JP4285930B2 - 電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池に関するものであって、より詳しくは広い温度範囲における放電特性を向上させるための電極の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電池用電極は、リチウム一次電池の負極のように活物質単体を用いるほかには、活物質粉末、導電材および結合剤を含む活物質合剤をペレット状に加圧成形したものや、導電性の芯体に担持させたものが広く用いられている。芯体には、たとえば箔状、網状またはスポンジ状のものが用いられている。合剤は、それを含むペーストの塗布、あらかじめ形成されたシート状のそれの圧着等によって芯体と一体化される。
【0003】
電子機器または電気機器の用途の拡大につれ、その駆動源としての電池のさらなる特性の向上が求められている。周囲の温度が低下すると、電極表面の反応性が低下して、電池の出力特性は低下する。そこで、低温から室温を含む高温にかけての広い温度範囲において良好な放電特性を示す電池が求められていた。
粉末状活物質を用いた電池の特性は、活物質粒子の形状に依存する。比表面積が相対的に大きい活物質を用いた電池は、たとえば氷点下といった低温において良好な放電特性を示す。しかしながら、その一方で、合剤中に活物質を高い密度で充填することが困難であることから、室温以上における放電特性に劣る。比表面積が小さい活物質を用いた電池は、室温以上において優れた放電特性を示す一方で、前者に比べて低温における放電特性に劣る。
こでいう比表面積は、いわゆるBET法により得られる値であって、一般の活物質においては、粒径以上に粒内に存在する細孔など、その構造に依存する。比表面積が大きい活物質粉末は、粒子内に多くの細孔が存在したり、形状のひずみを有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決するためのものであり、広い温度範囲において優れた放電特性を示す電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、正極活物質層を有する正極と、前記正極に対峙して配された負極と、前記正極および負極の間に挟まれたセパレータと、非水電解質と、を有する電池において、前記正極活物質層は、正極活物質である二酸化マンガン粉末を含む複数の合剤層を有してなり、前記複数の合剤層の各々に含まれる二酸化マンガン粉末の比表面積が各々異なり、かつ、前記複数の合剤層のうち、前記負極と前記セパレータを介して直接対面している合剤層に含まれる二酸化マンガン粉末の比表面積が他の合剤層に含まれる二酸化マンガン粉末の比表面積よりも大きいことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の他の形態によると、同様の電池において、負極に近づくにつれ二酸化マンガン粉末の比表面積が大きくなり、好ましくは負極から遠ざかるにつれ二酸化マンガン粉末の充填密度が高くなる正極合剤層を用いる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明では、他層よりも比表面積が大きい二酸化マンガン粉末を用いた合剤層、すなわち低温において良好な放電特性を示す層が負極とセパレータを介して対面して配され、さらにそれと別に低温における放電特性に劣るものの室温において良好な放電特性を示す合剤層が配される。
【0008】
本発明は、円筒型電池など、正極および負極がセパレータとともに捲回されて用いられる電池と、ボタン型電池など、一対の正極および負極がセパレータを挟んで平面上に配される電池の双方に適用される。
両極がセパレータとともに捲回されて電極体として用いられる電池においては、電極の両面がそれぞれ対極と対向することから、好ましくは電極用芯体の両面にそれぞれ、最上層に他の合剤層よりも比表面積が大きい活物質粉末である二酸化マンガン粉末を含む層が配された多層構造の合剤層が形成される。
両極がセパレータを挟んで平面上に配される電池においては、芯体の対極と向かい合う側の面のみに積層して上記と同様の多層構造の合剤層が形成される。また、芯体の対極と向かい合う側の面に二酸化マンガン粉末の比表面積が大きい層が配され、他方の面にそれよりも比表面積が小さい層、好ましくは二酸化マンガン粉末の充填密度が高い層が配される。
本発明は、芯体を有さない電極を用いた電池にも適用される。そのような電池には、セパレータを介して負極に向かい合う最上層に、他層よりも二酸化マンガン粉末の比表面積が大きい層が配された多層構造の合剤層が用いられる。
これら二酸化マンガン粉末の形状が互いに異なる複数の合剤層を配することで、これらの層が互いに低温および室温での放電特性の低下を補うのみならず、いずれの温度領域においても充分な特性を発揮する電池が得られる。
【0009】
比表面積が大きい活物質粉末を高密度で充填することは困難である。一般に、活物質粉末の充填密度が高い層には、たとえば他層に用いられるそれよりも比表面積が小さい活物質粉末が用いられる。換言すれば、活物質粉末の比表面積が大きい層の充填密度は、一般に活物質粉末の比表面積に起因して他層よりも低くなる。
したがって、本発明の電池には、対極に最も近くなるよう、すなわちセパレータを介して負極と対面する最上層に他層よりも充填密度が低い層が配され、より好ましくは前記最上層より最も遠いところに、二酸化マンガン粉末の充填密度が高い他層が配された電池が含まれる。他の合剤層よりも二酸化マンガン粉末の充填密度が高い合剤層は、好ましくは、高い導電性を確保するため、芯体または集電のための集電体と接して配される。
合剤層は多層構造である必要はなく、たとえばその厚さ方向に活物質の比表面積を連続的に変化させてもよい。
【0010】
電極は、たとえば合剤を用いてあらかじめ形成された種類の異なるシートを芯体と重ね合わせたのち、これらを圧着して形成される。また、あらかじめ調製された合剤を含むペーストを芯体に塗布乾燥して形成される。
芯体を用いない電極は、たとえば電極形成用の金型に種類の異なる複数の合剤粉末を層構造を構成するように順に投入したのち、加圧して形成される。厚さ方向に二酸化マンガン粉末の充填密度が連続的に変化した電極は、たとえば溶媒量が多く濃度の低いペーストをその表面を水平に配された芯体に塗布し、二酸化マンガン粉末の比表面積に依存した沈降速度の違いを利用すればよい。比表面積が小さく沈降速度が大きい粒子は、必然的に芯体近傍に、すなわち対極とはより離れた位置に配され、比表面積が大きく沈降速度が小さい粒子は、形成される膜の表面側に配される。
本発明は、導電性の芯体およびそれに担持した二酸化マンガン粉末を含む合剤層を有する電極を用いたあらゆる電池に適用される。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
《実施例1》
ともに二酸化マンガンからなり、表1に示すうちの一方の正極活物質、導電材としてのカーボンブラックおよび結着剤としてのフッ素樹脂(ポリ四フッ化エチレン)を85:10:5の質量比で含む合剤シートをそれぞれ作製し、さらにこのシートを用いて、円筒型二酸化マンガン−リチウム一次電池を作製した。
【0013】
【表1】
Figure 0004285930
【0014】
ステンレス鋼からなるラス芯体の両面に正極活物質2を含む正極合剤シートを配した後、これらを圧着して一体化した。さらに、このラス芯体を正極活物質1を含む一対の正極合剤シートで挟み込んだ後、これらを圧着して一体化して、図1に示すように、芯体2の両面に第一合剤層3および第二合剤層4からなる合剤層を形成した。
以上のようにして多層構造の正極合剤層を形成したのち、これを所定のサイズに裁断して正極板を得た。
【0015】
得られた正極板を用いて、図2に示すリチウム一次電池を組み立てた。
正極板6と、リチウム箔からなる負極板7と、両者の間にセパレータ8としてのポリエチレン製微多孔膜を挟んで捲回した。
1,2−ブチレンカーボネート(BC)、エチレンカーボネート(EC)および1,2−ジメトキシエタン(DME)を25:25:50の体積比で混合して得られた混合溶媒に、電解質塩としてのトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)を1モル/リットルの割合で混合して非水系電解液を調製した。
【0016】
負極板7と電池ケース9の底部とを負極リード11によって接続した後、電池ケース9内部に下部絶縁板12bを配し、さらに捲回体を電池ケース9に収容した。
上部絶縁板12aを隔てて、正極端子を備えた封口体13と正極板7とを正極リード10により接続し、さらに上記のようにして得られた電解液を電池ケース9に注入した後、電池ケース9の開口部にガスケット14を介して封口体13を装着して、設計容量が1500mAhで、外径が17mm、高さが33.5mmの円筒型二酸化マンガン−リチウム一次電池を得た。
【0017】
(比較例1)
実施例1で用いたものと同様の正極活物質1を含む正極合剤シートの一対をステンレス鋼からなるラス芯体の両面に圧着し、さらにこれを所定のサイズに裁断して正極板を得た。得られた正極板を用いて、実施例1と同様の円筒型一次電池を組み立てた。
【0018】
(比較例2)
実施例1で用いたものと同様の正極活物質2を含む正極合剤シートの一対をステンレス鋼からなるラス芯体の両面に圧着し、さらにこれを所定のサイズに裁断して正極板を得た。得られた正極板を用いて、実施例1と同様の円筒型一次電池を組み立てた。
【0019】
(比較例3)
実施例1で用いたものと同様の正極活物質1を含む正極合剤シートの一対をステンレス鋼からなるラス芯体の両面に圧着し、さらにその両面に正極活物質2を含む正極合剤シートの一対を圧着したのち、これを所定のサイズに裁断して正極板を得た。すなわち、実施例1の正極板と比べて、正極合剤層の構成が逆の正極板を得た。得られた正極板を用いて、実施例1と同様の円筒型一次電池を組み立てた。
【0020】
以上のようにして得られた実施例1の電池および比較例1〜3の電池を、室温(23℃)および低温(−20℃)においてそれぞれ1Aの電流値で定電流放電させた。この試験における放電曲線を図3に示す。
図3(a)および(b)の比較より明らかなように、比較例1および2の電池が、低温または室温のいずれか一方においてのみ良好な放電曲線を示すのに対して、本実施例の電池は、室温下においては、比表面積が小さく充填密度が高い正極活物質2のみを含む比較例2の電池と同等の優れた放電特性を示し、低温下においても、比表面積が大きく充填密度が低い正極活物質1のみを含む比較例1の電池と同等の優れた放電曲線を示す。
また、上記の定電流放電の終止電圧を1.7Vとしたときの放電容量の比を表2に示す。なお、比較例2の電池の23℃における放電容量を100としている。
【0021】
【表2】
Figure 0004285930
【0022】
表2より明らかなように、本実施例の電池は、放電容量においても、低温下では比較例2の電池と同等であって、低温下では比較例1の電池と同等の良好な値を示す。
以上のように、本実施例の電池は、室温および低温のいずれにおいても良好な特性を示す。
【0023】
《実施例2》
実施例1で用いたものと同様の2種類の二酸化マンガンからなる正極活物質を用いて、図4に示すコイン型二酸化マンガン−リチウム一次電池を作製した。
正極合剤1、導電剤としてのカーボンブラックおよび結着剤としてのポリ四フッ化エチレンを質量比で85:10:5で含む合剤粉末を電極形成用の金型に投入した。その上に、正極活物質2とカーボンブラックとポリ四フッ化エチレンを同じ比で含む号剤粉末を投入した。これらを加圧成形して、2種類の合剤層6aおよび6bを有する正極板6を得た。
【0024】
円板状のリチウム金属を負極板7に、多孔性ポリプロピレンシートをセパレータ8に用い、さらに実施例1で用いたものと同様の電解液を用いて電池を作製した。
上記の正極板6、負極7およびセパレータを電池ケース9に収容し、さらにケース9内に電解液を注入したのち、ケース9の開口部をガスケット14を介して負極キャップ15を配し、さらに封口して、設計容量が500mAh、外径が24.5mm、高さが5mmのコイン型電池を組み立てた。ここで、正極活物質1を含む合剤シートからなる合剤層を、セパレータ8に接した側すなわち負極板7に最近の合剤層6bとした。
【0025】
(比較例4)
表1に示す正極活物質1を含む合剤のみを用いて、実施例2と同様に正極板を成形し、さらにそれを用いてコイン型電池を組み立てた。
【0026】
(比較例5)
表1に示す正極活物質2を含む合剤のみを用いて、実施例2と同様に正極板を成形し、さらにそれを用いてコイン型電池を組み立てた。
【0027】
(比較例6)
実施例2と同様に成形した電極板を用い、正極活物質2を含む合剤層を、セパレータ8に接した側すなわち負極7に最近の合剤層6bになるよう配して、実施例2と同様のコイン型電池を組み立てた。
【0028】
以上のようにして得られた実施例2の電池および比較例4〜6の電池を、実施例1と同様にして、室温(23℃)および低温(−20℃)においてそれぞれ500mAの電流値で定電流放電させた。この定電流放電時の各電池の放電容量の比を表3に示す。
【0029】
【表3】
Figure 0004285930
【0030】
表3より明らかなように、比較例4および5の電池が、低温または室温のいずれか一方においてのみ良好な放電特性を示すのに対して、本実施例の電池は、室温下においては、比表面積が小さく充填密度が高い正極活物質2のみを含む比較例5の電池と同等の優れた放電特性を示し、低温下においても、比表面積が大きく充填密度が低い正極活物質1のみを含む比較例4の電池と同等の優れた放電曲線を示す。
また、二種類の合剤層の配置を入れ替えた比較例6は、低温および室温のいずれにおいても、従来の電池である比較例3および4よりも特性が劣る。
【0031】
【発明の効果】
本発明によると、広い温度範囲で優れた放電特性を示す電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に用いる電極の構成を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】同電極を用いた円筒型二酸化マンガン−リチウム一次電池を示す縦断面図である。
【図3】同電池の特性図であって、(a)は室温における放電曲線であり、(b)は低温における放電曲線である。
【図4】本発明の他の実施例の電池を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 電池
2 芯体
3、6a 第一合剤層
4、6b 第二合剤層
6 正極板
7 負極板
8 セパレータ
9 電池ケース
10 正極リード
11 負極リード
12a 上部絶縁板
12b 下部絶縁板
13 封口体
14 ガスケット
15 負極キャップ

Claims (5)

  1. 正極活物質層を有する正極と、前記正極に対峙して配された負極と、前記正極および負極の間に挟まれたセパレータと、非水電解質と、を有する電池において、
    前記正極活物質層は、正極活物質である二酸化マンガン粉末を含む複数の合剤層を有してなり、
    前記複数の合剤層の各々に含まれる二酸化マンガン粉末の比表面積が各々異なり、かつ、前記複数の合剤層のうち、前記負極と前記セパレータを介して直接対面している合剤層に含まれる二酸化マンガン粉末の比表面積が他の合剤層に含まれる二酸化マンガン粉末の比表面積よりも大きい、
    ことを特徴とする電池。
  2. 前記複数の合剤層のうち、前記他の合剤層は、前記負極と前記セパレータを介して直接対面している合剤層よりも二酸化マンガン粉末の充填密度が高い、
    ことを特徴とする請求項1記載の電池。
  3. 前記他の合剤層は、芯体または集電のための集電体接して配された層である、
    ことを特徴とする請求項2記載の電池。
  4. 正極と、前記正極に対峙して配された負極と、前記正極および負極の間に挟まれたセパレータと、非水電解質と、を備えた電池において、
    前記正極は、活物質として二酸化マンガン粉末を含む正極合剤層を有し、当該正極合剤層は、負極に対向する領域において負極に近づくにつれて二酸化マンガン粉末の比表面積が大きくなるように構成されている、
    ことを特徴とする電池。
  5. 前記正極合剤層内の二酸化マンガン粉末の充填密度が、前記負極より遠ざかるにつれて高くなる、
    ことを特徴とする請求項4記載の電池。
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