JP4292804B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
この発明は、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料である。近年、省エネルギーの観点から、これら電気機器のエネルギーロスの低減に対する要求が高まっており、鉄心材料として用いられる方向性電磁鋼板においても、従来に増して、良好な磁気特性が求められるようになってきた。
【0003】
方向性電磁鋼板は、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、仕上焼鈍の際に、いわゆるゴス(Goss)方位と称される(110)〔001〕方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。したがって、二次再結晶粒の結晶方位が磁気特性に大きな影響を及ぼす。
【0004】
さて、従来、この様な方向性電磁鋼板はSiを4.5 mass%程度以下、および、MnS、MnSe、AlNなどのインヒビター成分を含有するスラブを1300℃以上に加熱後、熱間圧延し、必要に応じて、熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気で一次再結晶焼鈍することにより、一次再結晶および脱炭を行い、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5時間程度の二次再結晶焼鈍を行うことにより製造されてきた。たとえば、特許文献1〜3などに、その技術が開示されている。しかしながら、このような方向性電磁鋼板の製造工程では、高温のスラブ加熱および高温でかつ長時間の二次再結晶焼鈍が必要であり、その製造コストは極めて高いものであった。
【0005】
【特許文献1】
米国特許No.1965559号公報
【特許文献2】
特公昭40−15611 号公報
【特許文献3】
特公昭51−13469 号公報
【0006】
そこで、発明者らは、特許文献4に記載されているように、スラブにインヒビター成分が含有せずとも二次再結晶できる技術(インヒビターレス法)を開発した。
【0007】
【特許文献4】
特開2000−129356号公報
【0008】
この方法は、従来の方向性電磁鋼板の製造方法とは、全く技術思想を異にする。すなわち、従来の方向性電磁鋼板がMnS、AlN、MnSeなどの析出物(インヒビター)を利用して、二次再結晶を発現させるのに対して、インヒビターレス法では、これらインヒビターを用いず、むしろ、高純度化することにより、二次再結晶を発現させる技術である。インヒビターレス法では、高温でのスラブ加熱が不要であり、また、二次再結晶焼鈍を高温で長時間行う必要もなく、低コストでの方向性電磁鋼板の製造が可能となる。しかしながら、近年、特に強く求められている高特性材を安定して製造するには、限界があった。特に、コイルエッジ部にて磁気特性が大きく劣化するという問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通り、スラブにインヒビター成分を含有しない方向性電磁鋼板の製造において、磁気特性が近年の高特性材の要求には、不十分であり、特に、コイルエッジ部付近で磁気特性が劣化するという問題点があった。
【0010】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を低コストで製造する方法を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、インヒビターレス成分系における二次再結晶時の諸条件が磁気特性に及ぼす影響について、鋭意研究を進めた。
【0012】
その結果、二次再結晶粒をゴス方位に高度に集積させるためには、二次再結晶挙動の厳密な制御、すなわち、
▲1▼800 ℃から900 ℃の間で二次再結晶させること
▲2▼この温度域での昇温速度を厳密に制御すること
▲3▼この温度域での鋼板中の窒素の増減を厳密に制御すること
が必要であることを研究室規模の実験により明らかにした。更に、これらの知見の工業的規模での適用を試みた結果、コイル中央部のみならず、コイルエッジ部においても磁気特性が大きく改善され、コイル全幅において、極めて良好な破気特性が得られることを見いだした。
【0013】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(i)C:0.01〜0.08質量%、Si:2.0〜4.5質量%およびMn:0.01〜0.5質量%を含有するとともに、S、SeおよびOを各々50質量ppm 未満、Nを60質量ppm 未満ならびにSol.Alを100質量ppm未満に抑制し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼スラブに、焼鈍および圧延を施して最終板厚の冷間圧延板とした後、一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、
(1)一次再結晶焼鈍後の鋼板における結晶粒径を8〜25μmの範囲とすること、
(2)二次再結晶焼鈍の昇温過程における、800 ℃から900 ℃までの平均昇温速度を0.5〜5 ℃/hの範囲とすること、および、
(3)二次再結晶焼鈍時の800〜900℃における、雰囲気ガスの窒素ガス分圧、前記雰囲気ガスのガス組成の切り換えパターン、昇温速度を制御することにより、二次再結晶焼鈍の昇温過程にて、900 ℃での鋼板窒素量から800 ℃での鋼板窒素量を減じたときの鋼板窒素量差を-10ppm〜+25ppmの範囲とすること、
を特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】
(ii)前記鋼スラブは、Sol.Alを20質量ppm以上含有することを特徴とする上記(i)記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】
(iii)前記鋼スラブは、さらにSb:0.02〜0.30質量%およびSn:0.04〜0.60質量%の一種又は二種を含有し、かつ、SbおよびSnの含有量をそれぞれ[Sb]および[Sn]としたときの[Sb]+1/2[Sn]の値が0.020〜0.30質量%であることを特徴とする上記(i)または(ii)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0016】
(iv)前記鋼スラブは、さらにCu:0.06〜0.5質量%を含有することを特徴とする上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体的に説明する。
この発明のスラブは、公知の方法、たとえば、製鋼−連続鋳造(あるいは造塊−分塊圧延)によって製造される。この際、スラブ組成については、以下のように限定される。尚、以下、各成分の含有量の単位である質量%および質量ppmは、それぞれ単に%およびppmと記載する。
【0018】
C:0.01〜0.08%
Cは、一次再結晶集合組織改善に有用な元素であり、この観点から0.01〜0.08%の範囲で添加する必要がある。Cの上記範囲外の添加は、一次再結晶集合組織が劣化し、ゴス方位に高度に集積した二次再結晶粒が得られず、磁気特性が劣化するからである。
【0019】
Si:2.0〜4.5%
Siは、電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する有用元素であり、この発明では2.0 %以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が4.5 %を超えると冷間圧延が著しく困難になるため、Si含有量の上限を4.5 %とする。
【0020】
Mn:0.01〜0.5%
Mnは、製造時の熱間加工性を向上させる効果がある。この目的のため、この発明では0.01%以上添加する必要がある。しかしながら、0.5 %を超えてMnを含有した場合、一次再結晶集合組織が劣化し、Goss方位に高度に集積した二次再結晶粒が得られず、磁気特性が劣化するため、Mn含有量の上限を0.5%とする。
【0021】
S、SeおよびO:各々50ppm 未満
S、SeおよびOは、いずれも磁気特性を劣化させる成分であることから、これらの成分の含有量を抑制する必要がある。特に、S、SeおよびOのそれぞれの含有量がともに50ppm以上である場合には、二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するため、S、SeおよびOの含有量は各々50ppm 未満に抑制することが必要である。
【0022】
N:60ppm 未満
Nもまた、S、SeおよびOと同様、磁気特性を劣化させる成分であることから、N含有量を抑制する必要がある。特に、N含有量が60ppm以上である場合には、二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するため、N含有量は60ppm 未満に抑制することが必要である。
以上の成分が、鋼スラブ中に含有(添加)あるいは含有抑制が必須の元素であるが、必要に応じて、sol.Al、Sb、Sn、Cuについても、工業的により安定に磁気特性が良好な製品を得る観点から、以下に示す含有量の範囲で鋼スラブ中に適宜添加することができる。
【0023】
Sol.Al: 100ppm 未満
Alは、製鋼において、脱酸のために微量添加(いわゆるアルミキルド)されるが、鋼中のSol.Al含有量が100ppm以上だと、一次再結晶焼鈍時に鋼板表面に形成される酸化膜の緻密性に悪影響を及ぼすので、Sol.Al含有量は100ppm未満に抑制する必要がある。なお、Sol.Alは、20ppm 以上100ppm未満の範囲であれば、一次再結晶焼鈍時に鋼板表面に形成される酸化膜を緻密化し、二次再結晶焼鈍時の窒素の増減を抑制して、二次再結晶粒のゴス方位への集積を向上させ、磁気特性を改善することができる。そのため、Sol.Alは、20ppm 以上の微量含有させることが好ましい。
【0024】
Sb:0.02〜0.30質量%およびSn:0.04〜0.60質量%の一種又は二種を含有し、かつ、SbおよびSnの含有量をそれぞれ[Sb]および[Sn]としたときの[Sb]+1/2[Sn]の値が0.020〜0.30質量%であること
SbおよびSnは、一次再結晶焼鈍時に、鋼板の酸化速度を低減し、Alによる緻密な酸化膜の形成を促進する成分である。したがって、Sb、Snを添加する場合には、上記微量Sol.Alの存在下であることが好ましい。SbおよびSnはいずれも、上記効果を奏する成分であるので、SbおよびSnのいずれか一方だけを含有しても、あるいは、双方を含有してもよい。SbおよびSnの含有量は、上記効果を発揮するため、それぞれ0.30%以下および0.60%以下含有し、かつ、SbおよびSnの含有量をそれぞれ[Sb]および[Sn]としたときの[Sb]+1/2[Sn]の値が0.020〜0.30%であることが好ましい。Sbが0.02%未満であるか、Snが0.04%未満であるか、あるいは、〔Sb〕+1/2〔Sn〕が0.020%未満であると窒素の増減を抑制する効果が不十分になる傾向があり、また、Sbが0.30%超えか、Snが0.60%超えか、〔Sb〕+1/2〔Sn〕が0.30%超えである場合には、冷間圧延性が劣化するので、不経済である。
なお、鋼スラブの原料の一部としてスクラップ等を用いた場合には、Sbを0.02質量%未満およびSnを0.04質量%未満をそれぞれ微量含有する場合があるが、かかる微量のSbおよびSnを含有する場合には、本発明の効果は奏しないものの、害を及ぼすものではないので、不可避的不純物に含めることとする。
【0025】
なお、二次再結晶中のガス切替パターンやガス組成を制御することによっても、二次再結晶焼鈍時の窒素の増減を抑制することは可能であるが、実コイルを用いた工業的規模での生産では、安定性に欠ける。というのは、二次再結晶焼鈍中に、コイルの幅方向や長手方向に、均一な雰囲気を得ることは困難だからである。一方、微量Sol.Alの制御や、Sb、Snの添加は、工業的規模での生産において二次再結晶焼鈍時の窒素の増減を安定的に抑制するために効果的である。
【0026】
Cu:0.06〜0.5%
Cuは二次再結晶焼鈍時に、表面に偏析して窒素の増減を制御する。特にコイルエッジ部での窒素増減の抑制に効果的であり、この点から、0.06〜0.5%の範囲で添加されることが望ましい。Cu含有量が0.06%未満では、コイルエッジ部において、窒素増減を抑制する効果が小さく、0.5%を超えて添加すると、表面に「へげ」と呼ばれる欠陥が生じる。
【0027】
上記成分組成に限定した鋼スラブをスラブ加熱した後、熱間圧延を施す。このスラブ加熱は1050〜1250℃の範囲が望ましい。1250℃を超える高温スラブ加熱は、スラブにインヒビター成分を含まない本発明においては無意味であり、コストアップとなるばかりである。
【0028】
次いで、熱延鋼板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回の冷間圧延あるいは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、最終冷延板とする。冷間圧延は、常温で行っても良いし、あるいは、常温より高い温度、例えば250 ℃程度に上げて圧延する温間圧延としてもよい。
【0029】
その他、上記に代わる方法、たとえばスラブ厚を薄くして熱間圧延を省略、あるいは簡略化するなどの圧延工程を施してもよい。
【0030】
ついで、最終冷間圧延板に一次再結晶焼鈍を施す。一次再結晶焼鈍の第一の目的は、一次再結晶粒径を制御し、二次再結晶温度を800 ℃〜900 ℃とすることである。二次再結晶温度が800 ℃未満であったり、900 ℃越えであったりすると、二次再結晶粒のゴス方位への集積度が劣化し、磁気特性が劣化する。二次再結晶温度を800 ℃から900 ℃に調整するためには、一次再結晶焼鈍後の鋼板における平均結晶粒径を8〜25μmの範囲とする必要がある。一次再結晶焼鈍後の結晶粒径は、一次再結晶焼鈍温度が高くなるほど、また焼鈍時間が長くなるほど大きくなるが、冷延圧下率や冷間圧延前の結晶粒径の影響も受けるので、一次再結晶焼鈍後の結晶粒径が上記の範囲となるように、一次再結晶焼鈍における焼鈍温度および焼鈍時間を設定する。一次再結晶焼鈍の第二の目的は、二次再結晶焼鈍中に窒素の増減変動が起こりにくい表面を得ることである。前述のように、鋼中の微量のSol.Alや、Sb、Sbは、一次再結晶焼鈍中に形成される表面酸化層を緻密化し、窒素の増減変動を小さくするのに有効である。一次再結晶焼鈍の第三の目的は、脱炭である。鋼中の炭素量を50ppm 未満に低減することにより、時効による製品の磁気特性劣化を防ぐことができる。
【0031】
一次再結晶焼鈍後、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤としては、従来から公知のあらゆる焼鈍分離剤が適合する。特に、マグネシアを主剤とし、必要に応じて、チタニア、ストロンチウム化合物、硫化物、塩化物およびほう化物などの添加剤を添加したものを水スラリーとして塗布したものが好適である。その他の焼鈍分離剤としては、シリカやアルミナなどを用いることもできる。
【0032】
その後、二次再結晶焼鈍を行う。二次再結晶焼鈍の第一の目的は、二次再結晶の発現である。二次再結晶により、ゴス方位に集積した結晶粒となり、良好な磁気特性が得られる。このとき、二次再結晶が生じる800 ℃から900 ℃までの昇温過程における昇温速度および窒素増減変動の制御が重要である。
【0033】
この発明では、800℃から900℃への昇温過程における平均昇温速度は0.5〜5℃/hの範囲であることが必要である。800℃から900℃への平均昇温速度が0.5℃/h未満であるか、あるいは、5℃/h超えである場合には、二次再結晶粒のゴス方位への集積が悪くなり、磁気特性が劣化するからである。
【0034】
また、この発明では、二次再結晶焼鈍の昇温過程にて、900 ℃での鋼板窒素量から800 ℃での鋼板窒素量を減じたときの鋼板窒素量差を-10ppm〜+25ppmの範囲とすることが必要である。前記鋼板窒素量差、すなわち、(900℃での鋼中窒素量)−(800℃での鋼中窒素量)が-10ppm未満であるか、+25ppm超えである場合には、二次再結晶粒のゴス方位への集積が悪くなり、磁気特性が劣化するからである。
【0035】
なお、鋼中の窒素を増減変動を抑制するための手段としては、仕上焼鈍時の800〜900℃における、雰囲気ガスの適正化(窒素ガス分圧の増減)、これらガス組成の切り換えパターン、昇温速度(この温度域での滞留時間の増減)の制御によることが好ましい。また、上記鋼板窒素量差は、少なくともコイル幅方向中央部で達成されていれば良いが、全幅で達成されることが好ましい。
【0036】
二次再結晶焼鈍の後、鋼板表面に絶縁被膜を塗布、焼き付けることもできる。絶縁被膜の種類については、特に限定されないが、従来公知のあらゆる絶縁被膜が適合する。たとえば、特開昭50−79442 号公報や特開昭48−39338 号公報に記載されている、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800 ℃程度で焼き付ける方法が好適である。
【0037】
また、平坦化焼鈍により、鋼板の形状を整えることも可能であり、さらには絶縁被膜の焼き付けを兼ねた平坦化焼鈍を行うこともできる。
【0038】
【実施例】
実施例1
C:0.07%、Si:3.5%、Mn:0.05%、Sol.Al:50ppm、N:25ppm、S:10ppm、Se:0.1ppm、O:10ppm、Sb:0.02%、Sn:0.02%、Cu:0.15%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1150℃に加熱後、熱間圧延により板厚2.0 mmの熱延板とした後、1000℃で30秒間の熱延板焼鈍を施した。ついで、冷間圧延により板厚0.30mmとした後、種々の均熱温度にて、均熱時間30秒間の一次再結晶焼鈍を施した。表1に均熱温度と一次再結晶焼鈍後の平均結晶粒径を示す。次に、MgO:95%、TiO2:5%を含有する焼鈍分離剤を水スラリーとし鋼板に塗布し、800℃から900℃までの昇温速度が異なる5種類のヒートパターンのいずれかの条件で二次再結晶焼鈍を行った。二次再結晶焼鈍の各種ヒートパターンについては図1に示す。上記のようにして得られた仕上焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを重量比3:1:3で含有する塗布液を塗布し、800℃で焼き付けた。その後、コイル幅中央部の磁気特性を調査した。磁気特性は、800℃で3時間の歪取焼鈍を行った後、800A/mで励磁したときの磁束密度B8および50Hzで1.7Tまで交流で励磁したときの鉄損W17/50で評価した。得られた結果を表1に併記する。また、二次再結晶焼鈍にて800℃と900℃にそれぞれ到達した時点で焼鈍を中止して、800℃と900 ℃におけるコイル幅中央部での鋼中の窒素含有量をそれぞれ分析すると共に、二次再結晶発現の有無をマクロ組織観察により明らかにした。表中のΔN(ppm)は、(900℃での鋼板窒素量)−(800 ℃の鋼板窒素量)を表す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より明らかなように、二次再結晶焼鈍における800℃から900 ℃までの昇温過程での窒索の増減変動が抑制された条件において、一次再結晶焼鈍後の平均結晶粒径が8〜25μmであって、かつ、二次再結晶焼鈍時の昇温速度が0.5〜5℃/hの範囲であるとき、良好な磁気特性が得られている。
【0041】
実施例2
C:0.015%、Si:3.2%、Mn:0.25%、Sol.Al:15ppm、N:55ppm、S:10ppm、Se:0.1ppm、O:10ppm、Sb:0.01%、Sn:0.001%、Cu:0.01%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブAと、C:0.015 %、Si:3.2 %、Mn:0.25%、Sol.Al:30ppm 、N:55ppm 、S:10ppm 、Se:0.1ppm、O:10ppm 、Sb:0.02%、Sn:0.02%、Cu:0.01%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブBを、1220℃に加熱後、熱間圧延により板厚2.2mmの熱延板とした後、冷間圧延により、板厚1.8mmとした。その後、1050℃で100秒間の中間焼鈍を施した。ついで、冷間圧延により板厚0.23mmとした後、均熱温度880℃、均熱時間30秒間 の条件で一次再結晶焼鈍を施した。一次再結晶焼鈍後の平均結晶粒径は、18μmであった。次に、MgO:95%、SrSO4:5%を含有する焼鈍分離剤を水スラリーとして鋼板に塗布し、800℃から900℃までの昇温過程における、昇温速度を2℃/h(一定)とした上で、炉内雰囲気ガスが異なる5種類のヒートパターンのいずれかの条件で二次再結晶焼鈍を行った。二次再結晶焼鈍の各種ヒートパターンについては図2に示す。上記のようにして得られた仕上焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを重量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃で焼き付けた。その後、コイル幅中央部の磁気特性を調査した。磁気特性は、800℃で3時間の歪取焼鈍を行った後、800A/mで励磁したときの磁束密度B8および50Hzで1.7Tまで交流で励磁したときの鉄損W17/50で評価した。得られた結果を表2に併記する。また、二次再結晶焼鈍にて800℃と900 ℃にそれぞれ到達した時点で焼鈍を中止して、800℃と900 ℃におけるコイル幅中央部での鋼中の窒素含有量をそれぞれ分析すると共に、二次再結晶発現の有無をマクロ組織観察により明らかにした。表中のΔN(ppm)は、(900℃での鋼板窒素量)−(800 ℃の鋼板窒素量)を表す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2より、Sol.Al、Sb、Snの有無に関わらず、(900℃到達時の窒素量)−(800℃到達時の窒素量)が、-10ppm〜+25ppmの範囲の時に良好な磁気特性が得られることがわかる。しかし、微量Sol.Al、Sb、Snを含まない鋼Aにおいて、二次再結晶焼鈍昇温時の窒素の増減は、安定性に欠ける。これは、微量Sol.Al、Sb、Snを含まないとき、緻密な酸化膜が形成されないため、二次再結晶中の窒素の増減変動は、ガス組成、ヒートパターンのみならず、ガスの流れなど工業生産において、不可避的に変動する焼鈍条件の影響を受けやすくなるためである。一方、微量Sol.Alの存在下でSbやSnが添加された鋼Bにおいては、適切なガス組成、ガス切替パターンのもとでは、安定して、窒素の増減変動を抑制することが可能となり、良好な破気特性が安定して得られる。
【0044】
したがって、この発明では、窒素量の増減変動を抑制することが、良好な磁気特性を得るためには必要であるのであって、微量Sol.Alの存在下でSbおよび/またはSnの添加は必ずしも必要ではない。しかし、工業生産においては、微量Sol.Alの存在下でSbおよび/またはSnを添加することが、安定性の点において有利に働く。
【0045】
実施例3
C:0.05%、Si:3.5%、Mn:0.05%、N:35ppm、S:10ppm、Se:0.1ppm、O:10ppm、および表3に示す組成のSol.Al、Sb、Sn、Cuを含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1100℃に加熱した後、熱間圧延により板厚2.0mmの熱延板とした後、950℃で30秒間の熱延板焼鈍を施した。ついで、冷間圧延により板厚0.35mmとした後、一次再結晶焼鈍後の平均粒径が8〜25μmの範囲になるように、均熱温度および均熱時間を調整し、一次再結晶焼鈍を行った。次に、MgO:95%、MgSO4:5%を含有する焼鈍分離剤を水スラリーとして鋼板に塗布し、図2に示すヒートパターンCの条件で二次再結晶焼鈍を行った。上記のようにして得られた仕上焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを重量比4:1:3で含有する塗布液を塗布し、800 ℃で焼き付けた。
【0046】
その後、コイル幅中央部(コイル幅:1000mm)、およびコイル幅端部(具体的には、コイルエッジからコイル幅方向に80mmだけ内側にある部分)の磁気特性をそれぞれ調査した。磁気特性は、800℃で3時間の歪取焼鈍を行った後、800A/mで励磁したときの磁束密度B8および50Hzで1.7Tまで交流で励磁したときの鉄損W17/50で評価した。得られた結果を表3および表4に併記する。また、二次再結晶焼鈍にて800℃と900℃にそれぞれ到達した時点で焼鈍を中止して、800℃と900℃におけるコイル幅中央部およびコイル幅端部での鋼中の窒素含有量をそれぞれ分析すると共に、二次再結晶発現の有無をマクロ組織観察により明らかにした。表中のΔN(ppm)は、(900℃での鋼板窒素量)−(800 ℃の鋼板窒素量)を表す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表3および表4の結果から、Sol.Alが20ppm未満のNo.3-1、および、〔Sb〕+1/2〔Sn〕が0.02%未満のNo.3-4はいずれも、コイル幅中央部においては良好な磁気特性が得られたが、コイル幅端部では、やや磁性が劣化し、歩留まりを落とす結果となった。また、微量Sol.Alの存在下でSbまたはSnが添加されて〔Sb〕+1/2〔Sn〕の値が好適範囲(0.020〜0.30%)であり、Cuを好適範囲(0.06〜0.5%)外である0.05%添加した、No.3-2、3-3および3-5〜3-10は、コイル幅中央部およびコイル幅端部でいずれも良好な磁気特性であった。さらに、微量Sol.Alの存在下でSbまたはSnが添加されて〔Sb〕+1/2〔Sn〕の値が好適範囲(0.020〜0.30%)であり、Cuを好適範囲(0.06〜0.5%)で複合添加した、No.3-11および3-12では、コイル中央部およびコイル幅端部でいずれも、より一層安定して良好な磁気特性が得られた。
【0050】
【発明の効果】
かくして、この発明に従い、鋼スラブにインヒビター成分を有しない方向性電磁鋼板の製造において、(1)一次再結晶焼鈍後の鋼板における結晶粒径を8〜25μmの範囲とすること、(2)二次再結晶焼鈍の昇温過程における、800 ℃から900 ℃までの平均昇温速度を0.5〜5 ℃/hの範囲とすること、および、(3)二次再結晶焼鈍の昇温過程にて、900 ℃での鋼板窒素量から800 ℃での鋼板窒素量を減じたときの鋼板窒素量差を-10ppm〜+25ppmの範囲とすることにより、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造が可能となる。とくに、これを工業的に実施する場合には、微量Sol.Alの存在下でSb、Sn、Cuの適正量の添加が有利に働く。
【0051】
本発明によれば、安価かつ磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を、工業的に安定して製造することが可能となり、その工業的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で行った二次再結晶焼鈍における種々のヒートパターンを示した図である。
【図2】 実施例2で行った二次再結晶焼鈍における種々のヒートパターンを示した図である。
Claims (4)
- C:0.01〜0.08質量%、Si:2.0〜4.5質量%およびMn:0.01〜0.5質量%を含有するとともに、S、SeおよびOを各々50質量ppm 未満、Nを60質量ppm 未満ならびにSol.Alを100質量ppm未満に抑制し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼スラブに、焼鈍および圧延を施して最終板厚の冷間圧延板とした後、一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、
(1)一次再結晶焼鈍後の鋼板における結晶粒径を8〜25μmの範囲とすること、
(2)二次再結晶焼鈍の昇温過程における、800 ℃から900 ℃までの平均昇温速度を0.5〜5 ℃/hの範囲とすること、および、
(3)二次再結晶焼鈍時の800〜900℃における、雰囲気ガスの窒素ガス分圧、前記雰囲気ガスのガス組成の切り換えパターン、昇温速度を制御することにより、二次再結晶焼鈍の昇温過程にて、900 ℃での鋼板窒素量から800 ℃での鋼板窒素量を減じたときの鋼板窒素量差を-10ppm〜+25ppmの範囲とすること、
を特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記鋼スラブは、Sol.Alを20質量ppm以上含有することを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼スラブは、さらにSb:0.02〜0.30質量%およびSn:0.04〜0.60質量%の一種又は二種を含有し、かつ、SbおよびSnの含有量をそれぞれ[Sb]および[Sn]としたときの[Sb]+1/2[Sn]の値が0.020〜0.30質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼スラブは、さらにCu:0.06〜0.5質量%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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