JP4288567B2 - 磁気駆動型機構デバイス及びその製造方法 - Google Patents

磁気駆動型機構デバイス及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気駆動型機構デバイス等に関するものである。特に、磁気効率(駆動電力効率)のよい片持ち梁構造の機構デバイス及びその機構デバイスをマイクロマシーニング技術を用いて製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の磁気駆動型機構デバイスは、基板に成膜された金属薄膜の上に下部電極及び上部電極が形成されていた。また、上部電極に一端が固定された片持ち梁(以下、単に梁という)が備えられており、梁の他端は上下に可動するようになっている。梁及び下部電極には、外部磁界によって磁化され、磁気吸引力を生じさせるための磁性材料が設けられている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
そして、従来の磁気駆動型デバイスは、磁性材料が外部磁界によって磁化されて発生する磁気吸引力によって、梁の他端が下部電極に引き付けられ、接触することで、上部電極と下部電極とが電気的に接続されるようになっていた。
【0004】
【非特許文献1】
電子情報通信学会技術研究報告、ISSN0913−5685、信学技報Vol.102 No.26、17〜20ページ、2002/4/12発行
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような機構デバイスでは、外部磁界が基板面に対して垂直にかけられた場合、梁長手方向に伸びた磁性材料には、その性質上、磁性材料全体として梁長手方向の両端に磁極が生じることとなる。したがって、上部電極(梁)の磁性材料の端部の極微小部分と下部電極の磁性材料の端の極微小部分との間にだけ磁気吸引力が発生することとなり、磁気効率が低くなってしまい、駆動電力の多くが無駄に失われてしまう。
【0006】
そこで、磁気効率を高め、従来より少ない駆動電力で駆動することができる磁気駆動型機構デバイスの実現が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁気駆動型機構デバイスは、
基板と、基板に導電性を有する薄膜を積層して形成される第一の電極及び第二の電極と、導電性を有する金属薄膜により形成され、一端が第一の電極に固定され、他端は第二の電極と所定の間隙をもって配置される梁からなる可動部と、可動部に設けられた複数の磁性材料からなる第一の駆動部と、第二の電極に設けられ、外部磁界作用により第一の駆動部との間に生じる磁気吸引力により可動部を駆動させる、1以上の磁性材料からなる第二の駆動部とを備える。
本発明においては、可動部を磁気で駆動させるための磁性材料からなる第一の駆動部を、可動部において複数形成することにより、磁極を可動方向に発生させ、駆動電極効率(磁気効率)をよくする。
【0008】
本発明に係る磁気駆動型機構デバイスの製造方法は、レジストパターンを形成するフォトリソグラフィ工程と、レジストパターン内に薄膜形成する成膜工程とを所定回数繰り返し、基板に導電性を有する薄膜を積層して、第一の電極及び第二の電極を形成する工程と、フォトリソグラフィ工程と成膜工程とを行って、1以上の磁性材料を第二の電極に形成する工程と、基板に犠牲層を形成し、フォトリソグラフィ工程と成膜工程とを行った後に犠牲層を除去することで、一端が第一の電極に固定され、他端は第二の電極と所定の間隙を有して配置される、導電性を有する金属薄膜の可動部を形成する工程と、第二の電極に形成した磁性材料との間に外部磁界作用により生じる磁気吸引力で可動部を駆動させるための複数の磁性材料を、フォトリソグラフィ工程と成膜工程とにより可動部に形成する工程とを有する。
本発明においては、マイクロマシーニング技術で用いられているフォトリソグラフィ法、エッチング等を用いて、微小な片持ち梁構造の磁気駆動型デバイスを形成する際、可動部に1つの磁性材料を形成した後、フォトレジストによるパターニングを施し、エッチングにより細分化した磁性材料を一度に形成する。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る磁気駆動型機構デバイスの構成図である。図1において、基板1に成膜された金属薄膜7(本実施の形態では銅(Cu)とする)上に下部電極2及び上部電極4が形成される。また、上部電極4に一端が固定された梁3を備えており、梁3の他端は上下に可動する。梁3には、外部磁界によって磁化され、磁極が発生する梁部磁性材料6が設けられている。また、下部電極2にも下部電極磁性材料5が設けられている。
【0010】
図2は機構デバイスと磁界との関係を表す図である。磁石17は電磁石又はマグネット(永久磁石)である。電磁石は流す電流のオン・オフによって、磁界の発生の有無を制御する。一方、マグネットは、マグネットを移動させて距離を制御することで磁界発生を制御する。磁石17による磁界発生により生じた磁力は磁力線18として表される。ここで下部電極磁性材料5及び梁部磁性材料6が基板1の面に平行に設けられている場合には、梁部磁性材料6には垂直上向きに、下部電極磁性材料5には垂直下向きに磁力線18が透過する。
【0011】
図3は梁部磁性材料6の各磁性体を表す図である。図3(a)には梁部磁性材料6には複数の磁性体が集まっている。図3(b)は従来の梁部磁性材料である。本実施の形態では、図3(a)のように各磁性体を直方体で構成するものとし、高さ方向(梁3の面(基板1の面)に垂直な方向)をtとする。長さ方向(梁3の長手方向)をaとすると、a<tとなるように形成した磁性体を整列させ、梁部磁性材料6を構成する。ここで、一般に磁性材料は、厚さ方向には磁化され難く、長手方向に磁化される性質がある。そして、長手方向の一端がN極となり、他端がS極となり易い。従来は、高さ方向が厚さ方向であり、長さ方向が長手方向であった。本実施の形態の梁部磁性材料6の各磁性材料では、各磁性体にかかる磁力が高さ方向に向くものとすると、長さ方向が厚さ方向となり、幅方向が長手方向となる。つまり、各磁性材料は従来の磁性材料に対して、磁極方向が90度回転した状態となる。この結果、各磁性材料の下側全体が同極に磁化された状態となり、磁気吸引力が高められ、駆動電力の低減がはかれることとなる。
【0012】
図4は金属薄膜7の形成過程を表す図である。次に本実施の形態における機構デバイスの製造手順について説明する。基板1上全体に金属薄膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法を用いて基板1上の金属薄膜7にフォトレジスト10で下部電極2及び上部電極4となる部分を含めてパターニングする(図4(a))。ここでは、後述する犠牲層12を支えておくために、下部電極2及び上部電極4となる部分以外にもパターニングを行う。パターニングした後、例えば塩化第二鉄(FeCl3 )等の溶液でウェットエッチングを行い、余分な金属薄膜7を除去する(図4(b))そして、フォトレジスト10を除去することにより、下部電極2及び上部電極4となる位置に金属薄膜7を形成する(図4(c))。図4(d)は金属薄膜7を上面から見た図である。
【0013】
図5は下部電極2の製造過程を表す図である。機構デバイスを磁気駆動させるための下部磁性材料5として、本実施の形態ではニッケル(Ni)を用いる。また、下部磁性材料5の酸化を防止するための保護膜及び梁3との接点材料体11として金(Au)を下部磁性材料5の上に積層し、下部電極2を形成する。下部磁性材料5及び接点材料体11を形成するためにめっき処理を行う。そのため、まず、フォトグラフィ法により下部電極2となる位置の金属薄膜7を除いてフォトレジスト10で覆う(図5(a))。つまり、下部電極2を形成する部分の金属薄膜7のみを露出させた開口パターンを形成する。その後、ニッケルめっき処理して下部磁性材料5となる層を形成し、さらにその上に金めっき処理して接点材料11となる層を形成する(図5(b))。これにより、下部電極2が形成される。その後、フォトレジスト10を除去する(図5(c))。
【0014】
図6は犠牲層12の形成過程を表す図である。犠牲層12とは、梁3の立体構造を形成するために必要となる層である。完成した機構デバイスには残らない。本実施の形態では、犠牲層12の材料としてニッケルを用いるものとする。まず、フォトリソグラフィ法を用い、犠牲層12を形成する部分を露出させた開口パターンを形成する(図6(a))。そして、ニッケルめっき処理して犠牲層12を形成する(図6(b))。その後、フォトレジスト10を除去する(図6(c))。
【0015】
図7は上部電極4及び梁3の形成過程を表す図である。上部電極4及び梁3は一体形成する。本実施の形態では、上部電極4及び梁3の材料として金を用いるものとする。まず、フォトリソグラフィ法を用い、犠牲層12を形成する部分を露出させた開口パターンを形成する(図7(a))。そして、金めっき処理して上部電極4及び梁3を一体形成する(図7(b))。その後、フォトレジスト10を除去する(図7(c))。
【0016】
図8は梁3上に形成する梁部磁性材料6の形成過程を表す図である。梁3を磁力により可動させるため、本実施の形態では梁部磁性材料6に例えばニッケルを用いる。まず、フォトリソグラフィ法を用い、梁部磁性材料6を形成する部分を露出させた開口パターンを形成する(図8(a))。ここで、梁部磁性材料6を構成する複数の磁性材料に合わせて形成するため、開口部分の長さをaとする。また、各磁性材料の高さをtとするために、フォトレジスト10もt以上になるように形成する。そして、そして、ニッケルめっき処理して梁部磁性材料6を形成する(図8(b))。その後、フォトレジスト10を除去する(図8(c))。
【0017】
図9は梁部磁性材料6を覆う磁性材料保護層15の形成過程を表す図である。梁部磁性材料6の剥離防止、酸化又はウェットエッチングの保護層等の役割を果たす磁性材料保護層15を梁部磁性材料6上に積層する。磁性材料保護層15の材料として金を用いる。まず、フォトリソグラフィ法を用い、梁部磁性材料6を形成する部分を露出させた開口パターンを形成する(図8(a))。そして、金めっき処理して磁性材料保護層15形成する(図8(b))。その後、フォトレジスト10を除去する(図8(c))。
【0018】
図10は機構デバイス製造の最終過程を表す図である。梁3を支えていた犠牲層12及び最終的に不必要な金属薄膜を除去するため、塩化第二鉄及び塩酸によるウェットエッチングを行って機構デバイスが完成する(図10)。
【0019】
以上のように第1の実施の形態によれば、磁気駆動型機構デバイスにおいて、梁部磁性材料6を高さtよりも短い長さaの磁性材料に細分化して構成するようにしたので、基板1に垂直方向(つまり、梁3が可動する方向)に磁化され、基板1と平行な面(梁3の可動方向)に磁極ができるので、磁気吸引の効率が向上し、少ない駆動電力でも感度よく駆動することができる。しかも、フォトリソグラフィ法によるフォトレジストのパターンを変えることにより、従来の製造方法を大幅に変更することなく、一度に複数の磁性材料を形成することができる。また、梁部磁性材料6を残留磁化率の低いニッケルで構成したので、応答がよい磁気駆動型機構デバイスを得ることができる。さらに、下部電極2及び上部電極4を導電率のよい金で形成したので、駆動電力効率をさらによくすることができる。
【0020】
実施形態2.
図11は本発明の第2の実施の形態に係る磁気駆動型機構デバイスを示す図である。図11(a)は全体図を表し、図11(b)は梁部磁性材料6Aをさらに拡大した図を表す。図11において、梁部磁性材料6Aは、各磁性材料において、長さaだけでなく、幅(上面から見て梁3長手方向に垂直な方向)bを規定している点で梁部磁性材料6とは異なる。上述の実施の形態では長さaを規定し、高さt>長さaとした。本実施の形態では、さらに幅bを規定し、高さt>幅bとする。実施の形態1では幅bを規定しなかったが、幅によっては各磁性材料の高さ方向(梁3の可動方向)に磁極が発生しないことがあり、このような場合には磁気吸引力が弱まる。そこで、本実施の形態では、梁3の可動方向に確実に磁極が発生するように、梁部磁性材料6Aを構成する各磁性体をより細分化する。
【0021】
製造方法については、第1の実施の形態と同様であるが、梁部磁性材料6Aの形成において、フォトリソグラフィ法を用いてフォトレジスト10で梁部磁性材料6Aの形状に応じた開口パターンを形成する。完成した機構デバイスの動作方法は、第1の実施の形態で説明したことと同様であるので説明を省略する。
【0022】
以上のように第2の実施の形態によれば、梁部磁性材料6Aの各磁性材料について、さらに幅bを規定し、さらに細分化を図るようにしたので、各磁性材料の基板に対して垂直方向(梁3の可動方向)への磁化は更に強くでき、磁気吸引の効率が向上し、少ない駆動電力でも感度よく駆動することができる。しかも、梁部磁性材料6Aの重量が軽減することになるので、梁3の可動速度が向上し、スイッチングスピードを向上させることができる。
【0023】
実施形態3.
上述の第1及び第2の実施の形態では、磁性材料の例としてニッケルを用いたがこれに限定されるものではない。例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、鉄ニッケル合金等のような磁性材料であればよい。
【0024】
実施形態4.
また、上述の第1及び第2の実施の形態では、梁3の磁性材料を細分化した。本発明はこれに限定するものではなく、例えば、下部電極2の下部電極磁性材料5の構造を同様に細分化して形成しても同様の効果を得ることができる。また、上部電極4において、可動方向に磁極を発生させることができれば、梁部磁性材料6を形成する場所は梁3の上側でなくてもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、片持ち梁を磁気で駆動させるための磁性材料を、片持ち梁において複数形成することにより、磁極を可動方向に発生させることができるので、磁気吸引の効率が向上し、少ない駆動電力でも感度よく駆動することができる。
【0026】
また、本発明によれば、フォトリソグラフィ法、エッチング等を用いて片持ち梁構造の磁気駆動型デバイスを形成するようにしたので、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野に適用することができ、微小なデバイスを得ることができる。そして、その際に、片持ち梁に1つの磁性材料を形成した後、フォトレジストによるパターニングを施し、エッチングにより細分化した磁性材料を一度に形成するようにしたので、パターンを変えるだけで、大幅に変更することなく、磁気吸引力を高められるように一度に複数の磁性材料を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る磁気駆動型機構デバイスの構成図である。
【図2】 機構デバイスと磁界との関係を表す図である。
【図3】 梁部磁性材料6の各磁性体を表す図である。
【図4】 金属薄膜7の形成過程を表す図である。
【図5】 下部電極2の製造過程を表す図である。
【図6】 犠牲層12の形成過程を表す図である。
【図7】 上部電極4及び梁3の形成過程を表す図である。
【図8】 梁3上に形成する梁部磁性材料6の形成過程を表す図である。
【図9】 梁部磁性材料6を覆う磁性材料保護層15の形成過程を表す図である。
【図10】 機構デバイス製造の最終過程を表す図である。
【図11】 本発明の第2の実施の形態に係る磁気駆動型機構デバイスを示す図である。
【符号の説明】
1 基板、2 下部電極、3 梁、4 上部電極、5 下部電極磁性材料、6、6A 梁部磁性材料、7 金属薄膜、10 フォトレジスト、11 接点材料、12 犠牲層、15 磁性材料保護層、17 磁石、18 磁力線。

Claims (4)

  1. 基板と、
    前記基板に導電性を有する薄膜を積層して形成される第一の電極及び第二の電極と、
    導電性を有する金属薄膜により形成され、一端が前記第一の電極に固定され、他端は前記第二の電極と所定の間隙をもって配置される梁からなる可動部と、
    前記可動部に設けられた複数の磁性材料からなる第一の駆動部と、
    前記第二の電極に設けられ、外部磁界作用により第一の駆動部との間に生じる磁気吸引力により前記可動部を駆動させる、1以上の磁性材料からなる第二の駆動部と
    を備えることを特徴とする磁気駆動型機構デバイス。
  2. 前記第一の駆動部及び第二の駆動部において、
    前記磁性材料は、前記磁気吸引力により前記可動部が可動する方向と平行な辺が、他の辺よりも長くなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気駆動型機構デバイス。
  3. ニッケルを前記磁性材料とすることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気駆動型機構デバイス。
  4. レジストパターンを形成するフォトリソグラフィ工程と、前記レジストパターン内に薄膜形成する成膜工程とを所定回数繰り返し、基板に導電性を有する薄膜を積層して、第一の電極及び第二の電極を形成する工程と、
    前記フォトリソグラフィ工程と前記成膜工程とを行って、1以上の磁性材料を前記第二の電極に形成する工程と、
    前記基板に犠牲層を形成し、前記フォトリソグラフィ工程と前記成膜工程とを行った後に前記犠牲層を除去することで、一端が前記第一の電極に固定され、他端は前記第二の電極と所定の間隙を有して配置される、導電性を有する金属薄膜の可動部を形成する工程と、
    前記第二の電極に形成した磁性材料との間に外部磁界作用により生じる磁気吸引力で前記可動部を駆動させるための複数の磁性材料を、前記フォトリソグラフィ工程と前記成膜工程とにより前記可動部に形成する工程と
    を有することを特徴とする磁気駆動型デバイスの製造方法。
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