JP5633289B2 - 半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置 - Google Patents

半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置 Download PDF

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Description

本発明は、半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置に関し、より詳細にはスペックルノイズを低減する半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置に関するものである。
半導体レーザ素子を光源に用いたレーザディスプレイ装置は、高輝度・高精細に加え、小型・軽量で且つ低消費電力といった特長があり、近年、レーザリアプロジェクションテレビや携帯電話等に搭載可能な小型レーザプロジェクタ等が製品化され、注目を集めている。このようなレーザディスプレイ装置において、現在、スペックルノイズが映像画質を劣化させる大きな要因となっている。このスペックルノイズは、レーザ光の可干渉性(コヒーレンス)が高いために、レーザ照射面において散乱光が干渉し合って生じる現象であり、レーザ光の可干渉性を低下させることで低減することが可能である。
例えば特許文献1には、レーザ光の射出方向(軸方向)に延在する単一帯状の発光領域をなすレーザ構造と、この発光領域に対応した領域に軸方向に垂直な方向に分離されて設けられた帯状の複数の電極と、を有する半導体レーザ素子と、各電極にパルス電流を独立に供給する駆動回路と、を備えた半導体レーザ装置が提案されており、このような半導体レーザ装置によれば、半導体レーザ素子の出射側の端面の各電極に対応した領域からレーザ光が外部に出射され、発光パターンがパルス電流の印加状況に応じて時々刻々変化するので、時間コヒーレンスを低下させてスペックルノイズを低減できると記載されている。
また、例えば特許文献2には、半導体レーザ素子のp電極又はn電極の一方がストライプ方向に電気的に2領域以上に分離され、この分離された電極の少なくとも1つに逆バイアス電圧を印加して、半導体レーザ素子を自励発振させることにより、可干渉性を下げ、光ディスクシステムの戻り光雑音を低減することが記載されている。
特開2007−035940号公報 特開2004−186678号公報
しかしながら、特許文献1に記載された半導体レーザ装置では、帯状の発光領域の幅が広いため、横モードが高次化して動作が不安定になりやすく、また分離された各電極に対応した発光領域における発振波長等の発振条件が近似しているため、レーザ光の可干渉性を十分に低下させることができず、スペックルノイズの低減効果が小さいという問題がある。また、スペックルノイズを低減するためには、光ディスクシステムの戻り光雑音を低減するのに比べて、レーザ光の可干渉性を大きく低下させる必要があり、特許文献2に記載された半導体レーザ素子の駆動方法においても、スペックルノイズを低減できない虞がある。
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、スペックルノイズを低減することが可能な半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体レーザ素子の駆動方法は、p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、前記p側電極及びn側電極の少なくとも一方が前記光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子の駆動方法であって、発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極を周期的に切り替えるとともに、前記順方向電圧を印加する小片電極以外の前記小片電極の少なくとも1つに、該半導体レーザ素子が自励発振可能な逆方向電圧を印加する、又は発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極の数を周期的に変えることを特徴とする。
また、本発明に係る半導体レーザ装置は、p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、前記p側電極及びn側電極の少なくとも一方が前記光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子と、発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極を周期的に切り替えるとともに、前記順方向電圧を印加する小片電極以外の前記小片電極の少なくとも1つに、該半導体レーザ素子が自励発振可能な逆方向電圧を印加する、又は発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極の数を周期的に変える駆動装置と、を備えることを特徴とする。

本発明によれば、p側電極及びn側電極の少なくとも一方がストライプ状の光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子を、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を周期的に切り替えて又はその小片電極の数を周期的に変えて駆動することにより、各小片電極への電圧の印加状態に応じて発振効率が変化し、発振波長範囲を広げることが可能であるため、出射レーザ光の可干渉性を低下させ、スペックルノイズを低減することができる。
本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子の概略上面図(a)と、そのA−A断面における概略断面図(b)と、そのB−B断面における概略断面図(c)である。 本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子の駆動方法を説明する概略断面図(a)〜(c)である。 本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子の駆動条件の一例を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子の発振波長の一例を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子の概略上面図(a)と、そのC−C断面における概略断面図(b)と、そのD−D断面における概略断面図(c)である。 本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子の駆動条件の一例を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ素子及びその駆動条件の一例を各々示す概略上面図(a)とグラフ(b)である。
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに限定しない。特に、以下に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
本発明に係る半導体レーザ素子は、p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、p側電極及びn側電極の少なくとも一方は、光導波路の長手方向(延在する方向)に分離された複数の小片電極からなっている。なお、半導体レーザ素子の光導波路の長手方向において、主として利用されるレーザ光が出射される側つまり出射側を「前方」とし、その反対側つまり反射側を「後方」とする。また、半導体レーザ素子の各構成の長さの表現については、光導波路の長手方向に平行な方向の長さを単に「長さ」とし、光導波路の長手方向及び厚さ方向に垂直な方向つまり短手方向の長さを「幅」として記載する。また、各小片電極に投入する電力を電圧により定義しているが、電流により定義することもできる。さらに、電圧・電流のバイアスは、「順方向」を+(>0)、「逆方向」を−(<0)として記載する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子100の概略図であって、図1(a)はその概略上面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図であり、図1(c)は図1(a)におけるB−B断面を拡大して示す概略断面図である。なお、図1(b)では、半導体レーザ素子100と、この半導体レーザ素子を駆動する駆動装置500と、を備える半導体レーザ装置として記載している。
図1に示す例の半導体レーザ素子100は、基板10上に、n型半導体層21、活性層22、p型半導体層23がこの順に積層された半導体積層構造を成し、p型半導体層に設けられた、素子の前方から後方に延在するストライプ状のリッジによって活性層22内に光導波路24が形成され、半導体素子構造20を構成している。このリッジの両側面及び該リッジの両側のp型半導体層の上面には絶縁性の埋込膜25が設けられ、その上にp側電極が設けられている。基板10はn型の導電性を有し、この基板10の下面に単一のn側電極40が設けられている。また、半導体積層構造の側面には、保護膜として絶縁膜26が設けられている。なお、図示はしていないが、この半導体レーザ素子100において、共振器を構成する一対の反射鏡は、該半導体レーザ素子の前方及び後方の両端面に設けられている。
また、半導体レーザ素子100において、p側電極は、光導波路24の長手方向に間隔dで互いに分離された2つの小片電極301,302からなっており、各小片電極の長さL,Lは、互いに略同じである。また、この小片電極301,302は各々、リッジの上面を被覆するストライプ状のオーミック電極31と、更にそれを被覆するパッド電極32と、により構成されている。
この半導体レーザ素子100は、n側電極40が任意でサブマウント等を介してステムに接続され、各小片電極301,302がステムの端子とワイヤー45により各々接続される。さらに、このように半導体レーザ素子100が実装されたステムが駆動装置500の配線基板に実装され、半導体レーザ装置を構成する。以上のような構成により、各小片電極301,302へ印加する電圧を独立に制御して、半導体レーザ素子100を駆動することができる。なお以下、本実施の形態1で示す半導体レーザ素子の駆動方法は、n側電極を複数の小片電極で構成する場合にも適用可能である。
ここで、一般に、スペックルノイズ量は、平均光量とスペックルノイズのコントラストとの比cで表される。また、スペックルノイズと波長との関係は、以下の関係式で表現される。
Figure 0005633289
Δλ,λは各々、半導体レーザ素子の発振波長幅、中心波長であり、θはレーザ照射面の表面粗さである。このように、スペックルノイズは、半導体レーザ素子の発振波長幅に依存しており、発振波長幅を広げることにより低減することができる。また、発振波長を時間的に変化させて半導体レーザ素子を発振させること等により発振波長範囲が広がり、発振波長幅を広げるのと同様にスペックルノイズを低減することができる。
そして、本発明では、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を周期的に切り替えて、又は発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極の数を周期的に変えて、半導体レーザ素子を駆動する。このように半導体レーザ素子を駆動することで、半導体レーザ素子の活性層において利得領域の位置や大きさが、各小片電極への電圧の印加状態に応じて変化する。これにより、活性層における利得領域の位置、大きさに依存して発振効率が変化し、その発振効率の変化に伴って発振波長が変わるため、発振波長範囲を広げることができる。したがって、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の可干渉性を低下させ、スペックルノイズを低減することができる。なお、発振閾値は、電圧を印加する小片電極又はその数によって変化するが、ここでいう「発振閾値」とは、電圧を印加する小片電極又はその数に関わらず、全ての小片電極への印加電圧を総合して、半導体レーザ素子のレーザ発振が開始する閾値として定義されるものとする。
図2(a)〜(c)は、実施の形態1の半導体レーザ素子100の駆動方法を説明する概略断面図である。まず、図2(a)は、前方の小片電極301と後方の小片電極302の両方に発振閾値以上の順方向電圧V,Vを印加する場合を示すものである。この場合には、活性層22の前方及び後方の小片電極下の両領域が利得領域28となる。すなわち、活性層22の略全域が利得領域となり、発振効率が最も高く、温度上昇が比較的抑えられるため、発振波長は最も短くなる。このときの中心波長をλ[nm]とする。なお、利得領域28は、その領域内で利得を生じ誘導放出による光増幅が可能な領域である。
次に、図2(b)は、前方の小片電極301に印加する電圧Vを発振閾値以上の順方向電圧とし、後方の小片電極302に印加する電圧Vを発振閾値未満の電圧とする場合を示すものである。この場合には、活性層22の前方の小片電極下の領域が利得領域28となり、他方活性層22の後方の小片電極下の領域は光吸収領域29となる。すなわち、活性層22内でレーザ発振に寄与する領域は、主として前方の利得領域28のみとなる。ここで、光吸収領域29は、光を吸収し光損失を生じる領域であって、吸収した光エネルギーの多くを熱エネルギーとして放出する。このため、光吸収領域29が活性層22内に設けられると、投入電力のうちレーザ発振に寄与する割合つまり発振効率は、活性層22の略全域を利得領域28とする場合に比べ低下する。したがって、図2(a)に示す場合に比べ、活性層22における発熱が増大し温度上昇が大きく、バンドギャップエネルギーが小さくなり、このときの中心波長λ[nm]はλより長波長側にシフトする。なお、小片電極に発振閾値未満の電圧を印加するとは、小片電極への印加電圧を約0V、または無バイアスとすることを含むものとする。
さらに、図2(c)は、後方の小片電極302に印加する電圧Vを発振閾値以上の順方向電圧とし、前方の小片電極301に印加する電圧Vを発振閾値未満の電圧とする場合を示すものである。この場合には、活性層22の後方の小片電極下の領域が利得領域28となり、他方活性層22の前方の小片電極下の領域は光吸収領域29となる。すなわち、活性層22内でレーザ発振に寄与する領域は、主として後方の利得領域28のみとなる。したがって、この場合も、図2(a)に示す場合に比べ、活性層22における発熱が増大し温度上昇が大きく、バンドギャップエネルギーが小さくなり、このときの中心波長λ[nm]はλより長波長側にシフトする。
以上のように、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極の数を変えることによって、発振効率を変化させ、発振波長を変えることができる。したがって、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極の数を周期的に変えて半導体レーザ素子を駆動することにより、発振波長範囲を拡大させ、出射レーザ光の可干渉性を低下させることができる。なお、全ての小片電極への印加電圧が一時的に発振閾値未満となる期間、言い換えれば、発振閾値以上の順方向電圧が印加される小片電極の数が一時的に零になる期間を含んでもよい。
また、図2(b)に示す電圧の印加状態と、図2(c)に示す電圧の印加状態と、においても発振効率は異なり、中心波長λとλは相違する。これは、半導体レーザ素子の共振器を構成する一対の反射鏡の反射率は、通常、前方よりも後方のほうが高くなっており、それにより活性層の前方側と後方側では利得と損失の生じ方が異なるためであると考えられる。特に、図2(b)に示す活性層の前方側を利得領域とし後方側を光吸収領域とする場合のほうが、図2(c)に示す活性層の後方側を利得領域とし前方側を光吸収領域とする場合より、発振効率が低く、発振波長が長くなりやすい。
したがって、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を切り替えることによって、発振効率を変化させ、発振波長を変えることができる。すなわち、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を周期的に切り替えて半導体レーザ素子を駆動することにより、発振波長範囲を拡大させ、出射レーザ光の可干渉性を低下させることができる。
なお、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極以外の小片電極、例えば図2(b)に示す例では後方の小片電極302、また図2(c)に示す例では前方の小片電極301に、逆方向電圧を印加してもよい。小片電極に逆方向電圧を印加すると、活性層のその小片電極下の領域を可飽和吸収領域とすることができ、半導体レーザ素子を自励発振させることができる。この自励発振は、パルセーションとも呼ばれる自己パルス発振であり、通常の連続発振に比べて発振波長範囲が拡大するため、出射レーザ光の可干渉性を低下させることができる。このように、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極以外の小片電極の少なくとも1つに、該半導体レーザ素子が自励発振可能な逆方向電圧を印加することは非常に好ましい。なお、後述するように、この自励発振時の中心波長は、λ及びλより更に長波長側にシフトする傾向がある。
また、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を切り替える又はその数を変える周波数(以下、「発振切り替え周波数」と呼称する場合がある)は、レーザディスプレイ装置であれば光変調周波数又は垂直同期周波数(リフレッシュレート)よりも十分に高く、レーザ露光装置であれば露光時間の逆数よりも十分に高く、することが好ましい。より具体的には、上記光変調周波数や垂直同期周波数、又は露光時間の逆数に対し2倍以上、好ましくは5倍以上高く設定することでスペックルノイズを実質的に低減することができる。例えば、発振切り替え周波数は、60Hz以上1GHz以下であることが好ましい。より具体的には、レーザディスプレイ装置において、上記垂直同期周波数よりも発振切り替え周波数を高くするのであれば60Hz以上1GHz以下、より好ましくは120Hz以上800MHz以下とし、上記光変調周波数よりも発振切り替え周波数を高くするのであれば1MHz以上1GHz以下、より好ましくは100MHz以上800MHz以下に設定するのがよい。
図3は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子の駆動条件の一例を示すグラフである。図3に示すように、実施の形態1では、前方の小片電極301と、後方の小片電極302と、に発振閾値を跨いで一定の周期Tで振動する略矩形波状の電圧を各々印加して、半導体レーザ素子100を駆動する。なお、上述の発振切り替え周波数は、このような印加電圧の周期の逆数に相当するものとする。
まず、図3に示す区間(p)では、前方の小片電極301に発振閾値以上の順方向電圧が印加され、後方の小片電極302に該半導体レーザ素子100が自励発振可能な逆方向電圧が印加されている。したがって、この区間(p)では、活性層22の前方の小片電極301下の領域が利得領域となり、後方の小片電極302下の領域が可飽和吸収領域となって、半導体レーザ素子100は自励発振する。一方、図3に示す区間(q)では、後方の小片電極302に発振閾値以上の順方向電圧が印加され、前方の小片電極301には発振閾値未満の電圧が印加されている。したがって、この区間(q)では、活性層22の後方の小片電極下の領域が利得領域となり、前方の小片電極301下の領域が光吸収領域となって、半導体レーザ素子100は連続発振する。なお、ここでは、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極以外の小片電極(ここでは前方の小片電極301)に印加する電圧を約0Vとしているが、これに限定されず、可飽和吸収が抑制され連続発振が可能な程度の順方向又は逆方向電圧としてもよい。以上のように、発振閾値以上の順方向電圧が印加される小片電極は、区間(p)と(q)で、前方の小片電極301から後方の小片電極302に切り替わっており、このような区間(p)と(q)が周期的に繰り返されるようになっている。このように、半導体レーザ素子が連続発振と自励発振の両方を断続的に含んで発振するように、更には連続発振と自励発振を交互に繰り返すように、逆方向電圧を小片電極に断続的に印加することが好ましい。後述のように、自励発振時の中心波長は、連続発振時より長波長側にシフトする傾向があるため、連続発振時と自励発振時の両発振波長を含むことで、発振波長範囲を拡大させやすい。
図4は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子100の発振波長の一例を示すグラフである。なお、これは、光スペクトラムアナライザの実観測波形を示すものであり、発振切り替え周波数がサンプリング周波数より高いため、複数回の発振切り替えを含んでいる。図4に示すように、本発明の半導体レーザ素子の駆動方法によれば、発振波長に複数の波長帯(ピーク)を有するレーザ発振を生じさせることができる。より詳細には、図4に示す第1の発振波長帯(P)は図3に示す区間(p)に対応し、また図4に示す第2の発振波長帯(Q)は図3に示す区間(q)に対応している。このように、区間(p)の電圧印加状態に対応する自励発振時の中心波長は、区間(q)の電圧印加状態に対応する連続発振時の中心波長に比べて長波長側にシフトする。
また、図4に示す発振波長帯(P)と(Q)の間には、もう1つ別の発振波長帯(R)が存在している。この第3の発振波長帯(R)は、図3に示す区間(p)と(q)の間の区間に対応している。この区間では、前方の小片電極301に印加する電圧が上昇中である時に後方の小片電極302に印加する電圧が降下中となっている、或いは逆に前方の小片電極301に印加する電圧が降下中である時に後方の小片電極302に印加する電圧が上昇中となっている。このように、小片電極のうちの第1の小片電極に印加する電圧は、発振閾値を跨いで振動し、少なくとも一時的に、第1の小片電極に印加する電圧が上昇中である時に、第2の小片電極に印加する電圧が降下中であることが好ましい。このような第3の発振波長帯を更に発現させることにより、出射レーザ光の可干渉性をより低下させることができる。このように印加電圧が急激に上昇・降下する区間は、キャリアと光の相互関係が過渡的に変化する期間であり、このような区間で生じる緩和振動を有効に利用することで、発振波長を更に多重できる。なお、緩和振動を有効に利用するためには、電圧の立ち上がり速度が、例えば1ns(ナノ秒)以上50ns以下、好ましくは10ns以上15ns以下であることが好ましい。スペックルノイズは、発振波長範囲を広げることで効果的に低減できるが、範囲を広げるだけではなくその範囲内で発振する波長を多くすることでも低減することが可能である。簡潔に説明するならば、発振波長範囲を広げることで、スペックルノイズでの強め合う光の位置が変化し、その範囲内で発振波長を多くすることでスペックルノイズの強め合う光の数が前述の変化した光の位置の範囲で増えるためより効果的な低減が可能となる。
<実施の形態2>
本発明では、半導体レーザ素子の活性層を各小片電極に対応して複数の領域に区分し、その各領域における利得と損失を独立に制御することによって、発振効率を変化させる。このとき、発振効率は活性層の各領域の位置や大きさに依存して変化するため、小片電極の数や長さを調整することによって、発振波長を制御することが可能である。
図5は、実施の形態2に係る半導体レーザ素子110の概略図であって、図5(a)はその概略上面図であり、図5(b)は図5(a)におけるC−C断面を示す概略断面図であり、図5(c)は図5(a)におけるD−D断面を拡大して示す概略断面図である。なお、図5(b)では、半導体レーザ素子110と、この半導体レーザ素子を駆動する駆動装置500と、を備える半導体レーザ装置として記載している。
図5に示す例の半導体レーザ素子110において、p側及びn側電極を除く他の構成については実施の形態1と実質上同様であるので、同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。半導体レーザ素子110において、n側電極は、光導波路24の長手方向に間隔dで互いに分離された2つの小片電極401,402からなっており、p側電極30は単一の電極からなっている。そして、この半導体レーザ素子110は、p側電極30がサブマウント46を介してステムに接続され、各小片電極401,402がステムの端子とワイヤー45により各々接続される。さらに、このように半導体レーザ素子110が実装されたステムが駆動装置500の配線基板に実装され、半導体レーザ装置を構成する。このように、n側電極を複数の小片電極で構成する場合においても、各小片電極401,402へ印加する電圧を独立に制御して、半導体レーザ素子110を駆動することができる。なお以下、本実施の形態2で示す半導体レーザ素子の駆動方法は、p側電極を複数の小片電極で構成する場合にも適用可能である。
また、半導体レーザ素子110では、前方の小片電極401と後方の小片電極402各々の長さL,Lは互いに異なっている。このように、互いに長さの異なる小片電極が設けられる場合、長い小片電極であるほど、活性層内の広範な領域における利得と損失を制御可能であり、その小片電極への電圧印加状態が発振効率に大きく影響することになる。なお、小片電極を2つとする場合、後方の小片電極に対する前方の小片電極の長さの比(L/L)は、発振閾値の上昇を考慮して、例えば0.25以上4以下、好ましくは0.5以上2以下の範囲とする。特に本例のように、後方側の小片電極が前方側の小片電極より長いことによって、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を切り替えた時、各電圧印加状態における発振波長の差が大きくなり、発振波長範囲を拡大しやすい。
図6は、実施の形態2に係る半導体レーザ素子の駆動条件の一例を示すグラフである。実施の形態2では、前方の小片電極401には発振閾値以上の電圧値で振動する順方向電圧を印加し、後方の小片電極402には発振閾値を跨いで振動する電圧を各々印加して、半導体レーザ素子110を駆動する。特に本例では、各小片電極401,402に印加する電圧は各々、一定の周期Tを有する略矩形波状であって、互いに略逆位相となっている。
まず、図6に示す区間(g)では、前方の小片電極401及び後方の小片電極402の両方に、発振閾値以上の順方向電圧が印加されている。このとき、活性層の略全域が利得領域となって、半導体レーザ素子110は連続発振する。他方、図6に示す区間(h)では、前方の小片電極401に発振閾値以上の順方向電圧が印加され、後方の小片電極402への印加電圧は約0Vとなっている。このとき、活性層の前方の小片電極401下に形成される利得領域によって、半導体レーザ素子110は連続発振する。以上のように、発振閾値以上の順方向電圧が印加される小片電極の数は、区間(g)と(h)で、両小片電極401,402の2つから前方の小片電極401のみの1つに変わっており、このような区間(g)と(h)が周期的に繰り返されるようになっている。このように、小片電極への印加電圧は、逆方向電圧を利用せず、無バイアス又は順方向電圧としてもよい。また、各小片電極への印加電圧の電圧値は、各小片電極への電圧印加状態の変化に伴う光出力の変化が最小となるように調整されることが好ましい。
さらに、前方の小片電極401への印加電圧には、高周波信号が重畳されている。このように、小片電極に印加される電圧は、発振閾値以上の順方向電圧を印加する小片電極を切り替える又はその数を変える周波数より高い周波数の高周波信号が重畳されていてもよい。小片電極への印加電圧に発振切り替え周波数よりも高い周波数の信号を重畳することで、発振波長を更に多重できるので、出射レーザ光の可干渉性をいっそう低下させることができる。ここで、重畳する高周波信号の周波数は、発振切り替え周波数の2倍以上、好ましくは5倍以上の周波数に設定する。例えば、小片電極に振幅−1.0V〜6.0V、周波数1MHz以上100MH以下、好ましくは5MHz以上50MHz以下で振動する印加電圧の場合には、振幅±0.1〜±0.3V、周波数100MHz以上2GHz以下の高周波信号を重畳すると良い。このような駆動方法においても、発振波長に少なくとも2つの波長帯を有して半導体レーザ素子を発振させることが可能である。
<変形例>
図7(a)は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子の変形例を示す概略上面図であり、図7(b)は、その駆動条件の一例を示すグラフである。図7(a)に示す例の半導体レーザ素子120では、p側電極が3つの小片電極303,304,305により構成されており、その長さL,L,Lは略同じである。このように、p側電極又はn側電極を3つ以上の領域に分離された小片電極としてもよい。なお以下、この各小片電極303,304,305を前方側から順に第1、第2、第3の小片電極と各々呼称する。
このような3つの小片電極303,304,305を有する半導体レーザ素子120の場合、例えば図7(b)に示すような印加電圧により駆動することができる。まず、図7(b)に示す区間(w)では、第1及び第3の小片電極303,305への印加電圧は約0Vであり、第2の小片電極304に発振閾値以上の順方向電圧が印加されている。この区間(w)では、第2の小片電極下の活性層中央部に形成される利得領域によって、半導体レーザ素子120は連続発振する。次に、図7(b)に示す区間(x)では、第1及び第2の小片電極303,304に発振閾値以上の順方向電圧が印加され、第3の小片電極305には逆方向電圧が印加されている。この区間(x)では、第1及び第2の小片電極下の活性層前方部及び中央部に形成される利得領域と、第3の小片電極下の活性層後方部に形成される可飽和吸収領域と、によって、半導体レーザ素子120は自励発振する。更に、図7(b)に示す区間(y)では、全ての小片電極303,304,305に発振閾値以上の順方向電圧が印加されている。この区間(y)では、活性層の略全域に形成される利得領域によって、半導体レーザ素子120は連続発振する。最後に、図7(b)に示す区間(z)では、第1及び第3の小片電極303,305に発振閾値以上の順方向電圧が印加され、第2の小片電極304への印加電圧は約0Vとなっている。この区間(z)では、第1及び第3の小片電極下の活性層前方部及び後方部に形成される利得領域によって、半導体レーザ素子120は連続発振する。そして、このような区間(w)〜(z)が周期的に(周期T)繰り返されるようになっている。
以上のように、区間(w)〜(z)において、発振閾値以上の順方向電圧が印加される小片電極の切り替え及びその数の変更の両方を含み、また各区間(w)〜(z)における発振効率は各々異なっており、それにより発振波長も異なるため、発振波長範囲が拡大し、出射レーザ光の可干渉性を低下させることができる。このように、小片電極の数を増やし活性層内の各小片電極に対応する領域を増やすことによって、各小片電極に印加する電圧の組み合わせが増え、発振効率を細かく制御することができ、発振波長範囲をより拡大させることが可能である。なお、小片電極の数は、例えば2以上10以下程度とし、素子の実装、特にワイヤーボンディングのしやすさ等を考慮して、好ましくは2以上5以下とする。また、3つ以上の領域に分離された小片電極とする場合、隣り合う2つ以上の小片電極に周波数及び位相が略同じ電圧又は略同じ信号の電圧を印加することで、それらの小片電極に各々対応する活性層内の領域を擬似的に統合し単一の領域として制御することもできる。
なお、小片電極に印加する電圧の波形は、矩形波状であることが好ましい。この「矩形波状」とは、立ち上がりが略垂直で且つデューティ比50%の略完全な矩形波のみではなく、2つの定常値を有し、その定常値間を推移する波形を全て含むものとする。小片電極への印加電圧値が一定(定常値)となる区間があることにより、活性層内のキャリアと光の相互関係が安定する定常状態が形成されやすく、レーザ発振が安定しやすい。また、矩形波状であれば、電圧立ち上がり時の緩和振動を利用しやすく、第3の発振波長帯を発現させやすい。このほか、小片電極に印加する電圧の波形は、三角波状や正弦波状の波形であってもよい。
また、小片電極に印加する電圧は、発振閾値を跨いで振動し且つ振幅変調(AM変調)されていてもよい。印加電圧を振幅変調することにより、順方向及び逆方向電圧の振幅が変化し、それにより自励発振の発振波長が変化するため、スペックルノイズを低減することができる。さらに、小片電極に印加する電圧は、発振閾値を跨いで振動し且つ周波数変調(FM変調)されていてもよい。印加電圧を周波数変調することにより、順方向電圧の立ち上がり速度が変わって緩和振動が変化するため、発振波長が変化してスペックルノイズを低減することができる。但し、このとき、各小片電極に印加される電圧の振幅は、過電圧又は緩和振動により半導体レーザ素子の端面劣化又は端面破壊を生じない程度に制御されていることが好ましい。また、このときの発振切り替え周波数は、1MHz以上1GHz以下であることが好ましく、100MHz以上800MHz以下であることがより好ましい。さらに、変調信号の周波数は、発振切り替え周波数の5分の1以下であることが好ましく、10分の1以下であることがより好ましい。
以下、本発明の半導体レーザ素子及び半導体レーザ装置の各構成要素について詳述する。
(半導体レーザ素子)
半導体レーザ素子は、種々の半導体材料で形成されたものを用いることができる。半導体材料としては、例えばGaN、AlGaN、InGaNなど、一般式AlInGa1−x−yN(0≦x<1,0≦y<1,x+y<1)で表される窒化物半導体を用いることができる。これに加えて、III族元素として一部がBに置換されたものでもよいし、V族元素としてNの一部がP、Asに置換されたものでもよい。また、n型不純物としてはSi、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr、Cd等、p型不純物としてはMg、Zn、Be、Mn、Ca、Sr等の不純物を適宜ドープできる。これら不純物の濃度は、例えば5×1016/cm以上1×1021/cm以下程度が好ましい。このほか、ガリウム砒素系半導体、ガリウム燐系半導体、セレン化亜鉛系半導体のレーザ素子でもよい。半導体の結晶成長方法は、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)等の方法を用いることができる。
なお、スペックルノイズは、発振波長が長いほど大きくなる傾向があるため、例えば赤緑青(RGB)の各波長で発振する半導体レーザ素子を用いたレーザディスプレイ装置の場合には、半導体レーザ素子毎に駆動条件を適宜変更することが好ましい。具体的には、発振波長の短い半導体レーザ素子、例えば窒化物半導体レーザ素子に比べ、発振波長の長い半導体レーザ素子、例えばガリウム砒素系半導体レーザ素子が発振波長範囲をより拡大するように、小片電極の配置や印加電圧の波形等を調整すればよい。
(基板)
基板10は、絶縁性基板であってもよいし、導電性基板であってもよい。その厚さは、例えば50μm以上2mm以下程度が挙げられる。窒化物半導体レーザ素子では、サファイア、スピネル(MgAl)のような絶縁性基板でもよいし、炭化珪素、シリコン、ZnSe、ZnO、GaAs、ダイヤモンド、及び窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等の酸化物基板でもよいが、窒化物半導体基板(GaN、AlN等)であることが好ましい。ガリウム砒素系、ガリウム燐系半導体のレーザ素子では、GaAs基板、InP基板等が好ましい。基板は、上記半導体の成長方法のほか、例えば超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法、高圧法、フラックス法、溶融法などで作製できる。
(半導体積層構造)
半導体積層構造は、第1導電型(n型)半導体層21と第2導電型(p型)半導体層23との間に活性層22を有する構造が好ましい。更には、活性層が光ガイド層により挟まれた分離光閉じ込め型構造(SCH:Separate Confinement Hetero-structure)とすることが好ましい。また、分布屈折率 (GRIN:Graded Index)構造を採用してもよい。p型及びn型半導体層は各々、単層、多層又は超格子構造のクラッド層、光ガイド層、キャップ層、コンタクト層、クラック防止層等の各機能を有する層で構成することができる。p型及びn型半導体層の積層順序は、半導体材料により変更可能であり、上述の実施形態の逆であってもよい。活性層は、単一量子井戸構造(SQW)又は多重量子井戸構造(MQW)のいずれかの量子井戸構造で形成されることにより、発光効率を向上させることができる。
(光導波路)
光導波路24は、半導体積層構造内で光を閉じ込めながら伝搬させる領域であり、例えばp型半導体層にストライプ状のリッジが設けられることにより形成できる。その幅は、0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、単一横モードを得るためには1.0μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。リッジの高さ(エッチングの深さ)は、例えば0.1μm以上2μm以下程度である。リッジの側面は略垂直であってもよいし、テーパー状(傾斜角度45〜90°程度)であってもよい。光導波路は、上述のような埋め込みリッジ構造等の屈折率導波型(インデックスガイド型)のほか、埋め込みヘテロ構造等の利得導波型(ゲインガイド型)の構造により形成されてもよく、その場合の幅や高さ(厚さ)の好ましい態様も上記と同様でよい。また、光導波路は、1つの半導体レーザ素子内で連続していることが好ましいが、複数の領域に分離されていてもよく、例えば小片電極に合わせて分離されていてもよい。
(埋込膜、絶縁膜)
埋込膜25は、リッジの側面を被覆する絶縁性の保護膜であり、半導体層より屈折率の小さい材料によって形成できる。具体的には、埋込膜は、Zr、Si、V、Nb、Hf、Ta、Al、Ga、Ti、Zn等の酸化物、窒化物、酸化窒化物等の単層又は多層膜で形成できる。また埋込膜は、単結晶でもよいし、多結晶又はアモルファスでもよい。絶縁膜26は、少なくとも半導体積層構造の側面を被覆し、各半導体層の短絡や損傷を抑制する絶縁性の保護膜であり、埋込膜と同様の材料により形成することができる。埋込膜及び絶縁膜、並びに後述の電極、誘電体膜は、スパッタ法、CVD法、蒸着法などにより形成できる。
(電極)
p側電極30及びn側電極40は、例えば、Pd、Pt、Ni、Au、Ti、V、W、Cu、Ag、Mo、Hf、Zn、Rh、Ru、Os、Ir、Zr、Nb、Ta、Co、Fe、Mn、Cr、La、Yから成る群より選ばれる少なくとも1つの金属又はこれらの合金、ITO、ZnO、SnO等の導電性酸化物、の単層膜又は多層膜より形成することができる。p側電極としては、Ni−Au系、Ni−Pd系の電極材料が好ましく、例えばNi/Au/Ptのオーミック電極と、Ni/Pd/Auのパッド電極の積層構造とする。n側電極としては、Ti−Al系、Ti−Pt系、V−Pt系、Nb−Pt系、W−Al系の電極材料が好ましく、例えばTi/Pt/Auの積層構造とする。なお、n側電極上にもメタライズ電極(パッド電極)を別途設けてもよい。電極の膜厚は、使用する材料により適宜調整することができ、例えば5nm以上1μm以下、好ましくは10nm以上500nm以下であることが好ましい。
また、p側電極及びn側電極は、上述のように、半導体素子構造を挟んで設けられる構造、言い換えれば半導体素子構造の上面側と下面側とに各々設けられている構造(対向電極構造)が好ましいが、例えば絶縁性基板を使用する場合等は、半導体素子構造の同一面側に両導電型の電極が設けられる構造でもよい。なお、対向電極構造の半導体レーザ素子の場合、実装形態については、実施の形態1のフェイスアップ実装、及び実施の形態2のフェイスダウン実装のいずれでもよい。さらに、素子実装時の上面側(露出面側)の電極を複数の小片電極により構成して該小片電極にワイヤーボンディングすることが生産性の観点で好ましいが、サブマウントやステムに同様に分離された電極や配線を設けることで、実装面側の電極を複数の小片電極により構成することもできる。
さらに、上述のように、小片電極は、p側電極とn側電極のいずれか一方に設けられればよいが、両導電型の電極を複数の小片電極により構成してもよく、その場合にはp側の小片電極とそれに対応するn側の小片電極の長さが略同じであることが好ましい。また、活性層に近い方つまり薄い半導体層側の電極を複数の小片電極により構成することで、活性層内のその小片電極下の領域に流れる電流を制御しやすいので好ましい。窒化物半導体レーザ素子では通常、p型半導体層がn型半導体層に比べて薄いため、p側電極を複数の小片電極により構成すると良い。なお、分離間隔dは、1μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上15μm以下であることがより好ましい。また、小片電極による活性層内の各領域の制御性を高めるために、小片電極間の分離領域に絶縁膜を形成してもよいし、離間領域の半導体層や基板の少なくとも一部に溝又は凹部を形成してもよい。
(共振器、反射鏡)
上述の半導体レーザ装置では、共振器を構成する一対の反射鏡が半導体レーザ素子の前方端面及び後方端面に各々設けられているが、これに限らず、共振器を構成する一対の反射鏡の少なくとも一方が半導体レーザ素子の端面から離間して設けられた外部共振器型の半導体レーザ装置であってもよい。また、半導体レーザ素子の前方端面及び/又は後方端面に共振器面を形成する場合、これら端面に誘電体膜を形成することが好ましい。誘電体膜は、SiO、ZrO、TiO、Al、Nb、AlN等の単層膜又は多層膜により形成することができる。なお、半導体レーザ素子の大きさは、例えば長さを200μm以上1mm以下程度、幅を100μm以上500μm以下程度とすることができ、素子の前方及び後方の端面に共振器面を形成する場合、その長さが共振器長に略等しくなる。
(駆動装置)
駆動装置は、半導体レーザ素子の各小片電極を選択し印加する電圧又は電流を独立に制御する制御回路と、該制御回路を介して半導体レーザ素子に電圧又は電流を供給する電源と、を少なくとも備えるものであればよい。制御回路は、光出力を一定に保つ定出力制御回路(APC:Auto Power Control)や、高周波信号等の変調信号を発生・重畳させる変調回路などを適宜組み込んで、所望の信号波形を有する印加電圧又は電流を生成するように設計できる。
<実施例1>
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
実施例1の半導体レーザ素子は、図1に示す例の構造を有する、幅120μm×長さ600μmの略矩形状の窒化物半導体レーザ素子であって、n型GaN基板10のC面(0001)上に、以下の窒化物半導体の積層構造を有する半導体素子構造20が形成されている。n型半導体層21は、SiドープAlGaNのn型クラッド層と、アンドープGaNのn側光ガイド層と、が順に積層されている。活性層22は、SiドープInGaNの障壁層及びアンドープInGaNの井戸層が2回交互に積層され、更にその上にアンドープInGaNの障壁層が積層された多重量子井戸構造を有する。p型半導体層23は、MgドープAlGaNのp型キャップ層、アンドープGaNのp側光ガイド層、アンドープAlGaNとMgドープGaNの超格子構造のp型クラッド層、MgドープGaNのp型コンタクト層、が順に積層されている。p型半導体層23には、前方端面から後方端面まで延在する幅1.5μmのストライプ状のリッジが形成され、リッジの側面とその横に露出されるp側光ガイド層の上面には、ZrOの埋込膜25が形成されている。p側オーミック電極31は、リッジの上面と埋込膜25の一部を覆って、Ni/Au/Ptが順に積層されてなり、間隔(d)約10μmで互いに分離された2つのストライプ状(幅8μm×長さ290μm)に形成されている。また、SiOの絶縁膜26が埋込膜25の端部から半導体積層構造の側面にわたって形成されている。そして、更に2つのp側オーミック電極31上には、Ni/Pd/Auが順に積層されてなり、幅80μm×長さ270μmの略矩形状のp側パッド電極32が各々形成されている。以上のように、p型半導体層23上には、p側電極として、オーミック電極31及びパッド電極32により各々構成される小片電極301,302が形成されている。また、前後の小片電極301,302の間には、中央のリッジを残して、分割補助溝として設けられたn型半導体層21(n型クラッド層)の露出領域が形成されている。一方、n側電極40は、GaN基板10の下面に、Ti/Au/Pt/Auが順に積層されてなり、1つの略矩形状に形成されている。なお、この半導体レーザ素子100の前方及び後方端面は、窒化物半導体の劈開面であって、共振器の一対の反射鏡を構成する、AlとZrOからなる誘電体膜が各々形成されている。
次に、実施例1の半導体レーザ素子100の駆動方法について説明する。本実施例1において、図3に示すように、可飽和吸収を利用して半導体レーザ素子100を自励発振させる場合、前方の小片電極301に6.5V以上7.5V以下の順方向電圧を印加し、後方の小片電極302に−1.0V以上−0.5V以下の逆方向電圧を印加する。他方、可飽和吸収を抑制して半導体レーザ素子100を連続発振させる場合、前方の小片電極301に−1.0V以上0V以下の範囲で且つ上記自励発振時の後方の小片電極302に印加する逆方向電圧より絶対値が小さい電圧を印加し、後方の小片電極302に5.5V以上6.5V以下の範囲で且つ上記自励発振時の前方の小片電極301に印加する順方向電圧より絶対値が小さい電圧を印加する。このような各小片電極への印加電圧の組み合わせにより、10〜15mW程度の光出力が得られる。
より詳細には、前方の小片電極301には、振幅0V〜7.3V、周波数5MHz、デューティ比85%、立ち上がり速度12nsの略矩形波状の電圧を印加する。後方の小片電極302には、振幅−0.9〜6.2V、周波数5MHz、デューティ比15%、立ち上がり速度14ns、ディレイ85%の略矩形波状の電圧を印加する。このような電圧を小片電極301,302に各々印加して、半導体レーザ素子100を駆動すると、図4に示すように、408.5〜409.7nm(Q)、409.8〜410.5nm(R)、410.7〜413nm(P)の3つの波長帯を含む発振波長で発振させることができる。
また、本発明の半導体レーザ素子の駆動方法によるスペックルノイズの低減効果について検証する。本実施例では、レーザ照射面における輝度分布のコントラスト比によって、スペックルノイズを評価する。
(比較例)
前後の小片電極301,302に44mAの定電流を各々印加して、半導体レーザ素子100を連続発振させる駆動方法を比較例1とする。また、前方の小片電極301に−0.5Vの逆方向の定電圧を印加し、後方の小片電極302に125mAの定電流を印加して、半導体レーザ素子100を自励発振させる駆動方法を比較例2とする。
実施例1の駆動方法では、スペックルノイズを、比較例1に比して46%、比較例2に比しては27%低減することができる。このように、実施例1の半導体レーザ素子の駆動方法によれば、比較例1,2に比べスペックルノイズを大幅に低減できることがわかる。
本発明の半導体レーザ素子の駆動方法及び半導体レーザ装置は、レーザディスプレイ装置やレーザ露光装置に好適に利用することができる。
10…基板
20…半導体素子構造(21…n型半導体層、22…活性層、23…p型半導体層、24…光導波路)
25…埋込膜
26…絶縁膜
28…利得領域
29…光吸収領域
30…p側電極(31…オーミック電極、32…パッド電極、301,302,303,304,305…小片電極)
40…n側電極(401,402…小片電極)
45…ワイヤー
46…サブマウント
100,110,120…半導体レーザ素子
500…駆動装置

Claims (8)

  1. p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、前記p側電極及びn側電極の少なくとも一方が前記光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子の駆動方法であって、
    発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極を周期的に切り替えるとともに、前記順方向電圧を印加する小片電極以外の前記小片電極の少なくとも1つに、該半導体レーザ素子が自励発振可能な逆方向電圧を印加する半導体レーザ素子の駆動方法。
  2. p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、前記p側電極及びn側電極の少なくとも一方が前記光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子の駆動方法であって、
    発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極の数を周期的に変える半導体レーザ素子の駆動方法。
  3. 前記順方向電圧を印加する小片電極以外の前記小片電極の少なくとも1つに、該半導体レーザ素子が自励発振可能な逆方向電圧を印加する請求項に記載の半導体レーザ素子の駆動方法。
  4. 前記逆方向電圧を前記小片電極に断続的に印加する請求項1又は3に記載の半導体レーザ素子の駆動方法。
  5. 前記小片電極のうちの第1の小片電極に印加する電圧は、発振閾値を跨いで振動し、少なくとも一時的に、前記第1の小片電極に印加する電圧が上昇中である時に、第2の小片電極に印加する電圧が降下中である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子の駆動方法。
  6. 前記小片電極を切り替える又は前記小片電極の数を変える周波数は、60Hz以上1GHz以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子の駆動方法。
  7. p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、前記p側電極及びn側電極の少なくとも一方が前記光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子と、
    発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極を周期的に切り替えるとともに、前記順方向電圧を印加する小片電極以外の前記小片電極の少なくとも1つに、該半導体レーザ素子が自励発振可能な逆方向電圧を印加する駆動装置と、を備える半導体レーザ装置。
  8. p側電極とn側電極の間に、ストライプ状の光導波路が設けられた半導体素子構造を有し、前記p側電極及びn側電極の少なくとも一方が前記光導波路の長手方向に分離された複数の小片電極からなる半導体レーザ素子と、
    発振閾値以上の順方向電圧を印加する前記小片電極の数を周期的に変える駆動装置と、を備える半導体レーザ装置。
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