JP4286022B2 - 薬液注入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被験者に薬液を注入する薬液シリンジが着脱自在に装着される薬液注入装置に関し、特に、薬液シリンジのシリンダ部材をシリンダフランジで保持する薬液注入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、被験者の断層画像を撮像する医療装置として、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、等があり、被験者の血管画像を撮像する医療装置として、アンギオ装置、MRA(MR Angio)装置、等がある。上述のような装置を使用するとき、被験者に造影剤や生理食塩水などの薬液を注入することがあり、この注入を自動的に実行する薬液注入装置も実用化されている。
【0003】
上述のような薬液注入装置は注入ヘッドを有しており、この注入ヘッドに薬液シリンジが着脱自在に装着される。薬液シリンジは、薬液が充填される円筒状のシリンダ部材を有しており、このシリンダ部材に円柱状のピストン部材がスライド自在に挿入されている。一般的にシリンダ部材の後端外周には円環状のシリンダフランジが形成されており、ピストン部材の後端外周には円環状のピストンフランジが形成されている。
【0004】
薬液注入装置を使用する場合、薬液が充填されている薬液シリンジのシリンダ部材を延長チューブで被験者に連結し、その薬液シリンジを薬液注入装置のシリンジ保持部材に装着する。一般的な薬液注入装置では、薬液シリンジのシリンダ部材およびシリンダフランジに対応した形状の凹部がシリンジ保持部材の上面に形成されているので、この凹部にシリンダ部材およびシリンダフランジを挿入すれば薬液シリンジが保持される。
【0005】
さらに、薬液注入装置はピストン駆動機構によりピストンフランジをシリンダ部材とは別個に保持し、そのピストン駆動機構でピストン部材をスライドさせる。これで薬液シリンジから薬液が被験者に注入され、必要により、例えば、薬液シリンジに薬液が薬液タンクから吸引される。
【0006】
なお、上述のような薬液シリンジのピストン部材は、一般的に後端外周にピストンフランジが形成されているピストンロッドの前端にピストンヘッドを装着した構造からなるが、このピストンヘッドのみでピストン部材を形成した薬液シリンジもある。
【0007】
このような薬液シリンジに対応した薬液注入装置では、前端にチャック機構が形成されたスライドロッドをピストン駆動機構がスライド自在に支持しており、そのスライドロッドのチャック機構でピストン部材を保持してシリンダ部材の内部をスライド移動させる。
【0008】
また、上述のような薬液注入装置には、上述のように薬液シリンジが直接に装着される製品の他、薬液シリンジがシリンダアダプタを介して装着される製品もある。このようなシリンダアダプタとしても各種形式があるが、例えば、薬液シリンジの内圧による破損防止を目的としたものは、シリンダ部材の全体を覆う形状に肉厚のポリカーボネートで形成されている。
【0009】
このようなシリンダアダプタは、後端外周に円環状のアダプタフランジが形成されており、このアダプタフランジの後面内側にシリンダフランジが係合する凹部が形成されている。そこで、薬液注入装置はシリンダ部材が装填されたシリンダアダプタのアダプタフランジを保持することで、間接的にシリンダフランジを保持することになる。
【0010】
なお、上述のような薬液注入装置には、薬液シリンジのシリンダフランジを保持するため、一対の可動保持部材を回動自在に軸支したものがある。このような薬液注入装置では、可動保持部材はシリンダフランジが係脱自在な円弧形状の凹溝が内面に形成されており、シリンダフランジを左右両側から保持する位置に配置されている。
【0011】
このような可動保持部材は、上方に開口してシリンダフランジが挿入自在な開放位置と、シリンダフランジを左右両側から保持する閉止位置と、に回動自在に軸支されている。このため、開放位置に配置された可動保持部材にシリンダフランジを挿入して閉止位置まで回動させると、一対の可動保持部材によりシリンダフランジが左右両側から保持されることになる(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−11096号
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した薬液注入装置では、薬液シリンジのシリンダフランジを簡単に着脱自在に保持するため、シリンダフランジを回動自在な可動保持部材で左右両側から保持する。
【0014】
しかし、これでは薬液注入装置に薬液シリンジを着脱するために2段階の操作が必要であり、薬液注入装置に薬液シリンジを片手で着脱することも困難である。前述のように薬液注入装置は医療現場で使用されるが、医療現場では片手を常時清浄に維持することが要望されており、汚損原因となる薬液注入装置を片手のみで操作できることは重要である。
【0015】
さらに、薬液シリンジから被験者に薬液を高圧に注入する場合、シリンダフランジから可動保持部材に作用する応力も過大となる。このような場合、上述のように回動自在に軸支した可動保持部材では、その強度が不足して破壊が発生する懸念がある。
【0016】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、シリンダフランジを着脱することが簡単でありながら、シリンダフランジを保持する強度が充分な薬液注入装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の薬液注入装置は、円環状のシリンダフランジが後端外周に形成されている円筒状のシリンダ部材にピストン部材がスライド自在に挿入されている薬液シリンジの少なくともシリンダ部材とピストン部材とを別個に保持して相対移動させる薬液注入装置であって、一対の可動保持部材、保持付勢機構、スライドリンク部材、保持ロック機構、を有している。
【0018】
可動保持部材は、円弧形状に形成されており、上方に開口してシリンダフランジが挿入自在な開放位置とシリンダフランジを軸心方向と直交する両側から保持する閉止位置とに回動自在に各々軸支されている。保持付勢機構は、一対の可動保持部材を開放位置から閉止位置に付勢しており、スライドリンク部材は、上下方向にスライド自在に支持されて一対の可動保持部材に回動の軸心より内側の位置で係合しており、保持ロック機構は、可動保持部材が閉止位置に配置されたときのスライドリンク部材を係脱自在にロックする。
【0019】
また、本発明の第2の薬液注入装置では、保持付勢機構は、スライドリンク部材を上方に付勢しており、保持ロック機構は、閉止位置に配置された可動保持部材を係脱自在にロックする。
【0020】
従って、本発明の薬液注入装置では、保持ロック機構がスライドリンク部材をロックしていない状態では、保持付勢機構の付勢により可動保持部材が開放位置に配置されるので、そこに薬液シリンジのシリンダフランジが上方から挿入される。そのシリンダフランジによる押圧などにより可動保持部材が保持付勢機構の付勢に抗して開放位置から閉止位置に変位されると保持ロック機構でロックされるので、これで薬液シリンジのシリンダフランジが確実に保持される。保持ロック機構によるロックが解除されると、保持付勢機構の付勢により可動保持部材が閉止位置から開放位置に変位するので、そこに保持されていた薬液シリンジのシリンダフランジが上方に解放される。
【0021】
なお、本発明で云う各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、例えば、複数の構成要素が1個の部材として形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等が可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。なお、本形態では図面に示すように前後左右上下の方向を規定して説明するが、これは各部の相対関係の説明を簡単とするために便宜的に規定するものであり、本発明の装置の製造時や使用時などの方向を限定するものではない。
【0023】
[実施の形態の構成]
本実施の形態の薬液注入装置100は、図3に示すように、装置本体101の上面に操作パネル102と液晶ディスプレイ103とが配置されており、装置本体101の側部に可動アーム104で注入ヘッド110が装着されている。この注入ヘッド110は、図2に示すように、ヘッド本体111の上面に半円筒形の溝状の凹部112が形成されており、この凹部112に、薬液シリンジ200が着脱自在に装着される。
【0024】
この薬液シリンジ200は、シリンダ部材201とピストン部材202からなり、シリンダ部材201にピストン部材202がスライド自在に挿入されている。シリンダ部材201の後端外周にはシリンダフランジ203が形成されており、ピストン部材202の後端外周にはピストンフランジ204が形成されている。
【0025】
注入ヘッド110は、ヘッド本体111の凹部112の後方にピストン駆動機構113が配置されており、このピストン駆動機構113がピストンフランジ204を保持して前後移動させる。また、注入ヘッド110は、ヘッド本体111の凹部112の所定位置に一対のフランジ保持機構120が搭載されており、このフランジ保持機構120で薬液シリンジ200のシリンダフランジ203を保持する。
【0026】
より詳細には、フランジ保持機構120は、図5および図6に示すように、平板状の第1/第2ガイド部材121,122を有しており、第1ガイド部材121の前面に第2ガイド部材122が一体に装着されている。第1/第2ガイド部材121,122は、上面にU字形状の凹部123が形成されており、この凹部123に薬液シリンジ200のシリンダ部材201が上方から挿入される。
【0027】
第1ガイド部材121の下部前面には、不動保持部材124が一体に形成されており、この不動保持部材124の左右上方には、一対の可動保持部材125が1個ずつ回動自在に軸支されている。より詳細には、第1ガイド部材121の上部前面の左右両側には支持軸126が一体に形成されており、これらの支持軸126で一対の可動保持部材125が回動自在に軸支されている。
【0028】
不動保持部材124は、シリンダ部材201の外周面に対応した円弧形状に上面が形成されており、その上面にシリンダフランジ203の下部が係脱自在に装填される円弧形状の凹溝127が形成されている。一対の可動保持部材125は、シリンダ部材201の外周面に対応した円弧形状に内面が形成されており、シリンダフランジ203の上部が係合する円弧形状の凹溝128が内面に形成されている。
【0029】
可動保持部材125は、支持軸126より内側の位置で前面に係合ピン131が一体に形成されており、第2ガイド部材122には、一対の可動保持部材125の係合ピン131が変位自在に各々位置する円弧形状の開口孔132が左右両側に形成されている。
【0030】
この開口孔132に係合ピン131が係合することで可動保持部材125の回動範囲が規制されているので、一対の可動保持部材125は、図1(a)に示すように、上方に開口してシリンダフランジ203が挿入自在な開放位置と、図1(c)に示すように、シリンダフランジ203を軸心方向と直交する両側から保持する閉止位置と、に変位自在とされている。
【0031】
なお、可動保持部材125は、閉止位置に配置された状態で、下端が支持軸126の軸心より下方に位置するとともに、上端が上方に位置する形状に形成されている。また、一対の可動保持部材125は、閉止位置に配置されると相互に密着する平面に上端が形成されており、支持軸126の軸心を中心とした円筒面に下端が形成されている。
【0032】
そして、不動保持部材124の両端も、可動保持部材125の下端と密着する円筒面に形成されているので、一対の可動保持部材125が閉止位置に配置されると、一対の可動保持部材125と1個の不動保持部材124とで円環形状が形成される。
【0033】
図5および図6に示すように、第2ガイド部材122の前方にはコ字型のスライドリンク部材134が上下方向にスライド自在に支持されており、このスライドリンク部材134の左右の上端に形成されている横長の開口孔135にも可動保持部材125の係合ピン131が係合している。
【0034】
このため、スライドリンク部材134は一対の可動保持部材125に回動の軸心より内側の位置で係合しており、可動保持部材125の開閉とスライドリンク部材134の上下とが連動している。このスライドリンク部材134には、コイルスプリングなどの保持付勢機構(図示せず)が連結されており、この保持付勢機構によりスライドリンク部材134が上方に付勢されているので、これで一対の可動保持部材125が開放位置から閉止位置に付勢されている。
【0035】
また、第1/第2ガイド部材121,122の下部には前後方向に連通する貫通孔135が形成されており、この貫通孔135に閉止保持部材136が前後方向にスライド自在に挿入されている。この閉止保持部材136は、コイルスプリングなどの閉止付勢機構(図示せず)で前方に付勢されており、可動保持部材125が閉止位置に配置されたときのスライドリンク部材134の貫通孔137に後方から係合する。
【0036】
閉止保持部材136には手動操作部材138が連結されており、図2に示すように、この手動操作部材138がヘッド本体111の上面に露出している。一対の可動保持部材125が開放位置から閉止位置に変位してスライドリンク部材134が下降すると、その貫通孔137に閉止保持部材136が閉止付勢機構の付勢により係合する。
【0037】
この状態から手動操作部材138により閉止保持部材136が後退されてスライドリンク部材134から離脱すると、このスライドリンク部材134は保持付勢機構の付勢により上方に変位するので、上述の閉止保持部材136と閉止付勢機構と手動操作部材138によりスライドリンク部材134を係脱自在にロックする保持ロック機構が形成されている。
【0038】
なお、本実施の形態の薬液注入装置100は、図4に示すように、例えば、MRI装置300の撮像ユニット301の近傍で使用され、必要によりMRI装置300の制御ユニット302に接続される。この制御ユニット302はコンピュータシステムからなり、撮像ユニット301を動作制御するとともに断層画像を表示する。
【0039】
[実施の形態の動作]
上述のような構成において、本実施の形態の薬液注入装置100を使用する場合、例えば、作業者は被験者に注入する薬液に対応して適切な薬液シリンジ200を選択し、その薬液シリンジ200をMRI装置300の撮像ユニット301に位置する被験者に延長チューブで連結する(図示せず)。
【0040】
薬液注入装置100は、図2(a)に示すように、注入ヘッド110に薬液シリンジ200が装着されていない状態では、閉止付勢機構で前方に付勢されている閉止保持部材136がスライドリンク部材134の後面に当接しており、その閉止保持部材136に連結されている手動操作部材138は後退している。この状態では、スライドリンク部材134は保持付勢機構により上方に付勢されているので、図1(a)に示すように、一対の可動保持部材125は上方に開口した開放位置に配置されている。
【0041】
そこで、この開放位置に保持された一対の可動保持部材125の凹溝127に、作業者が薬液シリンジ200のシリンダフランジ203を挿入して下方に押圧すると、図1(b)に示すように、そのシリンダ部材201およびシリンダフランジ203に可動保持部材125が押圧されて回動し、スライドリンク部材134は付勢に抗して下降する。
【0042】
さらに、作業者が薬液シリンジ200を下方に押圧すると、図1(c)に示すように、そのシリンダ部材201およびシリンダフランジ203に押圧されて可動保持部材125が閉止位置まで回動する。これで薬液シリンジ200は、シリンダフランジ203の上部が一対の可動保持部材125に両側から保持され、下部が不動保持部材124に保持されることになる。
【0043】
このとき、スライドリンク部材134の貫通孔137が第1/第2ガイド部材121,122の貫通孔135と連通するので、前方に付勢されている閉止保持部材136が前進してスライドリンク部材134の貫通孔137に係合するので、上述のように不動保持部材124とともにシリンダフランジ203を保持する一対の可動保持部材125がロックされることになる。
【0044】
このとき、図2(b)に示すように、閉止保持部材136に連結されている手動操作部材138も前進するので、この移動により薬液シリンジ200の保持がロックされたことが作業者に確認される。
【0045】
上述のように注入ヘッド110の凹部112に薬液シリンジ200を装着すると、そのピストンフランジ204がピストン駆動機構113で保持される。そこで、作業者が薬液注入装置100の操作パネル102に所定操作を実行すると、ピストン駆動機構113がピストン部材202をスライド移動させることでシリンダ部材201から被験者に薬液が注入される。
【0046】
この注入作業が終了すると、例えば、作業者は被験者から延長チューブを取り外し、手動操作部材138を手動操作で後退させる。すると、閉止保持部材136も後退してスライドリンク部材134から離脱するので、図1(b)に示すように、このスライドリンク部材134は付勢により上方に変位する。
【0047】
これで一対の可動保持部材125が閉止位置から開放位置に回動するので、図1(a)に示すように、作業者は薬液シリンジ200を上方に取り出す。なお、上述のように可動保持部材125が閉止位置から開放位置に回動すると、可動保持部材125の下端により薬液シリンジ200が上方に押し上げられるので、薬液シリンジ200は容易に取り出される。
【0048】
このように薬液注入装置100に薬液シリンジ200が装着されていない状態では、上述のように可動保持部材125は開放位置に保持されているので、特別な準備操作などを必要とすることなく前述のように薬液シリンジ200の装着が開始される。
【0049】
[実施の形態の効果]
本実施の形態の薬液注入装置100では、上述のように手動操作により注入ヘッド101の凹部106に薬液シリンジ200を上方から装填すると、一対の可動保持部材125と1個の不動保持部材124によりシリンダフランジ203が保持されて自動的にロックされる。また、この状態から手動操作により手動操作部材138を後退させると、一対の可動保持部材125が自動的にシリンダフランジ203を開放する。
【0050】
このため、注入ヘッド101に薬液シリンジ200を片手でも簡単かつ確実に着脱することができるので、医療現場で汚損原因となる薬液注入装置100を片手のみで操作することができ、他方の片手を常時清浄に維持することが可能である。
【0051】
特に、可動保持部材125は、閉止位置に配置されると下端が支持軸126の軸心より下方に位置する形状に形成されているので、手動操作により薬液シリンジ200を上方から圧入するだけで一対の可動保持部材125が自動的に開放位置から閉止位置に回動される。しかも、可動保持部材125が閉止位置から開放位置に変位すると薬液シリンジ200が上方に押し上げられるので、薬液シリンジ200を容易に取り出すことができる。
【0052】
さらに、一対の可動保持部材125に回動軸心より内側で係合しているスライドリンク部材134を上方に付勢しているので、簡単な構造で一対の可動保持部材125を閉止位置から開放位置に付勢することができる。しかも、スライドリンク部材134を1個の閉止保持部材136でロックするので、閉止位置に配置された一対の可動保持部材125を簡単な構造でロックすることができる。
【0053】
また、一対の可動保持部材125を開放位置から閉止位置に変位させることでスライドリンク部材134の貫通孔137に閉止保持部材136が突入すると、ヘッド本体111の外面に露出している手動操作部材138が前進するので、閉止位置に配置された一対の可動保持部材125がロックされたことを目視で確実に確認することができる。
【0054】
しかも、上述のように薬液シリンジ200の着脱を容易とするために可動保持部材125を開閉自在とすると、その機械強度は必然的に低下するが、本形態の薬液注入装置100では、注入ヘッド110に固定された不動保持部材124でシリンダフランジ203の下部を保持する。
【0055】
このため、薬液シリンジ200を強固に保持することができ、ピストン部材202を高圧に押圧するような場合でも、フランジ保持機構120の機械強度が不足することがない。つまり、本形態の薬液注入装置100は、可動保持部材125と不動保持部材124とを組み合わせて使用することにより、薬液シリンジ200の着脱の容易さと保持の強固さとを両立している。
【0056】
特に、本形態の薬液注入装置100では、可動保持部材125を軸支する支持軸126と不動保持部材124とが、第1ガイド部材121と一体に形成されているので、極めて強固な構造が簡単に実現されている。しかも、可動保持部材125の前面が第2ガイド部材122の後面に当接しているので、ピストン部材202を高圧に押圧する応力がシリンダフランジ203から可動保持部材125に作用しても、この可動保持部材125を第2ガイド部材122で保持することができ、回動自在な可動保持部材125でもシリンダフランジ203を強固に保持することができる。
【0057】
さらに、不動保持部材124と一対の可動保持部材125とで円環形状のシリンダフランジ203を全周方向から保持するので、シリンダフランジ203を部分的に保持することによる応力集中を防止することができ、シリンダフランジ203を強固に保持して破損を防止することができる。
【0058】
また、スライドリンク部材134の横長の開口孔135に係合する可動保持部材125の係合ピン131が第2ガイド部材122の円弧形状の開口孔132にも係合しているので、可動保持部材125が不適な位置まで回動することが防止されている。
【0059】
[実施の形態の変形例]
本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では不動保持部材124と支持軸126と第1ガイド部材121とが一体に形成されていることを例示したが、図7に示すように、これらの一部ないし全部を別体に形成しておいて一体に固定することも可能である。
【0060】
また、不動保持部材124や支持軸126を第1ガイド部材121ではなく第2ガイド部材122と一体に形成しておくことも可能であり(図示せず)、支持軸126を可動保持部材125と一体に形成しておくことも可能である(図示せず)。さらに、図8に示すように、不動保持部材124と第1/第2ガイド部材121,122とを一体に形成しておき、可動保持部材125に別体の支持軸126や係合ピン131を装着するようなことも可能である。
【0061】
なお、図7に示すように、不動保持部材124と第1/第2ガイド部材121,122との全部を別体に形成すると、完成した装置の機械強度は低下するが各部の生産性は向上する。一方、図8に示すように、不動保持部材124と第1/第2ガイド部材121,122との全部を一体に形成すると、各部の生産性は低下するが完成した装置の機械強度は向上する。つまり、図5に示すように、不動保持部材124を第1/第2ガイド部材121,122との一方と一体に形成すると、各部の生産性と完成した装置の機械強度とを良好に両立させることができる。
【0062】
また、上記形態では可動保持部材125に形成されている係合ピン131がスライドリンク部材134の開口孔135に係合することを例示したが、例えば、係合ピン131をスライドリンク部材134に形成するとともに開口孔135を可動保持部材125に形成することも可能である。
【0063】
さらに、上記形態では1個のスライドリンク部材134を付勢することで一対の可動保持部材125を間接的に簡単に付勢するとともに、1個のスライドリンク部材134をロックすることで一対の可動保持部材125を間接的に簡単にロックすることを例示したが、可動保持部材125を直接的に付勢することやロックすることも可能である。
【0064】
また、上記形態では薬液注入装置100をMRI装置300の近傍で使用することを想定したが、これをCTスキャナ、PET装置、アンギオ装置、MRA装置、等の近傍で使用することも可能である。さらに、上記形態では薬液注入装置100の一つの凹部112に1個の薬液シリンジ200が装着されることを例示したが、注入ヘッドの複数の凹部に複数の薬液シリンジ200が装着されることも可能である(図示せず)。
【0065】
また、上記形態では薬液注入装置100に薬液シリンジ200が直接に装着されることを例示したが、現在市販されている薬液シリンジ200には各種サイズが存在するので、例えば、最大サイズの薬液シリンジ200のみ薬液注入装置100に直接に装着され、最大以外の各種サイズの薬液シリンジ200は各々に専用のシリンダアダプタ(図示せず)を介して薬液注入装置100に装着されるようなことも可能である。
【0066】
特に、薬液を高圧に注入する薬液注入装置100では、薬液シリンジ200のシリンダ部材201の破壊も防止するため、シリンダ部材201の全体を装填するシリンダアダプタが利用されている。このようなシリンダアダプタは、シリンダ部材201が後端から着脱自在に装填される円筒状に形成されており、その後端外周には円環状のアダプタフランジが形成されている。
【0067】
そのアダプタフランジの後面内側には薬液シリンジ200のシリンダフランジ203が係脱自在に係合する凹部が形成されているので、このようなシリンダアダプタを装着した薬液シリンジ200を薬液注入装置100に装着すると、その不動保持部材124と一対の可動保持部材125とはアダプタフランジを直接的に保持することでシリンダフランジ203を間接的に保持することになる。
【0068】
さらに、上記形態では薬液シリンジ200のシリンダ部材201にロッド形状のピストン部材202が挿入されていることを例示したが、このような薬液シリンジにはピストン部材がヘッド部のみの製品もある(図示せず)。特に、上述のように薬液を高圧に注入する薬液シリンジでは、ロッド部の破壊を防止するために上述のようにピストン部材がヘッド部のみとされている。
【0069】
このような薬液シリンジを利用する薬液注入装置では(図示せず)、ピストン駆動機構は金属製の強固なスライドアームなどで薬液シリンジのピストンヘッドを把持してスライド移動させるが、このような薬液注入装置にも上記形態のフランジ保持機構120は利用可能である。
【0070】
【発明の効果】
本発明の薬液注入装置では、可動保持部材は保持ロック機構によりロックされていない状態では保持付勢機構の付勢により開放位置に配置されるので、そこに薬液シリンジのシリンダフランジを上方から挿入することができ、シリンダフランジによる押圧などにより可動保持部材が保持付勢機構の付勢に抗して開放位置から閉止位置に変位されると保持ロック機構でロックされるので、これで薬液シリンジのシリンダフランジを確実に保持することができ、保持ロック機構によるロックが解除されると保持付勢機構の付勢により可動保持部材が閉止位置から開放位置に変位するので、そこに保持されていた薬液シリンジのシリンダフランジを上方に取り出すことができ、片手でも薬液シリンジを容易に着脱して確実に保持することができる薬液注入装置を簡単な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の薬液注入装置の可動保持部材と不動保持部材とに薬液シリンジが着脱される状態を示す正面図である。
【図2】薬液注入装置の注入ヘッドに薬液シリンジが着脱される状態を示す斜視図である。
【図3】薬液注入装置の外観を示す斜視図である。
【図4】MRI装置の外観を示す斜視図である。
【図5】フランジ保持機構の組立構造を示す分解斜視図である。
【図6】フランジ保持機構の構造を示す斜視図である。
【図7】第1の変形例のフランジ保持機構の組立構造を示す分解斜視図である。
【図8】第2の変形例のフランジ保持機構の組立構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
100 薬液注入装置
113 ピストン駆動機構
121 第1ガイド部材
122 第2ガイド部材
124 不動保持部材
125 可動保持部材
136 閉止保持部材
138 手動操作部材
200 薬液シリンジ
201 シリンダ部材
202 ピストン部材
203 シリンダフランジ
204 ピストンフランジ
Claims (7)
- 円環状のシリンダフランジが後端外周に形成されている円筒状のシリンダ部材にピストン部材がスライド自在に挿入されている薬液シリンジの前記シリンダ部材と前記ピストン部材とを別個に保持して相対移動させる薬液注入装置であって、
上方に開口して前記シリンダフランジが挿入自在な開放位置と前記シリンダフランジを軸心方向と直交する両側から保持する閉止位置とに回動自在に各々軸支されている一対の円弧形状の可動保持部材と、
これら一対の可動保持部材を前記開放位置から前記閉止位置に付勢している保持付勢機構と、
上下方向にスライド自在に支持されて一対の前記可動保持部材に前記回動の軸心より内側の位置で係合しているスライドリンク部材と、
前記可動保持部材が前記閉止位置に配置されたときの前記スライドリンク部材を係脱自在にロックする保持ロック機構と、
を有している薬液注入装置。 - 円環状のシリンダフランジが後端外周に形成されている円筒状のシリンダ部材にピストン部材がスライド自在に挿入されている薬液シリンジの前記シリンダ部材と前記ピストン部材とを別個に保持して相対移動させる薬液注入装置であって、
上方に開口して前記シリンダフランジが挿入自在な開放位置と前記シリンダフランジを軸心方向と直交する両側から保持する閉止位置とに回動自在に各々軸支されている一対の円弧形状の可動保持部材と、
上下方向にスライド自在に支持されて一対の前記可動保持部材に前記回動の軸心より内側の位置で係合しているスライドリンク部材と、
このスライドリンク部材を上方に付勢している保持付勢機構と、
前記閉止位置に配置された前記可動保持部材を係脱自在にロックする保持ロック機構と、
を有している薬液注入装置。 - 前記保持付勢機構は、前記スライドリンク部材を上方に付勢している請求項1に記載の薬液注入装置。
- 前記保持ロック機構が、
前後方向に変位自在に支持されていて前記可動保持部材が前記閉止位置に配置されたときの前記スライドリンク部材に係合する閉止保持部材と、
この閉止保持部材を前記スライドリンク部材に付勢している閉止付勢機構と、
手動操作に対応して前記閉止保持部材を前記スライドリンク部材から離脱させる手動操作部材と、
を有している請求項1ないし3の何れか一項に記載の薬液注入装置。 - 前記閉止位置に配置された前記可動保持部材の下端が前記回動の軸心より下方に位置しているとともに上端が上方に位置している請求項1ないし4の何れか一項に記載の薬液注入装置。
- 前記可動保持部材が前記シリンダフランジの上部を保持する形状に形成されており、
これら一対の可動保持部材の下方に前記シリンダフランジの下部を保持する不動保持部材が配置されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の薬液注入装置。 - 前記薬液シリンジのシリンダフランジが係脱自在に係合する凹部が後面内側に形成されている円環状のアダプタフランジが後端外周に形成されていて前記シリンダ部材が後端から着脱自在に装填される円筒状のシリンダアダプタと、
前記シリンダ部材が装填された前記シリンダアダプタのアダプタフランジを前記不動保持部材と一対の前記可動保持部材とで保持することで前記シリンダフランジを間接的に保持する請求項6に記載の薬液注入装置と、
を有している薬液注入システム。
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