JP4287542B2 - セグメント構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セグメント構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
超大断面のトンネルを構築する方法として、複数の小断面シールド機械で掘削してシールドセグメントを組立て、超大断面のトンネルの外郭を構築後、外郭で包囲された内部を掘削して超大断面のトンネルを構築する方法がある。
外郭を構築する小断面シールドのセグメントが矩形断面の場合は、セグメント内部を掘削した際に、せん断力及び軸力などの断面力を受けるため、これに抵抗できる構造であることが要求される。
【0003】
この要求を満足させるため従来のセグメントは、
▲1▼外郭構造体として必要とされる大きな断面の主桁を、シールドトンネルの組立て段階から使用する。
▲2▼引張鋼材を主桁鋼材として配置し、コンクリートとの付着を大きくするため、重量の大きな鋼材のシェアーコネクターを設ける。
▲3▼主桁に直交して大断面で重量の大きな多くの縦リブを設ける構造としていた。
【0004】
しかしこの構造では、狭い作業空間内での組立て作業が大変であったり、セグメントの重量が大きくなり、かつ製作費用が高価になる等の問題があった。
【0005】
矩形シールドを施工する段階で要求される性能、及び最終の超大断面トンネルの外郭構造体で要求される性能は以下の通りである。
【0006】
<1>シールドセグメントとして要求される性能
▲1▼土水圧荷重により、セグメントは横断方向に作用する曲げモーメント、せん断力及び軸力に対して抵抗できる構造体である。(図8)
▲2▼シールド掘削機が掘進するときに、推進反力をセグメントで受けるためセグメントは推進軸力に対して抵抗できる構造体である。
▲3▼セグメントは、トンネル軸方向と横断方向で分割されて制作され、小断面シールド掘削機内で組立てられる。その際、組立てが短時間にでき、かつジョイント部で断面力に対する抵抗断面力が低下しない。
【0007】
<2>トンネルの外郭構造体として要求される性能
▲1▼トンネル全体に作用する土水圧荷重や地震荷重に対して、セグメント内部に打設されたコンクリートと一体で曲げモーメント、せん断力及び軸力に対して抵抗できる。
▲2▼セグメントの鋼材は、曲げモーメントの断面力を受けたとき引張り材として有効に配置されている。特に、横断方向でのジョイント部は引張り材として弱部にならない。
▲3▼シールドセグメントとして組立てるときには、分割したセグメントの搬入や掘削土砂の搬出の必要性から、外郭構造体としてのせん断補強が不可能である。
しかし、セグメント内部にコンクリートを打設する前にせん断補強を行う必要があり、これに対する合理的な施工法が要求される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記問題点を解決するため、
▲1▼分割セグメントの組立てを短時間に行え、さらにジョイント部の引張り抵抗と剛性がジョイント部以外の一般部と同等であること。
▲2▼シールド掘進時の推進反力に対して、セグメントが合理的に軸力抵抗できる構造であること。
▲3▼シールドセグメントとして必要最小限の断面性能とすることにより、セグメント製作費のコストダウンを図る。
▲4▼外郭構造体として必要とされる十分な引張り補強鋼材を有していること。
▲5▼セグメント内部にコンクリートを打設する前に、外郭構造体としてのせん断補強を短時間にかつ経済的に施工できる。
▲6▼セグメント内部のコンクリートを打設が容易で確実にでき、打設後にセグメントと一体となり、外郭構造体として効率的に曲げモーメントやせん断力に対して抵抗力を有するセグメント構造体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第一の発明は、シールドトンネルの横断方向に配置する主桁は、セグメントの中央に配置し内部の同一方向に鉄筋を固定した中主桁と、セグメントの両端部に平行して配置した端主桁からなり、シールドトンネルの軸方向に対面して配置する縦リブは、縦リブ間に鉄筋を配置固定し、前記主桁と縦リブの外周を、シールドトンネルの横断方向にスキンプレートで包囲して溶着し、主桁と縦リブ及びスキンプレートで形成される空間にコンクリートを充填し、セグメントのリング間接合は、端主桁に予めボルト穴を設け、端主桁の両側に取付け片をボルト接合し、取付け片にせん断補強用の鉄筋を係止する構造とし、セグメントの圧縮側接合は、端部プレート同志を短ボルトにより接合する構造とし、セグメントの引張側接合は、セグメント接合端部に予め内部にモルタルを充填した鋼板の箱状体を設けPC鋼棒により接合することを特徴とするセグメント構造体である。第二の発明は、第一の発明に記載のセグメント構造体において、セグメント端部の補強は、シールドトンネルの軸方向に配置した縦リブを、中主桁と端主桁及びスキンプレートに溶着して各主桁から突出させ、対面する縦リブの突出部間に鉄筋を定着する構造、又は、シールドトンネルの軸方向に配置した縦リブを、中主桁と端主桁と同一高さとし、対面する縦リブ間に定着プレート付き鉄筋を配置する構造としたことを特徴とする、セグメント構造体である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
【全体構成】
図1は、本発明によるセグメント構造体の一部を構成する分割セグメントSの斜視図である。本実施形態においては、この分割セグメントSをたとえば上下左右対称に組立てることにより、1リング分のセグメント構造体を構成するものである。
分割セグメントSは、シールドトンネルの横断方向に配置した中主桁1a及び端主桁1bと、シールドトンネルの軸方向に配置した縦リブ2と、前記縦リブ2〜2間に配置した鉄筋(または、ねじ節鉄筋)3と、前記中主桁1a、端主桁1bと縦リブ2の外周を、シールドトンネルの横断方向に包囲するスキンプレート4と、中主桁1a、端主桁1bと縦リブ2及びスキンプレート4で形成される空間に充填したコンクリート5から構成される。
【0012】
<イ>主桁
分割セグメント1の骨格を形成する主桁は、セグメント構造体の中央に配置した中主桁1aと、セグメント構造体の両端部に配置した端主桁1bから構成される。(図1)
本実施形態において、中主桁1aはH形鋼を使用し、端主桁1bは鋼製フラットプレートを使用している。(図2)
複数の小断面矩形シールドが完成して、相互のシールドトンネルを接合した後に、内部にコンクリート5を打設する前に、上下左右に対面する中主桁1aであるH形鋼の内側フランジ間に、せん断補強筋となる鉄筋(または、ねじ節鉄筋)3aを固定する構造とする。
鉄筋(または、ねじ節鉄筋)3aは、その一端部を定着プレート6に摩擦圧接され他端部に鋼プレート7を介在してたとえばロックナット8により固定する。鉄筋(または、ねじ節鉄筋)3aの固定は、鉄筋3aの両端に定着プレート6を摩擦圧接し、対面する中主桁1aの内側フランジ間に固定する方法、または、鉄筋3aの両端に穴あき鋼プレート7を挿通し、対面する中主桁1aの内側フランジ間にあて、ロックナット8により固定する方法もある。
【0013】
<ロ>セグメントのリング間接合構造
端主桁1bの側面に、所定間隔をあけてリングボルト穴9を設け、リングボルト10で接合を行う。(図1、図2)
ボルト接合の際、端主桁1bの両側に取付け片11をリングボルト10で接合し、端主桁1bの2枚と取付け片11の2枚とを同時に接合する構造とする。
また、取付け片11には、せん断補強用の鉄筋3aをナット12で係止する構造とする(図3.a)か、またはUフック(図3.b)で係止する構造とする。
【0014】
<ハ>セグメントのピース間接合構造
シールドセグメントは、トンネルの横断方向に1ピースずつのセグメント(分割セグメントS)を組立てて1リングを構成する。(本実施形態においてはたとえば6ピースで1リングを構成している。)
図8で示すように、外郭構造体14で包囲された内部の土塊15を掘削するときに、外郭構造体14には大きな曲げモーメントが発生する。
そのため、セグメントのピース間接合構造は外郭構造体14に発生する断面力の大小に応じて最適構造としなければならない。
【0015】
▲1▼圧縮側のピース間接合構造
図4に示すように、曲げモーメントにより圧縮側になる分割セグメントSのピース間接合構造は、外郭構造体14としてはコンクリート5により抵抗するため横断方向のジョイントは端部プレート17を、簡易の短ボルト16で接合する構造だけでよい。
【0016】
▲2▼引張側のピース間接合構造
一方、図5で示すように曲げモーメントにより引張側になるセグメントのピース間接合構造は、セグメント接合端部に予めモルタル20を充填した鋼板の箱状体18を設け、PC鋼棒19により接合した合成構造とする。
この接合構造により、セグメントのピース間接合が全断面にわたり引張状態になっても、モルタル20が充填された鋼板の箱状体18の剛性が高いため、PC鋼棒19には均等な引張力が作用して接合部のPC鋼棒19の全本数が有効に働き、引張耐力が低下しない構造とすることができる。
【0017】
<ニ>セグメント端部の補強構造
図6は、PC鋼棒と鉄筋の応力/ひずみ関係を示す図であり、図7は、接合部のPC鋼棒の他に鉄筋を補強した場合の変形特性を示す図である。
シールドセグメントのトンネル横断方向接合部は、全断面に引張力が働くために弱部となる。この弱部に、前述のPC鋼棒19以外の補強構造を設け、引張剛性を高める必要がある。
そのため、図1における縦リブ2の高さを、中主桁1a、端主桁1bのフランジよりも突出させ、突出部には後で鉄筋3を挿通し定着させる定着穴21をあけて、中主桁1a、端主桁1b及びスキンプレート4に溶接し、対面する縦リブ2の突出部間に鉄筋3を定着する構造とする。
又は、シールドトンネルの軸方向に配置した縦リブ2を、中主桁1aと端主桁1bと同一高さとし、対面する縦リブ2〜2間に定着プレート付きの鉄筋3を配置する構造としてもよい。(図示せず)
この構造形式により、図5に示すPC鋼棒19だけの構造に比較し、外郭構造体14(図8)としての曲げ変形性能を高めることができる。
このことは、水土圧による常時の荷重に対しては変形性能が必要とされなくとも、地震時において靭性率を高める上で重要な補強構造となる。
【0018】
【作用】
以下に、本発明の作用を説明する。
【0019】
<イ>分割セグメントの組立て
図1は分割セグメントSの斜視図である。
本実施形態においては、この分割セグメントSをたとえば上下左右対称に組立てることにより、1リング分のセグメント構造体を構成するものである。
分割セグメントSは圧縮側と引張側の配置により、発生する断面応力が異なるため、接合方法が異なる。
【0020】
▲1▼圧縮側の分割セグメント間接合
図4に示すように、圧縮側コンクリート5により抵抗するため横断方向のジョイントは端部プレート17を、簡易の短ボルト16で接合するだけでよい。
【0021】
▲2▼引張側の分割セグメント間接合
一方、図5で示すように引張側の分割セグメントSにはセグメント接合端部に予め内部にモルタル20を充填した鋼板の箱状体18を設け、PC鋼棒19により接合することにより、PC鋼棒19とモルタル20の合成構造を形成する。
合成構造の接合形成により、セグメントのピース間接合が全断面にわたり引張状態になってもモルタル20が充填された鋼板の箱状体18の剛性が高いため、PC鋼棒19には均等な引張力が作用して接合部のPC鋼棒19の全本数が有効に働き、引張耐力が低下しない接合構造を形成することができる。
【0022】
<ロ>セグメントのリング間接合
図3(a)はセグメントのリング間接合状態を示す斜視図である。
リングボルト穴9(図1)の位置に合わせて、接合する端主桁1b同志を両側から挟んで、取付け片11をリングボルト10により締め付け固定し接合する。取付け片11は全てのリングボルト10に設置する形式としているので、相対するセグメントのリング間の同じ位置にそれぞれ取付け片11が設置してある。
【0023】
この相対する取付け片11を利用して、せん断補強筋となる鉄筋3aを固定することにより、セグメント内に打設されるコンクリートとの付着が大きいため、外郭構造体14(図8)のせん断構造材として働くときにコンクリートに発生する斜めせん断ひび割れを分散させることができる。
尚、図3(a)に示す鉄筋3aの他に、図3(b)に示すUフック13付きの鉄筋3aを使用することもできる。
【0024】
従来のシェアーコネクターは、一般的にアングルやプレートで主桁1a、1bとスキンプレート4に格子状に溶接する必要があり、セグメントの鋼材重量の約30〜40%を占め、製作費用が高価になっていた。
【0025】
これに対して、鉄筋3は縦リブ2によりナット12で定着されているため、縦リブ2と主桁1a、1bに囲まれたコンクリートは主桁1a、1bとのずれせん断に対して抵抗できるため、従来必要とされたシェアーコネクターを設ける必要がない。
【0026】
<ハ>小断面シールド掘削機の掘進
前述により、分割セグメントの組立て及びセグメントのリング間接合作業が終了後、小断面シールド掘削機により掘削作業及び推進作業を行う。
シールド掘削機が推進時の推進反力は、既に組立てられたセグメントに全て働くため、セグメントの軸力抵抗を十分な強度としなければならない。
【0027】
従来の鋼殻セグメントでは、主桁に直交して多くの縦リブを設けて、その軸力抵抗で対処していた。
縦リブは鋼材であり、圧縮軸力に対して座屈しないように鋼材による補強を必要とし、これがセグメントを高価にしていた。
【0028】
図1乃至図5に示す本発明のセグメントは、スキンプレート4側にコンクリート5を予め打設し、その圧縮軸力で推進反力に抵抗するため、鋼材による縦リブの補強を必要としない。
そのため大きな断面の縦リブは必要とせず、安価なセグメントとすることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようになるから、次のような効果を得ることができる。<イ>セグメント主桁の断面は必要最小限とし、外郭構造体として最終的に要求される引張材は、予め鉄筋を配置する構造としたので、全断面が引張材として抵抗するときに鉄筋を引張材として有効に作用させることができる。
<ロ>同上理由により、製作費用を安価とすることができる。
<ハ>予め主桁方向に鉄筋を配置したので、コンクリートとの付着が大きく、従来必要とされたシェアーコネクターは不要となり、セグメントの鋼材重量及び製作費用を軽減することができる。
<ニ>同上理由により、狭いシールド内部空間においても繁雑な鉄筋組立ての手間が省け、能率的な作業とすることができる。
<ホ>セグメントのスキンプレート側にコンクリートを予め打設しているので、コンクリートの圧縮軸力で推進反力に抵抗するため、鋼材による縦リブの補強を必要としない。
<ヘ>引張側のセグメントを横断方向に接合する構造として、接合端部に箱状体を形成し、内部にモルタルを充填した構造としたので、剛性が高く、接合鋼材のPC鋼棒に働く引張力を均一にでき、鋼板と充填モルタルの合成構造とすることにより、安価で剛性の高い構造とすることができる。
<ト>PC鋼棒による接合の他に、相対する縦リブ間を鉄筋で結合する構造としたので、最大抵抗曲げモーメント以降の変形性能を高めることができる。
これは地震時において靭性率を高める上で重要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による分割セグメントの斜視図。
【図2】主桁の構成を示す斜視図。
【図3】リング間接合構造及びせん断補強用の鉄筋取付け状態図。
【図4】圧縮側分割セグメントのピース間接合構造図。
【図5】引張側分割セグメントのピース間接合構造図。
【図6】PC鋼棒と鉄筋の応力/ひずみ関係を示す図。
【図7】接合部のPC鋼棒の他に鉄筋を補強した場合の変形特性を示す図。
【図8】外郭構造体に作用する応力図。
Claims (2)
- シールドトンネルの横断方向に配置する主桁は、セグメントの中央に配置し内部の同一方向に鉄筋を固定した中主桁と、セグメントの両端部に平行して配置した端主桁からなり、
シールドトンネルの軸方向に対面して配置する縦リブは、縦リブ間に鉄筋を配置固定し、
前記主桁と縦リブの外周を、シールドトンネルの横断方向にスキンプレートで包囲して溶着し、
主桁と縦リブ及びスキンプレートで形成される空間にコンクリートを充填して構成し、
セグメントのリング間接合は、端主桁に予めボルト穴を設け、端主桁の両側に取付け片をボルト接合し、取付け片にせん断補強用の鉄筋を係止する構造とし、
セグメントの圧縮側接合は、端部プレート同志を短ボルトにより接合する構造とし、
セグメントの引張側接合は、セグメント接合端部に予め内部にモルタルを充填した鋼板の箱状体を設け、PC鋼棒により接合することを特徴とする、
セグメント構造体。 - 請求項1に記載のセグメント構造体において、
セグメント端部の補強は、シールドトンネルの軸方向に配置した縦リブを、中主桁と端主桁及びスキンプレートに溶着して各主桁から突出させ、対面する縦リブの突出部間に鉄筋を定着する構造、
又は、シールドトンネルの軸方向に配置した縦リブを、中主桁と端主桁と同一高さとし、対面する縦リブ間に定着プレート付き鉄筋を配置する構造としたことを特徴とする、
セグメント構造体。
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