JP4290449B2 - 加熱プレス用成形型、これを用いたシリカガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は加熱プレス用成形型、これを用いたシリカガラスの製造方法に係わり、特に割り型の被成形材の噛み込みを防止した加熱プレス用成形型、これを用いたシリカガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱軟化性素材の成形には、加熱プレス加工が一般的に行われている。その場合、離型性を考慮して、被成形材と成形型の熱膨張率を可能な限り一致させあるいは、成形型の方が被成形材よりも熱膨張率が小さくなるように考慮されている。
【0003】
しかしながら、このような従来の加熱プレス用成形型を用い、シリカガラス(石英ガラスと言うこともある)など低熱膨張率の被成形材を成形する際、適当な成形型材料の入手が困難である。このため、転写パターンの壁面に角度を付け、冷却時に成形型が収縮しても被成形材を噛み込まず、滑って離型する方向に移動するよう成形型を設計する方策が採られている。しかし、この方法では、成形型の側面の形状保持、特に垂直に立った壁面を被成形材に与えることができない。
【0004】
すなわち、図9のような加熱プレス用成形型22の構成を考えた場合、昇温後に被成形材Mの熱膨張係数よりも下型23の熱膨張係数が大きい場合、下型23の収縮により被成形材Mを噛み込んで、下型23から被成形材Mが離型できないか、あるいは、下型23が破損するおそれがある。また、プレス成形時、上型24からの圧力が、被成形材Mの外周部ほど変形によって逃げてしまうため、微細なパターンの変形や転写不足が発生する問題があった。
【0005】
また、図9に示す上記従来の成形型で問題となる噛み込みを回避するために、図10に示すように、加熱プレス用成形型32の下型33を分割し、複数個の下分割型33zとするものが提案されている。しかしながら、この下型33は、冷却時の収縮による応力発生を回避できるが、下型33の成形側面33a1から積極的な被成形材Mへの加圧は期待できず、逆に分割面のズレにより下分割型33z間に隙間が生じて、被成形材Mの形状に悪影響を与える問題があった。
【0006】
なお、断面三角形状の凹状成形面が設けられた下型を2分割したガラス成形型があるが、この成形型は、上記従来の後者と成形型同様に、冷却時の収縮による応力発生を回避できるが、下型の成形側面から積極的な被成形材への加圧は期待できず、逆に分割面のズレにより下分割型間に隙間が生じて、被成形材の形状に悪影響を与える(例えば、特許文献1など)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−9232号公報(段落番号[0008]、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、成形型の収縮により被成形物を噛み込むことがなく、微細なパターンや転写が可能で、被成形材を所望の形状に成形できる加熱プレス用成形型、これを用いたシリカガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様によれば、加熱して軟化させた被成形材をプレス成形するのに用いられる加熱プレス用成形型であって、この成形型を構成し正方形板状の凹状成形面が形成された一方の型は、複数に分割された分割型からなり、この分割型の外周に設けられ先細の凸状嵌合部を、一方の型が取り付けられ、固定軸上に固定された台座に設けられた先細の凹状嵌合部に嵌合することにより一体的に保持され、前記成形型を構成する他方の型により、被成形材を介して一方の型を押圧し、前記正方形板状の凹状成形面の成形側面により被成形材を押圧することを特徴とする加熱プレス用成形型が提供される。これにより、成形型の収縮により被成形物を噛み込むことがなく、微細なパターンや転写が可能で、また、被成形材を所望の形状に成形できる加熱プレス用成形型が実現される。
【0010】
好適な一例では、前記成形型は、ガラス状カーボンで形成される。これにより、型の表面の離型膜が不要になる。
【0011】
また、他の好適な一例では、前記一方の型は、その成形側面と同一方向の面で分割される。これにより、一方の型の収縮により被成形材の噛み込みが発生せず、さらに、一方の型に加わる力は、成形側面同士を接近させる方向に引き付ける分力を発生させやすくなる。
【0012】
また、他の好適な一例では、前記先細の凸状嵌合部及び前記先細の凹状嵌合部は、円錐状あるいは角錐状である。これにより、一方の型に加わる力から、成形側面同士を接近させる方向に引き付ける分力を確実に発生させることができる。
【0013】
また、他の好適な一例では、前記先細の凹状嵌合部の深さを変えることにより、前記凹状成形面の成形側面と成形主面に加わる力配分を調整することができる。
【0014】
また、他の好適な一例では、前記凹状成形面の少なくとも成形主面にガラス状カーボン製の成形体が取り付けられる。これにより、凹状成形面の全面に取り付けられる場合には、前記成形体を交換可能にすることで、下型の劣化による交換をなくし、成形コストの低減が図れ、成形主面にのみ取り付けた場合には、分割型の分割面の段差が一層軽減される。
【0015】
また、本発明の他の態様によれば、請求項1〜6のいずれかの成形型を用いて成形するシリカガラスの製造方法である。これにより、成形型の収縮により被成形物を噛み込むことがなく、微細なパターンや転写が可能で、被成形材を所望の形状に成形できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる加熱プレス用成形型の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明に係わる加熱プレス用成形型の第1実施形態を組み込んだ成形装置の概念図である。
【0019】
図1に示すように、成形装置1には、本発明に係わるプレス用成形型2が組み込まれている。この本発明に係わるプレス用成形型2は、正方形板状の凹状成形面3aが形成され一方の型としての下型3と、凹状成形面3aに収納された被成形材、例えばシリカガラスMを押圧し、凹状成形面3aに進入する平面視正方形で柱状の他方の型としての上型4で構成されている。
【0020】
上記下型3は、熱軟化性素材である被成形材として熱膨張率が小さいガラス等と高温で反応し難い材質、例えば、ガラス状カーボン、モリブデン、タングステン、超硬などが用いられる。被成形材としてシリカガラスが用いられる場合には、ガラス状カーボンが好ましく、その理由として、ガラス状カーボンは、フルフリールアルコールなどの熱硬化性樹脂を成形後、加圧下で徐々に加熱し、硬化後炭素化して製造され、無配向組織を有し、さらに、高耐熱性、高耐食性、高強度、高硬度を有する。また、ガラス状カーボンは、一般的な型材料とは異なり、ガラスとの間の離型性に優れ、型の表面の離型膜が不要になる。
【0021】
また、下型3の形状は、順次断面積が減少する先細形状をなし、成形側面3a1と成形主面3a2からなる凹状成形面3aが形成された円板形状の下型主部3bと、この下型主部3bから突出する円錐あるいは多角錐状の凸状嵌合部3cとからなっている。上記成形主面3a2には、例えば図2(a)、(b)に示すような頂部を有する凸部が形成されている。
【0022】
さらに、図3及び図4に示すように、下型3は、成形側面3a1と同一方向の面(垂直面)で、下分割型3zに均等に4分割されて各々平面視扇状をなし、図1に示すように、使用時、下型3の凸状嵌合部3cが、台座5に設けられた円錐あるいは多角錐状の凹状嵌合部5aに嵌合して、一体的に保持されている。これにより、四方より被成形材を均等に押さえ付けることが可能な構成となっており、成形型2からの圧力が、平板状の被成形材へ均一に分配されるように考慮されている。なお、円錐あるいは多角錐の凹状嵌合部の深さを変えることにより、押圧する圧力に対する成形側面と成形主面の圧力配分が適当に調整される。
【0023】
さらに、台座5は固定軸6上に固定されている。
【0024】
上記上型4は、下型3と同様に、被成形材と反応し難い材質としてガラス状カーボン等が用いられ、油圧手段(図示せず)によって昇降する移動軸7に取り付けられている。プレス用成形型2は、ランプユニット8等の加熱手段により、使用時加熱されている。
【0025】
次に本発明に係わる加熱プレス用成形型の第1実施形態を用いた成形方法について説明する。
【0026】
図1に示すように、下型3の凸状嵌合部3cは台座5の凹状嵌合部5aに嵌合され、下分割型3zは一体的に保持されて、下型3が形成されており、下型3及び上型4は、予め加熱されている。
【0027】
この予熱された下型3の凹状成形面3aに軟化状態のシリカガラスMを収納し、移動軸7を降下させて、上型4を降下させ、シリカガラスMを押圧する。
【0028】
これにより、シリカガラスMは下型3及び上型4の形状に沿って成形される。
【0029】
図1及び図5に示すように、このとき、移動軸7の降下に伴って固定軸6との間の構成物に加わる力fは、下型3の凸状嵌合部3cと台座5の凹状嵌合部5aの接触面で、この接触面に垂直な分力fvと平行な分力fhに分解され、分力fhにより、下分割型3zの成形側面3a1同士を接近させる方向への力が加わり、結果として、下分割型3zの成形側面3a1が被成形材Mの側面へ積極的に押し付けられる。同時に下分割型3zとの分割面同士が密着し、被成形材Mの形状変化に対する影響も軽減できる。シリカガラスMは下型3及び上型4の形状に沿って成形される。
【0030】
また、下型3は、その成形側面3a1と同一方向の面で、下分割型3zに均等に4分割されているので、下型3の収縮により被成形材Mの噛み込みが発生せず、さらに、下型3に加わる力fは、成形側面3a1同士を接近させる方向に引き付ける分力fhを発生させやすい。また、下型3の凸状嵌合部3cと台座5の凹状嵌合部5aが、円錐状あるいは角錐状に形成されているので、下型3に加わる力fから、成形側面3a1同士を接近させる方向に引き付ける分力fhを確実に発生させることができる。
【0031】
さらに、成形工程において、成形型の熱膨張率を被成形材と同等、あるいはより小さくできない場合にも、力fにより被成形材が水平方向に広がろうとした結果、プレス成形用型の下型3を水平方向に広げようとする力が生じてもそれに打勝って、分力fhにより、成形側面3a1同士を接近させる方向に引き付けて、被成形材の周辺部での変形を抑制し、プレス成形型により、被成形材の側壁成形を可能とすると共に、成形型全面に確実に圧力を加えることができるようになり、プレス成形型に転写パターンを形成しておけば、刻印、特殊形状の転写精度を向上させることができるとともに、被成形物の隅々まで精密な成形を行うことができる。また、成形型と被成形材の熱膨張係数の差によって被成形材が噛み込まれるおそれがある場合でも、側面形状を管理しながら精度よくプレス加工を行うことができる。
【0032】
また、本発明に係わる加熱プレス用成形型の第2実施形態について説明する。
【0033】
本第2実施形態は、上述した第1実施形態が下型全体に被成形材と反応し難い材質を使用するのに対して、被成形材と接する部位に被成形材と反応し難い材質を使用するものである。
【0034】
例えば、図6に示すように、第2実施形態のプレス用成形型2Aは、共に一般的な金属製の下型3Aと上型4Aで構成され、下型3Aの凹状成形面3Aaには、その成形主面3Aa2に敷設された板状で被成形材と反応し難い材質としてのガラス状カーボン製の成形板11Aと、その成形側面3Aa1に付設されたガラス状カーボン製の成形側板12Aが設けられている。他の構成は図1に示す加熱プレス用成形型と異ならないので、同一符号を付して説明は省略する。
【0035】
このように少なくとも凹状成形面3Aaの成形主面3Aa2にガラス状カーボン製の成形板11Aが設けられているので、下分割型3Azの分割面の段差を一層軽減することができ、また、被成形材と接する部位のみにガラス状カーボンを使用して交換可能な別構成とすることで、下型の劣化による交換をなくし、成形コストの低減が図れる。
【0036】
このように本発明の加熱用プレス成形型を用いれば、シリカガラスの成型を容易に行うことができるし、表面に例えば、500μm以下の凹凸模様等の精密なパターンを転写したシリカガラスを得ることも容易にできるようになる。
【0037】
勿論、1μm以下の凹凸模様はさらに精度よく転写できる。
【0038】
【実施例】
図2のような高さ100μm、幅200μmのV突起のパターンを施した□40mm、厚さ3mmのガラス状カーボン板を下型にし、□40mm、厚さ2mmの石英(シリカガラス)板を、四方と上型をガラス状カーボンの鏡面研磨板で囲んで図6に示した形でプレスを行った。その際、下型と上型の温度は1450℃、加圧は2.5kN、加圧時間は80秒であった。また比較例として、四方の内向かい合った1組の側壁を拘束するガラス状カーボン鏡面研磨板をセットせず、変形が可能な状態で、同一条件にてプレスを行い、前述の図6での転写性と比較した。上記プレスは温度が安定してから加圧を開始し、加圧終了後に加えていた圧力を完全に取り除き、その後に降温を開始した。これは石英が十分に軟化しないうちに加圧した場合、パターン付き下型を破損する可能性があるためと、加圧しながら温度を下げた場合、石英とガラス状カーボンの熱膨張率の差から生じた応力が、本発明の効果により緩和することができないためである。以上のプレスの結果、図8に示すようなV突起の裾野にある未転写領域は、図7(b),(c)で示すように、未転写領域U3〜U4およびU5,U0が、側壁拘束をしなかった場合(図7(a)のU1,U2)に比べ、図6に示した型で拘束した場合には縮小していることが分かった。このことから、本発明での側壁拘束によって転写性が大幅に向上したことが確認された。また、上記プレスを実施しても、石英にもガラス状カーボン型にも破損は生じなかった。型のV突起と比較して、本手法によるプレスでもまだ転写性は甘いが、これは窒素雰囲気中のためにエア溜まりが発生した影響であり、図7(c)のように真空中で行えば未転写領域U5およびU6が殆ど認められないことからも明らかな通り改善されることが実験から分かっている。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば図3においては、下分割型3zは4分割されているが、2分割の方がセッティングが容易である。また、分割は対角方向に直線で行なわれているが、曲線等でもよい。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係わる加熱プレス用成形型によれば、成形型の収縮により被成形物を噛み込むことがなく、微細なパターンや転写が可能で、被成形材を所望の形状に成形できる加熱プレス用成形型を提供することができる。
【0041】
また、本発明に係わるシリカガラスの製造方法によれば、成形型の収縮により被成形物を噛み込むことがなく、微細なパターンや転写が可能で、被成形材を所望の形状に成形できるシリカガラスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる加熱プレス用成形型の第1実施形態の使用状態を示す概念図。
【図2】(a)は本発明に係わる加熱プレス用成形型の第1実施形態の下型の成形主面の平面図、(b)はその断面図。
【図3】本発明に係わる加熱プレス用成形型の第1実施形態の下型の平面図。
【図4】図3の下型を構成する下分割型の側面図。
【図5】本発明に係わる加熱プレス用成形型の使用時の力の状態を示す説明図。
【図6】本発明に係わる加熱プレス用成形型の第2実施形態の使用状態を示す概念図。
【図7】本発明に係わる加熱プレス用成形型及び比較例を用いた試験結果図を示し、(a)は比較例、(b)は一実施例、(c)は他の実施例である。
【図8】成形試験において比較例に発生する未転写領域の概念図。
【図9】従来の加熱プレス用成形型の使用状態を示す概念図。
【図10】従来の加熱プレス用成形型の使用状態を示す概念図。
【符号の説明】
1 成形装置
2 プレス用成形型
3 下型
3a 凹状成形面
3a1 成形側面
3a2 成形主面
3b 下型主部
3c 凸状嵌合部
3z 下分割型
4 上型
5 台座
5a 凹状嵌合部
6 固定軸
7 移動軸
8 ランプユニット
M シリカガラス
U1〜U6 未転写領域
Claims (7)
- 加熱して軟化させた被成形材をプレス成形するのに用いられる加熱プレス用成形型であって、この成形型を構成し正方形板状の凹状成形面が形成された一方の型は、複数に分割された分割型からなり、この分割型の外周に設けられ先細の凸状嵌合部を、一方の型が取り付けられ、固定軸上に固定された台座に設けられた先細の凹状嵌合部に嵌合することにより一体的に保持され、前記成形型を構成する他方の型により、被成形材を介して一方の型を押圧し、前記正方形板状の凹状成形面の成形側面により被成形材を押圧することを特徴とする加熱プレス用成形型。
- 前記成形型は、ガラス状カーボンで形成されることを特徴とする請求項1に記載の加熱プレス用成形型。
- 前記一方の型は、その成形側面と同一方向の面で分割されることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱プレス用成形型。
- 前記先細の凸状嵌合部及び前記先細の凹状嵌合部は、円錐状あるいは角錐状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の加熱プレス用成形型。
- 前記先細の凹状嵌合部の深さを変えることにより、前記凹状成形面の成形側面と成形主面に加わる力配分を調整することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の加熱プレス用成形型。
- 前記凹状成形面の少なくとも成形主面にガラス状カーボン製の成形板が取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の加熱プレス用成形型。
- 請求項1〜6のいずれかの成形型を用いて成形するシリカガラスの製造方法。
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