JP4294163B2 - 液体動圧軸受ユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸の回転に伴って高圧の流体潤滑膜を発生させ、この流体潤滑膜によって上記回転軸の回転を支承する動圧軸受ユニットに係り、特に、かかる動圧軸受の潤滑流体として水やクーラント液等の液体を用いた液体動圧軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平6−241222号公報、特開平6−249236号公報、特開平7−19236号公報等には動圧軸受によって主軸の回転を支承したスピンドル装置が開示されている。かかるスピンドル装置は、工作機械の主軸頭等に固定されるハウジングと、駆動手段に連結されて回転する主軸と、所定の軸受隙間を介して対向する回転側部材及び固定側部材から構成されると共に上記主軸をハウジングに対して回転自在に支承するラジアル動圧軸受及びスラスト動圧軸受とを備えており、各動圧軸受の回転側部材には深さ10〜15μm程度の動圧発生用溝が所定のパターンで形成されている。
【0003】
このように構成されたスピンドル装置においては、上記主軸の回転に伴って動圧軸受の軸受隙間に介在する潤滑流体が加圧され、主軸は高圧の流体潤滑膜によって浮揚状態となり、その状態のままで回転を支承される。このため、主軸の回転に対しては極僅かな回転抵抗しか作用せず、しかも回転時における振動も殆ど発生しないことから、該主軸に対して毎分1万回転以上の高速回転を与えて使用することも可能といった優れた特質を有している。
【0004】
また、かかるスピンドル装置では主軸の回転に伴って潤滑流体を加圧していることから、各動圧軸受の回転側部材と固定側部材との軸受隙間が過大であると、該軸受隙間において潤滑流体の圧力を十分に高めることができず、主軸の外部荷重に対する負荷能力及び剛性が低下してしまう。このため、前述した従来のスピンドル装置では軸受隙間を数μm程度に設定し、主軸の低速回転においても潤滑流体を十分に加圧できるようにしている。
【0005】
更に、各動圧軸受の軸受隙間で加圧される潤滑流体としては、空気等の気体の他に水や工作機械用のクーラント液等の液体を用いることが可能であるが、気体の圧縮性に比較して液体のそれの方が小さいことから、液体を潤滑流体として用いた場合の方が主軸の荷重に対する負荷能力及び剛性は向上することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、動圧軸受の軸受隙間を数μmに設定し、しかも潤滑流体として気体よりも圧縮性に劣る液体(以下、「潤滑液」という)を用いた場合には、回転軸が高速で回転した際に、かかる潤滑液に対してより大きな剪断摩擦力が作用し、潤滑液が摩擦熱によって大きく昇温することになる。このため、何ら潤滑液の冷却手段を設けないとすれば、潤滑液の有する熱量が動圧軸受を構成する回転側部材や固定側部材に流入し、これら両部材が熱膨張によって固体接触を生じてしまう危険性が高い他、スピンドル主軸等の回転軸が熱膨張してしまい、かかる回転軸の寸法精度が悪化してしまうといった問題点があった。
【0007】
一方、このような不具合を回避するためには、固定側部材の周囲にウォータジャケットを設ける等して動圧軸受を直接冷却するか、軸受隙間から排出された潤滑液をハウジング外で一旦冷却した後に再度軸受隙間に供給することが必要とされ、動圧軸受の構造そのものが複雑且つ大型化せざるを得ないといった問題点があった。
【0008】
また、従来の動圧軸受では、上記主軸をハウジングに対して非接触で支承している構造上、各動圧軸受の軸受隙間がハウジング外の雰囲気と連通されており、軸受隙間で加圧された潤滑液がハウジング外へ漏れ出してしまい、かかる動圧軸受が組み込まれた装置、例えば上記スピンドル装置の周辺を汚してしまうといった問題点があった。このため、潤滑流体として液体を用いた動圧軸受は、例えばクリーンルーム内における使用等、潤滑液の漏出による汚染を嫌う環境下では使用することができなかった。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、潤滑流体として液体を用いた場合に、かかる潤滑液を周囲に漏出させることなく、少量の潤滑液を自然循環させながら回転軸の高速回転を支承することが可能であると共に、簡易な構成で潤滑液の冷却を行うことができ、それによって高速回転時における回転側部材と固定側部材の固体接触、並びに回転軸の寸法精度の悪化を防止することが可能な液体動圧軸受ユニットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の液体動圧スピンドル装置は、ハウジングと、このハウジングに対して回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固定される回転側部材と、この回転側部材と所定の軸受隙間を介して対向すると共に上記ハウジングに固定された固定側部材とを備え、かかる回転側部材の回転に応じて上記軸受隙間に介在する潤滑液を加圧し、これにより生じた高圧の流体潤滑膜によって上記回転軸の回転を支承するように構成され、更に、上記ハウジング内には上記動圧軸受の軸受隙間から潤滑液が直接噴出すると共にハウジング外から気体が導入される気液混合室を設ける一方、この気液混合室から潤滑液を回収すると共に上記軸受隙間に対して潤滑液を再供給する液供給手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
このような技術的手段によれば、上記回転軸が回転を開始すると、回転側部材と固定側部材の軸受隙間に介在する潤滑液が、かかる回転側部材の回転に伴って加圧され、軸受隙間に高圧の流体潤滑膜が形成される。これによって回転軸はその回転を支承される。加圧された潤滑液は軸受隙間内を流動した後にハウジング内に設けられた気液混合室に直接噴出するが、この気液混合室にはハウジング外から気体が導入されていることから、大気圧に略等しい圧力に保たれている。このため、軸受隙間で極めて高い圧力にまで加圧された潤滑液が大気圧に略等しい気液混合室に噴出する際には、微細化された液滴となって霧状に噴出するので、潤滑液の有する熱量が気化熱となって奪われ、軸受隙間内で高温になった潤滑液を冷却することができる。そして、このようにして冷却された潤滑液を液供給手段によって気液混合室より回収した後、これを軸受隙間に対して再供給することで、少量の潤滑液を冷却しながら循環させて使用することが可能となる。
【0012】
このような本発明において、潤滑液を回転側部材と固定側部材の軸受隙間から霧状に噴出させるためには、上記気液混合室が軸受隙間よりも大きな空間を有していることが必要である。より効果的に潤滑液を噴霧するためには、軸受隙間に面した気液混合室の開口断面積を軸受隙間の断面積の200倍以上とするのが好ましい。もっとも、軸受隙間は5μm〜十数μm程度なので、それでも気液混合室の開口断面積は1mm〜3mm程度で足りることになり、かかる気液混合室を内蔵したハウジングが大型化することはない。
【0013】
また、気液混合室に噴霧された潤滑液は液供給手段によって回収された後、固定側部材と回転側部材の軸受隙間へ再供給されるのだが、かかる潤滑液を一層効率的に液供給手段に回収するという観点からすれば、気液混合室に加圧気体を導入し、この加圧気体の支援の下で潤滑液を液供給手段に回収するのが好ましい。加えて、ハウジングと回転側部材が形成する隙間から上記気液混合室へ加圧気体を導入するように構成すれば、気液混合室に噴霧された気体が上記隙間からハウジング外へ流出するのを完全に防止することも可能となる。
【0014】
更に、上記液供給手段としては、気液混合室から回収された潤滑液を一時的に貯留しておき、回転軸の回転に応じて回転側部材と固定側部材の軸受隙間に適宜供給し得るものであれば、貯留するためのタンクをハウジング内あるいはハウジング外に設ける等、その設計を適宜変更して差し支えない。但し、装置のコンパクト化の観点からすれば、貯留タンクをハウジング外に設けるのは好ましくなく、また、ハウジング内に安定的に潤滑液を貯留するという観点からすれば、繊維交絡体等から形成された潤滑液の吸蔵体を上記ハウジングに内蔵させるのが好ましい。上記液供給手段がこのような吸蔵体を具備すれば、加圧気体に乗って気液混合室から流動してくる霧状の潤滑液を確実に吸蔵体に吸収させることができ、しかも吸蔵体の内部で潤滑液と気体とが自ずから分離するので、潤滑液を軸受隙間に再供給する際にも便利である。加えて、動圧軸受には回転軸の起動に併せて潤滑液を軸受隙間へ自己吸引する機能があるので、かかる軸受隙間と吸蔵体とを輸液管で連結しておけば、吸蔵体に貯留されている潤滑液が回転軸の起動に応じて軸受隙間に吸い出され、ポンプ等によって強制的に潤滑液を軸受隙間に供給してやる手間が軽減される。
【0015】
本発明では、前述のように、潤滑液が自ずと霧状に変化しながら気液混合室に噴出するのだが、一部の潤滑液は回転側部材の外周縁に付着して連れ回るうちに大きな液滴に成長してしまい、そのままでは十分な冷却効果を期待することができない。従って、かかる観点からすれば、気液混合室に面した回転側部材の端部にはその円周方向に沿って放射状の溝を形成し、回転側部材に連れ回る潤滑液の液滴をこの放射状の溝によって該部材から分離するのが好ましい。このように構成すれば、回転側部材から分離された大きな液滴が溝に叩かれることにより、再度細かな液滴となって気液混合室に飛散するので、軸受隙間から潤滑液を噴霧したのと同様、潤滑液の冷却効果を高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の液体動圧軸受ユニットを詳細に説明する。図1は工作機械の主軸頭等に装着されるスピンドル装置を示すものであり、かかる装置のスピンドル主軸の回転を支承する軸受として本発明の液体動圧軸受ユニットが適用されている。同図において、符号21は軸端にクイル軸(図示せず)を介して砥石が装着される回転軸としてのスピンドル主軸、符号22は上記スピンドル主軸21を駆動するモータ、符号23は上記スピンドル主軸の回転を支承するラジアル動圧軸受、符号24はスピンドル主軸21の軸方向への移動を規制するスラスト動圧軸受、符号25はこれらラジアル動圧軸受23及びスラスト動圧軸受24に潤滑液を供給する吸蔵体、符号26は上記スピンドル主軸21、モータ22、ラジアル動圧軸受23、スラスト動圧軸受24及び吸蔵体25を収容したハウジングであり、このハウジング26に形成されたフランジ部27を介してスピンドル装置全体が工作機械の主軸頭等に固定されるようになっている。
【0017】
上記スピンドル主軸21は、ラジアル動圧軸受23及びスラスト動圧軸受24によってその回転を支承されており、かかるラジアル動圧軸受23の内輪としてのジャーナル部28と、上記クイル軸の取付け孔(図示せず)を有する先端部29と、上記モータ22を貫通すると共に該モータ22のロータ31が固定される連結部30とから構成されている。
【0018】
スピンドル主軸21を駆動するモータ22は、スピンドル主軸21の連結部30に固定されたロータ31と、ハウジング26に固定されたステータ32とから構成されており、ハウジング26に取り付けられたコネクタ33を介してモータ22駆動信号が外部から上記ステータ32に入力されるようになっている。また、このモータ22で発生した熱がスピンドル主軸21に流入して該スピンドル主軸21が膨張するのを極力防止するため、上記ハウジング26にはウォータジャケット34が設けられている。
【0019】
上記ハウジング26に対してスピンドル主軸21の回転を支承しているラジアル動圧軸受23は、かかるスピンドル主軸21のジャーナル部28に固定された回転側部材としてのスリーブ35と、このスリーブ35の外側に遊嵌すると共に上記ハウジング26に固定された固定側部材としての軸受リング36とから構成されており、上記スリーブ35の外周面と軸受リング36の内周面との間には所定の軸受隙間(例えば5〜15μm)が形成されている。尚、ラジアル動圧軸受23の内輪としてのスリーブ35をスピンドル主軸21のジャーナル部28に嵌合させたが、かかるジャーナル部28をそのまま内輪として機能させ、上記スリーブ35を省略してラジアル動圧軸受23を構成することもできる。
【0020】
一方、上記スラスト動圧軸受24はラジアル動圧軸受23を挟むようにして一対設けられており、これらスラスト動圧軸受24,24によってスピンドル主軸21の軸方向への移動が規制されている。このスラスト動圧軸軸受24は、スピンドル主軸21のジャーナル部28及び上記スリーブ35を挟むようにして該スピンドル主軸21に固定された回転側部材としての一対のスラスト板37,37と、前述の軸受リング36とから構成されており、これらスラスト板37,37と軸受リング36の軸方向の端面との間にはラジアル動圧軸受23の軸受隙間と連通する所定の軸受隙間が形成されている。
【0021】
上記軸受リング36の内周面と対向するスリーブ35の外周面には、図2に示すように、ヘリングボーン状の動圧発生用溝7が形成されており、スピンドル主軸21が回転すると、かかる動圧発生用溝7によって軸受リング36とスリーブ35の軸受隙間、すなわちラジアル動圧軸受23の軸受隙間に介在する潤滑流体が加圧され、かかる軸受隙間に高圧の流体潤滑膜が形成されるようになっている。これにより、スピンドル主軸21は軸受リング36に対して非接触の状態でその回転を支承されることとなる。
【0022】
一方、上記軸受リング36の軸方向端面と対向するスラスト板37の一面には、図3に示すように、スパイラル状の動圧発生用溝8が形成されており、上記スピンドル主軸21が回転すると、かかる動圧発生用溝8によって軸受リング36とスラスト板37の軸受隙間、すなわちスラスト動圧軸受24の軸受隙間に介在する潤滑流体が加圧され、かかる軸受隙間に高圧の流体潤滑膜が形成されるようになっている。その結果、スピンドル主軸21は上記軸受リング36を挟んで設けられた一対のスラスト動圧軸受24によってその軸方向の移動が規制されることとなる。
【0023】
この液体動圧軸受ユニットではラジアル動圧軸受23及びスラスト動圧軸受24の各潤滑流体として、水や機械加工用クーラント液等の液体を使用しており、かかる潤滑液は軸受リング36を半径方向に貫通するようにして形成された供給流路38から上記ラジアル動圧軸受23の軸受隙間に供給されるようになっている。
【0024】
かかる潤滑液は上記吸蔵体25に吸収された状態でハウジング26内に貯蔵されている。この吸蔵体25は高吸水繊維から形成されており、挿入された輸液管39によって上記供給流路38と連結されている。従って、上記吸蔵体25に貯蔵された潤滑液はこの輸液管39を介してラジアル動圧軸受23の軸受隙間に供給される。尚、吸蔵体25に吸収された潤滑液は重力によって該吸蔵体25に下方により多く貯蔵されることになるので、上記輸液管39はその先端が吸蔵体25の下部に達するように挿入されている。
【0025】
ここで、上記スリーブ35に形成されたヘリングボーン状の動圧発生用溝7は、図2中に矢線で示す方向へスピンドル主軸21が回転すると、かかる回転に伴って軸受隙間の潤滑液をスリーブ35の軸方向の両端に向けて加圧する所謂ポンプアウト型に形成されている。また、スラスト板37に形成されたスパイラル状の動圧発生用溝8は、図3中に矢線で示す方向へスピンドル主軸21が回転すると、かかる回転に伴って軸受隙間の潤滑液をスラスト板37の内径から外径へ向けて加圧する所謂ポンプアウト型に形成されている。
【0026】
従って、この動圧軸受ユニットでは上記スピンドル主軸21が回転を開始すると、ラジアル動圧軸受23の軸受隙間に存在する潤滑液が軸受リング36の両端に配置されたスラスト板37に向けて自ずから流動するので、これに伴ってかかる軸受隙間には上記吸蔵体25から供給流路38を経て潤滑液が自然に流入してくる。また、ラジアル動圧軸受23の軸受隙間はスラスト動圧軸受24の軸受隙間と連通していることから、ラジアル動圧軸受23の軸受隙間で加圧された潤滑液はスラスト動圧軸受24の軸受隙間へと流れ込み、スピンドル主軸21の回転に伴ってスラスト板37の内径から外径へと流動する。つまり、この動圧軸受ユニットにおいては、スピンドル主軸21が回転すると、吸蔵体25に貯蔵された潤滑液が供給流路38からラジアル動圧軸受23の軸受隙間に吸引されると共にスラスト動圧軸受24の外径側から排出され、潤滑液を各動圧軸受23,24の隅々にまで行き渡らせることができるようになっている。
【0027】
一方、スラスト動圧軸受24の外径側から排出された潤滑液を吸収して回収すべく、上記吸蔵体25は一対のスラスト板37の外周側に対応してハウジング26内に収容されており、図4及び図5に示すように、かかる軸受24の外周側から排出された潤滑液が回収流路40を経て吸蔵体25に吸収されるようになっている。
【0028】
その結果、この実施例のスピンドル装置では、スピンドル主軸21がモータ22の動力によって回転を開始すると、吸蔵体25に貯蔵されている潤滑液がラジアル動圧軸受23の軸受隙間に供給される一方、スラスト動圧軸受24から排出された潤滑液が吸蔵体25に吸収され、かかる潤滑液をハウジング26外へ殆ど漏出させることなく循環させながら、スピンドル主軸21の高速回転を支承することができるものである。
【0029】
一方、図4および図5に示すように、上記スラスト板37の外周側には環状の気液混合室44が形成されており、スラスト動圧軸受24の軸受隙間はこの気液混合室44に開口している。この気液混合室44の一部は上記スラスト板37の外周縁に環状溝10を切り欠くことによって形成されている。従って、潤滑液はスラスト動圧軸受24の軸受隙間から環状の気液混合室44に直接排出された後、上記回収流路40を経て吸蔵体25に回収される。このような気液混合室44を設けた理由は以下の通りである。
【0030】
すなわち、ラジアル動圧軸受23及びスラスト動圧軸受24の軸受隙間は十数μmと極めて小さく、スピンドル主軸21が高速回転すると、各動圧軸受23,24の軸受隙間を流動する潤滑液は剪断摩擦熱によって高温となってしまう。このため、高温となった潤滑液を冷却することなくそのまま循環させて使用していると、ラジアル動圧軸受23を構成するスリーブ35が熱膨張を生じ、軸受隙間が消失して軸受リング36と固体接触を生じてしまったり、スピンドル主軸21の熱膨張によってワークの加工精度が悪化する等といったトラブルが発生する。
【0031】
しかし、スラスト動圧軸受24で加圧された高圧の潤滑液を該軸受隙間よりも大きな開口断面積を有する気液混合室44に噴出させるように構成した場合、各動圧軸受23,24の軸受隙間が十数μmであることからすれば、高さ3mm程度の気液混合室44でもスラスト動圧軸受24の軸受隙間の約200倍の広さを有していることになる。スラスト動圧軸受24において発生している潤滑液の圧力は数十気圧にも達していることから、軸受隙間よりも十分に広い気液混合室44に潤滑液を噴出させると、潤滑液は気体中に噴霧されたのと同じ状態になる。その結果、潤滑液はスラスト動圧軸受24から上記気液混合室44へ噴出する際に気化熱を奪われることとなり、動圧軸受23,24内で高温となった潤滑液の温度を低下させることができるのである。
【0032】
このため、本実施例のスピンドル装置では、ラジアル動圧軸受23及びスラスト動圧軸受24の軸受隙間において高温となった潤滑液を、気液混合室44で冷却しながら吸蔵体25に回収することができ、ウォータジャケットや潤滑液クーラ等の特別な冷却手段を設けずとも、吸蔵体25を介して軸受隙間を循環させている潤滑液の温度が累積的に上昇するのを効果的に防止することができるものである。また、常に冷却された潤滑液を吸蔵体から各動圧軸受23,24の軸受隙間に供給し得ることから、スリーブ35やスピンドル主軸21が熱膨張するのも効果的に防止することができるものである。
【0033】
また、本実施例ではスラスト動圧軸受24の軸受隙間から気液混合室44に噴霧された潤滑液を一層効果的に上記吸蔵体25に回収するべく、上記気液混合室44に対して加圧気体を導入し、噴霧された潤滑液をこの加圧気体に乗せて吸蔵体25へと搬送している。具体的には、図4に示すように、モータ22が収容されたハウジング26内の空間41を加圧することで、かかる加圧空気をモータ22側のスラスト板37とハウジング26との隙間に流入させている。また、図5に示すように、ハウジング26のクイル軸側にはスラスト板37の背面側に加圧空気を導入するための吸気流路41を形成し、やはり加圧空気をクイル軸側のスラスト板37とハウジング26との隙間に流入させている。
【0034】
このようにスラスト板37の背面側から気液混合室44に対して加圧気体を作用させると、吸蔵体25に対する潤滑液の回収が促進される他、気液混合室44内の潤滑液はスラスト板37の背面側に回り込むことができないので、加圧空気と共に回収流路40に流入するしかなく、かかる加圧空気の支援の下、潤滑液を完全に吸蔵体25に吸収させることができるものである。また、潤滑液は吸蔵体25に吸収されることで加圧気体と分離されるので、かかる潤滑液を確実に回収して再度ラジアル動圧軸受23に供給することができるものである。尚、加圧気体を吸蔵体25へと導くため、図1に示すように、ハウジング26には吸蔵体25とハウジング26外を連結する脱気孔43が形成されている。
【0035】
一方、前述の如く潤滑液をスラスト動圧軸受24の軸受隙間から気液混合室44に噴霧したとしても、その一部はスラスト板37の外周縁に付着して該スラスト板37の回転に連れ回ることから、付着した状態で徐々に大きな液滴を形成してしまい、噴霧による潤滑液の冷却効果が低減してしまう懸念がある。このため、本実施例ではスラスト板37に形成した上記環状溝10の外周縁に対して一定の間隔で放射状の分断溝9を形成し(図3参照)、スラスト板37が回転した際にその外周縁に付着した潤滑液をこの分断溝9によって該スラスト板37から早期に分離するように構成した。また、スラスト板37から分断される潤滑液の液滴は上記分断溝9の側壁に衝突して打ち砕かれるので、スラスト板37に連れ回って成長した液滴を再度微細化して飛散させることができ、噴霧による潤滑液の冷却効果が低減するのを効果的に防止することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の液体動圧軸受ユニットによれば、動圧軸受の軸受隙間で加圧された潤滑液を気体が導入された気液混合室に排出させるのみで、かかる軸受隙間内で高温になった潤滑液を冷却することができるので、潤滑液を冷却するための特別な装置が不要となり、高速でかつ長時間継続して運転可能な液体動圧軸受ユニットを安価に且つコンパクトに製作することが可能となる他、冷却された潤滑液を液供給手段によって回収し、これを軸受隙間に対して再供給することで、動圧軸受を構成する回転側部材、固定側部材および回転軸の熱膨張を抑え、ひいては高速回転時における回転側部材と固定側部材の固体接触、並びに回転軸の寸法精度の悪化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の液体動圧軸受ユニットをスピンドル主軸の支承に適用したスピンドル装置の実施例を示す概略図である。
【図2】 実施例に係るラジアル動圧軸受の動圧発生用溝を示す図である。
【図3】 実施例に係るスラスト動圧軸受のスラスト板を示す図である。
【図4】 実施例中におけるモータ側のスラスト板の周辺を示す要部拡大図である。
【図5】 実施例中におけるクイル軸側のスラスト板の周辺を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
21…スピンドル主軸(回転軸)、25…吸蔵体、35…スリーブ(回転側部材)、36…軸受リング(固定側部材)、37…スラスト板(回転側部材)、39…輸液管、44…気液混合室

Claims (5)

  1. ハウジングと、このハウジングに対して回転自在に設けられた回転軸と、この回転軸に固定される回転側部材と、この回転側部材と所定の軸受隙間を介して対向すると共に上記ハウジングに固定された固定側部材とを備え、かかる回転側部材の回転に応じて上記軸受隙間に介在する潤滑液を加圧し、これにより生じた高圧の流体潤滑膜によって上記回転軸の回転を支承するように構成した液体動圧軸受ユニットにおいて、
    上記ハウジング内には上記動圧軸受の軸受隙間が開口すると共にハウジング外から気体が導入される気液混合室を設ける一方、
    上記動圧軸受はその軸受隙間に介在する潤滑液を上記回転側部材の内径から外径に向けて加圧して、上記気液混合室に潤滑液を直接噴出させ、上記気液混合室から潤滑液を回収すると共に上記軸受隙間に対して潤滑液を再供給する液供給手段を設けたことを特徴とする液体動圧軸受ユニット。
  2. 請求項1記載の液体動圧軸受ユニットにおいて、上記気液混合室は上記動圧軸受の周囲に環状に形成されていることを特徴とする液体動圧軸受ユニット。
  3. 請求項1記載の液体動圧軸受ユニットにおいて、上記気液混合室に対し、ハウジングと回転側部材が形成する隙間から加圧気体を導入し、かかる気液混合室に吐き出された潤滑液を加圧気体と共に上記液供給手段に回収するように構成したことを特徴とする液体動圧軸受ユニット。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の液体動圧軸受ユニットにおいて、上記液供給手段は、上記ハウジングに内蔵されると共に潤滑液を吸収して貯蔵する吸蔵体と、一端がこの吸蔵体に接続されると共に他端が上記軸受隙間に開口した輸液管とからなることを特徴とする液体動圧軸受ユニット。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の液体動圧軸受ユニットにおいて、上記気液混合室に面した回転側部材の端部には、その円周方向に沿って放射状の溝を形成したことを特徴とする液体動圧軸受ユニット。
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