JP6143082B2 - ブレースダンパー - Google Patents
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Description
ブレース芯材の長手方向の中間部には、両端部よりも小さな断面となるように形成された降伏部が形成されている。ブレースダンパーが長手方向に所定以上の力を受けたときに降伏部が降伏することで減衰効果を発揮し、ブレースダンパーに作用する振動エネルギーを吸収することができる。
また、芯材を厚さ方向に重ねた場合には、複数の芯材の座屈を拘束するのに必要な力である補剛力が増加する恐れがある。
本発明のブレースダンパーは、長手方向の中央部が板状であって、前記長手方向に直交する断面積が前記長手方向のそれぞれの端部よりも前記長手方向の前記中央部の方が狭く、前記中央部が互いに同一の断面形状に形成されて前記中央部の厚さ方向に重ねられた少なくとも2以上の芯材と、少なくとも2以上の前記芯材の前記中央部を前記厚さ方向に挟むように配置された一対の狭持部材と、一対の前記狭持部材における少なくとも2以上の前記芯材における前記中央部の幅方向の一方の端部同士を少なくとも2以上の前記芯材を跨いで固定するとともに、前記幅方向の他方の端部同士を少なくとも2以上の前記芯材を跨いで固定する一対の接続部材と、を備え、少なくとも2以上の前記芯材は、前記長手方向の一方の前記端部同士が固定されるとともに、前記長手方向の他方の前記端部同士が固定され、少なくとも2以上の前記芯材の座屈モードが同じであることを特徴としている。
また、上記のブレースダンパーにおいて、少なくとも2以上の前記芯材の前記中央部同士は接続されていないことがより好ましい。
また、上記のブレースダンパーにおいて、それぞれの前記芯材は、前記長手方向の位置によらず前記幅方向の長さが等しいことがより好ましい。
以下、本発明に係るブレースダンパーの第1実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率は適宜異ならせてある。
図1から図3に示すように、本実施形態のブレースダンパー1は、板状に形成されて自身の厚さ方向Dに重ねられた2つの芯材10、20と、芯材10、20の長手方向Fの中央部10a、20aを厚さ方向Dに挟むように配置された一対の溝形鋼(狭持部材)31、32と、溝形鋼31、32における芯材10、20の幅方向Eの一方の端部同士、他方の端部同士をそれぞれ固定するカバープレート(接続部材)33、34とを備えている。
板状部材11は、長手方向Fの位置によらず厚さ方向Dの長さ(以下、単に「厚さ」と称する。)が等しく、かつ、幅方向Eの長さ(以下、単に「幅」と称する。)が等しい。板状部材11は、厚さよりも、長手方向Fの長さ(以下、単に「長さ」と称する。)や幅の方が長い。
補強板12は板状部材11の長手方向Fの一方側および他方側のみに固定されているため、板状部材11の長手方向Fの中央部は、芯材10の中央部10aとなる。
補強板12は、板状部材11の幅方向Eの中央部に長手方向Fに延びるように配置されている。各補強板12と板状部材11の端部11bとは、部分溶込み溶接などによる接続部13によりそれぞれ固定されている(図2参照。)。板状部材11の端部11bおよび補強板12で、芯材10の端部10bを構成する。
このように構成された芯材10は、図3に示す中央部10aにおける長手方向Fに直交する平面による断面積が、図2に示す端部10bの長手方向Fに直交する平面による断面積よりも狭い。中央部10aの断面は板状部材11のみで構成され、端部10bの断面は主に板状部材11および補強板12で構成される。芯材10の中央部10aは、前述の端部10bよりも断面積が狭いことで、端部10bよりも降伏しやすい降伏部となる。
すなわち、芯材20は、図2および図3に示すように、板状部材21の長手方向Fの一方側および他方側に、板状部材21に直交するように補強板22(一方の補強板22は不図示。)をそれぞれ固定させて構成されている。板状部材21は、板状部材11と中央部および端部がそれぞれ同一の形状に形成されている。補強板22は、補強板12と同一の形状に形成されている。
補強板22は、板状部材21の幅方向Eの中央部に長手方向Fに延びるように配置されている。各補強板22と板状部材21の端部21bとは、部分溶込み溶接などによる接続部23によりそれぞれ固定されている(図2参照。)。板状部材21の長手方向Fの端部21bおよび補強板22で、芯材20の端部20bを構成する。
芯材20では、中央部20aが降伏部となる。
板状部材11、21、および補強板12、22を形成する材料は、例えば、LY100やLY255などの建築構造用低降伏点鋼、SN400などの建築構造用圧延鋼材を好適に用いることができる。
板状部材11、21は、長手方向Fの一方の端部11b、21b同士が、部分溶込み溶接などによる接続部16により固定されている。接続部16は、板状部材11、21の端部11b、21bにおける幅方向Eの両端にそれぞれ設けられている。接続部16が設けられる長手方向Fの範囲は、板状部材11、21の端部11b、21bにおける摩擦面処理された範囲R1(図1参照。)内であることが好ましい。
溝形鋼31は、フランジ部31b、31cがウェブ部31aに対して板状部材11とは反対側に配置されている。溝形鋼31のウェブ部31aの幅L1は、板状部材11、21の幅よりも長い。
補強板12の芯材10の中央部10a側の端部は、溝形鋼31の切欠き31d内に配されている(図1参照。)。
溝形鋼31、32は、長手方向Fにおいて芯材10、20の中央部10a、20aが設けられた範囲に配置されている。溝形鋼31、32としては、日本工業規格に規定された既成のものを適宜選択して使用することができる。
ゴムシート41、42としては、クロロプレンゴムなどの高分子系材料を適宜選択して用いることができる。ゴムシート41は、例えば、予め溝形鋼31のウェブ部31aに貼付けられた状態で組立てられ、板状部材11と溝形鋼31と間に配置される。
溝形鋼31、32のフランジ部31b、32bとカバープレート33とは、フランジ部31b、32bの透孔、およびカバープレート33の透孔に挿通された高力ボルト46により固定されている。溝形鋼31、32のフランジ部31c、32cとカバープレート34とは、フランジ部31c、32cの透孔、およびカバープレート34の透孔に挿通された高力ボルト46により固定されている。
なお、構造物Wが2つの板材W1からなる場合には、2つの板材W1の互いに接触する面の長手方向Fにおける範囲R2内は、摩擦面処理されることが好ましい。
板状部材11、21の端部11b、21bと2つの板材W1の端部とを厚さ方向Dに挟むように一対の芯材側連結板W11を配置する。
各芯材側連結板W11に形成された不図示の透孔、および板状部材11、21の端部11b、21bの透孔に挿通された高力ボルトW12により、板状部材11、21に一対の芯材側連結板W11を固定する。同様に、各芯材側連結板W11に形成された透孔、および2つの板材W1の透孔に挿通された高力ボルトW12により、2つの板材W1に一対の芯材側連結板W11を固定する。
板状部材11、21の端部11b、21bは、一対の芯材側連結板W11を介して高力ボルトW12により接合され、厚さ方向Dに圧縮荷重を受ける。このため、摩擦面処理を施された面11c、21cにより、板状部材11および板状部材21が相対的に幅方向Eや長手方向Fに移動するのが防止される。すなわち、摩擦接合される。
各補強側連結板W13に形成された不図示の透孔、および補強板12、22の透孔に挿通された高力ボルトW12により、各補強板12、22に一対の補強側連結板W13を固定する。同様に、各補強側連結板W13に形成された透孔、および第2の補強板W6の透孔に挿通された高力ボルトW12により、第2の補強板W6に一対の補強側連結板W13を固定する。
板状部材11の中央部と溝形鋼31との間、板状部材21の中央部と溝形鋼32との間にはゴムシート41、42がそれぞれ配置されている。このため、芯材10、20に対して溝形鋼31、32が長手方向Fに相対的に滑るように移動することができる。
芯材10と芯材20とは基準面Pに対して対称に形成されているため、柱状物の座屈しやすさを表す細長比が芯材10と芯材20とで等しくなる。荷重X1を作用させたときに幅方向Eに見て、座屈モードに応じて、図4に示すように芯材10、20が同様に変形する場合と、図5に示すように基準面Pに対して線対称に変形する場合とがあるが、芯材10、20の座屈モードはいずれの場合も同じものとなる。したがって、安定した振動エネルギーの吸収性能が得られ、芯材10、20の補剛力X2が増加することが抑えられる。
図6に示すブレースダンパー101には、1つの芯材106のみが備えられている。この場合には、前述のように芯材の価格が割高となったり、厚さが40mmを越える場合には対応できなくなるという問題がある。
図7に示すブレースダンパー102には、3つの芯材106、107、108が備えられている。ただし、芯材106、107、108の厚さ(厚さ方向Dの長さ。)は互いに異なる。このため、芯材106、107、108の座屈モードが互いに異なり、ブレースダンパー102全体としての座屈モードが複雑になり、安定した振動エネルギーの吸収性能が得られない。また、本実施形態のブレースダンパー1に比べて、高次の座屈モードとなって不図示の溝形鋼31、32との接触箇所が増えるため、補剛力X2が増加する。
狭持部材が溝形鋼31、32であるため既成のものを使用することができ、ブレースダンパー1の製造コストを抑制するとともに、ブレースダンパー1の強度を高めることができる。
芯材10は長手方向Fの位置によらず幅が等しいため、長手方向Fの位置によらず厚さと幅が等しい板状部材11に補強板12を固定することで、芯材10を構成することができる。板状部材11には既成の板材を使用することができるため、板状部材11の歩留まりが向上し、ブレースダンパー1の製造コストをさらに抑制することができる。
芯材10、20の端部10b、20bが高力ボルトW12により接合されるだけでなく前述のように摩擦接合されるため、接続部16にひずみや応力が集中することを緩和することができる。芯材10、20の端部10b、20bが摩擦接合されるため、溶接により発生させる必要がある接合力を小さくすることができる。これにより、接続部16の長さを短くすることができる。
次に、本発明の第2実施形態について図8から図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8から図10に示すように、本実施形態のブレースダンパー2は、第1実施形態のブレースダンパー1に対して、芯材50、60の形状、芯材50、60の端部50b、60b同士が固定されている態様、および溝形鋼31、32に切欠き31d、32dが形成されていないことのみが異なる。
芯材60は、芯材50と同一の板状に形成されている。すなわち、芯材60には芯材50の中央部50aと同一形状の中央部60aが形成されている(図10参照。)。芯材50、60は、厚さ方向Dに重ねられている。芯材50、60は、第1実施形態の芯材10と同一の材料で形成することができる。
芯材50の端部50bと補強板71、芯材60の端部60bと補強板71は、部分溶込み溶接などによる接続部72によりそれぞれ固定されている(図9参照。)。この例では、芯材50、60および一対の補強板71の長手方向Fに直交する平面による断面は、図9に示すH字状になる。
図9に示すように、芯材50、60の端部50b、60bの互いに接触する面50c、60cには、前述の摩擦面処理が施されていることが好ましい。
芯材50、60の端部50b、60bに、厚さ方向Dに貫通する不図示の透孔を形成する。補強板71に、幅方向Eに貫通する不図示の透孔を形成する。
長手方向Fに延びる一対の芯材側連結板W22を芯材50、60の端部50b、60b、および2つの板材W1を厚さ方向Dに挟むように配置する。
各芯材側連結板W22に形成された不図示の透孔、および芯材50、60の端部50b、60bの透孔に挿通された高力ボルトW12により、芯材50、60に一対の芯材側連結板W22を固定する。同様に、各芯材側連結板W22に形成された透孔、および2つの板材W1の透孔に挿通された高力ボルトW12により、2つの板材W1に一対の芯材側連結板W22を固定する。
補強側連結板W23および一対の補強側連結補助板W24に形成された透孔、および補強板71の透孔に挿通された高力ボルトW12により、補強板71に補強側連結板W23および一対の補強側連結補助板W24を固定する。同様に、補強側連結板W23および一対の補強側連結補助板W24に形成された透孔、および第2の補強板W21の透孔に挿通された高力ボルトW12により、第2の補強板W21に補強側連結板W23および一対の補強側連結補助板W24を固定する。
このように構成された本実施形態のブレースダンパー2によれば、長手方向Fの耐力を増加させつつ補剛力が増加するのを抑えることができる。
芯材50、60の端部50b、60bが高力ボルトW12により接合されるだけでなく前述のように摩擦接合されるため、補強側連結板W23および補強側連結補助板W24にひずみや応力が集中することを緩和することができる。芯材50、60の端部50b、60bが摩擦接合されるため、高力ボルトW12により発生させる必要がある接合力を小さくすることができる。これにより、補強側連結板W23および補強側連結補助板W24の長さを短くすることができる。
図11は、互いの厚さのみ異なる3枚(3つ)の芯材においてそれぞれの端部同士を固定した芯材セットと、1枚(1つ)の芯材からなる芯材単体とを試験体として用いた試験結果である。芯材セットの各芯材と芯材単体とは、厚さ以外の形状が等しく、材質も同一である。3枚の芯材のうち、中央の芯材の厚さは16mmであり、両側の芯材の厚さはそれぞれ4.5mmである。芯材単体の厚さは、芯材セットの3枚の芯材の厚さの合計に等しく、25mmである。
なお、芯材セットは各芯材の厚さが異なるため、本発明のブレースダンパーの芯材とはなり得ない。また、芯材単体は枚数が1枚であるため、本発明のブレースダンパーの芯材とはなり得ない。
鋼材は繰返し振幅を受けると、ひずみ硬化現象によって荷重X1が上昇するため、耐力上昇率βが増加する。芯材セットおよび芯材単体のいずれも、耐力上昇率βが増加するのにしたがって補剛力が増加するが、芯材単体よりも芯材セットの方が補剛力の上昇が早く、補剛力の最大値も大きくなることが分かった。
すなわち、芯材セットと芯材単体とで全体としての形状および材質は同一である。ただし、芯材セットは厚さ方向に3つに分割されていることで、補剛力の上昇が早く、補剛力の最大値も大きくなっている。
例えば、前記第1実施形態および第2実施形態では、芯材の数は2つであるとしたが、芯材の数は3以上であるとしてもよい。ただし、芯材の数は2つであることが好ましい。
狭持部材が溝形鋼31、32であるとした。しかし、狭持部材はこれに限定されず、平板を用いてもよい。
板状部材11、21の面11c、21c、芯材50、60の面50c、60cや2つの板材W1に、摩擦面処理は施されなくてもよい。このように構成しても、芯材同士、2つの板材W1同士を高力ボルトW12により接合することができるからである。
前記第1実施形態では、ブレースダンパー1の芯材10、20の端部10b、20bと構造物Wとを、連結板W11、W13、および高力ボルトW12により接合した。しかし、この端部10b、20bと構造物Wとを溶接などにより接合してもよい。前記第2実施形態においても同様である。
また、高力ボルトに代えて、狭持部材である溝形鋼31、32と接続部材であるカバープレート33、34とを溶接などにより接合してもよい。
10、20、50、60 芯材
10a、20a、50a、60a 中央部
10b、20b、50b、60b 端部
31、32 溝形鋼(狭持部材)
31a、32a ウェブ部
31b、31c、32b、32c フランジ部
33、34 カバープレート(接続部材)
41、42 ゴムシート(弾性部材)
D 厚さ方向
E 幅方向
F 長手方向
Claims (4)
- 長手方向の中央部が板状であって、前記長手方向に直交する断面積が前記長手方向のそれぞれの端部よりも前記長手方向の前記中央部の方が狭く、前記中央部が互いに同一の断面形状に形成されて前記中央部の厚さ方向に重ねられた少なくとも2以上の芯材と、
少なくとも2以上の前記芯材の前記中央部を前記厚さ方向に挟むように配置された一対の狭持部材と、
一対の前記狭持部材における少なくとも2以上の前記芯材における前記中央部の幅方向の一方の端部同士を少なくとも2以上の前記芯材を跨いで固定するとともに、前記幅方向の他方の端部同士を少なくとも2以上の前記芯材を跨いで固定する一対の接続部材と、
を備え、
少なくとも2以上の前記芯材は、
前記長手方向の一方の前記端部同士が固定されるとともに、
前記長手方向の他方の前記端部同士が固定され、
少なくとも2以上の前記芯材の座屈モードが同じであることを特徴とするブレースダンパー。 - 少なくとも2以上の前記芯材の前記端部における互いに接触する面には、摩擦面処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のブレースダンパー。
- 少なくとも2以上の前記芯材の前記中央部同士は接続されていないことを特徴とする請求項1または2に記載のブレースダンパー。
- それぞれの前記芯材は、前記長手方向の位置によらず前記幅方向の長さが等しいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のブレースダンパー。
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