JP4286403B2 - 被覆プラスチックフィルムおよびその製法 - Google Patents
被覆プラスチックフィルムおよびその製法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4286403B2 JP4286403B2 JP29198799A JP29198799A JP4286403B2 JP 4286403 B2 JP4286403 B2 JP 4286403B2 JP 29198799 A JP29198799 A JP 29198799A JP 29198799 A JP29198799 A JP 29198799A JP 4286403 B2 JP4286403 B2 JP 4286403B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mol
- film
- component
- content
- ethylene
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素、窒素、炭酸ガスや水蒸気などの気体の遮断性及び透明性に優れた包装材料として好適な被覆プラスチックフィルムおよびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂よりなるフィルム、特に配向されたポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムは、優れた力学的性質や、耐熱性、透明性などを有し広く包装材料として用いられている。しかし、これらフィルムを食品包装用として用いる場合には、その気体透過性が大きすぎることから酸素遮断性が不十分であり、酸化劣化による場合や好気性微生物の繁殖などによる内容物の変質を招き易く、通常は他の酸素遮断性の良い層を積層するなどの方法がとられる場合が多い。
【0003】
その最も代表的な手段としてはアルミニウムなどの金属箔をラミネートしたり、それ等金属を該熱可塑性樹脂フィルム表面に蒸着する方法があり、優れた気体遮断性、特に酸素遮断性が有効に活用されている。
【0004】
しかし、これらのアルミニウムラミネートや蒸着されたフィルムは不透明となり、これらを用いて食品の包装を行った場合にその内容物を見ることができない欠点があり、近年の包装形態の多様化、ファッション化傾向とも相俟って透明で気体遮断性に優れたフィルムへの要求がますます高まっている。
【0005】
一方、従来、気体透過性の小さな透明プラスチックフィルム素材も種々知られており、例えばポリビニルアルコールやポリアクリロニトリル系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から成るフィルム等がある。しかし、これらのフィルムは何れも単独では強度、伸度、耐水性、耐熱性などの物性が、配向されたポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムに比し不十分であり、そのため、これらのフィルムは包装材料用フィルムとして到底単独で用い得るものではなく、通常20〜40μm程度のこれらのフィルムを前記ポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルムなどとともに積層することによって用いられているのが現状である。しかもこれらのフィルムは単独でも何れも高価格であり、複層化することによって更に高価格なものとなるばかりでなくトータルの層厚みも非常に厚いものになる、高度の透明性が得られ難いなどの問題点がある。
【0006】
更にポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂は、加熱/燃焼時に有毒物を生成することから、使用済み包装材の廃棄が困難であるばかりか、使用済み包装材をリサイクルする際にも、製品品質を著しく低下させる作用を持つといった特性があり、なるべく使用を避けたいという要求もある。
【0007】
一方、ポリビニルアルコールは乾燥時の気体透過防止性は極めて優れている半面、非常に吸湿性が大きく、目的とする気体遮断性も吸湿によって大幅に低下してしまうという欠点を持つ。
【0008】
かかる問題点を改良したものとして、エチレンを25〜60モル%共重合したエチレンービニルアルコール共重合体が用いられている。しかしこれは、吸湿に対する抵抗性は改善されているもののまだ十分とは言い難く、また、エチレンの共重合により、気体遮断性もやや低下する傾向にあるといった問題がある。
【0009】
また、これらのフィルムによって得られる気体遮断性のレベルも先のアルミニウム積層されたフィルムに比べると未だ十分とは言えないことから、高透明で高度の気体遮断性を有し、単体で用い得る低価格のフィルムが強く求められているのが現状である。
【0010】
一方これらの問題を解決すべく、配向されたポリプロピレンやポリエステル、ポリアミドなどに前記ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等のバリアー性樹脂を塗布する方法も検討されており、特にポリ塩化ビニリデンについては多く用いられている。しかし、それ等の気体遮断性は未だ十分であるとは言えず、塗布厚みを大きくすることによって用いられているが、そのレベルは、アルミニウム蒸着などのレベルには程遠いものにすぎないうえ、前記した環境上の問題点についてはなんら改善されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決しようとするものであり、その目的とするところは、高度の気体遮断性、とくに高湿環境下における気体遮断性と高度の透明性を同時に満足する被覆プラスチックフィルムおよびその製法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の被覆プラスチックフィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、膨潤性を有する層状珪酸塩化合物〔以下、(A)成分という〕およびエチレン単位を2〜19モル%含有し、重合度が200〜2000、けん化度が80.0〜99.99モル%、カルボン酸及びラクトン環の含有量が0.020〜0.40モル%であるビニルアルコール系重合体〔以下、(B)成分という〕よりなる組成物の層(以下、当該被覆層ともいう)を少なくとも一層有することを特徴とする被覆プラスチックフィルム、および前記組成物を含む水性組成物を基材フイルムの少なくとも片面にコーティングし、乾燥することを特徴とする被覆プラスチックフィルムの製法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の被覆フィルムに用いられる基材フィルムとしては、透明なフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂であれば、特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやそれ等の共重合体などに代表されるごときポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンに代表されるごときポリエーテル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ポリメタキシレンアジパミドなどに代表されるごときポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニルやそれ等の共重合体に代表されるごときビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等やセロファン、アセテートなどに代表されるごときセルロース系樹脂、さらにはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、フッ素含有重合体、その他の多くの樹脂の単体、共重合体、混合体、複合体よりなる、未延伸あるいは一軸または直行する二軸方向に延伸された配向フィルムなどを挙げることができる。
【0014】
なかでも本発明の趣旨からは、基材フィルムには耐熱寸法変化や機械的強度、さらには成形性や経済性などの面から二軸延伸されたポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムである場合が好適であり、更に透明性、耐熱性、機械的強度の点から、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするごときポリエステル系フィルムであることが最も好ましい。
【0015】
フィルムの厚みは特に限定はされないが、通常は1〜250μmであり、包装材料としては3〜50μmである場合が特に好ましい。
【0016】
この基材フィルムは、単体であっても複合された多層フィルムであってもよく、多層フィルムにおける複合方法や層数などは任意である。
【0017】
本発明は、かかる熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一表面に、(A)成分および(B)成分よりなる組成物の層を少なくとも一層被覆して成ることを本質とする。
【0018】
本発明において(A)成分の膨潤性を有する層状珪酸塩化合物とは、アルミニウム、マグネシウムまたは鉄の含水ケイ酸塩であり、かつクレー鉱物の内、SiO4の四面体結晶質にもとづく繰り返し単位により層状構造をなす化合物である。この層状構造をなす化合物は、SiO4の四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオン、例えばAl3+、Fe2+、Mg3+などがイオン結合したサンドイッチ状の三層構造などの多層構造を有するものである。また、本発明において膨潤性とは、層状珪酸塩化合物が、カルボン酸類、アルコール類、水分子などの極性分子を層間に吸収することにより、層間距離が拡がり、あるいはさらに膨潤へき開して、超微細粒子となる特性を意味する。膨潤性を有する層状珪酸塩化合物としては、例えばスメクタイトなどの無制限に層膨潤するもの、すなわちコロイド状に分散するもの、および、例えばひる石などの制限的に層膨潤するものが挙げられるが、本発明の目的からは、前者の無制限膨潤するものが効果的であり好ましい。このような無制限膨潤スメクタイトグループとしては数種の鉱物があり、占有されている中央層におけるオクタヘドラルサイトの数の差により、三価及び二価に置換された中央カチオンを有するジオクタヘドラルスメクタイト及び一価に置換された二価カチオンを有するトリオクタヘドラルスメクタイトに分類される。
【0019】
ジオクタヘドラルスメクタイトの例としては、モンモロリロナイト、ビーデライト、ノントロナイトなどが、トリオクタヘドラルスメクタイトとしては、ヘクトライト、サボナイト、テニオライトなどが挙げられる。これらの鉱物は、天然のクレー中より産するもの、天然品より抽出したものの層間イオン交換処理を行った半合成品、及び天然品と類似構造を有するごとく合成した純合成品などがある。
【0020】
これらの内で、純度、均一性などの点で合成品のトリオクタヘドラルスメクタイトが好ましく、膜状にした時の透明性や、ガス不透過性の点から、〔Si8(Mg5.34Li0.66)O20(OH)4〕M+0.66(ただし、M+はNa+などの層間陽イオン)で示されるような、合成ヘクトライトを用いる場合が最も好ましい。
【0021】
このような合成ヘクトライトの層状構造における結晶構造各層は厚さ約1mmの2次元小板状を形成しており、この小板ユニットに存在するマグネシウム原子が、より低原子価陽イオンのリチウム原子と同形置換しており、小板ユニットは、負に帯電している。乾燥状態では、この負電荷はプレート面の格子構造外側にある置換可能陽イオン(通常ナトリウムイオン)と釣り合っており、固相では、これら粒子はファン・デァ・ワールス力により互いに結合し、平板の束となっている。これを水中に分散すると、置換可能な陽イオンが水和され、粒子が膨潤を起こし小板が分離する。この完全分離状態で無制限膨潤状態、すなわち透明なコロイド分散ゾルとなり、本発明に最も好ましい適用形態となる。
【0022】
水中などのイオン状態では、小板は表面負電荷となり端部は正電荷となる。表面負電荷が端部正電荷よりかなり大きい条件下では、粒子間反発により安定なゾル状態となる。しかし、粒子濃度増加や、塩添加などイオン濃度が増大する条件下では、反発力が減少し、表面負電荷と端部正電荷の吸引によるいわゆるカードハウス構造を形成し、増粘或いは、ゲル化を起こす結果となる。従来この合成ヘクトライトの用途としては、このカードハウス構造や、結果として得られるチクソトロピー性などを利用したものが多いが、より優れた気遮断性を付与するためには、このカードハウス構造をとらないようにすることが好適である。このカードハウス構造をとらずに、高粒子濃度のゾルを得るためには、ヘキサメタン酸塩、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩などのポリリン酸塩によるいわゆる解膠剤を用いることが好ましく、乾燥状態でこの解膠剤を予め付与されたごとき粉体グレードが、特に好ましく用い得る。
【0023】
一方、本発明に用いられる(B)成分のビニルアルコール系重合体(以下PVA系重合体と記すことがある)は、エチレン単位を2〜19モル%含有していることが重要であり、2.5〜17モル%が好ましく、3〜15モル%がさらに好ましく、3.5〜13モル%が特に好ましい。
【0024】
エチレン含有量が2モル%未満の場合には、(B)成分の耐湿性の低下が著しく、たとえ(A)成分を加えても、高湿環境下での気体遮断性が不十分なものとなるばかりでなく、コート液の放置安定性が低下し、コート層の生産性が低下するなどの不具合を来す。エチレンの含有量が19モル%より大の場合には、(B)成分のバリアー性レベルが低下し、全湿度領域にわたって、気体遮断性が、エチレン含量19モル%以下の場合より劣ったものとなるばかりでなく、溶媒としてアルコール/水の混合溶媒等特殊なものが必要となるため、(A)成分を加えた場合の溶液安定性が著しく悪化するという問題がある。
【0025】
本発明のPVA系重合体のエチレンの含有量は、該PVAの前駆体であるエチレン含有ポリビニルエステルのプロトンNMRから求めた。すなわち、得られたポリビニルエステルをn−ヘキサン/アセトンで再沈精製を3回以上十分に行った後、80℃減圧乾燥を3日間して分析用のポリビニルエステルを作成した。該ポリマーをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOLGX−500)を用いて80℃で測定した。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピーク(4.7〜5.2ppm)とエチレン、ビニルエステル及び第3成分の主鎖メチレンに由来するピーク(0.8〜1.6ppm)を用いてエチレンの含有量を算出した。
【0026】
本発明のPVA系重合体の粘度平均重合度(以下、重合度と略記する)は200〜2000であり、220〜1800が好ましく、240〜1600がさらに好ましく、250〜1500が特に好ましい。重合度が200未満の場合にはコート層を製造する場合の作業性が低下し満足なものが得られないのみならず、得られるものの機械的強度が小さくひび等の不具合を生じやすくなる。重合度が2000を越えると、加工時の溶液粘度が高くなり、作業性や加工性が悪くなると同時に製品におけるピンホールなどの不具合が発生しやすくなる。
【0027】
PVA系重合体の重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVA系重合体を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められるものである。
P=([η]×103/8.29)×(1/0.62)
【0028】
本発明のPVA系重合体のけん化度は80〜99.99モル%でなければならない。84〜99.9モル%が好ましく、87〜99.7モル%がより好ましく、90〜99.5モル%が特に好ましい。けん化度が80モル%未満の場合には、PVA系重合体の結晶性が極度に低下し本発明の意図する高いガスバリア性、水蒸気バリア性が得られない。一方、けん化度が99.99モル%よりも大きいPVA系重合体は安定に製造することができず、製膜化も安定にできない。
【0029】
本発明のPVA系重合体のカルボン酸及びラクトン環の含有量は0.020〜0.40モル%の範囲にあることが必要であり、0.022〜0.37モル%がより好ましく、0.024〜0.33モル%が特に好ましく、0.025〜0.30モル%が最も好ましい。本発明におけるカルボン酸はそのアルカリ金属塩を包含し、アルカリ金属としてはカリウム、ナトリウムなどがあげられる。カルボン酸及びラクトン環の含有量が少ないと、水溶液の低温での粘度安定性や高濃度水溶液の粘度安定性が低下する場合があり、一方、カルボン酸及びラクトン環の含有量が0.40モル%を超える場合には、水との親和性が高くなるため、高湿環境下の気体遮断性や水蒸気のバリア性が悪化することがある。
【0030】
さらに本発明のPVA系重合体が下記の式を満足するカルボン酸及びラクトン環の含有量である場合に、本発明の効果は著しく高くなり好ましい。
−1.94×10-5×P+0.044≦含有量≦−1.39×10-4×P+0.42
(ここで、含有量(単位:モル%)はカルボン酸及びラクトン環の含有量を表し、Pはビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度を表す。)
【0031】
エチレン単位を特定量有しかつカルボン酸及びラクトン環を有するPVA系重合体の製法としては、
▲1▼酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体とカルボン酸及びラクトン環を生成する能力を有する単量体とを共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化する方法、
▲2▼メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのカルボン酸を含有するチオール化合物の存在下で、ビニルエステル系単量体を重合した後それをけん化する方法、
▲3▼酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合する際に、ビニルエステル系単量体及びビニルエステル系重合体のアルキル基への連鎖移動反応を起こし、高分岐ビニルエステル系重合体を得た後にけん化する方法、
▲4▼エポキシ基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をカルボキシル基を有するチオール化合物と反応させた後けん化する方法、
▲5▼PVAとカルボキシル基を有するアルデヒド類とのアセタール化反応による方法などが挙げられる。
【0032】
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを得る点からは酢酸ビニルが好ましい。本発明のカルボン酸及びラクトン環を生成する能力を有する単量体としては、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体、アクリル酸及びその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0033】
PVA系重合体のカルボン酸及びラクトン環の含有量はプロトンNMRのピークから求めることができる。けん化度99.95モル%以上に完全にけん化後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間して分析用のPVAを作成した。上記▲1▼の場合、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。アクリル酸、アクリル酸エステル類、アクリルアミド及びアクリルアミド誘導体の単量体は、主鎖メチンに由来するピーク(2.0ppm)を用いて、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド及びメタクリルアミド誘導体の単量体は、主鎖に直結するメチル基に由来するピーク(0.6〜1.1ppm)を用いて、常法により含有量を算出した。フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体は、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解後トリフルオロ酢酸を数滴加え、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。定量は4.6〜5.2ppmに帰属されるラクトン環のメチンピークを用いて常法により含有量を算出した。▲2▼ 及び▲4▼の場合、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.8ppm)を用いて含有量を算出した。▲3▼ の場合、作成した分析用PVAをメタノール−D4/D2O=2/8に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定した。末端のカルボン酸もしくはそのアルカリ金属塩のメチレン由来ピーク{下記の構造式(I)及び構造式(II)})は2.2ppm(積分値A)及び2.3ppm(積分値B)に帰属し、末端のラクトン環のメチレン由来ピークは{下記の構造式(III)}は2.6ppm(積分値C)、ビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.5〜4.15ppm(積分値D)に帰属し、下記の式でカルボン酸及びラクトン環の含有量を算出する。ここで△は変性量(モル%)を表す。
【0034】
カルボン酸及びラクトン環の含有量(モル%)
=50×(A+B+C)×(100−△)/(100×D)
【0035】
【化1】
【0036】
【化2】
【0037】
【化3】
【0038】
▲5▼の場合、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。アセタール部分のメチンに由来するピーク4.8〜5.2ppm{下記の構造式(IV)}を用いて、常法により含有量を算出した。
【0039】
【化4】
【0040】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルアルコール単位、エチレン、ビニルエステル単位及び前述のカルボン酸及びラクトン環を生成する能力を有する単量体以外の単量体単位を含有していてもよい。このような単位としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、使用される目的や用途等によって異なるが通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下である。
【0041】
本発明のPVA系重合体は、前述のカルボン酸を有すメルカプタンを除く2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプトなどのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を、エチレンと共重合し、それをけん化することによって得られる末端変性物でもよい。
【0042】
ビニルエステル系単量体とエチレンとの共重合の方法としては、塊状重合法、溶液重法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
【0043】
本発明のPVA系重合体の融点は160以上であることが好適であり、170℃以上が好ましく、175℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVA系重合体の結晶性が低下し耐水性及びガスや水蒸気のバリア性が低下する傾向がある。
【0044】
PVA系重合体の融点は、DSCを用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVA系重合体の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
【0045】
本発明に用いるPVA系重合体は、アルカリ金属を含有することが好適である。PVA系重合体(B)100重量部に対するアルカリ金属(C)の含有割合は、アルカリ金属(C)がナトリウム換算で0.0003〜1重量部であり、0.0003〜0.8重量部が好ましく、0.0005〜0.6重量部がより好ましく、0.0005〜0.5重量部が特に好ましい。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、それらは主として酢酸やプロピオン酸などの低級脂肪酸の塩、本発明のカルボン酸を特定量含有するPVAのカルボン酸の塩及び共重合単量体中に含まれるスルホン酸の塩として存在し、さらには添加剤中に存在する場合も一向に差し支えない。アルカリ金属の含有割合が0.0003重量部未満の場合には、PVA系重合体を水溶液として使用する際に該PVAの水溶性が低下する傾向がある。一方1重量部を越える場合には、PVA系重合体の結晶性が低下するためか気体や水蒸気の遮断性が低下する傾向がある。なお、以下、本発明においては特に触れない限り、PVA系重合体(B)はアルカリ金属(C)を含んだ状態のものを言う。
【0046】
本発明において、特定量のアルカリ金属(C)をPVA系重合体中に含有させる方法は特に制限されず、いったんPVA系重合体を得た後にアルカリ金属含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中においてけん化するに際し、けん化触媒としてアルカリ金属を含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA系重合体中にアルカリ金属を配合し、けん化して得られたPVA系重合体を洗浄液で洗浄することにより、PVA系重合体中に含まれるアルカリ金属を制御する方法などが挙げられるが後者の方が好ましい。アルカリ金属の含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0047】
本発明の特定のエチレンを有するPVA系重合体の製法としては、エチレンと前述のビニルエステル系単量体とを共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化する方法などの公知の方法が挙げられる。
【0048】
けん化触媒として使用するアルカリ性物質としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがあげられる。けん化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括添加しても良いし、けん化反応の途中で追加添加しても良い。けん化反応の溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜1重量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.003〜0.9重量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.005〜0.8重量%に制御したメタノールが特に好ましい。けん化反応の温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。けん化時間としては5分間〜10時間が好ましく、10分間〜5時間がより好ましい。けん化方法としてはバッチ法や連続法など公知の方法が適用可能である
【0049】
洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エステル、ヘキサン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。洗浄液の量としてはアルカリ金属(C)の含有割合を満足するように設定されるが、通常、PVA100重量部に対して、30〜10000重量部が好ましく、50〜3000重量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。洗浄方法としてはバッチ法や交流洗浄法など公知の方法が適用可能である。
【0050】
本発明において、(A)成分と、(B)成分との配合比は、効果的な気体遮断効果を得る意味において重要である。即ち、(A)成分/(B)成分の重量比が0.5/99.5〜70/30の範囲内であることが好適であり、5/95〜50/50である場合が特に好ましい。これらの配合比を採用することによって、本来の気体遮断効果以外にも、被覆フィルムの透明性とすべり性の関係や、帯電防止性、更には被覆層の耐久性などの性質がいずれも好ましく改善される。
【0051】
上記配合比が0.5/99.5より小さい場合には、(A)成分の添加効果が十分でなく、また、70/30を超える場合には、(B)成分と無機物との相互作用が強いことから、配合組成物の急激な増粘や、ゲル化を招く、被覆フィルム層が著しく脆くなり、亀裂等を生じることによる気体遮断性の低下などを惹起し易くなり、実質的に有効な効果を発揮し難い。
【0052】
(A)成分及び(B)成分よりなる組成物を得るための配合方法は、公知の任意の混合方法をとることが可能であるが、(A)成分及び(B)成分の配合効果を最も効果的に得るには、(A)成分を予め水中にて、層間水和による膨潤を行わしめた後、(B)成分またはその溶液中あるいは(B)成分の製造過程、すなわち重合反応など、高分子化の過程における任意の段階に添加、混合せしめる方法が好ましく用いられる。中でも透明性や、安定性に優れた塗布液組成物を得るためには、(A)成分及び(B)成分両者をそれぞれ十分に希釈した後、撹拌しつつ混合せしめる方法が特に好ましく用い得る。
【0053】
(A)成分および(B)成分からなる組成物は、それのみで用いてもよいが、本発明の目的を阻害しない限り混合可能な他の樹脂と併用することができる。このような樹脂としては、例えば共重合されていないポリビニルアルコールやポリアクリル酸またはそのエステル類、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂その他の多くのものを挙げることができる。
【0054】
また、これらの樹脂組成物中にこれらと反応し得る反応基を有する高分子または低分子の化合物よりなる架橋剤を配合することも可能である。架橋剤を配合することによって一般に当該被覆層の耐久性や密着性などが向上する場合が多い。これらの架橋剤としては従来公知のものが任意に用い得るが、気体遮断効果の点からは当該被覆層の分子間隙をできるだけ拡げないためにも、なるべく低分子の化合物を用いることがより好ましい。このような化合物の例としては、硼酸などの硼酸化合物、グルタルアルデヒドなどの低分子多価アルデヒドなどが好ましく挙げられる。また、変性重合体分子中にカルボン酸成分を含ませ多価金属によるイオン架橋を行うことも可能である。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、通常水または、水と混合可能な任意の有機溶媒(例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールなど)とを混合した水性媒体に溶解、分散または乳化して用いられる。該水性媒体の組成は特に限定はされないが、樹脂の溶解性、分散性などを阻害しない範囲であれば、塗布性、乾燥性などの点から、水/アルコール系混合溶媒を用いることがより好ましい。
【0056】
また、基材フィルムにこのような組成物の層を形成する方法としては、溶液コーティング法、ラミネート法など任意の方法が用い得るが、特に樹脂組成物の水性溶液あるいは水性分散液などの水性樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布、乾燥し、さらに必要に応じ熱処理を行うコーティング法が有効に用いられる。このような水性組成物からなる塗工液は、経時変化が少なく、凝集・沈殿の生成が極めて少ない。このために、安定した性能を有する被覆プラスチックフイルムを得ることができる。コーティング方法としては、グラビアやリバース等のロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ、ノズルコーティング法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法など通常の方法が用い得る。
【0057】
当該被覆層の厚みは、基材フィルム、及び目的とするレベルなどによって異なり、通常は乾燥後厚みで10μm以下、好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下であることが透明性、取り扱い性、経済性等の点で好ましい。下限は特にないが0.05μm以下である場合には実質的に十分な効果が得られ難い。
【0058】
コーティング時の乾燥、熱処理の条件は、塗布厚み、装置の条件にもよるが、通常70〜170℃程度の範囲から選ぶことが好ましい。乾燥。熱処理は一工程で行っても良いし、乾燥工程、熱処理工程を別々の工程で行っても良い。別工程で行う場合は、乾燥工程は温度70〜90℃、熱処理工程は温度90〜170℃、時間はそれぞれ5秒〜10分程度の範囲から選ぶことが好ましい。
【0059】
なお、当該被覆層を形成させる前に基材フィルムにコロナ処理その他の表面活性化処理や公知のアンカー処理材を用いてアンカー処理を施すことは好ましい。また、被覆すべき組成物中に制電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤等の公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
【0060】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより詳細に述べる。
なお、例中の濃度表示は、特に断らないかぎり重量基準であり、評価は以下の方法によった。
【0061】
[酸素透過性]
MODERN CONTROLS INC.製酸素透過量測定装置MOCONOX−TRAN2/20型を用い、20℃、65%RH及び20℃、100%RHの条件でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した。なお、本発明でいう酸素透過度は、基材層による寄与を計算により除去し、コート層の寄与分について、膜厚2μmでの酸素透過量に換算したした値(ml・2μm/m2・day・atm)である。また、コートフィルム全体の酸素透過量V(CC/m2・day・atm)は
1/V=1/VB+1/VC
VB:基材フィルムの酸素透過量(CC/m2・day・atm)
VC:コート層の酸素透過量(CC/m2・day・atm)
により求められる。
【0062】
[ヘイズ]
試料フィルムの一部を切り取りシリコンオイルを塗布して、村上色彩技術研究所製HR−100を用い、ASTM D1003−61に従ってヘイズ値を測定した。
【0063】
[摩擦係数]
ASTM−D−1894に準拠し、被覆層面と、基材フィルム面(裏面)との間の静摩擦係数により判定した。
【0064】
[塗工液安定性]
作成した塗工液を室温下に密閉状態で3日間保存し、凝集・沈殿等の生成の有無を目視観察した。
【0065】
実施例1
(塗布液の調製)
[A成分の調製]
解膠剤としてピロリン酸ナトリウムを6w%配合した合成ヘクトライト
〔Si8(Mg5.34Li0.66)O20(OH)4〕Na+0.66(日本シリカ工業製ラポナイトXLS)を撹拌しつつ水中に添加し、10%の膨潤吸水ゾルとしたものを(A)成分とした。
【0066】
[エチレン変性PVA(B成分)の調製]
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口、開始剤添加口及びディレー溶液添加口を備えた250L加圧反応槽に酢酸ビニル107.2kg、メタノール42.8kg及び無水マレイン酸15gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cm2となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。またディレー溶液として無水マレイン酸をメタノールに溶解した濃度5%溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液204mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて640ml/hrでAMVを、また上記ディレー溶液を用いて無水マレイン酸を重合系中の酢酸ビニルと無水マレイン酸の比率が一定となるようにしながら連続添加して重合を実施した。4時間後に重合率が30%となったところで冷却して重合を停止した。この時点でディレーにより添加した無水マレイン酸ディレー溶液の総量は1400mlであった。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が30%となるように調製したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液333g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリ添加後約1分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥エチレン変性PVAを得た。得られたエチレン変性PVA樹脂を分析したところ、けん化度は98.5モル%、アルカリ金属の含有量は、変性PVA100重量部に対して0.36重量部、エチレンの含有量は7モル%、平均重合度1000、カルボン酸及びラクトン環含有量0.246モル%、1,2−グリコール結合量1.61モル%、水酸基3連鎖含有量87%、融点210℃であった。
であった。
【0067】
得られたエチレン変性PVA樹脂を、固形分2%となるよう温水に溶解後室温まで冷却し、(B)成分とした。
【0068】
(A)成分と(B)成分をそれぞれの固型分比が(A)成分/(B)成分=30/70なるごとく混合し、固型分2%の水溶液を作製し、塗工液とした。
【0069】
(被覆フィルムの作製)
得られた塗布液をコロナ放電処理された厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面上にバーコーターを用いて塗布、80℃で5分間乾燥の後、150℃で5分間の熱処理を行い被覆フィルムを得た。当該被覆層の乾燥厚みは4.0μmであった。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0070】
実施例2
基材フィルムとして、コロナ放電処理された厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、熱処理温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0071】
実施例3
エチレン変性PVAの重合条件を変更し、けん化度は97モル%、ナトリウムの含有量は変性PVA100重量部に対して0.25重量部、エチレンの含有量は3モル%、平均重合度500、カルボン酸及びラクトン環含有量0.277モル%、1,2−グリコール結合量1.66モル%、水酸基3連鎖含有量88%、融点207℃のエチレン変性PVAを得た。これを(B)成分とした以外は、実施例1と全く同様にして被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0072】
実施例4
エチレン変性PVAの重合条件を変更し、けん化度は98モル%、ナトリウムの含有量は変性PVA100重量部に対して0.01重量部、エチレンの含有量は13モル%、平均重合度300、カルボン酸及びラクトン環含有量0.267モル%、1,2−グリコール結合量1.46モル%、水酸基3連鎖含有量78%、融点196℃のエチレン変性PVAを得た。これを(B)成分とした以外は、実施例1と全く同様にして被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0073】
実施例5
(A)成分と(B)成分との比が(A)成分/(B)成分=5/95となるごとく変更したこと以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例6
(A)成分と(B)成分との比を(A)成分/(B)成分=50/50とし、固型分1.5%となるよう変更したこと以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0075】
比較例1
当該被覆層用樹脂組成物の被覆を行わず、基体ポリエステルフィルムのみで評価を行った。結果を表1に示す。なお、基材単体の酸素透過度は65%RHで40CC/m2・day・atm、85%RHで43CC/m2・day・atm(厚み換算を行わず)であった。
【0076】
比較例2
当該被覆層用樹脂組成物として、エチレンを含まないポリビニルアルコール((株)クラレ製 クラレポバール(TM)110)を用いた以外は実施例1と全く同様にして被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0077】
比較例3
当該被覆層用樹脂組成物として、エチレン含量27モル%のエチレン変性PVA樹脂((株)クラレ製 エバール(TM) EP−L101)を用い、溶媒として水/n−プロパノール=1/1液を用いた以外は実施例1と全く同様にして被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0078】
比較例4
(B)成分を含まず、(A)成分のみにより当該被覆層を形成した以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0079】
比較例5
(A)成分を含まず、(B)成分のみにより当該被覆層を形成した以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0080】
比較例6
実施例1における(A)成分の代わりに、非膨潤性球状シリカコロイドゾルを用いた以外は、実施例1と全く同様の方法で、被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
以上、実施例で示したように、本発明の被覆フィルムは、透明性、気体遮断性、とくに高湿環境下における気体遮断性に優れており、さらにすべり性も優れている。また、本発明の方法によれば、塗工液の経時変化が少なく、凝集、沈殿の生成が少ないため、塗工が容易であるばかりでなく、安定した性能を有する被覆プラスチックフイルムを得ることができる。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、膨潤性を有する層状珪酸塩化合物(A)およびエチレン単位を2〜19モル%含有し、重合度が200〜2000、けん化度が80.0〜99.99モル%、カルボン酸及びラクトン環の含有量が0.020〜0.40モル%であるビニルアルコール系重合体(B)からなる組成物の層を少なくとも一層有することを特徴とする被覆プラスチックフィルム。
- 膨潤性を有する層状珪酸塩化合物が、コロイド性層状珪酸塩化合物である請求項1記載の被覆プラスチックフィルム。
- 膨潤性を有する層状珪酸塩化合物が、合成ヘクトライトである請求項1記載の被覆プラスチックフィルム。
- 熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、膨潤性を有する層状珪酸塩化合物(A)およびエチレン単位を2〜19モル%含有し、重合度が200〜2000、けん化度が80.0〜99.99モル%、カルボン酸及びラクトン環の含有量が0.020〜0.40モル%であるビニルアルコール系重合体(B)を含む水性組成物をコーテイングし、乾燥することを特徴とする被覆プラスチックフィルムの製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29198799A JP4286403B2 (ja) | 1999-10-14 | 1999-10-14 | 被覆プラスチックフィルムおよびその製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29198799A JP4286403B2 (ja) | 1999-10-14 | 1999-10-14 | 被覆プラスチックフィルムおよびその製法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001105543A JP2001105543A (ja) | 2001-04-17 |
JP4286403B2 true JP4286403B2 (ja) | 2009-07-01 |
Family
ID=17776060
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29198799A Expired - Lifetime JP4286403B2 (ja) | 1999-10-14 | 1999-10-14 | 被覆プラスチックフィルムおよびその製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4286403B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4744834B2 (ja) * | 2004-09-28 | 2011-08-10 | 日本合成化学工業株式会社 | 樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体および容器 |
JP6504442B2 (ja) * | 2015-03-18 | 2019-04-24 | 株式会社リコー | 立体造形用粉末材料、立体造形用材料セット、及び立体造形物製造方法 |
-
1999
- 1999-10-14 JP JP29198799A patent/JP4286403B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001105543A (ja) | 2001-04-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI406764B (zh) | 氣體阻障性積層體 | |
JP2803179B2 (ja) | 被覆プラスチックフイルム | |
CN106313833A (zh) | 气体阻隔性层叠体 | |
JP2002241671A (ja) | ガスバリア性コート剤およびガスバリア性被膜並びにガスバリア性フィルム及びその製造方法 | |
JP2789705B2 (ja) | 被覆プラスチックフィルム | |
Xue et al. | Polyvinyl alcohol/α-zirconium phosphate nanocomposite coatings via facile one-step coassembly | |
JP3333784B2 (ja) | 水性組成物および積層体 | |
JP2019119214A (ja) | ガスバリア性積層フィルム | |
JP4286403B2 (ja) | 被覆プラスチックフィルムおよびその製法 | |
JP2832876B2 (ja) | 複合蒸着フィルム及びその製造方法 | |
JP2001121659A (ja) | ガスバリア性フィルム | |
EP0716668B1 (en) | Solution coating process for packaging film | |
JP3898536B2 (ja) | 樹脂組成物および用途 | |
JP4689780B2 (ja) | ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 | |
JP2014037122A (ja) | マット調ガスバリア性ポリアミド系樹脂フィルム | |
JP4146169B2 (ja) | ガスバリア性組成物、コート剤およびフィルム | |
JP4836322B2 (ja) | ガスバリア性コート剤、組成物および積層フィルム | |
JPH11314674A (ja) | ガスバリア容器および食品用包装材 | |
JP2015036215A (ja) | ガスバリア層およびガスバリア性フィルム | |
JP3400128B2 (ja) | 水性組成物および積層体 | |
JP4708529B2 (ja) | ガスバリア性フィルムの製造方法 | |
JP3893673B2 (ja) | ポリビニルアルコール系重合体及び包装材料、及びコーティング用組成物 | |
JP4290228B2 (ja) | 積層体の製法 | |
JP7381061B2 (ja) | ガスバリア性積層体 | |
JP2001114966A (ja) | 樹脂組成物、その製造法および用途 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060725 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20081023 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081028 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081218 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20081218 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090303 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090325 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120403 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4286403 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120403 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130403 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130403 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140403 Year of fee payment: 5 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |