JP4296803B2 - 車両懸架装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両において左右の前輪および左右の後輪と車体との間に配置された車両懸架装置に関するものであり、特に、その装置を自己診断する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両において左右の前輪および左右の後輪と車体との間に配置された車両懸架装置が既に使用されており、その一改良例が既に提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特表平11−510761号公報
そして、この特許文献1には、車両懸架装置の一従来例が記載されており、この従来例においては、前輪用シリンダと後輪用シリンダとが、第1室用通路および第2室用通路によって流体的に互いに関連付けられる。
【0004】
前輪用シリンダは、前輪側において、それの左右輪間の、概して車体の上下方向における相対変位を制御するために、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とに仕切られて構成されている。
【0005】
それに準じて、後輪用シリンダは、後輪側において、それの左右輪間の、概して車体の上下方向における相対変位を制御するために、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とであって前輪用シリンダの第1室と第2室とにそれぞれ対応するものに仕切られて構成されている。
【0006】
前輪用シリンダの第1室と後輪用シリンダの第1室とにはそれぞれ、車体が一方向にロールすることに伴って同じ向きの圧力変化(昇圧か降圧)が発生する。同様にして、前輪用シリンダの第2室と後輪用シリンダの第2室とにはそれぞれ、車体が一方向にロールすることに伴って同じ向きの圧力変化が発生する。
【0007】
前記第1室用通路は、それら前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第1室同士において互いに接続する通路であり、同様にして、第2室用通路は、それら前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第2室同士において互いに接続する通路である。
【0008】
この種の車両懸架装置においては、前輪用シリンダと後輪用シリンダとが通路によって互いに接続されるとともに、その結果形成された圧力回路内に流体が封入される。その封入されるべき流体は、そもそも非圧縮性である液体が望ましいが、高圧にするなどして圧縮性が低減させられた気体とすることも可能である。
【0009】
それにより、両シリンダ間で等圧である場合には、その封入された流体が両シリンダ間において流動することが抑制され、その結果、その封入された流体が剛となり、両シリンダのピストン変位が共に抑制される。それにより、車体のロール剛性が向上し、車両の旋回性および操舵フィーリングも向上する。
【0010】
これに対し、両シリンダ間で等圧ではない場合には、封入された流体が両シリンダ間において流動することが許容され、その結果、その封入された流体が軟となり、両シリンダのピストン変位が共に許容される。それにより、サスペンションのアーティキュレーション性(例えば、各車輪が路面の凹凸に追従してきびきびと変位する性質)が向上し、車両走行中の車体姿勢のフラット感および乗り心地の重厚感が向上するとともに、車両のオフロード走破性が向上する。
【0011】
したがって、この種の車両懸架装置によれば、車両の懸架特性が自動的に調節されることとなる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
製品については一般に、その種類を問わず、自己に異常が発生したならばできる限り早期にそれを発見して必要な措置を自ら講ずることが要望される。このような事情から、本発明は、自己診断が可能な車両懸架装置を提供することを課題としてなされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 車両において左右の前輪および左右の後輪と車体との間に配置された車両懸架装置であって、
前記前輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する前輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とに仕切られて構成されたものと、
前記後輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する後輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とであって前記前輪用シリンダの第1室と第2室とにそれぞれ対応するものに仕切られて構成されたものと、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第1室同士において互いに接続する第1室用通路と、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第2室同士において互いに接続する第2室用通路と、
前記第1室用通路および前記第2室用通路に個々に接続され、前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとの作動流体を収容可能である第1室用アキュムレータおよび第2室用アキュムレータと、
前記第1室用通路と前記第1室用アキュムレータとの間、前記第2室用通路と前記第2室用アキュムレータとの間にそれぞれ設けられ、各通路から前記アキュムレータに向かう作動流体の流れを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられる第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブと、
前記第1室用アキュムレータと前記第1室用アキュムレータ・バルブとの間、前記第2室用アキュムレータと前記第2室用アキュムレータ・バルブとの間にそれぞれ設けられ、前記第1室用および第2室用アキュムレータの圧力をそれぞれ検出する第1室用アキュムレータ圧センサおよび第2室用アキュムレータ圧センサと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブを電気的に制御する制御装置とを含むとともに、前記制御装置が、
予め定められた条件の成否に応じ、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに供給すべき指令信号を決定し、その決定した指令信号をそれらアキュムレータ・バルブに供給する信号供給部であって、前記車両が旋回状態にあるという条件が成立した場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、前記阻止状態とする指令信号を共に供給する旋回時阻止指令供給部を有するものと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、対応するアキュムレータ圧センサにより検出された圧力の時間的変動の有無に基づき、各アキュムレータ・バルブが異常であるか否かをそれぞれ判定する第1異常判定部であって、前記旋回時阻止指令供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、阻止状態とする指令信号が供給された場合において、前記圧力の時間的変動が存在する場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記許容状態にあると判定する開固着判定手段を有するものと
を含むことを特徴とする車両懸架装置(請求項1)。
同じアキュムレータ・バルブに関して互いに対応するアキュムレータと前輪用および後輪用シリンダの流体室とに着目すると、その流体室の圧力であるシリンダ圧の方が、そのアキュムレータの圧力より、時間的変動を伴う傾向が強い。また、それら流体室とアキュムレータとの間に介在するアキュムレータ・バルブが、それら流体室とアキュムレータとを実際に互いに遮断している状態では、シリンダ圧の時間的変動がアキュムレータ圧に伝達されない。これに対し、アキュムレータ・バルブがそれら流体室とアキュムレータとを実際に互いに連通させている状態では、シリンダ圧の時間的変動がアキュムレータ圧に伝達される。
したがって、阻止状態に切り換えるための指令信号が供給されたにもかかわらず、アキュムレータ圧の時間的な変動が存在する場合には、各アキュムレータ・バルブが実際に許容状態にあるという異常を検出することが可能となる。
なお付言すれば、本項における「前輪用シリンダ」は、左右の前輪に関して共通に設置される形式としたり、左右の前輪に関して個別に設置される形式とすることが可能である。前者の形式によれば、例えば、左右の前輪に関して共通に1つのシリンダを有する態様が該当し、また、後者の形式によれば、例えば、左前輪と右前輪とに関してそれぞれ1つずつのシリンダを有する態様が該当する。以上の解釈は、本項における「後輪用シリンダ」についても適用される。
さらに付言すれば、本項における「アキュムレータ」は、例えば、作動流体を圧力下に収容可能な形式とすることが可能である。
(2)前記第1室用および第2室用アキュムレータが、作動流体を汲み上げて供給するポンプに接続されていないものである(1)項に記載の車両懸架装置(請求項2)。
(3)前記第1判定部が、さらに、前記信号供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、許容状態とする指令信号が供給された場合において、前記第1圧力関連量の時間的変動が存在しない場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記阻止状態にあると判定する閉固着判定手段を含む(1)項または(2)項に記載の車両懸架装置(請求項3)。
この装置によれば、各アキュムレータ・バルブにつき、それを許容状態に切り換えるための指令信号が供給されたにもかかわらず、各アキュムレータ・バルブが実際に阻止状態にあるという異常を検出することが可能となる。
(4)前記閉固着判定手段が、前記車両の走行中に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブがそれぞれ前記閉固着異常であるか否かを判定するものである(3)項に記載の車両懸架装置(請求項4)。
前輪用および後輪用シリンダの圧力の時間的変動は、車両が走行している状態の方が停止している状態より顕著であるのが一般的である。
したがって、各アキュムレータ・バルブにそれを許容状態に切り換えるための第2指令信号が供給されたにもかかわらず、前記圧力の時間的変動が存在しないという現象が、車両が走行している状態において発生した場合には、車両が停止している状態において同じ現象が発生した場合より高い確度で、そのアキュムレータ・バルブが実際に阻止状態にあると判定することが可能となる。
このような知見に基づき、本項に係る装置が提案されたのである。
(5)前記信号供給部が、前記第1異常判定部によって、前記第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブのうちの一方について前記整合がないとされ、他方について前記整合があると判定された場合に、前記他方のアキュムレータ・バルブの実際の作動状態を前記一方のアキュムレータ・バルブの実際の作動状態に一致させるための指令信号を、前記他方のアキュムレータ・バルブに供給するバルブ異常時信号供給部を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両懸架装置(請求項5)。
(6)前記信号供給部が、前記開固着判定手段によって、前記第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブのうちの少なくとも一方が開固着であると判定された場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、許容状態とする指令信号を供給する開固着時信号供給部を含む(1)項または(2)項に記載の車両懸架装置(請求項6)。
第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブのうちのいずれかは異常であるがそれ以外のものは正常である場合がある。この場合、正常であるアキュムレータ・バルブをそのまま放置すると、それらアキュムレータ・バルブ間に作動状態の差が発生し、その差は、前輪用および後輪用シリンダ間に作動特性の差を誘発することがある。その作動特性の差は、例えば、車体がロールしようとする向きによって、車体ロール剛性が異なったり、車輪のアーティキュレーション性が異なったりすることにつながる可能性がある。
そこで、第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブのうち正常であるものの実際の作動状態を、異常であるアキュムレータ・バルブの実際の作動状態に一致させるための指令信号がその正常なアキュムレータ・バルブに供給され、それにより、それらアキュムレータ・バルブについて代替制御が行われる。
(7)車両において左右の前輪および左右の後輪と車体との間に配置された車両懸架装置であって、
前記前輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する前輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とに仕切られて構成されたものと、
前記後輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する後輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とであって前記前輪用シリンダの第1室と第2室とにそれぞれ対応するものに仕切られて構成されたものと、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第1室同士において互いに接続する第1室用通路と、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第2室同士において互いに接続する第2室用通路と、
前記第1室用通路および前記第2室用通路に、個々に接続され、前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとの作動流体を収容可能である第1室用アキュムレータおよび第2室用アキュムレータと、
前記第1室用通路と前記第1室用アキュムレータとの間、前記第2室用通路と前記第2室用アキュムレータとの間にそれぞれ設けられ、各通路から前記アキュムレータに向かう作動流体の流れを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられる第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブと、
前記第1室用アキュムレータと前記第1室用アキュムレータ・バルブとの間、前記第2室用アキュムレータと前記第2室用アキュムレータ・バルブとの間にそれぞれ設けられ、前記第1室用および第2室用アキュムレータの圧力をそれぞれ検出する第1室用アキュムレータ圧センサおよび第2室用アキュムレータ圧センサと、
前記第1室および第2室の圧力をそれぞれ検出する第1室用シリンダ圧センサおよび第2室用シリンダ圧センサと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブを電気的に制御する制御装置とを含むとともに、前記制御装置が、
予め定められた条件の成否に応じ、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに供給すべき指令信号を決定し、その決定した指令信号をそれらアキュムレータ・バルブに供給する信号供給部であって、前記車両が旋回状態にあるという条件が成立した場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、前記阻止状態とする指令信号を共に供給する旋回時阻止指令供給部を有するものと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、対応するアキュムレータ圧センサにより検出された圧力と、対応するシリンダ圧センサにより検出された圧力との差の時間的変動の有無に基づき、各アキュムレータ・バルブが異常であるか否かをそれぞれ判定する第2異常判定部と
を含むことを特徴とする車両懸架装置(請求項7)。
この装置においては、各アキュムレータ・バルブにつき、対応するアキュムレータ圧センサにより検出された圧力と、対応するシリンダ圧センサにより検出された圧力との差の時間的変動の有無に基づき、各アキュムレータ・バルブが異常であるか否かが判定される。
本項における「シリンダ圧センサ」は、例えば、対応するシリンダのうちの、対応する流体室の圧力を直接に検出する形式としたり、間接に検出する形式、すなわち、推定する形式とすることが可能である。
後者の形式を採用する場合、「シリンダ圧センサ」は、例えば、車両の旋回状態量(例えば、横速度、横加速度、ヨー角、ヨーレート、ロール角、ロールレート)、各車輪のサスペンションの上下ストローク、各車輪の上下加速度等を検出するセンサ部と、そのセンサ部の出力信号に基づいてシリンダ圧を推定する信号処理部とを含むように構成することが可能である。
(8)前記第2異常判定部が、前記信号供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、阻止状態とする指令信号が供給された場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、前記圧力の差の時間的変動の有無を判定し、その時間的変動が存在しない場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記許容状態にあるとそれぞれ判定する開固着判定手段を含む(7)項に記載の車両懸架装置(請求項8)。
(9)前記第2異常判定部が、さらに、前記信号供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、許容状態とする指令信号が供給された場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、前記圧力の差の時間的変動の有無を判定し、その時間的変動が存在した場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記阻止状態にあるとそれぞれ判定する閉固着判定手段を含む(7)項に記載の車両懸架装置(請求項9)。
(10)当該車両懸架装置が、前記車両の旋回状態を検出するための物理量を検出する旋回状態関連量センサを含み、
前記予め定られた条件が、前記車両が旋回状態にある場合に成立すべき旋回時成立条件を含み、
前記信号供給部が、前記旋回状態関連量センサの出力信号に基づき、前記旋回時成立条件が成立するか否かを判定し、成立すると判定した場合に、前記各アキュムレータ・バルブにそれを前記阻止状態に切り換えるための指令信号を供給する手段を含み、
前記異常判定部が、前記各アキュムレータ・バルブにつき、それが実際に前記阻止状態にあり続ける連続時間が限界時間を超えた場合に、前記旋回時成立条件の実際の成否と各アキュムレータ・バルブの実際の作動状態とが互いに整合しないと判定する手段を含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両懸架装置。
この装置においては、旋回状態関連量センサの出力信号に基づき、車両が旋回状態にある場合に成立する旋回時成立条件が成立するか否かが判定され、成立すると判定された場合に、各アキュムレータ・バルブにそれを阻止状態に切り換えるための指令信号が供給される。
ところで、車両が連続的に旋回する時間の長さには限界があるのが通常であり、その限界は、車両の走行環境および運転者の如何を問わず、ほぼ共通な大きさを有している。したがって、各アキュムレータ・バルブにつき、それが実際に阻止状態にあり続ける連続時間が限界時間を超えたか否かを監視すれば、各アキュムレータ・バルブの作動状態が、車両の旋回状態を正しく反映しているか否かを推定することが可能となる。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、各アキュムレータ・バルブにつき、それが実際に阻止状態にあり続ける連続時間が限界時間を超えた場合に、前記旋回時成立条件の実際の成否と各アキュムレータ・バルブの実際の作動状態とが互いに整合しないと判定される。
(11)当該車両懸架装置が、前記車両の旋回状態を検出するための物理量を検出する旋回状態関連量センサを含み、
前記旋回時阻止指令供給部が、前記旋回状態関連量センサの出力信号に基づき、前記旋回時成立条件が成立するか否かを判定し、成立すると判定した場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブにそれを前記阻止状態に切り換えるための指令信号を共に供給する手段を含み、
前記制御装置が、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、それの作動状態が前記阻止状態である連続時間が限界時間を超えたか否かを判定し、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブについて、共に前記限界時間を超えた場合に、前記旋回状態関連量センサが異常であると判定する第3異常判定部を含む(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両懸架装置(請求項10)。
(12)前記信号供給部が、前記第3異常判定部により前記旋回状態関連量センサが異常であると判定された場合に、前記旋回状態関連量センサによる検出結果を問わず、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、前記許容状態とする指令信号を供給するセンサ異常時信号供給部を含む(11)項に記載の車両懸架装置(請求項11)。
(13)前記センサ異常時信号供給部が、前記許容状態とする指令信号を、予め定められた設定時間の間供給するものである(12)項に記載の車両懸架装置(請求項12)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的に実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明の第1実施形態に従う車両懸架装置(以下、単に「懸架装置」という)が車両搭載状態で示されている。この懸架装置は、左右の前輪10,10と左右の後輪12,12とが図示しない車体によって支持されて構成される車両においてそれら車輪10,12と車体との間に配置されて搭載される。
【0016】
その車体はサスペンション20を介して左右の前輪10,10と左右の後輪12,12とに相対変位可能に連結されている。サスペンション20は、前輪側においては、左右輪10,10を左右のロアアーム22,22を介して車体に揺動可能に支持している。さらに、サスペンション20は、後輪側においては、左右輪12,12と同軸に一緒に回転するリヤアクスル(図示しない)を回転可能に保持するリヤアクスルハウジング26を介してそれら左右輪12,12を車体に揺動可能に支持している。リヤアクスルは、よく知られているように、図示しないドライブシャフトの駆動トルクをデファレンシャル28を経て左右の後輪12,12に分配する。
【0017】
サスペンション20は、前輪側と後輪側とにそれぞれスタビライザバー30,32を備えている。各スタビライザバー30,32は、よく知られているように、前輪側と後輪側とにおいてそれぞれ、概して車体左右方向に延びて左右輪を互いに連結する。各スタビライザバー30,32は、車体左右方向に延びるロッド状のトーション部36を含み、そのトーション部36の両端からそれぞれ一対のアーム部38,38が同一平面上において同じ向きに屈曲して延びている。
【0018】
前輪側においては、スタビライザバー30のうちの一対のアーム部38,38の各端部が、対応するロアアーム22,22のうち、それの揺動中心から車体左右方向にずれた部分に相対回動可能に支持される。これに対し、後輪側においては、スタビライザバー32のうちの一対のアーム部38,38の各端部が、リヤアクスルハウジング26に相対回動可能に支持される。
【0019】
前輪用のスタビライザバー30は、左右輪10,10が逆位相で動こうとすると、車体のロール剛性を高めるように作用する。後輪用のスタビライザバー32も、左右輪12,12が逆位相で動こうとすると、車体のロール剛性を高めるように作用する。
【0020】
各スタビライザバー30,32は、基本的には、前輪と後輪とについて互いに独立してロール剛性を制御する。これに対し、本実施形態においては、前輪用のスタビライザバー30と後輪用のスタビライザバー32とが互いに機械的に連携させられており、その連携を実現するために前記懸架装置が使用される。
【0021】
この懸架装置においては、前輪用のスタビライザバー30は、それのトーション部36のうち車体前後中心線から互いに逆向きに隔たった2つの部分において車体に取り付けられる。それら2つの部分の一方は、長さが不変の連結ロッド50を介して車体に連結され、他方は、長さが可変のシリンダ52を介して車体に連結される。連結ロッド50もシリンダ52も、概して車体の上下方向に延びている。
【0022】
これに対し、後輪用のスタビライザバー32は、前輪用のスタビライザバー30と同様にして、それのトーション部36のうち車体前後中心線から互いに逆向きに隔たった2つの部分において車体に取り付けられる。それら2つの部分の一方は、長さが不変の連結ロッド60を介して車体に連結され、他方は、長さが可変のシリンダ62を介して車体に連結される。連結ロッド60もシリンダ62も、概して車体の上下方向に延びている。
【0023】
すなわち、本実施形態においては、シリンダ52が「前輪用シリンダ」の一例であり、シリンダ62が「後輪用シリンダ」の一例なのである。
【0024】
なお付言するに、本実施形態においては、各シリンダ52,62が、それに対応するスタビライザバー30,32と車体とを互いに相対変位可能に連結するが、例えば、対応するスタビライザバーを右側部分と左側部分とに分離し、それら2つの部分を互いに相対変位可能に連結するために各シリンダを使用するようにして本発明を実施することが可能である。シリンダは、左右輪間の、概して車体の上下方向における相対変位を実現するものであれば足りるからである。
【0025】
さらに付言すれば、各シリンダは、対応する車輪をスタビライザバーを介して車体に連結することは不可欠ではなく、例えば、各シリンダが、左右の前輪10,10と左右の後輪12,12とについて個別に配置され、かつ、各輪と一緒に運動する部材を車体に連結するようにして本発明を実施することも可能である。
【0026】
前輪用のシリンダ52と後輪用のシリンダ62とは、構造に関して互いに共通しており、図2に正面断面図で示されている。各シリンダ52,62は、両端が閉塞された中空のハウジング70と、そのハウジング70に実質的に液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン72とを備えている。その嵌合により、ハウジング70内の空間が2つに仕切られている。本実施形態においては、各シリンダ52,62が、概して車体の上下方向に延びる姿勢で車両に搭載されるため、それら2つの空間のうち上側のものを上室74、下側のものを下室76とそれぞれ称することとする。
【0027】
図2に示すように、ピストン72の一側からはそれと同軸にピストンロッド80が延び出し、ハウジング70を貫通して大気に臨まされている。本実施形態においては、ピストン72の両側のうち下室76に対向する側からピストンロッド80が下方に延び出している。ピストンロッド80の先端部が、図1に示すように、スタビライザバー30に相対回動可能に連結されている。図2に示すように、ハウジング70の両端部のうちピストンロッド80が貫通する側の端部とは反対側の端部からそれと同軸に固定ロッド84が延び出している。本実施形態においては、その固定ロッド84の先端部が、図1に示すように、図示しない車体に相対回動可能に連結されている。
【0028】
以上の説明から明らかなように、図1に示すように、各スタビライザバー30,32は、それの一側においてはシリンダ52,62、他側においては連結ロッド50,60を介して車体に連結されているのである。各シリンダ52,62の位置は、前輪側と後輪側とで互いに共通に設定されており、図1においては、共に車体の右側に設定されている。
【0029】
したがって、本実施形態においては、車体が右側にロールしようとすると、前輪用のシリンダ52においても後輪用のシリンダ62においても、ピストン72が上昇する(ピストンロッド80が縮み側に変位する)結果、上室74において圧力が上昇しようとする。
【0030】
よって、本実施形態においては、前輪側においても後輪側においても、上室74が「第1室」の一例であり、下室76が「第2室」の一例なのである。
【0031】
図1に示すように、前輪用のシリンダ52の上室74と後輪用のシリンダ62の上室74とが通路90によって互いに接続されている。同様にして、前輪用のシリンダ52の下室76と後輪用のシリンダ62の下室76とが通路92によって互いに接続されている。すなわち、本実施形態においては、通路90が「第1室用通路」の一例を構成し、通路92が「第2室用通路」の一例を構成しているのである。
【0032】
図1に示すように、通路90の途中には液圧ユニット100が接続され、同様にして、通路92の途中には液圧ユニット102が接続されている。
【0033】
図3には、本実施形態に従う懸架装置のハードウエア構成とソフトウエア構成とが概念的に表されている。
【0034】
図3に示すように、液圧ユニット100は、アキュムレータ200を含んでいる。アキュムレータ200は、よく知られているように、有底のハウジングにピストンが実質的に液密かつ摺動可能に嵌合されて構成されている。そのピストンの背後には、圧縮気体としての窒素ガスが封入された高圧室、前方には、作動液を圧力下に収容可能な収容室がそれぞれ形成されている。
【0035】
このアキュムレータ200は、ソレノイドバルブ206を経て通路90に接続されている。ソレノイドバルブ206は、図示しないが、よく知られているように、通電によって磁気力を発生させるソレノイドと、その磁気力に基づいて作動し、内部通路を開く状態と閉じる状態とに切り換わる弁部とを含むように構成されている。このソレノイドバルブ206は、本実施形態においては、ノーマルオープン式であり、非通電状態では、通路90とアキュムレータ200とを互いに連通させる連通位置(開状態)にあるが、通電されると、それら通路90とアキュムレータ200とを互いに遮断する遮断位置(閉状態)に切り換わる。
【0036】
ソレノイドバルブ206の開状態では、各シリンダ52,62内の作動液が熱膨張してそれの容積が増加すれば、その増加分、作動液がアキュムレータ200に吸収される。これにより、各シリンダ52,62内における作動液の容積が温度上昇に対して補償される。
【0037】
さらに、ソレノイドバルブ206の開状態では、各シリンダ52,62内の作動液の容積が減少すれば、その減少分、作動液がアキュムレータ200から補充される。これにより、各シリンダ52,62内における作動液の容積が補償される。
【0038】
したがって、本実施形態においては、ソレノイドバルブ206が「アキュムレータ・バルブ」の一例を構成しているのである。
【0039】
同様にして、液圧ユニット102は、通路92の途中において、アキュムレータ200とソレノイドバルブ206とを含むように構成されている。
【0040】
図3に示すように、この懸架装置には、2つのソレノイドバルブ206,206を制御するために電子制御ユニット(以下、「ECU」という)250が設けられている。このECU250は、アキュムレータ200の圧力に関する情報と、車両状態量に関する情報としての、車輪速度に関する情報、車体の横加速度に関する情報、および車両のステアリングホイールが運転者によって回転操作された操舵角に関する情報とに基づき、ソレノイドバルブ206を制御するとともに、必要な情報をインジケータ252を介して運転者に表示する。
【0041】
図4には、ECU250ソフトウエア構成がブロック図で概念的に表されている。ECU250は、コンピュータ260を主体として構成されており、そのコンピュータ260は、よく知られているように、CPU262とROM264とRAM266とがバス268により互いに接続されて構成されている。そのコンピュータ260は、図示しないI/Oポートを介して各種の外部機器に接続されている。
【0042】
具体的には、図3に示すように、ECU250は、2つのアキュムレータ200,200の圧力をそれぞれ検出する2つのアキュムレータ圧センサ280,280に接続されている。ECU250は、さらに、車体の横加速度を検出する横加速度センサ282と、前記操舵角を検出する操舵角センサ284とに接続されている。それらセンサ282,284は、車両が旋回しているか否かを判定したり、車体のローリング運動の程度を判定するために使用することが可能である。ECU250は、さらに、左右の前輪10,10と左右の後輪12,12との各輪の角速度を車輪速度として検出する4つの車輪速度センサ268(図3においては1つのみが代表的に示されている)に接続されている。それら車輪速度センサ268を車両が旋回しているか否かを判定するために使用することが可能である。
【0043】
ECU250は、さらに、ソレノイドバルブ206,206と、インジケータ252とに接続されている。インジケータ252は、文字、図形等により、必要な情報を運転者に視覚的に伝達するために使用することができる。インジケータ252は、出力器の一例であり、それに代えて、またはそれと共に、必要な情報を運転者に聴覚的に伝達する警報器(例えば、ブザー、擬似音声出力器)を用いることが可能である。
【0044】
ROM264には、この懸架装置を作動させるためにコンピュータ260により実行させるべき各種プログラムが記憶されている。そのうちの1つが、ソレノイドバルブ206,206を制御するためのバルブ制御プログラムであり、図5にフローチャートで概念的に表されている。
【0045】
このバルブ制御プロブラムは、イグニションスイッチ等、車両スイッチが運転者によってONに操作された後、繰返し実行される。各回の実行時には、まず、ステップ(以下、「S1」で表す。他のステップについても同じとする)において、横加速度センサ282、操舵角センサ284等からの信号に基づき、車両が旋回中であるか否かが判定される。
【0046】
今回は、旋回中ではないと仮定すれば、S1の判定がNOとなり、S2において、前輪側と後輪側との双方につき、各ソレノイドバルブ206のソレノイドがOFFにされる。
【0047】
いずれのソレノイドバルブ206も、前述のように、ノーマルオープン式とされているため、このバルブ制御プログラムの一連の実行に先立ち、開状態にある。前輪用シリンダ52および後輪用シリンダ62がアキュムレータ200に連通した状態にあるのであり、したがって、各シリンダ内の作動液の熱膨張によってその容積が増加すれば、その増加分の作動液が、対応するソレノイドバルブ206を経てアキュムレータ200に圧力下に吸収される。
【0048】
S2の今回の実行は、このバルブ制御プログラムの一連の実行のうちの初回の実行に該当するため、S2のその実行にもかかわらず、各ソレノイドバルブ206が開状態(連通位置)に維持されることとなる。
【0049】
以上で、このバルブ制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0050】
これに対し、今回は車両が旋回中であると仮定すれば、S1の判定がYESとなり、S2において、前輪側と後輪側との双方につき、各ソレノイドバルブ206のソレノイドがONにされる。その結果、いずれのソレノイドバルブ206も、前輪用シリンダ52および後輪用シリンダ62をアキュムレータ200から遮断し、それらシリンダ52,62が通路90,92によって互いに接続されて形成される圧力回路240,242(図3参照)内に作動液が封入されることとなる。
【0051】
以上で、このバルブ制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0052】
前輪用シリンダ52および後輪用シリンダ62がアキュムレータ200から遮断されて圧力回路240,242内に作動液が封入された状態においては、車両旋回中に車体がロールしようとする場合には、前輪用および後輪用のシリンダ52,62間で等圧となり、それらシリンダ52,62間での作動液の流動が阻止される。その結果、各シリンダ52,62においてピストン72が同じ向きにストロークすること(例えば、車輪がバウンドする向きにストロークすること)が阻止される。よって、スタビライザバー30,32が、前輪用および後輪用のシリンダ52,62を有しない車両におけると同様に、ねじれることが可能となり、それらスタビライザバー30,32が本来の機能を有効に発揮可能となって、車体ロールが抑制される。
【0053】
これに対して、車両が凹凸路面を走行しているときに同じ側の前後輪のうちの片輪が浮き上がろうとする場合には、前輪用および後輪用のシリンダ52,62間で等圧ではなくなり、それらシリンダ52,62間での作動液の流動が許容される。その結果、各シリンダ52,62においてピストン72が互いに逆向きにストロークすること(一方のシリンダにおいては車輪がバウンドする向きに、他方のシリンダにおいてはリバウンドする向きにストロークすること)が許容される。よって、スタビライザバー30,32が、前輪用および後輪用のシリンダ52,62を有しない車両におけるとは異なり、ねじれることが抑制され、それらスタビライザバー30,32が本来の機能を発揮することが抑制されて、サスペンション20のアーティキュレーション性(例えば、各車輪が路面の凹凸に追従してきびきびと変位する性質)が向上する。
【0054】
ROM264には、さらに、自己診断プログラムも記憶されている。図6には、この自己診断プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0055】
この自己診断プログラムも繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S101において、各アキュムレータ圧センサ280により、各アキュムレータ200の圧力が検出される。
【0056】
次に、S102において、各ソレノイドバルブ206、またはコンピュータ260が図5のバルブ制御プログラムを実行するために参照する信号を出力するセンサ(横加速度センサ282、操舵角センサ284等)が異常であるか否かが判定される。このS102の詳細については後述する。
【0057】
今回は、それら機器が異常ではないと判定されたと仮定すれば、S103において、2つのソレノイドバルブ206,206に対する通常制御の続行が許可される。具体的には、コンピュータ260による図5のバルブ制御プログラムの実行の実行が許可されるのである。
【0058】
以上で、この自己診断プログラムの一回の実行が終了する。
【0059】
これに対して、今回は、それら機器が異常であると判定されたと仮定すれば、S104において、それら機器に対するフェールセーフ対策として代替制御がそれら機器に対して行われる。この代替制御は、上記通常制御を代替する制御であるため、それが実行されると、コンピュータ260による図5のバルブ制御プログラムの実行が中止される。このS104の詳細については後述する。
【0060】
その後、S105において、それら機器の中に異常であるものが存在することが運転者に対して告知される。
【0061】
以上で、この自己診断プログラムの一回の実行が終了する。
【0062】
S102においては、次の4つの判定が実行される。
(1)各ソレノイドバルブ206が開状態で固着した開固着が発生したか否かを判定する開固着判定
(2)各ソレノイドバルブ206が閉状態で固着した閉固着が発生したか否かを判定する閉固着判定
(3)横加速度センサ282のような旋回状態センサが異常であるため、実際には車両旋回中ではないにもかかわらず車両旋回中であるとの誤判定をコンピュータ260が行い、そのため、いずれのソレノイドバルブ206,206にも、それらを閉状態にする閉信号(各ソレノイドをONにするための信号)を誤って出力したという誤指令が発生したか否かを判定する誤指令判定
(4)作動液が異常に高圧であるか否かを判定する異常高圧判定
図7には、上記開固着判定のためにコンピュータ260により実行される開固着判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0063】
この開固着判定プログラムにおける判定原理を概念的に説明すれば、各ソレノイドバルブ206にそれを閉じさせるための閉信号が出力されている状態においては、各ソレノイドバルブ206がその閉信号に正常に応答して閉じていれば、対応するアキュムレータ200がいずれのシリンダ52,62からも遮断される。そのため、この場合には、それらシリンダ52,62の圧力変動にもかかわらず、アキュムレータ圧が変動しない。
【0064】
これに対して、各ソレノイドバルブ206が、開状態で固着していれば、上記閉信号が無効にされ、その結果、対応するアキュムレータ200がいずれのシリンダ52,62にも連通する。そのため、それらシリンダ52,62の圧力変動がそのアキュムレータ200に伝達され、アキュムレータ圧が変動する。
【0065】
図8には、閉信号の供給時に、上室側のソレノイドバルブ206が開固着状態にあるのに対し、下室側のソレノイドバルブ206が正常に閉状態にある場合に、上室側のアキュムレータ200の圧力Pが時間tと共に変動するのに対し、下室側のアキュムレータ200の圧力Pが変動しない様子がグラフで表されている。
【0066】
以上説明した判定原理に従い、図7の開固着判定プログラムは繰返し実行され、各回の実行時には、まず、S201において、各ソレノイドバルブ206に閉信号が出力されたか否かが判定される。今回は、出力されていないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこの開固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0067】
これに対し、今回は、各ソレノイドバルブ206に閉信号が出力されたと仮定すれば、S201の判定がYESとなり、S202において、各ソレノイドバルブ206ごとに、対応するアキュムレータ圧センサ280の出力信号であってアキュムレータ圧の時間的推移を表す時系列信号に基づき、アキュムレータ圧が変動しているか否かが判定される。
【0068】
今回は、2つのソレノイドバルブ206,206の双方または一方につき、アキュムレータ圧が変動していると仮定すれば、判定がYESとなり、S203において、該当するソレノイドバルブ206が開固着状態にあると判定される。
【0069】
これに対し、今回は、いずれのソレノイドバルブ206,206についても、アキュムレータ圧が変動していないと仮定すれば、S202の判定がNOとなり、S204において、いずれのソレノイドバルブ206,206も開固着状態にはないと判定される。
【0070】
いずれの場合にも、以上で、この開固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0071】
図9には、前記閉固着判定のためにコンピュータ260により実行される閉固着判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0072】
この閉固着判定プログラムにおける判定原理を概念的に説明すれば、各ソレノイドバルブ206にそれを開かせるための開信号(各ソレノイドをOFFにするための信号)が出力されている状態においては、各ソレノイドバルブ206がその開信号に正常に応答して開いていれば、対応するアキュムレータ200がいずれのシリンダ52,62にも連通し、それらシリンダ52,62の圧力変動に伴ってアキュムレータ圧が変動する。
【0073】
これに対して、各ソレノイドバルブ206が、閉状態で固着していれば、上記開信号が無効にされ、その結果、対応するアキュムレータ200がいずれのシリンダ52,62からも遮断される。そのため、それらシリンダ52,62の圧力変動がそのアキュムレータ200に伝達されず、アキュムレータ圧が変動しない。
【0074】
図10には、開信号の供給時に、上室側のソレノイドバルブ206が閉固着状態にあるのに対し、下室側のソレノイドバルブ206が正常に開状態にある場合に、上室側のアキュムレータ200の圧力Pが時間tと共に変動しないのに対し、下室側のアキュムレータ200の圧力Pが変動する様子がグラフで表されている。
【0075】
ところで、車両が停止していて、そもそもシリンダ52,62に圧力変動が発生していない場合には、アキュムレータ200の圧力変動の有無に応じてソレノイドバルブ206が開状態にあるか閉状態にあるかを判定することは困難である。
【0076】
そこで、本実施形態においては、車両走行中であるにもかかわらずアキュムレータ圧が変動しない場合に、ソレノイドバルブ206が閉状態にあると判定されるようになっており、これにより、判定の信頼性が向上する。
【0077】
以上説明した判定原理に従い、図9の閉固着判定プログラムは繰返し実行され、各回の実行時には、まず、S231において、各ソレノイドバルブ206に開信号が出力されたか否かが判定される。今回は、出力されていないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこの閉固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0078】
これに対し、今回は、各ソレノイドバルブ206に開信号が出力されたと仮定すれば、S231の判定がYESとなり、S232において、車輪速度センサ286の出力信号であって車速を反映するものに基づき、車両走行中であるか否かが判定される。今回は、車両走行中ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこの閉固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0079】
これに対し、今回は、車両走行中であると仮定すれば、S232の判定がYESとなり、S233において、各ソレノイドバルブ206ごとに、対応するアキュムレータ圧センサ280の出力信号であってアキュムレータ圧の時間的推移を表す時系列信号に基づき、アキュムレータ圧が変動していないか否かが判定される。
【0080】
今回は、2つのソレノイドバルブ206の双方または一方につき、アキュムレータ圧が変動していないと仮定すれば、判定がYESとなり、S234において、該当するソレノイドバルブ206が閉固着状態にあると判定される。
【0081】
これに対し、今回は、いずれのソレノイドバルブ206についても、アキュムレータ圧が変動していると仮定すれば、S233の判定がNOとなり、S235において、いずれのソレノイドバルブ206も閉固着状態にはないと判定される。
【0082】
いずれの場合にも、以上で、この閉固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0083】
図11には、前記誤指令判定のためにコンピュータ260により実行される誤指令判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0084】
この誤指令判定プログラムにおける判定原理を概念的に説明すれば、車両が旋回状態にあるか否かを判定するために使用される旋回状態センサが正常であれば、車両が実際に旋回状態にある場合に限り、2つのソレノイドバルブ206に共に閉信号が出力される。そして、車両が連続して旋回状態にある時間の長さには通常、限界がある。したがって、それら2つのソレノイドバルブ206,206に共に閉信号が出力され続ける時間すなわち連続時間Tが、上記限界に相当するしきい値Tth(前記限界時間の一例である)を超えたか否かを判定すれば、上記旋回状態センサが異常であるか否かを判定することができる。
【0085】
図12には、2つのソレノイドバルブ206,206に共に閉信号が出力される連続時間Tがこの誤指令判定プログラムの繰返しごとに周期Δtずつ増加する場合に、その連続時間Tがしきい値Tthを超えなければ、上記旋回状態センサが正常であると判定され、超えたならば、上記旋回状態センサが異常であると判定される様子がグラフで表されている。
【0086】
以上説明した判定原理に従い、図11の誤指令判定プログラムは繰返し実行され、各回の実行時には、まず、S301において、2つのソレノイドバルブ206,206に共に閉信号が出力されたか否かが判定される。今回は、出力されていないと仮定すれば、判定がNOとなり、S302において、OFFで連続時間Tをリセットしないことを表し、ONでリセットすることを表すリセットフラブがONにされる。
【0087】
これに対し、今回は、2つのソレノイドバルブ206,206に共に閉信号が出力されていると仮定すれば、S301の判定がYESとなり、S303において、リセットフラグがOFFにされる。続いて、S304において、連続時間Tが周期Δtだけ増加させられる。
【0088】
いずれの場合にも、その後、S305において、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたか否かが判定される。今回は、超えてはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S306において、2つのソレノイドバルブ206,206への前記閉信号の出力が誤指令に基づくものではなかったと判定される。これに対し、今回は、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたと仮定すれば、S305の判定がYESとなり、S307において、2つのソレノイドバルブ206,206への前記閉信号の出力が誤指令に基づくものであったと判定される。
【0089】
いずれの場合にも、その後、S308において、リセットフラグがONにされているか否かが判定される。ONにされていれば、判定がYESとなり、S309において、連続時間Tが0にリセットされる。これに対し、リセットフラグがONにされていなければ、S308の判定がNOとなり、S309がスキップされる。
【0090】
いずれの場合にも、以上で、この誤指令判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0091】
図13には、前記異常高圧判定のためにコンピュータ260により実行される異常高圧判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0092】
この異常高圧判定プログラムは繰返し実行され、各回の実行時には、まず、S331において、各アキュムレータ圧センサ280の出力信号に基づき、各アキュムレータ200の圧力Pが許容値P0を超えたか否かが判定される。今回は、超えてはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S332において、OFFで連続時間Tをリセットしないことを表し、ONでリセットすることを表すリセットフラブがONにされる。
【0093】
これに対し、今回は、各アキュムレータ200の圧力Pが許容値P0を超えたと仮定すれば、S331の判定がYESとなり、S333において、リセットフラグがOFFにされる。続いて、S334において、連続時間Tが周期Δtだけ増加させられる。
【0094】
いずれの場合にも、その後、S335において、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたか否かが判定される。今回は、超えてはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S336において、作動液が異常に高圧ではないと判定される。これに対し、今回は、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたと仮定すれば、S335の判定がYESとなり、S337において、作動液が異常に高圧であると判定される。
【0095】
いずれの場合にも、その後、S338において、リセットフラグがONにされているか否かが判定される。ONにされていれば、判定がYESとなり、S339において、連続時間Tが0にリセットされる。これに対し、リセットフラグがONにされていなければ、S338の判定がNOとなり、S339がスキップされる。
【0096】
いずれの場合にも、以上で、この異常高圧判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0097】
図14には、図6におけるS104の詳細が代替制御プログラムとしてフローチャートで概念的に表されている。
【0098】
2つのソレノイドバルブ206,206のうちの一方は開固着状態にあり、他方は正常に閉状態にある場合には、開固着状態にあるソレノイドバルブ206が接続された上室74,74同士と下室76,76同士との一方においてはそこからアキュムレータ200に作動液が流出するが、他方においてはそこからアキュムレータ200に作動液が流出しない。そのため、車体の左向きへのロールと右向きへのロールとのうち、作動液がアキュムレータ200に流出するシリンダ室同士に対応するロールが抑制されないのに対し、反対向きへのロールが抑制される。よって、車体のロール剛性がロールの向きによって異なってしまう。
【0099】
そこで、この代替制御プログラムにおいては、それら2つのソレノイドバルブ206,206のうち正常であるものに開信号を出力し、それにより、それら2つのソレノイドバルブ206,206が共に開く状態を実現する。これにより、車体のロール剛性がロールの向きによって異なる現象が回避される。
【0100】
車両の旋回状態を検出するために使用されるセンサが異常であるために、2つのソレノイドバルブ206,206が共に閉じ続ける場合には、シリンダ52,62内の作動液または通路90,92内の作動液が高温になり、さらに、それに起因した熱膨張によって作動液が高圧になるおそれがある。
【0101】
そこで、この代替制御プログラムにおいては、2つのソレノイドバルブ206,206に共に開信号を出力することにより、2つのアキュムレータ200,200と2つのシリンダ52,62との間における作動液の流動を可能にする。これにより、作動液の降圧が促進される。
【0102】
さらに、この代替制御プログラムにおいては、アキュムレータ圧が異常に高い場合には、2つのソレノイドバルブ206,206に共に開信号を出力することにより、2つのアキュムレータ200,200と2つのシリンダ52,62との間における作動液の流動を可能にする。これにより、作動液の降圧が促進される。
【0103】
以上、この代替制御プログラムの概略を説明したが、具体的には、この代替制御プログラムは繰替し実行され、各回の実行時には、まず、S361において、前記開固着判定プログラムの実行によって少なくとも1つのソレノイドバルブ206が開固着状態にあると判定されたか否かが判定される。少なくとも1つのソレノイドバルブ206が開固着状態にあると判定された場合には、S361の判定がYESとなり、続いて、S362において、それら2つのソレノイドバルブ206,206に共に開信号が出力される。それにより、それら2つのソレノイドバルブ206,206のうち正常なものが開かれ、その結果、それら2つのソレノイドバルブ206,206が共に開かれることとなる。
【0104】
これに対して、少なくとも1つのソレノイドバルブ206,206が開固着状態あると判定されてはいない場合には、S361の判定がNOとなり、S362がスキップされる。
【0105】
いずれの場合にも、その後、S363において、前記誤指令判定プログラムの実行によって誤指令が発生したと判定されたか否かが判定される。誤指令が発生したと判定された場合には、S363の判定がYESとなり、続いて、S364において、2つのソレノイドバルブ206,206に共に開信号が設定時間出力される。時間制限付きでそれら2つのソレノイドバルブ206,206が共に開かれるのである。
【0106】
これに対して、誤指令が発生しなかったと判定された場合には、S363の判定がNOとなり、S364がスキップされる。
【0107】
いずれの場合にも、その後、S365において、前記異常高圧判定プログラムの実行によって異常高圧が発生したと判定されたか否かが判定される。異常高圧が発生したと判定された場合には、S365の判定がYESとなり、続いて、S366において、2つのソレノイドバルブ206,206に共に開信号が出力される。この出力は、例えば、前記異常高圧判定プログラムの実行によって異常高圧が発生しなくなったと判定されるまで継続し、それ以後は、解除することが可能である。
【0108】
いずれの場合にも、以上で、この代替制御プログラムの一回の実行が終了する。
【0109】
図15には、図6におけるS105の詳細が異常警告プログラムとしてフローチャートで概念的に表されている。
【0110】
この異常警告プログラムは繰返し実行される。各回の実行時には、まず、S401において、前記開固着判定プログラムの実行によって少なくとも1つのソレノイドバルブ206が開固着状態にあると判定されたか否かが判定される。開固着状態にあると判定された場合には、S401の判定がYESとなり、S402において、インジケータ252を介して運転者に、少なくとも1つのソレノイドバルブ206が開固着状態にあることが告知される。以上で、この異常警告プログラムの一回の実行が終了する。
【0111】
これに対し、少なくとも1つのソレノイドバルブ206が開固着状態にあると判定されてはいない場合には、S401の判定がNOとなり、S403において、前記閉固着判定プログラムの実行によって少なくとも1つのソレノイドバルブ206が閉固着状態にあると判定されたか否かが判定される。閉固着状態にあると判定された場合には、S403の判定がYESとなり、S404において、インジケータ252を介して運転者に、少なくとも1つのソレノイドバルブ206が閉固着状態にあることが告知される。以上で、この異常警告プログラムの一回の実行が終了する。
【0112】
これに対し、少なくとも1つのソレノイドバルブ206が閉固着状態にあると判定されてはいない場合には、S403の判定がNOとなり、S405において、前記誤指令判定プログラムの実行によって誤指令が発生したと判定されたか否かが判定される。誤指令が発生したと判定された場合には、S405の判定がYESとなり、S406において、インジケータ252を介して運転者に、誤指令が発生したことが告知される。以上で、この異常警告プログラムの一回の実行が終了する。
【0113】
これに対し、誤指令が発生したと判定されてはいない場合には、S405の判定がNOとなり、S407において、前記異常高圧判定プログラムの実行によって異常高圧が発生したと判定されたか否かが判定される。異常高圧が発生したと判定された場合には、S407の判定がYESとなり、S408において、インジケータ252を介して運転者に、異常高圧が発生したことが告知される。以上で、この異常警告プログラムの一回の実行が終了する。
【0114】
これに対し、異常高圧が発生したと判定されてはいない場合には、S407の判定がNOとなり、直ちに、この異常警告プログラムの一回の実行が終了する。
【0115】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU250が前記(1)項における「制御装置」の一例を構成し、コンピュータ260のうち図5のバルブ制御プログラムを実行する部分が同項における「信号供給部」の一例を構成し、図7の開固着判定プログラムと図9の閉固着判定プログラムとを実行する部分が同項における「異常判定部」の一例を構成しているのである。
【0116】
さらに、本実施形態においては、コンピュータ260のうち図7のS202ないしS204および図9のS232ないしS235を実行する部分が前記(2)項における「異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0117】
さらに、本実施形態においては、コンピュータ260のうち図7のS202ないしS204を実行する部分が前記(4)項における「第1手段」の一例を構成し、図9のS232ないしS235を実行する部分が前記(6)項における「第3手段」の一例を構成しているのである。
【0118】
さらに、本実施形態においては、ECU250が前記(7)項における「制御装置」の一例を構成し、コンピュータ260のうち図5のバルブ制御プログラムを実行する部分が同項における「信号供給部」の一例を構成し、図7の開固着判定プログラムと図9の閉固着判定プログラムとを実行する部分が同項における「異常判定部」の一例を構成しているのである。
【0119】
さらに、本実施形態においては、コンピュータ260のうち図14のS361およびS362を実行する部分が前記(8)項における「代替制御部」の一例を構成しているのである。
【0120】
さらに、本実施形態においては、ECU250が前記(9)項における「制御装置」の一例を構成し、コンピュータ260のうち図5のバルブ制御プログラムを実行する部分が同項における「信号供給部」の一例を構成し、図11の誤指令判定プログラムを実行する部分が同項における「異常判定部」の一例を構成しているのである。
【0121】
さらに、本実施形態においては、コンピュータ260のうち図11の誤指令判定プログラムを実行する部分が前記(10)項における「互いに整合しないと判定する手段」の一例を構成しているのである。
【0122】
さらに、本実施形態においては、コンピュータ260のうち図14のS363およびS364を実行する部分が前記(11)項における「代替制御部」の一例を構成しているのである。
【0123】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成の一部およびソフトウエア構成の一部のみが異なり、他の部分は共通するため、異なる部分のみを詳細に説明し、共通する部分については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
【0124】
図16に示すように、本実施形態においては、第1実施形態における2つの液圧ユニット100,102に相当する2つの液圧ユニット400,402を、液圧ユニット100,102の構成要素をすべて有する状態で備えている。上室側の液圧ユニット400は、さらに、通路90の圧力を検出する通路圧センサ410を備えている。同様に、下室側の液圧ユニット402は、さらに、通路92の圧力を検出する通路圧センサ410を備えている。各通路圧センサ410は、通路90,92のうち対応するものの圧力を、上室74と下室76とのうち対応するものの圧力(シリンダ圧)として検出する。それら通路圧センサ410,410は共に、第1実施形態におけるECU250に相当するECU420に接続されている。
【0125】
その結果、本実施形態においては、各アキュムレータ圧センサ280によって各アキュムレータ200の圧力を検出することに加えて、各通路圧センサ410によって各通路90,92の圧力すなわち各シリンダ52,62の圧力を検出することも可能となっている。
【0126】
ECU420のコンピュータ260のROM266には、第1実施形態と同様に、バルブ制御プログラムおよび自己診断プログラムが記憶されている。その自己診断プログラムは、第1実施形態と同様に、開固着判定プログラム、閉固着判定プログラム、誤指令判定プログラムおよび異常高圧判定プログラムを含むように構成されている。
【0127】
第1実施形態においては、開固着判定および閉固着判定が、圧力に関する情報としてアキュムレータ圧のみを参照し、それとしきい値との比較によって行われるが、本実施形態においては、さらに、通路90,92の圧力をも参照し、それとアキュムレータ圧との差としきい値との比較によって行われる。
【0128】
通路90,92とアキュムレータ200,200との間にソレノイドバルブ206,206が介在しているため、それらソレノイドバルブ206,206が開状態にあるか閉状態にあるかという実際の作動状態は、通路90,92の圧力と、アキュムレータ200,200の圧力との差として監視することが望ましい。第1実施形態においては、アキュムレータ200,200の圧力が絶対値として参照されるが、本実施形態においては、アキュムレータ200,200の圧力であるアキュムレータ圧PACCが、通路90,92の圧力である通路圧PPSGに対する相対値として参照されると考えることが可能である。
【0129】
さらに、本実施形態においては、同じソレノイドバルブ206に関して互いに対応するアキュムレータ圧PACCと通路圧PPSGとの差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以下である場合には、そのソレノイドバルブ206が開状態にあると判定される。これに対し、差ΔPの絶対値がしきい値ΔPthより大きい場合には、そのソレノイドバルブ206が閉状態にあると判定される。
【0130】
そして、図17には、本実施形態における開固着判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この開固着判定プログラムは繰返し実行され、各回の実行時には、まず、S501において、各アキュムレータ200ごとに、対応するアキュムレータ圧センサ280により、アキュムレータ圧PACCが検出される。次に、S502において、各通路90,92ごとに、対応する通路圧センサ420により、通路圧PPSGが検出される。
【0131】
続いて、S503において、同じソレノイドバルブ206に関して互いに対応するアキュムレータ圧PACCの検出値と通路圧PPSGの検出値との差ΔPが演算される。さらに、その演算された差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以下であるか否かが判定される。その差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以下ではない場合には、判定がNOとなり、S504において、OFFで連続時間Tをリセットしないことを表し、ONでリセットすることを表すリセットフラブがONにされる。
【0132】
これに対し、差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以下である場合には、S503の判定がYESとなり、S505において、リセットフラグがOFFにされる。続いて、S506において、連続時間Tが周期Δtだけ増加させられる。
【0133】
いずれの場合にも、その後、S507において、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたか否かが判定される。今回は、超えてはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S508において、いずれのソレノイドバルブ206,206も開固着状態にはないと判定される。これに対し、今回は、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたと仮定すれば、S507の判定がYESとなり、S508において、2つのソレノイドバルブ206,206のうち差ΔPの絶対値がしきい値Tth以下であるものが開固着状態にあると判定される。
【0134】
いずれの場合にも、その後、S510において、リセットフラグがONにされているか否かが判定される。ONにされていれば、判定がYESとなり、S511において、連続時間Tが0にリセットされる。これに対し、リセットフラグがONにされていなければ、S510の判定がNOとなり、S511がスキップされる。
【0135】
いずれの場合にも、以上で、この開固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0136】
図18には、本実施形態における閉固着判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この閉固着判定プログラムは繰返し実行され、各回の実行時には、まず、S601において、各アキュムレータ200ごとに、対応するアキュムレータ圧センサ280により、アキュムレータ圧PACCが検出される。次に、S602において、各通路90,92ごとに、対応する通路圧センサ410により、通路圧PPSGが検出される。
【0137】
続いて、S603において、同じソレノイドバルブ206に関して互いに対応するアキュムレータ圧PACCの検出値と通路圧PPSGの検出値との差ΔPが演算される。さらに、その演算された差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以上であるか否かが判定される。その差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以上ではない場合には、判定がNOとなり、S604において、OFFで連続時間Tをリセットしないことを表し、ONでリセットすることを表すリセットフラブがONにされる。
【0138】
これに対し、差ΔPの絶対値がしきい値ΔPth以上である場合には、S603の判定がYESとなり、S605において、リセットフラグがOFFにされる。続いて、S606において、連続時間Tが周期Δtだけ増加させられる。
【0139】
いずれの場合にも、その後、S607において、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたか否かが判定される。今回は、超えてはいないと仮定すれば、判定がNOとなり、S608において、いずれのソレノイドバルブ206,206も閉固着状態にはないと判定される。これに対し、今回は、連続時間Tの今回値がしきい値Tthを超えたと仮定すれば、S607の判定がYESとなり、S608において、2つのソレノイドバルブ206,206のうち差ΔPの絶対値がしきい値Tth以上であるものが閉固着状態にあると判定される。
【0140】
いずれの場合にも、その後、S610において、リセットフラグがONにされているか否かが判定される。ONにされていれば、判定がYESとなり、S611において、連続時間Tが0にリセットされる。これに対し、リセットフラグがONにされていなければ、S610の判定がNOとなり、S611がスキップされる。
【0141】
いずれの場合にも、以上で、この閉固着判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0142】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ260のうち図17の開固着判定プログラムと図18の閉固着判定プログラムとを実行する部分が前記(3)項における「異常判定手段」の一例を構成しているのである。
【0143】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従う車両懸架装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるシリンダを示す正面断面図である。
【図3】図1の車両懸架装置のハードウエア構成を圧力回路図とブロック図とで概念的に表す図である。
【図4】図4における電子制御ユニットECU250の構成を概念的に表すブロック図である。
【図5】図4におけるコンピュータ260により実行されるバルブ制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図4におけるコンピュータ260により実行される自己診断プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図7】図6におけるS102の一部を構成する開固着判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図8】図7の開固着判定プログラムにおける判定原理を説明するためのグラフである。
【図9】図6におけるS102の別の一部を構成する閉固着判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図10】図9の閉固着判定プログラムにおける判定原理を説明するためのグラフである。
【図11】図6におけるS102のさらに別の一部を構成する誤指令判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図12】図11の誤指令判定プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。
【図13】図6におけるS102のさらに別の一部を構成する異常高圧判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図14】図6におけるS104の詳細を代替制御プログラムとして概念的に表すフローチャートである。
【図15】図6におけるS105の詳細を異常警告プログラムとして概念的に表すフローチャートである。
【図16】本発明の第2実施形態に従う車両懸架装置のハードウエア構成を圧力回路図とブロック図とで概念的に表す図である。
【図17】図16におけるECU420のコンピュータ260により実行される自己診断プログラムの一部を構成する開固着判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図18】図16におけるECU420のコンピュータ260により実行される自己診断プログラムの別の一部を構成する閉固着判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 前輪 12 後輪 52 前輪用のシリンダ 62 後輪用のシリンダ 70 ハウジング 72 ピストン 74 上室 76 下室 90 上室用の通路 92 下室用の通路 200 アキュムレータ 206 ソレノイドバルブ 250 ECU 280 アキュムレータ圧センサ 410 通路圧センサ
Claims (12)
- 車両において左右の前輪および左右の後輪と車体との間に配置された車両懸架装置であって、
前記前輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する前輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とに仕切られて構成されたものと、
前記後輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する後輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とであって前記前輪用シリンダの第1室と第2室とにそれぞれ対応するものに仕切られて構成されたものと、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第1室同士において互いに接続する第1室用通路と、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第2室同士において互いに接続する第2室用通路と、
前記第1室用通路および前記第2室用通路に個々に接続され、前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとの作動流体を収容可能である第1室用アキュムレータおよび第2室用アキュムレータと、
前記第1室用通路と前記第1室用アキュムレータとの間、前記第2室用通路と前記第2室用アキュムレータとの間にそれぞれ設けられ、各通路から前記アキュムレータに向かう作動流体の流れを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられる第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブと、
前記第1室用アキュムレータと前記第1室用アキュムレータ・バルブとの間、前記第2室用アキュムレータと前記第2室用アキュムレータ・バルブとの間にそれぞれ設けられ、前記第1室用および第2室用アキュムレータの圧力をそれぞれ検出する第1室用アキュムレータ圧センサおよび第2室用アキュムレータ圧センサと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブを電気的に制御する制御装置とを含むとともに、前記制御装置が、
予め定められた条件の成否に応じ、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに供給すべき指令信号を決定し、その決定した指令信号をそれらアキュムレータ・バルブに供給する信号供給部であって、前記車両が旋回状態にあるという条件が成立した場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、前記阻止状態とする指令信号を共に供給する旋回時阻止指令供給部を有するものと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、対応するアキュムレータ圧センサにより検出された圧力の時間的変動の有無に基づき、各アキュムレータ・バルブが異常であるか否かをそれぞれ判定する第1異常判定部であって、前記旋回時阻止指令供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、阻止状態とする指令信号が供給された場合において、前記圧力の時間的変動が存在する場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記許容状態にあると判定する開固着判定手段を有するものと
を含むことを特徴とする車両懸架装置。 - 前記第1室用および第2室用アキュムレータが、いずれも、作動流体を汲み上げて供給するポンプに接続されていないものである請求項1に記載の車両懸架装置。
- 前記第1異常判定部が、さらに、前記信号供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、許容状態とする指令信号が供給された場合において、前記圧力の時間的変動が存在しない場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記阻止状態にあると判定する閉固着判定手段を含む請求項1または2に記載の車両懸架装置。
- 前記閉固着判定手段が、前記車両の走行中に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブがそれぞれ前記閉固着異常であるか否かを判定するものである請求項3に記載の車両懸架装置。
- 前記信号供給部が、前記第1異常判定部によって、前記第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブのうちの一方について異常があると判定され、他方について異常がないと判定された場合に、前記他方のアキュムレータ・バルブの実際の作動状態を前記一方のアキュムレータ・バルブの実際の作動状態に一致させるための指令信号を、前記他方のアキュムレータ・バルブに供給するバルブ異常時信号供給部を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両懸架装置。
- 前記信号供給部が、前記開固着判定手段によって、前記第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブのうちの少なくとも一方が開固着であると判定された場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、許容状態とする指令信号を供給する開固着時信号供給部を含む請求項1または2に記載の車両懸架装置。
- 車両において左右の前輪および左右の後輪と車体との間に配置された車両懸架装置であって、
前記前輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する前輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とに仕切られて構成されたものと、
前記後輪側において、それの左右輪間の、概して前記車体の上下方向における相対変位を制御する後輪用シリンダであって、ハウジングにピストンが嵌合されることにより、前記ハウジング内の空間が共に流体室である第1室と第2室とであって前記前輪用シリンダの第1室と第2室とにそれぞれ対応するものに仕切られて構成されたものと、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第1室同士において互いに接続する第1室用通路と、
前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとをそれらの第2室同士において互いに接続する第2室用通路と、
前記第1室用通路および前記第2室用通路に、個々に接続され、前記前輪用シリンダと後輪用シリンダとの作動流体を収容可能である第1室用アキュムレータおよび第2室用アキュムレータと、
前記第1室用通路と前記第1室用アキュムレータとの間、前記第2室用通路と前記第2室用アキュムレータとの間にそれぞれ設けられ、各通路から前記アキュムレータに向かう作動流体の流れを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられる第1室用アキュムレータ・バルブおよび第2室用アキュムレータ・バルブと、
前記第1室用アキュムレータと前記第1室用アキュムレータ・バルブとの間、前記第2室用アキュムレータと前記第2室用アキュムレータ・バルブとの間にそれぞれ設けられ、前記第1室用および第2室用アキュムレータの圧力をそれぞれ検出する第1室用アキュムレータ圧センサおよび第2室用アキュムレータ圧センサと、
前記第1室および第2室の圧力をそれぞれ検出する第1室用シリンダ圧センサおよび第2室用シリンダ圧センサと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブを電気的に制御する制御装置とを含むとともに、前記制御装置が、
予め定められた条件の成否に応じ、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに供給すべき指令信号を決定し、その決定した指令信号をそれらアキュムレータ・バルブに供給する信号供給部であって、前記車両が旋回状態にあるという条件が成立した場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、前記阻止状態とする指令信号を共に供給する旋回時阻止指令供給部を有するものと、
前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、対応するアキュムレータ圧センサにより検出された圧力と、対応するシリンダ圧センサにより検出された圧力との差の時間的変動の有無に基づき、各アキュムレータ・バルブが異常であるか否かをそれぞれ判定する第2異常判定部と
を含むことを特徴とする車両懸架装置。 - 前記第2異常判定部が、前記信号供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、阻止状態とする指令信号が供給された場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、前記圧力の差の時間的変動の有無を判定し、その時間的変動が存在しない場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記許容状態にあるとそれぞれ判定する開固着判定手段を含む請求項7に記載の車両懸架装置。
- 前記第2異常判定部が、さらに、前記信号供給部によって前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、許容状態とする指令信号が供給された場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、前記圧力の差の時間的変動の有無を判定し、その時間的変動が存在した場合に、そのアキュムレータ・バルブが実際に前記阻止状態にあるとそれぞれ判定する閉固着判定手段を含む請求項7に記載の車両懸架装置。
- 当該車両懸架装置が、前記車両の旋回状態を検出するための物理量を検出する旋回状態関連量センサを含み、
前記旋回時阻止指令供給部が、前記旋回状態関連量センサの出力信号に基づき、前記旋回時成立条件が成立するか否かを判定し、成立すると判定した場合に、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブにそれを前記阻止状態に切り換えるための指令信号を共に供給する手段を含み、
前記制御装置が、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブの各々について、それの作動状態が前記阻止状態である連続時間が限界時間を超えたか否かを判定し、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブについて、共に前記限界時間を超えた場合に、前記旋回状態関連量センサが異常であると判定する第3異常判定部を含む請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両懸架装置。 - 前記信号供給部が、前記第3異常判定部により前記旋回状態関連量センサが異常であると判定された場合に、前記旋回状態関連量センサによる検出結果を問わず、前記第1室用および第2室用アキュムレータ・バルブに、共に、前記許容状態とする指令信号を供給するセンサ異常時信号供給部を含む請求項10に記載の車両懸架装置。
- 前記センサ異常時信号供給部が、前記許容状態とする指令信号を、予め定められた設定時間の間供給するものである請求項11に記載の車両懸架装置。
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