JP2004238981A - トンネル築造方法 - Google Patents

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JP2004238981A JP2003030824A JP2003030824A JP2004238981A JP 2004238981 A JP2004238981 A JP 2004238981A JP 2003030824 A JP2003030824 A JP 2003030824A JP 2003030824 A JP2003030824 A JP 2003030824A JP 2004238981 A JP2004238981 A JP 2004238981A
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Yukio Shimomura
行男 下村
Yoshiki Morita
芳樹 森田
Takashi Okuno
隆司 奥野
Tetsuro Shimamoto
哲朗 島本
Kenzo Mizuhara
憲三 水原
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Abstract

【課題】滞水性の地盤に地盤沈下等のような地上に影響を及ぼすことなく所望径と所望長さを有するトンネルを能率よく築造する。
【解決手段】トンネル切羽に造成した止水性を有する隔壁1から計画トンネル線上の所定長さのトンネル区域部tに多数本の薬液注入管を打設して次に掘削すべき該トンネル区域部tの外周部に筒状の遮水外殻壁2とこの遮水外殻壁2の先端側に次の隔壁1を造成したのち、上記トンネル切羽側の隔壁1側から水抜き管5を打ち込んでトンネル区域部t内の地盤中の地下水を排除し、しかるのち、切羽側の隔壁1を除去して上記遮水外殻壁2内の地盤を掘削、排除し、この地盤の排除によって露出した隔壁1を次のトンネル区域部tの切羽側の隔壁として再び次のトンネル区域部tに上記遮水外殻壁2と隔壁1とを造成する工程を繰り返し行う。
【選択図】 図11

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は滞水性洪積地盤に導水路や上下水道、地下道路、鉄道用のトンネルをを築造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トンネル築造方法としては、主として開削工法とシールド工法とが広く知られている。開削工法は、地表から計画トンネル線に沿って地盤を溝状に掘削し、その底部にトンネルを構築した後、埋め戻す方法であるが、この方法によれば、都市域等において地上に道路が存在する場合には交通を遮断しないと工事ができなく、また、非常に深い地盤中にトンネルを構築するには工事費が著しく高騰するという問題点がある。
【0003】
一方、シールド工法は、シールド掘削機によってトンネルを掘進しながら掘削壁面をセグメントによって覆工していく方法であるが、この方法ではシールド掘削機の径によってトンネルの断面形状の大きさが決定されるため、トンネル合流部や道路トンネルの非常駐車帯域のようにトンネル断面形状がトンネル延長方向に変化するトンネルを構築することができなく、また、一般に山岳トンネル工法よりも工事費が高いという問題点がある。
【0004】
さらに、いずれのトンネル築造方法においても、地盤が滞水性を有している洪積地盤の場合には、その地盤中にトンネルを掘削する際に大規模な止水処理を必要とするばかりでなく、地下水を汲み上げると水位が低下して地盤沈下が発生するため、地上の建物等に悪影響を及ぼすことになり、都市区域では採用することができないという問題点がある。
【0005】
このため、山岳トンネル工事ではあるが、築造すべきトンネルの上下部に存在する不透水性の固結シルト間の滞水性地盤中に地上側から多数本の薬液注入管を打設することにより、築造すべきトンネルの所望長さ部分に止水性を有する両側壁と前後隔壁とを造成し、これら壁と上下固結シルトとによって囲まれた地盤中の地下水を地上側から揚水井を通じて排除することにより、地下水位を低下させることなくトンネルを築造していく方法が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】
株式会社土木工学社出版、「トンネルと地下」第20巻11号(1989年11月)第37〜44頁(ウォータータイトトンネルに挑戦)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記トンネル築造方法では、地下水位の低下による地盤沈下を防止することができても、地上側から薬液注入管の打設や揚水井による地下水の排除を行っているために、都市区域でのトンネル施工として採用するには依然として困難性を伴うという問題点がある。また、計画トンネルの一部分のみが滞水性を有する地盤である場合には、そのトンネル部分だけ上記薬液注入による止水壁の造成することが可能であっても、計画トンネルが略全長に亘り滞水性地盤中に施工しなければならない場合には、例え、地上側からの薬液注入管の打設や揚水井の形成が行えてもその作業に著しい手間と労力を要すると共に工事費も高騰するという問題点があった。
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地上側に影響を及ぼすことなく、さらには地下水位を低下させることなく、滞水性地盤中に所望大きさの断面形状を有するトンネルを確実且つ能率よく築造することができるトンネル築造方法を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のトンネル築造方法は、請求項1に記載したように、滞水性の地盤に予め計画トンネルの長さ方向に順次区画された所定長さの区域部毎に該区域部内の地盤を順次掘削していくことによってトンネルを築造する方法であって、先に掘削したトンネル区域部の切羽に造成されている止水性を有する隔壁から次に掘削すべきトンネル区域部の外周部に遮水外殻壁を造成すると共に該遮水外殻壁の先端にトンネルを横断する方向に次の止水性隔壁を造成する第1工程と、上記両隔壁間の遮水外殻壁内の地盤中の水を外部に排出する第2工程と、上記トンネル切羽側の隔壁を除去すると共に遮水外殻壁で囲まれた区域部内の地盤を排除する第3工程とからなり、この露出させた隔壁を切羽側の隔壁として上記第1〜3工程を順次、繰り返し行うことを特徴とする。
【0010】
上記トンネル築造方法において、請求項2に係る発明は、掘削したトンネル区域部の切羽に造成されている隔壁から次に掘削すべきトンネル区域部の外周部と先端部に向かって複数本の薬液注入管を打設してこの注入管を通じて硬化性薬液を注入することにより、上記止水性を有する遮水外殻壁と隔壁とを造成することを特徴とする。
【0011】
【作用】
滞水性を有する地盤にトンネルを築造する際に、まず、計画トンネルを所定長さ毎に掘削すべきトンネル区域部に区画しておき、最初のトンネル区域部の外周部と先端部とに、止水性を有する隔壁を造成しているトンネル切羽側から多数本の薬液注入管を放射状に打設し、この薬液注入管を通じて硬化性薬液を注入することにより筒状の遮水外殻壁を造成すると共に、この遮水外殻壁の先端側に該遮水外殻壁に連続した隔壁をトンネルを横断する方向に造成する。
【0012】
この際、トンネル切羽側の隔壁から多数本の薬液注入管を次に掘削すべきトンネル区域部の外周部と先端部に向かって打設するものであるから、薬液注入管の打ち込む角度と長さによって所望大きさと長さを有する断面形状のトンネル区域部を造成することができる。次いで、上記遮水外殻壁と両隔壁とで囲まれたこの区域部内の地盤(土砂)中に存在する地下水をトンネル切羽側の隔壁を通じて外部に排出する。この排水処理は、切羽側の隔壁から水抜きパイプを区域部内に貫入させることによって行うことができる。この際、排水によって区域部内の地盤が沈下しても、遮水外殻壁によって囲まれた該区域部内の土砂は地上側の地盤から遮断されているから地上側の地盤に影響を及ぼす虞れはない。
【0013】
次いで、区域部内の地盤中の水が排除されると、切羽側の隔壁を除去して区域部内の地盤の掘削、排除を行う。この場合も、地上側の地盤に影響を及ぼすことなく遮水外殻壁と先端側の隔壁とによって囲まれた区域部内の地盤を掘削することができる。掘削された土砂は、排除した切羽側の隔壁側のトンネル内を通じて外部に排出する。
【0014】
なお、築造すべきトンネルが地上側から地盤中に向かって斜め方向に築造される場合には、トンネル切羽側の隔壁を除去しても、先に掘削したトンネル部側に次に掘削すべきトンネル区域部内の地盤中の地下水が浸入する虞れがないので、隔壁を除去したのち、該トンネル区域部内の地盤中に水抜きパイプを貫入させてもよい。
【0015】
こうして、一つのトンネル区域部における遮水外殻壁内の地盤を排除すると、該遮水外殻壁の先端側に造成している隔壁が露出することになり、次に、この隔壁を切羽面側の隔壁として再び、上記同様に前方の滞水性地盤における次の区域部の外周部と先端部とに薬液注入による遮水外殻壁と隔壁とを造成し、しかるのち、この区域部内の地盤中に存在する地下水の排除と、切羽側の隔壁の除去、区画部内の地盤の掘削、排除とを順次行って該区域部の長さに相当するトンネル部を造成する。そして、この作業を計画トンネル長さ方向に連続する区域部に繰り返し行うことによって滞水性の地盤中に所定長さのトンネルを築造するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、滞水性洪積地盤A中にトンネルTを築造するに際して、まず、図1に示すように、計画トンネルを挟んでトンネル掘削側の立坑Bとトンネル到達側の立坑Cとを地中の所定深さまで掘削し、これらの立坑B、Cの掘削周壁面及び底面に止水壁Dを設けて地下水の浸入を阻止した作業空間を形成する。しかるのち、トンネル掘削側の立坑Bからトンネル到達側の立坑Cに向かってトンネルTを造成していく。
【0017】
このトンネルTを造成するに際して、予め、立坑B、C間の計画トンネルの全長を所定長さ(10〜50m)毎に掘削すべき複数のトンネル区域部ta、tb・・・tに区画しておく。そして、まず、トンネル掘削側の立坑BからトンネルTの掘削を開始するものであるが、掘削開始時のトンネル切羽に相当する壁面部に設けている上記止水壁Dを最初の隔壁1として、立坑B内からこの隔壁1を通じて最初に掘削すべきトンネル区域部taにおける外周部に該トンネル区域部taの全長に亘り遮水外殻壁2aを筒状に造成すると共にこの遮水外殻壁2aの先端に次の止水性隔壁1aをトンネル横断方向に造成し、これらの遮水外殻壁2aと隔壁1、1aとによってトンネル区域部ta内の地下水と区域部外の地下水とを遮断する。
【0018】
これらの遮水外殻壁2aと隔壁1aとの造成は、立坑B内に穿孔機兼用の管体打設機3を1台ないし数台設置し、この管体打設機3によって薬液注入管4を上記隔壁1を貫通させながらトンネル区域部taの外周部と先端部とに向かって順次放射状に打設し、これらの薬液注入管4の先端を造成すべき遮水外殻壁2aと隔壁1aとに到達させたのち、該薬液注入管4を通じて硬化性薬液をトンネル区域部taの外周部と先端部とに注入することによって行われる。
【0019】
上記管体打設機3は一般的に知られた構造を有しており、上下左右方向に角度調整可能なガイド台上に前後方向に移動可能なドリフターを備えていてこのドリフターによって該ドリフターの先端部に設けている管体のチャック部を回転並びに打撃するように構成している。そして、複数本の薬液注入管4の打設角度や長さを変化させることによって、これらの薬液注入管4の先端がトンネル区域部taの外周部に周方向並びに長さ方向に一定間隔毎に並ぶように打設する。同様に、トンネル区域部taの先端部に対しても複数本の薬液注入管4をその先端がトンネル断面方向に一定間隔毎に並ぶように打設する。なお、薬液注入管4は定尺の管体を継ぎ足すことによって所望長さの薬液注入管4に形成され、先端部分のみに薬液注入孔を設けている。
【0020】
この薬液注入管4は、まず、上記管体打設機3を使用して穿孔用ロッド体を薬液注入管4の打設予定位置に順次放射状に打ち込んだのち引き抜くことによって薬液注入管挿入孔を穿設し、この挿入孔に管体打設機3を使用して打設してもよく、或いは、挿入孔を穿設することなく直接、打設してもよい。
【0021】
こうして、複数本の薬液注入管4を打設したのち、立坑B側からこれらの薬液注入管4内を通じてトンネル区域部taの外周部地盤と先端部地盤とにモルタル、水ガラス、或いはウレタン樹脂液等の硬化性薬液を注入し、この薬液の硬化によってトンネル区域部taの外周部地盤と先端部地盤とに図1、図2に示すように、所定厚みの止水性を有する上記筒状遮水外殻壁2aとこの遮水外殻壁2aの先端からトンネル断面方向に連続している所定厚み(3〜5m)の止水性を有する上記隔壁1aを造成するものである。なお、薬液注入管4は薬液注入後において抜き取られ、次の薬液注入に使用される。
【0022】
次いで、図3、図4に示すように、立坑B側に面している隔壁1の下端部から数本の水抜き管5をトンネル区域部ta内の地盤中に打ち込んで、該水抜き管5を通じてトンネル区域部ta内の地盤中の地下水を立坑B側に排出し、立坑B内から地上に排除する。この際、立坑B側から隔壁1を通じてトンネル区域部taの上端部内に空気流入孔6を設けておくことにより、遮水外殻壁2aと両隔壁1、1aとによって密封されているトンネル区域部ta内の地盤中の地下水の排出が円滑に行えるようにする。
【0023】
トンネル区域部ta内の地盤中に存在する地下水が排除されて該地盤が乾燥状態になると、立坑B側の隔壁1を破壊等によって除去して遮水外殻壁2aで囲まれたトンネル区域部ta内の地盤を露出させ、しかるのち、図5〜図8に示すように、遮水外殻壁2aで囲まれている区域部ta内の地盤(土砂)を掘削し、掘削された土砂を立坑B内を通じて地上側に排出する。
【0024】
上記区域部ta内の地盤の掘削方法としては、まず、図5、図6に示すように適宜な土砂掘削機7によって区域部ta内の上半地盤を掘削したのち、図7、図8に示すように下半部の地盤を掘削しているが、立坑B側から遮水外殻壁2aの先端側の隔壁1aに向かって全面的に掘削していってもよい。
【0025】
こうして、遮水外殻壁2aで囲まれた区域部ta内の地盤を掘削することによって遮水外殻壁2aの先端側に設けている上記隔壁1aを露出させると共に、遮水外殻壁2aの露出内周面に沿ってトンネル長さ方向に鋼製リング支保工を組み立てたのち、遮水外殻壁2aの露出面に、図9、図10に示すように、コンクリートを吹き付けることによってこの吹き付けコンクリート層内に上記鋼製リング支保工が埋設された状態の一定厚みの一次覆工8を形成し、遮水外殻壁2aの内径と長さに相当する大きさを有する所定長さのトンネル部T1を造成する。
【0026】
次いで、このトンネル部T1における遮水外殻壁2aの先端側に露出させた隔壁1aをトンネル切羽側の隔壁としてこの隔壁1aからトンネル延長方向に設けられる次の区域部tbの外周部と先端部とに上記同様にして薬液注入を行い、該隔壁1aの外周から上記遮水外殻壁2aのトンネル延長方向に次の遮水外殻壁2bを造成すると共に該遮水外殻壁2bの先端側に次の隔壁1bを造成する。
【0027】
即ち、図11、図12に示すように、トンネル部T1内に上記穿孔機兼用の管体打設機3を1〜数台設置してこの管体打設機3により薬液注入管4を上記隔壁1aを貫通させながら次のトンネル区域部tbの外周部と先端部とに向かって順次放射状に打設し、これらの薬液注入管4の先端を造成すべき遮水外殻壁2bと隔壁1bとに到達させたのち、該薬液注入管4を通じてモルタル等の上記硬化性薬液を次のトンネル区域部tbの外周部と先端部とに注入することによって行われる。
【0028】
しかるのち、トンネル部T1の上記切羽側隔壁1aの下端部から数本の水抜き管5をトンネル区域部tb内の地盤中に打ち込んで、該水抜き管5を通じてトンネル区域部tb内の地盤中の地下水を立坑B側に排出して該トンネル区域部tb内の地盤を乾燥状態にしたのち、上記隔壁1aを除去して遮水外殻壁2bで囲まれたトンネル区域部tb内の地盤を露出させ、図13、図14に示すように、遮水外殻壁2bで囲まれている区域部tb内の地盤(土砂)を適宜な土砂掘削機7によって掘削して掘削された土砂を先に造成したトンネル部T1内から立坑B内を通じて地上側に排出する。
【0029】
こうして、遮水外殻壁2bで囲まれた区域部tb内の地盤を掘削することによって遮水外殻壁2bの先端側に設けている上記隔壁1bを露出させると共に、遮水外殻壁2bの露出内周面に沿ってトンネル長さ方向に鋼製リング支保工を組み立てたのち、遮水外殻壁2bの露出面にコンクリートを吹き付けることによってこの吹き付けコンクリート層内に上記鋼製リング支保工が埋設された状態の一定厚みの一次覆工8を形成し、上記先に造成したトンネル部T1を延長する方向に遮水外殻壁2bの内径と長さに相当する大きさのトンネル部T2を造成する。
【0030】
このように、トンネル長さ方向に順次区画された所定長さのトンネル区域部t毎に、先に掘削したトンネル区域部tの切羽に造成されている止水性を有する隔壁1から次に掘削すべきトンネル区域部tの外周部に遮水外殻壁2を造成すると共に該遮水外殻壁2の先端にトンネルを横断する方向に次の止水性隔壁1を造成する第1工程と、上記両隔壁1、1と遮水外殻壁2とで囲まれたトンネル区域部t内の地盤中の水を上記トンネル切羽側の隔壁1を通じて外部に排出する第2工程と、上記トンネル切羽側の隔壁1を除去すると共に遮水外殻壁2で囲まれた上記区域部t内の地盤を排除して遮水外殻壁2先端の上記隔壁1を露出させる第3工程とを計画トンネルの長さ方向にに繰り返し行うことによって図15に示すように、立坑B、C間にトンネル区画部tの長さに等しいトンネル部を順次連通させてなるトンネルTを築造するものである。
【0031】
なお、遮水外殻壁2の内周面に造成された一次覆工8の内周面には、トンネル全長に亘って図16に示すように鉄筋コンクリートによる二次覆工9を施工することによってトンネルTの築造を完成する。
【0032】
次に、上記トンネル築造方法においては、計画トンネルの長さ方向の両端側に立坑B、Cを築造してこれらの立坑B、C間の滞水性地盤A中にトンネルTを水平方向に掘削、造成したが、立坑などを設けることなく地上側から直接、滞水性地盤内に向かって斜め方向にトンネルTを掘削、造成してもよい。
【0033】
図17乃至図20は上記斜行トンネルTの造成方法の実施の形態を示すもので、まず、図17に示すように、地上側に面している最初の斜行トンネル区域部t1に対しては地表に止水性を有する隔壁1を設けることなく、地上側から直接、薬液注入管(図示せず)を斜行トンネル区域部t1の外周部と先端部とに向かって放射状に打設して、該トンネル区域部t1の外周部に全長に亘り遮水外殻壁21を筒状に造成すると共にこの遮水外殻壁21の先端に止水性隔壁11をトンネル横断方向に造成する。
【0034】
次いで、図18に示すように、遮水外殻壁21内の地盤中に該遮水外殻壁21の内底面に沿って水抜き管5を打ち込んで、該水抜き管5を通じて斜行トンネル区域部t1内の地盤中の地下水を地上側に排出する。そして、この地下水の排出に並行して、或いは、地下水の排出後、乾燥状態となった斜行トンネル区域部t1内の地盤を上層側から隔壁11に向かって掘削、除去して遮水外殻壁21の先端側に設けている上記隔壁11を露出させる。
【0035】
なお、土砂が掘削、排除されて露出した上記遮水外殻壁21の内周面には、上記実施の形態同様に、吹き付けコンクリートによる一定厚みの一次覆工を形成して遮水外殻壁21の内径と長さに相当する大きさを有する所定長さの斜行トンネル部T1’を造成する。
【0036】
こうして、地上側から所定長さの斜行トンネル部T1’ を造成したのち、この斜行トンネル部T1’ における遮水外殻壁21の先端側に露出させた隔壁11をトンネル切羽側の隔壁としてこの隔壁11から斜行トンネル延長方向に設けられる次の斜行トンネル区域部t2の外周部と先端部とに上記同様にして薬液注入管4の打設によって薬液注入を行い、図19に示すように該隔壁11の外周から上記遮水外殻壁21のトンネル延長方向に次の遮水外殻壁22を造成すると共に該遮水外殻壁22の先端側に次の隔壁12を造成する。
【0037】
しかるのち、先に造成したトンネル部T1’ の上記切羽側隔壁11の下端部から水抜き管5を斜行トンネル区域部t2内の地盤中に打ち込んで、該水抜き管5を通じて斜行トンネル区域部t2内の地盤中の地下水を排出して該トンネル区域部t2内の地盤を乾燥状態にすると共に、上記隔壁11を除去して遮水外殻壁22で囲まれたトンネル区域部t2内の地盤(土砂)を適宜な土砂掘削機によって掘削し、掘削土砂を先に造成した斜行トンネル部T1’内を通じて地上側に排出する。
【0038】
なお、トンネル切羽側の隔壁を除去しても、先に掘削した斜行トンネル部側に次に掘削すべきトンネル区域部内の地盤中の地下水が浸入する虞れがない傾斜角度でもってトンネルを築造していく場合には、切羽側の隔壁を通じて水抜き管5を貫入させることなく、該切羽側の隔壁を除去したのち、次に掘削すべきトンネル区域部の地盤内に直接水抜きパイプを貫入させてもよい。
【0039】
こうして、遮水外殻壁22で囲まれた区域部t2内の地盤を掘削することによって遮水外殻壁22の先端側に設けている上記隔壁12を露出させると共に、遮水外殻壁22の露出内周面に沿って上記同様に一定厚みの一次覆工を形成し、上記先に造成した斜行トンネル部T1’ を延長する方向に遮水外殻壁22の内径と長さに相当する大きさの斜行トンネル部T2’ を造成する。
【0040】
このように、トンネル長さ方向に順次区画された所定長さの斜行トンネル区域部毎に、先に掘削した斜行トンネル区域部の切羽に造成されている止水性を有する隔壁から次に掘削すべき斜行トンネル区域部の外周部に遮水外殻壁を造成すると共に該遮水外殻壁の先端に斜行トンネルを横断する方向に次の止水性隔壁を造成する第1工程と、上記両隔壁間の遮水外殻壁内の地盤中の水を外部に排出する第2工程と、上記トンネル切羽側の隔壁を除去すると共に遮水外殻壁で囲まれた上記区域部内の地盤を排除して遮水外殻壁先端側の上記隔壁を露出させる第3工程とを計画トンネルの長さ方向にに繰り返し行うことによって地上側から滞水性を有する地盤の所望深さにまで、斜行トンネルを築造するものである。
【0041】
なお、本発明の滞水性地盤内でのトンネル築造方法は、上記両立坑間にトンネルを築造したり、地上から所望深さにまで斜行トンネルを築造したりする以外に、例えば、図21に示すように、滞水性地盤A内に築造された本線トンネルT’から地上への出口となる斜行トンネルT’’ を造成する方法にも採用することができるものである。また、遮水外殻壁2や隔壁1は、上記のように地盤へのモルタルや水ガラス等の薬液注入による造成以外に、注入したモルタル等と地盤とを攪拌、混合することにより造成したり、或いはモルタル等と地盤との置換によって造成してもよく、さらには、地盤を凍結させることによって造成してもよい。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明のトンネル築造方法は、請求項1に記載したように、滞水性の地盤に予め計画トンネルの長さ方向に順次区画された所定長さの区域部毎に該区域部内の地盤を順次掘削していくことによってトンネルを築造する方法であって、まず、先に掘削したトンネル区域部の切羽に造成されている止水性を有する隔壁から次に掘削すべきトンネル区域部の外周部に遮水外殻壁を造成すると共に該遮水外殻壁の先端にトンネルを横断する方向に次の止水性隔壁を造成するものであるから、地上側に影響を及ぼすことなくトンネル切羽側の隔壁によって地下水が既に造成したトンネル部分側に浸入するのを確実に防止しながらこのトンネル部分の延長方向に次に造成すべきトンネル区域部の外周部に沿って筒状の遮水外殻壁を能率よく造成することができると共にこの遮水外殻壁の先端にトンネルを横断する方向に次の止水性隔壁も能率よく造成することができる。
【0043】
次いで、この遮水外殻壁と隔壁とを造成したのち、該遮水外殻壁内の地盤中の地下水を排除するものであるから、遮水外殻壁外の滞水性地盤中の地下水を止水性隔壁によって遮水外殻壁内に浸入するのを確実に防止しながら、該遮水外殻壁内の地盤中の地下水のみを効率よく排除することができ、この遮水外殻壁周囲の地盤を沈下させる虞れもない。
【0044】
さらに、この遮水外殻壁内の地盤中の水を排除すると共に、該遮水外殻壁で囲まれた上記区域内の地盤を排除して遮水外殻壁先端の上記隔壁を露出させるものであるから、遮水外殻壁の長さと断面形状に応じたトンネル部を能率よく造成することができると共に上記露出した隔壁を介して次のトンネル区域部に再び遮水外殻壁と隔壁とを造成することができる。そして、各トンネル区域部の遮水外殻壁内の地盤を上記のように順次掘削、排除することによって滞水性地盤中に所定長さのトンネルを容易に築造することができるものである。
【0045】
また、請求項2に係る発明によれば、上記止水性を有する遮水外殻壁と隔壁とを、掘削したトンネル区域部の切羽に造成されている隔壁から次に掘削すべきトンネル区域部の外周部と先端部に向かって複数本の薬液注入管を打設してこの注入管を通じて硬化性薬液を注入することにより造成するものであるから、所望長さと所望径の遮水外殻壁を造成することができ、この遮水外殻壁内の地盤を掘削することによって築造されるトンネル部の径を自由に変更することができるものである。その際、地上側からではなく、既に築造したトンネル部側から隔壁を通じて薬液注入管を打設するものであるから、薬液注入管の長さも必要最小限度の長さであればよく、打設作業も確実且つ能率よく行えて工期の短縮を図ることができると共に、滞水性の地盤中にトンネルを経済的に築造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】最初のトンネル区域部に遮水外殻壁と隔壁を造成した状態の簡略縦断側面図、
【図2】その遮水外殻壁の縦断正面図、
【図3】トンネル区域部内の地盤中の地下水を排出している状態の簡略縦断側面図、
【図4】その縦断正面図、
【図5】トンネル区域部内の上半地盤を掘削している状態の簡略縦断側面図、
【図6】その縦断正面図、
【図7】トンネル区域部内の下半地盤の掘削完了直前状態の簡略縦断側面図、
【図8】その縦断正面図、
【図9】遮水外殻壁の露出面に一次覆工を施工している状態の簡略縦断側面図、
【図10】その縦断正面図、
【図11】次のトンネル区域部に遮水外殻壁と隔壁を造成した状態の簡略縦断側面図、
【図12】その縦断正面図、
【図13】トンネル区域部内の地盤を掘削している状態の簡略縦断側面図、
【図14】その縦断正面図、
【図15】立坑間にトンネルを築造した状態の簡略縦断側面図、
【図16】そのトンネルの拡大縦断正面図、
【図17】斜行トンネル造成開始時の状態の簡略縦断側面図、
【図18】その遮水外殻壁内の地下水と地盤を排除している状態の簡略縦断側面図、
【図19】次のトンネル区域部に遮水外殻壁と隔離を造成した状態の簡略縦断側面図、
【図20】その遮水外殻壁内の地下水と地盤を排除している状態の簡略縦断側面図、
【図21】本発明の別な実施の形態を示す簡略縦断側面図。
【符号の説明】
1、1a 隔壁
2、2a 遮水外殻壁
3 薬液注入管
5 水抜き管
7 土砂掘削機
8 一次覆工
A 滞水性地盤
B、C 立坑
t トンネル区域部

Claims (2)

  1. 滞水性の地盤に予め計画トンネルの長さ方向に順次区画された所定長さの区域部毎に該区域部内の地盤を順次掘削していくことによってトンネルを築造する方法であって、先に掘削したトンネル区域部の切羽に造成されている止水性を有する隔壁から次に掘削すべきトンネル区域部の外周部に遮水外殻壁を造成すると共に該遮水外殻壁の先端にトンネルを横断する方向に次の止水性隔壁を造成する第1工程と、上記両隔壁間の遮水外殻壁内の地盤中の水を外部に排出する第2工程と、上記トンネル切羽側の隔壁を除去すると共に遮水外殻壁で囲まれた上記区域内の地盤を排除する第3工程とからなり、この第1〜3工程を順次繰り返し行うことを特徴とするトンネル築造方法。
  2. 掘削したトンネル区域部の切羽に造成されている隔壁から次に掘削すべきトンネル区域部の外周部と先端部に向かって複数本の薬液注入管を打設してこの注入管を通じて硬化性薬液を注入することにより、止水性を有する遮水外殻壁と隔壁とを造成することを特徴とする請求項1に記載のトンネル築造方法。
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