JP3893673B2 - ポリビニルアルコール系重合体及び包装材料、及びコーティング用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリヤー性に優れた層を提供する重合体、特にガスバリヤー性に優れた包装材料を得るに好適な重合体に関する。より詳しくは、ポリビニルアルコール系重合体を用いてガスバリヤー性に優れた層を得る際に、高いガスバリヤー性を維持しつつ、耐水性を向上させた層を得るための発明に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品やさまざまな物品を包装するための包装材料には、ガスバリヤー性、特に酸素バリヤー性が要求されることが多い。これは、酸素等により包装内容物が酸化劣化するなどの影響を防ぐためである。特に食品の包装にあっては、酸素が存在することにより微生物が繁殖し、内容物が腐敗するといった問題がある。このため、従来の包装材料には、酸素の透過を防ぐガスバリヤー層を設け、酸素等の透過を防止している。
【0003】
このガスバリヤー層は、金属箔や金属ないし金属化合物の蒸着層などが一般的であり、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層、酸化ケイ素蒸着層などが実用的である。一方、包装材料として一般的なプラスチックフィルムのうち、ポリビニルアルコール系重合体やポリ塩化ビニリデンなどの、ガスバリヤー性の優れた樹脂が用いれることもあった。
【0004】
しかしながら、上記金属を用いるものは、内容物が見えないという問題があり、また、廃棄性に劣るというデメリットがあった。他方、ガスバリヤー性プラスチックは透明であり、廃棄性の問題も少ないものであった。このようなメリットを生かし、ポリビニルアルコール系重合体はガスバリヤー性重合体として広く用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記ポリビニルアルコール系重合体は、重合体の水酸基同士が水素結合することにより結晶化してガスバリヤー性を発揮するものであることから、乾燥した状態では高いガスバリヤー性を示すものの、雰囲気の水蒸気などにより重合体が吸湿した状態では、上記水素結合が弛み、ガスバリヤー性が低下することが知られている。
【0006】
ポリビニルアルコールにエチレンを共重合させることにより、耐水性を若干向上させることができるが、限界がある。また、ポリビニルアルコール系重合体を変成させて架橋させることにより、耐水性を向上させることも可能であるが、今度は架橋したポリビニルアルコール系重合体に空隙が生じ、この空隙が酸素の通り道となってしまい、ガスバリヤー性が低下してしまうという問題があった。このように、ポリビニルアルコール系重合体のガスバリヤー性と耐水性をともに満足させることは、困難であった。
【0007】
本発明者は、上記従来の問題を、炭酸ビニレン単体の重合体、あるいは下記式[1]で表される化合物との共重合体又はこれらの三元共重合体を加水分解した重合体が高分子側鎖に水酸基を数多く持つことにより、その水素結合力により結晶が増加し、高湿度下においてもガスバリヤー性を維持できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
【化2】
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明の第1の発明は、基材フィルム上に、炭酸ビニレンの重合体を加水分解した、又は、炭酸ビニレンと下記式[1]で表される化合物との共重合体又は三元共重合体を加水分解した、ポリビニルアルコール系重合体を溶融押出形成した層を有する、包装材料である。
【0011】
【化3】
【0014】
また本発明の第2の発明は、基材フィルム上に、請求項1記載のポリビニルアルコール系重合体が溶媒に溶解されているコーティング用組成物を塗布、乾燥して形成したコーティング層を有する、包装材料である。
【0015】
また本発明の第3の発明は、繊維質基材に、請求項1記載のポリビニルアルコール系重合体が溶媒に溶解されているコーティング用組成物を塗布ないし含浸させたことを特徴とする、包装材料である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のポリビニルアルコール系重合体は、炭酸ビニレン単体の重合体、あるいは炭酸ビニレンと下記式[1]で表される化合物との共重合体又はこれらの三元共重合体を加水分解した重合体である。下記式[1]で表される化合物としては、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸2ープロペニル、αークロロ酢酸ビニル等を使用することができる。
【0017】
【化4】
【0018】
炭酸ビニレン単体の重合体、あるいは炭酸ビニレンと酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸2ープロペニル、αークロロ酢酸ビニル等との共重合体又はこれらの三元共重合体を得るには、これらを重合開始剤を用いて重合させることにより製造することができる。
炭酸ビニレンの割合は、重合させる全モノマーに対して10モル%以上とする必要がある。これより少ないと最終目的物としたときの水酸基が少なくなり結晶性が増加せず、目的とするガスバリヤー性が得られない。
【0019】
重合開始剤としては、α,α’ーアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス(4ーメトキシー2,4ージメチルバレロニトリル)、アゾビス(2,4ージメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジーtertーブチルパーオキサイド等を用いて熱により重合を開始させるものを用いることができる。この重合開始剤は、0.01〜10重量%程度添加すればよい。反応温度は、40〜140℃好ましくは、60〜100℃の範囲で、6〜72時間好ましくは、12〜24時間反応させるとよい。
【0020】
作成した重合体は塩基性条件下で加水分解することにより目的とする重合体が得られる。加水分解には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の塩基性物質又はアルコール溶液を用いることができる。この重合体は完全ケン化でき、ケン化度は、99.8%以上である。
尚、共重合してできた共重合体は、ランダム共重合体である。
【0021】
前述のようにして得られた本発明の重合体は、成膜性(造膜性)を発揮させるため、約5,000以上の分子量を有していることが好ましい。そしてこの重合体は熱可塑性を有しているので、そのまま、あるいは必要に応じて各種の添加剤(例えばはじき防止のためのアルキル硫酸ナトリウムやフッ素系の界面活性剤など)を添加、混合することにより、溶融押出してプラスチック等の基材フィルムに積層することができる。また、メチルアルコールやエチルアルコール等のアルコールとジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルモルホリンオキシド等との混合溶媒に溶解させることにより、そのまま、あるいは必要に応じて各種の添加剤を添加、混合することにより、プラスチックフィルム等の基材フィルムへのコーティング組成物、あるいは紙や不織布、合成紙などの繊維質基材に対するコーティング、含浸組成物として使用できる。
【0022】
基材フィルムへの溶融押出による積層及びコーティングによる使用は、本発明の効果的な用途の一つである。すなわち、基材フィルムに溶融押出による積層またはコーティング組成物を塗布し、加熱、乾燥して本発明の組成物からなる被膜を形成することにより、基材フィルムにガスバリヤー性を付与でき、従ってガスバリヤー性に優れた包装材料を得ることができるからである。
【0023】
基材フィルムとしては、溶融押出による積層またはコーティング組成物をコーティング可能であれば特に制限はないが、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミドなど、あるいはこれら高分子の共重合体など通常包装材料として用いられるものが使用できる。もちろんこれらを複数積層した、多層フィルムを用いることもできる。
これら基材フィルムの中でも、機械的強度および耐熱性の点から、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ナイロンフィルムの、厚さ12〜100μ程度のフィルム、あるいはこれらのフィルムを含む多層フィルムが好適に用いられる。
【0024】
上記フィルムには、必要に応じて、装飾等を目的として紙層などを全面的にまたは部分的に付加して使用することも可能である。
【0025】
溶融押出による層を形成する方法は、単層で押出し、基材フィルムとドライラミネート法等により積層する方法、または共押出により基材フィルムと積層する方法がある。また、コーティング組成物の基材フィルムへのコーティング方法は、従来周知の、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法などの手段が用いられる。被膜の厚さは、乾燥後の厚さが約0.01〜100μmの範囲であればよい。
同様に、繊維質基材へのコーティング/含浸も、周知の方法により行うことができる。
【0026】
以上のようにして得た本発明の包装材料は、周知の3方シール袋、4方シール袋、ガゼット状袋、スタンディングパウチ、ピロー包装袋などの形状に、例えばヒートシールすることにより製袋して用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
【0028】
<実施例1>
重合管中に炭酸ビニレン(8.6g)と酢酸ビニル(8.6g)を入れ、次いでAIBN(0.2g)を添加する。これを氷温下で減圧、窒素置換を繰り返し、減圧下で封管、その後60℃で6時間ラジカル重合反応を行い、反応終了後、できあがったポリマーを室温下でジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、大量のメタノールにより再沈殿を行う。沈殿物を集め、メタノールで洗浄後、減圧下で乾燥する(分子量:約120,000)。次いで本共重合体をアセトンに溶解して、2N−NaOHメタノール溶液で、加水分解を行い、生じた沈殿物をメタノールでソックスレー抽出を繰り返し目的物を得る(ケン化度:99.8%以上)。
【0029】
<実施例2>
酢酸ビニル(8.6g)を酢酸イソプロペニル(2.5g)にした以外は、実施例1と同様の方法で重合(分子量:約85,000)、及び加水分解を行った(ケン化度:99.8%以上)。
【0030】
<実施例3>
炭酸ビニレン(8.6g)と酢酸ビニル(8.6g)を炭酸ビニレン(8.6g)にした以外は実施例1と同様の方法で重合(分子量:約300,000)、及び加水分解を行った(ケン化度:99.8%以上)。
【0031】
<実施例4>
炭酸ビニレン(8.6g)と酢酸ビニル(8.6g)を酢酸ビニル(4.3g)、酢酸イソプロペニル(5.0g)、炭酸ビニレン(4.3g)、そして反応時間を12時間にした以外は実施例1と同様の方法で重合(分子量:約450,000)、及び加水分解を行った(ケン化度:99.8%以上)。
【0032】
<実施例5>
重合管中にαークロロ酢酸ビニル(6.0g)、炭酸ビニレン(0.86g)を入れ、次いで過酸化ベンゾイル(50mg)を添加する。凍結下で減圧、窒素置換を繰り返し、減圧下で封管、その後60℃で24時間ラジカル重合反応を行う。反応終了後重合体をDMFに溶解し、大量のn−ヘキサンより再沈殿を行う。沈殿物を集め、n−ヘキサンで洗浄後減圧下で乾燥する(分子量:約628,000)。次いで本重合体をDMFに溶解、少量のジエチレントリアミンを加え、室温で加水分解を行う。沈殿が生じ始めたらさらに2時間反応した後、沈殿物を集めメタノールで繰り返し洗浄し、目的物を得る(ケン化度:99.8%以上)。
【0033】
実施例1から実施例4で得られた共重合体をそれぞれDMSOに溶解し、その溶液をテフロン板にキャストしフィルム(厚み:20μ)を作成する。加熱乾燥後フィルムを剥がし、酸素ガスバリヤー性を測定するサンプルとした。また、実施例5で得られた共重合体をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、その溶液をテフロン板にキャストしフィルム(厚み:20μ)を作成する。加熱乾燥後フィルムを剥がし、酸素ガスバリヤー性を測定するサンプルとした。比較のため、比較例1として、市販のポリビニルアルコールを同様にフィルム化し(厚み:20μ、分子量:約75,000、ケン化度:99.8%)(株式会社クラレ製)、評価した。結果を表1に示す。
数値は、酸素透過度である。酸素透過度の測定は、モダンコントロール社製のMOCON OX−TRANという装置を用いて、モコン法にて行った。(酸素透過度単位:CC/m2 ・ day ・ atm )
【0034】
【表1】
【0035】
以上の結果からわかるように、本発明の組成物は、高い湿度雰囲気中でも低い酸素透過度(高いガスバリヤー性)が維持されている。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によるポリビニルアルコール系重合体は、モノマーの一つとして、炭酸ビニレンを用いることにより加水分解した後、高分子側鎖に水酸基を数多く持たせることができ、その水素結合力により結晶が増加し、極めて高いガスバリヤー性を示し、しかも耐水性に優れるものである。
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