JP4289867B2 - 複合材料の製造方法、及びその製造方法により製造された複合材料 - Google Patents

複合材料の製造方法、及びその製造方法により製造された複合材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特殊な外部加熱手段や装置を必要とせずに少量のエネルギー消費で、工業的に簡易且つ安価であるとともに、得られる複合材料における各素材、特に金属アルミニウムの含有率を容易に調整することが可能な複合材料の製造方法、及びこの製造方法により得られる複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
複合材料とは、複数素材を巨視的に混合した組成集合体であり、各素材の持つ機械特性を相補的に利用して、単独素材では実現できなかった特性発現を可能にしたものである。基本的には、材料と材料を組み合わせる技術手法であり、マトリックスとそれに分散される分散材(強化材等)、使用目的、又はコスト等により、種々の組み合わせが存在する。
【0003】
その中でも、セラミックス基複合材料(Ceramics−Matrix−Composite:以下、「CMC」とも記す。)、金属間化合物基複合材料(Intermetallic−Matrix−Composite:以下、「IMC」と記す。)は、金属基複合材料(Metal−Matrix−Composite:以下、「MMC」とも記す。)にはない、例えば、耐熱性等に優れるといった物理的特性を有するために、多方面の産業分野への利用が図られている。
【0004】
特に、セラミックスの一種である窒化アルミニウム(AlN)は、優れた熱伝導特性や低熱膨張率を有する等の特性を生かし、高放熱性基板材料や半導体製造装置用部材として注目されている。しかしながら、窒化アルミニウムはセラミックス材料の中でも破壊靭性値が低い部類に属し、熱衝撃等の負荷がかかる使用条件下や異種材料と組み合わせる場合等においては、クラックが発生し前記特性が阻害される場合がある。このため、破壊靭性値の向上等を目的として複合材料化が検討されている。G.J.Zhang等は本材料系と同一となる、TiB2/AlN複合材料を合成するプロセスとしてAl、TiH2、BN粉末を用い、反応焼結法(Reactive−Sintering)を利用することによって元素間での反応を誘起させ、窒化アルミニウムの高強度化及び高靭性化に関して検討を行っている(非特許文献1参照)。しかしながら、この手法のようなin−situCMCの製造プロセスでは、従来法と同様に高圧・高温条件下での合成となり、またニアネットシェイプ化が困難なことから、高コストなプロセスなものとなる。このため、窒化アルミニウム、及びこれをマトリックスとするCMCの一般的な製造方法としては、高温条件下において加圧焼結する焼結プロセスが必要となるものである。
【0005】
また、具体的な関連技術として、原料粉を混合して圧粉体を作製し、これに着火して反応させることによる金属間化合物及びセラミックスの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、アルミニウムと、遷移金属のホウ化物又は炭化物を原料とし、気体状窒素の低い圧力下で燃焼合成して複合材料を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特許第2609376号公報
【特許文献2】
特表平8−508460号公報
【非特許文献1】
「Ceramics International」,(英国),1996年,22,p.143
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、高温条件下において加圧焼結することによる窒化アルミニウム等のセラミックスをマトリックスとする複合材料の製造方法においては、特別の加圧装置や製造機器が必要であり、製造コストが高いという問題点がある。また、焼結に使用する原料粉末となる窒化アルミニウムは還元窒化法、直接窒化法等の手法により合成される必要性があり、窒化アルミニウム焼結体が常圧では難焼結性を示すことからも製造工程が非常に煩雑なものとなり、更には約1700℃以上となる高温での焼成プロセス自体がエネルギー消費量過多なものである。
【0009】
上述した窒化アルミニウム原料粉末の製造方法としては、高純度なAl23粉末をカーボンにて還元しながら窒素ガス又はアンモニアガスにて窒化を行う還元窒化法と、アルミニウム粉末を窒素ガス又はアンモニアガスにて窒化させる直接窒化法とが存在する。しかしながら、還元窒化法においては高純度な窒化アルミニウム粉末が得られるといった長所がある反面、反応自体が吸熱反応であることから高エネルギーを必要とするようなプロセスとなる。また、直接窒化法においては発熱反応を利用した経済的なプロセスである反面、合成後の粒度が粗いことから更なる粉砕工程が必要となるため、焼結プロセスを材料製造プロセスとして考えた場合、原料粉末を合成する工程だけを考えても非常に高エネルギー型プロセスといわざるを得ない。また、セラミックスを焼結させる場合での、高温保持はヒーター加熱による外部エネルギーを利用して炉内雰囲気を加熱することから熱効率が悪く、極めてエネルギーロスの大きなプロセスとなる。
【0010】
また、特許文献1に示される製造方法によれば、緻密な微細構造を有する複合材料を製造するためには、生成したマトリックスを完全に溶融する必要性がある。従って、製造装置の性能や規模に制約があり、大型、又は複雑形状の複合材料の製造が極めて困難であるとともに、最終製品の形状を考慮したニアネットシェイプ化を行うことが困難であるという問題点がある。このことは、セラミックスや複合材料自体が難加工性材料という観点からも、後の工程において加工コストの増大を招く場合が想定される。
【0011】
更に、特許文献2に示される製造方法においては、不可避的に残留する金属アルミニウムの量を低減するためには反応を十分に進行させる必要性がある。しかし、材料組成比や反応条件等の厳密な制御が要求されるため、金属アルミニウム残留率を低減することは技術的、製造コスト的に困難であった。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特殊な外部加熱手段や装置を必要とせずに少量のエネルギー消費で、工業的に簡易且つ安価であるとともに、得られる複合材料における各素材、特に、金属アルミニウムの含有率を容易に調整することが可能な複合材料の製造方法、及びこの製造方法により得られる、複合材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、以下に示す複合材料の製造方法、及びこの製造方法により製造される複合材料が提供される。
【0014】
(1) 窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、前記圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、複合材料の製造方法であって、前記窒化物粉末と前記窒化ホウ素粉末との混合比が1:1.8〜1:2.2(モル比)である前記混合粉体を、前記圧粉体の空隙率が35〜70%となるように圧粉して前記圧粉体を形成することを特徴とする複合材料の製造方法。
【0015】
(2) 前記空隙率が35〜50%となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムをマトリックスとする複合材料を形成する前記(1)に記載の複合材料の製造方法。
【0016】
(3) 前記空隙率が50%超、70%以下となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする複合材料を形成する前記(1)に記載の複合材料の製造方法。
【0017】
(4) 窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、前記圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、複合材料の製造方法であって、前記窒化物粉末と前記窒化ホウ素粉末との混合比が1:0.8〜1:1.8(モル比)である前記混合粉体を、前記圧粉体の空隙率が35〜70%となるように圧粉して前記圧粉体を形成することを特徴とする複合材料の製造方法。
【0018】
(5) 前記空隙率が35〜48%となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムをマトリックスとする複合材料を形成する前記(4)に記載の複合材料の製造方法。
【0019】
(6) 前記空隙率が48%超、70%以下となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする複合材料を形成する前記(4)に記載の複合材料の製造方法。
【0020】
(7) 前記窒化ホウ素粉末の平均粒径が20μm以下である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【0021】
(8) 前記アルミニウム溶湯を含浸させた後に、1000〜1400℃で10分間以上保持する前記(1)〜(7)のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【0022】
(9) Ti、Ta、Hf、Nb、及びZrからなる群より選択される少なくとも一種の前記窒化物粉末を用いる前記(1)〜(8)のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【0023】
(10) 前記Al溶湯を、不活性ガス雰囲気下で含浸させる前記(1)〜(9)のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【0024】
(11) 前記(1)、(2)、(4)、(5)、及び(7)〜(10)のいずれかに記載の複合材料の製造方法により製造されてなるとともに、金属ホウ化物、窒化アルミニウム、及び金属アルミニウムにより構成され、前記金属アルミニウムの含有率が10体積%以下であることを特徴とする複合材料。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0028】
本発明においては、空隙率が35〜70%の範囲の圧粉体を用いているが、この圧粉体の空隙率の大小によって、その中に含浸されるアルミニウム溶湯の量も増減して、空隙率が35〜50%(窒化物粉末量を化学量論組成より過剰添加する場合は、35〜48%)の範囲の圧粉体を用いた場合には、窒化アルミニウムをマトリックスとするセラミックス基複合材料(CMC)となり、空隙率が50%超、70%以下(窒化物粉末量を化学量論組成より過剰添加する場合は、48%超、70%以下)の範囲の圧粉体を用いた場合には、窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする金属基複合材料(MMC)となることから、以下に説明する実施形態においては、便宜的に、空隙率が35〜50%(窒化物粉末が残留する複合材料の場合は、35〜48%)の範囲の圧粉体を用いた場合と、空隙率が50%超、70%以下(窒化物粉末量を化学量論組成より過剰添加する場合は、48%超、70%以下)の範囲の圧粉体を用いた場合とに分けて説明する。
【0029】
本発明の第一の実施形態は、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、得られた圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を製造する方法であり、特に、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比が1:1.8〜1:2.2(モル比)である混合粉体を、圧粉体の空隙率が35〜50%となるように圧粉して圧粉体を形成し、得られた圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、窒化アルミニウムをマトリックスとするセラミックス基複合材料(CMC)を製造するものである。
【0030】
本実施形態は、特に約1000℃以上にて発現する窒化ホウ素とアルミニウム溶湯との良好な濡れ性を利用してアルミニウムの無加圧浸透現象を発現させ、その後、元素間での自己燃焼反応によりin−situ(その場)合成でアルミニウムの窒化アルミニウムへの置換反応を誘起させ、目的とする複合材料を製造するものである。この際、特にホウ化物の安定的な生成自由エネルギーをin−situ合成エネルギーの駆動力として、固体である窒化ホウ素粉末をアルミニウム溶湯のin−situ窒化供給源として反応を生起させるものとなる。このため、前工程となる焼結性に優れた窒化アルミニウム粉末の合成、また焼結助剤の添加、混合、コンタミ(不純物)の除去、成形、焼結の必要がなく、本in−situ窒化反応により窒化アルミニウム粉末合成からマトリックス形成までを同時に行えることから、製造工程と製造コストが大幅に低減されたCMCの製造方法とすることが可能となる。
【0031】
また、アルミニウム溶湯と各元素粉末との反応により発生した自己燃焼反応熱を利用してアルミニウムから窒化アルミニウムへの置換反応を促進するため、通常約1700℃以上となる高温での焼成を必要とした窒化アルミニウム焼結体と比較して低温条件下において複合材料の製造が可能である。更に、従来の製造方法である、HP又はHIPのような高圧を必要とせず、無加圧浸透によるCMCの製造が可能である。このことにより、製品形状を模擬した型中に流動性のあるアルミニウム溶湯を含浸させることにより、製造装置の性能上困難であった、大型セラミックスの合成、又は加工費を大幅に低減させた複雑形状を有する最終製品形状を模擬したCMCの製造が可能となる。
【0032】
このため、従来法となる焼結プロセスにおいては、主として外部エネルギーを利用した高エネルギー型プロセスであったのに対し、本実施形態は元素間での自発的な内部エネルギー利用した低エネルギー型プロセスである。
【0033】
更に、従来の複合材料は外部エネルギーを加えることによって異種材料を複合材料化させる点から、その界面構造制御が非常に問題であったのに対し、本実施形態においてはin−situ(その場)合成にて強化材を生成することから上述した問題を解決し、粒子/マトリックス界面結合性が非常に良好であり、高温での化学的安定性に優れ、マトリックス内に非常に均一に微細分散する特徴を有する等の利点が存在する。なお、本実施形態は、混合粉体に含まれる窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比、及びその空隙率を上述した数値範囲内に設定した圧粉体を用いることによって、原料であるアルミニウムを効率的に消費させて、マトリックス中における金属アルミニウムの含有量を低減させ、セラミックス、具体的には、窒化アルミニウムをマトリックスとしてなるセラミックス基複合材料を製造する方法である。以下、その詳細について説明する。
【0034】
本発明の第一の実施形態に係るCMCの製造方法に用いる圧粉体は、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して形成した、多孔質構造を有するものであり、この空隙にアルミニウム溶湯、即ち、溶融状態で高温のアルミニウムを含浸させる。本発明の第一の実施形態は、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比が1:1.8〜1:2.2(モル比)である混合粉体を、その空隙率が35〜50%となるように圧粉して圧粉体を形成し、この圧粉体にアルミニウム溶湯を含浸させることを特徴とし、得られるCMCのマトリックスにおけるアルミニウム残留率をより低く、具体的には20体積%以下とすることができる製造方法である。
【0035】
本実施形態においては、圧粉体全体に網目状に広がった空隙にアルミニウム溶湯が含浸される。圧粉体に含まれる窒化物粉末、窒化ホウ素粉末、及びアルミニウムによって、下記反応式(1)に示すようなin−situ(その場)反応が生起され、緻密な微細構造を有するCMCが得られる。ここで、本発明における「圧粉」とは、適当な容器中に充填した混合粉体に適度な圧力を加えて、その空隙率を任意に変化させた状態の圧粉体を得る操作のことをいう。従って、本発明では加える圧力を調整することによって空隙率を適度な値とし、形成された空隙中にアルミニウム溶湯を含浸させて金属アルミニウムの窒化アルミニウムへの置換反応を誘起させる。
【0036】
【化1】
MeN+2BN+3Al→3AlN+MeB2 …(1)
(但し、MeNは窒化物粉末である。)
【0037】
なお、上記反応式(1)が完全に進行すると考えた場合、例えば、MeN元素にTiN、TaNを用いた場合では、理論的にTiB2(29体積%)/AlN、TaB2(33体積%)/AlN複合材料の合成が可能となる。
【0038】
本実施形態では、アルミニウム溶湯の含浸によりin−situ(その場)反応が生起されるために、従来のセラミックスをマトリックスとするCMCの製造方法において必要とされていた高温、加圧条件下による焼成が必要ではない。従って、特殊な外部加熱手段や装置が不要であるために、工業的に簡易であるとともに製造コストの低減のなされたCMCの製造方法である。更には、大型、又は複雑形状を有する部材であっても容易に製造することができる。
【0039】
また、前記反応式(1)に示すように、窒化物粉末、窒化ホウ素粉末、アルミニウムの各原料が、化学量論的には1:2:3のモル比で反応することによって、マトリックス中に原料が残留することを回避できる。即ち、本発明の第一の実施形態によれば圧粉体の空隙率を前記数値範囲内に制御することにより、原料、特にAlの残留が極力回避された、マトリックス内の残留する金属アルミニウムの含有量の低いCMCを製造することができる。なお、本発明の第一の実施形態においては、混合粉体に含まれる窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比率が1:1.9〜1:2.1(モル比)であることが好ましく、1:1.95〜1:2.05(モル比)であることが更に好ましい。
【0040】
アルミニウムが反応によって完全に消費されるための最適空隙率(理論値)は以下の通り算出することができる。即ち、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末によって形成される空隙をアルミニウム溶湯が埋め尽くしたときの各原料のモル比が最適となる空隙率を算出すればよい。ここで窒化物粉末、窒化ホウ素粉末、アルミニウムの、原子量をWMeN、WBN、WAl、密度をρMeN、ρBN、ρAlとしたとき、最適空隙率(%)は下記数式(1)に示す式により算出される。但し、下記数式(1)の最適空隙率はあくまで室温での理想的な最適値であり、実際には含浸温度での各種原料粉末の加熱による膨張等を加味する必要があり、そのため最適空隙率は下記数式(1)よりも若干変動する場合がある。
【0041】
【数1】
Figure 0004289867
【0042】
なお、上記式に従い、前記反応式(1)における最適空隙率を算出すると、MeNがTiNである場合には47.3%となる。また、本発明の第一の実施形態においては、得られるCMCのマトリックス中の金属アルミニウムの含有量を更に低減する観点からは、圧粉体の空隙率が35〜50%となるように圧粉することが好ましく、36〜48%となるように圧粉することが更に好ましい。
【0043】
なお、残留する金属アルミニウムの量に関しては、マトリックス中の金属アルミニウムの含有量が20体積%以下であれば、CMCとしての熱膨張特性等の物理特性に与える影響が無視できる程度となり、10体積%以下であれば更に好ましい。ここでマトリックスとは、窒化アルミニウム、及び不可避的に残留する金属アルミニウムからなる相のことであり、生成したホウ化物と残留する窒化ホウ素の両者からなる分散材に対する概念である。また、本発明の第一の実施形態ではマトリックス中の金属アルミニウムの含有量の下限については特に限定されるものではないが、2体積%以上とするものであり、実質的にマトリックス中の金属アルミニウムの含有量を0とすることは困難であると推測される。しかしながら、合成後のCMCとして耐熱性が必要視されない用途においては、先述した窒化アルミニウムの低い破壊靱性特性に対し、マトリックス中に残留した上記の金属アルミニウムがクラック進展時の破壊抵抗として作用し、破壊靭性値を増加させる因子として効果的に寄与するものとなる。このため、従来問題であった窒化アルミニウムに生じるクラック発生問題を低減することが可能となり、耐熱サイクル特性に優れたCMCを得ることが可能となる。
【0044】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態は、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、この圧粉体にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、複合材料の製造方法であって、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比が1:1.8〜1:2.2(モル比)である混合粉体を、圧粉体の空隙率が50%超、70%以下となるように圧粉して圧粉体を形成することを特徴とする複合材料の製造方法である。以下、その詳細について説明する。
【0045】
本実施形態は、混合粉体に含まれる窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比、及びその空隙率を上述した数値範囲内に設定した圧粉体を用い、積極的にマトリックス中に含有される金属アルミニウムの量を増加させることによって、複合材料、特に、窒化アルミニウム及び金属アルミニウムをマトリックスとしてなる金属基複合材料を製造する方法である。
【0046】
本実施形態によれば、金属基複合材料の従来法となる溶融鍛造法、加圧含浸法、固相反応法等のような高圧を必要とせず、無加圧含浸による金属基複合材料の製造が可能となる。このことにより、製品形状を模擬した型中に流動性のあるアルミニウム溶湯を含浸させることにより、製造装置の性能上困難であった、大型複合材料の合成、又は加工費を大幅に低減させた複雑形状を有する最終製品形状を模擬した金属基複合材料の製造が可能となる。
【0047】
本実施形態では、上述したように圧粉体中の空隙率を50%超、70%以下となるように圧粉する。即ち、前記反応式(1)において示した化学量論比を基準とした場合、下記反応式(2)に示すように、空隙率を増加させて過剰の金属アルミニウムをマトリックス中に残存させることによりMMCの製造が可能となる。具体的には下記反応式(2)に示すように、マトリックス中に余剰分であるxモルの金属アルミニウムを残存させる。
【0048】
【化2】
MeN+2BN+(3+x)Al→3AlN+MeB2+xAl …(2)
(但し、MeNは窒化物粉末である。)
【0049】
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。本発明の第三の実施形態は、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、得られた圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、複合材料の製造方法であり、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比が1:0.8〜1:1.8(モル比)である混合粉体を、その空隙率が35〜48%となるように圧粉して圧粉体を形成し、得られた圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることを特徴とする。本実施形態は、マトリックスにおける残留する金属アルミニウムの含有率を低減させることにより、窒化アルミニウムをマトリックスとするセラミックス基複合材料を製造する方法である。以下、その詳細について説明する。
【0050】
本実施形態では、上述したように圧粉体中の空隙率を35〜48%となるように圧粉する。即ち、前記反応式(1)において示した化学量論比を基準とした場合、下記反応式(3)に示すように、MeN量を増加させ空隙率を増加させることにより過剰のMeN及びアルミニウムをマトリックス中に残存させたCMCの製造が可能となる。具体的には下記反応式(3)に示すように、マトリックス中に余剰分であるxモルのMeNを残存させる。
【0051】
【化3】
(1+x)MeN+2BN+3Al→3AlN+MeB2+xMeN…(3)
(但し、MeNは窒化物粉末である。)
【0052】
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。本発明の第四の実施形態は、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造有する圧粉体を形成し、得られた圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、金属基複合材料の製造方法であって、窒化物粉末と窒化ホウ素粉末との混合比が1:0.8〜1:1.8(モル比)である混合粉体を、圧粉体の空隙率が48%超、70%以下となるように圧粉して圧粉体を形成することを特徴とする複合材料の製造方法である。以下、その詳細について説明する。
【0053】
本実施形態では、圧粉体中の空隙率を48%超、70%以下となるように圧粉する。即ち、前記反応式(3)において示した化学量論比を基準とした場合、下記反応式(4)に示すように、MeN量を増加させ空隙率を増加させることにより過剰のMeN及び金属アルミニウムをマトリックス中に残存させたMMCの製造が可能となる。具体的には下記反応式(4)に示すように、マトリックス中に余剰分であるxモルのMeN及びyモルの金属アルミニウムを残存させる。
【0054】
【化4】
(1+x)MeN+2BN+(3+y)Al→3AlN+MeB2+xMeN+yAl …(4)
(但し、MeNは窒化物粉末である。)
【0055】
次に、本発明の複合材料の製造方法の、更なる詳細について説明する。本発明においては、Ti、Ta、Hf、Nb、及びZrからなる群より選択される少なくとも一種の窒化物粉末を用いることが好ましい。これらの窒化物粉末は前記反応式(4)において示すように、安定なホウ化物の生成自由エネルギーを駆動力として、マトリックスのin−situ窒化反応を促進させる。更には、これらの窒化物粉末は入手が容易、且つ、安価である点においても好ましいものである。
【0056】
なお、本発明においてはアルミニウム溶湯を含浸させた後に、1000〜1400℃で10分間以上保持することが好ましい。このことにより、アルミニウムの含浸によって生起されたin−situ(その場)反応をより進行させることが可能であり、更にアルミニウムの残留率を抑えることが可能となる。なお、前述の保持時間の上限については特に限定されるものではないが、反応の進行度合い、及びエネルギーコスト等を勘案すると1〜数時間程度で十分である。
【0057】
本発明における前述の保持温度と時間は、焼結によってCMCを製造する場合の保持温度と時間に比して、低温且つ短時間であるために、本発明は、特殊な外部加熱手段や装置は不要であり、工業的にも簡易な製造方法である。
【0058】
次に、本発明の製造方法の一例を挙げ、更なる詳細を説明する。まず、平均粒径45μm以下の窒化物粉末と、平均粒径20μm以下の窒化ホウ素粉末を所定のモル比率となるように混合して混合粉体を調製する。ここで、窒化ホウ素粉末の平均粒径は10μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。なお、本発明において、窒化ホウ素粉末の平均粒径の下限値については特に限定されるものではないが、入手可能性及び取扱い容易性等の観点からは0.5μm以上であればよい。即ち、本反応のin−situ窒化反応の窒化開始ポイントは窒化ホウ素粉末に依存し、マトリックスの窒化反応の供給源として作用することから、窒化ホウ素粉末の細粒化によって窒化ポイントとなる核数を増加させることは窒化率を向上させるために効果的となる。いずれの原料についても、平均粒径が前述の数値を超えると、その後のin−situ(その場)反応において反応完結が困難となる場合があるために好ましくない。また、混合に際しては粉末の分散性を向上させるために有機系溶媒を加えてもよい。なお、前記溶媒は、窒化物粉末や窒化ホウ素粉末と反応せず、その後脱脂することによって除去できるものであればよい。
【0059】
混合粉体を所定の時間攪拌して混合した後、所望の形状となるよう容器等に入れる。その後、この混合粉体に与える圧力を調整することによって、得られる圧粉体の空隙率を制御することができる。
【0060】
その後、有機溶媒を使用した場合は脱脂を行い、使用していない場合はそのまま圧粉体とする。圧粉体の正確な空隙率は、得られた圧粉体のサイズ(体積)と質量から算出することができる。
【0061】
得られた圧粉体上に所定量の固体アルミニウムを設置し、Ar等の不活性ガス雰囲気下、700〜1400℃に加熱してアルミニウム溶湯を圧粉体に含浸させる。なお、予め調製しておいたアルミニウム溶湯を含浸させてもよい。その後、100〜1400℃で10分間保持した後、徐冷することにより、窒化アルミニウムからアルミニウムまでをマトリックスとする複合材料を製造することができる。なお、アルミニウム溶湯を含浸する際に使用する不活性ガスとしては、Ar又はN2ガスを挙げることができる。この中で、N2ガスを使用する場合、窒化ホウ素粉末からの溶融Alの窒化反応だけでなく、気相反応を利用したマトリックスの窒化反応の促進が可能となる。しかしながら、前述の窒化アルミニウム粉末合成時の直接窒化法と同様に、N2ガスはアルミニウム溶湯に対する強い反応性を示すため、これを回避する観点から、(Ar+N2)混合ガスとし、N2ガスを希釈することがより効果的となる。なお、窒化の観点からN2ガスをNH3ガスに置き換えてもよい。
【0062】
得られたCMCに残留したアルミニウムをはじめとする各原料の残留量(率)は、XRD分析にて予め所定の質量比に調整した原料及び生成物の混合粉末を用いて検量線を作成しておき、これを元にして、マトリックス組成を変化させた試料をXRD分析することにより得られた測定結果のX線強度より算出する。ここで用いる混合粉末はホウ化物と、アルミニウムと窒化アルミニウムとを混合したものであり、このアルミニウムと窒化アルミニウムとの混合粉末におけるアルミニウムと窒化アルミニウムの体積比を0:10、1:9、2:8…と順次変化させる。また、窒化物粉末が残留したCMCについては、上記混合粉末に、更に所定量の窒化物粉末を混合したものを用いる。
【0063】
次に、本発明の第五の実施形態について説明する。本発明の第五の実施形態は、これまで述べてきた本発明の第一、第三の実施形態のいずれかの製造方法により製造されてなるセラミックス基複合材料であり、金属ホウ化物、窒化アルミニウム、及び金属アルミニウムにより構成され、金属アルミニウムの含有率が10体積%以下であることを特徴とするものである。即ち、金属アルミニウムの含有率が低いためにマトリックスである窒化アルミニウムの特性が発揮され、セラミックス材料に類似した特性となる高強度であるとともに、低熱膨張率であるといった特徴を有する複合材料である。なお、金属アルミニウムを含有することによる物性値への影響を排除するといった観点から、金属アルミニウムの含有率は10体積%以下であることが好ましい。
【0064】
次に、本発明の製造方法によって得られる複合材料の他の例について説明する。この複合材料は、これまで述べてきた本発明の第二、第四の実施形態のいずれかの製造方法により製造されてなる金属基複合材料であり、金属ホウ化物、窒化アルミニウム及び金属アルミニウムにより構成され、金属アルミニウムの含有率が20体積%超の複合材料である。即ち、金属アルミニウムの含有率が20体積%超と多いために延性相となる金属アルミニウムの特性が発揮され、高靭性、高熱伝導であるとともに、低熱膨張率複合材料である。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0066】
(実施例1、2)
平均粒径45μm以下のTiN粉末と、平均粒径10μmの窒化ホウ素粉末を、モル比で1:2となるように調合し、混合した。得られた混合粉体を所定の容器に充填し、得られる圧粉体の空隙率が47.3%となるように圧粉した。得られた圧粉体上に、窒化ホウ素2モルに対して3モルのアルミニウム(市販の純アルミニウム(A1050、純度>99.5%))を設置し、Arガス雰囲気下、1200℃まで加熱してアルミニウムを含浸させ、同温度で60分保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例1)。また、平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を使用する以外は実施例1と同様の手法にて複合材料を製造した(実施例2)。
【0067】
実施例1において作製した複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×500)を図1に示す。
【0068】
(比較例1〜2)
平均粒径44μm以下のTi粉末と、平均粒径10μmの窒化ホウ素粉末を、モル比で1:2となるように調合し、混合した。得られた混合粉体を所定の容器に充填し、得られる圧粉体の空隙率が38.0%となるように圧粉した。得られた圧粉体上に、窒化ホウ素粉末と等モルのアルミニウム(市販の純アルミニウム(A1050、純度>99.5%))を設置し、Arガス雰囲気下、1200℃まで加熱してアルミニウムを含浸させ、同温度で60分保持後に徐冷して複合材料を製造した(比較例1)。また、平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を使用する以外は比較例1と同様の手法にて複合材料を製造した(比較例2)。
【0069】
比較例1において作製した複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率×500)を図2に示す。
【0070】
比較例1のTi粉末及び平均粒径10μmの窒化ホウ素粉末を使用した場合においては、図2に示されるように粗大な金属間化合物Al3Tiが生成した結果、TiB2相の合成に必要なTi粉末が消費されることにより、TiB2/AlN複合材料の合成反応が阻害されるものであった。また、比較例2のTi粉末及び平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を使用した場合においては、窒化ホウ素粉末の微粒化により所望とする反応が生起することにより粗大な金属間化合物Al3Tiは生成しなかった。
【0071】
これに対して実施例1、2のTiN粉末を用いた場合においては出発原料が窒化物となることから、窒化ホウ素粉末の粒径が1μm、10μmのもの共に金属間化合物Al3Tiの生成が抑制されるものであり、TiB2/AlN複合材料の合成反応が良好に進行するものであった(図1参照)。
【0072】
合成後の複合材料中での合成反応の生起を確認するため、次にEPMAによる元素分析(マッピング)を行った。実施例1のサンプルのEPMA分析結果を図3(a)〜(e)に示す。図3(a)〜(e)に示すように、得られた複合材料においてはチタン(Ti)とホウ素(B)、アルミニウム(Al)と窒素(N)の元素の組み合わせで存在しており、即ちTiB2、窒化アルミニウムが生成して分布することによって複合材料が構成されていることが明らかとなった。従って、本発明の製造方法の効果を確認することができた。なお、図3の原図においては各元素の存在量(%)が少ない方から多い方へ、赤色系〜黄色系〜緑色系〜青色系へと変化する色彩が付されており、各元素の存在分布がより鮮明に表されている。
【0073】
(実施例3)
平均粒径45μm以下のTiN粉末と、平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を、モル比で1:2となるように調合し、混合した。得られた混合粉体を所定の容器に充填し、得られる圧粉体の空隙率が47.3%となるように圧粉した。得られた圧粉体上に、窒化ホウ素2モルに対して3モルのアルミニウム(市販の純アルミニウム(A1050、純度>99.5%))を設置し、Arガス雰囲気下、1300℃まで加熱してアルミニウムを含浸させ、同温度で60分保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例3)。
【0074】
(実施例4)
圧粉体の空隙率40%とすること以外は、実施例3と同様の操作によって複合材料を製造した(実施例4)。
【0075】
(実施例5、6)
平均粒径45μm以下のTiN粉末と、平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を、モル比で(1+x):2(但し、xは0.25又は0.52)となるように、調合し、混合した。得られた混合粉体を所定の容器に充填し、空隙率が、x=0.25の場合には45.3%、x=0.52の場合には43.3%となるように圧粉して圧粉体とした。この圧粉体上に、窒化ホウ素粉末2モルに対して3モルのアルミニウム(市販の純アルミニウム(A1050、純度>99.5%))を設置し、Arガス雰囲気下、1300℃まで加熱してアルミニウムを含浸させ、同温度で60分保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例5、6)。
【0076】
(実施例7)
圧粉体の空隙率40%とすること以外は、実施例5と同様の操作によって複合材料を製造した(実施例7)。
【0077】
(実施例8、9)
平均粒径45μm以下のTiN粉末と、平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を、モル比で1:2となるように調合し、混合した。得られた混合粉体を所定の容器に充填し、得られる圧粉体の空隙率が60.8%及び56.4%となるように圧粉した。得られた圧粉体上に、アルミニウム(市販の純アルミニウム(A1050、純度>99.5%))を設置し、Arガス雰囲気下、1300℃まで加熱してアルミニウムを含浸させ、同温度で60分保持後に徐冷して複合材料を製造した(実施例8、9)。
【0078】
得られた複合材料はそれぞれマトリックス中での金属アルミニウム含有量が約30体積%、20体積%となり、窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする金属基複合材料の合成が可能であった。
【0079】
(実施例10、11)
平均粒径45μm以下のTiN粉末と、平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を、モル比で1.25:2となるように、調合し、混合した。得られた混合粉体を所定の容器に充填し、空隙率が60.1%、55.2%となるように圧粉して圧粉体とした。この圧粉体上に、アルミニウム(市販の純アルミニウム(A1050、純度>99.5%))を設置し、Arガス雰囲気下、1300℃まで加熱してアルミニウムを含浸させ、同温度で60分保持後に徐冷して複合材料を製造した。
【0080】
得られた複合材料はTiNを残留させながら、それぞれマトリックス中での金属アルミニウム含有量が約30体積%、20体積%となり、窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする金属基複合材料の合成が可能であった。
【0081】
(実施例12、13)
含浸ガス雰囲気にArとN2ガスの混合ガス(Ar:N2=1:1(体積比))を使用すること以外は、実施例3、8と同様の操作によって複合材料を製造した(実施例12、13)。
【0082】
(XRD分析)
作製した複合材料のXRD分析を行い反応後での構成相の確認を行った。
【0083】
(物理特性の測定)
前述の実施例3〜13において作製した複合材料から試験片を切り出し、マトリックス構成相の違いによる材料特性への影響を確認するため、熱膨張係数を測定した。なお、各種測定方法は以下の通りである。測定結果を表1に示す。
【0084】
(熱膨張率の測定)
熱膨張計(マックサイエンス製:TD−5000S)を用いて、Arガス雰囲気中にて室温から所定の温度までの測定を行った。
【0085】
【表1】
Figure 0004289867
【0086】
表1の材料特性結果に関して見ると、実施例3〜7の試料(複合材料)ではマトリックスのセラミックス化を企図しているため熱膨張係数は9ppm/K以下の値を示しており、これに対して実施例8〜11の試料では圧粉体の空隙率を化学量論組成よりも大きく増加したことから過剰にアルミニウムが供給されたことにより粒子分散型の複合法に従う形で熱膨張係数が9ppm/K以上となるMMCの合成が可能であった。このため、本手法においてはアルミニウム溶湯の無加圧含浸挙動を利用することによりCMCからMMCまで幅広い材料組成を有した複合材料の製造が可能であることが判明した。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の複合材料の製造方法によれば、特殊な外部加熱手段や装置を必要とせずに少量のエネルギー消費で複合材料を製造することができるとともに、複合材料における各素材の含有率を容易に調整することができる。また、最終製品の形状を考慮したニアネットシェイプ化も可能であるために、工業的生産工程にも好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1において作製した複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図2】 本発明の比較例1において作製した複合材料のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図3】 本発明の実施例2において作製した複合材料のEPMAによる元素マッピングをディスプレー上に表示した中間調画像を表す写真であり、(a)は無処理の写真、(b)はアルミニウム(Al)、(c)は窒素(N)、(d)はチタン(Ti)、(e)はホウ素(B)の分布を示す写真である。

Claims (11)

  1. 窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、前記圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、複合材料の製造方法であって、
    前記窒化物粉末と前記窒化ホウ素粉末との混合比が1:1.8〜1:2.2(モル比)である前記混合粉体を、前記圧粉体の空隙率が35〜70%となるように圧粉して前記圧粉体を形成することを特徴とする複合材料の製造方法。
  2. 前記空隙率が35〜50%となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムをマトリックスとする複合材料を形成する請求項1に記載の複合材料の製造方法。
  3. 前記空隙率が50%超、70%以下となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする複合材料を形成する請求項1に記載の複合材料の製造方法。
  4. 窒化物粉末と窒化ホウ素粉末とを混合して得られた混合粉体を所定の容器中に充填して、多孔質構造を有する圧粉体を形成し、前記圧粉体の空隙にアルミニウム溶湯を含浸させることにより、金属ホウ化物と窒化アルミニウムとを含む複合材料を形成する、複合材料の製造方法であって、
    前記窒化物粉末と前記窒化ホウ素粉末との混合比が1:0.8〜1:1.8(モル比)である前記混合粉体を、前記圧粉体の空隙率が35〜70%となるように圧粉して前記圧粉体を形成することを特徴とする複合材料の製造方法。
  5. 前記空隙率が35〜48%となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムをマトリックスとする複合材料を形成する請求項4に記載の複合材料の製造方法。
  6. 前記空隙率が48%超、70%以下となるように圧粉して前記圧粉体を形成し、前記窒化アルミニウムと金属アルミニウムとをマトリックスとする複合材料を形成する請求項4に記載の複合材料の製造方法。
  7. 前記窒化ホウ素粉末の平均粒径が20μm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  8. 前記アルミニウム溶湯を含浸させた後に、1000〜1400℃で10分間以上保持する請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  9. Ti、Ta、Hf、Nb、及びZrからなる群より選択される少なくとも一種の前記窒化物粉末を用いる請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  10. 前記アルミニウム溶湯を、不活性ガス雰囲気下で含浸させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
  11. 請求項1、2、4、5、及び7〜10のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法により製造されてなるとともに、
    金属ホウ化物、窒化アルミニウム、及び金属アルミニウムにより構成され、前記金属アルミニウムの含有率が10体積%以下であることを特徴とする複合材料。
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