JP4295880B2 - 遮水壁の築造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中に遮水壁を築造するための方法に関するものであり、更に詳しくは、力学的な強度をそれほど必要としないコンクリート製の遮水壁を精度良く築造するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば産業廃棄物や生活廃棄物などの処分場においては、汚染物質を含む液体が地中に浸透したり外部に漏出したりするのを防止するため、処分場の回りを止水性に勝れた遮水壁で取り囲むようにしている。このような遮水壁は、力学的な強度をそれほど必要としないが、高度の遮水性が要求される。また、容積との関係で遮水壁を例えば50mといった具合に非常に深い深度にまで設置しなければならないことも多く、処分場を岩盤等の堅固な遮水性地盤上に設置するような場合には、遮水壁の下端部をこの堅固な地盤に根入れした状態で設置しなければならない。
【0003】
上述したような遮水壁を築造する場合、従来では、次のような工法が一般に用いられている。
(a)掘削ドリルにより地中に孔を掘削して内部にソイルセメントを充満させたあと、特殊な継手を側面に備えた鋼管杭をこのソイルセメント内に順次連結しながら建て込むという工程を繰り返すことにより、鋼管柱列による遮水壁を形成する方法(連続地中壁工法)。
(b)オーガーカッターを縦掘削のあと横移動させて横掘削し、内部にソイルセメントを充満させて芯材を建て込むことにより、遮水壁を築造する方法(水平方向連続掘削工法)。
【0004】
しかしながら、上記(a)の工法は、連続性が高くかつ強度の大きい遮水壁を精度良く築造することができるが、多数の鋼管を芯材として使用するため築造コストが高く、機械的強度よりも遮水性と経済性とを要求される廃棄物処分場の遮水壁の築造には不向きである。
また、上記(b)の工法は、(a)の工法と同様に連続性の高い遮水壁を築造することができるが、掘削可能深度が比較的浅く、しかも岩盤のような堅固な地盤の掘削が困難であるため、設置深度が深くかつ堅固な遮水地盤へ根入れした状態に設置しなければならないことの多い廃棄物処分場の遮水壁の築造には、不向きである。さらに、大掛かりな掘削装置を使用しなければならないため築造コストも高くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の技術的課題は、機械的強度はそれほど大きくないが遮水性に勝れたコンクリート製の遮水壁を経済的かつ高精度に築造することができる遮水壁の築造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ドリル手段で地中に所要の深さの孔を掘削すると共に、該孔内にセメントミルクを注入して撹拌することにより、セメントミルクと掘削土壌とが混合したソイルセメントからなるソイルセメント柱を形成する第1工程、固化していない上記ソイルセメント柱内にガイド用の支持杭を建て込む第2工程、建て込んだ支持杭をガイドとしてドリル手段により新たな孔を掘削し、既設のソイルセメント柱に連なる新たなソイルセメント柱を形成する第3工程、支持杭が建て込まれている既設のソイルセメント柱内からソイルセメントが固まらないうちに上記支持杭を引き抜くと共に、引き抜いた支持杭を新たに形成したソイルセメント柱内に建て込む第4工程、を順次行ったあと、上記第3及び第4工程を必要回数繰り返して遮水壁を形成することを特徴とする遮水壁の築造方法が提供される。
【0007】
上記構成を有する本発明の築造方法によれば、支持杭をガイドとして掘削しつつも、掘削後にこれを引き抜いて次の掘削に順次転用することにより、芯材を持たないため機械的強度はそれほど大きくないが遮水性と連続性とに勝れたコンクリート製の遮水壁を、経済的かつ高精度に築造することができる。
【0008】
本発明において好ましくは、上記ドリル手段として多軸のものを使用し、複数の孔を同時に掘削することによって複数のソイルセメント柱を同時に形成すると共に、形成したソイルセメント柱列内に複数の支持杭を相互に連結した状態で建て込んでガイドとすることである。
【0009】
これにより、掘削効率を高めて遮水壁をより経済的に築造することができると共に、支持杭の位置ずれや傾き等を防止して安定したガイド機能を発揮させることにより掘削精度を高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法について図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
本発明においてはまず、第1工程として、図1(A)に示すように、掘削機1のリーダーマスト2に、複数本の掘削ドリル3aを備えた複軸式のドリル手段3を装着し、垂直精度を管理しながらこのドリル手段3により、図1(B)及び図2に示すように、所要深さの相互に連なった複数の孔4を同時に掘削する。このとき、各掘削ドリル3aの先端から孔4内にセメントミルクを注入しながら掘削及び撹拌を行う。
図示した実施例では、3軸式のドリル手段3を使用して3つの孔4を同時に掘削するようにしている。
【0011】
上記掘削が終わると、図1(C)に示すように掘削ドリル3aを引き上げることにより、上記各孔4内に、セメントミルクと掘削土壌とが混合したソイルセメントからなるソイルセメント柱6が相互に連なった状態に形成される。
【0012】
上記セメントミルクとしては、作業中のソイルセメントの固化を適度に遅らせるために貧配合のもの(例えばセメント50kg/m3 、ベントナイト50kg/m3 程度)を使用し、これにソイルセメント用超遅延材を混入したセメント固化材を使用することが望ましい。
【0013】
次に第2工程として、上記掘削機1を移動させ、図1(D)に示すように、未だ固化していない上記ソイルセメント柱6の列内に複数の支持杭7を順次挿入することにより、これらの支持杭7を相互に連結した状態に建て込む。
【0014】
上記支持杭7は、遮水壁の芯材として使用するものではなく、上記ソイルセメント柱列と隣接する位置に新たな孔4を掘削する際のガイドとして使用するものであり、ガイドとしての機能を終えたあとはソイルセメント柱6内から引き抜かれる。従ってこの支持杭7は、必要な支持強度を備えていればどのような断面形状ものであっても良いが、図示の例では円筒形の鋼管が使用されている。
【0015】
上記支持杭7には、図3から分かるように、その左右両側面にほぼ全長にわたり、相互に係合可能な断面形状を持った雄側ジャンクション8と雌側ジャンクション9とが軸線方向に設けられており、隣接する支持杭7,7の雄側ジャンクション8と雌側ジャンクション9とを互いに係合させた状態で複数の支持杭7が、上記ソイルセメント柱6内に建て込まれている。
【0016】
上記支持杭7をソイルセメント柱6内に建て込む場合、複数の孔4のそれぞれに建て込んでも、一部の孔4だけに建て込んでも良いが、この支持柱7に位置ずれや傾き等を生じることなく安定したガイド機能を発揮させるためには、複数の孔4内に複数の支持杭7を相互に連結した状態で建て込むことが望ましい。図示した例では、3つの孔4のそれぞれの位置においてソイルセメント柱6列内に建て込むようにしている。
【0017】
次に第3工程として、図2(A)及び図3に示すように、上記ドリル手段3の側面にスタビライザー11を取り付け、このスタビライザー11を複数の支持杭7のうちの前端部に位置するものの外側面に当接させ、この支持杭7をガイドとして上記ドリル手段3で新たな孔4を掘削することにより、新たなソイルセメント柱6列を形成する。
【0018】
上記スタビライザー11は、支持杭7の雄側ジャンクション8に嵌合する溝部11aと、該雄側ジャンクション8の両側において支持杭7の外側面に当接する湾曲した当接部11bとを有するもので、支持杭7の外面に沿って摺動することによりドリル手段3を真っ直ぐにガイドするものである。
【0019】
このように、スタビライザー11を支持杭7に当接させて該支持杭7をガイドして掘削することにより、深度の深い孔であっても岩盤等の堅固な地盤であっても、掘削を安定的かつ高精度に行うことができる。
【0020】
上記新たなソイルセメント柱6列が形成されると、第4工程として、図2(B)に示すように、支持杭7を建て込んだ既設のソイルセメント柱6列から、そのソイルセメントが固まらないうちに該支持杭7を順次引き抜き、それらを新たに形成した上記ソイルセメント柱6列内に順番に建て込んで連結する。
【0021】
そして再び、建て込んだ上記支持杭7をガイドとしてドリル手段3で新たな孔4を掘削することによりソイルセメント柱6列を形成するという上記第3工程を行ったあと、既設のソイルセメント柱6列から支持杭7を引き抜いて新たに形成したソイルセメント柱6列内に建て込む上記第4工程を行うといった具合に、上記第3工程と第4工程とを必要回数だけ繰り返し行うことにより、所定の領域に図2(C)に示すような芯材のないコンクリート製の遮水壁12が形成される。このとき、掘削のガイドをし終えた支持杭7は引き抜かれるが、場合によっては建て込んだ状態のまま残しておくこともある。
【0022】
図示した実施例では、一定本数(3本)の支持杭7を繰り返して使用するようにしているが、掘削を繰り返す間に必要に応じて支持杭7の本数を適宜増減しても良い。例えば、孔の本数が増える2回目の掘削以降に支持杭を4〜6本程度に増やすことができる。
【0023】
さらに上記実施例では、複軸式のドリル手段3を使用して複数の孔4を同時に掘削するようにしているが、1本の掘削ドリルからなる単軸式のドリル手段を使用して孔を1つずつ掘削するようにしても良い。この場合、支持杭も1本だけ使用し、それをガイドとして掘削したあと引き抜いて新たに掘削した孔内に建て込むという作業を繰り返しても良いが、安定したガイド機能を発揮させるには、何度か掘削を繰り返してソイルセメント柱6の数が増えた段階で支持杭の数を2〜5本程度に増やし、杭列の後端部に位置する支持杭を順次新たなソイルセメント柱内に建て込むようにすることが望ましい。このとき複数の支持杭が相互に連結されることは勿論である。
【0024】
【発明の効果】
このように本発明によれば、支持杭をガイドとして掘削しながら、掘削後にこれを引き抜いて次の掘削に順次転用するという工法を用いることにより、芯材を持たないため機械的強度はそれほど大きくないが遮水性と連続性とに勝れたコンクリート製の遮水壁を、経済的かつ高精度に築造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は本発明の築造方法における一部の工程を順番に示す断面図である。
【図2】(A)〜(C)は本発明の築造方法における他の工程を順番に示す断面図である。
【図3】図2(A)におけるA−A線での拡大断面図である。
【符号の説明】
3 ドリル手段
4 孔
6 ソイルセメント柱
7 支持杭
Claims (2)
- ドリル手段で地中に所要の深さの孔を掘削すると共に、該孔内にセメントミルクを注入して撹拌することにより、セメントミルクと掘削土壌とが混合したソイルセメントからなるソイルセメント柱を形成する第1工程、固化していない上記ソイルセメント柱内にガイド用の支持杭を建て込む第2工程、建て込んだ支持杭をガイドとしてドリル手段により新たな孔を掘削し、既設のソイルセメント柱に連なる新たなソイルセメント柱を形成する第3工程、支持杭が建て込まれている既設のソイルセメント柱内からソイルセメントが固まらないうちに上記支持杭を引き抜くと共に、引き抜いた支持杭を新たに形成したソイルセメント柱内に建て込む第4工程、を順次行ったあと、上記第3及び第4工程を必要回数繰り返して遮水壁を形成することを特徴とする遮水壁の築造方法。
- 請求項1に記載の遮水壁の築造方法において、多軸のドリル手段を使用して複数の孔を同時に掘削することにより複数のソイルセメント柱を同時に形成すると共に、形成したソイルセメント柱列内に複数の支持杭を相互に連結した状態で建て込んでガイドとすることを特徴とするもの。
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