JP4290849B2

JP4290849B2 - 高強度で耐摩耗性及び摺動性に優れたアルミニウム合金

Info

Publication number: JP4290849B2
Application number: JP2000129575A
Authority: JP
Inventors: 孝吉高橋; 祐治鈴木; 豊藤原
Original assignee: Nisso Metallochemical Co Ltd
Current assignee: Nisso Metallochemical Co Ltd
Priority date: 2000-04-28
Filing date: 2000-04-28
Publication date: 2009-07-08
Anticipated expiration: 2020-04-28
Also published as: JP2001316746A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度で耐摩耗性及び摺動性に優れたアルミニウム基合金に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、軽量で加工性の良いアルミニウム鋳物の適用が増加している中で、耐摩耗性に優れた合金としては、過共晶Al-Si系合金が知られており、ASTM規格アルミニウム合金でもA３９０として規格化され、耐摩耗性が要求されるコンプレッサー部品、シリンダブロック等の各種機械部品に広く用いられている。
また、高温強度、耐摩耗性を目的としてSiC、繊維を添加したアルミニウム基複合材料や粉末冶金法で製造した高力アルミニウム合金等が提案されている。
【０００３】
例えば、噴霧堆積法により製造された7000系をベースとした、重量％で、Si:３〜２２％とCu：０．２〜５％とMg:１．２〜６％とZn：５〜１５％を含むアルミニウム基合金が特開平5-179384号公報で紹介されている。また、特開平8-109429号公報では、重量％で、Si：６〜１０％とZn：１０〜２５％とCu：０．５〜３．０％とMn：０．１〜０．５％とMg：０．０２〜０．５％とを含むAl-Zn-Si系合金が、高強度で耐摩耗性に優れ、摺動部品に好適なダイカスト用アルミニウム基合金であると記載されている。
【０００４】
しかしながら、従来の過共晶Al-Si系合金は、マトリックス中の初晶Si粒による耐摩耗性が優れる反面、摩耗及び潤滑の条件では、初晶Si粒が摺動時に脱落したりして、凝着摩耗やアブレッシブ摩耗を生じる場合があり、なじみ性に劣る。
また、複合材料や特開平5-179384号公報に記載された噴霧堆積法を用いた方法(粉末状にしたアルミニウム合金を堆積させ、得られた堆積体を熱間加工する方法)等は、限られた条件等製造が難しいと共に、製造コストが高く生産性が悪い。
【０００５】
一方、特開平8-109429号公報に記載されたアルミニウム基合金は、摺動部材として使用する場合、Si含有量を6〜10重量％の範囲に規制しているため、強度は高いが、耐摩耗性が劣る。その上、Zn含有量が10〜25重量％と高いことから、高温において、強度が劣化しやすく、耐摩耗性も低下するといった問題があった。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであって、過共晶Al-Si合金中にZn,Cu,B,Mgを添加することにより、高強度で耐摩耗性及び摺動性の優れたアルミニウム基合金を提供することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)重量％で、Si：12〜16％とZn：5〜15％とCu：1〜5％を含み、残部がAlと不可避物質からなる組成を有する高強度で耐摩耗性及び摺動性の優れたアルミニウム基合金。
(2)重量％で、Si：12〜16％とZn：5〜15％とCu：1〜5％とB：0.01〜0.1％、を含み、残部がAlと不可避物質からなる組成を有する高強度で耐摩耗性及び摺動性の優れたアルミニウム基合金。
(3)重量％で、Si：12〜16％とZn：5〜15％とCu：1〜5％とB：0.01〜0.1％とMg: 0.005〜0.08％、を含み、残部がAlと不可避物質からなる組成を有する高強度で耐摩耗性及び摺動性の優れたアルミニウム基合金である。
本発明において用いられる合金、すなわち以下に説明する成分・組成を含有させることによって、従来のアルミニウム鋳造合金にはなかった、高強度で優れた耐摩耗性及び摺動性をもつ合金を見出した。
【０００８】
以下、各元素の作用を説明する。
Si：12〜16重量％
Siは耐摩耗性の向上に有効な必須の合金元素であり、Si含有量が12重量％未満では耐摩耗性が不足することとなり、逆に16重量％を超えるSi含有量では初晶Si粒が大きくなり、摺動部の相手材を攻撃し、耐摩耗性及び摺動性が劣化する。また、Si量の増加により合金の液相線温度が上昇して溶解、鋳造性が悪化すると共に機械的性質も低下する。
【０００９】
Zn：5〜15重量％
Znは初晶内に固溶し引張強度、硬度及び摺動性を向上させる効果的な合金元素であり、また、融点を低下させ鋳造性が良好となる。Zn含有量が5重量％未満ではその効果が少なく、逆に15重量％を超えるZn含有量では引張強度及び靭性を低下させ、摺動性も劣化する。
【００１０】
Cu：1〜5重量％
Cuは強度と硬度及び耐摩耗性の向上に有効な合金元素であり、Cu添加の効果は固溶状態で顕著となる。Cu含有量が1重量％未満ではその効果が少なく、逆に5重量％を超えるCu含有量では靭性及び耐食性が劣化する。また多量のCuが含まれると鋳造時に金属間化合物を形成し、鋳造割れが発生し易くなる。
【００１１】
B：0.01〜0.1重量％
Bは過共晶Al-Si合金中おける初晶Si粒をZnと共存添加することにより針状共晶Siに改良した組織とするのに有効な、耐摩耗性の向上に有効な合金元素である。B含有量が0.01重量％未満ではその効果は小さく、0.1重量％を超えるB含有量では機械的性質を劣化させる。
【００１２】
Mg：0.005〜0.08重量％
Mgはアルミニウム合金の硬度、機械的強度を向上させる上で有効な合金元素である。Mg含有量が0.005重量％未満ではその効果は小さく、0.08重量％を超えてMgを含有させると、機械的性質を低下させ、耐摩耗性及び摺動性も劣化する。
【００１３】
実施例1〜４及び比較例１〜８
第1表に示される化学組成をもったAl合金を通常の溶解法により溶製し、金型はJIS4号の引張試験片（平行部φ14mm,標点間距離50mm,長さ205mm）と（幅25mm,厚さ15mm,長さ195mm）の寸法をもった鋳片に700〜740℃の鋳造温度で鋳造し、この鋳片より（幅10mm,厚さ6mm,長さ37mm）の寸法をもった摩耗試験片を切出した。尚、比較のため、本発明合金の組成範囲から外れた、比較合金1〜７及び比較例８（ASTM規格アルミニウム合金：A３９０）を、同様に作製した。
【００１４】
試験例
第1表に示した合金においてこれらの試験片を用いて機械試験を行った。第2表にこれらの合金について求めた各種機械的性質を示す。
又、アムスラー型摩耗試験機で摩耗量を測定した。試験条件は転がり摩耗形式で潤滑下で行った。相手材はSKD11とし0.4m/sの摩擦速度、3000mの摩擦距離、及び1960Mpaの荷重での摩耗量を測定した。その結果を第3表に示す。
【００１５】
第2表から次のことが解った。
本発明合金1〜4における強度は205〜225Mpa,伸びも0.6〜0.9％と何れも優れており、硬度もHv120〜150とASTM規格アルミニウム合金：A３９０より同等もしくは優れている。
比較合金1は強度が低い。比較合金2は硬度が優れていたが伸びが低く靭性に欠けている。比較合金3は、強度が低く硬度も劣っている。
比較合金4は強度及び伸びが不足している。比較合金５は、硬度が優れているが伸びが低く靭性に欠ける。比較合金６は、強度、伸び共に不足している。比較合金７は、伸びが低く靭性が不足し実用的でない。
【００１６】
第3表から次のことが解った。
本発明合金はいずれも優れた耐摩耗性を有している。また、Bを添加することにより、耐摩耗性及び摺動性がさらに向上する。
比較合金1〜４、７及び８（ASTM規格アルミニウム合金：A３９０）においては、耐摩耗性が低い。比較合金５及び６では耐摩耗性は良好であったが上述のように機械的性質が不足していることより実用的ではない。
従って、第2表,第3表の諸試験結果を総合すると、本発明合金は、Bを添加することにより耐摩耗性が更に向上し、Mgを添加することにより、機械的強度（引張強度及び硬さ）が耐摩耗性を実質的に劣化させることなく向上させており、従来合金と比べ機械的性質、特に耐摩耗性が優れていることが明らかとなった。
【００１７】
【表１】

【００１８】
【表２】

【００１９】
【表３】

【００２０】
図１〜３は、本発明合金の金属組織の顕微鏡写真である。
良好な耐摩耗性及び摺動性を得るには１０μm以上の針状共晶Siが好ましいが、本発明合金には、これが発達している。
図１に見られる粒状の晶出物は初晶Siで針状の晶出物は共晶Siであり、針状共晶Siが１０〜３０μm晶出していた。
図２では、Bを添加することにより発明合金1で見られた粒状の晶出物すなわち初晶Siは見られず、針状の共晶Siが一面に樹枝状に５０〜１００μm晶出していた。
図３では、B及びMgの添加により針状共晶Siの晶出に影響はなく、針状共晶Siが一面に樹枝状に５０〜１００μm晶出していたしていることが確認された。
このように、本発明合金では、樹枝状に晶出が一面に発達している。
一方、図４の比較例８（ASTM規格アルミニウム合金：A３９０）では、針状の共晶Ｓｉが樹枝状に晶出していない。
【００２１】
【発明の効果】
本発明のアルミニウム合金は、高強度の優れた機械的性質を有し更に優れた耐摩耗性及び摺動性を発揮する。このため、例えば、高い耐摩耗性が要求されるマニュアルトランスミッション用シフトフォーク、コンプレッサーシリンダー、オイルポンプハウジング等の自動車部品を始めとして、各種摺動部品等に好適であり、本発明のアルミニウム合金を適用することにより、これら機械部品のさらなる軽量化が実現可能となる。
【００２２】
【図面の簡単な説明】
【図１】発明合金1の200倍の金属組織を表す顕微鏡写真
【図２】発明合金３の200倍の金属組織を表す顕微鏡写真
【図３】発明合金４の200倍の金属組織を表す顕微鏡写真
【図４】比較例８（ASTM規格アルミニウム合金：A３９０）の200倍の金属組織を表す顕微鏡写真

Claims

重量％で、Si：12〜16％とZn：5〜15％とCu：1〜5％を含み、残部がAlと不可避物質からなる組成を有することを特徴とする高強度で耐摩耗性及び摺動性に優れたアルミニウム基合金。
重量％で、Si：12〜16％とZn：5〜15％とCu：1〜5％とB ：0.01〜0.1％を含み、残部がAlと不可避物質からなる組成を有することを特徴とする高強度で耐摩耗性及び摺動性に優れたアルミニウム基合金。
重量％で、Si：12〜16％とZn：5〜15％とCu：1〜5％とB ：0.01〜0.1％とMg：0.005〜0.08％を含み、残部がAlと不可避物質からなる組成を有することを特徴とする高強度で耐摩耗性及び摺動性に優れたアルミニウム基合金。