JP4284563B2 - 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法 - Google Patents

細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4284563B2
JP4284563B2 JP2008201405A JP2008201405A JP4284563B2 JP 4284563 B2 JP4284563 B2 JP 4284563B2 JP 2008201405 A JP2008201405 A JP 2008201405A JP 2008201405 A JP2008201405 A JP 2008201405A JP 4284563 B2 JP4284563 B2 JP 4284563B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sheet
cells
cell
fibrin
myocardial
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008201405A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009011322A (ja
Inventor
恵一 福田
裕史 板橋
一男 坪田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Keio University
Original Assignee
Keio University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Keio University filed Critical Keio University
Priority to JP2008201405A priority Critical patent/JP4284563B2/ja
Publication of JP2009011322A publication Critical patent/JP2009011322A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4284563B2 publication Critical patent/JP4284563B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/0068General culture methods using substrates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2533/00Supports or coatings for cell culture, characterised by material
    • C12N2533/50Proteins
    • C12N2533/56Fibrin; Thrombin

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Description

本発明は、細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法に関する。
著しい機能不全に陥った心臓に対し、ドナー不足を抱える心臓移植に変わる治療法として、様々な幹細胞を利用した細胞移植が試みられてきた。近年になりこうした細胞移植から体外で心筋組織を3次元的に構築した上で移植を行う組織移植の手法が盛んに開発されるようになった。例えば、電子線を用いてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(「PIAAm」と略記される)を市販のポリスチレン培養皿表面に塗布した温度感応性培養皿を用いることによって各種の細胞シートを作製することに成功し、中でも心筋細胞に関しては、こうして作製した心筋シートを積層化することにより移植片として利用可能な心筋組織塊を開発したことがすでに報告されている(特開2003−38170号公報、国際公開01/068799号パンフレット、Shimizu et. Al. : Fabrication of pulsatile cardiac tissue grafts using a novel 3-dimensional cell sheet manipulation technique and temperature-responsive cell culture surface : Circ Res. 2002; 90:e40-e48)。こうして作製された心筋組織塊はin vitroおよびin vivoで正常の心筋組織と同様の電気活動を行うことが確認されている。
各種の組織に対する初代培養、特に心筋細胞の培養に関しては、その方法に於いて各施設間により多少の相違が見られる。しかるに上記の温度感応性培養皿を使用した細胞シートの作製法は、本特殊培養皿での培養に最適となる様に厳格な方法で初代培養を行った際には比較的安定して細胞シートを作製することが可能であるが、各施設で慣例的に行われてきた方法をそのまま適用した際には細胞のシート化は困難であった。
本発明は、市販され、安全性も確認されている身近な材料でコーティングした支持体を用い、簡便な操作で細胞シートを製造できる方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、細胞シートの製造に適した支持体を提供することも目的とする。
本発明者らは、ほとんどの細胞により分解されるフィブリン糊をあらかじめ薄くコーティングした培養皿で細胞を数日間培養すると、細胞と培養皿表面との間のフィブリンが消失して細胞がシート状に結合したまま宙づり状態となることを発見した。この状態の細胞シートをスクレイパーで剥離して回収することにより、安定した確率で細胞シートを作製する手法を確立した。本発明はこれらの知見により完成された。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 細胞シートを作製するための支持体の表面をフィブリンでコーティングするための組成物であって、フィブリノーゲン及びトロンビンを含むことを特徴とする前記組成物。
(2) 表面がフィブリンでコーティングされている細胞シート作製用支持体。
(3) 表面がフィブリンでコーティングされている支持体の表面上で細胞を飽和状態になるまで培養し、細胞底面のフィブリンが分解されるのに十分な時間培養を継続した後、培養した細胞を支持体表面からシート状に剥離することを含む、細胞シートの製造方法。
(4) 剥離したシート状の培養細胞をさらに積層化することを含む、(3)記載の方法。
(5)細胞シートが再生医療又は薬剤の生物学的活性試験に用いられる、(3)又は(4)に記載の方法。
本発明により、各施設がこれまで行ってきた細胞の初代培養の方法を変更することなく、同様の初代培養を行うことで、様々な細胞によるシートを作製することが可能となり、その成功率も安定している。
また、本発明により、PIAAmをコーティングした高価な特殊培養皿を用いずとも、市販のフィブリン糊を用いることで、即座にかつ大量に細胞シートを作製することができる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2003‐328340号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明は、細胞シートを作製するための支持体の表面をフィブリンでコーティングするための組成物であって、フィブリノーゲン及びトロンビンを含むことを特徴とする前記組成物を提供する。
フィブリンは、フィブリノーゲンのAα鎖とBβ鎖がトロンビンにより特異的に加水分解され、フィブリノペプチドA及びBを放出して生じる難溶性画分である。フィブリンの凝集にあずかる反応基同士が水素結合してポリマーを形成し、一定の配列をとってゲル化する。
フィブリノーゲンは、分子量約34万の糖タンパク質であり、分子量がそれぞれ6.5万±0.1万、5.5万、4.7万のAα鎖、Bβ鎖及びγ鎖の3種類のサブユニットが対をなし、互いにS−S結合している。トロンビンによりArg-Gly結合が加水分解され、Aα鎖及びBβ鎖からフィブリノペプチドAとBを放出してフィブリンに転じる。
トロンビンは、蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)の一種で、フィブリノーゲンに作用してフィブリンを生成する。本発明の組成物において、トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンに変換する触媒として有効な量で存在するとよい。
フィブリノーゲン及びトロンビンは、それらを用いて形成するフィブリンコーティング上で細胞を培養して作製する細胞シートがヒトに用いられることを考えると、ヒト由来のものが好ましいが、それに限定されるわけではなく、他の動物(例えば、既に市販されているサル、ブタ、マウス、ラット、ヒヒ、イヌ、ネコ、ヒツジ,ウシなど)由来のものであってもよい。
フィブリノーゲン及びトロンビンは市販のものを使用することができる。例えば、バクスター社のティシールキットを使用することができる。ティシールキットは、ヒトフィブリノーゲン、トロンビン、塩化カルシウム2水和物、アプロチニンを含有する。
本発明の組成物は、さらに、塩化カルシウム(水和物であってもよい)、アプロチニン、生理食塩水などを含有するとよい。
本発明の組成物16ml中の組成の一例を以下に記載する。
・フィブリノーゲン 45〜180 mg
・トロンビン 0.2〜0.8 U
・塩化カルシウム2水和物 0.5〜1.0 mg
・アプロチニン 1500〜6000 U
・生理食塩水 16 ml
上記組成物において、フィブリノーゲンにトロンビンが作用するとフィブリンが生成してしまうので、フィブリノーゲンとトロンビンはそれぞれ別の容器に保存しておき、使用時に混合するとよい。フィブリノーゲンには、血清アルブミン、アミノ酢酸、アプロチニン、チロキサポール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムを添加してもよい。トロンビンには、血清アルブミン、アミノ酢酸、塩化ナトリウムを添加してもよい。カルシウムイオンはフィブリノーゲンの加水分解を促進するので、塩化カルシウム2水和物もフィブリノーゲンとは別の容器に保存しておき、使用時に混合するとよい。例えば、塩化カルシウム2水和物は、使用時にトロンビンを溶解するための液(以下、「トロンビン用溶解液」という。)に溶解させ、容器に保存しておくとよい。また、アプロチニンはフィブリノーゲンの重合を阻害するので、フィブリノーゲンに添加してもよいし、使用時にフィブリノーゲンを溶解するための液(以下、「フィブリノーゲン用溶解液」という。)に溶解させ、容器に保存しておいてもよい。上記組成物の使用方法の一例を以下に説明する。まず、アプロチニンを含有するフィブリノーゲン用溶解液にフィブリノーゲンを溶解し、A液とする。塩化カルシウム2水和物を含有するトロンビン用溶解液にトロンビンを溶解し、B液とする。A液、B液及び生理食塩水を混合し、混合液を細胞シート作製用支持体の表面に塗布する。
本発明の組成物を用いて、細胞シート作製用支持体の表面をフィブリンでコーティングすることができる。
本発明は、表面がフィブリンでコーティングされている細胞シート作製用支持体を提供する。
支持体は、細胞の培養が可能である限り、いかなるものであってもよいが、培養皿、シャーレ、6〜96穴ウェル培養皿、セルデスクLF(SUMILON)などを例示することができる。支持体の材質としては、ガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、セラミックス類などを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
本発明の細胞シート作製用支持体を製造するには、本発明の組成物を支持体に塗布してフィブリンの被膜を形成させればよい。その一例の詳細を以下に説明する。
まず、フィブリノーゲン、トロンビン、塩化カルシウム2水和物、アプロチニン、生理食塩水を混合し、混合液を支持体の表面に塗布する。適当な時間(通常、1〜3時間)室温で放置すると、フィブリンが形成される。これを細胞シート作製用支持体として使用するまで、無菌条件下、4℃で保存しておくとよい。
本発明は、表面がフィブリンでコーティングされている支持体の表面上で細胞を飽和状態になるまで培養し、細胞底面のフィブリンが分解されるのに十分な時間培養を継続した後、培養した細胞を支持体表面からシート状に剥離することを含む、細胞シートの製造方法を提供する。培養皿上で隙間無く飽和状態まで増殖した細胞を剥がすことにより、膜状のシートを得ることが出来る。本明細書において、「飽和状態」とは、細胞が隙間無く並んだ状態をいい、これは顕微鏡で観察することができる。
培養する細胞としては、心筋細胞、骨格筋芽細胞、成熟骨格筋細胞、平滑筋細胞、骨髄間質細胞、角膜上皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、皮膚細胞などを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。これらの細胞を培養皿上で飽和状態にするに当たり、単一種類の細胞のみを敷き詰める事による方法と、複数種類の細胞を同時に敷き詰める方法がある。単一種類の細胞を飽和状態にする方法の中にも、増殖能を持ったモノクローナルな細胞を培養皿上に始めは少数蒔き飽和状態になるまで増殖させる方法と、増殖能の低い細胞でも始めからポリクローナルな細胞を多数蒔き培養皿底面に接着した直後に飽和状態にする方法がある。前者の例としては、マウス骨格筋芽細胞由来の細胞株C2C12細胞やCMG細胞の様な不死化した細胞株を少数蒔いて培養皿上で増殖させて飽和状態になるのを待つ方法がある。後者の例としては心筋、骨格筋、平滑筋、骨髄などからそれぞれ心筋細胞、骨格筋芽細胞、骨髄間質細胞などを初代培養の手法で採取し、セルソーター、パーコール、接着分離法などを用いて細胞を選択収集し純度を上げた後に十分量を培養皿に蒔く方法がある。複数種類の細胞を飽和状態にする方法の例としては、心筋細胞や骨格筋細胞でシートを作製する際に線維芽細胞を混合すると仮に心筋細胞や骨格筋細胞の数が不十分であっても、心筋細胞同士、骨格筋細胞同士の隙間に増殖能の高い線維芽細胞が入り込み全体として培養皿の底面を全ていずれかの細胞で覆い飽和状態にすることが出来る。こうして十分量の採取が困難でかつ増殖能の低い細胞によっても、線維芽細胞などのつなぎとなる細胞を共培養することにより容易にシートを作製することが可能となる。この際つなぎに使う細胞としては、線維芽細胞のほか平滑筋細胞、内皮細胞などが使用可能と考えられ、つなぎに用いる細胞を変えることにより、用途に応じて作製される細胞シートの強度や伸縮性を変えることが可能である。
細胞は、ヒト由来のもの、ヒト以外の動物(例えば、サル、ブタ、マウス、ラット、ヒヒ、イヌ、ネコ、ヒツジ,ウシなど)由来のものであってもよい。細胞は、動物などの供給源から直接採取したものであっても、株化された培養細胞あるいは株化されていない培養細胞であってもよい。
細胞シートを製造するには、表面がフィブリンでコーティングされている支持体の表面上で細胞を飽和状態になるまで培養し、細胞底面のフィブリンが分解されるのに十分な時間培養を継続した後、培養した細胞を支持体表面からシート状に剥離すればよい。細胞の培養は、表面がフィブリンでコーティングされている支持体の表面上で行なう限り、いかなる方法及び条件下で行なってもよく、細胞が飽和状態となり、かつ支持体表面から細胞がシート状に剥離できる程度にフィブリンが分解されるまで継続すればよい。また、細胞をシート化するまでに長期間培養する必要がある際には、シート化を行う数日前まで培養液に適当量のアプロチニンを加えることにより、必要な日数までフィブリンを溶解させることなく培養を延長することが出来る。通常、細胞が飽和状態になるまで培地で培養し、その後アプロチニンを含まない培養液で3〜4日培養を継続する。この間に細胞底面のフィブリンは培養細胞により自然に分解されるが、その際プラスミンなどのフィブリンを分解する物質を培養液に添加することにより細胞底面のフィブリンが分解する速度を意図的に調節することも可能である。次いで、培養液を吸引し、スクレイパーなどの剥離手段を用いて支持体から膜状の細胞シートを剥離するとよい。細胞シートを剥離し終わった後に、しわの寄った細胞シートに新たな培養液を滴下することによって、細胞シートを伸展することができる。
剥離したシート状の培養細胞をさらに積層化してもよい。細胞シートを積層化する手法の一例を以下に説明する。
培養皿上で伸展させた1枚の細胞シートから培養液をさらに吸引し、37℃飽和水蒸気のインキュベーターに適当な時間(例えば、15〜30分間)放置する。この間に1枚目の細胞シートは培養皿上に接着する。次に剥離した直後の2枚目の細胞シートを培養液と共にピペットで吸引し、培養皿上に固定された1枚目の細胞シートの上に滴下する。伸展した1枚目のシートの上に縮んだ状態で滴下された2枚目のシートに、さらに新たな培養液をゆっくり滴下することによって2枚目のシートを1枚目のシートに重ねた状態で伸展することができる。同様の手技を繰り返して細胞シートを次々積層化することができる。
本発明の手法を用いて各種の細胞をシート化し、またシートを積層化することにより、様々な臓器に対してin vitroでの組織塊構築が可能となり、こうして作製した組織塊を用いることによって細胞レベルから組織レベルでのin vitroでの解析手法が確立できる。
本発明の方法により製造された細胞シートは、再生医療又は薬剤の生物学的活性試験に用いることができる。
再生医療に用いる細胞シートとしては、心筋細胞シート、角膜上皮細胞シート、口腔粘膜上皮細胞シート、皮膚細胞シート、などを挙げることができる。心筋細胞シートは、心筋梗塞や各種の心筋炎、心筋症などにより生じた心不全、不整脈などの治療や心筋移植用材料として用いることができる。角膜上皮細胞シート及び口腔粘膜上皮細胞シートは、角膜移植用材料として用いることができる。皮膚細胞シートは、熱傷、外傷などによる創傷の治療などに用いることができる。また線維芽細胞シートによる創傷の治癒を促進する治療法などの利用も可能と考えられる。
薬剤の生物学的活性試験としては、薬剤の薬理活性試験、薬剤の毒性試験、薬剤の結合活性試験などを挙げることができる。薬剤の結合活性としては、リガンド−受容体の結合活性、抗体−抗原の結合活性などを例示することができる。これまで行われていたような、細胞培養の培養液に各種の薬物を添加し細胞の変化を検討する方法に比べ、細胞シートの培養液に各種の薬物を添加して細胞シートへの影響を検討した場合は、細胞単体への影響のみならず細胞間の構造、構築などへの影響を検討する事が可能となり、薬剤の細胞レベルだけでなく臓器レベルへの影響を検討する事が可能となる。また、各種のヒト臓器由来の細胞シートを免疫不全贓物(ヌードマウス、スキッドマウス、ヌードラットなど)に移植し、この移植モデル動物に薬剤を投与した後に細胞シートの状態を検討する事により生体内でのヒト臓器に対する薬剤の影響を予測する事が可能となる。
本発明の方法により製造された細胞シートを用いた薬剤の生物学的活性試験により、所望の生物学的活性を有する医薬、農薬などの候補物質を選別することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
本実施例で使用した材料の入手先と調製方法は以下の通りである。
培養皿(FALCON 35 3001、直径3.5 cm)
ウィスターラット(日本クレア販売)
2.5%トリプシン(GIBCO 15090-046)
コラゲナーゼ(SIGMA C-5138)
DNase I(SIGMA DN-25)
FBS(JRH Bioscience)
ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンホテリシンB(GIBCO 15240-062)
medium 199(ICN Biomedicals 1023126)
DMEM(GIBCO 12100-046)
マウス骨格筋芽細胞由来のC2C12(ATCCより購入)
CMG細胞(慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科教室においてマウス骨髄細胞に5-アザシチジンを添加し、心筋へ形質転換ずる能力を獲得し不死化した細胞株をクローニングして得られた細胞株)
ヌードラット(日本クレア)
ウサギ由来抗マウスコネキシン抗体 (SIGMA C6219)
マウス由来抗アクチニン抗体 (SIGMA A7811)
TRITC結合ブタ由来抗ウサギIgG抗体 (DAKO R 0156)
Alexa 488結合ヤギ由来マウスIgG抗体 (Molecular Probes A-11029)
ウサギ(日本白色種(J.W., メス、約3Kg , 白石実験動物飼育所))
SHEM
・DMEM/F12:Gibco BRL D−MEM/F12(1袋/1L用),12400−016;15.6g入り;HEPES含
・NaHCO3:Waco(使用時の濃度 2.5g/l)
・Insulin:SIGMA human recombinant expressed in E.coli;I−0259;50mg入り(使用時の濃度 5μg/ml)
・Human−EGF:Gibco BRL Recombinant Human EGF;13247−010;100μg入り(使用時の濃度 10μg/ml)
・Cholera toxin:SIGMA c-3012;1mg入り(使用時の濃度 1μg/ml)
・0.5% DMSO :SIGMA DIMETHYL SULFOXIPE;D-2650 ; 5ml x 5本入り
・15% FCS : 三光純薬(Vitromex);VMS1500 ; Lot, F000210802 ; 500 ml
DMEM (Gibco)
ウシ胎児血清 (ニチレイ)
3T3細胞 (American Type Culture Collection)
アプロチニン (Wako)
ゲンタマイシン、ペニシリン、アンホテリシンB (Wako)
DispaseII (合同酒精)
DMEM/F12 (Gibco)
Trypsin (Gibco)
EDTA (Gibco)
Normal Donkey Serum(CHEMICON ; S30-100ML ; Lot, 23031387 ; 100 ml)
BSA (Sigma)
DAPI(Sigma)
[実施例1]ヒトフィブリンによる培養皿コーティング
ヒトフィブリノーゲン90 mg, トロンビン 0.4 U, 塩化カルシウム2水和物 0.59 mg, アプロチニン 3000 U(以上、Baxter社製 ティシール1 mlキットを使用),生理食塩水16 mlを混合し、3.5 cm培養皿1枚あたりに0.3 mlを培養皿底面に素早く塗布し、水平を保ったまま1時間室温で放置した。その後、フィブリンが形成され底面のティシール希釈液が固化した培養皿は無菌状態を保ったまま4℃で保存した。この状態で保存することにより2ヶ月ほど使用が可能となる。ティシール1 mlのキットより3.5 cm培養皿を40〜50枚作製することができた。
[実施例2]フィブリンコーティング培養皿での細胞培養
(1)ラット心筋細胞
1日齢のウィスターラット新生仔より心室を摘出し、0.03%トリプシン、0.03%コラゲナーゼ、20 μg/mL DNase Iで酵素処理を行い,心室筋細胞を単離した。フィブリンコートした3.5 cm 培養皿1枚当たりに、10% FBSおよびペニシリン (50 U/mL)/ストレプトマイシン (50 μg/mL) /アンホテリシンB(25 μg/ml)含有medium 199/DMEM 2 mlおよび本細胞を2×106個を注入し、37°C , 5% CO2のインキュベーターで培養を行った。
(2)マウス骨格筋芽細胞由来のC2C12細胞
ATCCより購入したマウス骨格筋芽細胞由来の細胞株C2C12を、10%FBS含有DMEM培地を用いて5% CO2 37度のインキュベーターで培養し、80% 飽和の状態で継代を行った。
(3)マウスC2C12細胞由来の成熟骨格筋様細胞
(2)の方法で継代したC2C12細胞を75cmフラスコに1×107細胞蒔き、5%ウマ血清含有DMEM20mlを添加した。細胞の状態を見ながら、1〜2回/週培地交換を行った。
(4)骨髄間質細胞
マウスの大腿骨より骨髄を無菌状態で採取し、3.5 cm フィブリンコートディッシュ1枚当たり1×107細胞の有核細胞を蒔き、三光純薬株式会社製間葉系幹細胞用増殖培地(PT-3001)3mlを添加し1回/週の頻度で培地交換を行った。
[実施例3]細胞のシート化
(1)ラット心筋細胞シートの作製
初代培養後4日目、細胞は培養皿底面に飽和状態となって拍動していた。培養液を吸引し、培養皿辺縁部より中心部へ向けてスクレイパーを用いて膜状に結合した心筋細胞を破れない様にゆっくり剥がした。すべて剥離し終わった後に、しわの寄った細胞シートにゆっくりと新たな培養液を滴下することによって細胞シートを培養皿上に伸展することができた。ラット心筋細胞のシート化の様子を図1に示す。
(2)C2C12細胞、成熟骨格筋細胞及び骨髄間質細胞による細胞シートの作製
実施例2の方法でフィブリンコート培養皿上に細胞が飽和状態になるまで培養を続けた。その後3〜4日培養を継続した後、同様にスクレイパーを用いて膜状の細胞シートを剥離した。C2C12細胞及び成熟骨格筋細胞のシート化の様子をそれぞれ図2及び3に示す。
[実施例4]細胞シートの多層化
1枚目のシートを実施例3に記載のように培養液を滴下することによって培養皿上に伸展した。その後培養液を極力吸引し37度飽和水蒸気のインキュベーターに15分放置した。この間に1枚目の細胞シートは培養皿上に弱い力で接着した。次に剥離した直後の2枚目の細胞シートを培養液と共に10 mlピペットで吸引し、培養皿上に固定された1枚目の細胞シートの上に滴下した。伸展した1枚目のシートの上に縮んだ状態で滴下された2枚目のシートに、さらに新たな培養液をゆっくり滴下することによって2枚目のシートを1枚目のシートに重ねた状態で伸展することができた。同様の手技を繰り返して細胞シートを次々積層化した。
[実施例5]心筋細胞シートの機能解析
(1)in vitroでの電気的活動
部分的に重ねた2枚の心筋細胞シートに1 mlの培養液を加え、毎日交換しながら培養を続けた。2日後にそれぞれのシートが同じ心拍数で自律収縮している様子が顕微鏡下で観察され、それぞれの心筋シートの両端より測定した心電図より同じ調律で収縮していることが確認された(図4)。
(2)In vivoでの生着
2枚に重ねたラット心筋シートを5週齢のヌードラットの皮下に移植し、1週間後に皮膚を切開し心筋シート(図5)を観察した。心筋シートの律動的な収縮が肉眼的に確認された。
(3)免疫組織染色による筋腫宿蛋白、Gap junctionの検討
in vitroにおいてラット心筋シート作製2日後の組織に対して、心筋細胞の代表的な収縮蛋白であるアクチニンとGap junctionの構成蛋白であるコネキシン43の免疫染色を行った。結果を図6に示す。またin vivoにおいて2層のラット心筋シートを3週齢のヌードラットの皮下に移植し7日後に摘出し、HE染色及びアクチニンとコネキシン43の免疫染色を行った。結果をそれぞれ図7及び8に示す。In vitro、in vivoにおいてアクチニンおよびコネキシン43の発現が良好に維持されていることが確認された。またin vivoのモデルに関してはin vitroのモデルに比して心筋細胞の配向成されていることがいることが確認できた。また、HE色の所見から、移植した心筋シート間に微小血管が浸入し、血流を供給している様が観察された。
[実施例6]心筋細胞シートの作製、移植、組織学的解析及び電気活動解析
材料及び方法
・心筋細胞シート作製法
ティシール(ヒトフィブリノーゲン、トロンビン、塩化カルシウム、アプロチニン含有)をバクスターより購入した。ヒトフィブリノーゲン90mg、ヒトアルブミン20mg、トロンビン0.4U、塩化カルシウム二水和物0.59mg、アプロチニン3000Uを15mlの生理食塩水に希釈し、そのうち0.3mlを35mm培養皿に塗布した。約2時間後にフィブリン重合体が表面にコートされた培養皿を得る事が出来た。この培養皿は4℃で1ヶ月程度は無菌的に保存する事が出来る。前出の手法で、生後1日齢の新生仔ウィスターラットの心室筋より心筋細胞を得る事が出来た(Kodama H, Fukuda K, Pan J et al. Leukemia inhibitory factor, a potent cardiac hypertrophic cytokine, activates the JAK/STAT pathway in rat cardiomyocytes. Circ Res. 1997;81:656-663.)。得られた心筋細胞をフィブリンでコーティングされた培養皿上に(2.8 x 105/cm2)の密度で蒔いた。(図9A,B,G). 重合したフィブリンは培養細胞から分泌される非特異的プロテアーゼにより徐々に分解され、培養開始後3−7日後には細胞と培養皿表面との接触は次第に粗なものとなる (図9C) 。
従って、4日目には、セルスクレイパーを用いて心筋を培養皿表面から剥がす事が可能となり、心筋細胞シートを得る事が出来た(図9D,H)。縮んだ心筋細胞シートは培養液の中に浮遊させる事により伸展し(図9E,I)、その後正方形の形にカットした。その後の解析のために、二枚の心筋細胞シートを部分的に重ね合わせ(図9F,J)、前出の手法(Murata M, Fukuda K, Ishida H et al. Leukemia inhibitory factor, a potent cardiac hypertrophic cytokine, enhances L-type Ca2+ current and [Ca2+]i transient in cardiomyocytes. J Mol Cell Cardiol. 1999;31:237-245.)でラミニンをコートした培養皿上で共培養を1-3 日間継続した。
・心筋細胞シートグラフトの成獣ラット皮下組織への移植
全てに実験手技はthe Animal Care and Use Committees of the Keio University and conformed to the NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsの主義に則って行われている。ジエチルエーテルの吸入後、1%塩酸プロカイン5-10mlを雄F344ヌードラット(8週令, n=10)の背部皮下に局注し、皮膚を切開した。同部に三層に重ねた心筋細胞シートを移植した。
・組織学的解析
抗フィブリン抗体(Monosan, Netherland)、抗α-アクチニン抗体(Sigma)、コネキシン43抗体(Sigma)を用い、前出の手法で免疫組織染色を行った( Agbulut O, Menot ML, Li Z et al. Temporal patterns of bone marrow cell differentiation following transplantation in doxorubicin-induced cardiomyopathy. Cardiovasc Res. 2003;58:451-459.)。これらの検体に対してアレキサ488標識抗マウスIgG抗体(Molecular Probes)もしくはTRITC標識抗ウサギIgG抗体(Dako)による二次染色を行った。いくつかの実験においてはアレキサ594標識ファロイジンによる染色を行った(Molecular Probes)。TOTO-3 (Sigma)により細胞核の染色を行った。染色された検体を共焦点レーザー顕微鏡で観察した(LSM510, Zeiss)。
・Optical mapping systemによる心筋シートの電気活動の解析
2枚の心筋細胞シートを2mmの幅で互いに重ねあわせた。1組の双極電極を用いて、それぞれの心筋シートの両端で細胞外電位を測定した。
細胞膜電位感応性色素di4-ANEPPS(Molecular probes)を用いたoptical maping systemによりに方向性の活動電位の伝播を記録し2枚の重ね合わされた心筋シート間での活動電位の伝播を評価した。
di-4-ANEPPSの保存用溶液20 mMを、20% pluronic F-127 (P-3000, Molecular probes)を含有したDMSOに溶解し、di-4-ANEPPSの最終濃度が10 μMとなるように培養液に希釈した。検体を37°Cのインキュベーター内に30分間安置した後、タイロード液(NaCl 140, KCl 4, MgCl2 0.5, CaCl2 1.8, HEPES 5, D-glucose 55 mmol/L, (pH adjusted to 7.4 with NaOH) and 100 mg/L BSA)で培養液を置換した。心筋細胞シートの乗った培養皿を恒温灌流装置(37°C)にセットし、蛍光顕微鏡のステージに乗せた。(BX50WI, Olympus, Japan)高解像度CCDカメラシステム(MiCAM01, Brain Vision, 192 x 128 points, 3.5 msec time resolution)を用い、励起波長を610 nm以上、興奮波を520 nmで検体からの信号を記録した。心筋シートはサイトカラシン-D(25 μM)で不動化した。自律拍動下および双極塩化銀電極によるペーシング刺激下で活動電位を記録した。得られたデータは前出(Koura T, Hara M, Takeuchi S et al. Anisotropic conduction properties in canine atria analyzed by high-resolution optical mapping: preferential direction of conduction block changes from longitudinal to transverse with increasing age. Circulation. 2002;105:2092-2098.)の方法で、Igor Pro software (Wavemetrics)を用いて作製した 独自の解析プログラムにより処理した。
結果
・フィブリンコートした培養皿により作製した心筋シートの組織学的解析
本手法により得られた心筋シートを解析するに当たり、本発明者らは心筋細胞をフィブリン培養皿上に蒔いてから様々な時間を経過した時点においてセルスクレイパーを用いたシート作製を行った(図10)。心筋細胞シートは3日以降より培養皿から剥がす事が可能となった。剥がした後の直径は元の培養皿に比べ38 ± 3.6% (n=30)に収縮した。通常の培養皿、ゼラチン、ラミニン、ファイブロネクチンをコーティングした培養皿上で心筋細胞を培養し、コンフルエントになった後同様の手技でセルスクレイパーを用いて細胞を剥がす試みを行ったが、これらのケースではシート状に細胞を回収する事は不可能であった(data not shown)。本実験において、本発明者らは初代培養からシート作製までの日数をPX days、シート作製からデータ採取までの日数をSX daysと定義した。初代培養から4日後に作製した心筋シートの底面には(P4-S0)残存フィブリンが認められた。しかし、初代培養から6日後に作製した心筋シート(P6-S0)には残存フィブリンは認められなかった。
P4-S1の心筋シート間にはまだ残存したフィブリンが認められた。しかし、さらに培養を継続した2日後のP4-S3の心筋シートにおいてはフィブリンは完全に消失していた。興味深い事に、600 KIU/mlのアプロチニンを培養液に加えると相当量のフィブリンが分解されずに心筋シートの間に残存し続ける事が判明した(H-K)。これらの実験結果から心筋シート内の残存フィブリンを完全に分解するためには6日間を要する事が示唆された。
・フィブリンコート培養皿により作製した心筋シートの性質
まず始めに心筋細胞の初代培養開始から心筋シート作製までの理想的な日数の検討を行った(図11)。心筋シート作製時における成功率は3日後より上昇し4日目にピークに達した (成功率100%, 各n=12) (図11A)。得られる心筋シートの直径は初代培養からシート作製時までの期間に応じ、細胞密度の増加あるいは細胞の伸展の機序により徐々に伸張した (図11B)。次に初代培養から異なった期間において作製した心筋シートを、シート作製後から3日間培養を継続した時点で自律拍動を示している比率を調査した。初代培養からシート作製までの日数(PX)は心筋シートの自律拍動再開率に対して影響しなかった。しかし、心筋シート作製を初代培養から4日目に設定し(P4)、シート作製後培養を継続していった際に自律拍動がいつから認められるかを観察した所、シート作製後2日目より大幅な自律拍動出現率の増加を示し、さらに6日目(S6)においては100%の心筋シートが自律拍動を示した (6 days SX; 図11C,D)。ペーシング刺激に対して心筋シートが反応し律動収縮を示すかどうかを調べた所、律動収縮を示す割合はS2より増加し始めS5の時点では100%に達した (図11E) 。 図11Fは心筋シートを作製後、自律収縮を示す心筋シートの拍動周期(心拍数)を経時的に観察した結果である。これらの結果から、今回心筋シートを用いて電気生理学的解析を行うに当たり、P4-S3の心筋シートを用いる事に決定した。
・活動電位の伝播を解析するに当たってのoptical mapping systemと双極電極を用いた手法との比較
次に心筋シート内での活動電位の伝播の様子を、また2枚の心筋シート間で接合部を通じて活動電位が伝播するかどうかを解析した。双極電極を接触させ心筋シートの心電図を記録した結果と、optical mapping systemにより計測された活動電位の記録とを比較した (図12)。心電図上ではA,B両方のシートが同期して自律拍動を行っている様子が記録された。心電図上、シートAとシートBのQRS complexは完全に同期し、2枚の心筋シートが電気的な結合が確立されている事が示唆された。しかし、予想に反してoptical mapping systemによる活動電位の記録においては、活動電位はシートAの左下方より右上方へ進行し、接合部の上部を通じてシートBへ伝播しシートB内を広がってゆく様子が記録された。すなわち、活動電位は2枚のシートの接合部においては最短距離を直線的に伝播しているわけではない事が判明した。図12Dにおける矢印上の活動電位伝導速度はシート間の接合部においても遅延無くスムーズに伝播している事が示された (図12E)。従って心筋シートの活動電位の伝播、心筋シート同志の電気的結合の様子を解析するのに際し、optical mapping systemは唯一の有用性の高い手法である事が判明した。
・2枚の心筋シート間で電気的結合が確立されてゆく過程
2枚の心筋シートの間において電気的結合がどのように確立されてゆくかを調査するために、本発明者らは部分的に重合させた心筋シートにおける活動電位の伝播の様子をoptical mapping systemにより解析した。P4-S1の心筋シート間において、活動電位は一方の心筋シートから他方の心筋シートへ伝播しなかった (図13)。興味深い事にいくつかのケースにおいては(3/10)シートBにおいて部分的な活動電位の捕捉が認められた(arrow in 図13D)。活動電位の伝播の様子を等時線で示したのが図13Fである。また図中ライン上で、興奮波の先頭が進行する際の伝導速度が図13Gに示されているが、活動電位の進行はt点で停止している事がわかる。
これらの実験結果から、P4-S1の心筋シートにおいては電気的結合は限局的に形成されているものの、2枚のシート間にはまだ安定した電気的結合が確立されていない事が示唆される。
一方、P4-S3の心筋シートにおいては活動電位はシートAからシートBに伝導遅延無く伝播した (図14) 。 全ての実験検体において、2枚の心筋シートの間には良好な電気的結合が形成されており(n=10/10)、伝導速度の解析においても伝導遅延は認められなかった。これらの実験結果からは重層化した心筋シート間に安定した電気的結合が形成されるためには3日(S3)以上の共培養期間が必要と考えられた。
・2枚の心筋シートの結合に関する組織学的検討(生体外のモデルにおいて)
P4-S3心筋シートの蛍光免疫染色像を図15に示す。心筋細胞内には、はっきりとした横紋構造が認められる。心筋細胞間の接合部にはCx43が存在している。心筋細胞同志が接触する事により横紋構造の向きが同じ方向に向く傾向があった。2枚の重層化した心筋シートの厚さは約15±2 μmであった。2枚のシートは完全に結合しており、2枚のシートの境界を判別する事は不可能であった。
・3層に重ねた心筋シートの生体内移植モデルとその組織学的検討
3層に重層化した心筋シートをヌードラットの皮下に移植し14日後に観察した所、力強い周期的な収縮を示した(図16)。HE染色およびアザン染色では移植された心筋シートは宿主由来の結合組織により上下から覆われている事が示された(図16B,C)。心筋シートの厚みは102±11 μmであり、vitroで3層の心筋シートの培養を継続した際に比べより厚くなっていた。共焦点レーザー顕微鏡による観察では、1つ1つの心筋細胞の大きさはvitroのケースに比べ大きくなっていた。さらに移植された心筋シート内には豊富な血管新生が認められた (図16D)。これらの血管系は10-25 μmと、毛細血管レベルではなく微小血管レベルの経を有していた。心筋細胞内の横紋構造はよく発達しており心筋細胞の分布には同一方向を向く配向が認められた(図16E)。これらの所見はフィブリンコート培養皿を用いて作製された心筋シートは、組織での生着性がよく、正常心臓に似た組織構造を持ち、良好な収縮能を有しているものと考えられた。
考察
PIAAmをコートした感応性培養皿を用いて細胞シートを作製する手技が報告されて以来、様々な臓器における二次元もしくは三次元の組織工学の手法の一つとして細胞シート工学が発展してきた。その結果、現在では細胞シート工学は再生医療の分野において重要な位置を占める様になってきた。これまで温度感応性培養皿を用いて血管内皮細胞、肝細胞、腎上皮細胞、角膜細胞などによる細胞シートを作製した報告がなされている(Shimizu T, Yamato M, Kikuchi A et al. Cell sheet engineering for myocardial tissue reconstruction. Biomaterials. 2003;24:2309-2316.)。
今回本発明者らが報告した手法はいくつかの特徴を有する。一つは特別な設備を必要とせず、容易に入手可能なフィブリンを用いる事だけで手軽に細胞シートの作製が可能となる事である。従って、理想的なサイズ、形の様々な細胞シートを特別な手技を必要とせずに作製する事が可能となる。二つ目の特徴は接着系細胞のあらゆる種類のもので、細胞シートを作製する事が可能であるという事である。なぜならば、通常の細胞培養皿やファイブロネクチンをコートした培養皿に接着しにくい様な細胞でもフィブリンをコートした培養皿には極めて良好な接着性を示すからである。3つ目の特徴は細胞シートを素早く作製する事が可能となった事である。本手法を開発した当初はセルスクレイパーで細胞をシート状に回収する際に、心筋シートの細胞構造が破壊されてしまう可能性が危惧された。しかし顕微鏡による観察では明らかな細胞の壊死像などは観察されなかった。この理由は、心筋細胞から分泌される非特異的なタンパク分解酵素によってフィブリンが分解されてゆくに従って、細胞と培養皿との接着が次第に緩くなってゆくこと、またわずかに残存したフィブリンが細胞を回収する際の物理的な刺激から細胞を守るクッションの様な働きをするためではないかと予想している。本発明者らは心筋の初代培養を行ってから合計7日目に残存フィブリンは全て消失する事を確認している。しかし、この期間に関しては、細胞自体が分泌するタンパク分解酵素の性質やコンフルエントとなった際の細胞密度などによって変動し得るものと考えられる。
生体内において肝臓から分泌され、強力なタンパク分解作用を有する酵素としてプラスミンがよく知られている(Ritchie DG, Levy BA, Adams MA et al. Regulation of fibrinogen synthesis by plasmin-derived fragments of fibrinogen and fibrin: an indirect feedback pathway. Proc Natl Acad Sci U S A. 1982;79:1530-1534.)。従って、細胞シートを培養皿から剥がした時点において心筋シート内に残存フィブリンが存在していたとしても、移植後は生体内のプラスミンにより残存フィブリンは消失するものと考えられる。以上、今回示した結果からフィブリンをコートした培養皿により各種の細胞シートを作製する技術は心筋細胞シート工学において現実的かつ簡便な手法であると考えられる。
心筋組織工学の分野で有用な移植用グラフトとして心筋シートを用いるためには、心筋シート内あるいは心筋シート間での活動電位の広がり、伝達が良好であるという事が要求される。この点に関して、optical mapping systemは活動電位の広がりを詳細に検討する手段として極めて有用であると考えられた。顕微鏡下で完全に同期した収縮を行っている事が確認された2枚の心筋シートも、optical mapping systemを用いた解析により、その結合部においては良好な電気的結合が形成された一部の領域を介して、活動電位の広がりは迂回する様に伝播している事が示された。従って心臓に心筋シートを移植した際の宿主とグラフトとの電気的結合の有無を解析するに当たってはoptical mapping systemによる電気生理学的な検討が極めて有用であると考えられた。今回の実験では、2枚の心筋シート間で十分な電気的結合が形成されるためには3日間を要する事が示された。同様に、optical mapping systemを用いる事により心筋シート移植モデルにおいて電気的結合が形成されてゆく過程を検討する実験が現在進行中である。
結論として、今回示した心筋シート作製手法および心筋シートの電気生理学的解析手法は心臓その他の臓器における再生医学の領域において大きな前進をもたらすものになると考えられる。
[実施例6]細胞のシート化
(1)角膜上皮細胞シートの作製
以下の手順で、組織培養皿(IWAKI)にコートしたフィブリンシート上に角膜上皮細胞シートを作製した。
1)綿棒でウサギのデスメと虹彩を擦り取り、結膜をカットする。
2)12分割し、上皮を下にしてfibrinをコートしたinner well上に置く。
3)666 KIU/mlのアプロチニンを添加した0.6 ml SHEMを加える。上皮が生えてきたら、SHEM(666 KIU/mlのアプロチニン添加)を1mlにする。
4)3T3細胞を培養しているDMEM+FCS(+)を2ml SHEM(666 KIU/mlのアプロチニン添加)に変更する。
5)上皮がコンフルエントになったら(コンフルエントになるまで1〜2週間かかる)、Air liftをおこなう(1週間程度)。培地はSHEMだが、アプロチニンは添加しない。
6)培養した上皮をスクレイパーで剥がす。
フィブリンシート上に培養したウサギ角膜上皮細胞を光学顕微鏡で観察した様子(×100倍)を図17に示す。スクレイパーで剥がした培養上皮シートの写真を図18に示す。フィブリンシート上に培養したウサギ角膜上皮細胞からは、3T3共培養とAir lift を行なうことで厚みのある上皮シートを作製することができた。
(2)口腔粘膜上皮細胞シートの作製
以下の手順で、組織培養皿(IWAKI)にコートしたフィブリンシート上に口腔粘膜上皮細胞シートを作製した。
1)ウサギの口腔粘膜を採取する(2mmx2mmx1mmを2箇所採取)。
2)組織を洗浄する(ゲンタマイシンと抗生剤-抗真菌剤入りのmedium で15分間x3回 RT、抗生剤入りのPBS(−)で15分間 RT)。
3)Dispas II処理をする(37℃ 1時間)。
4)上皮を実質から剥がし、DMEM/F12+FCS(−)へ入れる。
5)Trypsin-EDTA処理をする(8分間 RT)。
6)1500rpmで5分間遠心する(2x105個/1ml SHEM(666 KIU/mlのアプロチニン添加)でinner wellへ播く)。
7)3T3細胞を培養しているDMEM+FCS(+)を2ml SHEM(666 KIU/mlのアプロチニン添加)に変更する。
8)上皮がコンフルエントになったら(コンフルエントになるまで1〜2週間かかる)、Air liftをおこなう(1週間程度)。培地はSHEMだが、アプロチニンは添加しない。
9) 培養した上皮をスクレイパーで剥がす。
フィブリンシート上に培養したウサギ口腔粘膜上皮細胞を光学顕微鏡で観察した様子(×100倍)を図19に示す。スクレイパーで剥がした培養上皮シートの写真を図20に示す。フィブリンシート上に培養したウサギ口腔粘膜上皮細胞からは、3T3共培養とAir lift を行なうことで厚みのある上皮シートを作製することができた。
(3)フィブリンシート培養のAmex包埋固定法
以下の手順で、上皮シートをAmex法にて包埋した。
1)上皮シートをメッシュに入れる。
2)4℃のアセトンに入れる。
3)アセトンごと-20℃に移し、一昼夜固定する。
4)4℃のアセトンに入れ替え、15分浸透させる。
5)室温のアセトンに入れ替え、15分浸透させる。
6)安息香酸メチルに入れ替え、15分浸透させる。この操作を2回行う。
7)キシレンに入れ替え、15分浸透させる。この操作を2回行う。
8)パラフィンを1時間浸透させる。この操作を3回行う。
9)パラフィンで包埋する。
(4)フィブリンシート培養の免疫染色
ウサギの角膜組織、口腔粘膜組織、培養角膜上皮、培養口腔粘膜上皮のサンプルにつき、Amex 包埋法で作製したパラフィン切片を以下の手順で免疫染色した。
1)3% H2O2で30 分、室温にて処理する。
2)ブロッキング( 10% Nomal Donkey Serum - 1% BSA - 0.01M PBS )を1 時間、室温にて行う。
3)1次抗体 (AE5 : PROGEN 61807 : 1/1000 )と反応させる。Isotype control (mouse IgG1 : Dako : 1/500 ) O/N
4)2次抗体(Donkey anti Ms IgG - FITC 、Jackson : 711-095-152 : 1/50 )と 30 分、室温にて反応させる。
5)核染色 (DOJINDO : 1 ug/ml DAPI)を5 分、室温にて行う。
ウサギ角膜上皮組織と口腔粘膜上皮組織の免疫染色(AE5)の様子を図21に示す。Blue : 核染色(DAPI)。Green:AE5染色( ケラチン 3/12 )。ポジティブコントロールとして角膜と口腔粘膜の上皮のケラチン3/12を染色したものは、ともに上皮細胞で染色性が示された(図21B及びD)。
ウサギ角膜培養上皮細胞と口腔粘膜培養上皮細胞の免疫染色(AE5)の様子を図22に示す。培養上皮において、角膜上皮は重層化し、ケラチン3/12で染色された(図22B及びD)。口腔粘膜上皮で重層化はみられたが、ケラチン3/12の染色はわずかであるが染色された。
以上のことから、フィブリンシート上に培養したウサギ角膜上皮・口腔粘膜上皮は重層化し、ケラチンを発現していたことから、正常組織に近い特性を持つ培養上皮を作製できることが示された。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明の方法で製造された細胞シートを用いることにより、各種病態(例えば、心筋細胞での不整脈)の解析モデルを作製すること、再生医療などの臨床レベルで組織移植をすることが可能となる。また、本発明の方法で製造された細胞シートを用いることにより、薬剤の生物学的活性試験を行うことができるので、所望の生物学的活性を有する医薬、農薬などの候補物質の選別を行うこともできる。
図1は、ラット心筋細胞のシート化の様子を示す。 図2は、C2C12細胞のシート化の様子を示す。 図3は、成熟骨格筋細胞のシート化の様子を示す。 図4は、心筋細胞シートの心電図を示す。 図5は、皮膚に移植したラット心筋細胞シートの状態を示す。 図6は、in vitroにおけるシート化後2日目のラット心筋シートのアクチニンおよびコネキシン43の免疫染色の結果を示す。 図7は、ヌードラット皮下へ移植後7日目のラット心筋細胞シートのHE染色の結果を示す。 図8は、ヌードラット皮下へ移植後7日目のラット心筋細胞シートのアクチニンおよびコネキシン43の免疫染色の結果を示す。 図9は、フィブリンポリマーでコートされた皿を用いた心筋細胞シートの機構及び操作の代表的スキームである。操作は、A→B→C→D→E→Fの順番で行った。 初代培養新生児ラット心筋細胞をフィブリンポリマーでコートされた皿の上に広げた(A, B, G)。4日目に、フィブリンポリマーは、心筋細胞から分泌された種々のプロテアーゼにより分解した(C)。心筋細胞シート(myocardial cell sheets, 以下、「MCS」と記すこともある)をセルスクレイパーで引き裂かないように、細胞をゆっくりと端から皿の中央に向かって取り除いたところ(D, E)、縮んだMCSが得られた(H)。縮んだシートに培養液を数滴垂らすと、シートが広がった(E, I)。平らになったMCSの端をメスで切り取って正方形にした。いくつかの実験において、2枚のMCSを2 mm幅のマージンで重ね合わせ、ラミニンでコートされた培養皿の上で共培養した(F, J)。 図10は、MCSの組織学的解析結果を示す。 (A)MCSの作製と組織学的解析のプロトコール。(B-E, H, I)MCSのH&E染色。(F, G, J, K)MCSの免疫蛍光染色。赤:F-アクチン、緑:フィブリン、青:TOTO-3により染色された細胞核。プロトコールとスケールバーを図中に挿入して示した。 図11は、MCSの性質を示す。 (A)PX-S0の日数のサンプルにおける、MCS作製の成功率。(B)PX-S0サンプルにおけるMCSの直径。(C)PX-S3の日数のサンプルを用いて作製したMCSが自律拍動を示す百分率。(D)P4-SXの日数のサンプルにおける自律拍動シートの百分率。(E)P4-SXの日数のサンプルにおける人工ペーシングを獲得したMCSの百分率。(F)P4-SXの日数のサンプルにおける拍動周期。 図12は、2枚の重ね合わせたMCSにおける電気的活動を解析する目的で1対の接触させた双極電極を用いて記録した心電図(ECG)およびoptical mappingにより記録した活動電位の伝播の様子である。 (A)2枚の重ね合わせたMCSの模式図及び接触させた双極電極の位置。(B)2枚の重ね合わせたMCSの顕微鏡観察像。(C)完全な同期化を示す各MCSから得られた細胞外電位。(D)optical mappingにより観察した活動電位の伝播の様子を等時線を用いて示した。各等時線の間隔は35ミリ秒である。シートAの左下部から発生した活動電位は、電気的な興奮を示さない接合部の下半分を迂回し、接合部の上方の限局した領域を通って対側のシートBへ伝播した。(E)興奮波の先頭をトレースして活動電位が進行してゆく様子を示した。((D)の矢じりを伴った黒の曲線)。 図13は、部分的に重ねた2枚のMCSの共培養を開始後1日目における、重ね合わせたMCSの活動電位の伝播の様子をoptical mappingを用いて観察した結果を示す。 1日目における代表的なデータ。(A)位相差顕微鏡による観察像。(B-D)それぞれ、シートAの左端でのペーシング後14、108及び164ミリ秒で得られた活動電位の観察像。シートBの限局的な捕捉が観察できることに注意されたい(矢印を見よ)。(E)MCSの断面模式図及びペーシング部位。(F)活動電位マップ。ここでは、各等時線の間隔は7ミリ秒である。接合部の左端で等時線が混みあっており、このあたりから伝導遅延が始まっている事を示唆している。活動電位の伝播は接合部の末端で遮断された。(G)興奮波の先頭に沿ってインパルスが次々と伝播していく様子((F)の矢じりを伴った赤の曲線)。(H)興奮波の先頭に沿った任意のポイントにおける活動電位のトレースを重ね合わせた。記号は、活動電位が記録された筋細胞の位置に対応する。 図14は、3日目における、重ね合わせたMCSの活動電位の伝播及び電気的結合の様子をoptical mappingを用いて観察した結果を示す。 3日目における代表的なデータ。(A)位相差顕微鏡による観察像。(B-D)シートAの左端でのペーシング後14、84及び150ミリ秒で得られたoptical mapping像。(E)MCSの断面模式図及びペーシング部位。(F)計算された活動電位マップ(大きさは図11Fと同じ)は、活動電位の伝播が2枚のMCSの間で遅延がなく非常にスムーズに伝わっている事を示唆した。(G)興奮波の先頭が次々と伝播していく様子は、興奮波の進行に遅延が無く2枚のMCSの間でタイトな電気伝達が形成されていることを示唆した。(H) 興奮波の先頭に沿った任意のポイントにおける活動電位のトレースを重ね合わせた。 図15は、in vitroでの2枚の心筋細胞シート間で良好な電気的結合が形成される組織学的根拠を示す。 重ね合わせたMCS(3日目)に対して免疫組織染色を行った検体をレーザー共焦点顕微鏡で観察した結果。MCSは、抗アクチニン(緑)、抗コネキシン43(赤)抗体及びTOTO3による核染色で三重染色を行った。(A)上方より観察したもの。(B)側面を観察したもの。(C)高倍率で上方より観察したもの。心筋細胞が密に配置し、コネキシン43は細胞の接合部に明らかに存在していることに注意されたい。 図16は、in vivoにおける3層心筋細胞シートの移植の様子を示す。 3層のMCSをヌードラットの皮下組織に移植し、サンプルを14日目に観察した。(A)移植領域(黒の点線)は周期的な自律拍動を示した(200 bpm)。(B)3層MCSグラフトの断面のH&E染色。Sk:骨格筋、Ct:結合組織、Cs:移植された3層のMCS。(C)同一検体のアザン染色。(D)高い倍率の断面図。移植されたMCS中に微小血管が見られることに注意されたい。*:微小血管。(E)図13に記載した、移植された3層のMCSの3重染色。移植された心筋細胞はよく組織化された横紋構造を示し、この横紋構造は同一方向を向く配向性を示すことに注意されたい。 図17は、フィブリンシート上に培養したウサギ角膜上皮細胞を光学顕微鏡で観察した結果を示す(倍率100倍)。 図18は、スクレイパーで剥がしたウサギ角膜培養上皮細胞シートを示す。 図19は、フィブリンシート上に培養したウサギ口腔粘膜上皮細胞を光学顕微鏡で観察した結果を示す(倍率100倍)。 図20は、スクレイパーで剥がしたウサギ口腔粘膜培養上皮細胞シートを示す。 図21は、ポジティブコントロールとしてウサギ角膜と口腔粘膜上皮のケラチン3/12を染色した結果を示す。(A) 角膜上皮の核染像。(B) 角膜上皮の核およびケラチン3/12の染色像。(C) 口腔粘膜の核染像。(D) 口腔粘膜の核およびケラチン3/12の染色像。 図22は、ウサギ角膜上皮細胞および口腔粘膜上皮細胞を用いて作成した細胞シートの免疫染色を示す。(A) 角膜上皮細胞シートの核染像。(B) 角膜上皮細胞シートの核およびケラチン3/12の染色像。(C) 口腔粘膜上皮細胞シートの核染像。(D) 口腔粘膜上皮細胞シートの核およびケラチン3/12の染色像。培養上皮シートにおいて、角膜上皮は重層化し、ケラチン3/12で染色された。口腔粘膜上皮で重層化がみられ、 ケラチン3/12の染色はわずかであるが染色された。フィブリンシート上に培養したウサギ角膜上皮・口腔粘膜上皮は重層化し、ケラチンを発現していたことから、正常組織に近い特性を持つ培養上皮を作成できることが示された。

Claims (3)

  1. 表面がフィブリンでコーティングされている支持体の表面上で細胞を飽和状態になるまで培養し、細胞底面のフィブリンが分解されるのに十分な時間培養を継続した後、培養した細胞を支持体表面からシート状に剥離することを含む、フィブリンを実質的に含まない細胞シートの製造方法。
  2. 剥離したシート状の培養細胞をさらに積層化することを含む、請求項1記載の方法。
  3. 細胞シートが再生医療又は薬剤の生物学的活性試験に用いられる、請求項1又は2に記載の方法。
JP2008201405A 2003-09-19 2008-08-05 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法 Expired - Fee Related JP4284563B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008201405A JP4284563B2 (ja) 2003-09-19 2008-08-05 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003328340 2003-09-19
JP2008201405A JP4284563B2 (ja) 2003-09-19 2008-08-05 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005513993A Division JP4193184B2 (ja) 2003-09-19 2004-03-25 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009011322A JP2009011322A (ja) 2009-01-22
JP4284563B2 true JP4284563B2 (ja) 2009-06-24

Family

ID=34372896

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005513993A Expired - Fee Related JP4193184B2 (ja) 2003-09-19 2004-03-25 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法
JP2008201405A Expired - Fee Related JP4284563B2 (ja) 2003-09-19 2008-08-05 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005513993A Expired - Fee Related JP4193184B2 (ja) 2003-09-19 2004-03-25 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法

Country Status (9)

Country Link
US (1) US20060281173A1 (ja)
EP (1) EP1669440B1 (ja)
JP (2) JP4193184B2 (ja)
KR (1) KR101001117B1 (ja)
CN (1) CN1852972A (ja)
AT (1) ATE450601T1 (ja)
CA (1) CA2539613A1 (ja)
DE (1) DE602004024429D1 (ja)
WO (1) WO2005028638A1 (ja)

Families Citing this family (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2403357T3 (es) 2003-12-11 2013-05-17 Isto Technologies Inc. Sistema de cartílago particulado
JP5292533B2 (ja) 2005-08-26 2013-09-18 ジンマー・インコーポレイテッド インプラントおよび関節疾患の治療、置換および治療方法
EP1764117A1 (en) * 2005-09-20 2007-03-21 Zimmer GmbH Implant for the repair of a cartilage defect and method for manufacturing the implant
JP2007317295A (ja) * 2006-05-25 2007-12-06 Pentax Corp 光情報記録再生装置用光学素子、光情報記録再生装置および光情報記録再生装置用光学素子の設計方法
US8163549B2 (en) 2006-12-20 2012-04-24 Zimmer Orthobiologics, Inc. Method of obtaining viable small tissue particles and use for tissue repair
US20090012629A1 (en) 2007-04-12 2009-01-08 Isto Technologies, Inc. Compositions and methods for tissue repair
JP5257355B2 (ja) 2007-05-11 2013-08-07 大日本印刷株式会社 寸法が保持された細胞シート、その製造方法、及びそのための細胞培養担体
JP4553038B2 (ja) * 2008-07-10 2010-09-29 株式会社豊田中央研究所 培養細胞のハンドリング体、その製造方法及びその利用
JP4483994B1 (ja) * 2009-02-26 2010-06-16 株式会社豊田中央研究所 細胞培養担体及びその利用
WO2011081328A2 (ko) * 2009-12-30 2011-07-07 차의과학대학교 산학협력단 조직재생용 구조체 및 조직재생용 구조체 형성을 위한 키트
JP5666188B2 (ja) * 2010-07-29 2015-02-12 テルモ株式会社 シート状細胞培養物の重なり修正方法およびそのためのシステム
US20140178343A1 (en) 2012-12-21 2014-06-26 Jian Q. Yao Supports and methods for promoting integration of cartilage tissue explants
WO2014186430A1 (en) 2013-05-16 2014-11-20 Trustees Of Boston University Multi-layered cell constructs and methods of use and production using enzymatically degradable natural polymers
WO2015025958A1 (ja) * 2013-08-23 2015-02-26 国立大学法人大阪大学 ペースメーカー組織片の製造方法
CN105984210B (zh) 2015-03-20 2019-08-16 精工爱普生株式会社 液体喷射装置
KR102150108B1 (ko) 2016-07-05 2020-08-31 한국과학기술원 세포시트 제작방법 및 응용을 위한 고분자 박막 배양플레이트 제작방법 및 용도
IT201700094210A1 (it) 2017-08-17 2019-02-17 Holostem Terapie Avanzate S R L Metodo per produrre lembi cellulari
IT201700104587A1 (it) 2017-09-19 2019-03-19 Holostem Terapie Avanzate S R L Usi terapeutici di lembi di cellule geneticamente modificate
KR102655120B1 (ko) * 2020-07-22 2024-04-08 연세대학교 산학협력단 세포시트의 코팅기술을 기반으로 한 배양육 제조방법 및 이로부터 제조된 배양육
PL442250A1 (pl) * 2022-09-12 2024-03-18 Acellmed Spółka Z Ograniczoną Odpowiedzialnością Opatrunek fibrynowy zwierający komórki nabłonka rogówki i sposób wytwarzania opatrunku

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3134079B2 (ja) * 1990-06-08 2001-02-13 サントル レジョナル ド トランスヒュジオン サンギーヌ ド リル トロンビンにより凝固した血漿蛋白質により構成された角化細胞培養物のための生物学的支持体、並びに角化細胞培養物を調製し、回収し、治療目的のために移送することにおいて上記支持体を用いる方法
WO1994001128A1 (en) * 1992-07-01 1994-01-20 Beth Israel Hospital Boston Enhancement of thrombolytic therapy with deglycosylated plasminogen
BE1012536A3 (fr) * 1998-11-04 2000-12-05 Baxter Int Element muni d'une couche de fibrine sa preparation et son utilisation.
EP1264877B1 (en) * 2000-03-16 2013-10-02 Cellseed Inc. Cell cultivation-support material, method of cocultivation of cells and cocultivated cell sheet obtained therefrom
JP4475847B2 (ja) * 2001-07-26 2010-06-09 株式会社セルシード 前眼部関連細胞シート、3次元構造体、及びそれらの製造法

Also Published As

Publication number Publication date
US20060281173A1 (en) 2006-12-14
EP1669440B1 (en) 2009-12-02
CN1852972A (zh) 2006-10-25
CA2539613A1 (en) 2005-03-31
KR20060091301A (ko) 2006-08-18
EP1669440A1 (en) 2006-06-14
DE602004024429D1 (de) 2010-01-14
JP4193184B2 (ja) 2008-12-10
JPWO2005028638A1 (ja) 2006-11-30
JP2009011322A (ja) 2009-01-22
KR101001117B1 (ko) 2010-12-14
ATE450601T1 (de) 2009-12-15
WO2005028638A1 (ja) 2005-03-31
EP1669440A4 (en) 2007-03-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4284563B2 (ja) 細胞シートを作製するための支持体をコーティングするための組成物、細胞シート作製用支持体及び細胞シートの製造方法
JP4943844B2 (ja) 三次元組織構造体
Sekine et al. Cardiomyocyte bridging between hearts and bioengineered myocardial tissues with mesenchymal transition of mesothelial cells
Mendes et al. Perivascular-like cells contribute to the stability of the vascular network of osteogenic tissue formed from cell sheet-based constructs
Itabashi et al. A new method for manufacturing cardiac cell sheets using fibrin‐coated dishes and its electrophysiological studies by optical mapping
CN101505796A (zh) 使用干细胞产物进行软组织修复和再生
JP2011004750A (ja) 心筋様細胞シート、3次元構造体、心筋様組織及びそれらの製造法
CA2559585A1 (en) Biological tissue sheet, method of forming the same and transplantation method by using the sheet
JPH09504968A (ja) 可溶性因子による上皮細胞の付着刺激及びヘミデスモソーム構成刺激
CA2219272A1 (en) Artificial skin containing as support biocompatible materials based on hyaluronic acid derivatives
US20040052768A1 (en) Vascularised tissue graft
AU2007219520B2 (en) Prevascularized tissue transplant constructs for the reconstruction of a human or animal organ
WO2002015914A1 (en) Vascularised tissue graft
CN110201232B (zh) 一种自组装预血管化干细胞膜片的制备方法
US20200061124A1 (en) Methods for making and using dedifferentiated and stem-like human cells
WO2007029676A1 (ja) 生体組織シート及びその作製方法
CN114466922A (zh) 纤维蛋白片的制造方法
鈴木崇 Three-Dimensional Endometrium Embryo-Implantation in Vitro Model Using Cell Sheet Engineering Technology in Rats
Shimizu et al. technique and temperature-responsive cell culture surfaces. Circ
AU2001283687A1 (en) Vascularised tissue graft

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080805

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20080825

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20080825

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090303

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090310

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120403

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130403

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140403

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees