JP4296541B2 - ブレースダンパー - Google Patents

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本発明は、既存構造物あるいは新設構造物のブレースとして機能するとともに、構造物の振動エネルギーを吸収するダンパーとしても機能するブレースダンパーに関する。
構造物の目標性能を設定し、当該目標性能を満足するように構造物の設計を行う性能設計への転換に伴い、構造物の損傷を制御できる制震構造の普及が進行している。特に、鋼材の降伏に伴う履歴吸収エネルギーを利用する鋼材ダンパーは、低コストで大きな減衰性能を発揮できることから多くの構造物に採用されている。なかでも軸力に抵抗するブレースダンパーは機構が簡単で設計的にも扱いやすいため、最も普及している。例えば、特許文献1では、座屈強度に優れたブレースとしての機能と減衰性能に優れたダンパーとしての機能を併せ持つ構造部材として、中央部に降伏部を有する帯板を拘束部材で両側から挟み込むとともに、拘束部材には降伏部を挟み込む位置に面外変形を防止するための補強部材が設置されたブレースダンパーに関する発明が開示されている。
特開2002−235380号公報 (第2−4頁、第1図)
しかしながら、従来のブレースダンパーは、高軸力下で部材長が長くなると、強軸回りに比べて曲げ剛性の低い弱軸回りの全体座屈が問題となることがあった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、高軸力下で部材長が長い場合でも、強軸および弱軸回りの全体座屈を防止できるシンプルで低コストのブレースダンパーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るブレースダンパーでは、所定軸力により降伏する降伏部を有する帯板状の鋼板からなるブレース芯材と、当該ブレース芯材を両側からウェブ部で挟み込む形態で当該ブレース芯材の両側に装着される一対の第一溝形鋼と、当該一対の第一溝形鋼のフランジ部同士を前記ブレース芯材を跨いで連結する一対のカバープレートとを備えるブレースダンパーにおいて、前記一対のカバープレートに代えて一対の第二溝形鋼を備え、当該第二溝形鋼のウェブ部を介して前記一対の第一溝形鋼のフランジ部同士が連結されていることを特徴とする。
ブレース芯材を構成する鋼板の板厚方向をX軸方向、当該鋼板の板幅方向をY軸方向とすると、X軸回りの曲げが強軸曲げ、Y軸回りの曲げが弱軸曲げとなる。従来のブレースダンパーでは、弱軸回りの曲げ剛性が強軸回りの曲げ剛性に比べて低いため、ブレース長さが長くなるとブレース芯材が最大耐力に達する前に、弱軸回りの全体座屈が先行する場合もあった。
これに対して、本発明では、従来の平鋼からなるカバープレートに代えて、溝形鋼を使用することにより、少ない鋼材量で弱軸回りの曲げ剛性が大幅に増大し、高軸力で部材長が長い場合でも、ブレース芯材の最大耐力まで全体座屈を生じないようにすることができる。しかも、形鋼をそのまま使用しているので部品点数が増えず、新たな加工も必要としない。そのため、特別な技量や機械を必要とせず、低コストで製造することができる。
また、本発明に係るブレースダンパーでは、前記第二溝形鋼は、複数の部材を固着して構成される組み立て溝型鋼であってもよい。
本発明では、帯板状の平鋼の長辺側の両縁部にそれぞれ山形鋼あるいは平板などの形鋼をボルトや溶接などで固着してなる組み立て溝型鋼を第二溝形鋼として使用することにより、弱軸回りの曲げ剛性を大幅に増大させることができるだけでなく、ブレース芯材の厚みやブレース芯材の両側に配置する第一溝形鋼のフランジ幅に応じて平鋼の幅を任意に調整することができる。加えて、形鋼の断面形状を選択できるので、弱軸回りの曲げ剛性を容易に調整することができる。
また、本発明に係るブレースダンパーでは、前記第一溝形鋼は、前記ブレース芯材の材軸に平行な横リブおよび当該横リブに垂直な縦リブの少なくともいずれかをそのウェブ部に備えていてもよい。
本発明では、第一溝形鋼が横リブおよび当該横リブに垂直な縦リブの少なくともいずれかをそのウェブ部に備えることにより、ブレース芯材の局部座屈を防止することができる。
また、本発明に係るブレースダンパーでは、前記ブレース芯材は極軟鋼または軟鋼からなり、前記ブレース芯材の材軸方向中間部を両端部よりも小さな断面とすることで前記降伏部が形成されてされていてもよい。
本発明では、極軟鋼(極低降伏点鋼)または軟鋼のような、構造物を構成する鋼材よりも低い降伏強度を有する材料をブレース芯材に使用することにより、高い塑性エネルギー吸収能を有するブレースダンパーを実現するできる。しかも、ブレース芯材の材軸方向中間部には両端部よりも小さな断面からなる降伏部が形成されているため、他の部分に比べて降伏部には大きな歪が発生することになり、容易に降伏部で降伏させることができる。
本発明によれば、従来のカバープレートを平鋼から溝形鋼に変更することにより、高軸力で部材長が長い場合でも強軸および弱軸回りの全体座屈を防止できる、シンプルで低コストのブレースダンパーを実現することができる。
以下、本発明に係るブレースダンパーの実施形態について図面に基いて説明する。
図1は本発明に係るブレースダンパーの第一の実施形態を示す側面図であり、図2は図1の矢視断面図である。
本実施形態によるブレースダンパー1は、帯板状の鋼板からなるブレース芯材2と、ブレース芯材2の板厚方向にウェブ部3wで両側から挟み込む形態でブレース芯材2の両側に装着される一対の第一溝形鋼3、3と、一対の第一溝形鋼3、3のフランジ部3f、3f同士をウェブ部4wを介してブレース芯材2を跨いで連結する一対の第二溝形鋼4、4とを主な構成部材とする。
ブレース芯材2は、塑性エネルギー吸収能の高い極軟鋼(極低降伏点鋼)または軟鋼からなる。ブレース芯材2の中間部2aは、端部2bに比べて幅が狭くなって降伏部2aを形成している。所定の軸力がブレース芯材2に作用すると、端部2bに比べて大きな歪が降伏部2aに発生し、降伏部2aは容易に降伏する。
一方、ブレース芯材2の端部2bはブレースダンパー1の端部2bでもあり、両端部2b、2bが高力ボルトによって構造物に固定される。ブレース芯材2の端部2b両面には、リブプレート7がブレース芯材2の材軸Gに沿って溶接されて十字断面を形成している。
第一溝型鋼3は、ブレース芯材2を挟み込むためのウェブ部3wと、ウェブ部3wの両縁(ブレース芯材2の材軸Gに平行な側)に一体に形成された一対のフランジ部3f、3fからなり、形鋼あるいは組み立て溝形鋼のいずれでもよい。ウェブ部3wの外面(ブレース芯材2と接しない側の面)には、リブプレートがブレース芯材2の材軸Gに沿って溶接されて横リブ5hを形成するとともに、横リブ5hに垂直な縦リブ5v…が所定の離間間隔をおいて溶接され、第一溝型鋼3のウェブを面外に補強して局部座屈を防止している。
また、第一溝型鋼3のウェブ部3wの材軸G方向の両端部(材軸近傍)には、端面側に開放するスリット9が形成され、ブレースダンパー1の端部2bのリブプレート7がスリット9に差し込まれる構成になっている。
一対の第一溝型鋼3、3は、その両端部において各2本の綴りボルト6、6が一対の第一溝型鋼3、3のウェブ部3w、3wとブレース芯材2をそれぞれ貫通し、図示しないUナットやダブルナットを用いて緩まないように締結され、ブレース芯材2の外側に装着されている。この際、ブレース芯材2の材軸G方向の変形を拘束しないように、ブレース芯材2に設けられた綴りボルト6、6用の一方の貫通孔は、材軸G方向に長い長孔8、8としてルーズ機構を構成している。
第二溝型鋼4は、一対の第一溝形鋼3、3のフランジ部3f、3fに密接するウェブ部4wと、ウェブ部4wの両縁(ブレース芯材2の材軸Gに平行な側)に一体に形成された一対のフランジ部4f、4fから構成され、第二溝形鋼4のウェブ部4wと一対の第一溝形鋼3、3のフランジ部3f、3fとは高力ボルト10…によって締結されている。
ブレース芯材2の表面と第一溝型鋼3のウェブ部3wとの間には、それらをアンボンド状態に保持できるように厚さ1mm程度の緩衝材11が介装されている。また、ブレース芯材2の小口2cと第二溝形鋼4のウェブ部4wとの間にも厚さ3mm程度の緩衝材11が介装されている。緩衝材11としては、ブレース芯材2と第一溝型鋼3との相対変形を阻害せず音も生じないクロロプレンゴム等の高分子系材料からなるシート材が好適である。
ブレース芯材2の板厚方向をX軸方向、ブレース芯材2の板幅方向をY軸方向とすると、X軸回りの曲げが強軸曲げ、Y軸回りの曲げが弱軸曲げとなる。従来のブレースダンパーでは、弱軸回りの曲げ剛性が強軸回りの曲げ剛性に比べて低いため、ブレース芯材2が最大耐力に達する前に、弱軸回りの全体座屈が先行する場合もあった。
これに対して、本実施形態によるブレースダンパー1では、従来の平鋼からなるカバープレートに代えて第二溝形鋼4を使用することにより、少ない鋼材量で弱軸回りの曲げ剛性が大幅に増大し、高軸力で部材長が長い場合でもブレース芯材2の最大耐力まで全体座屈を生じないようにすることができる。しかも、形鋼をそのまま使用しているので部品点数が増えず、新たな加工も必要としない。そのため、特別な技量や機械を必要とせず、低コストで製造することができる。
また、本実施形態によるブレースダンパー1では、第二溝形鋼4をブレースダンパー1に取り付けてもダンパーの幅は変わらないため、壁厚やデッドスペースが増えたりせず、プラン上の制約とならない。
さらに、本実施形態によるブレースダンパー1では、ブレースダンパー1の端部2bは、構造物に高力ボルトで接合されるため、特別な施工精度は要求されず、現場において一般的な鉄骨ブレースと全く同じ施工性で取り付けることができる。
図3は、本発明に係るブレースダンパーの第二の実施形態を示すA−A矢視断面図である。また、図4は、本発明に係るブレースダンパーの第三の実施形態を示すA−A矢視断面図である。
図3は、第二溝形鋼4として、帯板状の平鋼12の長辺側の両縁部にそれぞれ山形鋼13、13を有する組み立て溝形鋼14を使用するものである。山形鋼13と平鋼12の接合は、図示するように、第一溝形鋼3のフランジ部3fと平鋼12を接合する高力ボルト10と兼用してもよいし、あるいは、山形鋼13を平鋼12に溶接してもよい。
一方、図4は、第二溝形鋼4として、帯板状の平鋼12の長辺側の両縁部にそれぞれ平板13、13を溶接した組み立て溝形鋼14を使用するものである。
本実施形態では、第二溝形鋼4として組み立て溝形鋼14、24を使用することにより、弱軸回りの曲げ剛性を大幅に増大させることができるだけでなく、ブレース芯材2の厚みやブレース芯材2の両側に配置する第一溝形鋼3、3のフランジ部3f、3fの幅に応じて平鋼12、22の幅を任意に調整することができる。加えて、山形鋼13あるいは平板23の断面形状を選択できるので、弱軸回りの曲げ剛性を容易に調整することができる。
以上、本発明に係るブレースダンパーの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、ブレース芯材の中間部における幅を小さくすることで降伏部を形成しているが、ブレース芯材の中間部に開口部を形成したり、板厚や材質を変化させることで降伏部を形成しても、補剛区間全長にわたりブレース芯材の幅を一定にしてもよい。また、上記の実施形態では、ブレース芯材として帯状鋼板を1枚使用しているが、帯状鋼板を複数重ねて使用してもよい。
本発明に係るブレースダンパーの第一の実施形態を示す側面図である。 同、(a)は図1におけるA−A矢視断面図、(b)は図1におけるB−B矢視断面図である。 本発明に係るブレースダンパーの第二の実施形態を示すA−A矢視断面図である。 本発明に係るブレースダンパーの第三の実施形態を示すA−A矢視断面図である。
符号の説明
1 ブレースダンパー
2 ブレース芯材
2a 降伏部(ブレース芯材の中間部)
2b ブレースダンパーの端部(ブレース芯材の端部)
3 第一溝形鋼
4、14、24 第二溝形鋼
5v 縦リブ
5h 横リブ
6 綴りボルト
7 リブプレート
8 長孔
9 スリット
10 高力ボルト
11 緩衝材
G ブレース芯材の材軸

Claims (4)

  1. 所定軸力により降伏する降伏部を有する帯板状の鋼板からなるブレース芯材と、当該ブレース芯材を両側からウェブ部で挟み込む形態で当該ブレース芯材の両側に装着される一対の第一溝形鋼と、当該一対の第一溝形鋼のフランジ部同士を前記ブレース芯材を跨いで連結する一対のカバープレートとを備えるブレースダンパーにおいて、
    前記一対のカバープレートに代えて一対の第二溝形鋼を備え、当該第二溝形鋼のウェブ部を介して前記一対の第一溝形鋼のフランジ部同士が連結されていることを特徴とするブレースダンパー。
  2. 前記第二溝形鋼は、複数の部材を固着して構成される組み立て溝型鋼であることを特徴とする請求項1に記載のブレースダンパー。
  3. 前記第一溝形鋼は、前記ブレース芯材の材軸に平行な横リブおよび当該横リブに垂直な縦リブの少なくともいずれかをそのウェブ部に備えることを特徴とする請求項1または2に記載のブレースダンパー。
  4. 前記ブレース芯材は極軟鋼または軟鋼からなり、前記ブレース芯材の材軸方向中間部を両端部よりも小さな断面とすることで前記降伏部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のブレースダンパー。
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