールド31からマフラー36まで延びたエキゾーストパイプ33と、凸部40aが上位となるように配置した曲り管状の連結管40の出口側から後方に延びたテールパイプ34とからなり、テールパイプ34の排気出口をジェット推進機20に繋いだものである。
連結管40は、ジェット推進機20の左側から右側までハウジング21に沿って略U字形に延ばした全長Lcのパイプである。このため、万一テールパイプ34の排気出口から水が侵入しても、連結管40で水がエンジン15側に侵入することを阻止できる。
【0013】
左側レゾネータ45は、連結管40の左端41に基端46を取り付け、上向きの傾斜角度θ1で艇体11(図1に示す)前方に向けて長さLr1になるように延ばしたものであって、排気騒音の共鳴を利用して排気騒音を下げる共鳴形消音器である。
左側レゾネータ45を上向きの傾斜角度θ1で取り付けることにより、先端47を基端46より高くすることができる。従って、万一左側レゾネータ45に水が侵入しても、侵入した水を基端46から排出することができるので、左側レゾネータ45内に水が溜まることはない。
【0014】
また、左側レゾネータ45は、長さLr1を0.5×Lc以上に設定した。
左側レゾネータ45の長さLr1を0.5×Lc以上にすれば波長の関係で2つ若しくは2つ以上の周波数に対して消音効果が得られる。逆に、左側レゾネータ45の長さLr1が0.5×Lc未満であれば1つの周波数に対してのみ消音効果を発揮させることができるので、有効な騒音対策とはなり得ない。
【0015】
右側レゾネータ50は、左側レゾネータ45と同様に、排気騒音の共鳴を利用して排気騒音を下げる共鳴形消音器である。
この右側レゾネータ50は、連結管40の右端42に基端51を取り付け、上向きの傾斜角度θ2で艇体11(図1に示す)幅方向外側に張出部52を張り出し、張出部52から上向きの傾斜角度θ3で艇体11前方に向けて延長部53を前方に延ばし、張出部52及び延長部53で長さLr2の略L形パイプに形成したものである。
右側レゾネータ50の長さLr2は、左側レゾネータ45の長さLr1と同様に、0.5×Lc以上とした。
【0016】
右側レゾネータ50を傾斜角度θ2及びθ3の上向きで取り付けることにより、先端54を基端51より高くすることができる。従って、万一右側レゾネータ50に水が侵入しても、侵入した水を基端から51から排出することができるので、右側レゾネータ50内に水が溜まることはない。
なお、右側レゾネータ50を張出部52及び延長部53で略L形に形成した理由は図3で詳しく説明する。
【0017】
図3は図2の3矢視図であり、艇体11を想像線で示した図である。
一般に、艇体11の内部は多種の艇付属部品(図示せず)を取付けるため、余分な空間は残されていない。しかし、運転者が足を載せる左右のデッキ11a,11bは下側に大きく凹んでいるために、左右のデッキ11a,11bと艇底12との隙間は狭く、艇付属部品を取り付け難いので、いわゆる左右のデッドスペース14a,14bとして残っている。左右のデッドスペース14a,14bは連結管40の左右端41,42近傍に位置する。
【0018】
従って、左右のレゾネータ45,50を連結管40の左右端41,42に取り付けて、左右のデッキ11a,11bに沿って艇体11の前後方向に延ばすことにより、左右のデッドスペース14a,14bに左右のレゾネータ45,50を配置することができる。このため、艇体11内に新たに空間を形成しなくても、左右のレゾネータ45,50を配置することができるので、比較的簡単に左右のレゾネータ45,50を取り付けることができる。
【0019】
なお、右側レゾネータ50を張出部52及び延長部53で略L形に形成した理由は、右側レゾネータ50を右側デッドスペース14bに好適に配置させるためである。この結果、右側レゾネータ50をより簡単に取り付けることができる。
【0020】
ところで、左右のデッドスペース14a,14bは、艇体11の前後方向に比較的長い空間を形成しているので、左右のレゾネータ45,50を比較的長く設定することができる。
このため、図2で説明したように、左右のレゾネータ45,50の長さをLr1,Lr2、連結管40の全長をLcとしたときに、左右のレゾネータの長さLr1,Lr2を夫々0.5×Lc以上に設定することができる。
【0021】
図4は図2の4−4線断面図であり、連結管40の左端41に差込管43を前方に突出させ、この差込管43に左側レゾネータ45の基端46を嵌め込んだ状態を示す。
左側レゾネータ45は、上向きの傾斜角度θ1で取り付けることにより、先端47を基端46より高くすることができる。従って、万一左側レゾネータ45に水が侵入しても、侵入した水を基端46から排出することができるので、左側レゾネータ45内に水が溜まることはない。
この結果、左側レゾネータ45の消音効果が低下することはないので、排気騒音を十分に下げることができる。
【0022】
なお、右側レゾネータ50も、基端51より先端54を高くした姿勢で連結管40に取り付けたので、左側レゾネータ45と同様に右側レゾネータ50に水が溜まることはない。従って、右側レゾネータ50も排気騒音を十分に下げることができる。
【0023】
次に、ジェット推進艇の排気構造の作用を説明する。
図5(a),(b)は本発明に係るジェット推進艇の排気構造の消音状態を説明するグラフであり、(a)は左側レゾネータ45の長さLr1を連結管40の全長Lc(図2に示す)の0.5未満に短く設定したものを「第1実施例」として示し、(b)は左側レゾネータ45の長さLr1を連結管40の全長Lcの0.5倍以上に比較的長く設定したものを「第2実施例」として示した。縦軸は透過損失TL(dB)を示し、横軸は排気騒音の周波数(Hz)を示し、連結管40の共鳴範囲をHとした。透過損失TL(Transmission Loss)はレゾネータの減音量を表わしたものである。
なお、(a)においては左側レゾネータ45を接続パイプ48の内側に差し込んだ例を示し、(b)においては左側レゾネータ45を接続パイプの外側に嵌め込んだ例を示した。このように、レゾネータは接続パイプの内側又は外側に取り付けることが可能である。
【0024】
(a)において、左側レゾネータ45のLr1が短いので共鳴範囲Hのうちの比較的高い周波数f1で1次透過損失TLが発生する。このため、2次透過損失TL(破線で示す)は共鳴範囲Hから外れるので、透過損失TLは周波数f1のみで発生する。
(b)において、左側レゾネータ45のLr1が長いので比較的低い周波数f2で1次透過損失TLが発生し、2次透過損失TL及び3次透過損失TLも共鳴範囲Hの周波数f3、f4内に入るので、左側レゾネータ45の消音効果を高めることができる。この結果、排気騒音を十分に下げることができる。
【0025】
なお、図2に示す右側レゾネータ50も、長さLr2を連結管40の全長Lcの0.5倍以上に比較的長く設定することにより、左側レゾネータ45と同様に複数の周波数の排気騒音を下げることができる。従って、右側レゾネータ50も排気騒音を十分に下げることができる。
【0026】
前記実施例では、連結管40を凸部40aが上位となるように配置した曲り管状に形成したパイプを例に説明したが、その他の例として、Uを逆にして円弧部を上位にした、いわゆる逆U字形のパイプなどを使用してもよい。
また、左側レゾネータ45が周波数f2、f3、f4の3箇所で排気騒音を下げる例を説明したが、その他排気騒音を下げる周波数は2つ若しくは4以上であってもよい。
【0027】
さらに、連結管40は出口側にテールパイプ34を取付けた例を説明したが、連結管40とテールパイプ34を一体に形成してもよい。
また、左右のレゾネータ45,50を艇体の前方に向けて取り付けたが、その他艇体の後方に向けて取り付けてもよい。
さらに、左右のレゾネータ45,50を一定の上がり勾配で形成したが、左右のレゾネータ45,50を上向きに湾曲させて先端を基端より高くしてもよく、また図5(a)に示すように先端を略水平に形成してもよい。すなわち、左右のレゾネータ45,50に水が溜まらない形状であればよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、連結管の両端に夫々レゾネータを取り付けたので、2本のレゾネータの長さを異ならせることで、少なくとも2種類の周波数の排気騒音を下げることができる。この結果、連結管の排気騒音を十分に下げることができる。
さらに、レゾネータをデッキと艇底との間に配置することで、デッキと艇底との間のデッドスペースにレゾネータを配置することができる。
【0029】
請求項2は、レゾネータを張出部及び延長部で略L形に形成することで、レゾネータをデッドスペースに好適に配置させて、レゾネータをより簡単に取り付けることができる。
さらに、張出部を上向きに傾斜させ、張出部から延出部を上向きに傾斜させることで、レゾネータに水が侵入しても、侵入した水は基端側から排出することができるので、レゾネータ内に水が溜まって容積が小さくなることはない。
この結果、レゾネータの消音効果が低下することがないので、排気騒音を十分に下げることができる。
請求項3は、レゾネータは連結管の両端に一体的に形成された接続パイプに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排気構造を備えたジェット推進艇の側面図
【図2】本発明に係るジェット推進艇の排気構造の斜視図
【図3】図2の3矢視図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】本発明に係るジェット推進艇の排気構造の消音状態を説明するグラフ
【図6】従来のジェット推進艇の平面図
【図7】従来のジェット推進艇の排気構造の平面図
【符号の説明】
10…ジェット推進艇、11…艇体、11a,11b…左右のデッキ、12…艇底、14a,14b…左右のデッドスペース、15…エンジン、18…シート、20…ジェット推進機、30…ジェット推進艇の排気構造、32…排気管、36…マフラー、40…連結管、40a…凸部、41…左端、42…右端、45…レゾネータ(左側レゾネータ)、46,51…基端、47,54…先端、50…レゾネータ(右側レゾネータ)、52…張出部、53…延長部、Lr1…左側レゾネータの長さ、Lr2…右側レゾネータの長さ、Lc…連結管の全長。
Claims (3)
- 艇底から吸引した水を後方へ噴射するジェット推進機と、
艇体略中央に取り付けられ前記ジェット推進機を駆動するエンジンと、
前記エンジンから延びる排気管に接続され、前記ジェット推進機の一方に配置されるマフラーと、
前記マフラーの排気出口から前記ジェット推進機の上を通りジェット推進機の他方まで延びて凸部が上位となるように配置した曲り管状の連結管と、
エンジン上方に配置されるシートと、
前記シートの左右で艇体前後方向に延びる下側凹状のデッキと、を備えるジェット推進艇において、
前記連結管の両端に、夫々レゾネータを艇体の前又は後へ延ばした状態に取り付け、
前記レゾネータのうち少なくとも一方のレゾネータを前記デッキと艇底との間に配置し、
前記シートの左右の前記デッキのうち、一方のデッキと前記艇底との間に前記マフラーが配置され、
前記シートの左右の前記デッキのうち、他方のデッキと前記艇底との間に前記一方のレゾネータが配置されたことを特徴とするジェット推進艇の排気構造。 - 前記レゾネータは、
連結管に取り付け上向きに傾斜し艇体幅方向外側に張り出す張出部と、
前記張出部から上向きに傾斜し艇体前方に向けて延びる延出部と、を備え、
前記張出部及び前記延出部で略L形パイプに形成されたことを特徴とする請求項1記載のジェット推進艇の排気構造。 - 前記レゾネータは前記連結管の両端に一体的に形成された接続パイプに接続されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のジェット推進艇の排気構造。
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