JP4284714B2 - 表面被覆金属粉末およびそれを用いた導電性ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、優れた分散性を与えるために表面被覆された金属粉末およびそれを用いた導電性ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえばセラミック電子部品のような電子部品の分野において、電極、導電パターン、スルーホールもしくはビアホール接続部などの電気的導通が可能とされなければならない回路要素を形成するため、導電性ペーストがしばしば用いられている。導電性ペーストは、導電成分として、導電性の金属粉末を含有している。
【0003】
このような導電性ペーストに含有される金属粉末は、たとえば、導電性ペーストを付与して形成された導電性厚膜の表面粗さ等の特性に影響を及ぼす関係上、凝集が少なくて単分散性に優れていなければならない。そのため、導電性ペーストに含有されるべき金属粉末は、次のような方法によって製造されることが多い。
【0004】
すなわち、まず、第1の方法は、特開昭57−155301号公報に記載されるように、金属粉末と油性樹脂とを混練した後、油性樹脂のみを有機溶剤に溶解し、金属粉末を得る方法である。また、第2の方法は、金属粉末をポットミルまたはボールミル等によって解砕する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1の方法または第2の方法によって得られた金属粉末は、比較的大きな粒径であるときには、凝集が少なく十分な単分散性を有しているが、粒径がたとえば3.0μm以下となった場合には、凝集が多く生じ、単分散性が十分でないという問題に遭遇する。その結果、このような金属粉末を含有する導電性ペーストを用いて導電性厚膜を形成した場合、その表面粗さが大きく、たとえば積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に適用した場合には、ショート不良率の増加を招くという問題がもたらされる。
【0006】
そこで、この発明は、凝集が少なく単分散性に優れた金属粉末を提供しようとすることを目的とするとともに、このような金属粉末を用いて、表面粗さの小さい、平滑な導電性厚膜を形成することができる、導電性ペーストを提供しようとすることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る金属粉末は、粉末表面が高分子化合物で被覆された、表面被覆金属粉末であって、上記高分子化合物が、
【0008】
【化2】
【0009】
の構造を有し、R1およびR2が、水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、それらの誘導体、および、それらがエーテル結合しているもののうちの少なくとも1種であることを特徴としている。
この発明に係る表面被覆金属粉末において、金属粉末は、たとえば、Ag、Pd、Cu、Ni、およびそれらの合金のうちの少なくとも1種からなる粉末である。
【0010】
また、この発明に係る表面被覆金属粉末において、金属粉末の粒径は、好ましくは、3.0μm以下である。
また、この発明に係る表面被覆金属粉末において、金属粉末の単位表面積当たりの高分子化合物の被覆量は、好ましくは、1.25×10-5g/m2 以上に選ばれる。
【0011】
この発明は、また、上述のような表面被覆金属粉末を含有する、導電性ペーストにも向けられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明に係る表面被覆金属粉末は、各金属粉末の表面が、単量体において無水マレイン酸を含む、
【0013】
【化3】
【0014】
(R1およびR2は、水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、それらの誘導体、および、それらがエーテル結合しているもののうちの少なくとも1 種)の構造を有する高分子化合物で被覆されたものである。
上述のように、金属粉末の表面を高分子化合物で被覆した状態を得るための方法としては、特に限定しないが、たとえば、高分子化合物を有機溶剤に溶解した後、金属粉末と混合し、不要な有機溶剤を蒸発させることにより除去する方法がある。ここで用いる有機溶剤としては、高分子化合物を溶解し得るものであればよく、たとえば、アルコール類、ケトン類、炭化水素系溶剤、およびそれらの混合物を用いることができる。
【0015】
この場合、高分子化合物の被覆量は、有機溶剤に溶解する高分子化合物の量により制御することができる。また、高分子化合物の被覆をより均一にするため、この被覆工程において、ポットミル等を用いて金属粉末に対して解砕を加えてもよい。
以下に、この発明の作用および効果を確認するために実施した実施例および比較例について記載する。
【0016】
(実施例1〜8)
【0017】
【化4】
【0018】
の構造を有し、R1がCH2 −O−(CH2 −O−CH2 )n −CH3 、R2がベンゼン環である、高分子化合物を用意した。これを、表1に示すような種々の被覆量を得るため、0.001g〜5gの範囲にある種々の量でアセトン300ccに溶解し、これに粒径0.2μmの銅粉末を100g添加し、乾燥させて、高分子化合物で被覆された銅粉末を得た。
【0019】
この銅粉末に、エチルセルロースおよびテルピネオールからなるワニスを、銅粉末重量比で50%添加し、導電性ペーストを得た。
この導電性ペーストを、ドクターブレードを用いて、ガラス板上に塗布し、膜厚20μmの膜を形成した。
この膜の表面粗さを、接触式表面粗さ計を用いて測定した。その結果が表1に示されている。なお、表1において、高分子化合物の被覆量が、銅粉末に対する重量%で表わされているとともに、銅粉末の単位表面積当たりの重量すなわちg/m2 で表わされている。
【0020】
【表1】
表1からわかるように、高分子化合物の被覆量が多くなるほど、表面粗さが小さくなり、0.05重量%すなわち1.25×10-4g/m2 の被覆量で、表面粗さがほぼ一定値となり、0.25μm以下となった。なお、十分な効果を出すためには、高分子化合物の被覆量は、0.005重量%以上すなわち1.25×10-5g/m2 以上であることが望ましく、また、0.05重量%すなわち1.25×10-4g/m2 以上であることがより望ましい。
【0021】
(比較例1)
上記実施例1〜8で用いた粒径0.2μmの銅粉末を、高分子化合物で被覆せずに、そのまま用いて、実施例1〜8と同様の方法で、導電性ペーストを作製し、この導電性ペーストを用いて膜を形成し、この膜の表面粗さを測定した。その結果、表面粗さは、0.72μmであり、実施例1〜8のいずれに対しても大きい値を示した。
【0022】
(比較例2)
アルキッド樹脂20gと粒径0.2μmの銅粉末100gとを混合し、擂塊機で20時間混練した後、アセトンを用いてアルキッド樹脂を溶解し、さらに銅粉末を濾別することによって、銅粉末を取り出した。この銅粉末を用いて、実施例1〜8と同様の方法で、導電性ペーストを作製し、膜を形成し、この膜の表面粗さを測定した。その結果、表面粗さは、0.73μmであり、比較例1と同様、実施例1〜8のいずれに対しても大きい値を示し、アルキッド樹脂による被覆の効果が認められなかった。
【0023】
(比較例3)
粒径0.2μmの銅粉末を、ボールミルによって10時間解砕した。この銅粉末を用いて、実施例1〜8と同様の方法で、導電性ペーストを作製し、この導電性ペーストを用いて、膜を形成し、この膜の表面粗さを測定した。その結果、表面粗さは、0.65μmであり、比較例1および2に比べて改善されているものの、実施例2〜8に比べると、大きい値を示した。
【0024】
前述した実施例1〜8では、金属粉末として、銅粉末を用いたが、その他、銀、パラジウム、ニッケル、または、銅、銀、パラジウムおよびニッケルのうちの少なくとも2種を含む合金からなる粉末であっても、同様の効果が奏されることが確認されている。
また、実施例1〜8では、高分子化合物の構造式において、R1がCH2 −O−(CH2 −O−CH2 )n −CH3 、R2がベンゼン環であったが、これら以外の、水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、それらの誘電体、または、それらがエーテル結合しているものである場合にも、同様の効果があることが確認されている。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、金属粉末を、凝集が少なく単分散性に優れたものとすることができるので、この表面被覆金属粉末を含有させた導電性ペーストを用いて形成した膜の表面粗さを小さくすることができる。
この発明に係る表面被覆金属粉末において、金属粉末の単位表面積当たりの高分子化合物の被覆量が、1.25×10-5g/m2 以上に選ばれると、導電性ペースト中での単分散性がより向上し、膜を形成した場合の表面粗さの低減効果をより十分なものとすることができる。
【0026】
また、この発明に係る表面被覆金属粉末において、金属粉末の粒径を3.0μm以下とされる場合には、金属粉末そのままでは凝集しやすく単分散性が劣るので、この発明に係る表面被覆がより有意義なものとなる。
Claims (5)
- 前記金属粉末が、Ag、Pd、Cu、Ni、およびそれらの合金のうちの少なくとも1種からなる粉末である、請求項1に記載の表面被覆金属粉末。
- 前記金属粉末の粒径が、3.0μm以下である、請求項1または2に記載の表面被覆金属粉末。
- 前記金属粉末の単位表面積当たりの前記高分子化合物の被覆量が、1.25×10-5g/m2 以上である、請求項1ないし3のいずれかに記載の表面被覆金属粉末。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の表面被覆金属粉末を含有する、導電性ペースト。
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