JP4292786B2 - 半導体レーザ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ装置に関し、特に可視域の発光を行う半導体レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体レーザ装置としては、光を出射する半導体結晶素子部と、その半導体結晶素子部を挟むように光の出射方向の前面側および後面側に形成された、いわゆる端面コートと呼ばれる反射共振部とを備え、その反射共振部が光の共振器として機能することで、光の出力効率を向上させるとともに長寿命化を実現可能としたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、半導体レーザ装置としては、AlGaInN系の材料を用いた半導体結晶素子部を備えることで、紫外光や青色光等を放出するものも実現されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。これは、AlGaInN系の材料は、混晶組成を制御することにより、紫外から赤色にわたる直接遷移型のバンドギャップエネルギを持つ結晶が得られ、このエネルギに相当する波長域の発光素子に応用できることによる。
【0004】
このようなAlGaInN系の材料を用いた半導体レーザ装置のうち、特に可視域の発光を行うものは、その半導体レーザ装置と空間変調器とを組み合わせることにより、半導体レーザ装置の単色性を活かした色再現性および色純度の高い画像を表示するディスプレイ装置を実現することが可能となる。なお、空間変調器としては、例えばGLV(Grating Light Valve)を用いることが考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−260777号公報
【特許文献2】
特開平9−219556号公報
【特許文献3】
特開2000−270971号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来における可視域の発光を行う半導体レーザ装置では、例えばAlGaInN系の半導体結晶素子部を備えたものであれば、活性層にGaInN混晶系が用いられる。そのため、混晶中のIn組成を増大させることにより発振波長を長波長化できるが、それに伴って発光準位の不均一幅が増大してしまい、結果として利得スペクトルの波長領域での幅が広がってしまうことになる。つまり、発光する波長を長波長化しようとすると、短波長側のスペクトル成分が広がり、色純度を低下させてしまうおそれがある。また、光出力を上げようとして電流注入量を上げると、発振スペクトルの短波長成分が増大し、これによって色純度が下がる可能性もある。このような色純度の低下は、空間変調器とを組み合わせてディスプレイ装置を構成することを考慮すると非常に好ましくない。さらには、発振スペクトルの短波長成分が増大すると、この余分な短波長成分によって端面劣化が誘起されることも懸念される。
【0007】
そこで、本発明は、可視域の発光を行う場合に色純度の高い発光源として機能することが可能であり、ディスプレイ装置用の光源として用いて好適な半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために案出された半導体レーザ装置である。すなわち、AlGaInN系の材料を用いて形成されて光を出射する半導体結晶素子部と、該半導体結晶素子部を挟むように前記光の出射方向の前面側および後面側に形成された反射共振部とを備え、該反射共振部が前記光の共振器として機能するように構成された半導体レーザ装置において、前面側および後面側のうちの少なくとも一方の反射共振部は、該反射共振部における発振波長の基準値が、前記半導体結晶素子部の構成によって特定される該半導体結晶素子部の発振波長よりも大きく設定されているとともに、該基準値を基準とする該反射共振部における対応波長帯域に該半導体結晶素子部の発振波長よりも短波長成分が属さないように設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成の半導体レーザ装置によれば、反射共振部における発振波長の基準値が、半導体結晶素子部の構成によって特定される該半導体結晶素子部の発振波長よりも大きく設定されている。発振波長の基準値とは、反射共振部が対応する波長帯域の基準となる値、例えば反射共振部が反射することを想定した光の波長の設計値をいう。つまり、反射共振部が対応する波長帯域は、半導体結晶素子部における波長帯域よりも、長波長側にシフトしている。さらに、反射共振部が対応する波長帯域には、半導体結晶素子部の発振波長よりも短波長成分が属さないように設定されている。したがって、例えば半導体結晶素子部での発振スペクトルの短波長成分が増大した場合であっても、その短波長成分が反射共振部が対応する波長帯域には属さないので、反射共振部による共振過程でその短波長成分の発振が抑制される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る半導体レーザ装置について説明する。
【0011】
本実施形態で説明する半導体レーザ装置は、従来のものと略同様に、光を出射する半導体結晶素子部と、その半導体結晶素子部を挟むように光の出射方向の前面側および後面側に形成された反射共振部とを備え、その反射共振部が光の共振器として機能するように構成されたものである。半導体結晶素子部としては、例えばAlGaInN系の材料を用いて形成されたものが考えられる。また、反射共振部としては、例えば半導体結晶素子部のへき開面に形成された誘電体薄膜からなる端面コートが挙げられる。ただし、半導体レーザ装置が面発光タイプのものであれば、反射共振部は、半導体結晶素子部のへき開面に形成されたものではなく、その半導体結晶素子部の積層方向に沿うように積層された分布帰還反射領域(Distributed Bragg Reflector;以下「DBR」と略す。)層であってもよい。
【0012】
ここで、以上のような半導体レーザ装置について具体例を挙げて詳細に説明するのに先立ち、半導体レーザ装置における可視域での発振波長と利得スペクトルとの関係について説明する。図1および図2は、半導体レーザ装置の活性層評価のために行った光励起実験の結果を示す説明図である。なお、光励起実験において、励起光としては窒素分子レーザを用いており、その発振波長は337.1nm、パルス幅は5nsecである。試料は、青色発光を狙った多重量子井戸である(井戸数3個、井戸のIn組成18%)。そして、励起光は、シリンドリカルレンズにより、試料上で幅0.2mmのストライプ上に集光した。また、光共振器の長さは2mmであり、端面コートは行っていない。
【0013】
図1では、試料からの発光の積分発光強度を励起光パワー密度に対してプロットしている。また、図2では、図1中におけるA〜Cの三点に対応する発光スペクトルを示している。これらの図例からも明らかなように、図1中の点Aに相当するスペクトルはピークが一つであるが、励起光パワー密度を上げた点Bでは短波長側に新たにピークが現れ、全部でピークが三つになっている。さらに励起光パワー密度を上げた点Cでは、スペクトルはさらに多峯化しており、点Aの場合に比べてピーク波長が5nm程短波長化しており、短波長成分が増大していることがわかる。
【0014】
この発光スペクトルの形状の変化は、利得スペクトルの形状を反映したものと考えられる。すなわち、励起光パワー密度が増大すると、生成キャリア密度も増大し、混晶の組成揺らぎに起因する不均一幅により、短波長側の利得成分が増大するのである。このようなスペクトル形状の変化からも、発光する波長を長波長化しようとしたり、あるいは光出力を上げようとして電流注入量を上げたりすると、結果として色純度が低下するおそれのあることがわかる。
【0015】
続いて、半導体レーザ装置が光共振器として機能させるために備える反射共振部の反射率について説明する。すなわち、半導体結晶素子部の活性層が上述したような利得スペクトルを持つ場合に、反射共振部を反射ミラーとして機能させて光共振器を構成することを考える。
【0016】
図3は、反射共振部が誘電体多層膜からなる端面コートである場合における反射率の計算結果を示す説明図である。図例は、GaN系で用いられることの多いAl23/TiO2が交互に繰り返し積層された誘電体多層膜について、λ/4の条件で形成した際に得られる反射率を計算したものを示している。なお、光共振器の有効屈折率の値は、その共振器を構成する誘電体多層膜の積層構造に依存するが、ここでは積層構造の繰り返し数を8周期とし、有効屈折率の値を2.43と仮定している。また、共振器で発振させる発振波長(真空中での発振波長)は、青色に対応する450nmとしている。
【0017】
図例に示した計算結果によれば、発振波長を450nmとした誘電体多層膜では、その450nmを略中心付近の波長として、ストップバンドと呼ばれる広い反射帯域が現れていることがわかる。すなわち、450nmの波長を基準とし、その波長を中心とする波長帯域で、入射光に対してある一定以上の反射率が得られる波長帯域が、ストップバンドとして現れている。このストップバンドは、誘電体多層膜を構成する各材料の間でそれぞれの屈折率差を大きくすると現れることがわかっている。
【0018】
したがって、ストップバンドを有する誘電体多層膜を端面コートとして用いた場合には、発振波長である450nmよりも短波長側であっても反射率が「1」に近い帯域が存在することから、例えば上述した発光スペクトルの形状の変化によって450nmよりも短波長側での利得が十分に大きくなると、その短波長側でもレーザ発振が起こり得ることになる。この短波長側でのレーザ発振は、色純度の低下に繋がるものである。
【0019】
このような短波長側でのレーザ発振による色純度の低下を防止するために、本実施形態で説明する半導体レーザ装置は、光共振器として機能する反射共振部に大きな特徴がある。さらに詳しくは、半導体結晶素子部の前後面側に形成された反射共振部のうちの少なくとも一方は、その反射共振部が対応する発振波長の基準値が、半導体結晶素子部が出射する光の波長よりも大きく設定されている点に大きな特徴がある。発振波長の基準値とは、反射共振部が対応する波長帯域の基準となる値、例えば反射コート部が反射することを想定した光の波長の設計値をいう。
【0020】
図4は、本発明に係る半導体レーザ装置における反射共振部(端面コート)の反射率の計算結果の一例を示す説明図である。図例のように、本実施形態で説明する半導体レーザ装置では、反射共振部として機能する半導体結晶素子部前後面の端面コートのうち、少なくとも一方の端面コートにおける発振波長の基準値が、例えば本来対応すべき発振波長である450nmよりも大きく、略510nmに設定されている。つまり、少なくとも一方の端面コートが対応する波長帯域は、半導体結晶素子部における波長帯域よりも長波長側にシフトしている。
【0021】
そのために、少なくとも一方の端面コートでは、510nmを略中心付近の波長としてストップバンドと呼ばれる広い反射帯域が現れても、そのストップバンドの短波長側の下限波長が本来対応すべき発振波長である450nmと略一致しており、その450nm付近から短波長側では反射率が急激に減少している。したがって、例えば発光する波長を長波長化しようとしたり、あるいは光出力を上げようとして電流注入量を上げたりして、半導体結晶素子部での発振スペクトルの短波長成分が増大した場合であっても、その短波長成分は少なくとも一方の端面コートが対応する波長帯域には属さないので、その端面コートによる共振過程でその短波長成分の発振が抑制されることになる。つまり、450nmから短波長側では反射損失が急激に増大するので、その短波長側での波長領域における発振を抑制することが可能になる。
【0022】
なお、波長帯域を長波長側にシフトさせる端面コートは、半導体レーザ装置としての出力を十分に確保する上では、半導体結晶素子部前後面のうちの後面側のみとするのが望ましい。ただし、半導体結晶素子部前後面のうちの前面側のみであっても、あるいは半導体結晶素子部前後面の両側であってもよく、いずれの場合であっても短波長側での波長領域における発振を抑制することは可能である。
【0023】
【実施例】
〔第1実施例〕
次に、以上のような半導体レーザ装置の具体例について説明する。図5は、本発明に係る半導体レーザ装置における積層構造の一例を示す説明図である。ここで説明する半導体レーザ装置は、光を出射する半導体結晶素子部として、図例のような積層構造を備えている。すなわち、例えば発振波長450nmの光を出射すべく、c面サファイヤ基板1上に、GaN第1バッファ層(低温成長)2、GaN第2バッファ層3、n−GaNコンタクト層4、n−AlGaNクラッド層5、n−GaNガイド層6、AlGaInN活性層7、p−GaNガイド層8、AlGaN障壁層9、p−AlGaNクラッド層10およびp−GaNコンタクト層11が順に積層されてなり、さらにはn電極12およびp電極13を有している。この積層構造の詳細については、その成長法や量子井戸の構造パラメータ等を図中に示しているが、いずれも公知技術を利用した従来構造と略同様であるためここではその説明を省略する。また、ここで示した積層構造は、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)成長したGaN層上に形成されたものであっても、あるいはGaN基板上に形成されたものであっても構わない。
【0024】
また、以上のような積層構造の半導体結晶素子部における光の出射方向の前後面側(図示した前面側および背面側)、すなわち半導体結晶素子部のへき開面には、誘電体多層膜からなる端面コートが形成されている(ただし不図示)。そして、これら前後面側の端面コートのうちの少なくとも一方、例えば後面側の端面コートは、上述したように、そのストップバンドが半導体結晶素子部における発振波長である450nmよりも長波長側にシフトしている。
【0025】
ここで、ストップバンドがシフトした端面コートについて詳しく説明する。
【0026】
先ず、端面コートの構成について説明する。ここで説明する端面コートは、複数の屈折率の異なる材料が積層された誘電体多層膜からなるものである。さらに詳しくは、その誘電体多層膜は、二つの屈折率の異なる材料が交互に繰り返し積層されたものである。
【0027】
二つの屈折率の異なる材料としては、例えば高屈折率材料であるTiO2および低屈折率材料であるAl23が挙げられる。ただし、半導体結晶素子部がGaN系であればこれらの材料を用いることが考えられるが、同等の機能を満足するものであれば、例えば高屈折率材料としてZrO2を用い低屈折率材料としてSiO2を用いるといったように、他の材料を用いても構わない。
【0028】
また、二つの屈折率の異なる材料の積層繰り返し数は任意であるが、繰り返し数が少ないとストップバンドの上限波長域および下限波長域における反射率減少の急峻さに欠ける(鈍ってしまう)ので、繰り返し数は多いほうが好ましく、具体的には8周期とすることが考えられる。
【0029】
このような構成の誘電体多層膜は、例えば電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance;ECR)プラズマを用いたスパッタ技術によって成膜することが考えられる。
【0030】
続いて、端面コートにおけるストップバンドのシフト量について詳しく説明する。ここでは、半導体結晶素子部における発振波長(例えば450nm)をλL、端面コートにおけるストップバンドの略中心位置、すなわち端面コートにおける発振波長の基準値(例えば510nm)をλ0として、以下の説明を行う。したがって、λLとλ0との差が、端面コートにおけるストップバンドのシフト量に相当することになる。
【0031】
また、ここでは、端面コートがTiO2およびAl23が交互に繰り返し積層された誘電体多層膜からなる場合を例に挙げ、その誘電体多層膜の各層の厚さをti、同各層における屈折率をniとして、以下の説明を行う。ここで、iは誘電体多層膜の層数によって定まる値(自然数)である。したがって、TiO2とAl23とが積層された誘電体多層膜であれば、TiO2層の厚さはt1、Al23層の厚さはt2となる。また、これと同様に、TiO2層の屈折率はn1、Al23層の屈折率はn2となる。
【0032】
これらtiおよびniの間には、端面コートがλ/4コートであれば、ti=λ/(4ni)の関係が成り立つ(λは端面コートが対応する光の波長)。ただし、ここで、屈折率niは、いずれもその材料によって固有の値を示す。例えば、波長510nmでのn1は2.781、n2は1.647といった具合である。これに対して、層厚tiは、材料等の制約を受けず任意に設定することが可能である。つまり、層厚tiの設定によって、端面コートでは、対応する光の波長を適宜調整することが可能となる。このことから、端面コートにおける発振波長の基準値λ0は、自由に選択し得ることがわかる。
【0033】
ところで、基準値λ0が自由に選択し得るのであれば、その値の大きさ、すなわち半導体結晶素子部の発振波長λLに対するシフト量を、どの程度とすればよいかが問題となる。発振波長λLは、半導体結晶素子部の構成(材料や各層の厚さ等)によって特定される。したがって、その発振波長λLに対するシフト量が明らかになれば、基準値λ0の大きさも特定されることになる。シフト量は、既に説明したように、発振波長λLが与えられたときに、端面コートにおける反射率が発振波長λLの短波長側では急激に減少する、といった条件を満たすものであればよい。
【0034】
一般に、端面コート(誘電体多層膜)における反射率Rは、光の波長λに対する依存性を持つことが知られている。つまり、端面コート(誘電体多層膜)における反射率Rは、その端面コートが対応する光の波長λの関数R(λ)として表される。関数R(λ)は、例えば公知の有効フレネル係数を用い計算して得られる。この解析計算によって、例えば半導体結晶素子部における発振波長(例えば450nm)と端面コートにおける発振波長の基準値が等しい場合、図3に示した計算結果が得られるのである。
【0035】
このような関数R(λ)によって特定される反射率Rを基にすることで、シフト量は、以下のようにして決定することが考えられる。すなわち、シフト量が上述した条件を満たすためには、基準値λ0が発振波長λLよりも大きく設定されている必要がある。すなわち、λ0>λLの関係を満たすことが必要である。
【0036】
さらに、シフト量が上述した条件を満たすためには、基準値λ0を中心値とした波長帯域であるストップバンドの短波長側の下限波長が、発振波長λLと略一致するように設定されている必要がある。ここで、ストップバンドとは、所定値以上の反射率が得られる波長帯域である。このときの所定値は適宜決定すればよいが、例えばλLでの反射率がλ0での反射率の1%落ちに留まるようにするといった意味合いから、所定値を99%とすることが考えられる。このように所定値を決定すれば、関数R(λ)について計算結果からストップバンドの幅も明らかとなり、またそのストップバンドにおける下限波長の値も明らかとなる。したがって、ストップバンドの下限波長値と発振波長λLとを略一致させれば、そのときのストップバンドのシフト量、すなわちシフト後における基準値λ0を導き出せるようになる。つまり、R(λL)/R(λ0)=0.99の関係から、基準値λ0を導き出すのである。
【0037】
具体的には、発振波長λLが450nmである場合に、前述の関係から基準値λ0を導き出すと、その基準値λ0は510nmとなり、またこれを基にしたR(λ0)は図4に示すようになる。このR(λ0)の計算結果を見ても明らかなように、450nmである発振波長λLに対して、基準値λ0を510nmとすれば、端面コートにおける反射率Rが発振波長λLよりも短波長側では急激に減少することになる。したがって、半導体結晶素子部での発振スペクトルの短波長成分が増大した場合であっても、その短波長成分についての発振が抑制されることになり、発振スペクトルの低波長側への広がりを防いで色純度の高い発光源を得ることができるのである。
【0038】
なお、ここでは、発振波長λLが450nmである場合を例に挙げたが、他の波長(色成分)に対応する場合であっても、全く同様の手順で基準値λ0を導き出すことが可能である。また、ここでは、基準値λ0を導き出すのに用いたストップバンドの下限波長値が、99%以上の反射率が得られる波長帯域の下限波長値である場合を例に挙げたが、その反射率の値(所定値)は、予め設定された値であり、かつ、関数R(λ)の計算結果が急激に変化する変化点近傍における値であれば、他の値であっても良いことは勿論である。さらに、ここで説明した手順は一例に過ぎず、上述した条件を満たせば、他の手順で基準値λ0を導き出しても構わない。
【0039】
このようにして基準値λ0の値がわかれば、端面コートでは、上述したようにti=λ/(4ni)の関係が成り立つことから、その基準値λ0と、端面コートを構成するTiO2層およびAl23層の各厚さt1,t2と各屈折率n1,n2が、t1=λ0/(4n1)、t2=λ0/(4n2)の関係を満たすことになる。つまり、基準値λ0が明らかになれば、TiO2層の厚さt1およびAl23層の厚さt2を特定できるようになる。また、これとは逆に、TiO2層の厚さt1およびAl23層の厚さt2が明らかになれば、基準値λ0を特定できるようになる。具体的には、本実施例の場合、例えばt1=45.8nm、t2=77.4nmとなる。
【0040】
〔第2実施例〕
次に、半導体レーザ装置の他の具体例について説明する。第1実施例では端面発光型の半導体レーザ装置について説明したが、ここでは面発光型の半導体レーザ装置について説明する。図6は、本発明に係る半導体レーザ装置における積層構造の他の例を示す説明図である。ここで説明する半導体レーザ装置は、図例のような積層構造を備えている。すなわち、例えば発振波長450nmの光を出射すべく、c面サファイヤ基板21上に、GaN第1バッファ層(低温成長)22、GaN第2バッファ層23、n−GaNコンタクト層24、n−DBR層25、n−GaN層26、AlGaInN活性層27、p−GaN層28、p−DBR層29、SiO2絶縁層30およびp−GaNコンタクト層31が順に積層されてなり、さらにはn電極32およびp電極33を有している。
【0041】
この積層構造は、n−DBR層25およびp−DBR層29が上述した第1実施例の場合と異なる。なお、p−GaNコンタクト層31は、SiO2絶縁層30をマスクとして再成長して形成すればよい。また、c面サファイヤ基板21の代わりにGaN基板を用い、基板裏面からnコンタクトをとってもよい。その際、低温成長層は不要である。その他の点については、第1実施例の場合と略同様なので、ここではその説明を省略する。
【0042】
n−DBR層25およびp−DBR層29は、第1実施例における端面コートと同様に反射共振部としての機能を有する層である。すなわち、ここで説明する半導体レーザ装置は、面発光型のものであるため、端面コートを備えておらず、光の出射方向の前面側および後面側に形成されたn−DBR層25およびp−DBR層29が、光の共振器として機能するように構成されている。
【0043】
そして、これらn−DBR層25およびp−DBR層29のうちの少なくとも一方、望ましくは光の出射方向の後面側に位置するn−DBR層25は、屈折率が異なる複数の層からなるもので、例えば二つの混晶組成の異なるAlGaInN層からなる。二つの混晶組成の異なるAlGaInN層としては、例えばAl0.38Ga0.62N/Ga0.85In0.15Nが挙げられる。これらの層の積層繰り返し数は、反射率減少の急峻さを確保するために、例えば20周期とすることが考えられる。また、例えばAl0.12Ga0.88N/Al0.01Ga0.99Nで形成するようにしてもよい。
【0044】
このようなAlGaInN層においても、そのAlGaInN層におけるストップバンドが発振波長λLよりも長波長側にシフトしている点は、第1実施例の場合と略同様である。ここで、このストップバンドのシフト量について詳しく説明する。
【0045】
ここでは、n−DBR層25がAl0.38Ga0.62N/Ga0.85In0.15Nといった二つの混晶組成の異なるAlGaInN層からなる場合を例に挙げ、各層の厚さをti、同各層における屈折率をniとして、以下の説明を行う。したがって、Al0.38Ga0.62N膜の部分の厚さはt1、Ga0.85In0.15N膜の部分の厚さはt2となる。また、これと同様に、Al0.38Ga0.62N膜の部分の屈折率はn1、Ga0.85In0.15N膜の部分の屈折率はn2となる。なお、屈折率niは固有値であるが、例えば波長460nmでのn1は2.333、n2は2.700となる。
【0046】
これらtiおよびniの間においても、ti=λ/(4ni)の関係が成り立つ。また、n−DBR層25における反射率Rは、そのn−DBR層25が対応する光の波長λの関数R(λ)として表される。これらの点は第1実施例の場合と同様である。したがって、n−DBR層25についても、第1実施例と同様に手順で、λ0>λLの関係を満たし、かつ、R(λL)/R(λ0)=0.99の関係を満たすように、基準値λ0を導き出せば、発振波長λLが450nmである場合には、その基準値λ0は460nmとなる。
【0047】
図7は、本発明に係る半導体レーザ装置における反射共振部(DBR層)の反射率の計算結果の一例を示す説明図である。図例に示したR(λ)の計算結果を見ても明らかなように、450nmである発振波長λLに対して、基準値λ0を460nmとすれば、n−DBR層25における反射率Rが発振波長λLよりも短波長側では急激に減少することになる。したがって、発振スペクトルの短波長成分が増大した場合であっても、その短波長成分についての発振が抑制されることになり、発振スペクトルの低波長側への広がりを防いで色純度の高い発光源を得ることができるのである。
【0048】
このようにして基準値λ0の値がわかれば、n−DBR層25では、上述したようにti=λ/(4ni)の関係が成り立つことから、その基準値λ0と、n−DBR層25を構成するAl0.38Ga0.62N膜およびGa0.85In0.15N膜の各厚さt1,t2と各屈折率n1,n2が、t1=λ0/(4n1)、t2=λ0/(4n2)の関係を満たすことになる。つまり、基準値λ0が明らかになれば、Al0.38Ga0.62N膜の厚さt1およびGa0.85In0.15N膜の厚さt2を特定できるようになる。また、これとは逆に、Al0.38Ga0.62N膜の厚さt1およびGa0.85In0.15N膜の厚さt2が明らかになれば、基準値λ0を特定できるようになる。具体的には、本実施例の場合、例えばt1=49.3nm、t2=42.6nmとなる。
【0049】
なお、上述した実施の形態、並びに第1実施例および第2実施例では、本発明をその好適な具体例により説明したが、本発明がこれらに限定されないことは勿論である。特に、第1実施例および第2実施例で説明した材料や膜厚等は一具体例に過ぎない。
【0050】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る半導体レーザ装置によれば、反射共振部における発振波長の基準値が、半導体結晶素子部の出射する光の波長よりも大きく設定されているため、半導体結晶素子部での発振スペクトルの短波長成分が増大した場合であっても、反射共振部による共振過程でその短波長成分の発振が抑制される。したがって、発振スペクトルが従来よりも単色化し、色純度の高い発光源として機能することになるので、可視域の発光を行う場合に高い色再現性を得ることができ、ディスプレイ装置用の光源として用いて非常に好適なものとなる。さらには、発振スペクトルの短波長成分が増大しても、余分な短波長成分が抑制され、これに伴って半導体結晶素子部における活性層や反射共振部等での光吸収も抑制されるので、端面劣化が誘起されることもなく、半導体レーザ装置としての信頼性を高めることができる。このことは、特に活性層中のIn組成が大きいほど有効である。発光準位の不均一幅が大きくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体レーザ装置の活性層評価のために行った光励起実験の結果を示す説明図であり、試料からの発光の積分発光強度を励起光パワー密度に対してプロットした図である。
【図2】半導体レーザ装置の活性層評価のために行った光励起実験の結果を示す説明図であり、図1中におけるA〜Cの三点に対応する発光スペクトルを示した図である。
【図3】反射共振部が誘電体多層膜からなる端面コートである場合における反射率の計算結果を示す説明図である。
【図4】本発明に係る半導体レーザ装置における反射共振部(端面コート)の反射率の計算結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る半導体レーザ装置における積層構造の一例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る半導体レーザ装置における積層構造の他の例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る半導体レーザ装置における反射共振部(DBR層)の反射率の計算結果の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1,21…c面サファイヤ基板、2,22…GaN第1バッファ層(低温成長)、3,23…GaN第2バッファ層、4,24…n−GaNコンタクト層、5…n−AlGaNクラッド層、6,26…n−GaN層、7,27…AlGaInN活性層、8,28…p−GaN層、9…AlGaN障壁層、10…p−AlGaNクラッド層、11,31…p−GaNコンタクト層、12,32…n電極、13,33…p電極、25…n−DBR層、29…p−DBR層、30…SiO2絶縁層

Claims (6)

  1. AlGaInN系の材料を用いて形成されて光を出射する半導体結晶素子部と、該半導体結晶素子部を挟むように前記光の出射方向の前面側および後面側に形成された反射共振部とを備え、該反射共振部が前記光の共振器として機能するように構成された半導体レーザ装置において、
    前面側および後面側のうちの少なくとも一方の反射共振部は、該反射共振部における発振波長の基準値が、前記半導体結晶素子部の構成によって特定される該半導体結晶素子部の発振波長よりも大きく設定されているとともに、該基準値を基準とする該反射共振部における対応波長帯域に該半導体結晶素子部の発振波長よりも短波長成分が属さないように設定されている
    ことを特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 前記少なくとも一方の反射共振部は、前記基準値を中心値とする波長帯域で、入射光に対して所定値以上の反射率が得られる波長帯域であるストップバンドを有しており、該ストップバンドの短波長側の下限波長が前記半導体結晶素子部の出射する光の波長と一致するように構成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記少なくとも一方の反射コート部は、屈折率が異なる複数の層からなる
    ことを特徴とする請求項2記載の半導体レーザ装置。
  4. 前記少なくとも一方の反射共振部は、これを構成する各層の厚さtiおよび屈折率niと、前記基準値λ0とが、ti=λ0/(4ni)(iは層数によって定まる値)の関係を満たす
    ことを特徴とする請求項3記載の半導体レーザ装置。
  5. 前記反射共振部は、異なる材料が交互に繰り返し積層された誘電体多層膜からなる端面コートである
    ことを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ装置。
  6. 前記反射共振部は、混晶組成の異なる層が積層された分布帰還反射領域層ある
    ことを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ装置。
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