JP4296844B2 - 電気加熱式触媒装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化触媒に関し、特に、触媒の温度上昇を促進して触媒の活性を促すことにより、浄化性能を向上させ、始動時など排気ガスが冷えているときにも優れた浄化性能を有する排気ガス浄化触媒およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関用の排気ガス浄化触媒は、触媒が活性となる温度まで上昇させないと充分な浄化性能が得られない。一般的には排気ガスの熱を利用して触媒を加熱しているが、エンジンを始動させてから排気ガスの温度が上昇するまで、ある程度の時間が必要となるため、触媒をより迅速に昇温する技術が求められている。
【0003】
そのため、始動時や冷間時において早期に触媒が活性になる温度を得るための様々な方法が考えられている。例えば特許文献1では、電磁波を照射することにより発熱する金属酸化物などを触媒とともに担体に担持するという技術が開示されている。しかしながら、電磁波(マイクロ波)照射装置が別途必要となり、装置が大掛かりで高価なものになってしまうため、実際に自動車に使用するには現実的ではない。
【0004】
また特許文献2では、触媒本体の外周に遠赤外線ヒータを設ける技術が示されているが、この場合触媒を外周から加熱するので触媒温度が不均一となり浄化効率が悪くなってしまう。従って触媒の内部まで触媒活性温度に加熱するには時間がかかってしまい、始動時や冷間時の排気ガスを十分に浄化することができないといった不具合が生じる。
【0005】
さらに、特許文献3に記載されているように、ステンレスなどの薄板を巻回して形成したメタルハニカム担体などに電力を供給することで加熱する自己発熱型の電気加熱式触媒(EHC:Electrically Heated Catalyst)がある。このEHCは始動時や冷間時などの排気ガス温度が低い場合にも触媒を活性な温度まで加熱することができ、排気ガス浄化を行うことができる。
【0006】
しかしながら、従来のEHCを触媒活性温度まで加熱するには大きな電力が必要となり、通常自動車に車載されている12Vのバッテリーでは十分な電力を供給することができないため、EHC専用のバッテリーをもう一つ搭載するなどしなければならなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−168950号公報
【特許文献2】
実開平2−94316号公報
【特許文献3】
特開平6−106069号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、触媒の温度上昇を促進させて触媒の活性を促すことにより、浄化性能を向上させ、始動時など排気ガスが冷えているときにも優れた浄化性能を有する排気ガス浄化触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの側面によると、電気加熱式の担体と、該担体上にある触媒層とを含んでなる排気ガス浄化触媒であって、該触媒層が触媒活性金属を担持すると共に、該触媒層の中に粒状の赤外線放射物質を分散担持してなる排気ガス浄化触媒が提供される。
また、本発明の別の側面によると、触媒層用の多孔性物質を含むスラリーに赤外線放射物質を添加するステップと、該スラリーを電気加熱式の担体に塗布するステップと、スラリーを塗布した該担体を焼成するステップと、焼成した担体に触媒活性金属を担持させるステップとを含む排気ガス浄化触媒の製造方法が提供される。また、本発明の別の側面によると、触媒層用の多孔性物質を含むスラリーに触媒活性金属またはその材料となる成分と赤外線放射物質とを添加するステップと、該スラリーを電気加熱式の担体に塗布するステップと、スラリーを塗布した該担体を焼成するステップとを含む排気ガス浄化触媒の製造方法が提供される。
本発明で使用する粒状の赤外線放射物質は、シリカ45〜55wt%,アルミナ30〜45(43を超え45までを除く)wt%,マグネシア12〜18wt%を主成分とするセラミックからなる。また、電気加熱式の担体には、メタルハニカム担体を使用する。
【0010】
以下に詳細に説明するように、本発明にかかる排気ガス浄化触媒によると、通電により触媒担体が直接加熱され、さらに、触媒層に赤外線放射物質を分散担持することにより、触媒担体の発熱により触媒が加熱されたとき、同時に赤外線放射物質も加熱され、加熱された赤外線放射物質から赤外線が放射される。触媒主成分である触媒活性金属等はこの赤外線を吸収して発熱する為、排気ガス熱とあわせて、より効率よく触媒を加熱することができ、従来に比べて触媒活性金属をより速く昇温させることができる。さらに、本発明によると、赤外線放射物質を触媒担体に担持した触媒層内に均一に含有させることができ、これにより触媒全体で均一に効率よく赤外線を吸収し発熱させることができる。
【0011】
また、空気の主成分である窒素(N2)や酸素(O2)は赤外線を吸収しないが、排気ガス中の有害成分である一酸化炭素(CO),炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)などは赤外線を吸収し励起状態となる。このため、適切な赤外線放射物質を選び、特定の波長の赤外線をより強く放射させることで排気ガス中のCO,HC,NOxを選択的に励起させることができる。このようにして励起されたガスは酸化還元反応を起こしやすくなるため、より優れた排気ガス浄化性能を得ることができる。
【0012】
また、本発明にかかる排気ガス浄化触媒の製造方法によると、通常のウォッシュコートの担持工程と同様の工程によって、赤外線放射物質を触媒層内に均一に分散させることができるため、製造工程の大幅な変更もなく容易に赤外線放射物質を担持させることができ、上記排気ガス浄化触媒を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、以下の本発明に係る実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0014】
図1は、本発明における触媒2を自動車の排気通路に配置した模式図を示す。エンジン1から排出された排気ガスは排気ガス通路パイプ1aを通り、触媒2で酸化還元反応により浄化された後、マフラー3に送られて消音され、大気中に放出される。触媒2は、EHC回路2aを備え、電力を供給することで加熱される自己発熱型の電気加熱式触媒(EHC)にすることにより、始動時や冷間時などの排気ガス温度が低い場合にも、より効果的に触媒を活性な温度まで加熱することができる。
【0015】
図2に基本となる従来の触媒の模式断面図を示す。図2に示す従来の触媒は、本発明にかかる触媒の基本構造を提供するものであり、後述の比較例1に対応するものである。図2は、赤外線放射物質を担持していない従来の触媒の断面模式図であり、この従来の触媒は、担体10の表面に触媒層としてウォッシュコート層11を備え、さらにウォッシュコート層11の表面に触媒活性金属12を担持している。
【0016】
[実施の形態1]
図2に示した従来の触媒を基本に、図3に示す本実施の形態にかかる触媒の特徴を以下に述べる。図3に、実施の形態1にかかる触媒の断面模式図を示す。本発明にかかる触媒は、1つの実施の形態において、図3に示すように、赤外線放射物質13をウォッシュコート層11内に分散担持させ、さらに触媒活性金属12をウォッシュコート層11の表面に担持させている。
【0017】
本発明における赤外線放射物質13としては、特に限定されるものではないが、例えばコージェライトやペタライトなどのセラミック、蛇紋石や角閃石などの天然鉱石等が挙げられ、特にコージェライトやペタライトなどのセラミックが一般的に入手容易である。また、赤外線放射物質13は、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは4〜10μmの波長の赤外線)の放射率が高く、特に、200℃における当該波長領域の赤外線放射率が、70%以上であると好ましく、85%以上であるとさらに好ましい。波長が2〜15μmの赤外線はアルミナや触媒活性金属12などの触媒を構成する物質に効率よく吸収され、これらを発熱させることができるため、非常に高い触媒加熱効率を得ることができる。
【0018】
また、波長が4〜10μmの赤外線は、HCやNOxを励起させるのに適しているため、排気ガス中のHC,NOxを選択的に効率よく励起させることができる。励起されたガス中の成分は酸化還元反応を起こしやすくなるため、より優れた排気ガス浄化性能を得ることができる。従って、4〜10μmの赤外線をより強く放射する赤外線放射物質13を用いることにより付加的な効果が得られる。
【0019】
また、担持する赤外線放射物質13は、好ましくは担持した触媒量の5〜35wt%(さらに好ましくは10〜30wt%)含有されていると高い赤外線効果を得ることができる。赤外線放射物質の含有量が5wt%よりも少ないと、触媒量に対する赤外線放射量が少ないため赤外線による効果が十分得られない場合があり、35wt%よりも多いと触媒活性成分の担持量が少なくなってしまうため十分な排気ガス浄化性能を得ることができなくなってしまう場合がある。なお、本明細書において、触媒量は、多孔質物質、触媒活性金属および赤外線放射物質を含む触媒層の全重量をいい、赤外線放射物質の触媒量に対するwt%は、多孔質物質、触媒活性金属および赤外線放射物質を含む触媒層の全重量に対する赤外線放射物質の重量の割合をいう。
【0020】
また、赤外線放射物質を触媒層の中に均一に分散させるために、担持する赤外線放射物質は粒状であると好ましい。特に、赤外線放射物質の平均粒径は、20μm以下であると好ましく、このとき、より効果的に、赤外線放射物質を触媒層の中に均一に分散させ、排気ガス浄化性能を妨げることなく触媒の加熱およびガスの励起をさせるのに必要な赤外線を放射させることができる。
【0021】
ここで、触媒層は、多孔質のセラミックス層であるウォッシュコート層であると好ましく、特に限定されるものではないが、以下に詳述するように、アルミナなどの多孔性物質とセリアなどの酸素貯蔵物質とから成形され、担体の単位体積当たり50〜200g/Lの触媒層を担持させると好ましい。
【0022】
また、本発明にあっては、触媒活性金属12は、特に限定されるものではない。一般的に自動車用の三元触媒に使用される白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などを使用することができ、さらにこれらに限定されることなく銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)などの貴金属や、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などの卑金属も幅広く使用することが可能である。
【0023】
本発明では、触媒にEHC回路2aを備えた電気加熱式触媒(EHC)を採用した電気加熱式触媒装置とすることにより、効果的に始動時や冷間時などの排気ガス温度が低い場合にも触媒を活性な温度まで加熱することができる。
【0024】
EHCでは、例えば金属で作製された触媒担体に直接電力を供給し、金属の抵抗における熱によって触媒担体を自己発熱させることができる。触媒成分は触媒担体の表面に触媒層としてコートされるため、発熱した担体から効率よく熱を吸収、昇温する。このため、EHCによると、優れた浄化性能を得ることができる。
【0025】
図4に電気加熱式の担体(EHC担体)の模式図を示す。EHC担体20では、一般的にはステンレスなどの薄い平板21と波板22を組み合わせて巻き回したものを、筒状の金属性ケース23内に設置することで、メタルハニカム担体を作製する。この担体に電極24,25を取り付け、平板21、波板22およびケース23に電力を供給する。ただし、本発明では、メタルハニカムの材質、形状はこれに限られるものではない。
【0026】
具体的には、特に限定されるものではないが、EHCの担体として、ステンレスやニッケル合金、チタン合金等の金属を用いると好ましい。また、特に限定されるものではないが、担体の形状は、上記金属等からなる平板と波板を組み合わせて巻き回してなるハニカム状としてもよいし、パイプ状、シート状としてもよい。さらに、担体に電流を供給するための回路装置を設ける。EHCへの電力の供給は、通常自動車に車載されているバッテリーまたはEHC専用に搭載したバッテリーから行うことができる。EHCへ電力を供給することで担体が発熱し、触媒はより速く加熱される。
【0027】
触媒にEHC回路2aを備えた電気加熱式触媒(EHC)を採用し、EHCへ電力を供給すると、EHC担体自体の電気加熱と同時に赤外線放射物質から赤外線が放射される。放射された赤外線は触媒主成分であるアルミナ等や触媒活性金属に吸収され発熱するため、触媒は電気のみで加熱した場合よりも速く昇温させることができる。このとき、赤外線放射物質は触媒層の中に分散担持されているため、触媒全体で均一に効率よく赤外線を吸収し発熱させることができる。このため、触媒活性温度まで加熱するのに必要な電力として、従来のように大電力を必要とせず、例えば通常の12V車載バッテリーのみで十分な加熱を行うことができる。
【0028】
また、触媒にEHCを用いた場合は、排気系の下流側に配置しても十分な浄化性能を得ることができるため、高温の排気ガス熱にさらされることよる触媒の劣化を防ぐことが可能となる。すなわち、通常、触媒温度の上昇に排気ガス熱を利用しようとすると、ある程度排気ガス温度が高い位置に触媒を配置しなければならないが、全開運転時などには自動車排気ガスはエキゾーストマニホールド直下で700〜800℃以上になり、加えて排気ガス浄化反応は発熱反応であるため触媒はさらに高温にさらされる可能性がある。触媒は800〜1000℃以上の高温にさらされると熱によるシンタリング(凝集)などを引き起こし、劣化して十分な浄化性能が得られなくなる場合がある。
【0029】
しかし、EHC回路2aを備えた電気加熱式触媒(EHC)を採用することにより、従来の触媒では十分な浄化性能が得られない排気系の下流側に配置しても十分な浄化性能を得ることができるため、全開運転時などにおいても高温にさらされることなく触媒の劣化を抑制することができる。また仮に、電気加熱によって触媒が劣化しそうな温度まで加熱された場合には、触媒への電力供給を制限するなどの制御を行うことによって、常に排気ガス浄化に最適な温度に触媒を保持することができる。
【0030】
[実施の形態2]
図5に、実施の形態2にかかる触媒の断面模式図を示す。図5ではさらに触媒活性金属12の活性の向上に効果的な構成を示す。本実施の形態にかかる触媒では、ウォッシュコート層11内に赤外線放射物質13と触媒活性金属12とを分散担持している。
【0031】
本実施の形態2のように触媒活性金属12も触媒層11の中に分散担持した場合(図5)、実施の形態1に比べ、より赤外線放射物質13の極近傍に触媒活性金属12を存在させることができるため、赤外線放射物質13が放射した赤外線を触媒活性金属12が吸収する効率が高くなり、触媒の加熱を非常に効率よく行うことができる。
【0032】
[実施の形態3]
本発明の図3に示した実施の形態1にかかる触媒の製造方法について以下に述べる。実施の形態1にかかる触媒は、上述した電気加熱式の担体を用い、(1)担体10へウォッシュコート層11を担持させ、さらに(2)触媒活性金属12をウォッシュコート層11表面へ担持させることで製造することができる。
【0033】
(1)担体10へのウォッシュコート層11の担持方法
触媒の担持方法としては、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア等の多孔性物質と、好ましくはセリア(酸化セリウム)、ジルコニア等の酸素貯蔵物質とを、水、硝酸等の溶媒と混合したスラリーを調製し、そのスラリーを触媒担体10に塗布し焼成することでウォッシュコート層11を触媒担体10に担持させることができる。本発明では、このウォッシュコートのスラリー調製時に赤外線放射物質13をさらに添加する。このように、ウォッシュコートのスラリー調製時に、該スラリーに赤外線放射物質を添加することより、通常のウォッシュコートと同様の担持工程によって、赤外線放射物質13をウォッシュコート内に均一に分散させることができるため、製造工程の大幅な変更もなく容易に赤外線放射物質13を触媒に担持させることができる。なお、ウォッシュコート担持方法は、従来と同様とすることができ、例えば、水1Lに対して、アルミナ等の多孔性物質を1000〜1500g、セリア等の酸素貯蔵物質を300〜500g、セラミック等の赤外線放射物質を100〜700g混合したスラリーを調製し、そのスラリーを触媒担体に塗布し、70〜120℃の熱風で10〜30分間乾燥し、さらに300〜500℃で1〜3時間焼成することで、ウォッシュコートを設けることができる。
【0034】
さらに、赤外線放射物質を、スラリーに添加する前に、ウォッシュコートに使用するアルミナ等の多孔性物質と共沈法などによって複合化させることで、熱による触媒のシンタリング(凝集)を抑制することができ、触媒の浄化性能の低下を最小限に抑えることができる。具体的には、共沈法は、以下のように行うことができる。例えば、硝酸アルミニウム溶液に赤外線放射物質を添加し、よく撹拌する。撹拌しながら少量ずつアンモニア水を加え、好ましくはpH9に調整する。pH9になり沈殿が生じた時点で撹拌をやめ、ろ過することで沈殿を回収する。この沈殿を、好ましくは600℃で3時間焼成し、その後粉砕することで、アルミナと赤外線放射物質の複合化粉末を得ることができる。
【0035】
(2)触媒活性金属12のウォッシュコート層11表面への担持方法
さらに、触媒活性金属12を担持する方法として一般的に知られている含浸法や共沈法などによって、触媒活性金属12を触媒に担持させることができる。具体的には、赤外線放射物質13を分散担持したウォッシュコート層11を備えた担体を、触媒活性金属またはその材料となる成分を含有した溶液に浸漬し、乾燥、焼成することで触媒活性金属12をウォッシュコート層11表面に担持することができる。触媒活性金属またはその材料となる成分を含む溶液は特に限定されるものではなく、硝酸塩,硫酸塩,塩酸塩などの溶液が幅広く使用可能である。なお、触媒活性金属のウォッシュコート層への担持処理の諸条件は、従来と同様とすることができ、例えば、触媒活性金属の材料となる成分として、所定量のジニトロジアンミン白金硝酸溶液中に、ウォッシュコート層を備えた担体を2〜5時間含浸し、70〜120℃の熱風で5〜10分間乾燥し、さらに200〜500℃で1〜3時間焼成することで、触媒活性金属を担持させることができる。
【0036】
[実施の形態4]
本発明の図5に示した実施の形態2の触媒の製造方法について以下に述べる。実施の形態2にかかる触媒では、前記の実施の形態1のスラリー調製時に、一緒に触媒活性金属12またはその材料となる成分をスラリーに添加して、ウォッシュコートと同時に触媒活性金属12を触媒に担持させる。この方法によって触媒活性金属12を担持させると、ウォッシュコート内に分散担持されている赤外線放射物質13と同様に触媒活性金属12もウォッシュコート内に分散担持され、赤外線放射物質13の極近傍に触媒活性金属12を存在させることができるため、触媒活性金属12が赤外線を吸収する効率が高くなり、触媒の加熱を非常に効率よく行うことができる。
【0037】
【実施例】
<比較例1>
γ−アルミナ,酸化セリウム,アルミナゾル,硝酸アルミニウム水溶液,イオン交換水を混合し、24時間以上撹拌することでスラリーを調製した。このスラリーは触媒担体に塗布し焼成して水分を乾燥させたとき、アルミナ/セリアの比率が3/1となるようにそれぞれの添加量を調製した。このスラリーにEHCのメタルハニカム担体を約30秒間浸漬した後引き上げ、エアブローにて余剰スラリーを飛ばし、80℃の熱風で約10分間乾燥し、さらに400℃で1時間焼成してウォッシュコートを担持させた。担持したウォッシュコート量はメタルハニカム担体の単位体積当たり約100g/Lであった。次に、その担体をジニトロジアンミン白金硝酸溶液に3時間含浸後80℃の熱風で約10分間乾燥し、さらに硝酸ロジウム溶液に3時間含浸後80℃の熱風で約10分間乾燥した。最後に200℃で1時間焼成して、比較例1の触媒を完成させた。担持した貴金属量はメタルハニカム担体の単位体積当たりPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0038】
<実施例1>
比較例1と同様に調製したスラリーに、さらにセラミック(主成分:シリカ45〜55wt%,アルミナ30〜45wt%,マグネシア12〜18wt%)を材料とした粒状の赤外線放射物質を添加し、24時間以上混合撹拌して赤外線放射物質添加スラリーを調製した。このスラリーは触媒担体に塗布し焼成して水分を乾燥させたとき、担持ウォッシュコート量に対して20wt%の赤外線放射物質を含有するように調製した。その後、比較例1と同様にウォッシュコートの担持およびPt,Rhの含浸担持を行い実施例1の触媒を完成させた。このとき、担持させた全ウォッシュコート量は約100g/Lであり、その内のウォッシュコートは約80g/L、赤外線放射物質は約20g/L、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0039】
<実施例2>
実施例1と同様に調製した赤外線放射物質添加スラリーに、さらにジニトロジアンミン白金硝酸溶液と硝酸ロジウム溶液を添加し、24時間以上混合撹拌して貴金属添加スラリーを調製した。その後、このスラリーにEHCのメタルハニカム担体を約30秒間浸漬した後引き上げ、エアブローにて余剰スラリーを飛ばし、80℃の熱風で約10分間乾燥し、さらに400℃で1時間焼成して触媒金属分散ウォッシュコートを担持させた。担持させた全ウォッシュコート量は約100g/Lであり、その内のウォッシュコートは約80g/L、赤外線放射物質は約20g/L、担持させた貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0040】
<排気ガス浄化性能実験1>
比較例1および実施例1、実施例2にて作製した触媒の冷機始動時における排気ガス浄化性能を解析した。実験では、実際の自動車を用いたシャーシダイナモテストにより、コールドスタートモードである11モード(排出ガスの認定試験に使用される郊外での平均的走行パターンを模擬した走行モード)による走行における排気ガス浄化率を測定した。排気ガス浄化率は、各ガス成分(CO,HC,NOx)について、以下の(式1)に従って計算した。実験では実車による測定とした。また、EHCへの電力供給は車両とは別の直流電源で行い、エンジンスタートと同時に12V、約40Aの直流電流を90秒間のみ供給した。
【0041】
(式1)
[排気ガス浄化率%]=([触媒無しの排出量]−[触媒使用時の排出量])/[触媒無しの排出量]×100
【0042】
図6に比較例1および実施例1、実施例2にて作製した触媒の排気ガス浄化率を示した。CO,HC,NOxすべてのガス成分において比較例1よりも実施例1の方が優れた浄化性能を示した。これより、赤外線放射物質を添加したことにより排気ガス浄化性能が向上したことが分かる。また、実施例1に比べて実施例2は、CO,HC,NOxすべてのガス成分においてさらに優れた浄化性能を示した。これより、触媒貴金属は表面のみに担持するよりもウォッシュコート内に分散担持した方が、触媒活性金属の赤外線吸収効率が高く、優れた排気ガス浄化性能を得ることができると言える。
【0043】
<実施例3>
実施例1と同様に赤外線放射物質添加スラリーを調製する際に、担持させるウォッシュコート量に対して2wt%の赤外線放射物質を含有するように赤外線放射物質添加スラリーを調製し、その後、実施例2と同様の方法でウォッシュコートおよび触媒貴金属を担持させた。担持された全ウォッシュコート量は約100g/Lで、その内の2wt%の赤外線放射物質がウォッシュコート内に分散担持されており(すなわち、ウォッシュコートは約98g/L、赤外線放射物質は約2g/L)、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0044】
<実施例4>
実施例3と同様の方法で触媒を作製する過程において、赤外線放射物質の添加量のみウォッシュコートの5wt%になるように変更して触媒を完成させた。担持された全ウォッシュコート量は約100g/Lで、その内の5wt%の赤外線放射物質がウォッシュコート内に分散担持されており(すなわち、ウォッシュコートは約95g/L、赤外線放射物質は約5g/L)、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0045】
<実施例5>
実施例3と同様の方法で触媒を作製する過程において、赤外線放射物質の添加量のみウォッシュコートの10wt%になるように変更して触媒を完成させた。担持された全ウォッシュコート量は約100g/Lで、その内の10wt%の赤外線放射物質がウォッシュコート内に分散担持されており(すなわち、ウォッシュコートは約90g/L、赤外線放射物質は約10g/L)、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0046】
<実施例6>
実施例3と同様の方法で触媒を作製する過程において、赤外線放射物質の添加量のみウォッシュコートの30wt%になるように変更して触媒を完成させた。担持された全ウォッシュコート量は約100g/Lで、その内の30wt%の赤外線放射物質がウォッシュコート内に分散担持されており(すなわち、ウォッシュコートは約70g/L、赤外線放射物質は約30g/L)、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rb=0.4g/Lであった。
【0047】
<実施例7>
実施例3と同様の方法で触媒を作製する過程において、赤外線放射物質の添加量のみウォッシュコートの40wt%になるように変更して触媒を完成させた。担持された全ウォッシュコート量は約100g/Lで、その内の40wt%の赤外線放射物質がウォッシュコート内に分散担持されており(すなわち、ウォッシュコートは約60g/L、赤外線放射物質は約40g/L)、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0048】
<実施例8>
実施例3と同様の方法で触媒を作製する過程において、赤外線放射物質の添加量のみウォッシュコートの50wt%になるように変更して触媒を完成させた。担持された全ウォッシュコート量は約100g/Lで、その内の50wt%の赤外線放射物質がウォッシュコート内に分散担持されており(すなわち、ウォッシュコートは約50g/L、赤外線放射物質は約50g/L)、担持された貴金属量はPt=1.2g/L,Rh=0.4g/Lであった。
【0049】
<排気ガス浄化性能実験2>
実施例2〜実施例8にて作製した触媒の排気ガス浄化性能を、排気ガス浄化性能実験1と同様の方法で測定し、図7に赤外線放射物質担持量に対する排気ガス浄化率を示した。図7の結果より、赤外線放射物質の量が、好ましくは担持した触媒量の5〜35wt%(さらに好ましくは10〜30wt%)であると、より大きな赤外線効果が得られ、かつ充分な触媒活性成分量が確保されるため優れた排気ガス浄化性能を得ることができるといえる。
【0050】
なお、上記比較例1および実施例1〜8にかかる触媒は、直径50mm、長さ50mmの円筒状のものとした。また、上記実施例1〜8に用いた赤外線放射物質は、主成分がシリカ45〜55wt%,アルミナ30〜45wt%,マグネシア12〜18wt%であるセラミックを材料としたものであり、4〜15μmの波長の赤外線の放射率が高かった。また、この赤外線放射物質は、粒状であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA LA-910)による測定によると、表1および図8(赤外線放射物質の粒度分布)に示すように、平均粒径5.2μmを有した。
【0051】
【表1】
Figure 0004296844
【0052】
【発明の効果】
上記したところから明らかなように、本発明によると、触媒の温度上昇を促進させて触媒の活性を促すことにより、浄化性能を向上させ、始動時など排気ガスが冷えているときにも優れた浄化性能を有する排気ガス浄化触媒およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における触媒(EHCの場合を含む)を自動車の排気通路に配置した模式図である。
【図2】比較例1の、赤外線放射物質を担持していない触媒の模式断面図である。
【図3】実施例1の、赤外線放射物質をウォッシュコート内に分散担持し、触媒活性金属を含浸担持によって触媒表面に担持した触媒の模式断面図である。
【図4】EHC担体の模式図である。
【図5】実施例2〜実施例8の、赤外線放射物質と触媒活性金属をウォッシュコート内に分散担持した触媒の模式断面図である。
【図6】比較例1および実施例1,実施例2にて作製した触媒の排気ガス浄化性能実験結果を示すグラフである。
【図7】実施例2〜実施例8にて作製した触媒の排気ガス浄化性能実験結果を示すグラフである。
【図8】比較例1および実施例1〜8に用いた赤外線放射物質の粒度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1:エンジン
1a:排気ガス通路パイプ
2:触媒(EHCの場合を含む)
2a:EHC回路
3:マフラー
10:担体
11:ウォッシュコート層
12:触媒活性金属
13:赤外線放射物質
20:EHC担体
21:平板
22:波板
23:ケース
24,25:電極

Claims (6)

  1. 電気加熱式のメタルハニカム担体と、該担体上にある触媒層とを含んでなる内燃機関の排気ガス浄化触媒であって、該触媒層が触媒活性金属を担持すると共に、該触媒層の中に、シリカ45〜55wt%,アルミナ30〜45(43を超え45までを除く)wt%,マグネシア12〜18wt%を主成分とするセラミックからなる粒状の赤外線放射物質を分散担持してなる排気ガス浄化触媒。
  2. 前記触媒活性金属が、前記触媒層の中に分散担持されてなることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化触媒。
  3. 担持する赤外線放射物質の含有量が触媒量の5〜35wt%であることを特徴とする請求項1または2に記載の排気ガス浄化触媒。
  4. 担持する赤外線放射物質の含有量が触媒量の10〜30wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排気ガス浄化触媒。
  5. 触媒層用の多孔性物質を含むスラリーに赤外線放射物質を添加するステップと、
    該スラリーを電気加熱式のメタルハニカム担体に塗布するステップと、
    スラリーを塗布した該担体を焼成するステップと、
    焼成した担体に触媒活性金属を担持させるステップと
    を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒の製造方法。
  6. 触媒層用の多孔性物質を含むスラリーに触媒活性金属またはその材料となる成分と赤外線放射物質とを添加するステップと、
    該スラリーを電気加熱式のメタルハニカム担体に塗布するステップと、
    スラリーを塗布した該担体を焼成するステップと
    を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化触媒の製造方法。
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