JP4284886B2 - シリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法に関する。更に詳しくは、チョクラルスキー法(以下、CZ法という)により製造されかつ窒化性雰囲気下のRTA熱処理により積極的に原子空孔が導入されたシリコンウェーハの窒素雰囲気下における析出熱処理後の酸素析出物密度の評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコンウェーハ内の原子空孔濃度を知る方法として、陽電子消滅法が知られている。この陽電子消滅法では、低速陽電子ビームをシリコンウェーハに照射し、この照射陽電子をシリコンウェーハ中の電子と対消滅させ、この際に発生するガンマ線を検出することにより、原子空孔濃度などの情報を得られるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の陽電子消滅法による原子空孔濃度の測定方法では、検出感度が低いため、原子空孔濃度を精度良く得ることができない不具合があった。
また、上記従来の陽電子消滅法による原子空孔濃度の測定方法では、ガンマ線を用い、設備が大型化するため、効率的に原子空孔濃度を測定できない問題点もあった。
本発明の目的は、RTA熱処理によりシリコンウェーハ内に導入された原子空孔濃度から、所定の熱処理により生成される酸素析出物密度を精度良くかつ効率的に予測できる、シリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、CZ法により作製されたシリコンウェーハを窒素雰囲気又は窒素及びアルゴン混合雰囲気の窒化性雰囲気下で昇温速度30〜70℃/秒で室温から1200〜1280℃まで加熱して上記シリコンウェーハをこの温度に0〜30秒間保持した後にこのシリコンウェーハを降温速度10〜100℃/秒で室温まで冷却するRTA熱処理を行い、このRTA熱処理を行ったシリコンウェーハに白金を拡散しDLTS法にて白金濃度を測定することにより原子空孔濃度V個/cm3を求めるとともに、上記RTA熱処理を行ったシリコンウェーハに所定の熱処理を行って生成された酸素析出物密度D個/cm3を、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3以下のときに式(1)から算出して評価し、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3を越えるときに式(2)から式(1)から算出して評価するシリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法である。
D∝V3/2 ……(1)
D∝V1/2 ……(2)
【0005】
従来、点欠陥の凝集体の殆ど存在しないシリコンウェーハに含まれる原子空孔濃度は多くとも1×1011個/cm3であると言われている。しかし窒素雰囲気又は窒素及びアルゴン雰囲気の窒化性雰囲気下におけるRTA熱処理の条件を変化させることにより、原子空孔濃度を1×1011〜2×1013個/cm3の範囲内で変更可能である。一方、上記RTA熱処理を行ったシリコンウェーハに白金を拡散させ、この白金の濃度をDLTS法により測定した場合、この白金濃度は原子空孔濃度に対応しているので、白金濃度を測定することにより原子空孔濃度を求めることができる。また上記原子空孔濃度はシリコンウェーハに更に所定の熱処理を行うことにより生成される酸素析出物の密度と式(1)及び式(2)の関係を有する。この結果、上記RTA熱処理を行って所定の原子空孔濃度を有するシリコンウェーハに上記所定の熱処理を行う前に、この所定の熱処理により生成される酸素析出物の密度を精度良くかつ効率的に予測できる。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更にRTA熱処理を行ったシリコンウェーハを窒素雰囲気下で600〜900℃に1〜16時間保持する第1熱処理を行った後に連続して900〜1100℃に16〜72時間保持する第2熱処理を行って上記シリコンウェーハ内に酸素析出物を生成したときに、シリコンウェーハの酸素析出物密度D個/cm3を、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3以下のときに式(3)から算出して評価し、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3を越えるときに式(4)から算出して評価することを特徴とする。
D=2.5×10-9×V3/2 ……(3)
D=8.0×103×V1/2 ……(4)
この請求項2に記載されたシリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法では、RTA熱処理を行ったシリコンウェーハに更に上記第1及び第2熱処理を行うことにより酸素析出物が生成され、この酸素析出物密度は上記RTA熱処理による原子空孔濃度と式(3)及び式(4)の関係を有するので、RTA熱処理を行って所定の原子空孔濃度を有するシリコンウェーハに上記第1及び第2熱処理を行う前に、これら第1及び第2熱処理により生成される酸素析出物の密度を精度良くかつ効率的に予測できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を説明する。
本発明のシリコンウェーハはCZ法により引上げられたシリコン単結晶棒から切出すことにより形成される。またこのシリコンウェーハには、成長時導入欠陥が殆どないことが望ましく、COPなどの空孔型ボイド(Void)欠陥の検出下限値を1×105個/cm3とし、LDなどの格子間型欠陥の検出下限値を1×104個/cm3とするとき、これらの欠陥の総数は上記検出下限値以下であることが望ましい。ここで、成長時導入欠陥とは、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げたときに発生する三次元欠陥(agglomerates)である。インゴットを継続的に引上げることによって接触面であった部分が引上げとともに冷却し始め、この冷却の間に、空孔型欠陥又は格子間シリコン型欠陥が拡散により互いに合併して、空孔型欠陥(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型欠陥(interstitial agglomerates)が形成される。空孔型欠陥はCOP(Crystal Originated Particle)の他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型欠陥はLD(Interstitial-type Large Dislocation)と呼ばれる欠陥を含む。
【0010】
上記COPとは、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄したときにウェーハ表面に出現する結晶に起因したピットである。またFPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間無撹拌にてセコエッチング[Secco etching、(K2Cr2O7:50%HF:純水=44g:2000cc:1000cc)の混合液によるエッチング]したときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。更にLDとは、欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬したときにウェーハ表面に出現するピットであり、転位ピットと呼ばれたり、或いは転位クラスタとも呼ばれる。
【0011】
上記シリコンウェーハにはRTA(Rapid Thermal Annealing)熱処理が行われる。このRTA熱処理は窒素雰囲気又は窒素及びアルゴン混合雰囲気の窒化性雰囲気下で、昇温速度30〜70℃/秒、好ましくは40〜60℃/秒で室温から1200〜1280℃、好ましくは1230〜1250℃までシリコンウェーハを加熱して、このシリコンウェーハをこの温度に0〜30秒間、好ましくは5〜15秒間保持した後に、このシリコンウェーハを降温速度10〜100℃/秒、好ましくは30〜70℃/秒で室温まで冷却する熱処理である。
【0012】
なお、昇温速度を30〜70℃/秒の範囲に限定したのは、30℃/秒未満では1回のRTA熱処理に時間が掛りすぎ、70℃/秒を越えると温度安定の判定に誤差を生じ易くなるからである。また保持温度を1200〜1280℃に限定したには、1200℃未満ではウェーハ内に導入される原子空孔の濃度が少なく、1280℃を越えるとウェーハにスリップなどの欠陥が導入され易くなるからである。更に上記保持温度に0〜30秒間保持したのは、30秒間を越えるとウェーハにスリップなどの欠陥が導入され易くなるからである。一方、降温速度を10〜100℃/秒の範囲に限定したのは、10℃/秒未満では冷却工程に時間が掛りすぎ、また凍結される原子空孔濃度が少なく、100℃/秒を越えると装置の稼働上、急冷速度設定が不可能だからである。また保持時間が0秒間とは、昇温した後に直ちに降温し、所定の温度に保持しないことを意味する。更に上記RTA熱処理に用いられる加熱源は白熱ランプ、ハロゲンランプ、アークランプ、グラファイトヒータ等である。
【0013】
シリコンウェーハに上記RTA熱処理を行うことにより、ウェーハ内の原子空孔濃度が1×1011〜2×1013個/cm3の範囲の所定値となる。この原子空孔濃度は直接測定することは困難であるけれども、このシリコンウェーハに白金を拡散しDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy:深い準位の過渡容量応答)法にて白金濃度を測定することにより、上記原子空孔濃度を求めることが可能となる。シリコンウェーハ内に白金を拡散するには、シリコンウェーハをフッ酸に浸漬して自然酸化膜を除去した後に、SC−1液(NH3OH+H2O2+H2O=1:1:5)に浸漬してウェーハ表面に化学酸化膜を形成してウェーハ表面を親水面とし、原子吸光用標準液を白金拡散液としてスピンコート法により塗布した後に、700〜800℃の温度範囲で白金を拡散する方法が用いられる。またシリコンウェーハ内に拡散された白金濃度をDLTS法にて測定するには、Pt−H複合体の解離挙動を把握し、シリコンウェーハ中に数準位ある白金に起因した深い準位から求める方法が用いられる。
【0014】
具体的には、シリコンウェーハ中の白金は格子間位置を拡散し、平衡状態では主に格子位置を占める。即ち、格子間の白金原子は原子空孔と結合し、置換位置を占める。一方、シリコンウェーハ中の白金原子はPt−H複合体を形成し、置換位置白金原子に起因するDLTS信号とは異なる温度にDLTS信号が出現する。しかし所定の熱処理(窒素雰囲気中377℃に60分間保持)を行うことによりPt−H複合体が解離するため、水素を伴わない置換位置の白金原子によるDLTS信号が出現する。この結果、このDLTS信号から白金濃度を測定できるので、この測定された白金濃度を原子空孔濃度とみなすことができる。なお、原子空孔濃度を1×1011〜2×1013個/cm3の範囲に限定したのは、1×1011個/cm3未満では、白金を拡散する熱処理において、白金原子が原子空孔を占有するだけでなく、格子位置のシリコン原子を追い出して白金がシリコン格子位置を占有し、原子空孔と結合した白金と区別できなるためであり、また格子間シリコンが原子空孔と結合する過程も含まれてしまい原子空孔の数を求めることが困難になるからであり、2×1013個/cm3を越えると、原子空孔と結合する白金が不足し、白金濃度と原子空孔濃度とが対応しなくなるからであり、白金の初期濃度と拡散濃度と時間の再調整が必要となる。
【0015】
上述のようにして求められたシリコンウェーハの原子空孔濃度V(個/cm3)は、所定の熱処理を行うことにより生成される酸素析出物密度D(個/cm3)と、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3以下のときに式(1)の関係を有し、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3を越えるときに式(2)の関係を有する。
D∝V3/2 ……(1)
D∝V1/2 ……(2)
上記所定の熱処理を例えば次の第1及び第2熱処理からなる2段熱処理とすれば、式(1)は式(3)のように、式(2)は式(4)のようにそれぞれ変形される。
D=2.5×10-9×V3/2 ……(3)
D=8.0×103×V1/2 ……(4)
【0016】
第1熱処理はRTA熱処理を行ったシリコンウェーハを窒素雰囲気下で600〜900℃、好ましくは750〜850℃に1〜16時間、好ましくは3〜5時間保持する熱処理である。ここで第1熱処理の保持温度を600〜900℃に限定したのは、600℃未満では、形成される析出核の密度が少ないために酸素析出物の密度が少なくなるという不具合があり、900℃を越えると、酸素析出核が消滅するという不具合があるからである。また第1熱処理の保持時間を1〜16時間としたは、1時間未満では、形成される析出核の密度が少ないために酸素析出物の密度が極端に少なくなるという不具合があり、16時間を越えても析出核密度に変化がないためである。
【0017】
第2熱処理は第1熱処理終了後に更に昇温することにより行われ、シリコンウェーハを900〜1100℃、好ましくは950〜1050℃に16〜72時間、好ましくは16〜24時間保持する熱処理である。ここで第2熱処理の保持温度を900〜1100℃に限定したのは、900℃未満では、析出物の成長が遅く、その大きさが小さいために観察が困難であり、1100℃を越えると、板状の酸素析出物が八面体などの形態に変化することもあり、形態を同一にした酸素析出物の生成挙動を把握するという意図に反するからである。また第2熱処理の保持時間を16〜72時間としたは、16時間未満では、酸素析出物の成長が十分ではなく、大きさの小さい析出物が観測されることがあり、密度の計測に誤差を生じ易くなるからであり、72時間を越えると、酸素析出物の密度に変化がなくなり、また酸素析出物の形態に変化が生じる不具合があるからである。
【0018】
上述の評価方法によりシリコンウェーハの酸素析出物密度を評価することにより、RTA熱処理を行って所定の原子空孔濃度を有するシリコンウェーハに所定の熱処理を行う前に、この所定の熱処理により生成される酸素析出物の密度を式(1)及び式(2)から精度良くかつ効率的に予測できる。所定の熱処理を第1及び第2熱処理とすれば、RTA熱処理を行って所定の原子空孔濃度を有するシリコンウェーハに上記第1及び第2熱処理を行う前に、これら第1及び第2熱処理により生成される酸素析出物の密度を式(3)及び式(4)から精度良くかつ効率的に予測できる。
【0019】
また上述の評価方法に基づいて、シリコンウェーハを製造すると、このシリコンウェーハの表面から50μm〜150μm、好ましくはウェーハ表面から測定した原子空孔濃度が最高となる深さを中心とする前後50μmの範囲での原子空孔濃度が1×1011〜2×1013個/cm3、好ましくは5×1011〜4×1012個/cm3の範囲内の所定濃度となる。シリコンウェーハの表面から50μm〜150μmの範囲に限定したのは、50μm以下を評価範囲とすると、原子空孔濃度がウェーハ表面側で急激に減少するDZ領域が評価範囲に含まれてしまい、正確に評価できないからであり、150μmを越えると原子空孔濃度がウェーハ内部で急激に減少する領域が評価範囲に含まれてしまい、上記と同様に正確に評価できないからである。このようにシリコンウェーハ内の原子空孔濃度が正確に判れば、所定の熱処理を行う前にこの熱処理により生成される酸素析出物の密度を精度良く表示できる。即ち、この酸素析出物密度はゲッタリング効果が期待されるシリコンウェーハの重要な製品仕様となる。
【0020】
また図2に示すように、シリコンウェーハの両表面から50μm〜150μmの深さの範囲内で原子空孔濃度が1×1011〜2×1013個/cm3の範囲内と最も大きく、所定の深さから厚さ方向の中心に向うに従って原子空孔濃度が次第に小さくなり、かつ所定の深さから厚さ方向の表面に向うに従って原子空孔濃度が急激に小さくなるように、即ち原子空孔濃度が略M字型に分布することが好ましい。半導体装置の不良をもたらす金属原子の酸素析出物によるゲッタリング能力は、酸素析出物密度が高いほど優れる。このためRTA熱処理によりウェーハの深さ方向に均一な原子空孔を導入することは可能であるけれども、酸素析出物を高密度でかつ均一に形成すると、ウェーハ中の酸素濃度が低下し、ウェーハの機械的強度が低下してしまい、ウェーハが破損するおそれがある。シリコンウェーハ内に上記のように略M字型に原子空孔濃度を分布させることにより、高いゲッタリング能力を有するとともに、機械的強度が低下しないシリコンウェーハを得ることができる。
【0021】
【実施例】
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
シリコン単結晶引上げ装置を用いて直径8インチのシリコンインゴットを引上げた。このインゴットは直胴部の長さが1000mm、結晶方位が(100)、酸素濃度が1.0×1018atoms/cm3(旧ASTM)であった。インゴットは引上げ時のV/Gを0.03mm2/分℃から0.015mm2/分℃まで連続的に減少させながら育成した。このインゴットから2枚のシリコンウェーハを切出した後に鏡面研磨し、酸素濃度を極端に低減したアルゴン及び窒素の混合雰囲気下でRTA熱処理を行った。このRTA熱処理は室温から1250℃まで50℃/秒の昇温速度でシリコンウェーハを加熱し、1250℃で10秒間保持し、更に30℃/秒の降温速度で冷却する熱処理であった。これら2枚のシリコンウェーハを実施例1とした。
【0022】
<実施例2>
実施例1と同一のインゴットから切出された2枚のシリコンウェーハを用意した。これらのシリコンウェーハを鏡面研磨し、アルゴン及び窒素の混合雰囲気下でRTA熱処理を行った。このRTA熱処理は室温から1250℃まで50℃/秒の昇温速度でシリコンウェーハを加熱し、1250℃で30秒間保持し、更に30℃/秒の降温速度で冷却する熱処理であった。これら2枚のシリコンウェーハを実施例2とした。
<実施例3>
実施例1と同一のインゴットから切出された2枚のシリコンウェーハを用意した。これらのシリコンウェーハを鏡面研磨し、アルゴン及び窒素の混合雰囲気下でRTA熱処理を行った。このRTA熱処理は室温から1250℃まで50℃/秒の昇温速度でシリコンウェーハを加熱し、1250℃で10秒間保持し、更に30℃/秒の降温速度で冷却する熱処理であった。これら2枚のシリコンウェーハを実施例3とした。
<実施例4>
実施例1と同一のインゴットから切出された2枚のシリコンウェーハを用意した。これらのシリコンウェーハを鏡面研磨し、アルゴン及び窒素の混合雰囲気下でRTA熱処理を行った。このRTA熱処理は室温から1250℃まで50℃/秒の昇温速度でシリコンウェーハを加熱し、1250℃で5秒間保持し、更に30℃/秒の降温速度で冷却する熱処理であった。これら2枚のシリコンウェーハを実施例4とした。
【0023】
<比較試験及び評価>
実施例1〜4の各2枚の8インチシリコンウェーハのうちの各1枚に白金を拡散した後に、DLTS法にて白金濃度を測定することにより、ウェーハの厚さ方向の原子空孔濃度V個/cm3の分布を求めた。一方、実施例1〜4の各2枚の8インチシリコンウェーハのうちの残りの各1枚に次の2段熱処理を行った後に、セコエッチ(Secco Etch)法にて酸素析出物密度D個/cm3を測定した。上記2段熱処理は窒素雰囲気下で800℃に4時間保持する第1熱処理を行った後に、続けて1000℃まで加熱して1000℃に16時間保持する第2熱処理を行う熱処理であった。このようにして測定された原子空孔濃度及び酸素析出物密度を図1にプロットした。また式(3)及び式(4)の直線を図1に実線で描いた。
図1から明らかなように、式(3)及び式(4)のVに原子空孔濃度を代入して算出される酸素析出物密度は、実測された酸素析出物密度に極めて良く一致した。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、CZ法により作製されたシリコンウェーハに窒素雰囲気下又は窒素及びアルゴン混合雰囲気下でRTA熱処理を行い、このシリコンウェーハに白金を拡散しDLTS法にて白金濃度を測定することにより原子空孔濃度Vを求め、更にこのシリコンウェーハに所定の熱処理を行って生成された酸素析出物密度DをD∝V3/2及びD∝V1/2という式から算出して評価したので、RTA熱処理を行って所定の原子空孔濃度を有するシリコンウェーハに上記所定の熱処理を行う前に、この所定の熱処理により生成される酸素析出物の密度を精度良くかつ効率的に予測できる。
また上記RTA熱処理を行ったシリコンウェーハに所定の2段熱処理を行ってシリコンウェーハ内に酸素析出物を生成したときに、このシリコンウェーハ内の酸素析出物密度DをD=2.5×10-9×V3/2及びD=8.0×103×V1/2という式から算出して評価すれば、RTA熱処理を行って所定の原子空孔濃度を有するシリコンウェーハに上記第1及び第2熱処理を行う前に、これら第1及び第2熱処理により生成される酸素析出物の密度を精度良くかつ効率的に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の原子空孔濃度の変化に対する酸素析出物密度の変化を示す図。
【図2】本発明のシリコンウェーハの厚さ方向における原子空孔濃度の変化を示す図。
Claims (2)
- チョクラルスキー法により作製されたシリコンウェーハを窒素雰囲気又は窒素及びアルゴン混合雰囲気の窒化性雰囲気下で昇温速度30〜70℃/秒で室温から1200〜1280℃まで加熱して前記シリコンウェーハをこの温度に0〜30秒間保持した後に前記シリコンウェーハを降温速度10〜100℃/秒で室温まで冷却するRTA熱処理を行い、
前記RTA熱処理を行ったシリコンウェーハに白金を拡散しDLTS法にて白金濃度を測定することにより原子空孔濃度V個/cm3を求めるとともに、
前記RTA熱処理を行ったシリコンウェーハに所定の熱処理を行って生成された酸素析出物密度D個/cm3を、前記原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3以下のときに式(1)から算出して評価し、前記原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3を越えるときに式(2)から算出して評価するシリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法。
D∝V3/2 ……(1)
D∝V1/2 ……(2) - RTA熱処理を行ったシリコンウェーハを窒素雰囲気下で600〜900℃に1〜16時間保持する第1熱処理を行った後に連続して900〜1100℃に16〜72時間保持する第2熱処理を行って前記シリコンウェーハ内に酸素析出物を生成したときに、
前記シリコンウェーハの酸素析出物密度D個/cm3を、原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3以下のときに式(3)から算出して評価し、前記原子空孔濃度Vが4.2×1012個/cm3を越えるときに式(4)から算出して評価する請求項1記載のシリコンウェーハの酸素析出物密度の評価方法。
D=2.5×10-9×V3/2 ……(3)
D=8.0×103×V1/2 ……(4)
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