JP4284904B2 - 美麗な印刷物を与える積層耐水紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は印刷用の積層耐水紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐水性を有する印刷用紙として、従来から、紙基材の表面に熱可塑性合成樹脂をラミネートした積層耐水紙が知られている。この積層耐水紙は、通常、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法によって製造される。即ち、巻取りロールから繰出された紙基材層の表面に、Tダイ製膜機から溶融した熱可塑性合成樹脂を押出し、又は、2種以上の熱可塑性合成樹脂を共押出しし、クーリングロールとニップロール間で直ちに、紙基材層とこの(これらの)熱可塑性合成樹脂層を押圧・圧着して積層することにより製造される。
【0003】
こうした耐水紙は、耐水性、ひいては耐候性を有しながら比較的安価で、廃棄処理も容易であるという優れた特性をもつことから、選挙用や商業用等の屋外ポスターが主要な用途の一つとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
選挙用や商業用のポスターにおいては、何よりも美麗性が重要視される。このため、かかるポスター用の印刷紙には、高光沢な面調が好まれる傾向にある。上記積層耐水紙においては、溶融した熱可塑性合成樹脂と紙基材とを圧着する際に、周面を鏡面仕上げとしたクーリングロールを用いることで、この鏡面を熱可塑性合成樹脂表面に転写し、このような高光沢を付与している。
【0005】
しかし、こうして製造される高光沢性積層耐水紙には、その表面に微小な窪みが散在し、この耐水紙にオフセット印刷を施した場合には、この窪み部分にインキが転写されず、いわゆる白抜けになってしまい、出来上がりの印刷物の美麗性を却って損ねてしまうという問題があった。
【0006】
本願発明は、かかる問題点を踏まえ、高光沢を有しながらオフセット印刷性にも優れ、美麗な印刷物を与える積層耐水紙を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意研究の結果、紙基材上に積層する熱可塑性合成樹脂として、シングルサイト系触媒にて合成された直鎖状低密度ポリエチレン(SS−LLDPE)を選択することにより、上記課題が解決されることを見出し、本願発明を完成した。
【0008】
即ち、本願発明は、紙基材の少なくとも一方の表面に、一層以上の熱可塑性合成樹脂層が積層されており、かつ、それらの熱可塑性合成樹脂層のうち紙基材と接する層が、SS−LLDPEからなるオフセット印刷用積層耐水紙に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明を詳細に説明する。
【0010】
本願発明において紙基材とは、植物繊維又は植物繊維とその他の繊維を絡み合わせ、膠着させて製造したものを言う。このような紙基材であれば、何であれ本願発明に使用することができるが、出来上がりの積層耐水紙に高光沢性を付与する観点からは、紙基材として、できるだけ平滑な紙、例えば上質紙、コート紙等の使用が好ましい。
【0011】
本願発明の積層耐水紙は、この紙基材の一方又は両方の表面にSS−LLDPEからなる熱可塑性合成樹脂層(以下、単にSS−LLDPE層という。)を積層したものである。もちろん、かかるSS−LLDPE層以外に他の熱可塑性合成樹脂層が積層されていても構わない。但し、紙基材のどちらか一方の面には常に、SS−LLDPE層が紙基材と接するようにして積層されていることを要する。従って、本願発明の積層耐水紙は、紙基材/SS−LLDPE層といった最も単純なものの他、例えば、紙基材/SS−LLDPE層/他の熱可塑性合成樹脂層、他の熱可塑性合成樹脂層/紙基材/SS−LLDPE層、他の熱可塑性合成樹脂層/紙基材/SS−LLDPE層/他の熱可塑性合成樹脂層、SS−LLDPE層/紙基材/SS−LLDPE層、SS−LLDPE層/紙基材/SS−LLDPE層/他の熱可塑性合成樹脂層、他の熱可塑性合成樹脂層/SS−LLDPE層/紙基材/SS−LLDPE層/他の熱可塑性合成樹脂層等の積層構成を採ることができる。なお、ここで、他の熱可塑性合成樹脂層は2層以上であってもよい。そして、他の熱可塑性合成樹脂層が紙基材の両方の面に存在している場合には、これを形成する熱可塑性合成樹脂の種類や、これら他の熱可塑性合成樹脂層の積層順序は、一方の面と他方の面とで同一であっても異なっていても構わない。
【0012】
他の熱可塑性合成樹脂層を形成する樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、SS−LLDPE、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を始め、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を使用することができる。中でもポリプロピレンはランダムであるとホモであるとにかかわらず光沢が高く、しかも硬くて傷つき難いことから、本願発明の積層耐水紙の最外層を形成する樹脂として好ましい。加えて、このポリプロピレンはSS−LLDPEとの接着性も良いので、SS−LLDPE層の上にこのポリプロピレンを積層して最外層とすることができる。
【0013】
本願発明の積層耐水紙最外層には不透明性、筆記性等を持たせる目的で酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機填料を配合することもできる。ただし、無機填量の配合は、積層耐水紙の表面性を悪化させる原因ともなるため、配合量は、これが配合される最外層に対して25重量%以下、できれば15重量%以下とすることが好ましい。
【0014】
なお、本願発明の積層耐水紙において、紙基材、SS−LLDPE層及び他の熱可塑性合成樹脂層には、本願発明の目的を害さない限り、上記した以外にも種々の添加剤を添加したり、塗工剤を塗工したりすることができる。例えば、これらの添加剤や塗工剤として、紙基材にはサイズ剤、無機填料(酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等)、SS−LLDPE層及び他の熱可塑性合成樹脂層には帯電防止剤、耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ等)など、一般的に使用される添加剤や塗工剤を使用することができる。
【0015】
本願発明の積層耐水紙は、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法等、公知の方法を単独で、又はこれらを適宜組合せて用いて、紙基材にSS−LLDPE層又はSS−LLDPE層と他の熱可塑性合成樹脂層を積層し、製造することができる。前記したように、不透明性等を目的として酸化チタン等の無機填料を最外層樹脂に配合すると、ラミネーション加工性は悪化するが、かかる場合には、この最外層樹脂を、無機填料を含まない樹脂と共に共押出しラミネートすれば、樹脂層の厚さを薄くしても、いわゆる膜切れ等のトラブルの発生を押さえて、安定的な製造を行うことができる。
【0016】
また、押出しラミネーションや共押出しラミネーションにあたり、溶融した樹脂と接するクーリングロールとして周面を鏡面仕上げとしたものを用い、さらに、ニップロールとして硬度の大きいものを用いて、高い線圧で樹脂と紙基材等との押圧・圧着を行えば、積層された樹脂表面を高光沢とすることができる。この目的のため、ニップロールとしては硬度80度(JIS K−6253)以上のものを用い、線圧は15kgf/cm以上で押圧・圧着を行うことが好ましい。本願発明の積層耐水紙において、少なくとも最外層の樹脂を積層する際にかかる高光沢処理を行えば、当該最外層樹脂の表面、ひいては当該最外層樹脂の積層された積層耐水紙表面を高光沢とすることができる。なお、ここで高光沢とは、JIS P−8142に準じた測定法により光沢度75度以上を示すことをいう。
【0017】
上記高光沢処理は、特に、紙基材に接してSS−LLDPEが積層された側(以下、単に、紙基材のSS−LLDPE層側という。)の積層耐水紙最外層となる樹脂を積層する際に行うことで、大きな効果が得られる。この場合には、当該最外層樹脂が積層された積層耐水紙の表面は、従来であれば残存していた微小な窪みも消え、きわめて平滑なものとなるからである。従って、こうした積層耐水紙表面に印刷を行えば、美麗な仕上がりが得られ、オフセット印刷においても白抜けのない美麗な印刷物が得られることとなる。
【0018】
この場合において、紙基材のSS−LLDPE層側に積層された樹脂層全体(紙基材に接して積層されたSS−LLDPE層自体も含む。)の厚さは15μm以上、殊に20〜40μmの範囲内であることが好ましい。この樹脂層全体の厚さが15μm未満では、本願発明の積層耐水紙においても、きわめて優れた表面平滑性と印刷の美麗性という上記効果を確保することが困難となる。一方、この樹脂層全体の厚さが40μmを超えると、コストが上昇するのみならず、紙基材の厚さに対して樹脂層の厚さが厚くなりすぎ、積層耐水紙の腰がなくなって印刷適性が悪化する傾向を示す。
【0019】
また、紙基材に接して積層されたSS−LLDPE層自体の厚さは8μm以上であることが好ましい。このSS−LLDPE層の厚さが8μ未満であると、上記樹脂層全体の厚さを厚くしたとしても、やはり、きわめて優れた表面平滑性と印刷の美麗性という効果の確保は困難となる。
【0020】
【作用】
積層耐水紙の基材となる紙は、植物繊維等が複雑に絡み合って構成しているため、その表面には微小な凹凸が無数に存在する。従って、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法によりこの紙基材に熱可塑性合成樹脂を積層する場合、紙基材表面に薄い膜状に押出された溶融樹脂は、その表面の凹凸に追従して積層されることとなる(図2)。このような凹凸は、紙基材と溶融樹脂とを押圧して圧着する際に、溶融樹脂と接し、これを圧するクーリングロールとして、周面を高平滑とした鏡面仕上げのものを用い、この表面性状を樹脂表面に転写することである程度矯正されるが、それでもなお矯正しきれない凹部が残り、これが積層耐水紙表面の微小な窪みとなって、オフセット印刷における白抜け等のトラブルを起こす原因となっていた。
【0021】
本願発明の積層耐水紙は、かかる問題を、紙基材に接してSS−LLDPE層を設けることにより解決する。即ち、SS−LLDPEは、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法によって紙基材に積層しても、紙基材の凹凸、特に凹部にはあまり追従しないでSS−LLDPE層を形成する(図1)。従って、このSS−LLDPE層をクーリングロールで圧した場合、又は、このSS−LLDPE層上に積層したその他の熱可塑性合成樹脂層をクーリングロールで圧した場合には、クーリングロールの表面性状がほぼ完全に樹脂表面に転写される。かかるクーリングロールとして、周面を鏡面仕上げとしたものを用いれば、きわめて平滑な表面を有し、美麗な印刷物、特に、オフセット印刷においては白抜けのない印刷物が得られる、高光沢性の積層耐水紙が得られることとなる。
【0022】
このようなSS−LLDPE層の機能は、おそらく、この層を形成するSS−LLDPE自体の溶融張力に起因するものと考えられる。SS−LLDPEは、メタロセン系触媒等、均一な活性点を有する触媒を用いて合成されることから、分子量分布が狭く、高分子物質としてはかなり均一な分子量組成を有している。このため結晶構造が比較的緻密となって高い溶融張力を示し、溶融された樹脂が紙基材上に押出された場合でも、その表面の凹凸に追従することなく紙基材上に積層されるのであろう。
【0023】
【実施例】
以下に、本願発明を実施例に基づいて説明する。
【0024】
なお、実施例及び比較例において白抜け面積率は、ローランド社製オフセット印刷機304にて4色印刷を行ったサンプルの墨単色ベタ印刷面10mm×10mm領域の画像データを、解像度2400dpiでスキャナ(アグファゲバルト社製『デュオスキャンT2500』)から取込み、画像処理ソフト「ウィンルーフ」(三谷商事(株)製)を用いて処理することにより求めた、画像データ取込み領域に対するインキ非転写部の面積率である。
【0025】
[実施例1]
酸化チタン15重量%を添加混合した溶融ホモポリプロピレン(MFR23g/10分、密度0.91g/cm)を、溶融SS−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)製『ハーモレックスNH725N』)と共に、坪量81g/mの上質紙の片面に、SS−LLDPEが上質紙側に位置するようにTダイを用いて押出温度300℃にて共押出しし、これらの溶融樹脂と上質紙とを、周面を鏡面仕上げとしたクーリングロールと硬度95度のニップロールとを用い、線圧15kgf/cmで押圧・圧着して積層耐水紙を製造した。即ち、この積層耐水紙は、上質紙/酸化チタン無添加SS−LLDPE層/酸化チタン添加ホモポリプロピレン層という積層構成を有する。なお、このとき、SS−LLDPE層の厚さは10μm、ホモポリプロピレン層の厚さは20μm、また、SS−LLDPE層とホモポリプロピレン層とが積層された側の積層耐水紙表面の光沢度は89.5(JIS P−8142に準じて測定。以下同じ。)であった。
【0026】
得られた積層耐水紙のホモポリプロピレン層表面にオフセット印刷を行い、白抜け面積率を測定した結果を表1に示す。
【0027】
[実施例2]
酸化チタン15重量%を添加混合したホモポリプロピレンに代えて、酸化チタン15重量%を添加混合したSS−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)製『ハーモレックスNH725N』)を用いた他は、実施例1と同様にして積層耐水紙を製造した。即ち、この積層耐水紙は、上質紙/酸化チタン無添加SS−LLDPE層/酸化チタン添加SS−LLDPE層という積層構成を有する。なお、このとき、酸化チタン無添加SS−LLDPE層の厚さは10μm、酸化チタン添加SS−LLDPE層の厚さは20μm、これらのSS−LLDPE層が積層された側の積層耐水紙の光沢度は80.2であった。
【0028】
得られた積層耐水紙の酸化チタン添加SS−LLDPE層表面にオフセット印刷を行い、白抜け面積率を測定した結果を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
SS−LLDPEに代えてLDPE(三井化学(株)製『11P』)を用いた他は、実施例1と同様にして積層耐水紙を製造した。即ち、この積層耐水紙は、上質紙/酸化チタン無添加LDPE層/酸化チタン添加ホモポリプロピレン層という積層構成を有する。なお、このとき、LDPE層の厚さは10μm、酸化チタン添加ホモポリプロピレン層の厚さは20μm、LDPE層とホモポリプロピレン層とが積層された側の積層耐水紙の光沢度は84.0であった。
【0030】
得られた積層耐水紙のホモポリプロピレン層表面にオフセット印刷を行い、白抜け面積率を測定した結果を表1に示す。
【0031】
[比較例2]
ホモポリプロピレンのみを上質紙に積層した他は、実施例1と同様にして積層耐水紙を製造した。即ち、この積層耐水紙は、上質紙/酸化チタン無添加ホモポリプロピレン層という積層構成を有する。なお、このとき、ホモポリプロピレン層の厚さは30μm、ホモポリプロピレン層が積層された側の積層耐水紙の光沢度は83.5であった。
【0032】
得られた積層耐水紙のホモポリプロピレン層表面にオフセット印刷を行い、白抜け面積率を測定した結果を表1に示す。
【0033】
[比較例3]
SS−LLDPEに代えてLLDPEを用いた他は、実施例2と同様にして積層耐水紙を製造した。即ち、この積層耐水紙は、上質紙/酸化チタン無添加LLDPE層/酸化チタン添加LLDPE層という積層構成を有する。なお、このとき、酸化チタン無添加LLDPE層の厚さは10μm、酸化チタン添加LLDPE層の厚さは20μm、これらのLLDPE層が積層された側の積層耐水紙の光沢度は75.8であった。
【0034】
得られた積層耐水紙の酸化チタン添加LLDPE層表面にオフセット印刷を行い、白抜け面積率を測定した結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004284904
【0036】
表より明らかなように、SS−LLDPE層を紙基材と接して設けた実施例1及び2の積層耐水紙は、いずれも白抜け面積率が1.1%台を示した。これに対して、比較例1〜3の積層耐水紙の白抜け面積率はいずれも2%以上であり、本願発明の積層耐水紙が、オフセット印刷においても白抜けのない、高光沢で美麗な印刷物を与えることが実証された。
【0037】
【発明の効果】
本願発明の積層耐水紙は、高光沢処理により、従来であれば高光沢処理後も残存していた微小な窪みすらもない、きわめて平滑な表面を与える。このため、この表面に印刷を行った場合には美麗な仕上がりとなり、オフセット印刷においても白抜けのない美麗な印刷物が得られる。
【0038】
従って、本願発明によれば、ポスターとして最適な、高光沢で美麗な印刷物を与えることができる。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】 紙基材にSS−LLDPE層を積層した状態を示す、模式的な断面図である。
【図2】 紙基材にSS−LLDPE以外の熱可塑製合成樹脂からなる層を積層した状態を示す、模式的な断面図である。
【符号の説明】
1…紙基材
2…凹部
3…SS−LLDPE層
4…SS−LLDPE以外の熱可塑製合成樹脂からなる層

Claims (3)

  1. 紙基材の少なくとも一方の表面に、一層以上の熱可塑性合成樹脂層が積層されており、かつ、それらの熱可塑性合成樹脂層のうち紙基材と接する層が、シングルサイト系触媒にて合成された直鎖状低密度ポリエチレンからなり、かつ、それらの熱可塑性合成樹脂層のうち最外層をなす層が、ポリプロピレンからなることを特徴とする、オフセット印刷用積層耐水紙。
  2. 少なくとも、シングルサイト系触媒にて合成された直鎖状低密度ポリエチレンからなる層が紙基材と接して積層されている側の積層耐水紙表面において、JIS P−8142に準じた測定法により光沢度が75度以上を示す、請求項1に記載のオフセット印刷用積層耐水紙。
  3. 最外層の熱可塑性合成樹脂層に25重量%以下の無機填料が配合された、請求項1又は2に記載のオフセット印刷用積層耐水紙。
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